(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記開閉装置を閉じ、前記第3の開閉装置を開き、前記液体収容体の加圧室の圧力によって前記チョーク弁を閉じた状態で、前記吸引装置を駆動させ、前記キャップ部材を介して液体を吸引する第1のクリーニングと、
前記開閉装置を開き、前記第3の開閉装置を閉じた状態で、前記吸引装置を駆動させ、前記液体供給路と前記空気流路との流路抵抗差に基づく圧力差によって前記チョーク弁を開きつつ前記キャップ部材を介して液体を吸引する第2のクリーニングと、が選択可能である、
ことを特徴とする請求項6に記載の液体噴射装置。
前記チョーク弁よりも下流側に設けられ、前記液体供給路の一部を形成する第2の液体室、及び、前記第2の液体室と第2の可撓性部材を介して隔てられた第2の空気室を備え、前記第2の液体室と前記第2の空気室との圧力差によって前記第2の可撓性部材を変形させ、前記第2の液体室の空間容積を変化させる液体貯溜部と、
前記液体貯溜部の第2の空気室と前記加圧装置との間を接続する第4の空気流路と、
前記第4の空気流路を開閉する第4の開閉装置と、を有する、
ことを特徴とする請求項5〜7のうちいずれか一項に記載の液体噴射装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、従来技術の構成では、クリーニングのために、チョーク弁を開閉するアクチュエーターが別途必要となっており、構造の複雑化、製造コストの増加の問題があった。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、構造を簡素化でき、製造コストを低減できる液体噴射装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明は、
液体を収容する液体収容体から供給される液体をノズルから噴射する液体噴射ヘッドと、前記液体収容体と前記液体噴射ヘッドとの間を接続する液体供給路と、前記液体供給路の一部を形成する液体室、及び、前記液体室と可撓性部材を介して隔てられた空気室を備え、前記液体室と前記空気室との圧力差によって前記可撓性部材を変形させ、前記液体供給路を開閉するチョーク弁と、前記ノズルを覆うキャップ部材と、前記キャップ部材を介して液体を吸引する吸引装置と、前記キャップ部材と前記吸引装置とを連通させる液体排出路と、前記液体排出路と前記チョーク弁の空気室とを連通させる空気流路と、前記空気流路を開閉する開閉装置と、前記液体排出路を開閉する第2の開閉装置と、前記液体排出路における前記第2の開閉装置よりも下流側に接続されると共に、所定の空間容積を備えるバッファタンクと、を有し、前記空気流路は、前記バッファタンクを介して前記液体排出路と前記チョーク弁の空気室とを連通させる、液体噴射装置を採用する。
また、本発明においては、液体を収容する液体収容体から供給される液体をノズルから噴射する液体噴射ヘッドと、前記液体収容体と前記液体噴射ヘッドとの間を接続する液体供給路と、前記液体供給路の一部を形成する液体室、及び、前記液体室と可撓性部材を介して隔てられた空気室を備え、前記液体室と前記空気室との圧力差によって前記可撓性部材を変形させ、前記液体供給路を開閉するチョーク弁と、前記ノズルを覆うキャップ部材と、前記キャップ部材を介して液体を吸引する吸引装置と、前記キャップ部材と前記吸引装置との間を接続する液体排出路と、前記液体排出路と前記チョーク弁の空気室との間を接続する空気流路と、前記空気流路を開閉する開閉装置と、を有する液体噴射装置を採用する。
このような構成を採用することによって、本発明では、空気流路を設け、キャップ部材と吸引装置とを接続する液体排出路と、液体収容体と液体噴射ヘッドとを接続する液体供給路に設けられたチョーク弁の空気室とを接続すると共に、該空気流路に開閉装置を設け、液体排出路とチョーク弁の空気室とを連通、非連通とさせる。開閉装置を閉じ、吸引装置を駆動させると、液体排出路を介してインク供給路が負圧となり、チョーク弁の液体室の方が空気室よりも負圧が高くなり、チョーク弁を閉じることができる。また、開閉装置を開き、吸引装置を駆動させると、液体排出路を介してインク供給路が負圧となり、さらに、空気流路を介してチョーク弁の空気室も負圧となる。ここで、チョーク弁の液体室では、インク供給路の圧力損失分を減じた負圧が作用するため、チョーク弁の空気室の方が液体室よりも負圧が高くなり、チョーク弁を開くことができる。このように、空気流路と開閉装置とを組み合わせ、液体を吸引する吸引装置を動力源とすることで、別途アクチュエーターを設けることなく、チョーク弁を開閉することができる。このため、本発明では、構造を簡素化でき、製造コストを低減することができる。
【0009】
また、本発明においては、前記液体供給路は、複数設けられており、前記チョーク弁は、複数の前記液体供給路のそれぞれに設けられ、前記空気流路は、前記開閉装置よりも下流側で分岐し、複数の前記チョーク弁の空気室のそれぞれに接続されている、という構成を採用する。
このような構成を採用することによって、本発明では、液体供給路とチョーク弁が複数設けられた場合に、空気流路を開閉装置よりも下流側で分岐し、複数のチョーク弁の空気室のそれぞれに接続することで、複数のチョーク弁の空気室を負圧にすることができる。このように、空気流路を分岐するだけで、全ての液体供給路のチョーク弁の開閉が容易に可能となるため、構造を簡素化でき、製造コストを低減することができる。
【0010】
また、本発明においては、前記液体排出路を開閉する第2の開閉装置と、前記第2の開閉装置よりも下流側で前記液体排出路の一部を形成すると共に、前記キャップ部材の空間容積よりも大きな空間容積を備えるバッファタンクと、を有し、前記空気流路は、前記バッファタンクに接続されている、という構成を採用する。
このような構成を採用することによって、本発明では、液体排出路に第2の開閉装置を設け、第2の開閉装置よりも下流側にバッファタンクを設け、第2の開閉装置を閉じ、吸引装置を駆動させることで、バッファタンクに負圧を溜めておくことができる。バッファタンクは、キャップ部材の空間容積よりも大きな空間容積を備えているため、必要なときに第2の開閉装置を開くことで、キャップ部材の内部を一気に負圧にすることができ、クリーニング時間を短縮することができる。
【0011】
また、本発明においては、前記空気流路は、前記バッファタンクの上部に接続されている、という構成を採用する。
このような構成を採用することによって、本発明では、バッファタンクの上部に空気流路を接続することで、キャップ部材を介してバッファタンクに流入した液体が空気流路に浸入することを防止することができる。
【0012】
また、本発明においては、空気を加圧する加圧装置と、前記加圧装置と前記チョーク弁の空気室との間を接続する第2の空気流路と、前記第2の空気流路を開閉する第3の開閉装置と、を有する、という構成を採用する。
このような構成を採用することによって、本発明では、第2の空気流路を設け、加圧装置とチョーク弁の空気室とを接続すると共に、該第2の空気流路に第3の開閉装置を設け、加圧装置とチョーク弁の空気室とを連通、非連通とさせる。第3の開閉装置を開き、加圧装置を駆動させることで、第2の空気流路を介してチョーク弁の空気室を加圧し、液体室との圧力差により可撓性部材を変形させ、チョーク弁を閉じることができる。このように、加圧装置の加圧力により、チョーク弁を閉じることができるため、確実に液体供給路を閉塞することができる。
【0013】
また、本発明においては、前記液体収容体は、収容した液体を前記液体供給路に押し出す加圧室を有しており、前記液体収容体の加圧室と前記第3の開閉装置よりも上流側の前記第2の空気流路との間を接続する第3の空気流路を有する、という構成を採用する。
このような構成を採用することによって、本発明では、第3の空気流路を設け、液体収容体の加圧室と第3の開閉装置よりも上流側の第2の空気流路とを接続する。第3の開閉装置を開くと、液体収容体の加圧室の空気が、第2,第3の空気流路を介してチョーク弁の空気室を加圧し、液体室との圧力差により可撓性部材を変形させ、チョーク弁を閉じることができる。このように、液体収容体の加圧室の圧力により、チョーク弁を閉じることができるため、液体供給路における閉塞の応答性を高めることができる。また、液体収容体の加圧室は、通常、チョーク弁の空気室よりも空間容積が非常に大きいため、液体収容体の加圧室の圧力降下はごく微小である。このため、第3の開閉装置を開いた後に、追い加圧を行うことなく、通常の印字またはクリーニングに移行することができる。
【0014】
また、本発明においては、前記開閉装置を閉じ、前記第3の開閉装置を開き、前記液体収容体の加圧室の圧力によって前記チョーク弁を閉じた状態で、前記吸引装置を駆動させ、前記キャップ部材を介して液体を吸引する第1のクリーニングと、前記開閉装置を開き、前記第3の開閉装置を閉じた状態で、前記吸引装置を駆動させ、前記液体供給路と前記空気流路との流路抵抗差に基づく圧力差によって前記チョーク弁を開きつつ前記キャップ部材を介して液体を吸引する第2のクリーニングと、が選択可能である、という構成を採用する。
このような構成を採用することによって、本発明では、開閉装置を閉じ、空気流路を非連通とし、第3の開閉装置を開き、第2,第3の空気流路を介して液体収容体の加圧室とチョーク弁の空気室とを連通させ、チョーク弁を閉じた状態で、吸引装置を駆動させることで、チョーク弁よりも下流側の液体供給路の液体のみを入れ替える第1のクリーニングを行うことができる。また、本発明では、第3の開閉装置を閉じ、第2,第3の空気流路を非連通とし、開閉装置を開き、空気流路を介して液体排出路とチョーク弁の空気室とを連通させた状態で、吸引装置を駆動させることで、液体供給路と空気流路との流路抵抗差に基づく圧力差によってチョーク弁を開きつつ、チョーク弁よりも上流側の液体供給路の液体まで入れ替える第2のクリーニングを行うことができる。このように、本発明では、第1のクリーニングと第2のクリーニングとが選択可能であるため、必要に応じて2種類のクリーニングを使い分け、液体の無駄な消費を抑えつつ液体噴射ヘッドの噴射特性を回復させることができる。
【0015】
また、本発明においては、前記チョーク弁よりも下流側に設けられ、前記液体供給路の一部を形成する第2の液体室、及び、前記第2の液体室と第2の可撓性部材を介して隔てられた第2の空気室を備え、前記第2の液体室と前記第2の空気室との圧力差によって前記第2の可撓性部材を変形させ、前記第2の液体室の空間容積を変化させる液体貯溜部と、前記液体貯溜部の第2の空気室と前記加圧装置との間を接続する第4の空気流路と、前記第4の空気流路を開閉する第4の開閉装置と、を有する、という構成を採用する。
このような構成を採用することによって、本発明では、チョーク弁よりも下流側に液体貯溜部を設けた場合に、第4の空気流路を設け、加圧装置と液体貯溜部の第2の空気室との間を接続すると共に、該第4の空気流路に第4の開閉装置を設け、加圧装置と液体貯溜部の第2の空気室とを連通、非連通とさせる。第4の開閉装置を開き、加圧装置を駆動させることで、第4の空気流路を介して液体貯溜部の第2の空気室を加圧し、第2の液体室との圧力差により第2の可撓性部材を変形させ、空間容積を小さくし、液体供給路を加圧することができる。このように、必要なときに、液体貯溜部の第2の空気室を加圧することで、加圧によるクリーニングを行うことができる。
【0016】
また、本発明においては、前記チョーク弁よりも上流側に設けられ、前記液体供給路の圧力と大気圧との差で前記液体供給路を開く自己封止弁を有する、という構成を採用する。
このような構成を採用することによって、本発明では、液体供給路の圧力が大気圧より小さいときに開き、液体を随時補充する自己封止弁が、チョーク弁よりも上流側に設けられているため、クリーニングの際に液体噴射ヘッドに対し適度な負圧を発生させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る液体噴射装置の各実施形態について、図を参照して説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。本実施形態では、本発明に係る液体噴射装置として、インクジェット式プリンター(以下、プリンターと称する)を例示する。
【0019】
図1は、本発明の実施形態におけるプリンターPRTを示す平面図である。
図1に示すプリンターPRTは、紙、プラスチックシートなどのシート状の記録媒体Mを搬送しつつ印刷処理を行う装置である。プリンターPRTは、筐体PBと、記録媒体Mにインクを噴射するインクジェット機構IJと、当該インクジェット機構IJにインクを供給するインク供給機構ISと、記録媒体Mを搬送する搬送機構CVと、インクジェット機構IJの保全動作を行うメンテナンス機構MNと、これら各機構を制御する制御装置CONTとを備えている。
【0020】
以下、XYZ直交座標系を設定し、当該XYZ直交座標系を適宜参照しつつ各構成要素の位置関係を説明する。本実施形態では、記録媒体Mの搬送方向をX軸方向とし、当該記録媒体Mの搬送面においてX軸方向に直交する方向をY軸方向とし、X軸及びY軸を含む平面に垂直な方向をZ軸方向と表記する。
【0021】
筐体PBは、Y軸方向を長手とするように形成されている。筐体PBには、上記のインクジェット機構IJ、インク供給機構IS、搬送機構CV、メンテナンス機構MN及び制御装置CONTの各部が取り付けられている。筐体PBには、プラテン13が設けられている。プラテン13は、記録媒体Mを支持する支持部材である。プラテン13は、筐体PBのうちX軸方向の中央部に配置されている。プラテン13は、+Z側に向けられた平坦面13aを有している。当該平坦面13aは、記録媒体Mを支持する支持面として用いられる。
【0022】
搬送機構CVは、搬送ローラーや当該搬送ローラーを駆動するモーター等(共に不図示)を有している。搬送機構CVは、筐体PBの−X側から当該筐体PBの内部に記録媒体Mを搬送し、当該筐体PBの+X側から当該筐体PBの外部に排出する。搬送機構CVは、筐体PBの内部において、記録媒体Mがプラテン13上を通過するように当該記録媒体Mを搬送する。搬送機構CVは、制御装置CONTによって搬送のタイミングや搬送量などが制御されるようになっている。
【0023】
インクジェット機構IJは、インク(液体)を噴射するインクジェットヘッドHと、当該インクジェットヘッドH(液体噴射ヘッド)を保持して移動させるヘッド移動機構ACとを有している。インクジェットヘッドHは、プラテン13上に送り出された記録媒体Mに向けてインクを噴射する。インクジェットヘッドHは、インクを噴射するノズルが形成された噴射面Haを有している。噴射面Haは、Z軸方向に向けられており、プラテン13の支持面に対向するように配置されている。
【0024】
ヘッド移動機構ACは、キャリッジCAを有している。インクジェットヘッドHは、当該キャリッジCAに固定されている。キャリッジCAは、筐体PBの長手方向(Y軸方向)に架設されたガイド軸8に沿って移動自在な構成となっている。インクジェットヘッドH及びキャリッジCAは、プラテン13に対して+Z側に配置されている。
【0025】
ヘッド移動機構ACは、キャリッジCAの他、パルスモーター9と、当該パルスモーター9によって回転駆動される駆動プーリー10と、筐体PBの長手方向において駆動プーリー10が設けられる側(+Y側)とは逆側(−Y側)に設けられた従動プーリー11と、駆動プーリー10と従動プーリー11との間に掛け渡されたタイミングベルト12とを有している。
【0026】
キャリッジCAは、タイミングベルト12に接続されている。キャリッジCAは、タイミングベルト12の回転に伴ってY軸方向に移動可能に設けられている。Y軸方向へ移動する際、キャリッジCAは、ガイド軸8によって案内されるようになっている。
【0027】
メンテナンス機構MNは、インクジェットヘッドHのホームポジションに配置されている。このホームポジションは、記録媒体Mに対して印刷が行われる領域から外れた領域に設定されている。本実施形態では、プラテン13の+Y側にホームポジションが設定されている。ホームポジションは、プリンターPRTの電源がオフである時や、長時間に亘って記録が行われない時などに、インクジェットヘッドHが待機する場所である。
【0028】
メンテナンス機構MNは、インクジェットヘッドHのノズルを覆うキャップ部材CPや、当該噴射面Haを払拭するワイピング部材WPなどを有している。キャップ部材CPには、吸引ポンプなどの吸引装置SCが接続されている。吸引装置SCにより、キャップ部材CPは、インクジェットヘッドHからインクを吸引できるようになっている。
【0029】
インク供給機構ISは、インクジェットヘッドHにインクを供給する。インク供給機構ISは、複数のインクカートリッジCTR(液体収容体)を有している。本実施形態のプリンターPRTは、インクカートリッジCTRがインクジェットヘッドHとは異なりキャリッジCAに搭載されない構成(オフキャリッジ型)を採用している。
【0030】
図2は、本発明の実施形態におけるプリンターPRTのインク供給系及びインク排出系を示す模式図である。
インク供給機構ISは、インクカートリッジCTRとインクジェットヘッドHとの間を接続するインク供給路20を有する。インク供給路20には、インクカートリッジCTR側へのインクの逆流を防止するチェックバルブ20a(逆止弁)の下流側に、自己封止弁30、チョーク弁40、ヘッドタンク50(液体貯溜部)が設けられている。なお、このインク供給路20は、複数のインクカートリッジCTRのそれぞれに設けられている(
図1参照)。
【0031】
自己封止弁30は、インク供給路20の圧力と大気圧との差でインク供給路20を開くものである。すなわち、自己封止弁30は、インクジェットヘッドHからインクが消費され、下流側が負圧になると、インク供給路20を開き、上流側からインクを補充する構成となっている。自己封止弁30の構成は公知なため、その詳細な説明を省略するが、インク供給路20を開閉する弁体(不図示)と、弁体を閉塞する方向に付勢する付勢部材(不図示)と、大気圧を受け、インク供給路20が負圧になったときに付勢部材の付勢に抗して弁体を押し開く可撓性部材(不図示)と、を有する。
【0032】
チョーク弁40は、自己封止弁30の下流側に設けられている。チョーク弁40は、インク供給路20の一部を形成するインク室41(液体室)、及び、インク室41と可撓性部材43を介して隔てられた空気室42を備え、インク室41と空気室42との圧力差によって可撓性部材43を変形させ、インク供給路20を開閉するものである。このチョーク弁40の作動圧は、作動圧調整バネ44によって調整可能とされている。
【0033】
インク室41は、チョーク弁40の筐体の内部に形成され、その壁面の一部が可撓性部材43によって形成されるものである。インク室41の入口は、底面41aに形成され、インク室41の出口は、底面41aよりも上方に形成されている。このため、可撓性部材43が凹むと、インク室41の出口が閉塞される。これにより、チョーク弁40は、インク供給路20を閉塞することができる。本実施形態のインク室41には、例えば、130ml(ミリリットル)のインクを貯溜することが可能な構成となっている。
【0034】
空気室42は、チョーク弁40の筐体の内部空間のうち、可撓性部材43を介してインク室41(インク供給路20)とは反対側の空間である。すなわち、空気室42は、その壁面の一部が可撓性部材43によって形成されるものである。本実施形態の空気室42は、例えば、インク室41に130mlのインクを貯溜しているとき、15mlの空間容積を有するように構成されている。
【0035】
可撓性部材43は、例えば、単層若しくは複層の可撓性樹脂フィルム(例えばエラストマー等)から形成されている。可撓性部材43は、インク室41の入口と出口を覆うように、所定の弛みを持たせた状態でチョーク弁40の内壁面に固着されている。
作動圧調整バネ44は、チョーク弁40の作動圧を調整するものであり、インク室41に配置され、可撓性部材43を空気室42側に付勢する構成となっている。本実施形態の作動圧調整バネ44は、例えば、空気室42に対しインク室41が−4kPa(キロパスカル)になったときに、可撓性部材43がインク室41側に変形するようにバネ設定されている。
【0036】
上記構成のチョーク弁40の下流側には、ヘッドタンク50が設けられている。ヘッドタンク50は、インク供給路20の一部を形成するインク室51(第2の液体室)、及び、インク室51と可撓性部材53(第2の可撓性部材)を介して隔てられた空気室52(第2の空気室)を備え、インク室51と空気室52との圧力差によって可撓性部材53を変形させ、インク室51の空間容積を変化させるものである。このヘッドタンク50の作動圧は、作動圧調整バネ54によって調整可能とされている。
【0037】
インク室51は、ヘッドタンク50の内部に形成され、その壁面の一部が可撓性部材53によって形成されるものである。インク室51の入口及び出口は、底面51aよりも下方に形成されている。このため、可撓性部材53が凹んでも、ヘッドタンク50におけるインク供給路20が閉塞されることはない。本実施形態のインク室51には、例えば、255mlのインクを貯溜することが可能な構成となっている。
【0038】
空気室52は、ヘッドタンク50の内部空間のうち、可撓性部材53を介してインク室51(インク供給路20)とは反対側の空間である。すなわち、空気室52は、その壁面の一部が可撓性部材53によって形成されるものである。本実施形態の空気室52は、例えば、インク室51に255mlのインクを貯溜しているとき、50mlの空間容積を有するように構成されている。
【0039】
可撓性部材53は、例えば、単層若しくは複層の可撓性樹脂フィルム(例えばエラストマー等)から形成されている。可撓性部材53は、インク室51の入口と出口を覆うように、所定の弛みを持たせた状態でヘッドタンク50の内壁面に固着されている。
作動圧調整バネ54は、ヘッドタンク50の作動圧を調整するものであり、インク室51に配置され、可撓性部材53を空気室52側に付勢する構成となっている。本実施形態の作動圧調整バネ54は、例えば、空気室52に対しインク室51が−4kPa(キロパスカル)になったときに、可撓性部材53がインク室51側に変形するようにバネ設定されている。
【0040】
一方、メンテナンス機構MNは、キャップ部材CPと吸引装置SCとの間を接続するインク排出路60を有する。インク排出路60には、キャップ部材CP側へのインクの逆流を防止するチェックバルブ60bの上流側に、バルブ60a(第2の開閉装置)、バッファタンク61が設けられている。なお、吸引装置SCの下流側には、吸引装置SCを駆動するときに開かれるバルブ60cが設けられている。
【0041】
バルブ60aは、インク排出路60を開閉するものであり、キャップ部材CPの下流側に設けられている。バルブ60aは、インク排出路60において、吸引装置SCよりもキャップ部材CPに近い側に設けられている。本実施形態のバルブ60aは、キャップ部材CPとバッファタンク61との間において、インク排出路60を開閉する構成となっている。
【0042】
バッファタンク61は、バルブ60aよりも下流側でインク排出路60の一部を形成すると共に、キャップ部材CPの空間容積よりも大きな空間容積を備えている。本実施形態のバッファタンク61は、例えば、キャップ部材CPの空間容積が75mlとすると、その約3倍の250mlの空間容積を備えている。バッファタンク61の上部61aには、空気流路62が接続されている。空気流路62には、大気開放するときに開かれるバルブ62aが設けられている。バッファタンク61の出口は、下部61bに形成され、吸引装置SCが駆動すると、インクがバッファタンク61の下部61bから排出される。
【0043】
インク排出路60とチョーク弁40の空気室42との間は、空気流路70によって接続されている。空気流路70は、メンテナンス機構MNのインク排出系によって、インク供給機構ISのインク供給系の一部の要素(チョーク弁40等)を作動させるものである。空気流路70の一端は、バッファタンク61の上部61aに接続されている。また、空気流路70の他端は、チョーク弁40の空気室42に接続されている。この空気流路70の上流側とは、バッファタンク61側であり、下流側とはチョーク弁40の空気室42側である。
【0044】
空気流路70には、バルブ70a(開閉装置)が設けられている。バルブ70aは、空気流路70を開閉するものである。バルブ70aは、空気流路70において、チョーク弁40の空気室42よりもインク排出路60に近い側に設けられている。本実施形態のバルブ70aは、バッファタンク61とチョーク弁40の空気室42との間において、空気流路70を開閉する構成となっている。
【0045】
また、チョーク弁40の空気室42には、加圧装置80から加圧した空気が供給されるようになっている。加圧装置80とチョーク弁40の空気室42との間は、空気流路81(第2の空気流路)によって接続されている。本実施形態の空気流路81は、空気流路70と合流しているが、合流せずにチョーク弁40の空気室42に対して並行に接続してもよい。この空気流路81の上流側とは、加圧装置80側であり、下流側とはチョーク弁40の空気室42側である。
【0046】
空気流路81には、バルブ81a(第3の開閉装置)が設けられている。バルブ81aは、空気流路81を開閉するものである。バルブ81aは、空気流路81において、空気流路70との合流位置よりも上流側(加圧装置80に近い側)に設けられている。
加圧装置80には、空気を取り込む空気流路82が接続されている。空気流路82には、加圧装置80が駆動するときに開かれるバルブ82aが設けられている。なお、バルブ82aの代わりに、チェックバルブなどの逆流を防止するものを用いてもよい。
【0047】
加圧装置80は、インクカートリッジCTRのインクパック83を収容する加圧室84を加圧する加圧ポンプなどからなる。インクカートリッジCTRの加圧室84とバルブ81aよりも上流側の空気流路81との間は、空気流路85によって接続されている。この空気流路85の上流側とは、加圧装置80側であり、下流側とはインクカートリッジCTRの加圧室84側である。バルブ81aを閉じた状態で、加圧装置80が駆動すると、空気流路85を介して加圧室84を加圧することができる。
【0048】
本実施形態の加圧装置80は、例えば、インクカートリッジCTRの加圧室84を35±3kPaで加圧するようになっている。また、本実施形態の加圧室84の空間容積は、例えば、インクパック83が満杯(Full)のとき、1700mlの空間容積を備えており、また、インクパック83が空(end)のとき、4075mlの空間容積を備えている。このように、本実施形態の加圧室84は、インクパック83が満杯であっても、チョーク弁40の空気室42(15ml)の100倍以上の空間容積を備え、また、ヘッドタンク50の空気室52(50ml)の30倍以上の空間容積を備えている。
【0049】
ヘッドタンク50の空気室52と加圧装置80との間は、空気流路86(第4の空気流路)によって接続されている。本実施形態の空気流路86は、空気流路70,81と合流して加圧装置80と接続しているが、合流せずに加圧装置80と直接接続されていてもよい。この空気流路86の上流側とは、加圧装置80側であり、下流側とはヘッドタンク50の空気室52側である。空気流路86には、バルブ86a(第4の開閉装置)が設けられている。バルブ86aは、空気流路86を開閉するものである。バルブ86aは、空気流路86において、空気流路70との合流位置よりも下流側(空気室52に近い側)に設けられている。
【0050】
上記構成のプリンターPRTは、加圧装置80によりインクカートリッジCTRを介してインク供給路20を加圧した状態で吸引装置SCによる吸引を行う第1のクリーニングと、加圧装置80によるインク供給路20の加圧を行わない状態で吸引装置SCによる吸引を行う第2のクリーニングとが選択可能な構成となっている。第1のクリーニングとしては、少量のインクの入れ換えでインクジェットヘッドHの噴射特性を回復させるワイピングクリーニングがある。また、第2のクリーニングとしては、チョーク弁40を開けたままでインクを入れ替える通常のクリーニングと、チョーク弁40を開閉してインクを入れ替えるチョーククリーニングとがある。
【0051】
先ず、
図3を参照して、第1のクリーニング(ワイピングクリーニング)について説明する。
ワイピングクリーニングでは、バルブ70aを閉じ、空気流路70を非連通とする。また、バルブ86aを閉じ、空気流路86を非連通とする。次に、バルブ81aを開き、空気流路81を連通させる。運転中、インクカートリッジCTRの加圧室84は、加圧装置80によって加圧されているため、バルブ81aを開くと、インクカートリッジCTRの加圧室84の空気が逆流し、空気流路85,81を介してチョーク弁40の空気室42が加圧される。チョーク弁40の空気室42が加圧されると、インク室41との圧力差により可撓性部材43が底面41a側に変形し、
図3に示すように、チョーク弁40が閉じられる。
【0052】
次に、バルブ86aを開き、空気流路86を連通させる。バルブ86aを開くと、インクカートリッジCTRの加圧室84の空気が逆流し、空気流路85,81,70,86を介してヘッドタンク50の空気室52が加圧される。ヘッドタンク50の空気室52が加圧されると、インク室51との圧力差により可撓性部材53が底面51a側に変形し、
図3に示すように、ヘッドタンク50のインク室51が収縮する。インク室51が収縮すると、インク供給路20の上流側はチョーク弁40により閉じられているため、インク室51に貯溜されたインクが、インク供給路20の下流側のインクジェットヘッドHのノズルから吐出される(押し出される)。
【0053】
インクジェットヘッドHのノズルから吐出されたインクは、噴射面Haを濡らす。また、噴射面Haから滴下した余剰分のインクは、キャップ部材CPに受け取られ、吸引装置SCの駆動により、インク排出路60を介して回収される。余剰分のインクを回収したら、メンテナンス機構MNは、インクジェットヘッドHからキャップ部材CPを外し、噴射面Haをワイピング部材WP(
図1参照)で払拭する。噴射面Haはインクで濡れているため、ワイピング部材WPによる異物(増粘インクやゴミ等)の除去率を向上させることができる。
よって、このワイピングクリーニングによれば、クリーニングの成功率が高まり、また、インクの消費もヘッドタンク50の容量程度に抑えることができる。
【0054】
上述のように、本実施形態では、空気流路81を設け、加圧装置80とチョーク弁40の空気室42とを接続すると共に、該空気流路81にバルブ81aを設け、加圧装置80とチョーク弁40の空気室42とを連通、非連通とさせる。バルブ81aを開き、加圧装置80を駆動させることで、空気流路81を介してチョーク弁40の空気室42を加圧し、インク室41との圧力差により可撓性部材43を変形させ、チョーク弁40を閉じることができる。このように、加圧装置80の加圧力により、チョーク弁40を閉じることができるため、確実にインク供給路20を閉塞することができる。
【0055】
また、本実施形態では、空気流路85を設け、インクカートリッジCTRの加圧室84とバルブ81aよりも上流側の空気流路81とを接続する。バルブ81aを開くと、インクカートリッジCTRの加圧室84の空気が、空気流路85,81を介してチョーク弁40の空気室42を加圧し、インク室41との圧力差により可撓性部材43を変形させ、チョーク弁40を閉じることができる。このように、インクカートリッジCTRの加圧室84の圧力により、チョーク弁40を閉じることができるため、インク供給路20における閉塞の応答性を高めることができる。また、インクカートリッジCTRの加圧室84は、通常、チョーク弁40の空気室42よりも空間容積が非常に大きいため、インクカートリッジCTRの加圧室84の圧力降下はごく微小である。このため、バルブ81aを開いた後に、追い加圧を行うことなく、通常の印字またはクリーニングに移行することができる。
【0056】
また、本実施形態では、チョーク弁40よりも下流側にヘッドタンク50を設けた場合に、空気流路86を設け、加圧装置80とヘッドタンク50の空気室52との間を接続すると共に、該空気流路86にバルブ86aを設け、加圧装置80とヘッドタンク50の空気室52とを連通、非連通とさせる。バルブ86aを開き、加圧装置80を駆動させることで、空気流路86を介してヘッドタンク50の空気室52を加圧し、インク室51との圧力差により可撓性部材53を変形させ、空間容積を小さくし、インク供給路20を加圧することができる。このように、必要なときに、ヘッドタンク50の空気室52を加圧することで、加圧によるクリーニングを行うことができる。また、本実施形態では、空気流路86が、インクカートリッジCTRの加圧室84に接続されているため、インクカートリッジCTRの加圧室84の圧力を利用し、応答性を高めることができる。
【0057】
次に、
図4を参照して、第2のクリーニング(通常のクリーニング)について説明する。
【0058】
通常のクリーニングでは、バルブ81aを閉じ、空気流路81を非連通とする。次に、バルブ70aを開き、空気流路70を連通させる。また、バルブ60aを開き、インク排出路60を連通させる。この状態で、吸引装置SCを駆動させると、インク排出路60が負圧となり、キャップ部材CPを介してインクジェットヘッドHのノズルからインクが吸い出され、インク供給路20が負圧になる。また、インク排出路60が負圧となると、バッファタンク61に接続された空気流路70も負圧になる。
【0059】
ここで、インク供給路20と空気流路70の圧力損失を比較すると、流通する媒体の粘度や流路面積等の違いにより、インク供給路20の方が空気流路70よりも圧力損失が大きくなる。そうすると、インク供給路20の一部であるチョーク弁40のインク室41よりも、空気流路70が接続されたチョーク弁40の空気室42の方が、負圧が高くなる。チョーク弁40の空気室42の負圧が高くなると、インク室41との圧力差により可撓性部材43が底面41aと反対側に変形し(膨らみ)、
図4の実線で示すように、チョーク弁40が開いた状態のまま維持される。なお、バルブ70aと共にバルブ86aを開けば、チョーク弁40と同じように、ヘッドタンク50を膨らませることも可能である。
よって、この通常のクリーニングによれば、チョーククリーニング(後述)をしない場合の不必要なインク供給路20の閉塞を回避しつつ、クリーニングを行うことが可能となる。
【0060】
続いて、
図4を参照して、第2のクリーニング(チョーククリーニング)について説明する。
【0061】
チョーククリーニングでは、バルブ70aを閉じ、空気流路70を非連通とする。また、バルブ81aを閉じ、空気流路81を非連通とする。次に、バルブ60aを開き、インク排出路60を連通させる。この状態で、吸引装置SCを駆動させると、インク排出路60が負圧となり、キャップ部材CPを介してインクジェットヘッドHのノズルからインクが吸い出され、インク供給路20が負圧になる。一方、空気流路70は、バルブ70aが閉じられているため、負圧とならない。
【0062】
そうすると、空気流路70が接続されたチョーク弁40の空気室42よりも、インク供給路20の一部であるチョーク弁40のインク室41の方が、負圧が高くなる。チョーク弁40のインク室41の負圧が高くなると、空気室42との圧力差により可撓性部材43が底面41a側に変形し(縮み)、
図4の二点鎖線で示すように、チョーク弁40が閉じられる。チョーク弁40が閉じられると、チョーク弁40よりも下流側におけるインク供給路20内が負圧状態となる。また、チョーク弁40と同じように、ヘッドタンク50も縮んだ状態となる。
【0063】
次に、バルブ70aを開け、空気流路70を連通させる。そうすると、上述のようにチョーク弁40のインク室41では、インク供給路20の圧力損失分を減じた負圧が作用するため、チョーク弁40の空気室42の方がインク室41よりも負圧が高くなり、チョーク弁40を開くことができる。チョーク弁40が開くと、負圧となっているインク供給路20内にインクが勢いよく流し込まれ、滞留していた気泡や沈降成分等を一気にインクジェットヘッドHのノズルから排出することができる。なお、このとき、バルブ86aを閉じておくことで、ヘッドタンク50を縮んだまま状態とし、インクの勢いを殺さないようにすることができる。
よって、このチョーククリーニングによれば、バルブ70aの開閉によって、吸引装置SCの吸引力を使ってチョーク弁40を開閉することが可能である。
【0064】
上述のように、本実施形態では、空気流路70を設け、キャップ部材CPと吸引装置SCとを接続するインク排出路60と、インクカートリッジCTRとインクジェットヘッドHとを接続するインク供給路20に設けられたチョーク弁40の空気室42とを接続すると共に、該空気流路70にバルブ70aを設け、インク排出路60とチョーク弁40の空気室42とを連通、非連通とさせる。バルブ70aを閉じ、吸引装置SCを駆動させると、インク排出路60を介してインク供給路20が負圧となり、チョーク弁40のインク室41の方が空気室42よりも負圧が高くなり、チョーク弁40を閉じることができる。
【0065】
また、バルブ70aを開き、吸引装置SCを駆動させると、インク排出路60を介してインク供給路20が負圧となり、さらに、空気流路70を介してチョーク弁40の空気室42も負圧となる。ここで、チョーク弁40のインク室41では、インク供給路20の圧力損失分を減じた負圧が作用するため、チョーク弁40の空気室42の方がインク室41よりも負圧が高くなり、チョーク弁40を開くことができる。
このように、空気流路70とバルブ70aとを組み合わせ、インクを吸引する吸引装置SCを動力源とすることで、別途アクチュエーターを設けることなく、チョーク弁40を開閉することができる。このため、本実施形態では、構造を簡素化でき、製造コストを低減することができる。
【0066】
また、本実施形態では、バルブ70aを閉じ、空気流路70を非連通とし、バルブ81aを開き、空気流路81,85を介してインクカートリッジCTRの加圧室84とチョーク弁40の空気室42とを連通させ、チョーク弁40を閉じた状態で、吸引装置SCを駆動させることで、チョーク弁40よりも下流側のインク供給路20のインクのみを入れ替える第1のクリーニングを行うことができる。
また、本実施形態では、バルブ81aを閉じ、空気流路81を非連通とし、バルブ70aを開き、空気流路70を介してインク排出路60とチョーク弁40の空気室42とを連通させた状態で、吸引装置SCを駆動させることで、インク供給路20と空気流路70との流路抵抗差に基づく圧力差によってチョーク弁40を開きつつ、チョーク弁40よりも上流側のインク供給路20のインクまで入れ替える第2のクリーニングを行うことができる。
このように、本実施形態では、第1のクリーニングと第2のクリーニングとが選択可能であるため、必要に応じて2種類のクリーニングを使い分け、インクの無駄な消費を抑えつつインクジェットヘッドHの噴射特性を回復させることができる。
【0067】
また、本実施形態では、インク供給路20が複数設けられ(
図1参照)、チョーク弁40が複数設けられた場合に、バルブ70aよりも下流側で空気流路70を分岐し、複数のチョーク弁40の空気室42のそれぞれに接続することで、複数のチョーク弁40の空気室42を負圧にすることができる。このように、本実施形態では、空気流路70を分岐するだけで、全てのインク供給路20のチョーク弁40の開閉が容易に可能となるため、構造を簡素化でき、製造コストを低減することができる。
【0068】
また、本実施形態では、インク排出路60にバルブ60aを設け、バルブ60aよりも下流側にバッファタンク61を設け、バルブ60aを閉じ、吸引装置SCを駆動させることで、バッファタンク61に負圧を溜めておくことができる。バッファタンク61は、キャップ部材CPの空間容積よりも大きな空間容積を備えているため、必要なときにバルブ60aを開くことで、キャップ部材CPの内部を一気に負圧にすることができ、クリーニング時間を短縮することができる。
また、本実施形態では、バッファタンク61の上部61aに空気流路70を接続することで、キャップ部材CPを介してバッファタンク61に流入したインクが空気流路70に浸入することを防止することができる。
【0069】
また、本実施形態では、インク供給路20の圧力が大気圧より小さいときに開き、インクを随時補充する自己封止弁30が、チョーク弁40よりも上流側に設けられているため、クリーニングの際にインクジェットヘッドHに対し適度な負圧を発生させることができる。これにより、インク供給路20内の気泡が負圧により膨張し、気泡排出性を向上させることが可能となる。
【0070】
このように、上述した本実施形態によれば、インクを収容するインクカートリッジCTRから供給されるインクをノズルから噴射するインクジェットヘッドHと、インクカートリッジCTRとインクジェットヘッドHとの間を接続するインク供給路20と、インク供給路20の一部を形成するインク室41、及び、インク室41と可撓性部材43を介して隔てられた空気室42を備え、インク室41と空気室42との圧力差によって可撓性部材43を変形させ、インク供給路20を開閉するチョーク弁40と、ノズルを覆うキャップ部材CPと、キャップ部材CPを介してインクを吸引する吸引装置SCと、キャップ部材CPと吸引装置SCとの間を接続するインク排出路60と、インク排出路60とチョーク弁40の空気室42との間を接続する空気流路70と、空気流路70を開閉するバルブ70aと、を有するプリンターPRTを採用することによって、構造を簡素化でき、製造コストを低減できる。
【0071】
以上、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0072】
例えば、上述の実施形態においては、インク排出路60にバッファタンク61を設ける構成について説明したが、バッファタンク61を設けない構成を採用してもよい。なお、インクジェットヘッドHが複数設けられたラインヘッドであれば、キャップ部材CPの空間容積も大きくなるため、バッファタンク61を設け、一気に負圧をかける構成とすることが好ましい。
【0073】
また、例えば、上述の実施形態においては、インク供給路20にヘッドタンク50を設ける構成について説明したが、ヘッドタンク50を設けない構成を採用してもよい。
また、上述の実施形態においては、自己封止弁0の下流側にチョーク弁40を設ける構成について説明したが、自己封止弁30の上流側にチョーク弁40を設ける構成を採用してもよい。自己封止弁30の上流にチョーク弁40を設けることで、自己封止弁30の気泡排出性を向上できる。
【0074】
また、例えば、上述の実施形態においては、インク供給路20に一つのチョーク弁40を設ける構成について説明したが、チョーク弁40の上流側に同様のチョーク弁40をさらに設ける構成を採用してもよい。
【0075】
また、例えば、上述の実施形態においては、インクカートリッジCTRの加圧室84の加圧空気を送り込んで、必要に応じてチョーク弁40、ヘッドタンク50を作動させる構成について説明したが、応答性が求められない場面では、加圧装置80から直接加圧空気を送り込む構成を採用してもよい。
【0076】
また、例えば、上述の実施形態においては、チョーク弁40に作動圧を調整する作動圧調整バネ44を設ける構成について説明したが、作動圧調整バネ44を設けない構成を採用してもよい。
また、上述の実施形態においては、ヘッドタンク50に作動圧を調整する作動圧調整バネ54を設ける構成について説明したが、作動圧調整バネ54を設けない構成を採用してもよい。
【0077】
また、上述の実施形態においては、液体噴射装置がプリンターPRTである場合を例にして説明したが、プリンターに限られず、複写機及びファクシミリ等の装置であってもよい。
【0078】
また、液体噴射装置としては、インク以外の他の液体を噴射したり吐出したりする構成を採用してもよい。本発明は、例えば微小量の液滴を吐出させる液体噴射ヘッド等を備える各種の液体噴射装置に流用可能である。なお、液滴とは、上記液体噴射装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう液体とは、液体噴射装置が噴射させることができるような材料であればよい。例えば、物質が液相であるときの状態のものであればよく、粘性の高い又は低い液状体、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状態、また物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散又は混合されたものなどを含む。また、液体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクが挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インク及び油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。