(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1エアミックスドア及び前記第2エアミックスドアにおいて前記ヒータコアを迂回する流量が最大となる開度状態を全閉状態とし、前記第1エアミックスドア及び前記第2エアミックスドアにおいて前記ヒータコアを通過する流量が最大となる開度状態を全開状態とし、前記第1エアミックスドア及び前記第2エアミックスドアにおいて前記全開状態及び前記全閉状態と異なる開度状態を中間状態とするとき、
前記アクチュエータは、前記第1エアミックスドア及び前記第2エアミックスドアのそれぞれの開度状態が前記中間状態となる場合に、前記第1エアミックスドアの開度を前記第2エアミックスドアの開度と異なる開度にすることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両用空調装置。
前記アクチュエータは、前記ラックギアの移動の際に前記第1ギア及び前記第2ギアと前記ラックギアとが歯合された状態を保持するように前記ラックギアをガイドするガイド部材を更に有することを特徴とする請求項1,6,7のいずれか1項に記載の車両用空調装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、車両用空調装置の一実施形態について説明する。はじめに、本実施形態の車両用空調装置の概要について説明する。
【0012】
図1に示されるように、本実施形態の車両用空調装置1は、空調ケース10と、送風機20と、エバポレータ30と、ヒータコア40とを備えている。
【0013】
空調ケース10は、送風用の空気の通路となる空気通路11を内部に有している。空気通路11内には、上流側から送風機20、エバポレータ30、及びヒータコア40が順に配置されている。空気通路11は、空調ケース10の内部に形成された仕切り板18により第1空気通路11aと第2空気通路11bとに区画されている。
【0014】
空調ケース10は上流側の外壁に外気導入口12と内気導入口13とを有している。外気導入口12は車室外の空気(外気)を空気通路11に取り込む。内気導入口13は車室内の空気(内気)を空気通路11に取り込む。外気導入口12は第1空気通路11aの上流に位置している。内気導入口13は第2空気通路11bの上流に位置している。
【0015】
空調ケース10は下流側の外壁にデフロスタ吹き出し口14と、フェイス吹き出し口15と、フット吹き出し口16とを有している。デフロスタ吹き出し口14は、空気通路11内の空気を車両のフロントガラスの内面部分に向けて吹き出す。フェイス吹き出し口15は、空気通路11内の空気を車両の運転者や助手席の搭乗者の頭部や胸部に向けて空気を吹き出す。デフロスタ吹き出し口14及びフェイス吹き出し口15は第1空気通路11aの下流に位置している。フット吹き出し口16は、空気通路11内の空気を車両の運転者や助手席の搭乗者の足元に向けて吹き出す。フット吹き出し口16は第2空気通路11bの下流に位置している。
【0016】
送風機20は、第1空気通路11aの上流側に配置される第1送風機21と、第2空気通路11bの上流側に配置される第2送風機22とからなる。第1送風機21は、外気導入口12から取り込まれる外気、あるいは内気導入口13から取り込まれる内気を第1空気通路11aに送風する。第2送風機22は、外気導入口12から取り込まれる外気、あるいは内気導入口13から取り込まれる内気を第2空気通路11bに送風する。
【0017】
エバポレータ30は、空気の流れ方向に対して直交する方向において第1空気通路11aの断面全体及び第2空気通路11bの断面全体を塞ぐように仕切り板18を貫通して配置されている。エバポレータ30は、周知のごとく冷凍サイクルの低圧冷媒が空気から吸熱して蒸発することにより、空気を冷却、除湿する冷房用熱交換器である。エバポレータ30は、第1送風機21及び第2送風機22からそれぞれ送風される空気を冷却、除湿し、下流側に位置するヒータコア40へと送風する。
【0018】
ヒータコア40は、空気の流れ方向に対して直交する方向において第1空気通路11aの断面の一部及び第2空気通路11bの断面の一部を塞ぐように仕切り板18を貫通して配置されている。第1空気通路11aにおいてヒータコア40の配置されている部分は加熱流路16aを構成し、ヒータコア40の配置されていない部分は迂回流路16bを構成している。同様に、第2空気通路11bにおいてヒータコア40の配置されている部分は加熱流路17aを構成し、ヒータコア40の配置されていない部分は迂回流路17bを構成している。ヒータコア40の内部には、車載エンジンを冷却することにより温度上昇した冷却水が流れている。ヒータコア40は、この冷却水を暖房用熱源として空気を加熱する加熱用熱交換器である。ヒータコア40は、エバポレータ30により冷却、除湿された空気を加熱して下流側に送風する。これにより、第1空気通路11aでは、加熱流路16aを通過して加熱された空気と、迂回流路16bを通過した冷却状態の空気とが混合されることで、空気の温度が調整される。同様に第2空気通路11bでも、加熱流路17aを通過して加熱された空気と、迂回流路17bを通過した冷却状態の空気とが混合されることで、空気の温度が調整される。
【0019】
車両用空調装置1は、空調ケース10内に内外気切替ドア50と、第1エアミックスドア51と、第2エアミックスドア52と、デフロスタドア53と、フェイスドア54と、フットドア55とを有している。
【0020】
内外気切替ドア50は、外気導入口12及び内気導入口13のいずれか一方を開状態とし、他方を閉状態とすることにより、外気及び内気のいずれか一方を第1空気通路11a及び第2空気通路11bに導入する。また、内外気切替ドア50は、外気導入口12及び内気導入口13の双方を開状態とすることにより、外気を第1空気通路11aに導入するとともに、内気を第2空気通路11bに導入する。
【0021】
第1エアミックスドア51は、第1空気通路11aにおいてエバポレータ30とヒータコア40との間に配置されている。第2エアミックスドア52は、第2空気通路11bにおいてエバポレータ30とヒータコア40との間に配置されている。
【0022】
図2に示されるように、第1エアミックスドア51及び第2エアミックスドア52は板状の部材からなり、空気の流れ方向に並行な方向が板厚方向となるように配置されている。第1エアミックスドア51は上流側の側面に直線状のギア部51aを有している。第2エアミックスドア52も上流側の側面に直線状のギア部52aを有している。第1エアミックスドア51及び第2エアミックスドア52は、図示しない支持構造により、空気の流れに直交する方向にスライド移動可能に支持されている。具体的には、第1エアミックスドア51及び第2エアミックスドア52は、図中の実線の位置と、図中の二点鎖線の位置との間でスライド移動可能となっている。なお、図中の実線の位置は、最大冷房位置(MAXCOOL)であり、加熱流路16a,17aを全閉にするとともに迂回流路16b,17bを全開にする位置である。これに対し、図中の二点鎖線の位置は、最大暖房位置(MAXHOT)であり、加熱流路16a,17aを全開にするとともに迂回流路16b,17bを全閉にする位置である。以下では、便宜上、第1エアミックスドア51が図中の実線の位置に位置している状態を全閉状態とし、図中の二点鎖線の位置に位置している状態を全開状態とする。第2エアミックスドア52についても同様である。
【0023】
第1エアミックスドア51は、その開度状態に応じて、加熱流路16aを通過する空気流量と、迂回流路16bを通過する空気流量との割合を調整する。すなわち、第1エアミックスドア51の開度状態に応じて第1空気通路11a内の空気の温度が調整される。 例えば第1エアミックスドア51が全閉状態の場合、第1空気通路11a内の空気のほとんどがヒータコア40を迂回して流れるため、第1空気通路11a内の空気の温度が最も低くなる。これに対し、第1エアミックスドア51が全開状態の場合、第1空気通路11a内の空気のほとんどがヒータコア40を通過するため、第1空気通路11a内の空気の温度が最も高くなる。
【0024】
第2エアミックスドア52は、その開度状態に応じて、加熱流路17aを通過する空気流量と、迂回流路17bを通過する空気流量との割合を調整する。すなわち、第2エアミックスドア52の開度状態に応じて第2空気通路11b内の空気の温度が調整される。
【0025】
図1に示されるように、デフロスタドア53はデフロスタ吹き出し口14を開閉させる。フェイスドア54はフェイス吹き出し口15を開閉させる。フットドア55はフット吹き出し口16を開閉させる。
【0026】
この車両用空調装置1では、例えば図中に示されるように内外気切替ドア50が外気導入口12及び内気導入口13の双方を開状態としている場合、第1空気通路11aには外気が流れ、第2空気通路11bには内気が流れる。したがって、デフロスタドア53あるいはフェイス吹き出し口15からは外気を、またフット吹き出し口16からは内気を吹き出すことができる。このようにして車室内に空気が供給されることにより、車室内の上層には外気を、また車室内の下層には内気を循環させる内外気2層の流れを実現することができる。
【0027】
次に、車両用空調装置1の電気的な構成について説明する。
【0028】
図1に示されるように、車両用空調装置1はアクチュエータ60,70,80を備えている。アクチュエータ60は内外気切替ドア50を開閉動作させる。アクチュエータ70は第1エアミックスドア51及び第2エアミックスドア52を開閉動作させる。アクチュエータ80はデフロスタドア53、フェイスドア54、及びフットドア55を開閉駆動させる。
【0029】
車両用空調装置1はアクチュエータ60,70,80のそれぞれの駆動を制御する電子制御装置(ECU)90を備えている。また、車両用空調装置1は、エバ後温度センサ100と、水温センサ101と、外気温センサ102と、内気温センサ103と、日射センサ104と、操作パネル105とを備えている。
【0030】
エバ後温度センサ100は、エバポレータ30を通過した空気の温度を示すエバポレータ温度Teを検出する。水温センサ101は、ヒータコア40に流入されるエンジン冷却水の温度、すなわちヒータコア40の温度を示すヒータコア温度Thを検出する。外気温センサ102は、車室外の温度を示す外気温Tamを検出する。内気温センサ103は、車室内の温を示す内気温Trを検出する。日射センサ104は、日射量Tsを検出する。センサ100〜104のそれぞれの検出信号はECU90に取り込まれる。
【0031】
操作パネル105は、乗員の操作により設定温度や風量、吹き出し口等を設定可能となっている。操作パネル105は、設定温度や風量、吹き出し口等のそれぞれの設定値に応じた設定信号をECU90に出力する。
【0032】
ECU90はマイクロコンピュータを中心に構成されており、不揮発性メモリ91等を有している。ECU90は、センサ100〜104のそれぞれの検出信号、及び操作パネル105の設定信号に基づきアクチュエータ60,70,80の駆動を制御する。
【0033】
次に、アクチュエータ70の構造について詳述する。
【0034】
図3に示されるように、アクチュエータ70は、第1ギア71と、第2ギア72と、ラックギア73と、ガイド部材74と、モータ75とを備えている。
【0035】
第1ギア71は外歯車からなる。第1ギア71は、その軸方向に直交する断面形状が円形状をなす円形ギア部71aと、軸方向に直交する断面形状が楕円形状をなす非円形ギア部71bとを軸方向のずれた位置に有している。なお、
図3では、円形ギア部71aのギア歯の図示を割愛している。以下、円形ギア部71aのギア歯については図示を適宜割愛する。
図2に示されるように、円形ギア部71aは第1エアミックスドア51のギア部51aに歯合されている。
図3に示されるように、非円形ギア部71bはラックギア73に歯合されている。
図2に示されるように第1エアミックスドア51が全閉状態であるとき、
図3に示されるように非円形ギア部71bの長径部分がラックギア73に歯合されている。第1ギア71は、回転動作に基づき第1エアミックスドア51を開閉させる第1回転部材に相当する。
【0036】
第2ギア72は第1ギア71と同一形状からなる。すなわち、第2ギア72も外歯車からなる。第2ギア72は、その軸方向に直交する断面形状が円形状をなす円形ギア部72aと、軸方向に直交する断面形状が楕円形状をなす非円形ギア部72bとを軸方向のずれた位置に有している。なお、
図3では、円形ギア部72aのギア歯の図示を割愛している。以下、円形ギア部72aのギア歯については図示を適宜割愛する。
図2に示されるように、円形ギア部72aは第2エアミックスドア52のギア部52aに歯合されている。
図3に示されるように、非円形ギア部72bはラックギア73に歯合されている。
図2に示されるように第2エアミックスドア52が全閉状態であるとき、
図3に示されるように非円形ギア部72bの短形部分がラックギア73に歯合されている。第2ギア72は、回転動作に基づき第2エアミックスドア52を開閉させる第2回転部材に相当する。
【0037】
ラックギア73は軸線mに沿って直線状をなしている。ラックギア73は、その一側面73aに第1ギア71が対向し、その他側面73bに第2ギア72が対向するように配置されている。ラックギア73は、一側面73aにおいて第1ギア71の非円形ギア部71bに対向する部分に凹状の第1ギア面73cを有している。第1ギア面73cには、ラックギア73が軸線mに沿った方向に移動した際に、第1ギア71の非円形ギア部71bに歯合された状態を維持できるようにギア歯が湾曲凹状に配置されている。また、ラックギア73は、他側面73bにおいて第2ギア72に対向する部分に凸状の第2ギア面73dを有している。第2ギア面73dは、ラックギア73が軸線mに沿った方向に移動した際に、第2ギア72の非円形ギア部72bに歯合された状態を維持できるようにギア歯が湾曲凸状に配置されている。ラックギア73は第1ギア71及び第2ギア72を連結することにより、第1エアミックスドア51及び第2エアミックスドア52のそれぞれの開閉動作を連動させる。
【0038】
ガイド部材74は、ラックギア73の他側面73bにおいて第1ギア面73cの反対側に当たる部分に接触するように配置されている。ガイド部材74は、ラックギア73が軸線mに沿った方向に移動する際、第1ギア71及び第2ギア72とラックギア73とが歯合された状態を保持できるようにラックギア73の移動をガイドする。
【0039】
モータ75の出力軸75aは第1ギア71の回転軸に連結されている。すなわち、モータ75は第1ギア71を回転させる。第1ギア71の回転により第1エアミックスドア51がスライド移動して開閉動作する。また、第1ギア71の回転に応じてラックギア73が軸線mに沿った方向に移動することで第2ギア72も回転する。第2ギア72の回転により第2エアミックスドア52がスライド移動して開閉動作する。
【0040】
具体的には、
図2に示されるように、第1エアミックスドア51が全閉状態であるとき、第2エアミックスドア52も全閉状態となっている。この状態でモータ75が第1ギア71を矢印a1で示す方向に回転させると、
図4(a)に示されるように、第1エアミックスドア51の開度が開く方向に変化する。このとき、
図4(b)に示されるように、第1ギア71の回転に基づきラックギア73が矢印b1の方向に変位することにより第2ギア72が矢印c1で示す方向に回転する。この第2ギア72の回転により、
図4(a)に示されるように、第2エアミックスドア52の開度も開く方向に変化する。
【0041】
モータ75が第1ギア71を更に矢印a1の方向に回転させると、
図5(a)に示されるように、第1エアミックスドア51が全開状態となる。このとき、
図5(b)に示されるように、第1ギア71の回転に基づきラックギア73が矢印b1の方向に更に変位することにより第2ギア72が矢印c1の方向に更に回転する。この第2ギア72の回転により、
図5(a)に示されるように、第2エアミックスドア52も全開状態となる。
【0042】
一方、第1エアミックスドア51及び第2エアミックスドア52が
図5(a)に示す状態であるときにモータ75が第1ギア71を矢印a1の方向とは反対の矢印a2の方向に回転させると、第1エアミックスドア51は閉じる方向に変化する。この際、ラックギア73が矢印b1の方向とは反対の矢印b2の方向に変位することにより、第2ギア72が矢印c1とは反対の矢印c2の方向に回転する。この第2ギア72の回転により、第2エアミックスドア52も閉じる方向に変化する。
【0043】
このように、第1エアミックスドア51及び第2エアミックスドア52は、モータ75の駆動に基づき連動して開閉動作する。
【0044】
次に、ECU90による第1エアミックスドア51及び第2エアミックスドア52の開度制御について説明する。
【0045】
ECU90は、操作パネル105の温度設定スイッチにより設定される車室内設定温度Tsetの上方を操作パネル105から取得する。そして、ECU90は、車室内設定温度Tset、外気温センサ102により検出される外気温Tam、内気温センサ103により検出される内気温Tr、及び日射センサ104により検出される日射量Tsに基づき目標吹き出し温度TAOを設定する。目標吹き出し温度TAOは、車室内へ吹き出す温度の指標値を示す。ECU90は、演算した目標吹き出し温度TAO、エバ後温度センサ100により検出されるエバポレータ温度Te、及び水温センサ101により検出されるヒータコア温度Thに基づきラックギア73の変位量Drを以下の式fに基づき設定する。
【0046】
Dr={(TAO−Te)/(Th−Te)}×100(%) (f)
【0047】
なお、変位量Drが「0%」とは、ラックギア73が
図3の位置に位置している状態、すなわち第1エアミックスドア51及び第2エアミックスドア52のそれぞれの開度が全閉状態(MAXCOOL)となっている状態でのラックギア73の変位量を示す。また、変位量Drが「100%」とは、ラックギア73が
図5(b)の位置に位置している状態、すなわち第1エアミックスドア51及び第2エアミックスドア52のそれぞれの開度が全開状態(MAXHOT)となる状態でのラックギア73の変位量を示す。
【0048】
また、式fでは、目標吹き出し温度TAO、エバポレータ温度Te、及びヒータコア温度Thのそれぞれの値によっては、変位量Drが負の値になる場合や、100%を超える値になる場合がある。そのため、ECU90は、「Dr<0[%]」になる場合には、変位量Drを0%とし、「Dr>100[%]」になる場合には、変位量Drを100%とする。
【0049】
ECU90はラックギア73の変位量Drに基づきモータ75を駆動させる。具体的には、ECU90の不揮発性メモリ91には、ラックギア73の変位量Drとモータ75の出力軸75aの回転角との関係を示すマップが予め記憶されている。ECU90は、不揮発性メモリ91に記憶されたマップに基づきラックギア73の変位量Drからモータ75の出力軸75aの回転角を演算し、その演算結果に基づきモータ75を駆動させる。
【0050】
次に、本実施形態のアクチュエータ70の動作について説明する。
【0051】
図3〜
図5に示されるように、第1エアミックスドア51の開度が全閉状態から開く方向へ変化するほど、第1ギア71においてラックギア73に歯合されている部分の外径は小さくなる。また、第1エアミックスドア51の開度が全開状態から閉じる方向へと変化するほど、第1ギア71においてラックギア73に歯合されている部分の外径は大きくなる。
【0052】
これに対し、第2エアミックスドア52の開度が全閉状態から開く方向へ変化するほど、第2ギア72においてラックギア73に歯合されている部分の外径は大きくなる。また、第2エアミックスドア52の開度が全開状態から閉じる方向へと変化するほど、第2ギア72においてラックギア73に歯合されている部分の外径は小さくなる。
【0053】
このようなラックギア73と第1ギア71との歯合位置、及びラックギア73と第2ギア72との歯合位置の違いにより、第1ギア71の回転態様と第2ギア72の回転態様とに差異が生じる。
【0054】
詳しくは、
図3に示されるように第1ギア71の長径部分がラックギア73に歯合され、第2ギア72の短径部分がラックギア73に歯合されている場合、ラックギア73の変位量Drに対する回転変位量は第1ギア71よりも第2ギア72の方が大きくなる。これに対し、
図5(b)に示されるように第1ギア71の短径部分がラックギア73に歯合され、第2ギア72の長径部分がラックギアに歯合されている場合、ラックギア73の変位量Drに対する回転変位量は第2ギア72よりも第1ギア71の方が大きくなる。したがって、ラックギア73の変位量Drに対して第1エアミックスドア51及び第2エアミックスドア52のそれぞれの開度Da1,Da2は
図6に実線及び一点鎖線で示されるように変化する。
【0055】
なお、
図6では、第1エアミックスドア51及び第2エアミックスドア52が全閉状態となっているときの開度Da1,Da2を0%で示している。また、第1エアミックスドア51及び第2エアミックスドア52が全開状態となっているときの開度Da1,Da2を100%で示している。さらに、ラックギア73の変位量Drに対して第1エアミックスドア51及び第2エアミックスドア52のそれぞれの開度Da1,Da2が比例関係をなしている場合の開度Da1,Da2の変化の軌跡を二点鎖線で示している。
【0056】
図6に実線で示されるように、第1エアミックスドア51が全閉状態から開く方向へと変化する際には、ラックギア73の変位量Drに対する第1エアミックスドア51の開度Da1の変化量は、それらが比例関係をなす場合よりも小さくなる。また、第1エアミックスドア51の開度Da1が全開状態に近づくほど、ラックギア73の変位量Drに対する第1エアミックスドア51の開度Da1の変化量は大きくなる。
【0057】
一方、
図6に一点鎖線で示されるように、第2エアミックスドア52が全閉状態から開く方向へと変化する際には、ラックギア73の変位量Drに対する第2エアミックスドア52の開度Da2は、それらが比例関係をなす場合よりも大きくなる。また、第2エアミックスドア52の開度Da2が全開状態に近づくほど、ラックギア73の変位量に対する第2エアミックスドア52の開度Da2の変化量は小さくなる。
【0058】
なお、ラックギア73の変位量Drが「0%<Dr<100%」となる場合、すなわち第1エアミックスドア51及び第2エアミックスドア52のそれぞれの開度状態が中間状態となる場合には、第1エアミックスドア51及び第2エアミックスドア52のそれぞれの開度Da1,Da2は互いに異なっている。また、ラックギア73の変位量Drが0%のとき、第1エアミックスドア51及び第2エアミックスドア52のそれぞれの開度Da1,Da2は共に0%となる。すなわち、第1エアミックスドア51及び第2エアミックスドア52は同時に全閉状態となる。なお、ここでの「同時」とは、全閉状態になるタイミングが厳密に一致する場合に限らない。例えば寸法公差や個体差等により、第1エアミックスドア51及び第2エアミックスドア52が全開状態になるタイミングに若干のずれが生じるような状況も「同時」の意味に含まれるものとする。
【0059】
さらに、ラックギア73の変位量Drの変位量Drが100%のとき、第1エアミックスドア51及び第2エアミックスドア52のそれぞれの開度Da1,Da2は共に100%となる。すなわち、第1エアミックスドア51及び第2エアミックスドア52は同時に全開状態となる。ここでの「同時」の意味も上記と同様である。
【0060】
以上説明した車両用空調装置1によれば、以下の(1)〜(3)に示す作用及び効果を得ることができる。
【0061】
(1)
図6に示されるように、アクチュエータ70は、第1エアミックスドア51及び第2エアミックスドア52のそれぞれの開度Da1,Da2が異なるように第1エアミックスドア51及び第2エアミックスドア52のそれぞれの開閉動作を連動させる。
【0062】
詳しくは、アクチュエータ70は、第1エアミックスドア51及び第2エアミックスドア52のそれぞれの開度を全閉状態から開く方向へと変化させる際、第1エアミックスドア51の開度の変化量よりも第2エアミックスドア52の開度の変化量を大きくする。また、アクチュエータ70は、第1エアミックスドア51及び第2エアミックスドア52のそれぞれの開度を全開状態から閉じる方向へと変化させる際、第2エアミックスドア52の開度の変化量よりも第1エアミックスドア51の開度の変化量を大きくする。
【0063】
これにより、
図7に示されるように、第1空気通路11aを通じてデフロスタ吹き出し口14あるいはフェイス吹き出し口15から吹き出される空気の温度T1と、第2空気通路11bを通じてフット吹き出し口16から吹き出される空気の温度T2との間に差が生じる。そのため、車室内の上層には温度の低い外気を、また車室内の下層には温度の高い内気を循環させる内外気2層の流れを実現することができる。その結果、新鮮で低湿度な外気による防塵性の確保及び乗員のフレッシュ感の維持と、暖かい内気を運転者の足元に吹き出すことによる暖房性能の効率化との両立を図ることができる。
【0064】
(2)第1エアミックスドア51が全開状態あるいは全閉状態に達したとき、第2エアミックスドア52も全開状態あるいは全閉状態に達するため、構造を簡素化することができる。これは以下の理由による。
【0065】
例えば
図8に示されるように、第1エアミックスドア51が全開状態に達するラックギア73の変位量Dr1と、第2エアミックスドア52が全開状態に達するラックギア73の変位量Dr2とが異なる構造も考えられる。しかしながら、この構造を採用した場合、ラックギア73の変位量DrがDr1からDr2まで変化する間、第1エアミックスドア51は全開状態に達した後も変位し続けることになる。そのため、第1エアミックスドア51の変位を逃がす構造が別途必要となる。同様の課題は、第1エアミックスドア51及び第2エアミックスドア52が全閉状態となる際にも生じ得る。
【0066】
この点、本実施形態の車両用空調装置1では、第1エアミックスドア51及び第2エアミックスドア52が同時に全開状態及び全閉状態となるため、上記のような逃し構造が不要となる。よって、構造を簡素化することができる。
【0067】
(3)アクチュエータ70には、ラックギア73の移動をガイドするガイド部材74を設けた。これにより、第1ギア71とラックギア73とが歯合された状態、及び第2ギア72とラックギア73とが歯合された状態をより的確に保持することができる。よって、第1エアミックスドア51及び第2エアミックスドア52のそれぞれの開閉動作をより的確に連動させることができる。
【0068】
なお、上記実施形態は、以下の形態にて実施することもできる。
【0069】
・上記実施形態のアクチュエータ70では、第1ギア71と第2ギア72とを連結する連結部材としてラックギア73を用いたが、
図9に示されるような無端状のベルト76を用いてもよい。この場合、第1ギア71に代えて、円形ギア部71aを有する楕円状の第1プーリ77を用いる。また、第2ギア72に代えて、円形ギア部72aを有する楕円状の第2プーリ78を用いる。
【0070】
・アクチュエータ70は、例えば
図10に示されるような構造を採用することもできる。
図10に示されるように、この変形例のアクチュエータ70では、第1ギア71及び第2ギア72が卵型状をなしている。また、ラックギア73の一端部73eには、第1ギア71との歯合状態を維持可能な湾曲した第1ギア面73cが設けられている。ラックギア73の他端部73fには、第2ギア72との歯合状態を維持可能な湾曲した第2ギア面73dが設けられている。ラックギア73の中央部には、軸線mに並行な直線部73gが設けられている。ガイド部材74は、ラックギア73の一端部73eに接触する第1ガイド部材74aと、ラックギア73の直線部73gを挟み込む第2ガイド部材74bとからなる。第1ガイド部材74a及び第2ガイド部材74bはラックギア73の移動をガイドする。このようなアクチュエータ70によれば、第1エアミックスドア51及び第2エアミックスドア52のそれぞれの開度Da1,Da2を例えば
図11に示すように変化させることができる。そのため、上記実施形態に準じた作用及び効果を得ることが可能である。
【0071】
・第1ギア71及び第2ギア72のそれぞれの非円形ギア部71b,72bは楕円形状に限らない。例えば
図12に示されるように、非円形ギア部71b,72bは、周方向に沿って外径が徐々に増加する形状を有するものであってもよい。要は、非円形ギア部71b,72bは、非円形状であればよい。非円形ギア部71b,72bのそれぞれの形状を変化させることで、ラックギア73の変位量Drに対する第1エアミックスドア51及び第2エアミックスドア52のそれぞれの開度Da1,Da2の変化態様を任意に変更することが可能である。
【0072】
・第1ギア71及び第2ギア72は、非円形ギア部71b,72bをそれぞれ有するものに限らない。例えば第1ギア71及び第2ギア72には、非円形ギア部71b,72b に代えて、円形ギア部をそれぞれ形成する。第1ギア71及び第2ギア72のそれぞれの円形ギア部には部分的に歯の欠けた部分を設ける。そして、第1ギア71及び第2ギア72のそれぞれの円形ギア部にラックギア73を歯合させる。なお、ラックギア73において第1ギア71及び第2ギア72が歯合される部分には直線状の第1ギア面及び第2ギア面をそれぞれ形成する。このような構成によれば、例えば第1ギア71の歯の欠けた部分がラックギア73に噛み合う際には、ラックギア73が移動しないため、第2ギア72が回転しない。これにより、第1エアミックスドア51の開度Da1が変化している期間に、第2エアミックスドア52の開度Da2を変化させないようにすることができる。したがって、ラックギア73の変位量Drに対する第1エアミックスドア51及び第2エアミックスドア52のそれぞれの開度Da1,Da2を例えば
図8に示すように変化させることができる。このような構成であっても、上記実施形態の(1)の作用及び効果を得ることは可能である。同様の効果は、ラックギア73に歯の欠けた部分を設けた場合でも得ることが可能である。
【0073】
・第1ギア71及び第2ギア72においてラックギア73と噛み合う部分のギア形状は互いに異なる形状であってもよい。例えば第1ギア71及び第2ギア72のそれぞれの非円形ギア部71b,72bのいずれか一方のギア形状を円形にしてもよい。例えば第1ギア71の非円形ギア部71bを円形にした場合には、
図13(a)に示されるように、ラックギア73の変位量Drに対して比例関係を有するように第1エアミックスドア51の開度Da1を変化させることができる。また、例えば第2ギア72の非円形ギア部71bを円形にした場合には、
図13(b)に示されるように、ラックギア73の変位量Drに対して比例関係を有するように第2エアミックスドア52の開度Da2を変化させることができる。このように、第1ギア71においてラックギア73と噛み合う部分のギア形状を任意に変更することで、ラックギア73の変位量Drに対する第1エアミックスドア51の開度Da1の変化態様を任意に変更することが可能である。また、第2ギア72においてラックギア73と噛み合う部分のギア形状を任意に変更することで、ラックギア73の変位量Drに対する第2エアミックスドア52の開度Da2の変化態様を任意に変更することが可能である。要は、アクチュエータ70は、第1エアミックスドア51及び第2エアミックスドア52のそれぞれの開度Da1,Da2が異なるように第1エアミックスドア51及び第2エアミックスドア52のそれぞれの開閉動作を連動させるものであればよい。
【0074】
・第1エアミックスドア51はスライド移動により開閉動作を行うものに限らず、例えば第1ギア71と一体となって回動することにより開閉動作を行うものであってもよい。第2エアミックスドア52についても同様である。
【0075】
・アクチュエータ70は、モータ75の動力を第1ギア71に付与することで第1エアミックスドア51及び第2エアミックスドア52を開閉動作させるものに限らない。例えばモータ75により第2ギア72を回転させることで第1エアミックスドア51及び第2エアミックスドア52を開閉動作させてもよい。また、モータ75によりラックギア73を軸線mの方向に移動させることで第1エアミックスドア51及び第2エアミックスドア52を開閉動作させてもよい。
【0076】
・第1ギア71とラックギア73との歯合位置は任意に変更可能である。また、第2ギア72とラックギア73との歯合位置も任意に変更可能である。
【0077】
・アクチュエータ70は、モータ75を動力源とするものに限らない。例えば操作パネル105の温度設定スイッチとラックギア73とをワイヤにより機械的に連結する。そして、乗員による温度設定スイッチの操作に基づきラックギア73が軸線mに沿って移動することで、第1エアミックスドア51及び第2エアミックスドア52を開閉動作させてもよい。すなわち、第1エアミックスドア51及び第2エアミックスドア52は人力に基づき開閉動作するものであってもよい。
【0078】
・本発明は上記の具体例に限定されるものではない。すなわち、上記の具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、前述した各具体例が備える各要素及びその配置、材料、条件、形状、サイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、前述した実施形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。