特許第6442986号(P6442986)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6442986
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】眼内レンズ挿入器具
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/16 20060101AFI20181217BHJP
【FI】
   A61F2/16
【請求項の数】3
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-222146(P2014-222146)
(22)【出願日】2014年10月31日
(65)【公開番号】特開2016-86934(P2016-86934A)
(43)【公開日】2016年5月23日
【審査請求日】2017年10月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000135184
【氏名又は名称】株式会社ニデック
(72)【発明者】
【氏名】井上 隆紀
(72)【発明者】
【氏名】長坂 信司
(72)【発明者】
【氏名】夏目 明嘉
【審査官】 安田 昌司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−313130(JP,A)
【文献】 特開2013−154064(JP,A)
【文献】 特開2010−094414(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0256651(US,A1)
【文献】 特表平06−508363(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/16
A61F 9/00− 9/007
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも第1部材と第2部材とが接着されることで形成され、眼内への眼内レンズの挿入時に前記眼内レンズが通過する通過部を内部に有する挿入器具本体と、
溶媒となる液体に溶解することで、前記通過部の表面と前記眼内レンズとの間に生じる摩擦力を低下させる水溶性高分子であって,前記溶媒が乾燥することで接着性を発揮する水溶性高分子とを備え、
前記第1部材と前記第2部材との間に前記溶媒が乾燥してなる前記水溶性高分子が介在することにより、前記第1部材と前記第2部材とが接着されていることを特徴とする眼内レンズ挿入器具。
【請求項2】
請求項1に記載の眼内レンズ挿入器具であって、
前記通過部の表面の少なくとも一部に前記水溶性高分子が付着されていることを特徴とする眼内レンズ挿入器具。
【請求項3】
請求項1または2に記載の眼内レンズ挿入器具であって、
前記第1部材と前記第2部材とが接着する接着部位の少なくとも一部に、前記水溶性高分子が溶解された液状物質が入り込む隙間が形成されていることを特徴とする眼内レンズ挿入器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、患者眼へ眼内レンズを挿入するための眼内レンズ挿入器具関する。
【背景技術】
【0002】
患者眼へ眼内レンズを挿入するための眼内レンズ挿入器具が知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1の眼内レンズ挿入器具は、挿入筒部の基端に挿入器具本体を連結させることで形成されている(特許文献1の図2〜4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−255029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、十分な嵌合強度で部品同士を連結するためには、複雑な嵌合機構が必要になる場合がある。複雑な嵌合機構を設けることで、一例として、眼内レンズ挿入器具が大型化してしまう可能性、または、製造コストが増加してしまう可能性等があり得る。
【0005】
本開示は、部材が好適に接着されて製造される眼内レンズ挿入器具提供することを技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は以下のような構成を備えることを特徴とする。
(1) 眼内レンズ挿入器具であって、少なくとも第1部材と第2部材とが接着されることで形成され、眼内への眼内レンズの挿入時に前記眼内レンズが通過する通過部を内部に有する挿入器具本体と、溶媒となる液体に溶解することで、前記通過部の表面と前記眼内レンズとの間に生じる摩擦力を低下させる水溶性高分子であって,前記溶媒が乾燥することで接着性を発揮する水溶性高分子とを備え、前記第1部材と前記第2部材との間に前記溶媒が乾燥してなる前記水溶性高分子が介在することにより、前記第1部材と前記第2部材とが接着されていることを特徴とする眼内レンズ挿入器具。
【0007】
本開示によれば、部材が好適に接着されて製造される眼内レンズ挿入器具提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態の眼内レンズ挿入器具の外観概略図である。
図2】天板部を斜め下方からみた外観斜視図である。
図3図1のI−I断面図である。
図4図1のII−II断面図である。
図5】製造作業を説明する説明図である。
図6図5のIII−III断面であり、部分断面図である。
図7】変容例の天板部を用いた場合の説明図である。
図8】製造工程の作業を説明する説明図である。
図9】第1実施形態の製造工程のフローチャートである。
図10】第2実施形態の製造工程のフローチャートである。
図11】第3実施形態の製造工程のフローチャートである。
図12】製造工程の作業を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下図面を参照して、本開示における典型的な実施形態の一つについて説明する。図1は、本実施形態の眼内レンズ挿入器具1を斜め上方からみた外観概略図である。図2は、説明のために、図1の眼内レンズ挿入器具1に用いられている天板部30を取り外し、斜め下方からみた外観斜視図である。図3は、図1のI−I断面図である。図4は、図1のII−II断面図である。
【0010】
本実施形態の眼内レンズ挿入器具1は、一例として、挿入器具本体2、および押出部材12を備える。挿入器具本体2は、一例として本体10、天板部30、保持部材28を備えている。本体10は、一例として、挿入部20、載置部22、および保持部材26を備えている。挿入部20、載置部22、および保持部材26を、一体成形してもよい。このような眼内レンズ挿入器具1は、樹脂材料等を用いた射出成形品であってもよい。眼内レンズ挿入器具1が、例えば、樹脂の削り出しによる切削加工品であってもよい。
【0011】
本体10の挿入部20は、図4の断面において先端20aに向かうにつれて内径が徐々に小さくなる通路20bを備える中空の筒形状に形成されており、その先端20aに眼内レンズ100を外部に送出するための切欠き(ベベル)が形成されている。そして、挿入部20を通過した眼内レンズ100は、挿入部20の内壁面20cに沿って小さく折り曲げられて、先端20aの切欠きから外部に送出され、眼内に挿入される。
【0012】
本体10の載置部22は、挿入部20よりも押出部材12の押し出し方向の上流側(押出軸Aの先端側)の位置に形成されている。この載置部22は、押出部材12による眼内レンズ100の押し出し開始前において、眼内レンズ100が配置される空間(隙間)を備える部分である。そして、載置部22は、載置部本体24と、保持部材26と、保持部材28と、天板部30などを備えている。このような載置部22において、押出部材12により押し出される前の眼内レンズ100が、載置部本体24の内部にて、保持部材26と保持部材28により保持されつつ配置される。保持部材26は板形状であり、押出軸Aの先端側で載置部本体24に接続されている。保持部材26と載置部本体24との接続部は、押出軸Aと直交する方向に伸びる回動軸となる。保持部材26は、前述した回動軸によって、載置部本体24に対して回動可能とされている。また、保持部材26と載置部本体24とは嵌合部によって嵌合可能とされている。
【0013】
天板部30は、挿入部20の一部も構成しており、挿入部20と載置部22における天側の位置に配置されている蓋部材である。そして、天板部30は、一例として、図2に示すように、板状部32、嵌合部34、および溝36を備えている。嵌合部34は、本体10と嵌合する。本体10には、嵌合部34の形状に対応した陥没形状が形成されている。なお、天板部30を、樹脂材料(例えば、ポリプロピレン)を用いた射出成形品としてもよい。
【0014】
溝36は、板状部32に形成されており、板状部32のほぼ中央部から挿入部20にかけて形成されている。この溝36は、その軸線が押出部材12の押し出し方向に形成されており、押出部材12の押し出し方向を案内する。
【0015】
押出部材12は、眼内レンズ100の光学部110の外周部分を押して挿入部20内で眼内レンズ100を小さく折り曲げながら、眼内レンズ100を挿入部20の先端20aから挿入部20の外部へ押し出す押出部材である。押出部材12は、一例として、押圧部50、軸基部52、押出棒54、および先端部56を備えている。押圧部50は、眼内レンズ挿入器具1を使用する術者に押圧される部分である。軸基部52は、押圧部50に接続される部分である。押出棒54は、軸基部52に接続される部分である。先端部56は、押出棒54の先端部分に形成される部分である。このような構成の押出部材12は、本体10の基端部10aから挿入部20の先端20aまで繋がる通路の内部を、押出部材12の軸方向(押出軸A)に進退可能な状態で、本体10の内部に挿入されている。
【0016】
本実施形態の挿入器具本体2は、通過部11を有している。通過部11は、眼内レンズ100が射出される際に、眼内レンズ100が通過する部位である。通過部11は、載置部22の少なくとも一部から先端20aにかけて形成されている。載置部22に載置された眼内レンズ100は、押出部材12で押されると、通過部11を通過して先端20aの切欠きから射出される。本実施形態では、通過部11の少なくとも一部は、天板部30と本体10とによって形成されている。
【0017】
次いで、本実施形態で使用される眼内レンズ100について説明する。本実施形態で使用される眼内レンズ100は、光学部110と、一対の支持部である前方支持部112Aおよび後方支持部112Bと、が柔軟な素材で一体成形されたワンピースタイプの眼内レンズである。光学部110は、円盤形状に形成されている。また、前方支持部112Aと後方支持部112Bは、光学部110の外周部分に接続されている。押出部材12による眼内レンズ100の押し出し時において、押出部材12側に配置される後方支持部112Bは光学部110の外周部分の内側へ曲げられる(折り畳まれる)。
【0018】
<第1実施形態の製造方法>
次いで、本実施形態の眼内レンズ挿入器具1の、第1実施形態の製造方法を、図5図9を用いて説明する。図5は、図9で示すフローチャートのステップS102の工程で、本体10および天板部30へ液状物質WHaを付与する状態の一例を説明する説明図である。図9は、眼内レンズ挿入器具1の製造工程のフローチャートである。
【0019】
先ず、ステップS101で、作業者は、本体10と天板部30とを組み付ける。本実施形態のステップS101では、作業者は、天板部30の嵌合部34と本体10の図示なき嵌合部とを嵌合させて、本体10と天板部30とを組み付ける。ステップS101で用いる本体10および天板部30は、樹脂材料を用いて射出成形されている。
【0020】
なお、本実施形態のステップS101〜ステップS103においては、回動可能な保持部材26が開いた状態(保持部材26が載置部本体24から離れた状態)とされている。また、保持部材28は本体10(保持部材26)に組み付けられておらず、本体10に眼内レンズ100は充填されていない。
【0021】
次いで、ステップS102において、作業者は、挿入器具本体2へ液状物質WHaの付与を行う(図5参照)。より詳しくは、本実施形態においては、少なくとも、挿入部20の通路20b、天板部30の内面30a、および本体10と天板部30との接着部位39へ液状物質WHaを付与する。換言すると、作業者は、眼内への眼内レンズ100の挿入時に眼内レンズ100が通過する通過部11となる表面の少なくとも一部の箇所と、本体10と天板部30とが接着する接着部位39となる少なくとも一部の箇所とに液状物質WHaを付与する。一例として、本実施形態では、液状物質WHaが充填されたピペット701を作業者が操作することで、挿入器具本体2に液状物質WHaが付与される。
【0022】
水溶性高分子WHとして、液体と溶解した状態で、滑動性が得られる材料を選択することが好ましい。水溶性高分子WHとして、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリルアミド、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム、PVP(ポリビニルピロリドン)、MPC(2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン)、ポリビニルアルコール、ポリエチレンイミン、カルボキシメチルセルロース、デキストラン硫酸ナトリウム、ポリリン酸、酸化ポリエチレン、酸化ポリプロピレン、ヒアルロン酸ナトリウム等の多糖類、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリペプチドを使用してもよい。
【0023】
本実施形態においては、水溶性高分子WHとして、ヒアルロン酸ナトリウムを用いている。また、真水(液体)にヒアルロン酸ナトリウム(水溶性高分子WH)が溶解されることで液状物質WHaとされている。本実施形態においては、一例として、液状物質WHaの重量に含まれるヒアルロン酸ナトリウムの重量が0.25%とされている。水溶性高分子WHとして、液体と溶解した状態で滑動性が得られると共に、溶媒が乾燥することで接着性を発揮する材料が選択される。さらに、本実施形態で用いられる水溶性高分子WHは、生体内(本実施形態では眼内)に混入しても生体に無害なものが選択される。液状物質WHaに含まれる水溶性高分子WHの割合はこれに限るものでない。水溶性高分子WHで部材同士を接着できればよい。また、隙間Uaへ液状物質WHaが入り込めばよい。ステップS102の作業を行う前に、挿入部20の内壁面20cと内面30aとの少なくともいずれかの表面状態を粗く加工してもよい。例えば、挿入部20の内壁面20cと内面30aとの少なくともいずれかの表面を、周知のプラズマ処理を用いて加工してもよい。表面状態を粗く加工することで、挿入部20または天板部30へ、より好適に水溶性高分子WHを付与できる。
【0024】
作業者は、図5で示すように、天板部30の外面30bが下方を向くように本体10を支持する。本体10を支持するために、作業机、または支持工具を用いてもよい。作業者は、保持部材26を開くと形成される本体10の開口部へ、液状物質WHaが充填されたピペット701の先端を挿入する。作業者は、ピペット701の先端から液状物質WHaを流出させて、挿入器具本体2への液状物質WHaの付与を行う。より詳しくは、挿入部20の通路20b、天板部30の内面30a、および本体10と天板部30との接着部位39へ、液状物質WHaを付与する。液状物質WHaを付与した後、作業者は、天板部30の外面30bが下方を向くように挿入器具本体2の方向を維持したまま恒温槽へ入れる。恒温槽で、液状物質WHaが付与された挿入器具本体2に対して、加温加湿の処理が所定時間行われる。
【0025】
図6は、図5のIII−III断面の部分断面図である。本実施形態の挿入器具本体2は、天板部30と本体10(載置部本体24)とが前述した嵌合部34で嵌合されており、天板部30と本体10との間に幅PAで離間した隙間Uaが形成されている。作業者によって接着部位39の近傍へ付与された液状物質WHaは、毛細管現象によって隙間Uaへ流れ込む。つまり、天板部30と本体10との間に液状物質WHaが介在される。隙間Uaは、天板部30と本体10とを接着する際の、接着部位39の少なくとも一部となる。なお、内側(紙面上方)にて天板部30と本体10とをまたぐ液状物質WHaも、天板部30と本体10とを接着させる作用があるため、接着部位39の少なくとも一部となる。なお、本実施形態においては、離間距離が0.05mm以上かつ0.2mm以下となる隙間Uaを設けている。
【0026】
接着部位39の構造はこれに限るものではない。例えば、図7で例示する構造としてもよい。図7の接着部位39の構造は、図6で示した隙間Uaの形状を変更したものである。より詳しくは、内面側は、図6の隙間Uaよりも間隔を広げた隙間Ubが形成されている。隙間Ubに接続され、隙間Ubよりも外側に配置される隙間Ucは、隙間Ubよりも間隔を狭めた隙間が設けられている。隙間Ubは、図6の隙間Uaと同じ間隔(距離PA)の隙間が形成されている。隙間Ucに接続され、隙間Ucよりも外側に配置される隙間Udは、隙間Ucよりも間隔を狭めた隙間で形成されている。
【0027】
図7の隙間Uの形状とした場合には、図6の隙間Uの形状とした場合よりも、天板部30と本体10との間の隙間に介在する液状物質WHaの量が増えると考えられる。また、外側では、図6の隙間Uの形状よりも、天板部30と本体10との間の隙間に介在する液状物質WHaの量が減ると考えられる。したがって、隙間Uを介して外側から漏れ出る液状物質WHaの液量を、好適に抑制できると考えられる。なお、図6および図7で示した隙間U(隙間Ua〜Ud)の形状、および液状物質WHaの付与状態は一例であり、これに限るものではない。また、本実施形態においては、天板部30と本体10とを嵌合部34を用いて嵌合させた後、挿入器具本体2へ液状物質WHaを付与しているが、これに限るものではない。例えば、眼内レンズ挿入器具1が嵌合部34を備えない態様としてもよい。かかる態様においては、天板部30と本体10との位置関係を固定する工具703を用いて天板部30と本体10とを組み立てた後に、挿入器具本体2へ液状物質WHaを付与してもよい(図12参照)。
【0028】
次いでステップS103で、作業者は、恒温槽から挿入器具本体2を取り出して、挿入器具本体2の乾燥を行う。本実施形態の挿入器具本体2の乾燥は、先端20aを下方へ向けた状態で、所定時間、自然乾燥させる。なお、恒温オーブンに入れて挿入器具本体2を乾燥させてもよい。また、上方または水平方向へ先端20aを向けて、挿入器具本体2を乾燥させてもよい。なお、ステップS103における乾燥とは、液状物質WHaを構成するする液状物質のうち、水溶性高分子WHを溶融させている溶媒(本実施形態では水)を蒸発させる作業としている。乾燥が行われると、挿入器具本体2は、眼内レンズ100の挿入時に眼内レンズ100が通過する通過部11の表面の少なくとも一部と、本体10と天板部30とが接着する接着部位39の少なくとも一部とに、乾燥状態(固体)の水溶性高分子WHが付与された状態となる。つまり、乾燥状態の水溶性高分子WHによって、本体10と天板部30とが接着された状態となる。なお、「乾燥状態」とは、溶媒が完全に乾燥した状態に限定されることは無い。つまり、水溶性高分子WHが接着性を発揮する程度に溶媒が乾燥していればよい。
【0029】
以上説明したステップS101〜ステップS103の製造工程によって、挿入器具本体2への水溶性高分子WHの付与が完了する。その後、開かれている保持部材26へ眼内レンズ100を装着する作業、続けて、保持部材26を回動して閉じる作業、続けて、保持部材26へ保持部材28を装着する作業、続けて、挿入器具本体2への押出部材12を装着する作業、等を経て、眼内レンズ挿入器具1(眼内レンズ挿入システム)の組み立てが完了される。
【0030】
組み立てられた眼内レンズ挿入器具1は、輸送用の密閉容器へ入れられた後に滅菌処理される。使用現場では、術者が密閉容器から眼内レンズ挿入器具1を取り出し、天板部30に設けられている注入口から液状の滑動剤を挿入器具本体2の内部へ注入する。術者は、挿入器具本体2の内部へ滑動剤を注入した後に、押出部材12を押して眼内レンズ100を射出する。挿入器具本体2の内部へ液状の滑動剤が注入されることで、通過部11へ付与されている乾燥状態の水溶性高分子WHの少なくとも一部は、液状の滑動剤に溶解される。押出部材12で押される眼内レンズ100が通過部11を形成する内壁(例えば、内壁面20cおよび内面30a)と接した場合であっても、溶解された水溶性高分子WHによって接触抵抗が低減される。したがって、先端20aの開口部から眼内レンズ100が好適に射出される。
【0031】
<第2実施形態の製造方法>
次いで、図8図10を用いて、第2実施形態の製造方法を説明する。図8は、第2実施形態の製造作業を説明する説明図である。図10は、第2実施形態の製造工程のフローチャートである。
【0032】
先ず、ステップS201で、作業者は、本体10へ液状物質WHaを付与する。より詳しくは、図8(a)で示すように、液状物質WHaが充填されたピペット701の先端を、挿入部20の内部空間まで挿入し、挿入部20の内部空間へ液状物質WHaを充填する。第1実施形態の製造方法と同様に、液状物質WHaには水溶性高分子WHが溶解している。
【0033】
次いで、ステップS202において、作業者は、天板部30への液状物質WHaを付与する。より詳しくは、図8(b)で示すように、ビーカー702へ注入されている液状物質WHaの液中に、天板部30を挿入する。天板部30を図示なき工具で把持して液状物質WHaの液中に挿入する。天板部30は、所定時間、液状物質WHaの液中に挿入される。
【0034】
次いで、ステップS203において、作業者は、ステップS201で液状物質WHaを付与した本体10と、ステップS202で液状物質WHaを付与した天板部30とを組み付ける(図8(c)参照)。なお、ステップS203で組み付ける本体10と天板部30とは、ステップS203より前に付与された液状物質WHaが乾燥しない状態で組み付けられる。本体10と天板部30とが組み立てられた挿入器具本体2を、恒温槽へ入れる。恒温槽で、付与された液状物質WHaが乾燥する前の挿入器具本体2に対して、加温加湿の処理を所定時間行う。
【0035】
次いで、ステップS204において、作業者は、恒温槽から挿入器具本体2を取り出して、挿入器具本体2の乾燥を行う。以上のステップS201〜ステップS203の工程によって挿入器具本体2への水溶性高分子WHの付与が完了する。ステップS204の乾燥作業は、第1実施形態のステップS103と同様であり、ステップS204より後の作業は、第1実施形態のステップS103より後の作業と同様であるため、説明を省略する。なお、上記で例示した第2実施形態では、本体10と天板部30(つまり、接着される2つの部材の両方)に液状物質WHaが付与された後、両者が組み付けられる。従って、両者の接着の確実性が向上する。しかし、2つの部材の一方にのみ液状物質WHaを付与することも可能である(以下説明する第3実施形態でも同様)。
【0036】
<第3実施形態の製造方法>
次いで、図11を用いて、第3実施形態の製造方法を説明する。図11は、第3実施形態の製造工程のフローチャートである。
【0037】
先ず、ステップS301で作業者は、本体10へ液状物質WHaを付与する。次いで、ステップS302で、作業者は、天板部30への液状物質WHaを付与する。ステップS301,ステップS302の作業は、先に第2実施形態の製造方法として説明したステップS201およびステップS202と同様であるため、詳細説明を省略する。
【0038】
次いで、ステップS303およびステップS304において、作業者は、先のステップS301およびステップS302で付与した液状物質WHaを乾燥させる(つまり、液状物質WHa中の溶媒を乾燥させる)。
【0039】
次いで、ステップS305において、作業者は、本体10と天板部30とを組み付ける。次いで、ステップS306において、作業者は、本体10と天板部30とが組み立てられた挿入器具本体2に対して、加湿の処理を行う。本実施形態の加湿の処理には、一例として恒温槽が用いられる。かかる加湿の処理によって、接着部位39に付与された乾燥状態の水溶性高分子WHは、加湿として付与される液体と結合する。加湿の処理によって、本体10と天板部30との接着部位39の少なくとも一部となる隙間Uに、非乾燥状態の水溶性高分子WHが介在する状態になる。その結果、本体10と天板部30とが接着される。加湿の処理は、所定時間行われる。
【0040】
次いで、ステップS307において、作業者は、恒温槽から挿入器具本体2を取り出して、挿入器具本体2の乾燥を行う。以上のステップS301〜ステップS307の工程によって挿入器具本体2への水溶性高分子WHの付与が完了する。なお、ステップS307の乾燥作業は、第1実施形態のステップS103と同様であり、ステップS307より後の作業は、第1実施形態のステップS103より後の作業と同様であるため、説明を省略する。
【0041】
<作用及び効果>
本実施形態の眼内レンズ挿入器具1は、少なくとも第1部材(例えば天板部30)と第2部材(例えば本体10)とが接着されることで形成され、眼内への眼内レンズ100の挿入時に眼内レンズ100が通過する通過部11を内部に有する挿入器具本体2と、液体に溶解することで、通過部11の表面(例えば内壁面20c,内面30a)と眼内レンズ100との間に生じる摩擦力を低下させる水溶性高分子WHとを備えており、第1部材(例えば天板部30)と第2部材(例えば本体10)とが接着する接着部位39の少なくとも一部に付与された、乾燥状態の水溶性高分子WHによって、第1部材(例えば天板部30)と第2部材(例えば本体10)とが接着されている。
【0042】
かかる態様とすることで、例えば、部材同士を接続するための嵌合構造(嵌合部34)が不要になり、眼内レンズ挿入器具1の構成を簡素化できる。また、例えば、部材同士を接続するための嵌合構造(嵌合部34)を簡素化できるため、眼内レンズ挿入器具1の大型化を抑制できる。また、使用時に、眼内レンズ挿入器具1へ流入される液体で、接着部位39へ付与されている固体状態の水溶性高分子WHの少なくとも一部が溶解した場合であっても、溶解された水溶性高分子WHは、眼内レンズ100の好適な射出に寄与できるとものと考えられる。
【0043】
また、液体に溶解することで、部材同士間の摩擦力を低下させる水溶性高分子WHは、眼内レンズ、もしくは眼内レンズ挿入器具の製造現場で他の目的として用いられる可能性も考えられる。例えば、眼内レンズ挿入器具の種類に応じて、眼内レンズ挿入器具1に付与する水溶性高分子を異ならせる場合も考えられる。液体に溶解することで部材同士間の摩擦力を低下させる水溶性高分子WHを部材同士の接着に用いることで、眼内レンズ挿入器具1の製造に使用する部材の種類の増加を抑制でき、眼内レンズ挿入器具1を製造する際の部材の管理が容易になる。例えば、通過部11の表面へ付着させる水溶性高分子WHと部品同士を接着させる水溶性高分子WHとを異なる種類の水溶性高分子WHとしてもよい。液体に溶解することで、部材同士間の摩擦力を低下させる複数種類の水溶性高分子WHを、眼内レンズ挿入器具1の異なる箇所へ種類を使い分けて付与する(付与する箇所に応じて好適な水溶性高分子WHを選択して付与する)ことで、眼内レンズ、もしくは眼内レンズ挿入器具の製造現場で用いる(管理する)水溶性高分子WHの種類の増加を抑制できる。
【0044】
本実施形態の眼内レンズ挿入器具1は、通過部11の表面(例えば内壁面20c,内面30a)の少なくとも一部に水溶性高分子WHが付着されている。
【0045】
かかる態様とすることで、眼内レンズ100は、より好適に通過部11を通過できる。眼内レンズ挿入器具1の構成を簡素化できる。また、通過部11の表面と眼内レンズ100との間に生じる摩擦力を低下させるための材料と、接着に用いるための材料とを同一の材料としているため、眼内レンズ挿入器具1を製造する際の部材の管理が容易になる。例えば、眼内レンズ挿入器具1を安価に製造でき、眼内レンズ挿入器具1を安価に提供できる。
【0046】
また、本実施形態の眼内レンズ挿入器具1は、第1部材(例えば天板部30)と第2部材(例えば本体10)とが接着する接着部位39の少なくとも一部に、水溶性高分子WHが溶解された液状物質WHaが入り込む隙間U(隙間Ua,隙間Ub)が形成されており、乾燥状態の水溶性高分子WHは、隙間Uに入り込んで第1部材(例えば天板部30)と第2部材(例えば本体10)とを接着している。
【0047】
かかる態様とすることで、通過部11の表面へ付与する水溶性高分子WHによって第1部材(例えば天板部30)と第2部材(例えば本体10)とを好適に接着できる。例えば、通過部11の表面だけでなく、通過部11を形成する部材の内部(深部)でも第1部材(例えば天板部30)と第2部材(例えば本体10)とが水溶性高分子WHで接着される。第1部材(例えば天板部30)と第2部材(例えば本体10)との接着に隙間Uを用いることで、第1部材(例えば天板部30)と第2部材(例えば本体10)とを通過部11の表面のみで接着する場合に対して強固に接着できる。
【0048】
また、本実施形態の眼内レンズ挿入器具1は、水溶性高分子WHが溶解された液状物質WHaが毛細管現象によって入り込む間隔で隙間U(隙間Ua,隙間Ub)が形成されている。
【0049】
かかる態様とすることで、水溶性高分子WHが溶解された液状物質WHaを接着部位39へ好適に付与できる。例えば、眼内レンズ挿入器具1の製造時に、複雑な作業を要することなく接着部位39へ水溶性高分子WHを付与できる。また、例えば、毛細管現象を用いることで、液状物質WHaを流し込むために形成される通過部11の陥没形状または間隙形状の大きさを抑制できる。眼内レンズ100が通過部11を移動する際に、部品同士の接着に用いる陥没形状または間隙形状の箇所で引っ掛かる事象を抑制できる。
【0050】
また、本実施形態の眼内レンズ挿入器具1は、第1部材(例えば天板部30)と第2部材(例えば本体10)とを嵌合するための嵌合部34を有しており、第1部材(例えば天板部30)と第2部材(例えば本体10)とが嵌合部34で嵌合した状態で、第1部材(例えば天板部30)と第2部材(例えば本体10)とが水溶性高分子WHで接着されている。
【0051】
かかる態様とすることで、水溶性高分子WHによる接着力に加えて、嵌合部34による嵌合力を用いて第1部材(例えば天板部30)と第2部材(例えば本体10)とを接続できる。例えば、眼内レンズ挿入器具1の製造時に、複雑な組立設備を要することなく第1部材(例えば天板部30)と第2部材(例えば本体10)とを好適な接続力で接続できる。例えば、嵌合部34の嵌合力みで第1部材(例えば天板部30)と第2部材(例えば本体10)とを接続する場合に対して、嵌合部34の大きさおよび数の少なくともいずれかを減少させることが容易になるので、眼内レンズ挿入器具1を小型化できる。眼内レンズ挿入器具1の取り扱いが容易になる。
【0052】
また、本実施形態の眼内レンズ挿入器具1の製造方法は、第1態様の製造方法として、少なくとも第1部材(例えば天板部30)と第2部材(例えば本体10)とが接着されることで形成され、眼内への眼内レンズ100の挿入時に眼内レンズ100が通過する通過部11を内部に有する挿入器具本体2を備えた眼内レンズ挿入器具1の製造方法であって、第1部材(例えば天板部30)と第2部材(例えば本体10)とを組み付ける第1ステップと、液体に溶解することで通過部11の表面の滑性を増加させると共に、溶媒が乾燥することで接着性を発揮する水溶性高分子WHが溶解された液状物質WHaを、第1ステップで第1部材(例えば天板部30)と第2部材(例えば本体10)とが組み付けられた状態で、通過部11の表面の少なくとも一部、および、第1部材(例えば天板部30)と第2部材(例えば本体10)とが接着される接着部位39の少なくとも一部に付与する第2ステップと、第2ステップで付与された液状物質WHa中の溶媒を乾燥させる第3ステップと、を含む。
【0053】
かかる態様とすることで、第1部材(例えば天板部30)と第2部材(例えば本体10)とを組み付けた後であっても、通過部11の表面の滑性を水溶性高分子WHで増加できると共に、第1部材(例えば天板部30)と第2部材(例えば本体10)とを水溶性高分子WHで接着できる。第1部材(例えば天板部30)と第2部材(例えば本体10)とを分離させた状態で製造工程が進む場合に対して、第1部材(例えば天板部30)と第2部材(例えば本体10)とを組み立てることで、作業で取り扱う部材の数(種類)が減るため、製造中の部品の管理または取り扱いが容易になる。
【0054】
また、本実施形態の眼内レンズ挿入器具1の製造方法は、第2態様の製造方法として、前述した第1態様の製造方法において、第1ステップでは、第1部材(例えば天板部30)と第2部材(例えば本体10)とが工具703によって組み付けられて保持される。
【0055】
かかる態様とすることで、例えば、眼内レンズ挿入器具1に、第1部材(例えば天板部30)と第2部材(例えば本体10)とを嵌合するため嵌合部34を形成しなくとも、工具703を用いて第1部材(例えば天板部30)と第2部材(例えば本体10)とを近接維持させることで、第1部材(例えば天板部30)と第2部材(例えば本体10)とを容易に接着できる。例えば、眼内レンズ挿入器具1を簡素な構成とすることができ、安価に提供できる。
【0056】
また、本実施形態の眼内レンズ挿入器具1の製造方法は、第3態様の製造方法として、前述した第1態様または第2態様の製造方法の第2ステップでは、液状物質WHaが毛細管現象によって接着部位39の少なくとも一部に付与される。
【0057】
かかる態様とすることで、第1部材(例えば天板部30)と第2部材(例えば本体10)とを組み付けた後であっても、水溶性高分子WHが溶解された液状物質WHaを接着部位39へ好適に付与できる。例えば、眼内レンズ挿入器具1の製造時に、複雑な作業を要することなく接着部位39へ水溶性高分子WHを付与できる。また、例えば、毛細管現象によって接着部位39へ液状物質WHaが自然に流れ込む(付与される)ため、第1部材(例えば天板部30)と第2部材(例えば本体10)との接着不良を抑制できる。
【0058】
また、本実施形態の眼内レンズ挿入器具1の製造方法は、第4態様の製造方法として、少なくとも第1部材(例えば天板部30)と第2部材(例えば本体10)とが接着されることで形成され、眼内への眼内レンズ100の挿入時に眼内レンズ100が通過する通過部11を内部に有する挿入器具本体2を備えた眼内レンズ挿入器具1の製造方法であって、液体に溶解することで通過部11の表面の滑性を増加させると共に、溶媒が乾燥することで接着性を発揮する水溶性高分子WHが溶解された液状物質WHaを、第1部材(例えば天板部30)および第2部材(例えば本体10)のうち、通過部11の表面を形成する部位の少なくとも一部、および、第1部材(例えば天板部30)と第2部材(例えば本体10)とが接着される接着部位39の少なくとも一部に付与する第1ステップと、第1ステップで付与された液状物質WHa中の溶媒が乾燥する前に、第1部材(例えば天板部30)と第2部材(例えば本体10)とを組み付ける第2ステップと、第2ステップによって第1部材(例えば天板部30)と第2部材(例えば本体10)とが組み付けられた状態で、液状物質WHa中の溶媒を乾燥させる第3ステップとを含む。
【0059】
かかる態様とすることで、第1ステップの後に、接着部位39へ水溶性高分子WHを付与し直す作業を要することなく、眼内レンズ挿入器具1を製造できる。例えば、接着部位39へ水溶性高分子WHを付与し直す作業に要する時間を抑制でき、眼内レンズ挿入器具1を安価に製造できる。
【0060】
また、本実施形態の眼内レンズ挿入器具1の製造方法は、第5態様の製造方法として、前述した第4態様の第1ステップでは、第1部材(例えば天板部30)および第2部材(例えば本体10)の両方に液状物質WHaが塗布される。
【0061】
かかる態様とすることで、例えば、液状物質WHaを複数の部材へ付与する場合であっても、第1ステップの後に、接着部位39へ水溶性高分子WHを付与し直す作業を要することなく、眼内レンズ挿入器具1を製造できる。例えば、各々部品の接着部位39へ液状物質WHaを付与しておくことで、第1部材(例えば天板部30)と第2部材(例えば本体10)との接着不良の抑制が可能と考えられる。
【0062】
また、本実施形態の眼内レンズ挿入器具1の製造方法は、第6態様の製造方法として、少なくとも第1部材(例えば天板部30)と第2部材(例えば本体10)とが接着されることで形成され、眼内への眼内レンズ100の挿入時に眼内レンズ100が通過する通過部11を内部に有する眼内レンズ挿入器具1の製造方法であって、液体に溶解することで通過部11の表面の滑性を増加させると共に、溶媒が乾燥することで接着性を発揮する水溶性高分子WHが溶解された液状物質WHaを、第1部材(例えば天板部30)および第2部材(例えば本体10)のうち、通過部11の表面を形成する部位の少なくとも一部、および、第1部材(例えば天板部30)と第2部材(例えば本体10)とが接着される接着部位39の少なくとも一部に付与する第1ステップと、第1ステップで付与された液状物質WHa中の溶媒を乾燥させる第2ステップと、第2ステップの後に、第1部材(例えば天板部30)と第2部材(例えば本体10)とを組み付ける第3ステップと、第3ステップの後に、少なくとも接着部位39に付与された水溶性高分子WHを加湿する第4ステップと、を含む。
【0063】
かかる態様とすることで、例えば、第1部材(例えば天板部30)と第2部材(例えば本体10)の各々へ一旦、水溶性高分子WHの付与を行い乾燥させた後であっても、接着部位39へ水溶性高分子WHを付与し直す作業を要することなく、第1部材(例えば天板部30)と第2部材(例えば本体10)とを容易に接着できる。例えば、第1部材(例えば天板部30)への水溶性高分子WHの付与と、第2部材(例えば本体10)への水溶性高分子WHの付与を独立した製造工程で行える。例えば、第1部材(例えば天板部30)または第2部材(例えば本体10)を、最適な製造設備を用いて水溶性高分子WHの付与を行い乾燥させた後に、乾燥した部品を移動させて、接着部位39へ水溶性高分子WHを付与し直すことなく、第1部材(例えば天板部30)と第2部材(例えば本体10)とが接着可能な状態になる。また、水溶性高分子WHが乾燥する前に複数の部材を組み付ける場合に比べて、部材の取り扱いが容易になる。
【0064】
また、本実施形態の眼内レンズ挿入器具1の製造方法は、第6態様の製造方法として、前述した第5態様の第4ステップの後で実行されるステップであり、前述した第5態様の製造方法の第3ステップによって加湿された水溶性高分子WHを乾燥させる第5ステップをさらに含む。
【0065】
かかる態様とすることで、第1部材(例えば天板部30)と第2部材(例えば本体10)とを組み付けた後に、水溶性高分子WHの付与を行わなくとも、第1部材(例えば天板部30)と第2部材(例えば本体10)とが接着された乾燥状態の通過部11を製造できる。複雑な工程を要することなく、第1部材(例えば天板部30)と第2部材(例えば本体10)とを接着できる。また、例えば、部材に付与される水溶性高分子WHが乾燥状態で部材を移動できる。組立中の部材の取り扱いが容易になる。
【0066】
なお、本実施形態の眼内レンズ挿入器具1は、本体10と天板部30とを水溶性高分子WHを用いて接着するが、接着する部品はこれに限るものではない。例えば、載置部本体24と保持部材26とを水溶性高分子WHで接着してもよい。また、本体10の内部に位置させる部材を本体10(例えば、本体10の内壁)へ水溶性高分子WHで接着してもよい。
【0067】
なお、眼内レンズ挿入器具1の内部に眼内レンズ100を予め充填させた状態で出荷する眼内レンズ挿入システムにも適用できる。また、水溶性高分子WHの替わりに、通過部11の表面と眼内レンズ100との間に生じる摩擦力を低下させる他の材料を用いてもよい。かかる他の材料として、生体適合性が良好な材料から選択することが好ましい。
【0068】
なお、本実施形態ではワンピースタイプの眼内レンズ100を用いて説明したが、眼内レンズの種類はこれに限るものではない。例えば、光学部110と、髭状の支持部とが別部材で構成されるスリーピースタイプの眼内レンズにも適用できる。また、例えば、オープンループタイプの支持部を備えない眼内レンズにも適用できる。
【0069】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲及びこれと均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0070】
1 :眼内レンズ挿入器具
2 :挿入器具本体
10 :本体
11 :通過部
20c :内壁面
30 :天板部
30a :内面
100 :眼内レンズ
WH :水溶性高分子
WHa :液状物質
U :隙間
図1
図2
図3
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