【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成25年度、経済産業省「エネルギー使用合理化技術開発等(未利用熱エネルギー革新的活用技術研究開発)(国庫債務負担行為に係るもの)」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明について説明する。なお、以下に示す形態は本発明の例示であり、本発明は以下に示す形態に限定されない。
【0019】
1.温度応答性吸湿材料
本発明の第1の態様は、平均細孔径が2nm以上50nm未満であるメソ多孔体の細孔内部に感温性分子が化学結合されている温度応答性吸湿材料である。
【0020】
図1は、本発明の一実施形態に係る温度応答性吸湿材料の一次粒子(温度応答性吸湿材料粒子10)の模式図である。温度応答性吸湿材料粒子10は、メソ多孔体の一次粒子(メソ多孔体粒子1)の細孔3内部に感温性分子4(
図1には不図示)が化学結合されてなるものである。
図1(a)は、メソ多孔体粒子1の細孔3の開口方向から見た温度応答性吸湿材料粒子10(
図1において、外観上メソ多孔体粒子1と同一)の模式図であり、
図1(b)は
図1(a)のIb−Ib線に沿った断面図である。
図1(a)及び(b)に示すように、メソ多孔体粒子1は、粒子骨格2及び複数の細孔3を有する。
【0021】
図2(a)は
図1(b)にIIaで示した領域の拡大図である。
図2(a)に示すように、感温性分子4は、メソ多孔体粒子1の粒子骨格2と化学結合(
図2(a)にXで示す。)されており、細孔3の内部に均一に保持されている。
このような形態の温度応答性吸湿材料粒子10からなる温度応答性吸湿材料は、例えば、本発明の第2の態様に係る温度応答性吸湿材料の製造方法によって作製することができる。
【0022】
2.温度応答性吸湿材料の製造方法
本発明の第2の態様は、平均細孔径2nm以上50nm未満であり、表面に官能基を有するメソ多孔体と、上記官能基とカップリング反応可能な官能基を有する感温性分子とを、活性化剤及びカップリング剤を含む溶媒中でカップリング反応させる工程を有する、温度応答性吸湿材料の製造方法である。
本発明の製造方法によれは、感温性分子をメソ多孔体の細孔内に均一に保持させることが可能である。
【0023】
非特許文献1に記載されている複合シリカゲルの製造方法においては、感温性高分子のモノマーと重合開始剤との混合溶液にメソポーラスシリカを含浸した後、加熱重合することによりメソ多孔体の細孔内に感温性高分子を保持させている。このような方法では、初期に細孔内に導入されたモノマーが重合した後、さらに細孔内にモノマーや重合剤を導入することが、一般に嵩高い感温性高分子の立体障害により困難であった。そのため、非特許文献1に記載されている複合シリカゲルでは、メソポーラスシリカゲルの細孔内に感温性高分子が均一に保持されておらず、感温性高分子の保持量が不十分であるため、温度変化による吸湿特性が小さいものと考えられる。
【0024】
これに対し、本発明の製造方法では、感温性分子モノマーを予め重合させて感温性分子を作製し、該感温性分子の官能基と、所定の平均細孔径を有するメソ多孔体の表面の官能基とを化学結合させることにより、感温性分子をメソ多孔体の細孔内に均一に、かつ従来よりも多く保持させることができるため、温度変化による吸湿特性の変化を大きくすることが可能である。このような特性を有する温度応答性吸湿材料は、従来材よりも広い温度範囲及び相対湿度の範囲において、吸湿及び放湿(再生)を行うことが可能であるため、従来材よりも汎用性が高い除湿材として採用可能である。
【0025】
図3は、本発明の製造方法の一実施形態を概念的に示す図である。
図3に示される製造方法では、メソ多孔体と感温性分子とを原料とし、これらを活性化剤及びカップリング剤の存在下でカップリング反応させることにより、温度応答性吸湿材料を製造する。
以下、温度応答性吸湿材料の製造方法について、
図2を参照しつつ、各構成について説明する。
【0026】
2.1.メソ多孔体
本発明の製造方法に用いるメソ多孔体は平均細孔径が2nm以上50nm未満である細孔(メソ孔)を有する多孔体である。本発明に用いることのできるメソ多孔体は、このような細孔(メソ孔)を有するものであれば特に限定されず、特開平11−114410号公報に記載のメソ多孔体等を使用することができる。なお、本発明の製造方法により作製される温度応答性吸湿材料の吸湿性を向上させる観点からは、メソ多孔体の平均細孔径が2nm以上30nm以下であることが好ましく、2nm以上10nm未満であることがより好ましく、2nm以上4nm以下であることがさらに好ましい。
【0027】
図2(b)は、感温性分子4が化学結合していないメソ多孔体粒子1の
図2(a)と同一の視点から見た図である。
図2(b)に示したように、メソ多孔体粒子1はその粒子骨格2の表面に、後述する感温性分子4の官能基4aとカップリング反応可能な結合性の官能基2aを有する。官能基2aは、感温性分子4の官能基4aとカップリング反応し、
図2(a)に示したように、化学結合Xを形成することができる。従って、メソ多孔体1に感温性分子4を強固に保持させることができる。メソ多孔体が表面に有する結合性の官能基としては、例えば、アミノ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、エポキシ基、ビニル基、イソシアネート基、チオール基、スルフィド基、ウレイド基、アクリロキシ基、メタクリロキシ基等が挙げられる。
【0028】
2.2.感温性分子
本発明の製造方法に用いる感温性分子は水に対するLCSTを有し、LCSTより低温側では親水性を示し、LCSTより高温側では疎水性を示す分子である。
感温性分子は、このような性質を有する分子であれば特に限定されないが、後述する温度応答性吸湿材料の製造方法によって、感温性分子を平均細孔径が2nm以上50nm未満であるメソ多孔体の細孔内に導入させやすくする観点から、数平均分子量が2000以上5000以下であることが好ましい。このような感温性分子としては、例えば、D. Roy, W. L. A. Brooks and B. S. Sumerlin, Chem. Soc. Rev., 2013, 42, 7214-7243.に記載の感温性高分子を構成するモノマーを構成単位とするオリゴマーが挙げられ、具体的には、N−イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)オリゴマー、N−n−プロピルアクリルアミド(NNPAM)オリゴマー、N−シクロプロピルアクリルアミド(NCPAM)オリゴマー、N,N−ジメチルアクリルアミド(DEAM)オリゴマー等が挙げられる。これらは、それぞれ異なるLCSTを有するため、異なる感温性分子を採用することにより、任意の温度で吸湿特性が変化する温度応答性吸湿材料を作製することが可能である。
【0029】
図2(c)は、
図2(a)及び(b)と同一の視点において、細孔3内に、感温性分子4、活性化剤5、及び、カップリング剤6が導入されている様子を示す図である。メソ多孔体の細孔内に、感温性分子、活性化剤、及び、カップリング剤を導入する方法は特に限定されず、例えば、メソ多孔体、感温性分子、活性化剤、及び、カップリング剤を適当な溶媒に分散させ、メソ多孔体の細孔内に、感温性分子、活性化剤、及び、カップリング剤を含浸させる方法が挙げられる。このとき、メソ多孔体の細孔内へ各物質の導入を促進するため、減圧、撹拌等を行ってもよい。
【0030】
感温性分子は、上記メソ多孔体表面の官能基とカップリング反応可能な官能基を有する。これにより、メソ多孔体表面の官能基と反応して化学結合を形成することができるため、メソ多孔体に感温性分子を強固に保持させることができる。
図2(c)に示す例では、感温性分子4がその一端に、メソ多孔体表面の官能基2aとカップリング反応可能な官能基4aを有している。感温性分子が有する官能基は、メソ多孔体表面の官能基とカップリング反応可能なものであれば特に限定されないが、例えば、メソ多孔体表面がアミノ基を有している場合、カルボキシル基、イソシアネート基、エポキシ基、ビニル基、カルボニル基、ヒドロキシル基等であることが好ましい。なお、ビニル基、ヒドロキシル基は、直接カップリング反応はできないが、別の反応を経由してカップリング反応可能な官能基(カルボキシル基等)に変換されてカップリング反応が起きる。このように、「カップリング反応可能な官能基」には、間接的にカップリング反応が起きる官能基も含む。
【0031】
感温性分子が有する官能基は、予め付与された、本来感温性分子が有さない官能基であってもよい。また、上記感温性分子は、上記メソ多孔体表面の上記官能基とカップリング反応可能な上記感温性分子の上記官能基を、上記感温性分子の端部に有していることが好ましい。
感温性分子には、本来の構造として、メソ多孔体表面の官能基とカップリング反応可能な官能基を有さないものや、カップリング反応可能な官能基を複数有するものがある。メソ多孔体表面の官能基とカップリング反応可能な官能基を有さない感温性分子を用いる場合には、カップリング反応の前に、メソ多孔体表面の官能基とカップリング反応可能な官能基を、感温性分子に予め付与しておくことにより、メソ多孔体表面の官能基とカップリング反応させることが可能となる。また、メソ多孔体表面の官能基とカップリング反応可能な官能基を複数有する感温性分子を用いる場合には、本来感温性分子が有する官能基と異なる官能基を予め所望の箇所に付与することで、メソ多孔体表面の官能基と感温性分子の複数の官能基とがカップリング反応してしまって、感温性分子の動きが妨げられることを防ぐことができる。感温性分子に、本来感温性分子が有さない官能基を付与する方法は特に限定されず、従来公知の方法で行えばよい。
感温性分子が、メソ多孔体表面の官能基とカップリング反応可能な官能基を、感温性分子の端部に有していることにより、感温性分子の動きを妨げることなく、メソ多孔体表面に十分な量の感温性分子に固定させることが可能となる。なお、「感温性分子の動き」とは、温度応答性に必須の動きのことであり、LCSTより低温では分子鎖が伸びた状態で水和状態となり、LCSTより高温では分子鎖が団子状態になって脱水和状態になることを意味する。
【0032】
2.3.活性化剤
本発明の製造方法に用いる活性化剤は、カップリング反応において、メソ多孔体表面又は感温性分子の官能基を活性化し、カップリング剤とともに用いることにより、カップリング反応を促進する試薬である。例えば、メソ多孔体表面の官能基がアミノ基であり、感温性分子の有する官能基がカルボキシル基である場合に用いることができる活性化剤としては、カルボン酸の活性化試薬であるN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、1−ヒドロキシ−7−アザベンゾトリアゾール(HOAt)、ペンタフルオロフェノール等が挙げられる。
【0033】
2.4.カップリング剤
本発明の製造方法に用いるカップリング剤は、カップリング反応において、メソ多孔体表面又は感温性分子の官能基を活性化し、カップリング反応を進行させる試薬である。例えば、メソ多孔体表面の官能基がアミノ基であり、感温性分子の有する官能基がカルボキシル基である場合には、付加脱離反応を促進する脱水縮合剤であることが好ましく、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)等のカルボジイミド系縮合剤が挙げられる。
【0034】
2.5.カップリング反応
本発明の製造方法におけるカップリング反応の種類は、活性化剤及びカップリング剤の存在下において、メソ多孔体表面の官能基と感温性分子の有する官能基とが選択的に反応し、化学結合を形成するものであれば特に限定されるものではない。
【0035】
図2(d)は、
図2(a)〜(c)と同一の視点において、カップリング反応が一部進行したときの様子を模式的に示す図である。
図2(d)に示したカップリング反応は付加脱離反応であり、メソ多孔体粒子1の粒子骨格2の表面に有する官能基2aと感温性分子4の官能基4aとは1:1でカップリングしている。
付加脱離反応においては、メソ多孔体表面又は感温性高分子の官能基と活性化剤又はカップリング剤とが反応して生成される中間体や他の副生成物が種々生成され得るが、ここでは形式的に、メソ多孔体粒子1の粒子骨格2の表面に有する官能基2aの一部と、感温性高分子4の官能基4aの一部とが結合し、脱離基7が形成されるものとみなす。例えば、官能基2aがアミノ基であり、官能基4aがカルボキシル基である場合には、形式的に脱離基7として水分子が脱離したみなすことができる。この場合、化学結合Xとしてアミド結合が形成される。
【0036】
カップリング反応における反応温度及び反応時間は、カップリング反応の種類、使用する活性化剤及びカップリング剤の種類によって適宜設定されるものである。例えば、メソ多孔体表面の官能基がアミノ基であり、感温性分子の有する官能基がカルボキシル基である場合には、0℃〜80℃の温度範囲において、24〜48時間反応させることにより、カップリング反応(付加脱離反応)を完了させることができる。付加量が不十分な場合は、カップリング反応工程を繰り返してもよい。
【0037】
メソ多孔体に導入される感温性分子の導入量は、温度変化による吸湿特性の変化を大きくする観点から、5.2質量%以上21.4質量%以下であることが好ましく、8.4質量%以上18.9質量%以下であることがより好ましい。なお、感温性分子は、メソ多孔体の細孔以外の表面領域にも保持されていてもよい。
【実施例】
【0038】
<実施例1>
[温度応答性吸湿材料の合成]
以下に示す主な原料を用いて、下記導入工程(1)〜(8)により、実施例1に係る温度応答性材料を合成した。
【0039】
(主な原料)
・メソ多孔体・・・球状アミノプロピルシリカゲル(ジーエルサイエンス株式会社)
平均粒径:10μm
比表面積:412m
2/g
平均細孔径:10.1nm
・感温性分子・・・カルボキシル終端N−イソプロピルアミド(NIPAM)オリゴマー
(シグマアルドリッチ)
数平均分子量:2,000、5,000の2種類
(導入工程)
(1)300m1四つ口フラスコにメソ多孔体4.50g、感温性分子3.60g、ヒドロキシスクシンイミド(NHS)0.26g、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)0.42g、ジメチルホルムアミド(DMF)75m1を投入した。
(2)メソ多孔体の空孔部の脱気を行うため、スターラーチップで撹拌しながら、5分間減圧したのち、5分間アルゴンを流量50ml/分にてフローさせた。この操作を計5回繰り返し、脱気を行った。
(3)アルゴンを流量50ml/分にてフローしながら0℃に冷却、24時間保持した。
(4)イオン交換水525mlに反応液を投入し、容量50mlの遠沈管12本に入れて15000rpmで2分遠心分離した。
(5)上澄みを捨て、遠沈管それぞれにイオン交換水を45ml投入し、15000rpmで5分遠心分離した。
(6)上澄みを捨て、遠沈管それぞれにイオン交換水を45ml投入し、15000rpmで7分遠心分離した。
(7)上澄みを捨て、遠沈管それぞれにイオン交換水を45ml投入し、15000rpmで10分遠心分離した。
(8)得られた沈殿を70℃で12時間減圧乾燥し、実施例1に係る温度応答性材料の粉末を得た。
【0040】
[評価方法]
(感温性分子の導入量)
感温性分子を導入する前のメソ多孔体及び感温性分子を導入した後の温度応答性吸湿材料の重量を測定した。その後、該メソ多孔体及び該温度応答性吸湿材料を、それぞれ蓋付きアルミナ容器に入れ、大気中1,000℃で24時間加熱し、残留したシリカ分の重量を測定した。加熱前後の重量からメソ多孔体及び温度応答性吸湿材料の重量減少率を測定し、温度応答性吸湿材料の重量減少率からメソ多孔体の重量減少率を引くことにより、感温性分子の導入量を算出した。結果を表1に示す。
(水蒸気吸着等温線)
BELSORP−max(日本ベル(株)製)を用いて、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)(PNIPAM)のLCST(32℃)より低温(20℃)および高温(50℃)における水蒸気吸着等温線を測定した。結果を
図4に示す。
また、各温度における最大吸着量の50%を吸着する際の相対湿度Rh
50(20℃の時をRh
50(L)、50℃の時をRh
50(H)とする。)を測定し、Rh
50の温度変化(Rh
50(H)−Rh
50(L))を求めた。Rh
50(L)及びRh
50(H)を
図4に示し、測定結果を表2に示す。また、
図12に、Rh
50(H)−Rh
50(L)を感温性分子の導入量に対してプロットした図を示す。
【0041】
<実施例2>
[温度応答性吸湿材料の合成]
実施例1における導入工程(3)を下記(3)´とし、導入工程(8)で得られた粉末を回収して(1)〜(8)を繰り返した以外は、実施例1と同様にして、実施例2に係る温度応答性吸湿材料を合成した。
(3)´アルゴンを流量50ml/分にてフローしながら60℃に加熱、24時間保持した後、自然冷却させた。
【0042】
[評価方法]
(感温性分子の導入量)
実施例1と同様に感温性分子の導入量を算出した。結果を表1に示す。
(水蒸気吸着等温線)
実施例1と同様に水蒸気吸着等温線及びRh
50を測定した。結果を
図5、12及び表2に示す。
(メソ多孔体中の感温性分子の分布)
作製した温度応答性吸湿材料の一次粒子を凍結、ミクロトームで切断(クライオミクロトーム ライカマイクロシステムズ)し、SEM(走査型電子顕微鏡)にて断面を観察した。観察したSEM像を
図9に示す。なお、
図9において、中心部の孔はイオンミル加工によるもので、試料組織を反映したものではない。
その後、TOF−SIMS(TRIFT V nanoTOF アルバックファイ)にて切断面に存在するH−C=O結合の存在量を、空間分解能約1μmにてマッピング測定し、球状アミノプロピルシリカ表面より導入した感温性分子が、球体の中心部に達しているかを評価した。
図10(a)にTOF−SIMSで比較的強く検出された
12C、
13CH、
16O、
17OH、
24C
2、
25C
2H、
26CN、
42CNO、
80SO
3の二次イオン強度の合計のマッピング像を、
図10(b)に感温性分子に特有の(メソ多孔体骨格にも表面のアミノプロピル基にも存在しない)構造である
42CNOの二次イオン像を示す。また、
図10(c)に実施例で用いた感温性分子における
42CNO構造の位置を示す。
また、未反応の感温性分子が存在するかを確認するため、カルボキシル基に相当するピーク(質量数45)を調べた。
図11(a)にTOF−SIMSスペクトルを示す。また、
図11(b)に感温性分子におけるカルボキシル基の位置を示す。
【0043】
<実施例3>
[温度応答性吸湿材料の合成]
導入工程(3)を下記(3)´´とし、導入工程(8)で得られた粉末を回収して(1)〜(8)を繰り返した以外は、実施例1と同様にして、実施例3に係る温度応答性吸湿材料を作製した。
(3)´´アルゴンを流量50ml/分にてフローしながら60℃に加熱、48時間保持した後、自然冷却させた。
【0044】
[評価方法]
(感温性分子の導入量)
実施例1と同様に感温性分子の導入量を算出した。結果を表1に示す。
(水蒸気吸着等温線)
実施例1と同様に水蒸気吸着等温線及びRh
50を測定した。結果を
図6、12及び表2に示す。
【0045】
<比較例1>
実施例1で使用したメソ多孔体を主な原料とし、従来技術である以下の導入工程(1)〜(9)により、比較例1に係る温度応答性吸湿材料を合成した。
(導入工程)
(1)100mlのナスフラスコにn−イソプロピルアミドモノマー(NIPAM)7.00g(2mol/l)、エタノール24.41g、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.01g(2mmol/l)を投入し、スターラーチップで撹拌しながら、100ml/分で15分間アルゴンバブリングを行った。
(2)(1)のナスフラスコにメソ多孔体7.00gを投入し、さらに100ml/分でアルゴンバブリングを行った。
(3)ナスフラスコに三方コックを取り付け、シリカの空孔部の脱気を行うため、5分間減圧したのち、5分間アルゴンを50ml/分の流量でフローさせた。この操作を計3回繰り返し、脱気を行った。
(4)ナスフラスコ内をアルゴンで充満させた状態で密閉し、70℃で12時間重合を行った。
(5)重合後、熱源を取り除き室温まで冷却した。
(6)反応液を容量50mlの遠沈管に入れて15000rpm で10分遠心分離した。
(7)上澄みを捨て、沈殿したシリカを540mlのイオン交換水に再分散させ、容量50mlの遠沈管12本に分け、それぞれ15000rpmで10分間遠心分離した。
(8)(7)の洗浄操作を計4回実施した。
(9)得られた沈殿を70℃で12時間減圧乾燥した。
※尚、NIPAM、AIBNを上記(1)と同様の濃度、温度、保持時間でエタノール中で重合したところ、平均分子量はMn=9,892であった。
【0046】
[評価方法]
(感温性分子の導入量)
実施例1と同様に感温性分子の導入量を算出した。結果を表1に示す。
(水蒸気吸着等温線)
実施例1と同様に水蒸気吸着等温線及びRh
50を測定した。結果を
図7、12及び表2に示す。
【0047】
<比較例2>
感温性分子を導入していない実施例で使用したメソ多孔体を用いて、以下の評価を行った。
[評価方法]
(水蒸気吸着等温線)
実施例1と同様に水蒸気吸着等温線及びRh
50を測定した。結果を
図8、12及び表2に示す。
【0048】
【表1】
【0049】
【表2】
【0050】
[結果]
(感温性分子の導入量)
表1より、本発明の製造方法により合成された実施例1〜3に係る温度応答性吸湿材料はいずれも、従来技術により合成された比較例1に係る温度応答性吸湿材料よりもメソ多孔体への感温性分子の修飾量が多いことが確認された。
【0051】
(水蒸気吸着等温線)
図4〜8、12及び表2より、本発明の製造方法により合成された実施例1〜3に係る温度応答性吸湿材料はいずれも、従来技術により合成された比較例1に係る温度応答性吸湿材料及び感温性分子を有しない比較例2に係るメソ多孔体よりも、温度変化による吸湿特性の変化が大きいことが確認された。相対湿度Rh
50の温度変化による差は、最も効果が高かった実施例1で14.2%であり、最も効果が低かった実施例3においても、比較例1の2倍以上の数値を示した。また、
図12に示した曲線より、感温性分子の導入量が、5.2質量%以上21.4質量%以下の範囲であれば、相対湿度Rh
50の温度変化による差が実施例3の結果である7.3%以上の数値となる。相対湿度Rh
50の温度変化による差がこのような範囲にあれば、温度変化による吸湿特性の変化が実用上十分に大きいといえる。
【0052】
(メソ多孔体中の感温性分子の分布)
図10(a)及び(b)より、実施例2では、温度応答性吸湿材料(メソ多孔体)の一次粒子の中心部からも感温性分子の存在が検出されており、検出強度が断面全体に亘ってほぼ均一であるので、メソ多孔体の内部に感温性分子が均一に導入されていることが確認された。また、合成の工程において数度洗浄を繰り返しているにも関わらず、メソ多孔体全体に亘って感温性分子が分布していることから、感温性分子はメソ多孔体と強固に結合しているものと考えられる。
また、
図11(a)に示すTOF−SIMSスペクトルにおいて、カルボキシル基に相当するピーク(質量数45)は検出されなかった。従って、メソ多孔体の細孔内に導入された感温性分子は、メソ多孔体表面とアミド基を介して結合していることが確認された。