(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6443020
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】端末装置、無線通信制御方法および無線通信制御プログラム
(51)【国際特許分類】
H04W 8/00 20090101AFI20181217BHJP
H04W 84/12 20090101ALI20181217BHJP
H04W 84/10 20090101ALI20181217BHJP
H04W 88/06 20090101ALI20181217BHJP
【FI】
H04W8/00 110
H04W84/12
H04W84/10 110
H04W88/06
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-246581(P2014-246581)
(22)【出願日】2014年12月5日
(65)【公開番号】特開2016-111495(P2016-111495A)
(43)【公開日】2016年6月20日
【審査請求日】2017年10月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116665
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 和昭
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(72)【発明者】
【氏名】上野 大知
【審査官】
小林 正明
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−127819(JP,A)
【文献】
特開2014−027538(JP,A)
【文献】
特開2014−127871(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2014/0355048(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24−7/26
H04W 4/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
デバイスとの無線通信を制御するための制御部と、
中継装置を介した通信先との無線通信を実行可能な第1無線通信部と、
前記中継装置を介さずに通信先と直接に無線通信を実行可能な第2無線通信部と、
前記デバイスとの近距離無線通信により、前記デバイスの識別情報であるデバイス識別情報を前記デバイスから取得する近距離無線通信部と、を備え、
前記制御部は、
前記第1無線通信部が前記中継装置と接続した状態で、前記近距離無線通信により前記デバイス識別情報が取得された場合に、前記デバイスの探索を前記第1無線通信部に実行させ、
前記探索の結果、前記デバイス識別情報に対応する前記デバイスを発見した場合には前記第1無線通信部による前記デバイスとの無線通信を実行させ、前記デバイス識別情報に対応する前記デバイスを発見しない場合には前記第2無線通信部による前記デバイスとの無線通信を実行させる、
ことを特徴とする端末装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記探索の結果、前記デバイスを発見しない場合には、前記デバイス識別情報に基づいて、前記デバイスが管理する無線ネットワークの識別情報であるネットワーク識別情報を生成し、当該ネットワーク識別情報を用いた前記デバイスとの無線通信を前記第2無線通信部に実行させる、ことを特徴とする請求項1に記載の端末装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記探索の結果、
前記デバイスを発見した場合には前記第1無線通信部による前記デバイスとの無線通信を実行させ、
前記デバイスを発見しない場合には、前記近距離無線通信部に、前記中継装置が管理する無線ネットワークの識別情報であるネットワーク識別情報を前記デバイスへ送信させ、かつ、当該ネットワーク識別情報を用いて前記中継装置に接続することを前記デバイスへ指示させる、ことを特徴とする請求項1に記載の端末装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記第1無線通信部に、前記デバイスを探索するための探索信号の前記中継装置を介したブロードキャストの実行を指示し、当該探索信号に対する応答に含まれるデバイス識別情報を取得し、当該取得したデバイス識別情報と、前記近距離無線通信により取得されたデバイス識別情報とが一致する場合に、前記探索により前記デバイスを発見したと判断することを特徴とする請求項2または請求項3に記載の端末装置。
【請求項5】
デバイスとの無線通信を制御する無線通信制御方法であって、
前記デバイスとの近距離無線通信により、前記デバイスの識別情報であるデバイス識別情報を前記デバイスから取得する近距離無線通信工程と、
中継装置を介した通信先との無線通信を実行可能な第1無線通信部が前記中継装置と接続した状態で、前記近距離無線通信により前記デバイス識別情報が取得された場合に、前記デバイスの探索を前記第1無線通信部に実行させる探索工程と、
前記探索の結果、前記デバイス識別情報に対応する前記デバイスを発見した場合には前記第1無線通信部による前記デバイスとの無線通信を実行させ、前記デバイス識別情報に対応する前記デバイスを発見しない場合には、前記中継装置を介さずに通信先と直接に無線通信を実行可能な第2無線通信部による前記デバイスとの無線通信を実行させる無線通信選択工程と、
を備えることを特徴とする無線通信制御方法。
【請求項6】
デバイスとの無線通信の制御をコンピューターに実行させる無線通信制御プログラムであって
近距離無線通信部に前記デバイスとの近距離無線通信により前記デバイスの識別情報であるデバイス識別情報を取得させるデバイス識別情報取得機能と、
中継装置を介した通信先との無線通信を実行可能な第1無線通信部が前記中継装置と接続した状態で、前記近距離無線通信により前記デバイス識別情報が取得された場合に、前記デバイスの探索を前記第1無線通信部に実行させる探索機能と、
前記探索の結果、前記デバイス識別情報に対応する前記デバイスを発見した場合には前記第1無線通信部による前記デバイスとの無線通信を実行させ、前記デバイス識別情報に対応する前記デバイスを発見しない場合には、前記中継装置を介さずに通信先と直接に無線通信を実行可能な第2無線通信部による前記デバイスとの無線通信を実行させる無線通信選択機能と、
を実行させることを特徴とする無線通信制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端末装置、無線通信制御方法および無線通信制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
中継装置(アクセスポイント)を介して通信先と無線通信(Wi‐Fi方式による無線通信)を実行可能、かつ、アクセスポイントを介さずに通信先と直接に無線通信(Wi‐Fi Direct方式による無線通信)を同時に実行し得る無線LANインターフェイスを有し、かつ、NFC(Near Field Communication)インターフェイスを有する携帯端末が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
また、携帯端末装置と非接触通信を行うNFC通信部とブルートゥース通信部を備える複合機であって、NFC通信部は携帯端末装置がNFC通信部の通信範囲内に存在した場合に、ブルートゥース通信部の通信を確立するための通信設定情報を非接触通信で携帯端末装置から受信し、ブルートゥース通信部はNFC通信部によって受信した通信設定情報に基づいて携帯端末装置との通信を確立する構成が知られている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014‐127871号公報
【特許文献2】特開2009‐135865号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
端末装置が無線通信の手段を複数有し得る場合に、ユーザーの操作負担の軽減や利便性確保の観点から、より簡易に、適切な無線通信を選択できるようにする仕組みが求められていると言える。
【0006】
本発明は少なくとも上述の課題を解決するためになされたものであり、端末装置と通信先との無線通信を簡便に確立させることが可能な端末装置、無線通信制御方法および無線通信制御プログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の態様の一つは、端末装置は、デバイスとの無線通信を制御するための制御部と、中継装置を介して通信先と無線通信を実行可能な第1無線通信部と、前記中継装置を介さずに通信先と直接に無線通信を実行可能な第2無線通信部と、前記デバイスとの近距離無線通信により、前記デバイスの識別情報であるデバイス識別情報を前記デバイスから取得する近距離無線通信部と、を備え、前記制御部は、前記第1無線通信部が前記中継装置と接続した状態で、前記近距離無線通信により前記デバイス識別情報が取得された場合に、前記デバイス識別情報に基づく前記デバイスの探索を前記中継装置を介して実行し、前記探索の結果に応じて、前記第1無線通信部または前記第2無線通信部による前記デバイスとの無線通信を実行させる。
【0008】
当該構成によれば、端末装置は、近距離無線通信により取得したデバイス識別情報に基づいてデバイスの探索を中継装置を介して実行し、探索の結果に応じて、第1無線通信部または第2無線通信部によるデバイスとの無線通信を実行する。そのため、ユーザーとしては、極めて簡易に端末装置とデバイスとの適切な無線通信を確立させることができる。
【0009】
本発明の態様の一つは、前記制御部は、前記探索の結果、前記デバイスを発見した場合には前記第1無線通信部による前記デバイスとの無線通信を実行させ、前記デバイスを発見しない場合には前記第2無線通信部による前記デバイスとの無線通信を実行させるとしてもよい。
当該構成によれば、中継装置を介した前記探索によりデバイスを発見できた場合には、第1無線通信部による中継装置を介する無線通信を優先的に採用する。そのため、端末装置が、第1無線通信部による無線通信と第2無線通信部による無線通信とを排他的に実行する場合に、第1無線通信部による他の通信先との通信が断たれずに済む。
【0010】
本発明の態様の一つは、前記制御部は、前記探索の結果、前記デバイスを発見しない場合には、前記デバイス識別情報に基づいて、前記デバイスが管理する無線ネットワークの識別情報であるネットワーク識別情報を生成し、当該ネットワーク識別情報を用いた前記デバイスとの無線通信を前記第2無線通信部に実行させるとしてもよい。
当該構成によれば、第2無線通信部とデバイスとの中継装置を介さない無線通信を容易に確立することができる。
【0011】
本発明の態様の一つは、前記制御部は、前記探索の結果、前記デバイスを発見した場合には前記第1無線通信部による前記デバイスとの無線通信を実行させ、前記デバイスを発見しない場合には、前記近距離無線通信部に、前記中継装置が管理する無線ネットワークの識別情報であるネットワーク識別情報を前記デバイスへ送信させ、かつ、当該ネットワーク識別情報を用いて前記中継装置に接続することを前記デバイスへ指示させるとしてもよい。
当該構成によれば、端末装置は、前記探索で前記デバイスを発見できなくても、前記デバイスに前記中継装置への接続をさせることで、結果的に、第1無線通信部による中継装置を介する前記デバイスとの無線通信を確立させることができる。
【0012】
本発明の態様の一つは、前記制御部は、前記第1無線通信部に、前記デバイスを探索するための探索信号の前記中継装置を介したブロードキャストの実行を指示し、当該探索信号に対する応答に含まれるデバイス識別情報を取得し、当該取得したデバイス識別情報と、前記近距離無線通信により取得されたデバイス識別情報とが一致する場合に、前記探索により前記デバイスを発見したと判断するとしてもよい。
当該構成によれば、前記探索により的確に前記デバイスの有無を判断することができる。
【0013】
本発明の技術的思想は、端末装置という物以外によっても実現される。例えば、本発明は、端末装置の各部が実行する各工程を含んだ方法(無線通信制御方法)、あるいは当該方法をコンピューターに実行させるコンピュータープログラム(無線通信制御プログラム)、さらには当該プログラムを記憶したコンピューター読み取り可能な記憶媒体、とった各種カテゴリーにて実現されてもよい。
また、端末装置、中継装置およびデバイスのうちの一部あるいは全部を含むシステムも、それぞれに独立した発明として把握される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本実施形態にかかるシステムを概略的に示す図。
【
図2】端末装置が実行する処理を例示するフローチャート。
【
図3】他の実施形態にかかる処理を例示するフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、各図を参照して本発明の実施形態を説明する。
1.システムの概略
図1は、本実施形態にかかるシステム1の構成を概略的に示しており、図中に、端末装置10、中継装置(アクセスポイント。以下、APと称する。)20、端末装置10にとっての通信先となるデバイスの一例としてのプリンター30、を含んでいる。これら構成10,20,30は、それぞれが発明として成立するし、またそれらのうちの一部の任意の組み合わせ(システム)も発明として成立する。
【0016】
端末装置10とは、例えば、パーソナルコンピューター(PC)、携帯電話、スマートフォン、タブレット型端末など、所定の無線通信機能を有するあらゆる端末が該当する。AP20は、無線LAN(Local Area Network)の中継機として機能し、自身が管理する無線LANを識別するためのネットワーク識別情報を有している。ネットワーク識別情報とは、例えば、SSID(Service Set Identifier)である。AP20は、有線LANとの接続機能を有していてもよいし、また、インターネットとLANとを仲介するブロードバンドルーターとしても機能し得る。
【0017】
端末装置10では、不図示のIC(Integrated Circuit)、その他のメモリーや記憶装置、通信用ポート、LANアダプター等の各ハードウェアと、端末装置10にインストールされたOSやアプリケーションプログラム11とが協働することにより、制御部12、第1無線通信部13、第2無線通信部14、近距離無線通信(NFC)部15、等の各種機能が実現される。制御部12は、端末装置10と外部のデバイスとの無線通信を制御する。
【0018】
プリンター30は、印刷機能(印刷部34)を有するデバイスである。プリンター30は、プリンターとしての機能の他、スキャナーやファクシミリ等としても機能する複合機であってもよい。印刷部34は、印刷データに基づいて印刷媒体へ印刷を実行する。印刷部34が採用し得る印刷方式はインクジェット方式、レーザー方式等、様々であり、特に限定されない。また、プリンター30では、不図示のIC、その他のメモリーや記憶装置、通信用ポート、LANアダプター等の各ハードウェアと、プリンター30にインストールされたファームウェア等とが協働することにより、第1無線通信部31、第2無線通信部32、NFC部33、等の各種機能が実現される。
【0019】
第1無線通信部13,31は、AP20を介した無線通信、具体的にはWi‐Fi方式に従った無線通信を実行可能である。一方、第2無線通信部14,32は、AP20を介さない通信先との直接的な(ピアツーピアによる)無線通信、具体的にはWi‐Fi Direct方式に従った無線通信を実行可能である。Wi‐Fi方式、Wi‐Fi Direct方式はそれぞれ、無線LANの規格であるIEEE802.11の規格群による無線通信方式であり、Wi‐Fi Allianceによって認証されている。また、NFC部15,33は、いわゆる近距離無線通信のためのNFC方式に従った無線通信を実行可能である。
【0020】
プリンター30の第2無線通信部32は、APとしての機能、つまり無線通信におけるグループオーナー(Wi‐Fi Directの自律グループオーナー)としての機能を有する。よって、プリンター30において第2無線通信部32の機能が有効化された状態では、プリンター30自身がAPとしても振る舞う。第2無線通信部32は、APとしての自身が管理する無線LANを識別するためのネットワーク識別情報(SSID)を有している。第2無線通信部32の有効化/無効化は、ユーザーによって設定される。例えば、ユーザーは、プリンター30が有する不図示の操作パネル(液晶画面や各種ボタン等を含む機構)を介して、プリンター30に対して第1無線通信部31(Wi‐Fi接続)の機能と第2無線通信部32(Wi‐Fi Direct接続)の機能とのいずれか一方を有効化する設定を行うことができる。
以下では、便宜上、AP20のネットワーク識別情報を第1ネットワーク識別情報と呼び、第2無線通信部32(AP)のネットワーク識別情報を第2ネットワーク識別情報と呼ぶ。
【0021】
端末装置10においては、第1無線通信部13と第2無線通信部14とは、実質的に同一の無線LANインターフェイスであってもよい。つまり、端末装置10の無線LANインターフェイスは、AP20と通信を実行する状態においては第1無線通信部13であり、プリンター30が有するAP(つまり第2無線通信部32)と通信を実行する状態においては第2無線通信部14である。このような構成では、第1無線通信部13と第2無線通信部14とは排他的に機能し、両方が同時にそれぞれの通信を実行することは無い。
【0022】
2.無線通信の選択および印刷
図2は、本実施形態において端末装置10が実行する処理(無線通信制御方法)をフローチャートにより示している。当該フローチャートを実行する前提として、端末装置10では、第1無線通信部13がAP20とWi‐Fi接続した状態であるものとする。つまり、第1無線通信部13は、第1ネットワーク識別情報と、第1ネットワーク識別情報に紐づけられた暗号化キー(パスワード)とを予め有しており、これらを用いてAP20を介したセキュアな無線通信を行う。
【0023】
ステップS100では、制御部12は、NFC部15にプリンター30のNFC部33との通信を開始させ、NFC部33からプリンター30の識別情報であるデバイス識別情報を取得する。具体的には、ユーザーが、端末装置10のNFC部15に該当する部位(IC)とプリンター30のNFC部33に該当する部位(IC)とを所定距離内に接近させることで、NFC部15がNFC部33からプリンター30のデバイス識別情報を読み出す。デバイス識別情報とは、1台のデバイス(プリンター30)に固有の識別情報の一種であり、例えば、MACアドレス(Media Access Control address)等が該当する。当該ステップS100は、近距離無線通信工程の一例に該当する。
【0024】
ステップS110では、制御部12は、ステップS100で取得されたデバイス識別情報に基づくデバイスの探索を、AP20を介して実行する。具体的には、制御部12は、第1無線通信部13に、デバイスを探索するための探索信号のAP20を介したブロードキャストの実行を指示する。当該指示に応じて第1無線通信部13からAP20を介してブロードキャストされた探索信号は、AP20とWi‐Fi接続による無線通信を実行可能な状態にあるデバイスによって受信される。
【0025】
従って、プリンター30の第1無線通信部31が有効化されている場合に、第1無線通信部31は前記探索信号を受信する。前記探索信号を受信したデバイスの無線通信部(この場合、プリンター30の第1無線通信部31)は、前記探索信号への応答として、前記探索信号の送信元へ、自身のデバイス識別情報(プリンター30のデバイス識別情報)を含んだ応答信号を送信する。端末装置10の第1無線通信部13は、このような応答信号を、AP20を介して受信する。当該ステップS110は、探索工程の一例に該当する。
【0026】
制御部12は、ステップS100で取得されたデバイス識別信号と、前記応答信号に含まれているデバイス識別信号とを比較し、それらが一致する場合に、ステップS110による探索で、通信先(印刷データの送信先)とすべきデバイス(この場合、プリンター30)を発見できたと判断する(ステップS120)。デバイスを発見できたと判断した場合、処理はステップ130へ進む。
【0027】
一方、制御部12は、ステップS110の探索開始後の一定時間内に前記探索信号に対する応答信号を受信できない場合や、当該一定時間内に受信できた応答信号に含まれるデバイス識別信号がステップS100で取得されたデバイス識別信号と一致しない場合には、当該探索で通信先(印刷データの送信先)とすべきデバイスを発見できなかったと判断する(ステップS120)。デバイスを発見できなかったと判断した場合、処理はステップ140へ進む。プリンター30において第2無線通信部32が有効化されている場合は、プリンター30の第1無線通信部31はAP20と非接続状態であるため、制御部12は前記探索によりプリンター30を発見することはできない。
【0028】
ステップS130では、制御部12は、第1無線通信部13による、前記発見したデバイス(プリンター30)との無線通信を実行させる。つまり、第1無線通信部13は、第1ネットワーク識別情報と第1ネットワーク識別情報に紐づけられた暗号化キーとを用いて、Wi‐Fi接続したAP20を介してプリンター30の第1無線通信部31と通信を行う。このとき、第1無線通信部13は、第1無線通信部31へ印刷データを送信する。本実施形態において印刷データとは、端末装置10のユーザーが印刷対象として任意に選択した画像をプリンター30に印刷させるためのデータである。
【0029】
印刷データは、例えば、プリンター30が解釈可能なページ記述言語(PDL)で表現されたデータであったり、画素毎にインク滴の吐出/非吐出を規定したドットデータであったりする。あるいは、端末装置10は、このようなPDLデータやドットデータではない他のフォーマットによる画像ファイルを印刷データとしてプリンター30へ送信し、プリンター30(印刷部34)側で、当該画像ファイルから必要に応じてPDLデータやドットデータへの変換を行うとしてもよい。いずれにしても、印刷データを端末装置10から受信したプリンター30では、印刷部34が印刷データに基づく印刷を行う。
【0030】
一方、ステップS140では、制御部12は、ステップS100で取得されたデバイス情報に基づいて、第2ネットワーク識別情報を生成する。また、制御部12は、生成した第2ネットワーク識別情報に基づいて、第2ネットワーク識別情報に紐づけられた暗号化キー(パスワード)も生成する。ここで、端末装置10にインストールされたアプリケーションプログラム11は、プリンター30の製造者あるいは販売者等によってインターネット等を介して提供されたものであるとする。このような状況において、アプリケーションプログラム11によって端末装置10内で実現される制御部12は、あるデバイス識別情報から、対応する一意のネットワーク識別情報を生成し、かつ、あるネットワーク識別情報から対応する一意の暗号化キーを生成する機能(例えば、入力に応じた一意の文字列を出力する関数を用いる機能)を有する。従って、制御部12は、ステップS100で取得されたプリンター30のデバイス識別情報から、APとしてのプリンター30(第2無線通信部32)のネットワーク識別情報である第2ネットワーク識別情報を生成することができ、かつ、第2ネットワーク識別情報に予め紐づけられた暗号化キー(パスワード)を第2ネットワーク識別情報から生成することができる。
【0031】
ステップS150では、制御部12は、第2無線通信部14による、デバイス(プリンター30)との接続を実行させる。つまり、第2無線通信部14は、ステップS140で生成された第2ネットワーク識別情報と第2ネットワーク識別情報に紐づけられた暗号化キーとを用いて、プリンター30(第2無線通信部32)との直接的な(つまりAP20を介さない)Wi‐Fi Direct接続を確立する。そして、当該確立したWi‐Fi Direct接続を利用して第2無線通信部14は、第2無線通信部32へ印刷データを送信する(ステップS160)。印刷データを端末装置10から受信したプリンター30では、印刷部34が印刷データに基づく印刷を行う。なお、端末装置10は、ステップS100でプリンター30のデバイス識別情報を取得済みであるため、ステップS130とステップS160のいずれにおいても、印刷データの送信先となるプリンター30を特定することができる。このようなステップS120〜S160は、無線通信選択工程の一例に該当する。
【0032】
このように本実施形態によれば、端末装置10は、第1無線通信部13がAP20と接続した状態で、NFC部15によりプリンター30のデバイス識別情報が取得された場合に、当該デバイス識別情報に基づくプリンター30の探索をAP20を介して実行し、当該探索の結果(プリンター30を発見できたか否か)に応じて、第1無線通信部13または第2無線通信部14によるプリンター30との無線通信を実行させる。そのため、ユーザーとしては、端末装置10のNFC部15に該当する部位(IC)とプリンター30のNFC部33に該当する部位(IC)とを接近させるという極めて簡易な作業により、端末装置10とプリンター30との無線通信(Wi‐Fi接続またはWi‐Fi Direct接続、による無線通信)を確立させることができる。
【0033】
また、端末装置10は、前記探索の結果、プリンター30を発見した場合には第1無線通信部13によるプリンター30との無線通信を実行させ、プリンター30を発見しない場合に第2無線通信部14によるプリンター30との無線通信を実行させる。つまり、AP20を介した探索によりプリンター30を発見できた場合には、Wi‐Fi接続によるAP20を介した無線通信を優先的に採用する。そのため、端末装置10が、第1無線通信部13による無線通信(Wi‐Fi接続)と第2無線通信部14による無線通信(Wi‐Fi Direct接続)とを排他的に実行する構成において、第1無線通信部13が既にAP20を介して他のデバイス(例えば、他のPC、テレビ、レコーダー等の、無線LAN対応のデバイス)とも通信している場合に、このような他のデバイスとの通信が断たれることが極力回避され、ユーザーの利便性が保たれる。
【0034】
3.他の実施形態
本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば後述するような実施形態を採用可能である。各実施形態を適宜組み合わせた構成も本発明の開示範囲に入る。以下の説明においては、上述の実施形態と共通の事項は説明を適宜省略する。
【0035】
図3は、他の実施形態にかかる、主に端末装置10が実行する処理をフローチャートにより示している。
図3においては、
図2と同じ処理には
図2と符号を付している。
制御部12は、ステップS110の探索で通信先(印刷データの送信先)とすべきデバイスを発見できなかったと判断した場合(ステップS120)、処理をステップS125へ進める。
【0036】
ステップS125では、制御部12は、NFC部15に、第1ネットワーク識別情報をプリンター30へ送信させる。具体的には、ユーザーが、再度、端末装置10のNFC部15に該当する部位(IC)とプリンター30のNFC部33に該当する部位(IC)とを所定距離内に接近させた際に、NFC部15が、第1ネットワーク識別情報と、第1ネットワーク識別情報に紐づけられた暗号化キーとをNFC部33へ送信する。また、制御部12は、併せて、第1ネットワーク識別情報を用いてAP20へ接続することの指示(接続指示)を、NFC部15からNFC部33へ送信させる。
【0037】
図3では、破線の矩形内にプリンター30側の処理の一部を記載している。プリンター30では、NFC部33によって第1ネットワーク識別情報と第1ネットワーク識別情報に紐づけられた暗号化キーと前記接続指示とを受信すると、それまで有効化していた第2無線通信部32の機能を無効化するとともに、無効化していた第1無線通信部31の機能を有効化する。そして、有効化された第1無線通信部31は、前記接続指示に従い、第1ネットワーク識別情報と第1ネットワーク識別情報に紐づけられた暗号化キーとを用いてAP20へのWi‐Fi接続を開始する。これにより、端末装置10とプリンター30とがAP20を介して通信可能な状態となる。
【0038】
以後、ステップS130で制御部12は、第1無線通信部13によるプリンター30(第1無線通信部31)との無線通信を実行させる。つまり、第1無線通信部13は、第1ネットワーク識別情報と第1ネットワーク識別情報に紐づけられた暗号化キーとを用いて、Wi‐Fi接続したAP20を介してプリンター30の第1無線通信部31と通信を行う。印刷データを端末装置10から受信したプリンター30では、印刷部34が印刷データに基づく印刷を行う。このような他の実施形態によれば、端末装置10は、ステップS100〜S125の段階ではプリンター30がAP20にWi‐Fi接続していない状態であっても、AP20にWi‐Fi接続するために必要な情報(第1ネットワーク識別情報等)をNFCによりプリンター30に送信し、プリンター30に、AP20への接続を指示する。その結果、端末装置10は、AP20を介したプリンター30との無線通信を確立することができ、上述したようなAP20を介した他のデバイスとの通信が断たれることを回避することができる。
【0039】
端末装置10は、ステップS160(
図2)で印刷データをプリンター30(第2無線通信部32)へ送信した後は、接続先のAPを、第2無線通信部32からAP20へ即座に切り替えるとしてもよい。このような切り替えを行うことで、端末装置10によるAP20を介した様々な通信先との無線通信が再開される。
【0040】
なお、端末装置10が本発明を適用して通信先とするデバイスは、プリンター以外の製品(例えば、PC、テレビ、レコーダー、プロジェクター、デジタルスチルカメラ、等といった無線通信に対応可能な様々なデバイス)であってもよい。つまり、端末装置10が印刷データではない他の所要のデータを無線通信により送信することを想定すれば、プリンターではない様々なデバイスにデータを送信する場面において、本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0041】
1…システム、10…端末装置、11…アプリケーションプログラム、12…制御部、13…第1無線通信部、14…第2無線通信部、15…NFC部、20…AP、30…プリンター(デバイス)、31…第1無線通信部、32…第2無線通信部、33…NFC部、34…印刷部