(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両は、一般に、車両後側の車両底部に燃料タンクを積載している。燃料タンクとしては、例えば車体フロア形状の複雑化に対応するために、樹脂製のものが用いられる場合がある。
【0003】
特許文献1には、樹脂製の燃料タンクを多数のバンドによって車両底部に取付ける構造が記載されている。この構造は、燃料タンクを保持するバンドアッパおよびバンドロアを有している。バンドロアは、燃料タンクの下壁に結合されていて、下壁に沿って延在しさらに車体に固定されている。バンドアッパは、燃料タンクの上壁に結合されていて、バンドロアとともに燃料タンクを囲むように上壁に沿って延在している。
【0004】
特許文献1では、バンドロアとハンドアッパとで燃料タンクを囲んだ上で、燃料タンクを車体に容易に取付けられる、としている。さらに、特許文献1では、バンドロアとハンドアッパとが協働することで、燃料タンクの内圧が変化した場合であっても燃料タンクの変形を防止できる、としている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
燃料タンクが樹脂製の場合、その周囲に配置された高温になるマフラーなどの排気系部品からの熱や車両火災時に伴う熱によって、燃料タンクが車両底部から脱落することを防止する必要がある。
【0007】
しかし特許文献1に記載の構造は、単に、燃料タンク内の気圧の増減に伴う燃料タンクの変形を防止するものに過ぎず、車両火災時に燃料タンクが脱落することは防止できない。さらに特許文献1では、多数のバンドを用いて燃料タンクを車両底部に取付けているため、部品点数が増え重量が増加してしまう。
【0008】
本発明は、このような課題に鑑み、軽量化を図りつつ、車両火災時に燃料タンクの脱落を防止できる車両用燃料タンク固定構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明にかかる車両用燃料タンク固定構造の代表的な構成は、車両上下方向から見て多角形を成す樹脂製の燃料タンクを備え、燃料タンクを車両下方から車両底部に固定する車両用燃料タンク固定構造において、車両用燃料タンク固定構造はさらに、燃料タンクの底部の第1の対角を結ぶ第1対角線に沿って配置されるベルトであって、その両端が車両底部に固定され燃料タンクを車両下方から車両底部に押付けるベルトと、燃料タンクの底部の第1対角線に交差する第2対角線を成す第2の対角にそれぞれ固定され対角から張り出し車両底部に固定される一対のフランジと、一対のフランジをそれぞれ車両下方から覆う第1遮熱板および第2遮熱板とを備えることを特徴とする。
【0010】
上記構成によれば、燃料タンクは、第1の対角を結ぶ対角線状に配置されるベルトにより車両底部に押付けられるため、安定した状態で車両底部に固定可能となる。また燃料タンクの第2の対角からは、ベルトに代え、第2の対角それぞれに溶着などの方法で固定したフランジを張り出させ、これらを車両底部に固定する。このため、燃料タンクを固定するためのベルトは1本で済み、軽量化を図ることができる。さらにフランジが遮熱板で覆われているため、車両火災時にフランジの固定箇所が溶け落ちることがない。したがって、上記構成によれば、軽量化を図りつつ、車両火災時に燃料タンクの脱落を防止できる。
【0011】
上記の車両用燃料タンク固定構造はさらに、燃料タンクの一方の側部付近を車両前後方向に延びるマフラーを備え、第1遮熱板および第2遮熱板のうち、第1遮熱板のみが燃料タンクのマフラーから近い側に位置する一方の側部にわたって延びるタンク側部保護領域を有するとよい。
【0012】
このように、第1遮熱板は、燃料タンクの一方の側部にわたって延びるタンク側部保護領域を有する。そのため、第1遮熱板は、フランジの固定箇所を車両火災時の熱から防護するだけでなく、燃料タンクの一方の側部全体を、高温になる排気系部品であるマフラーの熱から保護することもできる。一方、第2遮熱板は、燃料タンクのうちマフラーから遠い側の対角に位置するため、第1遮熱板のタンク側部保護領域のような領域を有する必要がなく、フランジのみを覆えばよい。よって、第2遮熱板の面積は第1遮熱板のそれよりも小さくでき、軽量化に資することができる。
【0013】
上記の一対のフランジのうち第2遮熱板で覆われるフランジは、車両上方に突出した2つの突出部を有し、第2遮熱板は、車両上方に延びる2つの延長部と、延長部から突出部に向けて延び突出部の上端と接する2つの爪部とを有し、フランジは、第2遮熱板とともに車両底部に共締めされるとよい。
【0014】
これにより、燃料タンクを車両底部に固定する前に、第2遮熱板の爪部がフランジの突出部に接するように位置合わせすることで、フランジに対して第2遮熱板を仮保持できる。このため、フランジに対して第2遮熱板が仮保持された状態で、フランジおよび第2遮熱板をボルトなどの締結部材によって車両底部に共締めできるので、燃料タンクの組付けが容易になる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、軽量化を図りつつ、車両火災時に燃料タンクの脱落を防止できる車両用燃料タンク固定構造を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0018】
図1は、本実施形態における車両用燃料タンク固定構造100が適用される車両102の一部を概略的に示す図である。図中では車両用燃料タンク固定構造100を車両下方から見て、車両用燃料タンク(燃料タンク104)が車両底部106に固定されている様子を示している。
図2は、
図1の車両用燃料タンク104を車両斜め上方から見た図である。以下各図に示す矢印X、Yは車両前側、車両左側をそれぞれ示している。
【0019】
車両用燃料タンク固定構造100は、燃料タンク104を車両下方から車両底部106に固定する構造であり、例えば燃料タンク104と1本のベルト108とを備える。燃料タンク104は、樹脂製であって車両上下方向から見て図示のようにほぼ矩形を成している。ベルト108は、例えば金属製であって
図1に示すように、燃料タンク104の底部110の第1の対角112、114を結ぶ対角線状に配置されている。なお
図2には、対角112、114を結ぶ第1対角線115に沿ってベルト108が配置されている状態が例示されている。
【0020】
車両用燃料タンク固定構造100はさらに、
図2に示す一対のフランジ116、118と、第1遮熱板120および第2遮熱板122(
図1参照)とを備える。一対のフランジ116、118は、燃料タンク104の底部110の第2の対角124、126にそれぞれ溶着されて、この対角124、126から張り出している。なお
図2には、対角124、126を結ぶ第2対角線127が例示されている。第2対角線127は、図示のように燃料タンク104の底部110において、第1対角線115に交差している。一対のフランジ116、118の溶着部分128、130(
図2参照)は、燃料タンク104やフランジ116、118自体に比べて熱の影響を受け易いため、例えば車両火災時に溶け落ちる可能性がある。
【0021】
さらに車両用燃料タンク固定構造100は、
図1に示すように、燃料タンク104の一方の側部132付近を車両前後方向に延びていて、高温になる排気系部品であるマフラー134を備える。このため、車両用燃料タンク固定構造100では、一対のフランジ116、118の溶着部分128、130に加え、マフラー134の熱から影響を受け易い燃料タンク104の一方の側部132全体を保護する必要がある。
【0022】
第1遮熱板120は、フランジ116の溶着部分128を例えば車両下方から覆うことで溶着部分128を車両火災時の熱から保護している。さらに第1遮熱板120は、タンク側部保護領域136を有している。タンク側部保護領域136は、燃料タンク104の一方の側部132にわたって延びていて、一方の側部132を覆っている。よって、第1遮熱板120は、タンク側部保護領域136によって燃料タンク104の一方の側部132全体をマフラー134の熱から保護することもできる。
【0023】
図3は、
図1の車両用燃料タンク固定構造100のA矢視図である。フランジ116は、
図3に示すように、前側クロスメンバ138に固定された固定用ブラケット140にボルト142によって固定されている。前側クロスメンバ138は、
図1に示すように、車両底部106を構成する部材であって車幅方向に延びていて、燃料タンク104の車両前側で一対のサイドメンバ144、146の間に差し渡されている。このようにして、フランジ116は、車両底部106に固定される。なお一対のサイドメンバ144、146は、車両底部106を構成する部材であって
図1に示すように、車両前後方向に延びている。
【0024】
一方、第2遮熱板122は、
図1に示すように燃料タンク104のうちマフラー134から遠い側の対角126に位置している。このため、第2遮熱板122には、第1遮熱板120のタンク側部保護領域136のような領域が不要となる。つまり、第2遮熱板122は、フランジ118の溶着部分130を覆うことが可能であればよく、
図4に示すようにフランジ118を車両下方から覆っている。このため、第2遮熱板122の面積は、第1遮熱板120の面積よりも小さくでき、軽量化に資することができる。
【0025】
図4は、
図1の車両用燃料タンク固定構造100のB矢視図である。フランジ118は、
図4に示すように、サイドメンバ144に固定された固定用ブラケット148にボルト150によって第2遮熱板122と共締めされている。このようにして、フランジ118は、第2遮熱板122とともに車両底部106に固定される。
【0026】
図5は、
図1の車両用燃料タンク固定構造100のC矢視図である。ここで燃料タンク104の底部110の第1の対角112、114のうち、対角112にはフランジ152(
図2参照)が溶着されている。フランジ152は、
図5に示すように、前側クロスメンバ138に固定された固定用ブラケット154にボルト156によってベルト108の一端部108aと共締めされている。このようにして、ベルト108の一端部108aは、フランジ152とともに車両底部106に固定される。
【0027】
図6は、
図1の車両用燃料タンク固定構造100のD矢視図である。ベルト108の他端部108bは、
図6に示すように、後側クロスメンバ158に固定された固定用ブラケット160にボルト162によって固定されている。後側クロスメンバ158は、
図1に示すように、車両底部106を構成する部材であって車幅方向に延びていて、燃料タンク104の車両後側で一対のサイドメンバ144、146の間に差し渡されている。このようにして、ベルト108の他端部108bは、車両底部106に固定される。つまり、ベルト108は、その両端が車両底部106に固定されることになり、燃料タンク104を車両下方から車両底部106に押付けている。
【0028】
このように燃料タンク104は、第1の対角112、114を結ぶ第1対角線115に沿って配置されるベルト108により車両底部106に押付けられる。このため、燃料タンク104は、安定した状態で支持され車両底部106に固定可能となる。また、燃料タンク104の第2の対角124、126からは、ベルト108に代え、第2の対角124、126にそれぞれ溶着されたフランジ116、118を張り出させ、これらを車両底部106に固定している。このため、燃料タンク104を固定するためのベルト108は1本で済み、軽量化を図ることができる。
【0029】
さらにフランジ116、118が第1遮熱板120および第2遮熱板122でそれぞれ覆われているため、車両火災時にフランジ116、118の溶着部分128、130が溶け落ちることがない。したがって、車両用燃料タンク固定構造100によれば、軽量化を図りつつ、車両火災時に燃料タンク104の脱落を防止できる。
【0030】
図7は、変形例における車両用燃料タンク固定構造100Aを示す図である。車両用燃料タンク固定構造100Aは、燃料タンク104を車両底部106に固定する前に、フランジ118Aに対して第2遮熱板122Aが仮保持される点で、上記車両用燃料タンク固定構造100と異なる。
【0031】
フランジ118Aは、例えば2つの突出部164a、164bを有する。これら突出部164a、164bは、2つの側縁166a、166b付近から車両上方に突出している。第2遮熱板122Aは、2つの延長部168a、168bおよび爪部170a、170bを有する。延長部168a、168bは、車両上方に延びていて、図示のようにその頂部172a、172bがフランジ118Aの側縁166a、166bよりも車両上方に位置している。
【0032】
爪部170a、170bは、延長部168a、168bの頂部172a、172bから突出部164a、164bに向けて内側下方に延びていて突出部164a、164bの上端174a、174bと接している。このように、第2遮熱板122Aの爪部170a、170bがフランジ118Aの突出部164a、164bに接することで、フランジ118Aに対して第2遮熱板122Aが仮保持された状態となる。
【0033】
以下、燃料タンク104を車両底部106に固定する前に、フランジ118Aに対して第2遮熱板122Aを仮保持する手順について説明する。まず、フランジ118Aに対して第2遮熱板122Aの車両上下方向の位置合わせを行う。つぎに、図中矢印Eに示すように第2遮熱板122Aをフランジ118Aに向かって移動させ、フランジ118Aの側縁166a、166bの外側に第2遮熱板122Aの延長部168a、168bがそれぞれ位置するように位置合わせを行う。
【0034】
続いて、第2遮熱板122Aの爪部170a、170bがフランジ118Aの突出部164a、164bの上端174a、174bに接するように、第2遮熱板122Aを矢印Eに沿ってさらに押付ける。このようにして、フランジ118Aに対して第2遮熱板122Aが仮保持される。なお第2遮熱板122Aの爪部170a、170bがフランジ118Aの突出部164a、164bに接しているため、仮保持された状態は、燃料タンク104を車両底部106に組付けるまで確実に維持される。
【0035】
このため、車両用燃料タンク固定構造100Aでは、フランジ118Aに対して第2遮熱板122Aが仮保持された状態で、フランジ118Aおよび第2遮熱板122Aをボルト150によって車両底部106に共締めできる。よって、燃料タンク104の組付けが容易になり、組付け性が向上する。
【0036】
また、第2遮熱板122Aが仮保持されるため、第2遮熱板122Aを燃料タンク104に結合する専用の溶着部品が不要となり、クリップなどの溶着部品を燃料タンク104に溶着する必要もない。よって、部品点数が削減され製造工程も増えずに済む。さらに、フランジ118Aおよび第2遮熱板122Aが車両底部106に共締めされるため、突出部164a、164b、延長部168a、168bおよび爪部170a、170bは、仮保持された状態を維持する程度の耐久性を保てばよい。
【0037】
上記実施形態では、燃料タンク104の底部110の第1の対角112、114のうち、対角112にフランジ152が溶着されていたが、これに限定されない。すなわち、燃料タンク104の底部110がベルト108によって支持されているため、このフランジ152を溶着せず、より軽量化を図るようにしてよい。
【0038】
また上記実施形態では、燃料タンク104の対角114にはフランジが溶着されていない。仮にフランジが溶着されていて、このフランジがベルト108の他端部108bとともに車両底部106に固定されていた場合、第1遮熱板120は、上記のタンク側部保護領域136をさらに延長し、このフランジの溶着部分もマフラー134の熱から保護する必要がある。つまり、上記実施形態では、燃料タンク104の対角114にフランジを溶着しないことで、タンク側部保護領域136をさらに延長せずに済み、第1遮熱板120の面積を小さくし、軽量化に資することができる。
【0039】
なお上記実施形態では、燃料タンク104を車両上下方向から見て矩形(長方形)を成す形状としたが、これに限らず、第1対角線を成す第1の対角と、第1対角線に交差する第2対角線を成す第2の対角とを有する形状であれば、任意の多角形としてもよい。すなわち燃料タンクの形状は、正方形や長方形などの矩形に限られず、台形などの他の四角形、さらには五角形以上の形状としてもよい。このような多角形の燃料タンクにおいても、第1対角線に沿ってベルトを配置し、第2対角線を成す第2の対角に一対のフランジをそれぞれ固定可能である。
【0040】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。