特許第6443032号(P6443032)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6443032色材層用塗工液、及び昇華型熱転写シートの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6443032
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】色材層用塗工液、及び昇華型熱転写シートの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B41M 5/385 20060101AFI20181217BHJP
   B41M 5/395 20060101ALI20181217BHJP
【FI】
   B41M5/385 400
   B41M5/395 400
【請求項の数】5
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2014-256349(P2014-256349)
(22)【出願日】2014年12月18日
(65)【公開番号】特開2016-117163(P2016-117163A)
(43)【公開日】2016年6月30日
【審査請求日】2017年10月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000958
【氏名又は名称】特許業務法人 インテクト国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100120237
【弁理士】
【氏名又は名称】石橋 良規
(74)【代理人】
【識別番号】100152098
【弁理士】
【氏名又は名称】林 剛史
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 裕之
(72)【発明者】
【氏名】吉田 和哉
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 知子
【審査官】 野田 定文
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/157680(WO,A1)
【文献】 特開平01−281991(JP,A)
【文献】 特開平04−115991(JP,A)
【文献】 特開平04−113889(JP,A)
【文献】 特開昭54−077782(JP,A)
【文献】 特開2015−091635(JP,A)
【文献】 特開2016−068450(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 5/382 − 5/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇華型熱転写シートの色材層を形成するための色材層用塗工液であって、
所定の溶媒、色材、分散剤、及びバインダー樹脂を含有しており、
前記色材は、前記所定の溶媒に分散されており、
前記バインダー樹脂が、(i)数平均分子量(Mn)が40000以下のポリビニルアセタール樹脂、又は(ii)JIS K 6703(1995)における種類及び粘度記号でL1/8以下、或いはH1/8以下のニトロセルロース樹脂であることを特徴とする色材層用塗工液。
【請求項2】
前記所定の溶媒に分散されている前記色材が、下記一般式(1)、及び下記一般式(2)で示される色材であることを特徴とする請求項1に記載の色材層用塗工液。
【化1】

一般式(1)におけるXは水素原子、又はハロゲン原子を表し、Rは水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、若しくはその誘導体、又はアルキル基、若しくはベンゼン環を含む総炭素数6〜10のアシル基を表す。
【化2】

一般式(2)におけるR〜Rは水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、若しくはその誘導体又はスルホン酸基(−SOH)、又はスルホンアミド基で置換させたスルホン化誘導基を表す。
【請求項3】
前記色材層用塗工液は、前記分散剤として、ポリエーテル系分散剤、グラフト型ポリマー分散剤、アクリル系ブロック型ポリマー分散剤の群から選択される1種、又は2種以上を含有していることを特徴とする請求項1又は2に記載の色材層用塗工液。
【請求項4】
前記色材層用塗工液は、さらに前記所定の溶媒に溶解された昇華性染料を含有していることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の色材層用塗工液。
【請求項5】
昇華型熱転写シートの製造方法であって、
基材の一方の面上に色材層用塗工液を塗工して色材層を形成する工程を含み、
前記色材層用塗工液は、所定の溶媒、色材、分散剤、及びバインダー樹脂を含有しており、且つ、当該色材は、前記所定の溶媒に分散されており、
前記色材層用塗工液が含有するバインダー樹脂が、(i)数平均分子量(Mn)が40000以下のポリビニルアセタール樹脂、又は(ii)JIS K 6703(1995)における種類及び粘度記号でL1/8以下、或いはH1/8以下のニトロセルロース樹脂であることを特徴とする昇華型熱転写シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色材層用塗工液、及び昇華型熱転写シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
簡便な印刷方法として、種々の熱転写記録方法が広く使用されている。各熱転写記録方法では、連続した基材上に、例えば、イエロー、マゼンタ及びシアン(必要に応じてブラック)の色材層を面順次に繰り返し多数設けた熱転写シートが主に使用されている。熱転写記録方法は、加熱によって色材層が溶融軟化し、熱転写受像シート上に移行して画像を形成する熱溶融型記録方法と、加熱によって色材層中の染料を被転写体上に移行して画像を形成する昇華型記録方法とに大別される。中でも、昇華型記録方法は、昇華性染料を色材としているため中間調の再現性や階調性に優れており、原稿通りのフルカラー画像を受像シート上に鮮明に表現することができるので、デジタルカメラ、ビデオ、コンピューター等のカラー画像形成に応用されている。
【0003】
昇華型記録方法に用いられる昇華型熱転写シートは、一般的に、所定の巻径に巻き回された状態で保管されるところ、色材層に含まれる色材がブリード等により色材層の表面に局在化した状態で存在している場合には、当該昇華性染料が、熱転写シートの背面層側に移行(所謂キック)しやすくなる。そして、当該背面層側に移行した昇華性染料が、再び、色材層側に再移行(所謂バック)した場合、特に、色相が異なる各色の色材層が面順次に設けられた熱転写シートにおいて、背面層側に移行した昇華性染料が、当該昇華性染料とは色相が異なる他の色材層に移行した場合には、当該他の色材層を用いた画像形成時に発色特性の低下を引き起こす。また、色材層の保存性が低い場合には、地汚れの発生を引き起こす。
【0004】
このような状況下、キックの発生を防止するための熱転写シートについての種々の検討がなされており、例えば、特許文献1には、基材の一方の面に染料層が設けられ、基材の他方の面に背面層が設けられた熱転写シートにおいて、染料層に、インドアニリン系の染料と、ポリビニルアセタール樹脂A、及びポリビニルアセタール樹脂B(特許文献1における一般式(1)で示されるポリビニルアセタール樹脂)を含有せしめた熱転写シートが提案されている。この熱転写シートによれば、熱転写シートの保存中に、背面層へ染料が移行することを防止できるとされている。しかしながら、特許文献1に提案がされている熱転写シートでは、染料層に含有される染料種、及びバインダー樹脂種が、所定の成分に限定されることから、材料選択の幅が狭いといった問題が内在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−286060号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、色材層に含有される色材に特段の制限を受けることなく、キックや、地汚れの発生を抑制することができる昇華型熱転写シートの製造方法、及び当該製造方法で用いられる色材層用塗工液を提供することを主たる課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明は、昇華型熱転写シートの色材層を形成するための色材層用塗工液であって、所定の溶媒、色材、分散剤、及びバインダー樹脂を含有しており、前記色材は、前記所定の溶媒に分散されており、前記バインダー樹脂が、(i)数平均分子量(Mn)が40000以下のポリビニルアセタール樹脂、又は(ii)JIS K 6703(1995)における種類及び粘度記号でL1/8以下、或いはH1/8以下のニトロセルロース樹脂であることを特徴とする。
【0008】
また、前記所定の溶媒に分散されている前記色材が、下記一般式(1)、及び下記一般式(2)で示される色材であってもよい。
【0009】
【化1】
一般式(1)におけるXは水素原子、又はハロゲン原子を表し、R1は水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、若しくはその誘導体、又はアルキル基、若しくはベンゼン環を含む総炭素数6〜10のアシル基を表す。
【0010】
【化2】
一般式(2)におけるR1〜R5は水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、若しくはその誘導体又はスルホン酸基(−SO3H)、又はスルホンアミド基で置換させたスルホン化誘導基を表す。
【0011】
また、前記色材層用塗工液は、前記分散剤として、ポリエーテル系分散剤、グラフト型ポリマー分散剤、アクリル系ブロック型ポリマー分散剤の群から選択される1種、又は2種以上を含有していてもよい。
【0012】
また、前記色材層用塗工液は、さらに前記所定の溶媒に溶解された昇華性染料を含有していてもよい。
【0013】
また、上記課題を解決するための本発明は、昇華型熱転写シートの製造方法であって、基材の一方の面上に色材層用塗工液を塗工して色材層を形成する工程を含み、前記色材層用塗工液は、所定の溶媒、色材、分散剤、及びバインダー樹脂を含有しており、且つ、当該色材は、前記所定の溶媒に分散されており、前記色材層用塗工液が含有するバインダー樹脂が、(i)数平均分子量(Mn)が40000以下のポリビニルアセタール樹脂、又は(ii)JIS K 6703(1995)における種類及び粘度記号でL1/8以下、或いはH1/8以下のニトロセルロース樹脂であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の色材層用塗工液、及び昇華型熱転写シートの製造方法によれば、色材層に含有される色材に特段の制限を受けることなく、キックや、地汚れの発生を抑制することができる昇華型熱転写シートを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】一実施形態の色材層用塗工液を用いて形成された色材層を備える昇華型熱転写シートの概略断面図である。
図2】一実施形態の色材層用塗工液を用いて形成された色材層を備える昇華型熱転写シートの概略断面図である。
図3】一実施形態の色材層用塗工液を用いて形成された色材層を備える昇華型熱転写シートの概略断面図である。
図4】比較の染料層用塗工液を用いて形成された染料層を備える昇華型熱転写シートの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<<一実施形態の色材層用塗工液>>
以下、本発明の一実施形態の色材層用塗工液(以下、一実施形態の色材層用塗工液と言う場合がある。)について説明する。一実施形態の色材層用塗工液は、昇華型熱転写シートの色材層を形成するために用いられる塗工液であって、必須の成分として、所定の溶媒、色材、分散剤、及びバインダー樹脂を含有している(以下、これら必須の成分を総称して条件1と言う場合がある)。そして、一実施形態の色材層用塗工液は、上記色材が、上記所定の溶媒に分散可能な色材であり(以下、条件2と言う場合がある)、上記バインダー樹脂が、(i)数平均分子量(Mn)が40000以下のポリビニルアセタール樹脂、又は(ii)JIS K 6703(1995)における種類及び粘度記号でL1/8以下、或いはH1/8以下のニトロセルロース樹脂である(以下、条件3と言う場合がある。)ことを特徴としている。本願明細書で言う数平均分子量(Mn)とは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算値を意味する。
【0017】
以下、一実施形態の色材層用塗工液を用いて形成される昇華型熱転写シートについて言及しつつ、一実施形態の色材層用塗工液について説明する。本願明細書で言う昇華型熱転写シートとは、サーマルヘッド等の加熱手段を用いて、背面層側に熱を印加することで色材層中の色材を被転写体上に移行して画像を形成する昇華型記録方法に用いられる熱転写シートであり、一実施形態の色材層用塗工液は、この昇華型熱転写シートの色材層を形成するための塗工液である。
【0018】
図4は、上記条件1〜3を満たさない「比較の染料層用塗工液(比較の色材層用塗工液)」、具体的には、溶媒、昇華性染料10y、バインダー樹脂を含有し、当該昇華性染料を溶媒中に溶解してなる「比較の染料層用塗工液」を用いて形成された染料層2A(色材層2A)を備える「比較の熱転写シート」100xの一例を示す概略断面図である。図示する形態では、基材1の一方の面上に染料層2Aが設けられ、基材1の他方の面上に背面層5が設けられており、染料層2Aにおける昇華性染料10yの存在状態を模式的に示している。
【0019】
溶媒に溶解可能な昇華性染料10yは、通常、分子量が低く、また単分子であることから、図4に示すように、昇華性染料10yを溶媒中に溶解してなる「比較の染料層用塗工液」を用いて形成された染料層2Aにおいて、昇華性染料10yは、染料層2Aの界面に局在化した状態で存在している。熱転写シートは、一般的に小巻状態で保管され、当該小巻状態において、色材層と背面層とは直接に接触していることから、染料層2Aにおいて昇華性染料10yが、図4に示す状態で存在している場合には、熱転写シートを小巻状態で保管した際等に、昇華性染料10yは、基材1の背面層5側に移行しやすくなる。つまり、条件1〜3を満たさない「比較の染料層用塗工液」を用いて形成された染料層2Aを備える熱転写シートでは、キックや、地汚れの発生を防止することができない。
【0020】
一方で、分子量が高い昇華性染料を用いることにより、昇華性染料の界面への局在化を低減できたとしても、分子量の高い昇華性染料と、バインダーとの親和性が不十分であると、キックや地汚れの発生を防止することが困難となる。つまり、昇華性染料の界面への局在化を防止するという点では分子量が高い昇華性染料が好ましく、またキックや地汚れの発生を防止するという点ではバインダーとの親和性が高い昇華性染料が好ましいが、双方を両立する昇華性染料は限られており、材料選定の幅が制限される。
【0021】
次に、条件1、2を満たす色材層用塗工液を用いて形成された色材層について説明する。図1は、条件1、2を満たす色材層用塗工液、具体的には、溶媒、色材10x、分散剤、バインダー樹脂を含有し、当該色材10xを溶媒中に分散してなる色材層用塗工液を用いて形成された色材層2を備える熱転写シート100の一例を示す概略断面図である。図示する形態では、基材1の一方の面上に色材層2が設けられ、基材1の他方の面上に背面層5が設けられており、色材層2における色材10xの存在状態を模式的に示している。
【0022】
図1に示すように、色材10xを溶媒中に分散してなる色材層用塗工液を用いて形成された色材層2によれば、色材層2中に、色材10xを分散した状態で存在させることができ、昇華性染料が界面へ局在化することに起因して生じ得るキックや地汚れの発生を抑制することができる。つまり、条件1、2を満たす色材層用塗工液を用いて形成される色材層2によれば、キックや地汚れの発生を抑制することができる。
【0023】
ところで、条件1、2を満たす色材層用塗工液を用いて形成される色材層を備える熱転写シートを用いて高濃度の画像形成を可能とするためには、当該色材層中に分散されている色材10xの粒子径を小さくする、換言すれば、色材層用塗工液中に色材10xを微粒子化させた状態で存在させることが重要であると考えられる。
【0024】
ここで、上記条件1、2を満たす色材層用塗工液が、バインダー樹脂として、数平均分子量(Mn)が40000以下のポリビニルアセタール樹脂、又はJIS K 6703(1995)における種類及び粘度記号でL1/8以下、或いはH1/8以下のニトロセルロース樹脂を含有していない場合、つまり、色材層用塗工液に、上記条件3を満たすバインダー樹脂が含有されていない場合には、ペイントシェーカー等を用いた色材層用塗工液の調製時において、色材層用塗工液中に含有される色材10xの微粒子化が阻害され、当該色材層用塗工液を用いて形成される色材層中に含有される色材10xの粒子径は大きくなる傾向にある。上記で説明したように、条件1、2を満たす色材層用塗工液を用いて形成された色材層を備える熱転写シートを用いて高濃度の画像形成を行うためには、当該色材層中に微細化した色材10xを存在させることが必要であるものの、条件3を満たさない場合には、形成される色材層中に色材10xを微粒子化した状態で存在させることができず、高濃度の画像形成が困難となる。
【0025】
条件1、2を満たす色材層用塗工液に含有されているバインダー樹脂が、上記条件3を満たさないことで、色材10xの微粒子化が阻害されるメカニズムは現在のところ必ずしも明らかとはなっていないが、以下の理由によるものと推察される。上記条件1、2を満たす色材層用塗工液に、バインダー樹脂として、ポリビニルアセタール樹脂や、ニトロセルロース樹脂を含有せしめる場合において、数平均分子量(Mn)が40000を超えるポリビニルアセタール樹脂や、JIS K 6703(1995)における種類及び粘度記号でL1/8を超える、もしくはH1/8を超えるニトロセルロース樹脂を採用した場合には、色材層用塗工液の粘度が上昇し、これにともない色材層用塗工液の流動性は低下していく。
【0026】
ペイントシェーカー等を用いた色材層用塗工液の調製時において、色材10xの微粒子化を促進させるためには、調製時における色材10x同士の衝突回数を多くすることが重要であると考えられる。しかしながら、上記のように、条件1、2を満たす色材層用塗工液において、バインダー樹脂として、上記条件3を満たさないポリビニルアセタール樹脂や、ニトロセルロース樹脂を採用した場合には、色材層用塗工液の流動性は低下していくことから、色材10xの衝突回数を多くすることができず、色材10xの微粒子化が阻害されるものと推察される。
【0027】
また、色材層用塗工液の粘度が高くなるにともない、色材層用塗工液の安定性が低下していく傾向にある。そして、色材層用塗工液の安定性の低下により、色材層用塗工液がゲル化してしまう等の問題が生じ、この色材層用塗工液を用いて色材層を形成した場合には、塗工ムラ等により形成される色材層の面質不良を引き起こす。熱転写シートの色材層の面質が不良となっている場合には、この熱転写シートを用いた画像形成時において、印画物の濃度低下や、印画抜け等の不良が生ずることとなる。
【0028】
また、ポリビニルアセタール樹脂の数平均分子量(Mn)が40000を超えるポリビニルアセタール樹脂を採用した場合には、ポリビニルアセタール樹脂の分子鎖が長くなりすぎてしまい、ポリビニルアセタール樹脂の分子鎖に色材10xが絡まりやすくなることも、色材10xの衝突回数が減少し、色材10xの微粒子化が阻害される理由の1つとして挙げることができる。
【0029】
また、ポリビニルアセタール樹脂、ニトロセルロース樹脂以外のバインダー樹脂を採用した場合には、当該バインダー樹脂の数平均分子量(Mn)や、当該バインダー樹脂を含有する色材層用塗工液の粘度によらず、色材10xを十分に微粒子化させることができない。この理由としては、バインダー樹脂の分子構造等が影響しているものと推察される。また、ポリビニルアセタール樹脂、ニトロセルロース樹脂以外のバインダー樹脂を採用した場合には、形成される色材層の離型性が低くなり、この色材層を備える昇華型熱転写シートを用いた画像形成時において、転写不良を引き起こしやすくなるといった問題も生じやすくなる。
【0030】
一実施形態の色材層用塗工液は、(i)数平均分子量(Mn)が40000以下のポリビニルアセタール樹脂、(ii)JIS K 6703(1995)における種類及び粘度記号でL1/8以下、或いはH1/8以下のニトロセルロース樹脂の何れか一方の樹脂を含有していてもよく、(i)、(ii)の双方の樹脂を含有していてもよい。以下、一実施形態の色材層用塗工液に含有される各成分について具体的に説明する。
【0031】
「所定の溶媒」
一実施形態の色材層用塗工液は、必須の成分として、後述する色材10xを分散可能な溶媒を含有している。所定の溶媒とは、色材10xを分散させることができる溶媒を意味する。つまり、所定の溶媒について特に限定はなく、一実施形態の色材層用塗工液中に含有される色材10xとの関係に応じて適宜選択することができる。溶媒の一例としては、メチルエチルケトン、トルエン、キシレン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、イソプロピルアルコール、エタノール等の有機溶剤や、水等を挙げることができる。所定の溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いることもできる。所定の溶媒の含有量について特に限定はないが、一実施形態の色材層用塗工液中に含有されている固形分総量に対し、500質量%以上2000質量%以下の範囲で含有されていることが好ましい。
【0032】
「所定の溶媒に分散可能な色材」
一実施形態の色材層用塗工液には、上記所定の溶媒に分散可能な色材10xが含有されている。本願明細書で言う色材とは、昇華性染料、及び顔料を含む概念である。所定の溶媒に分散可能な色材10xについても特に限定はなく、上記所定の溶媒の種別に応じて適宜選択することができる。具体的には、一実施形態の色材層用塗工液に含まれている上記所定の溶媒に分散可能な色材10xであれば、いかなる色材であってもよい。なお、ここで言う分散可能な色材とは、所定の溶媒に溶解不能な色材を意味し、色材の分散性能について特に限定はない。例えば、後述する分散剤によって、一実施形態の色材層用塗工液中における色材10xの分散性を向上させることもできる。つまり、結果として、一実施形態の色材層用塗工液中に色材10xが分散された状態で存在していればよい。
【0033】
一実施形態の色材層用塗工液では、上記条件3を満たすバインダー樹脂が含有されていることから、色材層用塗工液中に、色材10xの粒子径を300nm以下まで微粒子化させた状態で存在させることができる。なお、一実施形態の色材層用塗工液中に含有されている色材10xの粒子径が300nmを超えるにしたがい、当該一実施形態の色材層用塗工液を用いて形成された色材層を備える熱転写シートを用いた画像形成時における濃度は低いものとなる。ここで言う色材の粒子径とは、一実施形態の色材層用塗工液中の色材の平均分散粒径を意味する。具体的には、色材層用塗工液の分散媒体中に分散している色材粒子の分散粒径であって、レーザー光散乱粒度分布計により測定されるものである。このレーザー光散乱粒度分布計による粒径の測定としては、塗工液に含有されている所定の溶媒で、塗工液をレーザー光散乱粒度分布計で測定可能な濃度に適宜希釈(例えば、1000倍など)し、レーザー光散乱粒度分布計(例えば、日機装社製ナノトラック粒度分布測定装置UPA−EX150)を用いて動的光散乱法により23℃にて測定することができる。ここでの平均分散粒径は、体積平均粒径である。
【0034】
上記所定の溶媒に分散可能な色材10xとしては、例えば、以下に例示する昇華性染料や、顔料の中から、塗工液中に含まれる溶媒に応じて適宜選択することができる。具体的には、所定の溶媒を選択し、次いで、以下に例示する昇華性染料や、顔料の中から、当該所定の溶媒に分散可能な色材を選択すればよい。
【0035】
一例としての昇華性染料としては、ジアリールメタン系染料、トリアリールメタン系染料、チアゾール系染料、メロシアニン染料、ピラゾロン染料、ピラゾロンメチン、ピリドンメチン等のメチン系染料、インドアニリン系染料、インドナフトール系染料、アセトフェノンアゾメチン、ピラゾロアゾメチン、ピラゾロンアゾメチン、ピラゾロトリアゾールアゾメチン、イミダゾルアゾメチン、イミダゾアゾメチン、ピリドンアゾメチン等のアゾメチン系染料、キサンテン系染料、オキサジン系染料、ジシアノスチレン、トリシアノスチレン等のシアノスチレン系染料、チアジン系染料、アジン系染料、アクリジン系染料、ベンゼンアゾ系染料、ピリドンアゾ、チオフェンアゾ、チアゾールアゾ、イソチアゾールアゾ、ピロールアゾ、ピラゾールアゾ、イミダゾールアゾ、チアジアゾールアゾ、トリアゾールアゾ、ジスアゾ等のアゾ系染料、スピロピラン系染料、インドリノスピロピラン系染料、フルオラン系染料、ローダミンラクタム系染料、ナフトキノン系染料、アントラキノン系染料、キノフタロン系染料、アミノピラゾール系染料、ピラゾロトリアゾール系染料、ジシアノスチリル、トリシアノスチリル等のスチリル系染料等が挙げられる。
【0036】
具体的には、C.I.(Color index)ディスパースイエロー51,3,54,79,60,23,7,141,201,231、C.I.ディスパースブルー24,56,14,301,334,165,19,72,87,287,154,26,354、C.I.ディスパースレッド135,146,59,1,73,60,167、C.I.ディスパースオレンジ149、C.I.ディスパースバイオレット4,13,26,36,56,31、C.I.ソルベントイエロー56,14,16,29,93、C.I.ソルベントブルー70,35,63,36,50,49,111,105,97,11、C.I.ソルベントレッド135,81,18,25,19,23,24,143,146,182、C.I.ソルベントバイオレット13、C.I.ソルベントブラック3、C.I.ソルベントグリーン3等を挙げることができる。
【0037】
中でも、下記一般式(1)で示されるキノフタロン染料は、耐光性を有し、輝度が高い特徴を有し、色材層用塗工液中における分散性も良好な点で、所定の溶媒に分散可能な色材10xとして好ましく使用可能である。
【0038】
【化3】
【0039】
一般式(1)におけるXは水素原子、又はハロゲン原子を表し、R1は水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、若しくはその誘導体、又はアルキル基、若しくはベンゼン環を含む総炭素数6〜10のアシル基を表す。なお、一般式(1)において、X、R1が共に水素原子のキノフタロン染料は、ディスパースイエロー54である。また、一般式(1)において、XがBr、R1が水素原子のキノフタロン染料は、ディスパースイエロー64である。
【0040】
昇華性染料は市販品をそのまま用いることもでき、例えばイエロー染料としてフォロンブリリアントイエローS−6GL(サンド社製、ディスパースイエロー231)、マクロレックスイエロー6G(バイエル社製、ディスパースイエロー201)、マゼンタ染料としてMS−RED−G(三井東圧化学株式会社製、ディスパースレッド60)、マクロレックスレッドバイオレットR(バイエル社製、ディスパースバイオレット26)、シアン染料はカヤセットブルー714(日本化薬株式会社製、ソルベントブルー63)、フォロンブリリアントブルーS−R(サンド社製、ディスパースブルー354)、ワクソリンブルーAP−FW(ICI社製、ソルベントブルー36)等を挙げることができる。
【0041】
所定の溶媒に分散可能な昇華性染料は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組合せて用いることもできる。また、所定の溶媒に分散可能な色材として、昇華性染料と、顔料とを併用することもできる。また、2種以上の顔料を組合せて用いることもできる。なお、一実施形態の色材層用塗工液は、当該色材層用塗工液に含有されている全ての溶媒に対し、分散可能な色材を1種以上含有していることを条件とする。換言すれば、色材層用塗工液に含有されている全ての溶媒に対し溶解不能な色材10xが含有されていることを条件とする。所定の溶媒に分散可能な色材10xとともに、色材層2に所定の溶媒に溶解可能な昇華性染料10yが含有されている色材層用塗工液の実施形態については、第2実施形態の色材層用塗工液として後述する。
【0042】
所定の溶媒に分散可能な色材10xとして顔料を用いる場合には、公知の有機または無機の顔料を適宜選択すればよい。顔料は、十分な着色濃度を有し、光、熱等により変色、退色しないものが好ましい。顔料の色としては、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックに限定されるものではなく、種々の色の着色剤を使用することができる。
【0043】
顔料の一例としては、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、ペリレン・ペリノン系顔料、イソインドリノン系顔料、イソインドリン系顔料、ジオキサジン系顔料、キノフタロン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、アンスラキノン系顔料、チオインジゴ系顔料、金属錯体系顔料などが挙げられる。これらの有機顔料の中でも特にC.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー150、C.I.ピグメントグリーン7、C.I.ピグメントグリーン36、C.I.ピグメントレッド122およびC.I.ピグメントバイオレット19などが、輝度が高く好ましい。また、下記一般式(2)で示される顔料は、色材層用塗工液中における分散性が高く、色材層用塗工液の安定性を高めることができ、また、キックや、地汚れの発生をより効果的に防止可能な点で、所定の溶媒に分散可能な色材として好ましく使用可能である。色材層用塗工液には、所定の溶媒に分散可能な色材10xとして、上記一般式(1)で示されるキノフタロン染料とともに、下記一般式(2)で示される顔料が含有されていることが特に好ましい。所定の溶媒に分散可能な色材10xとして、上記一般式(1)、及び一般式(2)で示される色材層を含有する色材層用塗工液によれば、より高濃度の画像形成が可能であり、耐光性、色材分散性が高く、キックや地汚れを十分に抑制可能な色材層を形成することができる。
【0044】
【化4】
【0045】
一般式(2)におけるR1〜R5は水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、若しくはその誘導体又はスルホン酸基(−SO3H)、又はスルホンアミド基で置換させたスルホン化誘導基を表す。
【0046】
上記一般式(2)で示される顔料の好ましい形態は、R1〜R5が、少なくとも1つのスルホン酸基(−SO3H)、又はスルホンアミド基で置換させたスルホン化誘導基を有する。さらに、スルホン酸基の一部、若しくは全部がアミンやアンモニウムヒドロキシド、クロリド、ブロミド等や、金属等によって塩形成され、スルホン酸塩となっていてもよい。
【0047】
以下、具体的な溶媒を例に挙げ、色材層用塗工液中に含まれる色材の一例について説明する。なお、色材層用塗工液に含有される所定の溶媒、及び当該所定の溶媒に分散可能な色材は、この組合せに限定されるものではない。
【0048】
所定の溶媒がメチルエチルケトン/トルエンの混合溶媒である場合;
メチルエチルケトン/トルエンの混合溶媒に分散可能な色材としては、例えば、上記で例示した顔料や、上記で例示した昇華性染料、例えば、ディスパースイエロー54等を使用することができる。
【0049】
「分散剤」
一実施形態の色材層用塗工液には、分散剤が含有されている。分散剤を含有する色材層用塗工液によれば、条件3を満たすバイダンダー樹脂との相乗効果によって、色材層用塗工液中における色材10xの分散安定性を向上させ、また色材10xの微粒子化を促進させることができる。これにより、一実施形態の色材層用塗工液を用いて形成された色材層を備える熱転写シートにおいて、キックや、地汚れの発生をより効果的に抑制することができ、かつ、高濃度の画像形成が可能となる。
【0050】
分散剤について特に限定はなく、グラフト型ポリマー分散剤や、ポリエーテル系分散剤、アクリル系ブロック型ポリマー分散剤等を挙げることができる。これ以外にも、分散剤として、有機顔料にスルホン化物等の処理をした誘導体等を挙げることができる。処理方法としては、ロジン処理の他、酸性基処理、塩基性処理、顔料誘導体処理などの表面処理法を挙げることができる。中でも、グラフト型ポリマー分散剤や、ポリエーテル系分散剤、アクリル系ブロック型ポリマー分散剤は、色材層用塗工液中における色材10xの分散安定性に優れる点で好ましい。したがって、一実施形態の色材層用塗工液は、グラフト型ポリマー分散剤、ポリエーテル系分散剤、及びアクリル系ブロック型ポリマー分散剤から選択される1種、又は2種以上を含有していることが好ましい。
【0051】
ポリエーテル系分散剤としては、例えばポリエーテル系カルボン酸、ポリエーテル系リン酸、ポリエーテル系フェノール等が挙げられる。上記ポリエーテル系分散剤は、市販品では楠本化成社製の商品名 DISPARLON DA234、DISPARLON DA325、ソルスパース20000(ルーブリゾール(株)社製)等を挙げることができる。
【0052】
グラフト型ポリマー分散剤としては、複数の塩基性基などの官能基を有する幹ポリマー1分子に、2分子以上の枝ポリマーがグラフト結合した構造のポリマーをいい、例えば、幹ポリマー部がポリアリルアミン、枝ポリマー部がε−カプロラクトンの開環重合体で構成されるポリマーが挙げられる。上記グラフト型ポリマーの分散剤としては、アジスパーPB821、PB88−IP、アジスパーPB822、アジスパーPB823、アジスパーPB824、アジスパーPB827、アジスパーPB880、アジスパーPB881(味の素ファインテクノ株式会社製)等を挙げることができる。
【0053】
アクリル系ブロック型ポリマー分散剤としては、そのポリマーの主鎖構造が、例えばメタクリル系樹脂、アクリル系樹脂等が挙げられ、特に3級アミノ基を有するメタクリル系、アクリル系のブロック型ポリマー分散剤が好ましい。このブロック型ポリマー分散剤の重量平均分子量(Mw)は、500〜20000の範囲内であることが好ましく、1000〜15000の範囲内であることがより好ましく、3000〜12000の範囲内であることがさらに好ましい。上記範囲内であることにより、色材を均一に分散させる分散初期の色材に対する濡れ性と分散安定性を両立することが可能となる。本願明細書で言う重量平均分子量(Mw)とは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算値を意味する。上記3級アミノ基を有するメタクリル系、アクリル系のブロック型ポリマー分散剤は、例えば、ビックケミー社製のDisperbyk2000、Disperbyk−2001、BYK−LPN6919、BYK−LPN21116、BYK−LPN21324等を挙げることができる。
【0054】
色材層用塗工液中における分散剤の含有量について特に限定はないが、所定の溶媒に分散可能な色材100質量部に対し、100質量部以下、好ましくは、0.5質量部以上100質量部以下、より好ましくは、1質量部以上70質量部以下、特に好ましくは、10質量部以上50質量部以下である。分散剤の含有量が、100質量部を超えると、鮮明性等が損なわれる恐れがある。また一方で、分散剤の含有量が少なすぎると、分散剤としての機能が十分に発揮できなくなる。
【0055】
「バインダー樹脂」
色材層用塗工液に含有されるバインダー樹脂は、上記で説明した条件3を満たすものであればよく、これ以外の条件について特に限定はない。なお、条件3を満たすポリビニルブチラール樹脂や、ニトロセルロース樹脂は、それぞれを単独で用いてもよく、ポリビニルブチラール樹脂と、ニトロセルロース樹脂を併用して用いることもできる。また、上記条件3を満たす2種以上のポリビニルアセタール樹脂や、2種以上のニトロセルロース樹脂を用いることもできる。
【0056】
ポリビニルアセタール樹脂は、数平均分子量(Mn)が40000以下であるとの条件を満たすものであれば、その下限値がいかなるものであっても、上記で説明した各種の効果を十分に奏することができる。つまり、ポリビニルアセタール樹脂の数平均分子量(Mn)の下限値についていかなる限定もされることはない。一例としての数平均分子量(Mn)の下限値は、10000、或いは1000程度である。また、ポリビニルアセタール樹脂としては、数平均分子量(Mn)が40000以下であって、且つその粘度が、100mPa・s以下のものが特に好ましい。
【0057】
ニトロセルロース樹脂は、JIS K 6703(1995)における種類及び粘度記号でL1/8以下、或いはH1/8以下との条件を満たすものであればよく、これ以外の条件について特に限定はない。
【0058】
上記特徴3を満たすニトロセルロース樹脂としては、例えば、太平化学製品(株)製のL1/8、L1/16、稲畑産業(株)製のDHX3−5、DHX4−6、DHX5−10、DLX5−8等の市販品を使用することもできる。
【0059】
上記特徴3を満たすバインダー樹脂の含有量について特に限定はないが、所定の溶媒に分散可能な色材100質量部に対する、バインダー樹脂の質量が20質量部未満である場合には、色材層用塗工液を用いて形成される色材層を備える昇華型熱転写シートの保存性が低下していく傾向にあり、200質量部を超える場合には、色材層用塗工液中における色材の微細化が阻害されやすくなり、また、当該色材層用塗工液を用いて形成された色材層を備える昇華型熱転写シートを用いた画像形成時において、印画物の印画濃度が低くなる傾向にある。この点を考慮すると、バインダー樹脂の含有量は、所定の溶媒に分散可能な色材100質量部に対し、20質量部以上200質量部以下であることが好ましい。
【0060】
色材層用塗工液は、上記条件3を満たすバインダー樹脂とともに、他の任意のバインダー樹脂を本発明の趣旨を妨げない範囲で含有していてもよい。任意のバインダー樹脂としては、例えば、エチルセルロース樹脂、ヒドロキシエチルセルロース樹脂、エチルヒドロキシセルロース樹脂、メチルセルロース樹脂、酢酸セルロース樹脂等のセルロース系樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルピロリドン等のビニル系樹脂、ポリ(メタ)アクリレート、ポリ(メタ)アクリルアミド等のアクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂等が挙げられる。また、上記条件3を満たさないポリビニルアセタール樹脂や、ニトロセルロース樹脂を含有していてもよい。これら任意のバインダー樹脂は、上記条件3を満たすバインダー樹脂を含むバインダー樹脂との合計固形分総量に対し、50質量%未満であることが好ましい。
【0061】
色材層用塗工液は、上記条件1である必須の成分に加え、熱転写受像シートの受容層との離型性を向上させるための離型剤、帯電防止剤、受容層との滑性を制御するための有機または無機フィラー等を含有していてもよい。離型剤としては、変性シリコーンオイル、ポリエチレンワックス、アミドワックス、テフロン(登録商標)、弗素系やリン酸エステル系の界面活性剤等を挙げることができる。
【0062】
「所定の溶媒に対する色材の分散性の特定方法」
色材層用塗工液に含有されている色材が、所定の溶媒に分散可能である否かは、以下の方法により判断することができる。所定の溶媒に、目的とする色材を2w/v%の量となるように添加し、50℃にて1時間加熱撹拌する。次いで、得られた液を25℃にて60時間放置した後に、目的とする色材の析出の有無を目視で確認する。このときに、目的とする色材の析出を目視で確認できなかった場合には、目的とする色材は、所定の溶媒に溶解可能な色材であると判断することができる。一方、目的とする色材の析出を目視で確認できた場合には、目的とする色材は、所定の溶媒に溶解不能、換言すれば分散可能な色材であると判断することができる。
【0063】
「バインダー樹脂、分散剤、色材、残留溶媒の特定方法」
対象とする熱転写シート(以下、対象熱転写シートという)が備える色材層が、一実施形態の色材層用塗工液を用いて形成されたものであるかは、例えば、以下の方法により判別可能である。まず、対象熱転写シートの色材層を分析して当該色材層に含まれている色材成分、バインダー樹脂成分、及び分散剤成分を特定する。これらの成分の特定方法としては、核磁気共鳴分光法、IRスペクトル法等の従来公知の分析方法を用いて特定することができる。
【0064】
次いで、当該色材層に残留している溶媒の種別を特定する。溶媒の種別の特定方法としては、例えば、ガスクロマトグラフィー法を用いて特定することができる。ガスクロマトグラフィー法による溶媒の種別の特定には、例えば、島津製作所製のガスクロマトグラフィー GC14−A等を使用することができる。なお、対象熱転写シートの基材や、背面層、或いは任意の層中に含有されている溶媒を排除すべく、溶媒の種別の特定においては、対象熱転写シートの色材層に対応する層についての特定を行う必要がある。具体的には、ガスクロマトグラフィー法を用いて溶媒の種別の特定を行う場合には、対象熱転写シートの色材層に対応する層の一部分のみを採取して分析を行うことが重要である。
【0065】
そして上記で特定された色材成分の少なくとも1種が、上記で特定された溶媒に溶解可能な色材成分であり、また、特定されたバインダー樹脂成分が上記条件3を満たすとともに、分散剤を含有している場合には、対象熱転写シートの色材層は、一実施形態の色材層用塗工液を用いて形成されたものであると判別できる。特定された色材成分が、特定された溶媒に溶解可能、或いは分散可能なものであるかは、上記「所定の溶媒に対する色材の分散性の特定方法」を用いて特定することができる。
【0066】
(第1実施形態の色材層用塗工液)
第1実施形態の色材層用塗工液は、上記一実施形態の色材層用塗工液で説明した所定の溶媒、色材、分散剤、及びバインダー樹脂を含有し、かつ上記条件1〜条件3を満たす色材層用塗工液である。なお、第1実施形態の色材層用塗工液は、所定の溶媒に溶解可能な昇華性染料を含有していない実施形態であり、上記一実施形態の色材層用塗工液とある記載をそのまま第1実施形態の色材層用塗工液と読み替えればよい。
【0067】
第1実施形態の色材層用塗工液中によれば、当該色材層用塗工液中に色材10xを微粒子化した状態で存在させることができる。これにより、第1実施形態の色材層用塗工液を用いて形成された色材層を備える熱転写シートを用いた画像形成時において、高濃度の画像形成が可能となる。また、第1実施形態の色材層用塗工液によれば、図1に示すように、色材10xが均一に分散された色材層2を形成することができ、形成された色材層2を備える熱転写シートにおいて、キックや、地汚れの発生を抑制することができる。
【0068】
(第2実施形態の色材層用塗工液)
第2実施形態の色材層用塗工液は、上記一実施形態の色材層用塗工液で説明した所定の溶媒、色材、分散剤、及びバインダー樹脂を含有し、かつ上記条件1〜条件3を満たすとともに、さらに、所定の溶媒に溶解可能な昇華性染料を含有している色材層用塗工液である。第2実施形態の色材層用塗工液は、第1実施形態の色材層用塗工液に対し、さらに所定の溶媒に溶解可能な昇華性染料が含有されている点においてのみ、上記第1実施形態の色材層用塗工液と相違する。以下、相違点を中心に説明する。特に断りがない限り、第2実施形態の色材層用塗工液が含有している各成分は、上記一実施形態の色材層用塗工液で説明したものをそのまま用いることができ、詳細な説明は省略する。
【0069】
図2は、第2実施形態の色材層用塗工液を用いて形成された色材層を備える熱転写シートの概略断面図であり、所定の溶媒に分散可能な色材10x、及び所定の溶媒に溶解可能な昇華性染料を模式的に示している。
【0070】
第2実施形態の色材層用塗工液によれば、第1実施形態の色材層用塗工液と同様に、当該第2実施形態の色材層用塗工液を用いて形成された色材層を備える熱転写シートにおいて、キックや地汚れの発生を防止できる。また、第2実施形態の色材層用塗工液を用いて形成される色材層中に色材10xを微粒化した状態で存在させることができ、当該形成される色材層を備える熱転写シートを用いて、高濃度の画像形成が可能となる。また、第2実施形態の色材層用塗工液を用いて形成される色材層中には、所定の溶媒に溶解可能な昇華性染料が含有されていることから、微粒子化された色材10xと、所定の溶媒に溶解可能な昇華性染料との相乗効果よって、濃度の高い画像を形成することができ、特に、印画エネルギーを上げていった場合に、第1実施形態の色材層用塗工液を用いて形成された色材層を備える熱転写シートと比較して、より濃度の高い画像を形成することができる色材層を得ることができる。
【0071】
第2実施形態の色材層用塗工液を用いて形成される色材層2を備える熱転写シートが、第1実施形態の色材層用塗工液を用いて形成される色材層2を備える熱転写シートと同様に、キックや地汚れを防止することができる詳細なメカニズムは現在のところ必ずしも明らかとはなっていないが、所定の溶媒に分散可能な色材10xが、所定の溶媒に溶解可能な昇華性染料10yの色材層2の界面への局在化を抑制する役割として機能し、第2実施形態の色材層用塗工液を用いて形成される色材層2を備える熱転写シートでは、色材層2中に、昇華性染料10yを分散した状態で存在させることができているものと推察される。
【0072】
色材10xが、昇華性染料10yの界面への局在化を抑制する役割として機能する理由としては、昇華性染料10yと、色材10xとの親和性を挙げることができる。図4に示すように、従来であれば、所定の溶媒に昇華性染料10yが溶解されてなる「比較の染料層用塗工液」を用いて染料層2Aを形成した場合には、当該昇華性染料10yは、自由界面に向かって局在化する。しかしながら、第2実施形態の色材層用塗工液では、色材10xが分散されていることから、色材10xと、昇華性染料10yとの親和性により、第2実施形態の色材層用塗工液を用いて形成される色材層2においては、昇華性染料10yを、分散状態で存在している色材10xの周辺に存在させることができると推察される。これにより、図2に示すように、昇華性染料10yの界面への局在化が抑制され、昇華性染料10yを色材層2中に分散した状態で存在させることができ、キックや地汚れの発生を防止できていると考えられる。
【0073】
また、第2実施形態の色材層用塗工液には、所定の溶媒に溶解可能な昇華性染料が含有されていることから、第2実施形態の色材層用塗工液を用いて形成される色材層中に昇華性染料10yを分子レベルで存在させることができる。これにより、第2実施形態の色材層用塗工液を用いて形成される色材層を備える熱転写シートでは、より濃度の高い画像の形成が可能となる。特に、印画エネルギーを上げていった場合に、第1実施形態の色材層用塗工液を用いて形成された色材層を備える熱転写シートと比較して、より濃度の高い画像の形成が可能となる。
【0074】
「所定の溶媒に溶解可能な昇華性染料」
所定の溶媒に溶解可能な昇華性染料について特に限定はなく、第2実施形態の色材層用塗工液に含有されている所定の溶媒の種別に応じて適宜選択することができる。具体的には、第2実施形態の色材層用塗工液に含有されている溶媒に溶解可能な昇華性染料であれば、いかなる昇華性染料であってもよい。例えば、第2実施形態の色材層用塗工液に含有されている溶媒に応じて、上記一実施形態の色材層用塗工液で説明した昇華性染料を適宜選択して用いることができる。第2実施形態の色材層用塗工液に含有されている昇華性染料が、所定の溶媒に溶解可能な昇華性染料であるか否かは、上記一実施形態の熱転写シートの「所定の溶媒に対する色材の分散性の特定方法」により判断することができる。以下、所定の溶媒が、メチルエチルケトン/トルエンの混合溶媒である場合を例に挙げ、当該所定の溶媒に溶解可能な昇華性染料の一例について説明する。
【0075】
所定の溶媒がメチルエチルケトン/トルエンの混合溶媒である場合;
メチルエチルケトン/トルエンの混合溶媒に溶解可能な昇華性染料としては、例えば、ディスパースイエロー201等を使用することができる。また、上記一実施形態の色材層用塗工液で説明したように、メチルエチルケトン/トルエンの混合溶媒に分散可能な色材としては、例えば、上記で例示した顔料や、上記で例示した昇華性染料、例えば、ディスパースイエロー54等を挙げることができる。
【0076】
上記一実施形態の色材層用塗工液と同様、第2実施形態の色材層用塗工液には、2以上の溶媒が含有されていてもよいが、第2実施形態の色材層用塗工液には、当該2以上の溶媒に対して分散可能な、換言すれば溶解不能な色材10xが含有されており、2以上の溶媒のうちの少なくとも1種の溶媒に溶解可能な昇華性染料10yが含有されていることを必須の条件とする。
【0077】
第2実施形態の色材層用塗工液中に含まれる所定の溶媒に溶解可能な昇華性染料10yと、所定の溶媒に分散可能な色材10xとの含有比率についても特に限定はなく、当該色材層用塗工液を用いて形成される色材層2に要求される機能、例えば、耐光性や、濃度特性等に応じて適宜設定することができる。
【0078】
<<昇華型熱転写シートの製造方法>>
次に、本発明の一実施形態の昇華型熱転写シートの製造方法について説明する。本発明の一実施形態の昇華型熱転写シートの製造方法(以下、一実施形態の製造方法と言う場合がある。)は、基材の一方の面上に色材層用塗工液を塗工して色材層を形成する工程を含む。以下、必須の工程である色材層を形成する工程、及び任意の工程について説明する。
【0079】
<色材層を形成する工程>
一実施形態の製造方法は、基材1の一方の面上に色材層用塗工液を塗工して色材層2を形成する工程を含む。そして、一実施形態の製造方法は、ここで用いられる色材層用塗工液が、上記一実施形態の色材層用塗工液で説明した色材層用塗工液、すなわち、上記条件1〜3を満たす色材層用塗工液であることを特徴としている。より具体的には、所定の溶媒、当該所定の溶媒に分散可能な色材、分散剤、及び(i)数平均分子量(Mn)が40000以下のポリビニルアセタール樹脂、又は(ii)JIS K 6703(1995)における種類及び粘度記号でL1/8以下、或いはH1/8以下のニトロセルロース樹脂を含有する色材層用塗工液が用いられることを特徴としている。
【0080】
(基材)
本工程で用いられる基材は、ある程度の耐熱性と強度を有するものであれば特に限定されることはなく、従来公知の材料を適宜選択して用いることができる。このような基材として、例えば、0.5μm〜50μm、好ましくは1μm〜10μm程度の厚さのポリエチレンテレフタレートフィルム、1,4−ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリフェニレンサルフィドフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリサルホンフィルム、アラミドフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、セロハン、酢酸セルロース等のセルロース誘導体、ポリエチレンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ナイロンフィルム、ポリイミドフィルム、アイオノマーフィルム等が挙げられる。更に、これらの材料はそれぞれ単独でも使用できるが、他の材料と組み合わせた積層体として使用してもよい。
【0081】
基材は、色材層用塗工液が塗工される側の面に接着処理が施されていても良い。接着処理を施すことで、基材と色材層、或いは基材と色材層との間に設けられる任意の層との密着性を向上させることができる。
【0082】
接着処理としては、例えば、コロナ放電処理、火炎処理、オゾン処理、紫外線処理、放射線処理、粗面化処理、化学薬品処理、プラズマ処理、低温プラズマ処理、プライマー処理、グラフト化処理等公知の樹脂表面改質技術をそのまま適用することができる。また、それらの処理を2種以上併用することもできる。
【0083】
(色材層用塗工液)
基材の一方の面上に塗工される色材層用塗工液は、上記一実施形態の色材層用塗工液で説明したものをそのまま用いることができ、ここでの詳細な説明は省略する。例えば、上記第1実施形態の色材層用塗工液を用いてもよく、上記第2実施形態の色材層用塗工液を用いてもよい。
【0084】
色材層用塗工液の塗工方法についても特に限定はなく、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、グラビア版を用いたリバースロールコーティング法等の公知の手段を用い基材上に塗工・乾燥することで形成することができる。色材層用塗工液の塗工量についても特に限定はないが、固形分で0.2g/m2〜10g/m2程度であることが好ましい。色材層用塗工液を塗工し、乾燥することで、基材の一方の面に色材層が設けられた熱転写シート(図1図2参照)が得られる。
【0085】
なお、一実施形態の色材層用塗工液として、上記第1実施形態の色材層用塗工液を用いた場合には、図1に示す熱転写シートを得ることができる。また、上記第2実施形態の色材層用塗工液を用いた場合には、図2に示す熱転写シートを得ることができる。何れの形態の熱転写シートにおいても、上記条件1〜3を満たす一実施形態の色材層用塗工液を用いて形成された色材層を備えることから、キックや地汚れの発生を抑制することができる。また、色材層中に、色材10xを微粒子化させた状態で存在させることができることから、形成された色材層を備える熱転写シートを用いて高濃度の画像形成が可能となる。
【0086】
<染料層を形成する工程>
また、一実施形態の製造方法は、基材1上に色材層2を形成する工程の前に、昇華性染料を溶媒中に溶解してなる染料層用塗工液を、基材1上に塗工・乾燥して染料層2Aを形成する工程を含んでいてもよい。この実施形態の製造方法によれば、図3に示すように、基材1上に、染料層2A、色材層2がこの順で積層された熱転写シートを得ることができる。
【0087】
図3に示す形態の熱転写シートによれば、染料層2A上に設けられている色材層2が、染料層2Aにおいて界面へ局在化している昇華性染料を塞ぐ蓋としての役割を機能し、キックや地汚れの発生を防止できる。具体的には、上記で説明したように、バインダー樹脂、所定の溶媒、当該所定の溶媒に溶解可能な昇華性染料を含有する「比較の染料層用塗工液」を用いて形成された染料層2Aを備える比較の熱転写シートでは、昇華性染料が界面に局在化した状態で存在しており(図4参照)、キックや地汚れが発生しやすい状況となっている。つまり、基材1上に、染料層2Aのみが設けられた熱転写シートを製造した場合には、キックや地汚れを防止することができない。
【0088】
一方で、一実施形態の昇華型熱転写シートの製造方法では、染料層2A上に、上記一実施形態の色材層用塗工液を用いて形成される色材層2が設けられることから、染料層2A単独では補うことができないキックや地汚れの発生を、一実施形態の色材層用塗工液を用いて形成される色材層2によって防止することができる。また、基材と色材層との間に染料層2Aを形成する工程を有する一実施形態の製造方法では、基材1と色材層2との間に、バインダー樹脂、所定の溶媒、及び当該所定の溶媒に溶解可能な昇華性染料10yを含有する染料層2Aが設けられていることから、染料層2Aと、色材層2との相乗効果により、さらに濃度の高い画像形成が可能となる。
【0089】
染料層用塗工液に含有されているバインダー樹脂について特に限定はなく、当該染料層用塗工液に含有されている溶媒に溶解可能な昇華性染料の種別に応じて適宜選択することができる。例えば、一実施形態の色材層用塗工液で説明した任意のバインダー樹脂や、上記条件3を満たすバインダー樹脂等を挙げることができる。
【0090】
「昇華性染料」
染料層用塗工液に含有されている昇華性染料10yについて特に限定はなく、染料層用塗工液に含有されている溶媒に応じて適宜選択することができる。具体的には、染料層用塗工液に含有されている少なくとも1つの溶媒に溶解可能であるとの条件を満たす昇華性染料であればよい。このような、昇華性染料としては、例えば、第2実施形態の色材層用塗工液で説明した「所定の溶媒に溶解可能な昇華性染料」を挙げることができる。染料層用塗工液には、所定の溶媒に溶解可能な2種以上の昇華性染料が含まれていてもよい。
【0091】
染料層用塗工液に含有されている溶媒は、上記昇華性染料を溶解することができるものであれば特に限定はなく、従来公知の溶媒の中から適宜選択して用いることができる。
【0092】
染料層用塗工液には、当該塗工液に含有されている全ての溶媒に対し分散可能な色材が含有されていてもよい。つまり、染料層2Aを、上記第2実施形態の色材層用塗工液を用いて形成された色材層(図2参照)と同じ構成とすることもできる。
【0093】
染料層2Aの形成方法について特に限定はないが、バインダー樹脂、溶媒、当該溶媒に溶解可能な昇華性染料、必要に応じて添加される各種の成分を含有し、溶媒中に昇華性染料が溶解されてなる染料層用塗工液を調製し、当該塗工液を、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、グラビア版を用いたリバースロールコーティング法等の公知の手段を用い基材1上に塗工・乾燥することで形成することができる。染料層用塗工液の塗工量についても特に限定はないが、固形分で0.1g/m2〜5g/m2程度であることが好ましい。
【0094】
染料層用塗工液における昇華性染料、色材層用塗工液における色材の溶解・分散条件が上記の関係を満たすものであれば、染料層用塗工液に含有されている溶媒と、色材層用塗工液に含有されている溶媒は共通する残留溶媒であってもよい。この場合、染料層用塗工液には、当該共通する溶媒に溶解可能な昇華性染料が少なくとも1種含まれていることを条件とする。また、色材層用塗工液には、共通する溶媒に分散可能な色材が少なくとも1種含まれていることを条件とする。また、染料層用塗工液に含まれる昇華性染料と、色材層用塗工液に含まれる色材は同一の色材であってもよい。この場合、染料層用塗工液には、同一の色材を溶解可能な溶媒が含有されており、色材層用塗工液には、同一の色材を分散可能な溶媒が含有されていることを条件とする。
【0095】
(染料プライマー層を形成する工程)
一実施形態の製造方法は、基材1と色材層2との間、或いは基材1と染料層2Aとの間に染料プライマー層用塗工液を塗工・乾燥して染料プライマー層を形成する工程を含んでいてもよい。本工程を含む一実施形態の製造方法によれば、基材1と色材層2、或いは基材1と染料層2Aとの密着性を向上させ、画像形成時に色材層2、或いは染料層2Aが異常転写されることを防止することができる。
【0096】
染料プライマー層用塗工液は、溶媒、バインダー樹脂を含有している。バインダー樹脂としては、ポリエステル系樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ヒドロキシエチルセルロース、ポリアクリル酸エステル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、スチレンアクリレート系樹脂、ポリアクリルアミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセトアセタールやポリビニルブチラール等のポリビニルアセタール系樹脂等が挙げられる。
【0097】
また、染料プライマー層をコロイド状無機顔料超微粒子から構成することもできる。この構成によれば、画像形成時における熱転写受像シートへの染料層の異常転写をより効果的に防止することができる。さらに、画像形成時における染料層から染料プライマー層への昇華性染料の移行を防止することができる。これにより、熱転写受像シートの受容層側への染料拡散を有効に行なうことができ、印画濃度の高い画像を形成することができる。
【0098】
コロイド状無機顔料超微粒子として、従来公知の化合物が使用できる。例えば、シリカ(コロイダルシリカ)、アルミナ或はアルミナ水和物(アルミナゾル、コロイダルアルミナ、カチオン性アルミニウム酸化物、又はその水和物、擬ベーマイト等)、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン等が挙げられる。特に、コロイダルシリカ、アルミナゾルが好ましく用いられる。これらのコロイド状無機顔料超微粒子の大きさは、一次平均粒径で100nm以下、好ましくは50nm以下で用いることが好ましい。
【0099】
染料プライマー層は、上記で例示した樹脂や、コロイド状無機顔料超微粒子を適当な溶媒に溶解或いは分散した染料プライマー層用塗工液をグラビアコーティング法、ロールコート法、スクリーン印刷法、グラビア版を用いたリバースロールコーティング法等の従来から公知の形成手段により、塗工・乾燥して形成することができる。染料プライマー層用塗工液の塗工量は、0.02g/m2〜1.0g/m2程度であることが好ましい。染料プライマー層用塗工液の調製に用いられる溶媒としては、例えば、水、トルエン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ジメチルホルムアミド、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコール、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド等を挙げることができる。
【0100】
<背面層を形成する工程>
また、一実施形態の製造方法は、基材1の他方の面上に背面層用塗工液を塗工・乾燥して背面層5を形成する工程を含んでいてもよい。
【0101】
背面層用塗工液は、溶媒、バインダー樹脂を含有している。背面層用塗工液が含有しているバインダー樹脂について特に限定はなく、従来公知の熱可塑性樹脂等を適宜選択して形成することができる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリアクリル酸エステル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、スチレンアクリレート系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルクロリド樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアセトアセタール樹脂等のポリビニルアセタール樹脂等の熱可塑性樹脂、これらのシリコーン変性物等が挙げられる。
【0102】
また、背面層用塗工液は、サーマルヘッドとの滑り性を向上させるための滑剤を含有していてもよい。滑剤としては、例えば、リン酸エステル、脂肪酸エステル、金属石鹸、Wax、グラファイトパウダー、フッ素変性グラフトポリマー、フッ素変性ブロックポリマー、シリコーンオイル、シリコーン変性グラフトポリマー、シリコーン変性ブロックポリマー等のシリコーン重合体等を適宜選択して用いることができる。上記滑剤成分の中でも、本発明では、リン酸エステル、脂肪酸エステル、金属石鹸、Waxを特に好適に使用することができる。
【0103】
金属石鹸としては、例えば、アルキルリン酸エステルの多価金属塩、脂肪酸の多価金属塩、アルキルカルボン酸の金属塩等が挙げられ、プラスチック用添加剤として公知のものを使用することができる。中でも、ステアリン酸亜鉛および/またはステアリルリン酸亜鉛が好ましく使用できる。
【0104】
リン酸エステルとしては、例えば、(1)炭素数6〜20の飽和又は不飽和高級アルコールのリン酸モノエステル又はジエステル、(2)ポリオキシアルキレンアルキルエーテル又はポリオキシアルキレンアルキルアリルエーテルのリン酸モノエステル又はジエステル、(3)上記飽和又は不飽和高級アルコールのアルキレンオキシド付加物(平均付加モル数1〜8)のリン酸モノエステル又はジエステル、(4)炭素数8〜12のアルキル基を有するアルキルフェノール又はアルキルナフトールのリン酸モノエステル又はジエステル等が挙げられる。上記(1)及び(3)における飽和又は不飽和高級アルコールとしては、例えば、セチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール等が挙げられる。上記(3)におけるアルキルフェノールとしては、ノニルフェノール、ドデシルフェノール、ジフェニルフェノール等が挙げられる。
【0105】
背面層の形成方法について特に限定はなく、バインダー樹脂、必要に応じて添加される滑剤等を適当な溶媒に溶解または分散した背面層用塗工液を、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、グラビア版を用いたリバースロールコーティング法等の公知の塗工手段を用いて基材1の他方の面上に塗工し、乾燥することで形成することができる。背面層用塗工液の調製に用いられる溶媒としては、上記染料プライマー層用塗工液で説明した溶媒等を適宜選択して用いることができる。背面層用塗工液の塗工量は、耐熱性等の向上等の点から、0.1g/m2〜5g/m2程度が好ましく、0.3g/m2〜2.0g/m2程度がより好ましい。
【0106】
<背面プライマー層を形成する工程>
また、一実施形態の製造方法は、基材1と背面層5との間に背面プライマー層を形成する工程を含んでいてもよい。本工程を含む一実施形態の製造方法によれば、基材と背面層との密着性を向上させることができる。
【0107】
背面プライマー層用塗工液は、溶媒、バインダー樹脂を含有している。バインダー樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂等が挙げられる。また、適宜導電性を付与するための導電材を含有していてもよい。導電材としては、例えば、スルホン化ポリアニリン、カーボン粒子、銀粒子、金粒子等が挙げられる。
【0108】
以上、本発明の熱転写シートの製造方法について、一例を挙げて具体的に説明を行ったが、本発明の趣旨を妨げない範囲で各種の変形態様をとることができる。例えば、図1図3に示す構成において、基材1の同一面上に色材層2と、図示しない転写性保護層を面順次に設けた一体型の熱転写シートとすべく、基材1の一方の面上に転写性保護層用塗工液を塗工して転写性保護層を形成する工程を含んでいてもよい。また、本発明の製造方法で得られる熱転写シートは、基材1上に、イエロー色材層、マゼンタ色材層、シアン色材層が面順次に設けられたものであってもよい。この場合、面順次に設けられた色材層のうちの少なくとも1つが、上記で説明した本発明の色材層用塗工液を用いて形成されたものであればよい。また、全ての色材層が、本発明の色材層用塗工液を用いて形成されたものであってもよい。
【実施例】
【0109】
次に、実施例を挙げて、本発明を更に具体的に説明する。以下、特に断りのない限り、「部」及び「%」は質量基準である。また、特に断りがない限り、「部」及び「%」は固形分の値を示している。
【0110】
(実施例1)
基材として、厚さ4.5μmの易接着処理済みポリエチレンテレフタレートフィルムを用い、当該基材の一方の面に、下記組成の背面層用塗工液を、塗工量が固形分換算で0.5g/m2となるように塗工し、乾燥させることで背面層を形成した。次いで、基材の他方の面上に、下記組成の染料プライマー層用塗工液を、塗工量が固形分換算で0.1g/m2となるように塗工し、乾燥させることで染料プライマー層を形成した。次いで、染料プライマー層上に、下記の方法で作製した色材層用塗工液1を、塗工量が固形分換算で1.0g/m2となるように塗工し、乾燥させることで色材層を形成することで実施例1の熱転写シートを得た。
【0111】
以下の色材層用塗工液に含まれる昇華性染料、或いは色材がトルエン/メチルエチルケトン混合溶媒に溶解可能、或いは分散可能であるかは、予め以下の方法により判断した。
トルエン/メチルエチルケトン=1/1混合溶媒を用い、昇華性染料、或いは色材の濃度が2w/v%の量となるように添加し、50℃にて1時間加熱撹拌した。次いで、得られた液を25℃にて60時間放置した後に、昇華性染料、或いは色材の析出の有無を目視で確認した。確認の結果、昇華性染料、或いは色材の析出がない場合は、溶解可能な昇華性染料、或いは色材と判断し、析出が見られた場合は分散可能な昇華性染料、或いは色材と判断した。
【0112】
上記の判断により、「ディスパースイエロー54」は、トルエン/メチルエチルケトン混合溶媒に分散可能な色材であると判断された。なお、下記一般式(3)で示される「C.I.ピグメントイエロー138のスルホン化誘導体」は、「ディスパースイエロー54」の分散性を向上させるための分散剤として機能している。また、「ディスパースイエロー201」、及び下記一般式(4)で示される色材(染料)は、トルエン/メチルエチルケトン混合溶媒に分散可能な色材(染料)であると判断された。
【0113】
<背面層用塗工液>
・ポリビニルアセタール樹脂 60.8部
(エスレックKS−1 積水化学工業(株))
・ポリイソシアネート 4.2部
(バーノックD750 大日本インキ化学工業(株))
・ステアリルリン酸亜鉛 10部
(LBT−1830精製 堺化学工業(株))
・ステアリン酸亜鉛 10部
(SZ−PF 堺化学工業(株))
・タルク 5部
(ミクロエースP−3 日本タルク工業(株))
・ポリエチレンワックス 10部
(ポリエチレンワックス3000 東洋アドレ(株))
・トルエン 200部
・メチルエチルケトン 100部
【0114】
<染料プライマー層用塗工液>
・アルミナゾル(平均1次粒子径10×100nm、固形分10%) 30部
(アルミナゾル200 日産化学工業(株))
・ポリビニルピロリドン樹脂 3部
(K−90 ISP社)
・水 50部
・イソプロピルアルコール 17部
【0115】
(色材層用塗工液1の作製)
下記色材層用塗工液1の組成のとおり、色材、分散剤、バインダー樹脂、ポリエチレンワックス、溶剤、及び粒径2.0mmのジルコニアビーズ250質量部をガラス瓶に入れ密閉し、予備解砕としてペイントシェーカー(浅田鉄工社製)にて1時間振とうし、次いで前記ジルコニアビーズを取り除いてから、粒径0.1mmのジルコニアビーズ250質量部をガラス瓶に入れ、同様に本解砕としてペイントシェーカーにて24時間分散を行い、色材層用塗工液1を作製した。
【0116】
<色材層用塗工液1>
・ディスパースイエロー54 4.725部
・下記一般式(3)で示される顔料 0.525部
(C.I.ピグメントイエロー138のスルホン化誘導体)
・グラフト型ポリマー分散剤(Mw:40000〜50000) 1.5部
(アジスパーPB881、味の素ファインテクノ(株))
・ポリビニルアセトアセタール樹脂(Mn:27000) 4.5部
(KS−1 積水化学工業(株))
・トルエン 44.375部
・メチルエチルケトン 44.375部
【0117】
【化5】
【0118】
(実施例2)
色材層用塗工液1にかえて、色材層用塗工液1のポリビニルアセトアセタール樹脂(Mn:27000)(KS−1 積水化学工業(株))4.5部を、ポリビニルアセトアセタール樹脂(Mn:17000)(KS−10 積水化学工業(株))4.5部に変更した色材層用塗工液2を使用した以外は全て実施例1と同様にして、実施例2の熱転写シートを得た。
【0119】
(実施例3)
色材層用塗工液1にかえて、色材層用塗工液1のポリビニルアセトアセタール樹脂(Mn:27000)(KS−1 積水化学工業(株))4.5部を、ポリビニルアセトアセタール樹脂(Mn:20000)(BX−L 積水化学工業(株))4.5部に変更した色材層用塗工液3を使用した以外は全て実施例1と同様にして、実施例3の熱転写シートを得た。
【0120】
(実施例4)
色材層用塗工液1にかえて、色材層用塗工液1のポリビニルアセトアセタール樹脂(Mn:27000)(KS−1 積水化学工業(株))4.5部を、ニトロセルロース樹脂(DLX5−8(L1/8相当) 稲畑産業(株))4.5部に変更した色材層用塗工液4を使用した以外は全て実施例1と同様にして、実施例4の熱転写シートを得た。
【0121】
(実施例5)
色材層用塗工液1にかえて、色材層用塗工液1のポリビニルアセトアセタール樹脂(Mn:27000)(KS−1 積水化学工業(株))4.5部を、ニトロセルロース樹脂(DHX5−10(L1/8相当) 稲畑産業(株))4.5部に変更した色材層用塗工液5を使用した以外は全て実施例1と同様にして、実施例5の熱転写シートを得た。
【0122】
(実施例6)
色材層用塗工液1にかえて、色材層用塗工液1のポリビニルアセトアセタール樹脂(Mn:27000)(KS−1 積水化学工業(株))4.5部を、ニトロセルロース樹脂(DHX4−6(L1/16相当) 稲畑産業(株))4.5部に変更した色材層用塗工液6を使用した以外は全て実施例1と同様にして、実施例6の熱転写シートを得た。
【0123】
(実施例7)
実施例1の色材層用塗工液1にかえて、下記組成の色材層用塗工液7を使用した以外は全て実施例1と同様にして、実施例7の熱転写シートを得た。なお、色材層用塗工液7は、上記色材層用塗工液1と同じ方法で作製した。
【0124】
<色材層用塗工液7>
・ディスパースイエロー201 2.3625部
・ディスパースイエロー54 2.3625部
・下記一般式(3)で示される顔料 0.525部
(C.I.ピグメントイエロー138のスルホン化誘導体)
・グラフト型ポリマー分散剤(Mw:40000〜50000) 1.5部
(アジスパーPB881、味の素ファインテクノ(株))
・ポリビニルアセトアセタール樹脂(Mn:27000) 4.5部
(KS−1 積水化学工業(株))
・トルエン 44.375部
・メチルエチルケトン 44.375部
【0125】
(実施例8)
下記の方法で作製した染料層用塗工液1を、塗工量が固形分換算で0.5g/m2となるように染料プライマー層上に塗工し、乾燥させることで染料層を形成し、当該染料層上に、上記組成の色材層用塗工液1を、塗工量が固形分換算で0.5g/m2となるように塗工し、乾燥させることで色材層を形成した以外は、全て実施例1と同様にして、染料層上に、色材層が積層されてなる実施例8の熱転写シートを得た。
【0126】
(染料層用塗工液1の作製)
下記染料層用塗工液1の組成のとおり、色材、バインダー樹脂、ポリエチレンワックス及び溶剤をガラス瓶に入れ密閉し、50℃で1時間加熱後、ペイントシェーカー(浅田鉄工社製)にて30分振とうし、染料層用塗工液1を作製した。
【0127】
<染料層用塗工液1>
・ディスパースイエロー201 3.51部
・ポリビニルアセトアセタール樹脂(Mn:130000) 2.63部
(KS−5 積水化学工業(株))
・ポリエチレンワックス 0.06部
(粒径 5μm )
・トルエン 33部
・メチルエチルケトン 33部
【0128】
(実施例9)
色材層用塗工液1にかえて、色材層用塗工液7のディスパースイエロー201(2.3625部)を、下記一般式(4)で示される昇華性染料(2.3625部)に変更した色材層用塗工液8を用いた以外は全て実施例1と同様にして、実施例9の熱転写シートを得た。
【0129】
【化6】
【0130】
(比較例1)
色材層用塗工液1にかえて、上記染料層用塗工液1を使用した以外は全て実施例1と同様にして、比較例1の熱転写シートを得た。
【0131】
(比較例2)
色材層用塗工液1にかえて、色材層用塗工液1のポリビニルアセトアセタール樹脂(Mn:27000)(KS−1 積水化学工業(株))4.5部を、ポリビニルアセトアセタール樹脂(Mn:130000)(KS−5 積水化学工業(株))4.5部に変更した色材層用塗工液Aを使用した以外は全て実施例1と同様にして、比較例2の熱転写シートを得た。
【0132】
(比較例3)
色材層用塗工液1にかえて、色材層用塗工液1のポリビニルアセトアセタール樹脂(Mn:27000)(KS−1 積水化学工業(株))4.5部を、ニトロセルロース樹脂(DLX8−13(L1/4相当) 稲畑産業(株))4.5部に変更した色材層用塗工液Bを使用した以外は全て実施例1と同様にして、比較例3の熱転写シートを得た。
【0133】
(比較例4)
色材層用塗工液1にかえて、色材層用塗工液1のポリビニルアセトアセタール樹脂(Mn:27000)(KS−1 積水化学工業(株))4.5部を、セルロースアセテートプロピオネート樹脂(Mn:25000)(CAP482−0.5 イーストマンケミカル(株))4.5部に変更した色材層用塗工液Cを使用した以外は全て実施例1と同様にして、比較例4の熱転写シートを得た。
【0134】
(色材の体積平均粒径)
上記で作製した各実施例、及び比較例の熱転写シートを形成するための色材層用塗工液1〜7、色材層用塗工液A〜C中に分散されている色材の体積平均粒径(nm)を、上記で説明したレーザー光散乱粒度分布計による粒子径の測定方法で測定した。測定結果を表1に示す。なお、染料層用塗工液1においては、当該塗工液中に昇華性染料(ディスパースイエロー201)が溶解しているため、粒子径の測定を行うことはできない。
【0135】
(印画濃度評価)
テストプリンターを用いて、各実施例、及び比較例の各熱転写シートと、下記条件で作製した熱転写受像シートを組み合わせて、下記印画条件で、階調パターンを印画して、濃度特性を調べた。濃度特性の評価は、最大エネルギーをかけたときの最高濃度で評価し、以下の評価基準に基づいて印画濃度の評価を行った。反射濃度は、分光測定器(グレタグマクベス社製、spectrolino)により測定した。評価結果を表1に示す。
【0136】
(印画条件)
・サーマルヘッド:F3598(東芝ホクト電子株式会社製)
・発熱体平均抵抗値:5176(Ω)
・主走査方向印字密度:300dpi
・副走査方向印字密度:300dpi
・印画電力:0.12(W/dot)
・1ライン周期:2(msec.)
・パルスDuty:85%
・印画開始温度:35.5(℃)
【0137】
「評価基準」
◎:濃度が2.05以上である。
○:濃度が1.95以上2.05未満である。
△:濃度が1.95未満である。
【0138】
(熱転写受像シートの作成)
多孔質ポリエチレンフィルム(トヨパール−SS P4255 東洋紡績(株)製 厚さ35μm)からなる多孔質フィルム層上に、下記組成の中間層用塗工液、受容層用塗工液をグラビアリバースコート方式で、順次塗布、乾燥して、中間層、受容層を形成した。その中間層、受容層の設けられた面と反対面の多孔質ポリエチレンフィルムに、下記組成の接着層用塗工液を用いて、グラビアリバースロールコート方式で塗布、乾燥して、接着層を形成し、RC原紙(155g/m2、厚さ151μm)(三菱製紙(株))と貼り合わせ熱転写受像シートを作製した。上記の各々の塗工量は、全て固形分で、中間層は1.5g/m2、受容層は5.0g/m2、接着層は5g/m2であった。
【0139】
<中間層用塗工液>
・ポリエステル樹脂 50部
(ポリエスターWR−905 日本合成化学工業(株))
・酸化チタン 20部
(TCA888 (株)トーケムプロダクツ)
・蛍光増白剤 1.2部
(ユビテックスBAC チバ・スペシャリティーケミカルズ(株))
・水/イソプロピルアルコール=1/1 28.8部
【0140】
<受容層用塗工液>
・塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体 60部
(ソルバインC 日信化学工業(株))
・エポキシ変性シリコーン 1.2部
(X−22−3000T 信越化学工業(株))
・メチルスチル変性シリコーン 0.6部
(X−24−510,信越化学工業(株))
・メチルエチルケトン/トルエン(質量比1/1) 5部
【0141】
<接着層用塗工液>
・ウレタン樹脂 30部
(タケラックA−969V 三井武田ケミカル(株))
・イソシアネート 10部
(タケネートA−5 三井武田ケミカル(株))
・酢酸エチル 100部
【0142】
(汚染性評価)
熱転写シートの保存性を判断するために背面層への汚染性を評価した。汚染性の評価は、各実施例、及び比較例の熱転写シートの色材層面と、背面層面とを重ね合わせて20kg/cm2の荷重を加え40℃90%RHの環境に98時間保存し、背面層面への色材の移行性を評価した。移行性の評価は、保存前後の背面層面を、分光測定器(グレタグマクベス社製、spectrolino)により測定し、下記式で色差(ΔE*ab)を求めることにより行ない、下記の評価基準に基づいて汚染性の評価を行った。評価結果を表1に併せて示す。なお、各実施例、及び比較例の熱転写シートの色材層と重ね合わせる背面層は、上記各実施例、及び比較例の熱転写シートで作製した背面層と同じものを使用した。
色差ΔE*ab=((Δa*2+(Δb*21/2
CIE1976 La**表色系(JIS Z8729(1980))参照
Δa*=a*(保存後)−a*(保存前)
Δb*=b*(保存後)−b*(保存前)
なお、a*及びb*は、CIE1976L***表色系に基づくものであり、a*及びb*は、知覚明度指数を表す。
また、ΔE*abの値が小さいほど、汚染性が少ない、換言すれば、キックの度合が少ないことを示す。
【0143】
「評価基準」
○・・・ΔE*abが10未満である。
△・・・ΔE*abが10以上である。
【0144】
(地汚れ評価)
熱転写シートの保存性を判断するために印画物の地汚れを評価した。評価は、各実施例、及び比較例の熱転写シートを50℃80%RHの環境に60時間保存したものと、保存していないものを準備し、所定の受像紙で印画し、それぞれの印画物のエネルギーをかけていない白地の部分について、分光測定器(グレタグマクベス社製、spectrolino)により測定し、下記式で色差(ΔE*ab)を求めることにより行ない、下記の評価基準に基づいて地汚れの評価を行った。評価結果を表1に併せて示す。
色差ΔE*ab=((Δa*2+(Δb*21/2
CIE1976 La**表色系(JIS Z8729(1980))参照
Δa*=a*(保存後)−a*(保存前)
Δb*=b*(保存後)−b*(保存前)
なお、a*及びb*は、CIE1976L***表色系に基づくものであり、a*及びb*は、知覚明度指数を表す。
また、ΔE*abの値が小さいほど、高温・高湿環境下における染料析出が少なく、保存性が高いことを示す。
【0145】
「評価基準」
◎・・・ΔE*abが0.2未満である。
○・・・ΔE*abが0.2以上0.3未満である。
△・・・ΔE*abが0.3以上である。
【0146】
【表1】
【符号の説明】
【0147】
1・・・基材
2・・・色材層
2A・・・染料層
5・・・背面層
10x・・・所定の溶媒に分散可能な色材
10y・・・所定の溶媒に溶解可能な昇華性染料
100・・・本発明の一実施形態の色材層用塗工液を用いて製造された熱転写シート
100X・・・比較の染料層用塗工液を用いて製造された熱転写シート
図1
図2
図3
図4