(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(A)重量平均分子量(Mw)が140,000以上であり、且つ、酸含量10〜15質量%及びエステル含量15質量%以上のオレフィン−不飽和カルボン酸−不飽和カルボン酸エステル3元共重合体、またはその金属中和物と、
(B)重量平均分子量(Mw)が140,000以上であり、且つ、酸含量10〜15質量%のオレフィン−アクリル酸2元ランダム共重合体、またはその金属中和物と
の二種類のベース樹脂を用い、これらのベース樹脂を質量比で(A):(B)=90:10〜10:90になるように配合したベース樹脂の合計量100質量部に対して、
(C)樹脂組成物中の未中和の酸基を中和可能な塩基性無機金属化合物 1.0〜2.0質量部と、
(D)分子量が140〜1500の陰イオン界面活性剤 1〜100質量部と、
を含有し、上記(C)成分と(D)成分との配合比率が質量比で3.0:97.0〜1.5:98.5であり、上記(A)及び(B)成分の樹脂のメルトフローレート(MFR)がそれぞれ0.5〜20g/10minであり、上記(A)成分と(B)成分とのMFRの差が15g/10min以内となり、且つ、上記(A)〜(D)成分の組成物のMFRが1.0g/10min以上、該組成物を加熱成形した成形物の硬度がショアDで35〜60となることを特徴とするゴルフボール用材料。
上記ベース樹脂の合計量100質量部に対して、(F)2個以上の反応性官能基を有する分子量2万以下の化合物を0.1〜15.0質量部配合する請求項1又は2記載のゴルフボール用材料。
コアと、該コアを被覆するカバーとからなるツーピースソリッドゴルフボールにおけるカバー材、または1層以上のコアと、該コアを被覆する1層以上の中間層と、該中間層を被覆する1層以上のカバーとからなるマルチピースソリッドゴルフボールにおける中間層材又はカバー材に用いられる請求項1〜4のいずれか1項記載のゴルフボール用材料。
(A)重量平均分子量(Mw)が140,000以上であり、且つ、酸含量10〜15質量%及びエステル含量15質量%以上のオレフィン−不飽和カルボン酸−不飽和カルボン酸エステル3元共重合体、またはその金属中和物と、
(B)重量平均分子量(Mw)が140,000以上であり、且つ、酸含量10〜15質量%のオレフィン−アクリル酸2元ランダム共重合体、またはその金属中和物と
の二種類のベース樹脂を用い、これらのベース樹脂を質量比で(A):(B)=90:10〜10:90になるように配合したベース樹脂の合計量100質量部に対して、
(C)樹脂組成物中の未中和の酸基を中和可能な塩基性無機金属化合物 1.0〜2.0質量部と、
(D)分子量が140〜1500の陰イオン界面活性剤 1〜100質量部と
を含有し、上記(C)成分と(D)成分との配合比率が質量比で3.0:97.0〜1.5:98.5である上記(A)〜(D)成分を押出機により混練し、次いで、上記(A)〜(D)成分の組成物のMFRが1.0g/10min以上となるように射出成形することにより、ショアDで35〜60の樹脂成形物を得ることを特徴とするゴルフボール用材料の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、射出成形により成形してゴルフボールの中間層やカバー(最外層)として使用した場合、そのゴルフボールの反発性、耐久性に優れると共に、ゴルフボールの生産性を高めることができるゴルフボール用材料及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、ゴルフボール用材料において、ベース樹脂のエステル含有量、酸の種類、酸含量、重量平均分子量等に着目すると共に、ベース樹脂に配合する中和可能な塩基性無機金属化合物や脂肪酸の配合量を所定範囲に調整することにより、ゴルフボールの反発性や耐久性を良好に維持し得ると共に、成形時の樹脂材料の流動性が良好であり、ガス発生等に起因する成形不良の問題を可及的に防止してゴルフボールの生産性を高めることができることを知見し、本発明をなすに至ったものである。
【0009】
従って、本発明は、下記のゴルフボール用材料及びその製造方法を提供する。
〔1〕(A)重量平均分子量(Mw)が140,000以上であり、且つ、酸含量10〜15質量%及びエステル含量15質量%以上のオレフィン−不飽和カルボン酸−不飽和カルボン酸エステル3元共重合体、またはその金属中和物と、
(B)重量平均分子量(Mw)が140,000以上であり、且つ、酸含量10〜15質量%のオレフィン−アクリル酸2元ランダム共重合体、またはその金属中和物と
の二種類のベース樹脂を用い、これらのベース樹脂を質量比で(A):(B)=90:10〜10:90になるように配合したベース樹脂の合計量100質量部に対して、
(C)樹脂組成物中の未中和の酸基を中和可能な塩基性無機金属化合物 1.0〜
2.0質量部と、
(D)分子量が140〜1500の陰イオン界面活性剤 1〜100質量部と、
を含有し、
上記(C)成分と(D)成分との配合比率が質量比で3.0:97.0〜1.5:98.5であり、上記(A)及び(B)成分の樹脂のメルトフローレート(MFR)がそれぞれ0.5〜20g/10minであり、上記(A)成分と(B)成分とのMFRの差が15g/10min以内となり、且つ、上記(A)〜(D)成分の組成物のMFRが1.0g/10min以上、該組成物を加熱成形した成形物の硬度がショアDで35〜60となることを特徴とするゴルフボール用材料。
〔2〕上記ベース樹脂の合計量100質量部に対して、(E)非アイオノマー熱可塑性エラストマーを1〜50質量部配合する〔1〕記載のゴルフボール用材料。
〔3〕上記ベース樹脂の合計量100質量部に対して、(F)2個以上の反応性官能基を有する分子量2万以下の化合物を0.1〜15.0質量部配合する〔1〕又は〔2〕記載のゴルフボール用材料。
〔
4〕上記材料の熱重量測定において、25℃における重量を基準とする250℃における減量率が4.0質量%以下である〔1〕〜〔
3〕のいずれか1項記載のゴルフボール用材料。
〔
5〕コアと、該コアを被覆するカバーとからなるツーピースソリッドゴルフボールにおけるカバー材、または1層以上のコアと、該コアを被覆する1層以上の中間層と、該中間層を被覆する1層以上のカバーとからなるマルチピースソリッドゴルフボールにおける中間層材又はカバー材に用いられる〔1〕〜〔
4〕のいずれか1項記載のゴルフボール用材料。
〔
6〕(A)重量平均分子量(Mw)が140,000以上であり、且つ、酸含量10〜15質量%及びエステル含量15質量%以上のオレフィン−不飽和カルボン酸−不飽和カルボン酸エステル3元共重合体、またはその金属中和物と、
(B)重量平均分子量(Mw)が140,000以上であり、且つ、酸含量10〜15質量%のオレフィン−アクリル酸2元ランダム共重合体、またはその金属中和物と
の二種類のベース樹脂を用い、これらのベース樹脂を質量比で(A):(B)=90:10〜10:90になるように配合したベース樹脂の合計量100質量部に対して、
(C)樹脂組成物中の未中和の酸基を中和可能な塩基性無機金属化合物 1.0〜
2.0質量部と、
(D)分子量が140〜1500の陰イオン界面活性剤 1〜100質量部と
を含有し、上記(C)成分と(D)成分との配合比率が質量比で3.0:97.0〜1.5:98.5である上記(A)〜(D)成分を押出機により混練し、次いで、上記(A)〜(D)成分の組成物のMFRが1.0g/10min以上となるように射出成形することにより、ショアDで35〜60の樹脂成形物を得ることを特徴とするゴルフボール用材料の製造方法。
〔
7〕上記押出機が、上記二軸押出機であり、且つ、混練温度が50℃〜250℃の範囲で調製される〔
6〕記載のゴルフボール材料の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明のゴルフボール用材料によれば、反発性や耐久性を良好に維持し得ると共に、成形時の樹脂材料の流動性が良好であり、ガス発生等に起因する成形不良の問題を可及的に防止することができ、ゴルフボールの生産性を高めることができる。よって、本発明のゴルフボール用材料は反発性及び耐久性が要求されるゴルフボールの中間層材やカバー材として非常に有用な材料である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明につき更に詳しく説明する。
本発明のゴルフボール用材料では、ベース樹脂として下記の(A)(B)の2種類を用いるものである。
(A)成分:重量平均分子量(Mw)が140,000以上であり、且つ、酸含量10〜15質量%及びエステル含量15質量%以上のオレフィン−不飽和カルボン酸−不飽和カルボン酸エステル3元共重合体、またはその金属中和物
(B)成分:重量平均分子量(Mw)が140,000以上であり、且つ、酸含量10〜15質量%のオレフィン−アクリル酸2元ランダム共重合体、またはその金属中和物
【0012】
上記(A)成分の重量平均分子量(Mw)は、140,000以上であり、好ましくは、145,000以上である。また、(B)成分の重量平均分子量(Mw)は、140,000以上であり、好ましくは、160,000以上である。これらの分子量を上記のように大きくすることにより、樹脂材料の反発性を十分に確保することができる。
【0013】
上記のベース樹脂(A),(B)は、互いに共重合体を構成する酸成分やエステル含量などが異なるため、2種類のベース樹脂が複雑に絡み合って、分子的な相乗効果が生じ、ボールの反発性や耐久性を高くすることができるものと考えられる。本発明では、ベース樹脂(A)が3元共重合体であり、上記のように重量平均分子量、酸含量、及びエステル含量を規定することにより比較的軟らかい材料を選択とすると共に、ベース樹脂(B)成分として酸の種類、重量平均分子量及び酸含量を規定することにより比較的硬い材料を選択することにより、これらのポリマーブレンドにより、ゴルフボール用材料として反発性及び耐久性を十分に確保し得る。
【0014】
この場合、重量平均分子量(Mw)は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)におけるポリスチレン換算にて算出されるものである。GPC分子量測定に関して述べると、2元共重合体及び3元共重合体は、分子中の不飽和カルボン酸基により、その分子がGPCのカラムに吸着されるため、そのままではGPC測定ができない。通常、不飽和カルボン酸基のエステル化後にGPC測定を行い、ポリスチレン換算した平均分子量Mw及びMnを算出する。
【0015】
(A)または(B)成分に使用されるオレフィン成分としては、炭素数2〜6が好ましく、特に、エチレンが好ましい。(A)成分に使用される不飽和カルボン酸は、特に制限はなく、例えば、アクリル酸(AA)やメタクリル酸(MAA)が好適に使用される。一方、(B)成分に使用される不飽和カルボン酸は、反発性を確保するために、アクリル酸(AA)が使用される。(B)成分として不飽和カルボン酸としてメタクリル酸(MAA)を採用すると、側鎖にメチル基を有するメタクリル酸では緩衝作用を及ぼし、反発性の低下を招くおそれがあるからである。
【0016】
また、(A)または(B)成分中の不飽和カルボン酸の含有量(酸含量)は、特に制限はないが、それぞれ好ましくは10質量%以上であり、上限としては、好ましくは15質量%未満、より好ましくは13質量%未満である。この酸含量が低いと、ゴルフボール用材料の成形物の反発性が得られなくなるおそれがある。また、酸含量が高くなると、極端に硬度が高くなってしまい、耐久性に影響するおそれがある。
【0017】
また、3元共重合体である(A)成分に使用される不飽和カルボン酸エステルは、低級アルキルエステルが好ましく、特に、アクリル酸ブチル(n−アクリル酸ブチル、i−アクリル酸ブチル)が好ましい。
【0018】
上記(A)成分中の不飽和カルボン酸エステルのエステル含有量については、(B)成分である2元共重合体よりも比較的軟らかい樹脂と採用すべく、エステル含量15質量%以上とするものであり、好ましくは18質量%以上であり、より好ましくは20質量%以上であり、上限値は、特に制限はないが、好ましくは、25質量%以下である。このエステル含量が上記範囲よりも高いと、ゴルフボール用材料の成形物の反発性が得られなくなり、また、エステル含量が低くなると、硬度が高くなってしまい、耐久性に影響するおそれがある。
【0019】
なお、ベース樹脂(A)の硬度、即ち、その樹脂自体を単独で成形した際の硬度(材料硬度)は、ショアD硬度で、好ましくは30以上、より好ましくは35以上であり、上限値としては、好ましくは50以下、より好ましくは45以下である。一方、ベース樹脂(B)の硬度、即ち、その樹脂自体を単独で成形した際の硬度(材料硬度)は、ショアD硬度で、好ましくは40以上、より好ましくは50以上であり、上限値としては、好ましくは60以下、より好ましくは57以下である。この硬度範囲を逸脱したベース樹脂をそれぞれ使用すると、所望の硬度を有する材料が得られなかったり、十分な反発性、耐久性が得られないおそれがある。
【0020】
本発明では、(A)成分と(B)成分とを併用することが必要である。(A)成分と(B)成分との混合割合は、(A):(B)=90:10〜10:90(質量比)とすることが好ましく、より好ましくは80:20〜30:70(質量比)、さらに好ましくは70:30〜50:50(質量比)である。(B)成分の割合が上記範囲よりも多くなると、硬度が硬くなり材料成形が困難になるおそれがある。
【0021】
また、(A)成分及び(B)成分として、樹脂の金属中和物(すなわちアイオノマー)を使用する場合、その金属中和物の種類や中和度については特に制限はない。その一例として具体的には、60モル%Zn(亜鉛中和度)のエチレン−メタクリル酸共重合体、40モル%Mg(マグネシウム中和度)のエチレン−メタクリル酸共重合体、及び40モル%Mg(マグネシウム中和度)のエチレン−メタクリル酸−アクリル酸エステル3元共重合体等が挙げられる。
【0022】
上記(A)及び(B)成分の樹脂のメルトフローレート(MFR)については、射出成形時の流動性を一定上に確保し成形加工性を良好なものにするため、それぞれ0.5〜20g/10minであることを要する。また、上記(A)成分と(B)成分とのMFRの差を15g/10min以内とする。このベース樹脂同士のMFRの差が大きすぎると、押出成形機による(A)(B)成分のコンパウンド時に、均一に混ぜ合わせることができず不均一となり、射出成形時の不良を招くおそれがある。
【0023】
(A)及び(B)成分は、上述したように、重量平均分子量(Mw)を特定範囲に設定した共重合体またはアイオノマーを使用するものであり、具体的には、「ニュクレル」シリーズ(三井・デュポンポリケミカル社製)や「エスコール」シリーズ(ExxonMobil Chemical社製)、「サーリン」シリーズ(米国デュポン社製)、「ハイミラン」シリーズ(三井・デュポンポリケミカル社製)などの市販品を使用することができる。
【0024】
次に、上記(C)成分について説明する。(C)成分は、樹脂組成物中の未中和の酸基を中和可能な塩基性無機金属化合物であり、この塩基性無機金属化合物の金属イオンとしては、例えば、Na
+、K
+、Li
+、Zn
2+、Ca
2+、Mg
2+、Cu
2+、Co
2+等を挙げることができ、好ましくは、Na
+、Zn
2+、Ca
2+、Mg
2+であり、より好ましくはMg
2+である。これら金属塩は、ギ酸塩、酢酸塩、硝酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、酸化物及び水酸化物などを使用して、樹脂中へ導入することができる。
【0025】
上記(C)塩基性無機金属化合物は、樹脂組成物中、即ち上記(A),(B)、及び後述する(D)成分中の酸基を中和するための成分であり、その配合量を樹脂組成物中の酸基に対して70モル%以上に相当する量とする。この場合、(C)成分である塩基性無機金属化合物については、所望の中和度を得るためにその配合量を適宜選定することができる。その配合量は、用いられるベース樹脂(A)及び(B)成分の中和度にも依るが、大凡、(A)及び(B)成分のベース樹脂の合計量100質量部に対して、好ましくは1.0〜2.5質量部、より好ましくは1.1〜2.3質量部、さらに好ましくは1.2〜2.0質量部である。なお、上記(A)〜(D)成分中の酸基の中和度は70モル%以上である必要があり、好ましくは90モル%以上、より好ましくは100モル%以上である。
【0026】
次に、(D)成分である陰イオン界面活性剤について説明する。上記のベース樹脂に陰イオン界面活性剤を適量配合する理由は、樹脂組成物全体に良好な流動性を確保しつつ、樹脂成形後の耐久性を良好なものにするためである。陰イオン界面活性剤としては、特に限定されないが、分子量が140〜1500のものを採用することが好適である。陰イオン界面活性剤は、カルボン酸型、スルホン酸型、硫酸エステル型、リン酸エステル型に分類され、具体的には、ステアリン酸、ベヘニン酸、オレイン酸、マレイン酸の各種の脂肪酸またはその誘導体、またはこれらの金属塩の群から選ばれる1種又は2種以上であることが好適である。特に、ステアリン酸、オレイン酸及びこれらの混合物の群から選ばれることが好ましい。また、(D)成分の有機酸金属塩としては金属石鹸が挙げられ、その金属塩としては、1〜3価の金属イオンが用いられるものであり、リチウム、ナトリウム、マグネシウム、アルミニウム、カリウム、カルシウム及び亜鉛の群から好適に選ばれ、特に、ステアリン酸金属塩を使用することが好ましい。具体的には、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸ナトリウムを使用することが好適である。
【0027】
上記(D)成分の配合量は、上記(A),(B)成分のベース樹脂100質量部に対して、1〜100質量部、好ましくは10〜85質量部、より好ましくは20〜65質量部である。上記(D)成分の配合量が少ないと、樹脂材料の硬度を軟化させることが困難になり、逆に、配合量が多いと、樹脂材料が成形困難となり、材料表面のブリードが多くなり成形品に影響する。
【0028】
本発明は、上記(C)成分と(D)成分との配合割合を調整することより、材料の成形性および生産性をより一層高めることができる。上記(C)成分である塩基性無機金属化合物の配合量が多すぎると、成形時に発生による有機酸等のガスが少なくなるが、流動性が低下する。逆に、(C)成分が少ないと、ガス発生量が多くなる。一方、上記(D)成分である陰イオン界面活性剤の配合量が多すぎると、成形時に脂肪酸等の有機酸のガスが多くなり、成形不良や生産性に大きな影響を及ぼす。逆に、(D)成分が少ないと、ガス発生量は少なくなるが、流動性や耐久性は低下する。従って、(C)及び(D)成分の配合バランスも重要であり、(C)成分と(D)成分との配合比率を(C):(D)=4.0:96.0〜1.0:99.0(質量比)、特に、3.0:97.0〜1.5:98.5(質量比)とすることが好適である。
【0029】
上述した(A)〜(D)成分の樹脂組成物の割合は、ゴルフボール用材料の全量に対して、50質量%以上であり、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、最も好ましくは90質量%以上である。
【0030】
本発明のゴルフボール用材料には、(E)非アイオノマー熱可塑性エラストマーを配合することができる。上記(E)成分を配合する場合は、本発明の効果を損なわない範囲で行うことができ、特に、上記ベース樹脂の合計量100質量部に対して、(E)成分を1〜50質量部配合することが好適である。
【0031】
上記(E)非アイオノマー熱可塑性エラストマーとしては、例えば、ポリオレフィン系エラストマー(ポリオレフィン、メタロセンポリオレフィン含む)、ポリスチレン系エラストマー、ジエン系ポリマー、ポリアクリレート系ポリマー、ポリアミド系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアセタールなどが挙げることができる。
【0032】
更に、上記ゴルフボール用材料には、(F)2個以上の反応性官能基を有する分子量2万以下の化合物を配合することができる。上記(F)成分としては、1種又は2種以上の反応性官能基を1分子中に合計2個以上有する分子量2万以下、好ましくは5000以下のモノマー、オリゴマー、マクロモノマー等が用いられる。なお、上記反応性官能基の数の上限は、特に制限されないが、通常6個以下である。
【0033】
上記のモノマーとは、単量体のことである。オリゴマーとは、一般的に高分子合成に用いる単量体から得られる低分子量生成物で、通常2量体以上、分子量数千までを含めている。マクロモノマーとは、末端に重合性官能基を有するオリゴマーで、各種機能性コモノマーとの共重合により、グラフトポリマーの合成に利用される材料である。分子量は通常数千〜数万である。これらは一般的にプラスチック、エラストマー合成の中間材料であったり、グラフトポリマーの原料として使用されるものである。近年は各種機能を持ったオリゴマー、マクロモノマーが注目されている。
【0034】
上記の反応性官能基としては、部材同士の接着性を改良できるものであれば特に制限はないが、例えば反応性官能基が水酸基、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基であることが特に好ましい。アイオノマー樹脂とのブレンドの場合、メルトフローレート(MFR)への影響が少ない水酸基が特に好ましい。
【0035】
上記のモノマーの例としては、1,3−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、マンニトール、ソルビトール、多糖類等が挙げられ、オリゴマー又はマクロモノマーとしては、例えばポリエチレングリコール、ポリヒドロキシポリオレフィンオリゴマー、変性低分子量ポリエチレン、変性低分子量ポリプロピレン、変性低分子量ポリスチレン、変性液状ゴム等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。特にポリヒドロキシポリオレフィンオリゴマーやトリメチロールプロパン等が好適に用いられる。これらは所望により1種を単独で用いてもよいし、2種を併用してもよい。
上記モノマー、オリゴマー又はマクロモノマーとしては市販品を用いてもよく、三菱ガス化学社製のトリメチロールプロパンや、三菱化学社製ポリヒドロキシポリオレフィンオリゴマー(主鎖の炭素数が150〜200、末端に水酸基を有する。商品名ポリテールH)等を挙げることができる。
【0036】
上記(F)成分の配合量については、特に制限はないが、上記ベース樹脂の合計量100質量部に対して、好ましくは0.1〜15質量部、より好ましくは0.3〜12質量部、さらに好ましくは0.5〜10.0質量部である。添加量が少なすぎると、その配合効果が十分得られず、多すぎるとゴルフボールの物性を低下させるおそれがある。
【0037】
本発明のゴルフボール用材料には、任意の添加剤を用途に応じて適宜配合することができる。例えば、本発明のゴルフボール用材料をカバー材として用いる場合、上記(A)〜(D)に、顔料,分散剤,老化防止剤,紫外線吸収剤,光安定剤などの各種添加剤を加えることができる。これら添加剤を配合する場合、その配合量としては、上記(A)〜(D)の総和100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、上限として、好ましくは10質量部以下、より好ましくは4質量部以下である。
【0038】
本発明のゴルフボール用材料のメルトフローレート(MFR)について、JIS−K7210に準拠し、試験温度190℃、試験荷重21.18N(2.16kgf)条件下での測定値としては、特に制限はないが、射出成形時の流動性、成形加工性を良好なものにするために、好ましくは1.0g/10min以上、好ましくは1.1g/10min以上、更に好ましくは1.5g/10min以上にすることができ、上限としては、好ましくは4.0g/10min以下、より好ましくは2.7g/10min以下であることが推奨される。
【0039】
本発明のゴルフボール用材料を用いた成形物のショアD硬度としては、35以上であり、好ましくは40以上、より好ましくは45以上であり、上限として、60以下、好ましくは57以下である。
【0040】
上記のゴルフボール用材料は、成形性、生産性の指標として、熱重量測定を測定することができる。即ち、樹脂材料の熱重量測定において、25℃における重量を基準とした250℃における減量率が、好ましくは4.0質量%以下、より好ましくは3.7質量%以下、更に好ましくは3.4質量%以下であることが推奨される。この測定条件は、窒素雰囲気中(流量50ml/min)で昇温速度3℃/minにて25℃から250℃まで熱重量測定を行い、25℃の重量に対する250℃の重量の減量率である。成形時に発生するガスは、樹脂組成物中の遊離脂肪酸等の低分子量成分と分解組成物であると推察され、このガス発生量を減らすことにより、成型時のエア入り、ウェルド、焼け等の成形不良を抑制することができ、ゴルフボール成形性・生産性が良好なものとなると考えられる。
【0041】
本発明のゴルフボール用材料の製造方法としては、特に制限はなく、例えば、ベース樹脂成分としてのアイオノマーまたは未中和のポリマー(A),(B)成分と(C)成分と(D)成分とを一緒にホッパーに投入し、所望の条件で押出す方法を採用することができ、また、(D)については、別のフィーダーから投入しても良い。この場合、上記の(C)成分である金属カチオン源による(A),(B)及び(D)成分中のカルボン酸への中和反応を各種の押出機によって行うことができる。その押出機としては、単軸押出機、2軸押出機のどちらでも良く、2軸押出機がより好ましい。また、これら押出機の連結型でも良く、例えば、単軸押出機−2軸押出機、2軸押出機−2軸押出機等の連結タイプが挙げられる。これらの装置の構成は特別なものではなく、既存の押出機で十分である。
【0042】
本発明のゴルフボール用材料は、コアと該コアを被覆するカバーとからなるツーピースソリッドゴルフボール、又は、1層以上のコアと該コアを被覆する1層以上の中間層と該中間層を被覆する1層以上のカバーとからなるマルチピースソリッドゴルフボールにおけるカバー材又は中間層材として用いることができる。特に、1層以上のコアと2層以上のカバーとからなる多層ゴルフボールとする場合、コアがシス−1,4−ポリブタジエン、不飽和カルボン酸金属塩、無機充填剤及び有機過酸化物からなるゴム組成物によって形成され、最外層カバーではない内側カバー(中間層)として本発明の材料が好適に用いられ、更にカバーとして通常のアイオノマー樹脂または通常のポリウレタンエラストマーが用いられる場合、反発性及び耐久性により一層優れたゴルフボールが得られる。
【実施例】
【0043】
以下、実施例と比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0044】
〔実施例1〜4、比較例1〜7〕
下記のコア配合によるシス−1,4−ポリブタジエンを主成分とするコア材料を用いて、直径37.3mm、質量(重さ)32.7gのコアを得た。
【0045】
コア配合
シス−1,4−ポリブタジエン(JSR社製「BR01」) 100.0 質量部
酸化亜鉛 4.0 質量部
硫酸バリウム 18.4 質量部
老化防止剤(大内新興化学工業社製「ノクラックNS−6」 0.2 質量部
アクリル酸亜鉛 28.5 質量部
ジクミルパーオキサイド 1.0 質量部
水 0.4 質量部
ペンタクロロチオフェノール亜鉛塩 0.1 質量部
【0046】
次に、表1に示す組成の中間層材を200℃で混練型二軸押出機にてミキシングし、ペレット状の中間層材を得た後、上記ソリッドコアを配備した金型内に射出し、厚さ1.35mmの中間層を有する球体を製造した。
【0047】
次に、最外層(カバー)の材料として、商品名「ハイミラン1605」と「ハイミラン1706」とを質量比50:50でブレンドしたカバー組成物を用い、射出成形し、表1の直径を有するスリーピースソリッドゴルフボールを作製した。
【0048】
得られた実施例及び比較例の各ゴルフボールについて、諸特性を下記の通り評価した。結果を表1に併記する。
【0049】
【表1】
【0050】
上記表中の中間層材料の詳細は下記のとおりである。なお、上記表中の中間層材の配合量の数字は質量部で表される。
【0051】
樹脂(A−1):商品名「サーリン8320」
エチレン−メタクリル酸−アクリル酸エステル3元共重合体の金属塩(米国Dupont社製)、重量平均分子量(Mw)「146,000」、酸含量「10質量%」、エステル含量「23質量%」、「MFR」1.0g/min,ショアD硬度「41」
【0052】
樹脂(A−2):商品名「サーリン9320」
エチレン−メタクリル酸−アクリル酸エステル3元共重合体の金属塩(米国Dupont社製)、重量平均分子量(Mw)「164,000」、酸含量「10質量%」、エステル含量「23質量%」、「MFR」0.8g/min,ショアD硬度「40」
【0053】
樹脂(A−3):商品名「AN4319」
未中和のエチレン−メタクリル酸−アクリル酸エステル3元共重合体、「ニュクレル」(三井・デュポンポリケミカル社製)、重量平均分子量(Mw)「127,000」、酸含量「8質量%」、エステル含量「17質量%」、「MFR」60g/min,ショアD硬度「30」
【0054】
樹脂(B−1):商品名「AN4221C」
未中和のエチレン−アクリル酸2元共重合体(三井・デュポンポリケミカル社製)、重量平均分子量(Mw)「181,000」、酸含量「12質量%」、「MFR」10g/min,ショアD硬度「55」
【0055】
なお、上記の各ポリマーの分子量及び分子量分布の測定・算出方法については、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)における測定で、ポリスチレン換算にて算出したものである。
【0056】
「酸化マグネシウム」:協和化学工業社製「キョーワマグMF150」
「水酸化カルシウム」:白石工業社製「CLS−B」
「ステアリン酸マグネシウム」:日油社製「マグネシウムステアレートG」
「ステアリン酸カルシウム」:日油社製「カルシウムステアレートG」
【0057】
樹脂X:商品名「HPF1000」
HPF1000:DuPont HPF(商標)1000。約75から76%のエチレン、約8.5%のアクリル酸、および15.5%から約16.5質量%のn−ブチルアクリレートからなるターポリマーであり、100%の酸基がマグネシウムイオンにより中和されている。
【0058】
樹脂Y:商品名「HPF2000」
HPF2000:DuPont HPF(商標)2000。100%の酸基がマグネシウムイオンにより中和されている。
【0059】
ゴルフボール用材料及びゴルフボールの諸物性の測定方法は下記のとおりである。
【0060】
ガス発生量
各サンプル約10mgについて、窒素雰囲気中(流量50ml/min)で昇温速度3℃/minにて25℃から250℃まで熱重量測定を行い、25℃の重量に対する250℃の重量の減量率を求めた。なお、この重量減少が発生したガス量と推察される。
【0061】
メルトフローレート(MFR)
JIS−K 7210に準拠し、温度190℃、荷重21.18N(2.16kgf)条件下でMFRの値(g/10min)を測定した。
【0062】
生産性
中間層を成形した際の生産性について、以下の基準で判定した。
〇:エア入り、ウェルド、偏芯の発生率が3%未満である。
×:エア入り、ウェルド、偏芯の発生率が3%以上または流動性悪く成形できない。
【0063】
材料ショアD硬度
組成物を厚さ2mmのシート状に成形し、それを3枚重ね合わせてショアD硬度計にて測定した。
【0064】
たわみ変形量(mm)
23±1℃の温度で、ゴルフボールを鋼板の上に置き、初期荷重98N(10kgf)から終荷重1275N(130kgf)に負荷したときのゴルフボールのたわみ量(mm)。
【0065】
初速度(m/s)
初速はR&Aの承認する装置であるUSGAのドラム回転式の初速計と同方式の初速測定器を用いて測定した。ボールは23±1℃の温度で3時間以上温調し、同温度で測定した。250ポンド(113.4kg)のヘッド(ストライキングマスク)を使って打撃速度143.8ft/s(43.83m/s)にてボールを打撃した。10個のボールを各々2回打撃して6.28ft(1.91m)の間を通過する時間を計測し、初速を計算した。15分間でこのサイクルを行った。
【0066】
耐久性
米国Automated Design Corporation製のADC Ball COR Durability Testerにより、ボールの耐久性(Durability)を評価した。ボールを空気圧で発射させた後、平行に設置した2枚の金属板に連続的に衝突させ、ボールが割れるまでに要した発射回数の平均値を用いて耐久性を評価した。(この場合、平均値とは、同種のボールを4個用意し、それぞれのボールを発射させて4個のボールがそれぞれ割れるまでに要した発射回数を平均化した値である。試験機のタイプは、縦型CORであり、金属板への入射速度を43m/sとした。)
【0067】
上記表1の結果から分かるように、各比較例は、本実施例に比べて以下の点で劣る。
比較例1においては、中間層材の樹脂組成物中には本発明の(B)成分に相当するベース樹脂を配合しておらず、その結果、十分なボール初速度が得られていない。
比較例2においては、中間層材の樹脂組成物中には本発明の(B)成分に相当するベース樹脂を配合しておらず、その結果、十分なボール初速度が得られていない。
比較例3においては、中間層材の樹脂組成物中の(D)陰イオン界面活性剤の配合量がベース樹脂に対して120質量部と多く、その結果、中間層成形時のエア入り、ウェルド不良が多く、生産性が悪い。
比較例4においては、中間層材の樹脂組成物中の(C)塩基性無機金属化合物の配合量が多くなり、その結果、成形時の樹脂材料の流動性が悪くなり、ゴルフボールの生産性が悪い(ボール成形ができない)。
比較例5においては、(C)成分の量が多くなり、その結果、成形時の樹脂材料の流動性が悪くなり、ゴルフボールの生産性が悪い。
比較例6においては、中間層材の流動性が悪く、生産性が悪い。
比較例7のおいては、中間層材の反発性が十分でなく、耐久性が悪く、初速度も十分でない。