特許第6443045号(P6443045)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6443045画像読取装置、画像記録装置、及び画像記録システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6443045
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】画像読取装置、画像記録装置、及び画像記録システム
(51)【国際特許分類】
   H04N 1/00 20060101AFI20181217BHJP
   G06F 3/12 20060101ALI20181217BHJP
   B41J 29/38 20060101ALI20181217BHJP
【FI】
   H04N1/00 127Z
   G06F3/12 332
   G06F3/12 336
   B41J29/38 Z
【請求項の数】5
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2014-265452(P2014-265452)
(22)【出願日】2014年12月26日
(65)【公開番号】特開2016-127368(P2016-127368A)
(43)【公開日】2016年7月11日
【審査請求日】2017年11月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】特許業務法人梶・須原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 克明
【審査官】 橋爪 正樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−359716(JP,A)
【文献】 特開2007−208998(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/00
B41J29/38
G06F 3/12
G06T 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に画像を記録する画像記録装置に接続可能な画像読取装置であって、
記録媒体に記録された画像を読み取って画像データを生成する画像読取機構と、
前記画像データに対して画像処理を行うことで、前記画像記録装置の記録特性に応じた画処理データを生成するための読取側制御部とを備えており、
前記読取側制御部は、
前記画像記録装置の記録特性により定まる前記画像処理に係る一又は複数の処理条件を前記画像記録装置から取得する取得処理と、
前記取得処理により取得した前記一又は複数の処理条件に従って前記画像データに対して前記画像処理を行うことによって、前記画処理データを生成する画処理データ生成処理と、
前記画処理データ生成処理により生成された前記画処理データを前記画像記録装置に送信する送信処理とを実行し、
前記画像処理が、複数の工程を含んでおり、
前記画像記録装置は、前記画像処理の前記複数の工程を実行可能であり、
前記読取側制御部は、
前記取得処理において、前記複数の工程に対応する複数の前記処理条件を前記画像記録装置から取得し、且つ、
前記画像処理における前記複数の工程のそれぞれが、前記取得処理により取得した対応する前記処理条件に従って実行可能な工程であるか否かを判断する判断処理をさらに実行し、
前記判断処理において、前記複数の工程の全てが、対応する前記処理条件に従って実行可能な処理可能工程であると判断した場合には、前記画処理データ生成処理及び前記送信処理を実行し、
前記判断処理において、前記複数の工程の全てが、対応する前記処理条件に従って実行することができない処理不能工程であると判断した場合には、前記画像処理を前記画像記録装置にて実行させるべく、前記画像データを前記画像記録装置に送信する処理を実行し、
前記判断処理において、前記複数の工程が前記処理可能工程と前記処理不能工程とを含んでいると判断した場合には、
前記複数の工程のうちの前記処理可能工程だけを対応する前記処理条件に従って実行して前記画像データから中間データを生成し、前記処理不能工程については前記画像記録装置にて実行させるべく、前記中間データを前記画像記録装置に送信する処理を実行することを特徴とする画像読取装置。
【請求項2】
記録媒体に画像を記録する画像記録装置に接続可能な画像読取装置であって、
記録媒体に記録された画像を読み取って画像データを生成する画像読取機構と、
前記画像データに対して画像処理を行うことで、前記画像記録装置の記録特性に応じた画処理データを生成するための読取側制御部とを備えており、
前記読取側制御部は、
前記画像記録装置の記録特性により定まる前記画像処理に係る一又は複数の処理条件を前記画像記録装置から取得する取得処理と、
前記取得処理により取得した前記一又は複数の処理条件に従って前記画像データに対して前記画像処理を行うことによって、前記画処理データを生成する画処理データ生成処理と、
前記画処理データ生成処理により生成された前記画処理データを前記画像記録装置に送信する送信処理とを実行し、
前記画像記録装置は、前記画像処理を実行可能であり、
前記読取側制御部は、
前記取得処理において、前記画像記録装置にて前記画像処理を実行するのに要する記録側処理時間を取得する処理をさらに実行し、且つ、
前記取得処理にて取得した前記一又は複数の処理条件に従って前記画像処理を行うときに前記画像データから前記画処理データを生成するのに要する読取側処理時間、及び、当該画処理データを前記画像記録装置に送信するのに要する送信時間を加算した第1時間と、前記取得処理にて取得した前記記録側処理時間、及び、前記画像データを前記画像記録装置に送信するのに要する送信時間を加算した第2時間とを比較する比較処理をさらに実行し、
前記比較処理における比較の結果、前記第1時間が前記第2時間未満のときは、前記画処理データ生成処理及び前記送信処理を実行し、
前記比較処理における比較の結果、前記第1時間が前記第2時間以上のときは、前記画像処理を前記画像記録装置にて実行させるべく、前記画像データを前記画像記録装置に送信する処理を実行することを特徴とする画像読取装置。
【請求項3】
記録媒体に記録された画像を読み取って画像データを生成する画像読取機構と、前記画像データに対して画像処理を行うことが可能な読取側制御部とを備えた画像読取装置に接続可能な画像記録装置であって、
記録媒体に画像を記録するための画像記録機構と、
記録データに基づく画像が記録媒体に記録されるように前記画像記録機構を制御するための記録側制御部とを備えており、
前記記録側制御部は、
前記画像データから前記記録データの生成を行う記録データ生成処理の一部又は全部を前記画像読取装置にて実行させて、前記記録データ生成処理の処理過程で生成される中間データ、又は前記記録データである画処理データを生成させるべく、前記画像記録装置の記録特性により定まる、前記記録データ生成処理に係る一又は複数の処理条件の少なくとも一部を前記画像読取装置に送信する送信処理と、
前記画像読取装置における画像処理により前記画像データから生成された前記画処理データを、前記画像読取装置から受信する画処理データ受信処理とを実行し、
前記画処理データ受信処理により受信した前記画処理データが、前記中間データである場合には、前記中間データから前記記録データを生成する処理を実行することを特徴とする画像記録装置。
【請求項4】
画像読取装置と画像記録装置とを有する画像記録システムであって、
前記画像読取装置は、
記録媒体に記録された画像を読み取って画像データを生成する画像読取機構と、
前記画像データに対して画像処理を行うことによって、前記画像記録装置の記録特性に応じた画処理データを生成するための読取側制御部とを備えており、
前記画像記録装置は、
記録媒体に画像を記録するための画像記録機構と、
前記画処理データに基づく画像が記録媒体に記録されるように前記画像記録機構を制御するための記録側制御部とを備えており、
前記読取側制御部は、
前記画像処理に係る一又は複数の処理条件を前記画像記録装置から取得する取得処理と、
前記取得処理により取得した前記一又は複数の処理条件に従って前記画像データに対して前記画像処理を行うことによって、前記画処理データを生成する画処理データ生成処理と、
前記画処理データ生成処理により生成された前記画処理データを前記画像記録装置に送信する読取側送信処理とを実行し、
前記記録側制御部は、
前記画像記録装置の記録特性により定まる、前記画像処理に係る前記一又は複数の処理条件を前記画像読取装置に送信する記録側送信処理と、
前記画像読取装置から送信された前記画処理データを受信する記録側受信処理とを実行し、
さらに、
前記画像処理が、複数の工程を含んでおり、
前記画像記録装置は、前記画像処理の前記複数の工程を実行可能であり、
前記読取側制御部は、
前記取得処理において、前記複数の工程に対応する複数の前記処理条件を前記画像記録装置から取得し、且つ、
前記画像処理における前記複数の工程のそれぞれが、前記取得処理により取得した対応する前記処理条件に従って実行可能な工程であるか否かを判断する判断処理をさらに実行し、
前記判断処理において、前記複数の工程の全てが、対応する前記処理条件に従って実行可能な処理可能工程であると判断した場合には、前記画処理データ生成処理及び前記読取側送信処理を実行し、
前記判断処理において、前記複数の工程の全てが、対応する前記処理条件に従って実行することができない処理不能工程であると判断した場合には、前記画像処理を前記画像記録装置にて実行させるべく、前記画像データを前記画像記録装置に送信する処理を実行し、
前記判断処理において、前記複数の工程が前記処理可能工程と前記処理不能工程とを含んでいると判断した場合には、
前記複数の工程のうちの前記処理可能工程だけを対応する前記処理条件に従って実行して前記画像データから中間データを生成し、前記処理不能工程については前記画像記録装置にて実行させるべく、前記中間データを前記画像記録装置に送信する処理を実行することを特徴とする画像記録システム。
【請求項5】
画像読取装置と画像記録装置とを有する画像記録システムであって、
前記画像読取装置は、
記録媒体に記録された画像を読み取って画像データを生成する画像読取機構と、
前記画像データに対して画像処理を行うことによって、前記画像記録装置の記録特性に応じた画処理データを生成するための読取側制御部とを備えており、
前記画像記録装置は、
記録媒体に画像を記録するための画像記録機構と、
前記画処理データに基づく画像が記録媒体に記録されるように前記画像記録機構を制御するための記録側制御部とを備えており、
前記読取側制御部は、
前記画像処理に係る一又は複数の処理条件を前記画像記録装置から取得する取得処理と、
前記取得処理により取得した前記一又は複数の処理条件に従って前記画像データに対して前記画像処理を行うことによって、前記画処理データを生成する画処理データ生成処理と、
前記画処理データ生成処理により生成された前記画処理データを前記画像記録装置に送信する読取側送信処理とを実行し、
前記記録側制御部は、
前記画像記録装置の記録特性により定まる、前記画像処理に係る前記一又は複数の処理条件を前記画像読取装置に送信する記録側送信処理と、
前記画像読取装置から送信された前記画処理データを受信する記録側受信処理とを実行し、
前記画像記録装置は、前記画像処理を実行可能であり、
前記読取側制御部は、
前記取得処理において、前記画像記録装置にて前記画像処理を実行するのに要する記録側処理時間を取得する処理をさらに実行し、且つ、
前記取得処理にて取得した前記一又は複数の処理条件に従って前記画像処理を行うときに前記画像データから前記画処理データを生成するのに要する読取側処理時間、及び、当該画処理データを前記画像記録装置に送信するのに要する送信時間を加算した第1時間と、前記取得処理にて取得した前記記録側処理時間、及び、前記画像データを前記画像記録装置に送信するのに要する送信時間を加算した第2時間とを比較する比較処理をさらに実行し、
前記比較処理における比較の結果、前記第1時間が前記第2時間未満のときは、前記画処理データ生成処理及び前記読取側送信処理を実行し、
前記比較処理における比較の結果、前記第1時間が前記第2時間以上のときは、前記画像処理を前記画像記録装置にて実行させるべく、前記画像データを前記画像記録装置に送信する処理を実行することを特徴とする画像記録システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像読取装置、画像記録装置、及び画像記録システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、スキャナで読み取った画像を、プリンタにて印刷させる技術が記載されている。この特許文献1では、スキャナが、画像データをプリンタで印刷可能な印刷データに変換するためのプリンタドライバを、接続されているプリンタごとに備えている。そして、スキャナは、出力先のプリンタに合致したプリンタドライバを選択して、この選択したプリンタドライバにより画像データを印刷データに変換して、出力先のプリンタに送信している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10―290320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された技術では、スキャナが、各プリンタに合致したプリンタドライバを予め記憶しておく必要があるため、その分だけ、スキャナに搭載するメモリを大容量化する必要があり、コストが高くなる。
【0005】
本発明の目的は、画像読取装置にて、画像データを画像記録装置の記録特性に応じたデータに変換することが可能であり、且つ、画像読取装置を低コスト化することが可能な画像読取装置、画像記録装置、及びこれらを備えた画像記録システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明に係る画像読取装置は、記録媒体に画像を記録する画像記録装置に接続可能な画像読取装置であって、記録媒体に記録された画像を読み取って画像データを生成する画像読取機構と、前記画像データに対して画像処理を行うことで、前記画像記録装置の記録特性に応じた画処理データを生成するための読取側制御部とを備えており、前記読取側制御部は、前記画像記録装置の記録特性により定まる前記画像処理に係る一又は複数の処理条件を前記画像記録装置から取得する取得処理と、前記取得処理により取得した前記一又は複数の処理条件に従って前記画像データに対して前記画像処理を行うことによって、前記画処理データを生成する画処理データ生成処理と、前記画処理データ生成処理により生成された前記画処理データを前記画像記録装置に送信する送信処理とを実行することを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係る画像記録装置は、記録媒体に記録された画像を読み取って画像データを生成する画像読取機構と、前記画像データに対して画像処理を行うことが可能な読取側制御部とを備えた画像読取装置に接続可能な画像記録装置であって、記録媒体に画像を記録するための画像記録機構と、記録データに基づく画像が記録媒体に記録されるように前記画像記録機構を制御するための記録側制御部とを備えており、前記記録側制御部は、前記画像データから前記記録データの生成を行う記録データ生成処理の一部又は全部を前記画像読取装置にて実行させて、前記記録データ生成処理の処理過程で生成される中間データ、又は前記記録データである画処理データを生成させるべく、前記画像記録装置の記録特性により定まる、前記記録データ生成処理に係る一又は複数の処理条件の少なくとも一部を前記画像読取装置に送信する送信処理と、前記画像読取装置における画像処理により前記画像データから生成された前記画処理データを、前記画像読取装置から受信する画処理データ受信処理とを実行することを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る画像記録システムは、画像読取装置と画像記録装置とを有する画像記録システムであって、前記画像読取装置は、記録媒体に記録された画像を読み取って画像データを生成する画像読取機構と、前記画像データに対して画像処理を行うことによって、前記画像記録装置の記録特性に応じた画処理データを生成するための読取側制御部とを備えており、前記画像記録装置は、記録媒体に画像を記録するための画像記録機構と、前記画処理データに基づく画像が記録媒体に記録されるように前記画像記録機構を制御するための記録側制御部とを備えており、前記読取側制御部は、前記画像処理に係る一又は複数の処理条件を取得する取得処理と、前記取得処理により取得した前記一又は複数の処理条件に従って前記画像データに対して前記画像処理を行うことによって、前記画処理データを生成する画処理データ生成処理と、前記画処理データ生成処理により生成された前記画処理データを前記画像記録装置に送信する読取側送信処理とを実行し、前記記録側制御部は、前記画像記録装置の記録特性により定まる、前記画像処理に係る前記一又は複数の処理条件を前記画像読取装置に送信する記録側送信処理と、前記画像読取装置から送信された前記画処理データを受信する記録側受信処理とを実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、画像読取装置は、画像記録装置から画像処理に係る一又は複数の処理条件を取得することができる。これにより、画像読取装置は、画像記録装置の記録特性により定まる一又は複数の処理条件を予め記憶しておく必要がないため、画像読取装置を低コスト化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】ネットワークシステムの概略構成図である。
図2図1に示すインクジェットプリンタの概略側面図である。
図3図1に示すインクジェットプリンタの電気的構成図である。
図4】(a)はスキャンデータについて説明する図であり、(b)はUCRカーブについて説明する図であり、(c)はガンマカーブについて説明する図である。
図5】(a)は誤差拡散回路について説明する図であり、(b)は液滴サイズ、液滴量、及び代表階調値それぞれの関係を示す図であり、(c)は補正値と出力値との関係を示す図であり、(d)は誤差拡散マトリクスについて説明する図である。
図6】(a)は図1に示すスキャナの電気的構成図であり、(b)は画像処理回路の電気的構成図であり、(c)は変形例に係る画像処理回路の電気的構成図である。
図7】スキャナの動作の一例を示すフロー図である。
図8】インクジェットプリンタの動作の一例を示すフロー図である。
図9】インクジェットプリンタの動作の変形例を示すフロー図である。
図10】スキャナの動作の変形例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。図1は、画像記録システムを含むネットワークシステム200の一例を示す図である。ネットワークシステム200は、記録媒体である用紙に画像を記録するための複数のインクジェットプリンタ1(画像記録装置の一例)と、用紙に記録された画像を読み取って画像データを生成するための複数のスキャナ100(画像読取装置の一例)と、複数のPC180とを備えており、これらのデバイスは、LAN(Local Area Network)等のネットワーク250を介して互いに通信可能に接続されている。
【0012】
また、本実施形態では、スキャナ100により生成された画像データは、インクジェットプリンタ1(以下、プリンタ1)に転送され、プリンタ1にて当該画像データに係る画像を用紙に記録することが可能に構成されている。このスキャナ100からプリンタ1への画像データの転送は、FTP(File Transfer Protocol)を利用して実行される。つまり、プリンタ1がFTPサーバとして機能し、スキャナ100がFTPクライアントして機能する。なお、画像データの転送はストリーミング等により行ってもよい。
【0013】
(プリンタの構成)
次に、プリンタ1の構成について説明する。プリンタ1は、図2に示すように、略直方体形状に形成された筐体1aを有する。筐体1aの内部空間には、画像記録機構2及び制御装置10が配置されている。また、筐体1aの外面には、タッチパネル8(図3参照)が設けられている。タッチパネル8は、入力機能及び表示機能を備えたユーザインターフェースであり、動作状況の表示やユーザによる入力操作の受付を行う。具体的には、タッチパネル8は、制御装置10から入力された信号に応じた画像を画面に表示し、ユーザ操作に応じた信号を制御装置10に出力する。
【0014】
画像記録機構2は、インクジェット方式で用紙Pにカラー画像を記録する機構であり、搬送機構3と、用紙トレイ4と、プラテン5と、4つのインクジェットヘッド6(以下、ヘッド6)とを備えている。
【0015】
4つのヘッド6は、副走査方向に沿って互いに隣接配置されており、シアン、マゼンタ、イエロー、及びブラックのインクをそれぞれ吐出する。各ヘッド6の下面は、複数のノズル(不図示)が開口した吐出面6aである。また、4つのヘッド6は、いずれも主走査方向に長尺な略直方体形状を有したライン式のインクジェットヘッドである。この4つのヘッド6は、対応する色のインクが貯留されるカートリッジ7と接続されており、カートリッジ7からインクが供給される。ここで、副走査方向とは、水平面に平行、且つ用紙Pの搬送方向と平行な方向であり、主走査方向とは、副走査方向に直交する方向である。
【0016】
用紙トレイ4は、積層された複数の用紙Pを保持可能であり、筐体1aに着脱自在に配置されている。プラテン5は、用紙を支持するための板部材であり、4つのヘッド6の吐出面6aに対向配置されている。
【0017】
搬送機構3は、用紙トレイ4から、筐体1aの上面に設けられた載置部1bに至る用紙Pの搬送経路を構成する。また、搬送機構3は、搬送経路に沿って配置された複数の搬送ローラ3aを有している。搬送ローラ3aは、制御装置10による制御の下、用紙トレイ4に積層されている用紙Pを搬送経路に沿って搬送する。搬送機構3によって搬送された用紙Pは、4つのヘッド6とプラテン5との間を通過する際に、各ヘッド6のノズルから吐出されたインク滴によってカラー画像が記録される。画像が記録された用紙Pは、搬送機構3によってさらに搬送され、載置部1bに載置される。
【0018】
次に、制御装置10について、図3を参照しつつ詳細に説明する。制御装置10は、プリンタ1全体の動作を司る主制御回路20、RIP処理を行うRIP処理回路30、記録データ生成処理を行う記録データ生成回路40、並びに、ヘッド6及び搬送機構3を制御する記録処理回路50を備えている。
【0019】
主制御回路20は、ネットワークインターフェース21、CPU(Central Processing Unit)22、ROM(Read Only Memory)23、RAM(Random Access Memory)24、印刷データ記憶メモリ25、印刷データ送信回路26、及び、タッチパネル制御回路27を有している。
【0020】
ネットワークインターフェース21は、プリンタ1と同じネットワーク250に接続されたスキャナ100やPC180などの各種外部端末装置との間でデータ通信を行うためのインターフェースである。ROM23には、CPU22が実行する制御プログラム23aであるファームウェアや各種設定、初期値等が記憶されている。RAM24は、各種制御プログラムが読み出される作業領域として、あるいはデータを一時的に記憶する記憶領域として利用される。
【0021】
印刷データ記憶メモリ25には、ネットワークインターフェース21を介して、スキャナ100やPC180などの外部端末装置から受信した印刷データが記憶される。なお、印刷データの種類としては、PC180から送信されるPDLデータや、スキャナ100から送信されるスキャンデータが含まれる。PDLデータは、PDL(page description language)などで記述されたデータである。
【0022】
スキャンデータは、図4(a)に示すように、ヘッド6から吐出されるインク滴により用紙P上にドットが形成され得る複数のドット領域に対応する、複数のドット要素を含むビットマップデータである。スキャンデータの種類としては、スキャナ100で読み取られた画像データそのものであるRGB色空間で表されたRGBデータや、スキャナ100において当該RGBデータに対して画像処理が行われることで生成された画処理データが含まれる。RGBデータは、光の3原色である赤を表すR値と、緑を表すG値と、青を示すB値を含む256階調のRGB値が各ドット要素に対して設定されたビットマップデータである。また、画処理データもRGBデータと同様にビットマップデータであり、その種類には、CMYデータ、CMYKデータ、多値化データ、規制済データ、及び、吐出データが含まれる。
【0023】
印刷データ送信回路26は、CPU22からの指示に従って、印刷データ記憶メモリ25に記憶された印刷データを、RIP処理回路30に送信する。タッチパネル制御回路27は、タッチパネル8を制御する。
【0024】
ここで、詳細については後で説明するが、記録データ生成回路40により実行される記録データ生成処理は、5つの処理工程を有している。そして、スキャナ100で読み取られたRGBデータは、この5つの処理工程を経ることで、各ヘッド6のインク吐出に係る吐出データ(記録データの一例)に変換される。また、上述のCMYデータ、CMYKデータ、多値化データ、及び規制済データは、記録データ生成処理の処理過程で生成される中間データである。加えて、本実施形態では、スキャナ100においても記録データ生成処理の5つの処理工程全てを実行可能に構成されている。
【0025】
ところで、プリンタ1の記録特性はプリンタ1毎に互いに異なり、且つ、印刷ジョブ毎に互いに異なる場合がある。記録特性には、例えば、プリンタ1(ヘッド6) における印字方式や、使用されるインクやトナー等の画像形成原料の濃度や発色性、ノズルの形状や吐出特性などの各プリンタ固有の装置特性や、ユーザによる用紙Pに記録する画像の濃淡の選択など印刷ジョブ単位で変更可能な印字特性などが含まれる。ここで装置特性が異なるプリンタ1同士では、同じ吐出データに基づきヘッド6からインクを吐出させたとしても、異なる色表現で画像が記録されることになる。そこで、本実施形態では、装置特性が互いに異なるプリンタ1同士でも同じ色表現で画像が記録されるよう、記録データ生成処理についての複数の処理条件がプリンタ1毎に予め設定されている。そして、記録データ生成回路40は、この処理条件に従い記録データ生成処理を実行することで、プリンタ1の装置特性に応じた吐出データを生成することが可能にされている。
【0026】
具体的には、記録データ生成処理の5つの処理工程それぞれについての、各プリンタ1の装置特性に応じた処理条件であるパラメータ23b〜23fがROM23に予め記憶されている。本実施形態では、記録データ生成処理の5つの処理工程それぞれに対して、複数種類のパラメータ23b〜23fが対応付けられている。そして、CPU22は、記録データ生成処理の各処理工程で採用するパラメータとして、それぞれの処理工程に対応する複数種類のパラメータのなかから何れか一つをROM23から選択して抽出し、この抽出したパラメータを、記録データ生成回路40の後述する設定パラメータレジスタ48に記憶する。
【0027】
例えば、ROM23に記憶されるガンマ補正パラメータ23dは、用紙Pに記録する画像の濃淡を決めるためのパラメータであり、本実施形態では合計12種類ある。そのうち11種類は標準モード用のパラメータであり、1種類はインクセーブモード用のパラメータである。本実施形態では、ユーザがタッチパネル8を介して、標準モード及びインクセーブモードの何れかの選択、及び、標準モードの場合に用紙Pに記録する画像の濃淡を11種類の中から選択することが可能にされている。CPU22は、ユーザの選択結果に応じて、12種類のガンマ補正パラメータ23dのうちの何れか1種類のガンマ補正パラメータ23dをROM23から選択して抽出し、設定パラメータレジスタ48に記憶する。
そして、記録データ生成回路40が、このように設定パラメータレジスタ48に記憶されたパラメータに従い記録データ生成処理を実行することで、プリンタ1の装置特性に応じた吐出データが生成されることになる。
【0028】
次に、RIP処理回路30について説明する。RIP処理回路30は、図3に示すように、受信回路31、データ記憶バッファ32、送信回路33、及びRIPCPU34を有している。受信回路31は、主制御回路20から送信された印刷データを受信してデータ記憶バッファ32に記憶する。RIPCPU34は、データ記憶バッファ32に記憶された印刷データがPDLデータである場合には、当該PDLデータに対して公知のRIP(Raster Image Processing)処理を行うことで、RGBデータを生成する。そして、RIPCPU34は、生成したRGBデータを、送信回路33を介して記録データ生成回路40に送信する。一方で、RIPCPU34は、データ記憶バッファ32に記憶された印刷データがスキャンデータである場合には、スキャンデータに対してRIP処理を行う必要はないので、当該スキャンデータを記録データ生成回路40に送信する。
【0029】
次に、記録データ生成回路40について説明する。記録データ生成回路40は、図3に示すように、振分回路41、色変換回路42、UCR回路43、ガンマ補正回路44、インク総量規制回路45、誤差拡散回路46、LVDS送信回路47、及び設定パラメータレジスタ48を有している。本実施形態では、記録データ生成処理は、色変換処理、UCR処理、ガンマ補正処理、総量規制処理、及び誤差拡散処理の5つの処理工程を有しており、この順で処理工程を実行することでRGBデータから吐出データを生成することが可能に構成されている。なお、色変換回路42が色変換処理を、UCR回路43がUCR処理を、ガンマ補正回路44がガンマ補正処理を、インク総量規制回路45が総量規制処理を、誤差拡散回路46が誤差拡散処理をそれぞれ実行可能である。
【0030】
振分回路41は、RIP処理回路30から送信されたRGBデータ又はスキャンデータを受信する。ここで、振分回路41がRIP処理回路30から受信するデータの種類としては、RGBデータ、CMYデータ、CMYKデータ、多値化データ、規制済データ、及び吐出データの6種類がある。振分回路41は、RIP処理回路30から受信したデータの種類を解析し、そのデータの種類に応じて、色変換回路42、UCR回路43、ガンマ補正回路44、インク総量規制回路45、誤差拡散回路46、及びLVDS送信回路47の何れかに送信する。詳細には、振分回路41は、RIP処理回路30から受信したデータがRGBデータである場合には色変換回路42に送信し、CMYデータである場合にはUCR回路43に送信し、CMYKデータである場合にはガンマ補正回路44に送信し、多値化データである場合にはインク総量規制回路45に送信し、規制済データである場合には誤差拡散回路46に送信し、吐出データである場合にはLVDS送信回路47に送信する。
【0031】
色変換回路42は、振分回路41から受信したRGBデータに対して色変換処理を実行することでCMYデータを生成する回路である。CMYデータは、ヘッド6から吐出されるカラー3色であるシアンを表すC値と、マゼンタを表すM値と、イエローを示すY値とを含む256階調のCMY値が、各ドット要素に対して設定されたデータである。色変換回路42は、色変換処理において、設定パラメータレジスタ48に記憶された色変換パラメータ23bに従い、RGBデータの各ドット要素に設定されたRGB値をCMY値に変換する。色変換パラメータ23bは、R値、G値、B値それぞれと、C値、M値、Y値それぞれとの対応関係を示すルックアップテーブルである。なお、本実施形態では、ルックアップテーブルは、記憶するデータ量を低減するために、特定のR値、G値、B値に対応するC値、M値、Y値のみを示すテーブルとなっている。具体的には、0〜255のRGB値を16分割した場合に区切りとなる値(0,16,32, ・・・,255)を代表値とし、かかる代表値に対応するCMY値のみが記憶されている。代表値以外の他のRGB値に対応するCMY値は、代表値に対応したCMY値から公知の線形補間演算を行うことによって算出される。
【0032】
UCR回路43は、色変換回路42が生成したCMYデータ又は振分回路41から受信したCMYデータに対して、公知のUCR(Under Color Remove)処理を行うことでCMYKデータを生成する回路である。CMYKデータは、C値、M値、Y値に加えて、ブラックを表すK値も含む256階調のCMYK値が、各ドット要素に対して設定されたデータである。UCR回路43は、まず、CMYデータの各ドット要素に設定されたCMY値から、設定パラメータレジスタ48に記憶されたUCRパラメータ23cに従い、CMYKデータの各ドット要素に設定するK値を生成する。UCRパラメータ23cは、図4(b)に示すように、C値、M値、Y値のうちの最小値であるmin(CMY)と、生成されるK値との関係を示すUCRカーブである。この後、UCR回路43は、CMYデータの各ドット要素のC値、M値、Y値それぞれから、生成したK値を減算した値を、CMYKデータの各ドット要素のC値、M値、Y値とする。以上によりCMYKデータが生成される。このようにRGBデータからCMYKデータを直接生成するのではなく、RGBデータからCMYデータを生成した後、このCMYデータに対してUCR処理を実行してCMYKデータを生成することで、用紙Pに記録される画像の黒色が黒インクだけで表現することができる。その結果として、用紙Pに記録される画像の品質を向上させることが可能となる。
【0033】
ガンマ補正回路44は、UCR回路43が生成したCMYKデータ又は振分回路41から受信したCMYKデータに対して、ガンマ補正処理を行うことで高階調の多値化データを生成する。ガンマ補正回路44は、ガンマ補正処理において、CMYKデータの各ドット要素に設定された256階調のC値、M値、Y値、K値それぞれを、設定パラメータレジスタ48に記憶されたガンマ補正パラメータ23dに従い、例えば、1024階調のC値、M値、Y値、K値に変換する。ガンマ補正パラメータ23dは、図4(c)に示すように、入力値と出力値との関係を示すガンマカーブであり、C値、M値、Y値、K値それぞれ毎に設けられている。
【0034】
本実施形態では、上述したようにガンマ補正パラメータ23dの種類としては、用紙P上に記録する画像の濃度に応じた標準モード用の11種類のガンマ補正パラメータと、用紙Pに画像を記録する際に使用するインクの総量を標準モードよりも減らすインクセーブモード用の1種類のガンマ補正パラメータの計12種類がある。図4(c)には、ガンマカーブの一例として、標準モード用のガンマ補正パラメータ23dのうちの1種類に対応するガンマカーブと、インクセーブモード用のガンマ補正パラメータ23dに対応するガンマカーブとを示している。図4(c)からも分かるように、一点鎖線で示すインクセーブモード用のガンマカーブは、実線で示す標準モード用のガンマカーブよりも勾配が緩やかである。ここで、多値化データにおいて階調値が大きいほど使用するインクの量が多くなるため、インクセーブモードでは出力値の階調値を全体的に小さくして、用紙Pに画像を記録する際に使用するインクの総量を減らしている。以上のように、ガンマ補正回路44によりCMYKデータを高階調の多値化データに変換することにより、後述の誤差拡散処理等の濃度制御をより精密に行うことが可能となる。
【0035】
ところで、用紙P上の一つのドットに多量のインクが着弾されると、インク滲みや裏移りなどの問題が顕著となる。そこで、インク総量規制回路45は、ガンマ補正回路44により生成された多値化データ又は振分回路41から受信した多値化データに対して、用紙P上の各ドットに着弾するインクの総量を規制するための総量規制処理を実行して規制済データを生成する。詳細には、インク総量規制回路45は、総量規制処理において、設定パラメータレジスタ48に記憶された総量規制パラメータ23eに従い、多値化データの各ドット要素に設定されたC値、M値、Y値それぞれを低減する。総量規制パラメータ23eは、一つのドット要素に設定可能なC値、M値、Y値、K値の合計値の最大値を規定した規制値である。この総量規制処理により、多値化データにおいて、C値、M値、Y値、K値の合計値が規制値を超えているドット要素については、C値、M値、Y値、K値の合計値が規制値未満となるようにC値、M値、Y値の値がそれぞれ低減される。その結果として、インク滲みや裏移りなどの問題が生じることを抑制することが可能となる。
【0036】
誤差拡散回路46は、インク総量規制回路45により生成された規制済データ又は振分回路41から受信した規制済データに対して、設定パラメータレジスタ48に記憶された誤差拡散パラメータ23fに従い、誤差拡散処理を行うことで低諧調の吐出データを生成する。本実施形態では、吐出データは、4階調のC値、M値、Y値、K値それぞれが各ドット要素に対して設定された4値データである。吐出データにおける各ドット要素に設定されるC値、M値、Y値、K値それぞれの4つの階調値は、「00」が不吐出,「01」が小滴,「10」が中滴,「11」が大滴のインク滴にそれぞれ対応している。
【0037】
誤差拡散パラメータ23fには、閾値基準パラメータ、乱数ノイズパラメータ、光学濃度パラメータ、及び誤差拡散マトリクスが含まれる。閾値基準パラメータは、規制済データを4階調に量子化する際に用いる3つの閾値それぞれの基準値を規定したパラメータである。乱数ノイズパラメータは、上記3つの閾値それぞれの基準値に対して個別に加える乱数値の振幅である乱数範囲を規定するパラメータである。光学濃度パラメータは、規制済データにおける1024階調値のうちの、小滴、中滴、及び大滴の3つのインク滴それぞれに対応する3つの代表階調値について規定したパラメータである。なお、3つの代表階調値の比率は、小滴、中滴、及び大滴の3つのインク滴の液滴量の比率と同じとなるように設定されている(図5(b)参照)。誤差拡散マトリクスは、周囲に拡散させる誤差の割合を規定したパラメータである。
【0038】
なお、誤差拡散処理は、C値、M値、Y値、K値それぞれについて独立して実行されるため、誤差拡散パラメータはC値、M値、Y値、K値それぞれ対応した4種類が設定パラメータレジスタ48に記憶されている。以下、誤差拡散回路46について詳細に説明するが、説明の便宜上、C値に係る内容についてのみ説明する。
【0039】
誤差拡散回路46は、図5(a)に示すように、乱数発生回路61、第1加算器62、第2加算器63、比較器64、誤差演算回路65、及び誤差メモリ66を有している。
【0040】
乱数発生回路61は、設定パラメータレジスタ48に記憶されている乱数ノイズパラメータに規定された、3つの閾値に対応する3つの乱数範囲それぞれからランダムに、それぞれの閾値に対応する乱数値を発生する。第1加算器62は、設定パラメータレジスタ48に記憶されている閾値基準パラメータに規定された3つの閾値それぞれの基準値に対して、乱数発生回路61が発生したそれぞれの閾値に対応する乱数値を加算した値を、量子化する際に用いる3つの閾値として生成する。この3つの閾値はドット要素毎に生成される。以上のように、量子化する際に用いる3つの閾値は、予め定められた固定値ではなく、それぞれに対応する所定の乱数範囲の中からドット要素毎にランダムに選択された値となる。その結果として、誤差拡散固有の模様(テクスチャ)や、記録系固有のスジ、ムラ等を低減することが可能となる。
【0041】
第2加算器63は、規制済データの複数のドット要素を、順に注目ドット要素として選択する。注目ドット要素は、規制済データの左上隅のドット要素を起点として主走査方向(右方向)に順にシフトし、右端のドット要素に到達すると、次のラスタ(副走査方向に1ドット要素分シフトした行)の左端のドット要素から主走査方向に順にシフトする。
【0042】
第2加算器63は、注目ドット要素を選択すると、この注目ドット要素に設定されたC値に対して、誤差メモリ66に登録されている当該注目ドット要素についての登録誤差値を加算して、補正値を生成する。誤差メモリ66は、ドット要素ごとに登録誤差値を登録するためのメモリである。注目ドット要素の処理によって生じた後述する誤差値が、その注目ドット要素の周辺に位置する未処理の複数のドット要素に所定の割合で拡散されて、各ドット要素の登録誤差値として登録される。ここで、既に登録誤差値が登録されている場合には、その登録誤差値に加算される形で登録される。つまり、あるドット要素を注目ドット要素として処理する段階では、その注目ドット要素よりも前に処理された複数の周辺ドット要素のそれぞれで生じた誤差値を所定の割合で積算した値が、その注目ドット要素についての登録誤差値として登録された状態となっている。
【0043】
比較器64は、第2加算器63により生成された注目ドット要素についての補正値を、第1加算器62で生成された3つの閾値と比較して4階調に量子化して出力値を生成し、生成した出力値を吐出データの当該注目ドット要素に設定するC値として決定する。
【0044】
また、比較器64は、設定パラメータレジスタ48に記憶されている光学濃度パラメータに基づき、注目ドット要素についての補正値から算出した出力値に係るインク滴に対応する代表階調値を減算した値を誤差値として算出する。以下、図5(b)に示すように、光学濃度パラメータの3つの代表階調値それぞれが、小滴に対応する代表階調値が「240」、中滴に対応する代表階調値が「420」、大滴に対応する代表階調値を600であるものとする、また、第1加算器で生成した3つの閾値がそれぞれ「200」、「350」、「520」であるとする。以上の条件において、注目ドット要素の補正値が「440」である場合には出力値は中滴に対応する「10」となり、誤差値は20(=440−420)となる。また、注目ドット要素の補正値が「250」である場合には出力値は小滴に対応する「01」となり、誤差値は10(=250−240)となる。
【0045】
誤差演算回路65は、比較器64により算出された注目ドット要素の誤差値を、未処理の周辺ドット要素へ拡散する割合を演算する回路である。ここで、注目ドット要素の誤差値を複数の周辺ドット要素に拡散される割合は、設定パラメータレジスタ48に記憶された誤差拡散マトリクス(図5(d)参照)に基づいて決定される。この誤差拡散マトリクスにおいて、各数値は、注目ドット要素(*)を基準とする周辺ドット要素の相対位置に応じて規定された重み付け係数である。つまり、注目ドット要素の誤差値に、各周辺ドット要素に対応する重み付け係数を乗算した値が、各周辺ドット要素へ拡散させる拡散値として決定される。この拡散値は、誤差メモリ66において対応する周辺ドット要素についての登録誤差値として登録(既に登録されている値に加算)される。以上のような処理が、処理対象の規制済データを構成する全てのドット要素について行われることにより、吐出データが生成される。
【0046】
図3に戻って、LVDS送信回路47は、誤差拡散回路46により生成された吐出データ又は振分回路41から送信された吐出データを、差動信号に変換してLVDS(Low voltage differential signaling)で記録処理回路50に送信する。
【0047】
次に、記録処理回路50について詳細に説明する。記録処理回路50は、画処理回路60から受信した吐出データに基づいて、用紙Pに画像を記録する画像記録処理を実行する回路であり、LVDS受信回路51、ヘッド制御回路52、及び機構系駆動制御回路53を有している。
【0048】
LVDS受信回路51は、画処理回路60から送信された差動信号を受信して吐出データに復元するLVDSのレシーバである。ヘッド制御回路52は、LVDS受信回路51が受信した吐出データをヘッド6のノズル配置、又は、ヘッド6内のドライバIC(不図示)に合せてデータを並び替える。また、ヘッド制御回路52は、主制御回路20のCPU22からの制御信号に従って、この並び替えた吐出データに基づき、搬送機構3により搬送される用紙Pに対して画像が記録されるようヘッド6を制御する。機構系駆動制御回路53は、CPU22からの制御信号に基づいて、用紙Pが搬送経路に沿って搬送されるように搬送機構3を制御する。
【0049】
(スキャナの構成)
次に、スキャナ100について説明する。スキャナ100は、図6(a)に示すように、制御装置110、搬送機構121、読取デバイス122、AFE回路123、シェーディング補正回路124、画像処理回路125、ファイル生成回路126、タッチパネル127、及びネットワークインターフェース128を有している。
【0050】
制御装置110は、スキャナ100全体の動作を司るものであり、CPU111、ROM112、及びRAM113を有している。ROM112には、CPU111が実行する制御プログラム112aであるファームウェアや各種設定、初期値等が記憶されている。RAM113は、各種制御プログラムが読み出される作業領域として、あるいはデータを一時的に記憶する記憶領域として利用される。
【0051】
搬送機構121は、制御装置110による制御の下、画像が記録された用紙を搬送方向に沿って搬送する機構である。読取デバイス122は、光源、及び複数の受光素子を備えるCISなどのイメージセンサである。読取デバイス122は、制御装置110による制御の下、搬送機構121により搬送されている用紙に向けて光源から光を照射し、用紙からの反射光を受光素子でR,G,Bに色分解されたアナログ信号に変換する。このアナログ信号はAFE回路123に出力される。
【0052】
AFE回路123は、読取デバイス122から受信したアナログ信号を、アナログ・デジタル変換して、8ビット(256階調)で表現されたビットマップデータを生成する。シェーディング補正回路124は、AFE回路123により生成されたビットマップデータに対して、イメージセンサの感度むら等の補正を行う公知のシェーディング補正を行うことでRGBデータを生成する。生成されたRGBデータは、RAM113に記憶される。
【0053】
画像処理回路125は、制御装置110による制御の下、RAM113に記憶されたRGBデータに対して画像処理を行うことで、画処理データを生成する。なお、本実施形態では、画像処理回路125は、画像処理として、RGBデータから吐出データの生成を行う上記の記録データ生成処理のうちの全部の処理工程を実行可能に構成されている。従って、本実施形態に係る画像処理回路125は、図6(b)に示すように、記録データ生成回路40とは処理能力(スペック)が異なるものの、振分回路及びLVDS送信回路を有していない点を除いて、記録データ生成回路40(図3参照)と略同様な回路構成を有している。このため、画像処理回路125は、記録データ生成回路40の代わりにRGBデータからCMYKデータ等の中間データや、吐出データを生成することが可能である。なお、画像処理回路125の各回路については、記録データ生成回路40の対応する回路の符号に100を加算した符号を付して、その説明を省略する。
【0054】
また、本実施形態では、画像処理回路125の画像処理の処理条件であるパラメータは、画像処理の実行時に、画処理データを送信する送信先のプリンタ1から取得して、設定パラメータレジスタ148に一時的に記憶する。この設定パラメータレジスタ148に記憶されたパラメータは、画像処理回路125により当該パラメータに基づく画像処理が実行された後に消去される。つまり、本実施形態では、スキャナ100は各プリンタ1に対応したパラメータを予め記録していない。
【0055】
なお、画像処理回路125の回路構成は、スキャナの製品や機種等に応じて互いに異なる場合がある。このため、画像処理回路125は、スキャナ100の製品や機種等によっては、画像処理において、記録データ生成処理の一部の処理しか実行できない場合がある。例えば、画像処理回路125が画像処理として色変換処理及び誤差拡散処理のみしか実行することができない製品や機種の場合には、図6(c)に示すように、画像処理回路125は、色変換回路142、誤差拡散回路146及び設定パラメータレジスタ148のみしか有していない。
【0056】
ファイル生成回路126は、制御装置110による制御の下、RAM113に記憶されたRGBデータを、PDFファイルやJPEG等のファイルに変換する回路である。タッチパネル127は、制御装置110から入力された信号に応じた画像を画面に表示し、ユーザ操作に応じた信号を制御装置110に出力する。ネットワークインターフェース128は、スキャナ100と同じネットワーク250に接続されたプリンタ1やPC180などの各種外部端末装置との間でデータ通信を行うためのインターフェースである。
【0057】
なお、本実施形態では、RGBデータ等のスキャンデータはファイル形式に変換されずにビットマップデータで、スキャナ100からプリンタ1にバイナリ転送される。ここで、スキャンデータをファイル形式に変換した後に、スキャナ100からプリンタ1に転送することも考えられるが、この場合、スキャナ100でのスキャンデータをファイル形式の変換する処理、並びに、プリンタ1でのファイル形式のスキャンデータからPDLデータに変換する処理、及びPDLデータをRGBデータに変換する処理が必要となるため、用紙Pへの画像の記録開始までの時間が遅くなる。この点、本実施形態では、これらの処理をする必要がないため、用紙Pへの画像の記録開始までの時間を早くすることができる。
【0058】
(スキャナの動作)
次に、スキャナ100がROM112に記憶された制御プログラム112aに従って実行する処理の一例について図7を参照しつつ詳細に説明する。なお、本実施形態では、ユーザは、スキャナ100のタッチパネル127を介して、スキャンデータの送信先のプリンタ1等を指定することが可能に構成されている。
【0059】
まず、CPU111は、タッチパネル127を介してユーザから画像の読取指示を受け付けると(S1)、搬送機構121、読取デバイス122、AFE回路123、及びシェーディング補正回路124を制御して、用紙に記録された画像に係るRGBデータを生成してRAM113に記憶する(S2)。
【0060】
次に、CPU111は、スキャンデータの送信先が、プリンタ1及びPC180の何れであるかを判断する(S3)。送信先がプリンタ1であると判断した場合(S3:YES)には、CPU111は、画像処理回路125の処理条件である処理条件情報の送信を要求する処理条件送信要求をプリンタ1に送信する(S4)。この処理条件送信要求には、画像処理回路125にて実行可能な画像処理の内容を示す処理可能工程情報が含まれている。例えば、本実施形態では、処理可能工程情報は、色変換処理、UCR処理、ガンマ補正処理、総量規制処理、及び誤差拡散処理の5つの処理工程を実行可能であることを示す情報である。なお、図6(c)に示すように、画像処理回路125が色変換処理、及び誤差拡散処理のみしか実行できない場合には、処理可能工程情報は、この2つの処理工程を実行可能であることを示す情報となる。加えて、CPU111は、S4の処理で、プリンタ1側で画像処理を実行した場合に要する処理時間を示したプリンタ側処理時間データの送信もプリンタ1に対して要求する。
【0061】
その後、CPU111は、プリンタ1から処理条件情報を受信したか否かを判断する(S5)。処理条件情報を受信していないと判断した場合(S5:NO)には、処理条件情報の受信待ちを行う。一方で、処理条件情報をプリンタ1から受信した場合(S5:YES)には、CPU111は、当該処理条件情報に含まれるパラメータを、画像処理回路125の設定パラメータレジスタ148に設定する(S6)。なお、このとき、処理条件情報にパラメータが含まれていない処理工程については、画像処理回路125の画像処理では実行されない。例えば、処理条件情報に、色変換処理及びUCR処理それぞれについてのパラメータしか含まれていない場合には、画像処理回路125の画像処理では、色変換処理及びUCR処理についてのみ実行されることになり、画処理データは中間データであるCMYKデータとなる。また、本実施形態において、処理条件情報には、処理条件情報にパラメータが含まれる処理工程それぞれについて、プリンタ1側で実行した場合の処理時間を示したプリンタ側処理時間データが含まれている。
【0062】
次に、CPU111は、ネットワーク250のトラフィック状況を取得する(S7)。例えば、CPU111は、ネットワーク250上にあるルータなどの中継装置に、FTPで利用される帯域の使用状況を問い合わせることで、トラフィック状況を取得する。
【0063】
そして、CPU111は、スキャナ100で画像処理を実行した場合のプリンタ1が画処理データを取得するまでに要する第1処理時間、及び、プリンタ1で画像処理を実行した場合のプリンタ1が画処理データを取得するまでに要する第2処理時間それぞれを算出する(S8)。具体的には。CPU111は、画像処理回路125がS6の処理で設定したパラメータに従いRGBデータから画処理データを生成するのに要する時間と、S7の処理で取得したトラフィック状況に基づく、画処理データをプリンタ1にFTPで転送するのに要する時間とをそれぞれ取得し、これらを合算した時間を第1処理時間とする。また、CPU111は、プリンタ1から受信した処理条件情報に含まれるプリンタ側処理時間データに基づく、プリンタ1がRGBデータから画処理データを生成するのに要する時間と、S7の処理で取得したトラフィック状況に基づく、RGBデータをプリンタ1にFTPで転送するのに要する時間とをそれぞれ取得し、これらを合算した時間を第2処理時間とする。
【0064】
そして、CPU111は、第1処理時間と第2処理時間を比較して第1処理時間が第2処理時間以上であると判断した場合(S9:NO)には、画像処理をプリンタ1で実行した方が用紙Pへの画像の記録開始までの時間を早くすることができるとして、RAM113に記憶されたRGBデータをプリンタ1に送信する(S10)。これにより、画像処理はプリンタ1で実行されることになる。その後、CPU111は、画像処理回路125の設定パラメータレジスタ148に記憶されたパラメータを削除して(S11)、本処理を終了する。
【0065】
これに対して、第1処理時間が第2処理時間未満であると判断した場合(S9:YES)には、画像処理回路125を制御して、RAM113に記憶されたRGBデータから画処理データを生成する(S12)。そして、CPU111は、生成した画処理データをプリンタ1に送信し(S13)、S11の処理に移る。
【0066】
S3の処理で、送信先がPC180であると判断した場合(S3:NO)には、CPU111は、ファイル生成回路126を制御して、RAM113に記憶されたRGBデータからファイルを生成し(S14)、生成したファイルをPC180に送信して(S15)、本処理を終了する。
【0067】
(インクジェットプリンタの動作)
次に、プリンタ1がROM23に記憶された制御プログラム23aに従って実行する処理の一例について図8を参照しつつ説明する。
【0068】
CPU22は、スキャナ100から処理条件送信要求を受信した場合(A1:YES)、当該処理条件送信要求に含まれる処理可能工程情報に基ついて、記録データ生成処理の5つの処理工程のうちスキャナ100に実行させる処理工程(以下、要求処理工程)を決定する(A2)例えば、処理可能工程情報が、記録データ生成処理の5つ全ての処理工程をスキャナ100が実行可能であることを示している場合には、この5つ全ての処理工程を要求処理工程として決定する。また、処理可能工程情報が、記録データ生成処理の5つの処理工程のうち、色変換処理及び誤差拡散処理の処理工程のみスキャナ100が実行可能であることを示している場合には、色変換処理の次に実行されるべきUCR処理をスキャナ100が実行できないため、色変換処理のみを要求処理工程として決定する。
【0069】
次に、CPU22は、要求処理工程の処理条件を定めたパラメータをROM23から抽出し、この抽出したパラメータを含む処理条件情報をスキャナ100に送信する(A3)。このとき、CPU22は、要求処理工程それぞれを記録処理回路50で実行した場合の処理時間を示したプリンタ側処理時間データについても取得し、処理条件情報に含めてスキャナ100に送信する。その後、CPU22は、スキャナ100から画処理データ又はRGBデータの何れかであるスキャンデータを受信したか否かを判断する(A4)。スキャンデータを受信していないと判断した場合(A4:NO)には、スキャンデータの受信待ちを行う。
【0070】
一方で、スキャナ100からスキャンデータを受信した場合(A4:YES)には、CPU22は、スキャンデータを印刷データ記憶メモリ25に記憶した後、当該スキャンデータが吐出データであるか否かを判断する(A5)。スキャンデータが吐出データであると判断した場合(A5:YES)には、CPU22は、印刷データ記憶メモリ25に記憶された吐出データそのものが記録処理回路50に出力されるよう、印刷データ送信回路26、RIP処理回路30、及び記録データ生成回路40を制御する(A6)。その後、CPU22は、吐出データに係る画像が用紙Pに記録されるよう記録データ生成回路40を制御して(A7)、本処理を終了する。
【0071】
A5の処理で、スキャンデータがRGBデータ又は中間データであると判断した場合(A5:NO)には、印刷データ記憶メモリ25に記憶されたスキャンデータを記録データ生成回路40に出力した後、記録データ生成回路40にてスキャンデータから吐出データの生成が行われるよう、印刷データ送信回路26、RIP処理回路30、及び記録データ生成回路40を制御する(A8)。例えば、スキャンデータが多値化データである場合には、当該多値化データに対して、総量規制処理及び誤差拡散処理が実行されるよう記録データ生成回路40を制御する。この処理が終了すると、A7の処理に移る。
【0072】
A1の処理で、処理条件送信要求を受信していないと判断した場合(A1:NO)には、CPU22はPC180からPDLデータを受信したか否かを判断する(A9)。PDLデータを受信していないと判断した場合(A9:NO)にはA1の処理に戻る。一方で、PDLデータを受信したと判断した場合(A9:YES)には、CPU22は、印刷データ記憶メモリ25に記憶されているPDLデータがRIP処理回路30にてRGBデータに変換されるよう、印刷データ送信回路26、及びRIP処理回路30を制御し(A10)、その後、このRGBデータが記録データ生成回路40にて吐出データに変換されるよう記録データ生成回路40を制御して(A11)、A7の処理に移る。
【0073】
以上、本実施形態によると、スキャナ100は、プリンタ1から画像処理に係る処理条件を取得することができる。これにより、スキャナ100は、プリンタ1の記録特性により定まる処理条件を予め記憶しておく必要がないため、RAMなどのメモリの記憶容量を大きくする必要がない。その結果として、スキャナ100を低コスト化することができる。
【0074】
また、記録データ生成処理の複数の処理工程のうち、スキャナ100にて処理可能な処理工程がある場合には、その処理工程についてはスキャナ100にて実行される。その結果として、プリンタ1における記録データ生成処理に係る処理負担を軽減することができる。
【0075】
また、スキャナ100で画像処理を実行した場合のプリンタ1が画処理データを取得するまでに要する第1処理時間と、プリンタ1で画像処理を実行した場合のプリンタ1が画処理データを取得するまでに要する第2処理時間とを比較し、その比較の結果、第1処理時間が第2処理時間未満のときはスキャナ100で画像処理を実行される。一方で、第1処理時間が第2処理時間以上のときはプリンタ1で画像処理を実行される。その結果として、プリンタ1が画処理データを取得するまでに要する時間を短くすることができるので、用紙Pへの画像の記録開始までの時間を早めることができる。
【0076】
(変形例)
次に、変形例について説明する。本変形例では、ユーザは、プリンタ1のタッチパネル8を介して入力操作を行うことで、画像の読み取りを行うスキャナ100を指定することが可能に構成されている。以下、本変形例に係るプリンタ1がROM23に記憶された制御プログラム23aに従って実行する処理の一例について図9を参照しつつ説明する。
【0077】
まず、CPU22は、タッチパネル127を介してユーザから画像を読み取るスキャナ100の指定を受け付ける(B1)と、スキャナ100が記録データ生成処理の全処理工程を実行可能であるとみなして、記録データ生成処理の5つの処理工程を、スキャナ100にて実行させる要求処理工程として決定する(B2)。そして、CPU22は、5つの要求処理工程の処理条件を定めたパラメータをROM23から抽出し、抽出したパラメータを含む処理条件情報をスキャナ100に送信する(B3)。なお、本変形例では、処理条件情報には、要求処理工程を示すデータも含んでいる。B4〜B7の処理は、上述のA4〜A7の処理と略同様なので説明を省略する。
【0078】
次に、本変形例に係るスキャナ100がROM112に記憶された制御プログラム112aに従って実行する処理の一例について図10を参照しつつ説明する。
【0079】
まず、CPU111は、プリンタ1から処理条件情報を受信すると(C1)、当該処理条件情報に含まれるパラメータを、画像処理回路125の設定パラメータレジスタ148に設定し、上述のS2の処理と同様に用紙に記録された画像に基づくRGBデータを生成してRAM113に記憶する(C2)。次に、CPU111は、処理条件情報が示す5つの要求処理工程全てが、画像処理回路125が実行することができない処理不能工程であるか否かを判断する(C3)。なお、処理不能工程には、画像処理回路125で実行可能な処理工程であるものの、その処理工程の前に画像処理回路125で実行することができない処理工程が存在するものも含む。例えば、要求処理工程が、色変換処理、UCR処理、ガンマ補正処理、総量規制処理、及び誤差拡散処理の5つの処理工程である場合において、画像処理回路125で実行可能な処理工程が色変換処理及び誤差拡散処理の場合には、色変換処理のみ処理可能工程となり、誤差拡散処理は処理不能工程となる。また、画像処理回路125が要求処理工程に対応する回路を有しているものの、処理条件情報に含まれるパラメータに従った処理を処理能力的に実行できない場合についても、当該要求処理工程は処理不能工程となる。
【0080】
そして、全ての要求処理工程が処理不能工程であると判断した場合(C3:YES)には、CPU111は、RAM113に記憶されているRGBデータをプリンタ1に送信し(C4)、画像処理回路125の設定パラメータレジスタ148に設定されたパラメータを消去して(C5)、本処理を終了する。
【0081】
一方、何れかの要求処理工程が、画像処理回路125が実行することができる処理可能工程であると判断した場合(C3:NO)には、CPU111は、全ての要求処理工程が処理可能工程であるか否かを判断する(C6)。全ての要求処理工程が処理可能工程であると判断した場合(C6:YES)には、CPU111は、画像処理回路125に全ての要求処理工程を実行させることで、RAM113に記憶されたRGBデータから画処理データを生成し(C7)、生成した画処理データをプリンタ1に送信する(C8)。この後、C5の処理に移る。
【0082】
一方で、5つの要求処理工程に処理可能工程と処理不能工程とが含まれていると判断した場合(C6:NO)には、CPU111は、処理可能工程を画像処理回路125にて実行させる処理工程として決定する(C9)。そして、CPU111は、画像処理回路に処理可能工程を実行させることで、RAM113に記憶されたRGBデータから画処理データ(中間データ)を生成して(C10)、C8の処理に移る。これにより処理不能工程については、プリンタ1の記録データ生成回路40で実行されることになる。
【0083】
以上、本変形例では、記録データ生成処理の複数の処理工程のうち、スキャナ100にて処理可能な処理可能工程がある場合には、その処理可能工程についてはスキャナ100にて実行される。その結果として、プリンタ1における記録データ生成処理に係る処理負担を軽減することができる。
【0084】
なお、本変形例に係るスキャナ100では、5つの要求処理工程に処理可能工程及び処理不能工程を含む場合には、処理可能工程についてはスキャナ100で実行されるように構成されていたが、5つの要求処理工程に処理不能工程が一つでもある場合には、スキャナ100は画像処理を行わずにRGBデータをプリンタ1に送信するように構成されていてもよい。即ち、図10に示すスキャナ100の動作において、C6の処理で、5つの要求処理工程に処理可能工程と処理不能工程とが含まれていると判断した場合(C6:NO)には、点線の矢印に示すようにC4の処理に移るように構成されていてもよい。この場合、スキャナ100及びプリンタ1のいずれか一方の装置のみで画像処理が実行されることになるため、画像処理の管理が容易となる。
【0085】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。記録データ生成処理に含まれる処理工程は、上述の実施形態に限られるものではない。例えば、上述の実施形態では、記録データ生成処理は、用紙Pにカラー画像を記録するための吐出データを生成する処理であったが、用紙Pにモノクロ画像を記録するための吐出データを生成する処理であってもよい。この場合、記録データ生成処理の処理工程は、ガンマ補正処理及び誤差拡散処理のみとなり、色変換回路42、UCR回路43、及びインク総量規制回路45では処理が行われない。即ち、ガンマ補正回路44で生成された多値化データは、インク総量規制回路45では処理されずに、誤差拡散回路46に出力される。
【0086】
また、スキャナ100にデータ圧縮器、プリンタ1にデータ解凍器をそれぞれ設け、スキャナ100は、スキャンデータを圧縮した後、プリンタ1に送信するように構成されていてもよい。また、プリンタ1の記録データ生成回路40は、記録データ生成処理の複数の処理工程のうちの一部の処理工程しか実行できず、残りの処理工程全てがスキャナ100で実行されるように構成されていてもよい。また、プリンタ1は記録データ生成回路40を備えておらず、記録データ生成処理の全てがスキャナ100の画像処理回路125で実行されるように構成されていてもよい。これらの構成の場合においては、プリンタ1は、記録データ生成処理の複数の処理工程についての処理条件のみを予めROM23に記憶していることになる。
【0087】
また、一つのRGBデータに対する画像処理を、スキャナ100とプリンタ1とで並列に実行することが可能に構成されていてもよい。例えば、RGBデータが複数のページに係るデータである場合、スキャナ100の画像処理回路125にてRGBデータの奇数ページに係る画像処理を行い、プリンタ1の記録データ生成回路40にてRGBデータの偶数ページに係る吐出データの生成を行うように構成されていてもよい。本発明は、インクジェットプリンタ以外の画像記録装置にも適用可能である。さらに、プリンタに限定されず、ファクシミリやコピー機などにも適用可能である。
【符号の説明】
【0088】
1 インクジェットプリンタ(画像記録装置)
2 画像記録機構
10 制御装置(記録側制御部)
100 スキャナ(画像読取装置)
110 制御装置(読取側制御部)
122 読取デバイス(画像読取機構)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10