特許第6443053号(P6443053)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6443053
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】ポリエーテル
(51)【国際特許分類】
   C08G 65/28 20060101AFI20181217BHJP
   C08G 65/20 20060101ALI20181217BHJP
   C08G 18/48 20060101ALI20181217BHJP
【FI】
   C08G65/28
   C08G65/20
   C08G18/48 054
【請求項の数】8
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-2355(P2015-2355)
(22)【出願日】2015年1月8日
(65)【公開番号】特開2016-125038(P2016-125038A)
(43)【公開日】2016年7月11日
【審査請求日】2017年12月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(72)【発明者】
【氏名】岡本 淳
(72)【発明者】
【氏名】林 武夫
【審査官】 尾立 信広
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−032775(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 65/00− 67/04
C08G 18/00− 18/87
C08G 71/00− 71/04
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式[I]で表される1種以上の繰返し単位と式[II]で表される繰返し単位を有するポリエ−テル。
【化1】
ただし、R,R,R,Rはそれぞれ独立に炭素数1〜6の脂肪族炭化水素基を表し、式[I]で表される繰返し単位のR及びRの組合せとR及びRの組合せが異なる組み合わせである。
【化2】
【請求項2】
式[I]中R1およびR2がメチル基である請求項1記載のポリエーテル
【請求項3】
式[I]中R3とR4の少なくともいずれかがメチル基以外の基である請求項1または2に記載のポリエーテル
【請求項4】
末端の90%以上に水酸基を有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1つに記載のポリエーテル。
【請求項5】
式[I]で表される繰返し単位が全繰返し単位中5mol%以上50mol%以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載のポリエ−テル。
【請求項6】
数平均分子量が400〜10000であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載のポリエ−テル。
【請求項7】
示差走査熱量計で測定される融解発熱ピーク温度が15℃以下であるか或いは融解発熱ピークが観察されないことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載のポリエ−テル。
【請求項8】
末端が水酸基のポリマーおよびポリイソシアネートを反応させて得るポリウレタンにおいて、末端が水酸基のポリマーの少なくとも一部に請求項2〜7に記載のいずれかつのポリエーテルを使用して得られたポリウレタン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規なポリエーテルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より塗料、接着剤、ポリウレタン等の分野において分子末端が水酸基であるポリエーテルが使用されている。
このようなポリエーテルとしては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシドおよびテトラヒドロフランなどから選ばれる環状エーテルの開環重合により得られるポリエーテルジオール;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオールおよび3−メチル−1,5−ペンタンジオールなどから選ばれるグリコールの重縮合により得られるポリエーテルジオール等が挙げられる。
【0003】
これらのポリエーテルの中でも、テトラヒドロフランの重合により合成されるポリオキシテトラメチレングリコール(以下PTMGということがある)を用いたポリウレタンは、その優れた弾性特性、低温特性、耐加水分解性から、弾性繊維(スパンデックス)、熱可塑性エラストマー、熱硬化性エラストマー、塗料もしくはインキバインダーなどのコーティング材料または接着剤等の広い用途に用いられている。
【0004】
しかしPTMGはポリウレタンに有用な分子量500〜4000のものは融点が10〜40℃の範囲にあり、常温域あるいはそれ以下の温度では固体であるため、ハンドリング、作業性はもちろん、常温で硬化を必要とする塗料、コーティング、シーリングなどの分野において問題となっている。
【0005】
従来これらの分野ではこのような現象を防ぐために、適当な有機溶媒や可塑剤を添加したりする方法が採られているが、環境面や性能面からみて望ましくない。またスパンデックスにおいても、常温での弾性特性には優れるものの、低温ではそれが低下する現象が見られる。これらの問題点は、いずれも樹脂のソフトセグメントを形成するPTMG自体の結晶性に由来するものと考えられ、PTMGの特性を維持しつつ、結晶性を制御することにより低温での弾性特性を改善したソフトセグメント材料が望まれている。
【0006】
そのため、テトラヒドロフランと他の環状エーテル、アルコール等を共重合し、PTMG主鎖に側鎖を導入することでPTMGに比べて結晶化しにくいポリエーテルを得る方法が検討されている。例えば特許文献1には、3−メチルオキセタンとテトラヒドロフランを共重合し、ポリウレタンの原料となるポリエーテルを得る方法が示されている。特許文献2には、弾性特性が良好なポリウレタン重合体の原料として優れたネオペンチルグリコールとテトラヒドロフランの共重合体が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭58−125718号公報
【特許文献2】特開平5−32775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1および2に記載のポリエーテルを用いたポリウレタンは、従来のポリウレタンに比べて低温での弾性特性は向上してはいるもののまだ不十分であった。
【0009】
本発明の課題は、低温での引張ヒステリシスにおける残留歪みが小さく、低温での弾性特性が優れるポリウレタンの原料となるポリエーテルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記目的を達成する為に鋭意検討した結果、特定の構成単位を有するポリエーテルを使用することにより、低温での弾性特性に優れたポリウレタンが得られることを見出し、本発明に至ったものである。
【0011】
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1]
式[I]で表される1種以上の繰返し単位と式[II]で表される繰返し単位を有するポリエ−テル。
【化1】
ただし、R,R,R,Rはそれぞれ独立に炭素数1〜6の脂肪族炭化水素基を表す。
【化2】
[2]
末端の90%以上に水酸基を有することを特徴とする[1]記載のポリエ−テル。
[3]
式[I]で表される繰返し単位が全繰返し単位中5mol%以上50mol%以下であることを特徴とする[1]または[2]に記載のポリエ−テル。
[4]
式[I]で表される繰返し単位のR及びRの組合せとR及びRの組合せが異なる組み合わせであることを特徴とする[1]〜[3]のいずれか1つに記載のポリエ−テル。
[5]
式[I]中RおよびRがメチル基である[1]〜[4]のいずれか1つに記載のポリエ−テル。
[6]
式[I]中RとRの少なくともいずれかがメチル基以外の基である[5]記載のポリエ−テル。
[7]
数平均分子量が400〜10000であることを特徴とする[1]〜[6]のいずれか1つに記載のポリエ−テル。
[8]
示差走査熱量計で測定される融解発熱ピーク温度が15℃以下であるか或いは融解発熱ピークが観察されないことを特徴とする[1]〜[7]のいずれか1つに記載のポリエ−テル。
[9]
式[I]中R〜Rの全てがメチル基である[1]〜[3]のいずれか1つに記載のポリエ−テル。
[10]
数平均分子量が400〜10000であることを特徴とする[9]に記載のポリエ−テル。
[11]
示差走査熱量計で測定される融解発熱ピーク温度が15℃以下であるか或いは融解発熱ピークが観察されないことを特徴とする[9]または[10]に記載のポリエ−テル。
[12]
末端が水酸基のポリマーおよびポリイソシアネートを反応させて得るポリウレタンにおいて、末端が水酸基のポリマーの少なくとも一部に[2]〜[11]に記載のいずれか1つのポリエーテルを使用して得られたポリウレタン。
[13]
式[I]で表される1種以上の繰返し単位を含む熱可塑性ポリウレタン。
【発明の効果】
【0012】
本発明のポリエ−テルにより、低温での弾性特性に優れたポリウレタンが得られ、本発明の工業的意義が大きい。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明のポリエーテルは、上記式[I]で表される繰り返し単位を1種以上含むことに特徴があり、該ポリエーテルを用いて耐加水分解性、耐熱性に優れたポリウレタンを得ることができる。
上記[I]で表される1種以上の繰り返し単位を全繰り返し単位中5mol%以上50mol%以下含むポリエーテルであることが、耐加水分解性、耐熱性に優れたポリウレタンを得るためには好ましい。
【0014】
上記式[I]のR,R,R及びRはそれぞれ独立に炭素数1〜6の脂肪族炭化水素基であり、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、1−メチルエチル基(イソプロピル基)、n−ブチル基、1−メチルプロピル基、2−メチルプロピル基、1,1−ジメチルエチル基(tert−ブチル基)、n−ペンチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、1−エチルプロピル基、1,1−ジメチルプロピル基、1,2−ジメチルプロピル基、2,2−ジメチルプロピル基(ネオペンチル基)、n−ヘキシル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、1,1−ジメチルブチル基、1,2−ジメチルブチル基、1,3−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、3,3−ジメチルブチル基、1−エチルブチル基、2−エチルブチル基、1,1,2−トリメチルプロピル基、1,2,2−トリメチルプロピル基、1−エチル−1−メチルプロピル基、及び1−エチル−2−メチルプロピル基が挙げられる。
【0015】
中でもメチル基、エチル基、n−プロピル基、1−メチルエチル基(イソプロピル基)、n−ブチル基、1−メチルプロピル基、2−メチルプロピル基、n−ペンチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、1−エチルプロピル基、n−ヘキシル基が好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基がより好ましい。
【0016】
及びRが共にメチル基であるとさらに好ましい。
【0017】
式[I]で表される繰り返し単位のR及びRの組合せとR及びRの組合せが異なる組合せであってもよい。
【0018】
及びRが共にメチル基であって、RおよびRがそれぞれ独立にメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基およびn−ヘキシル基から選ばれた基であるとより好ましい。
【0019】
本発明のポリエーテルの製造方法は限定されないが、例えば、下記式[III]で表されるジオールを原料として用いて製造することができる。
【化3】
ジオール化合物の製造方法は限定されないが、例えば、下記式[IV]のアセタールを水素化還元することによって得ることができる。
【化4】
ただし、R1,R2,RおよびRはそれぞれ独立に炭素数1〜6の脂肪族炭化水素基を表す。
【0020】
なお、式[IV]のアセタールは、下記式[V]のように、2,2−ジ置換−3−ヒドロキシプロパナールと2,2−ジ置換−1,3−プロパンジオールのアセタール化により得ることができる。
【化5】
ただし、R1,R2,RおよびR4 はそれぞれ独立に炭素数1〜6の脂肪族炭化水素基を表す。
【0021】
本発明のポリエーテルは、テトラヒドロフラン及び/または1,4−ブタンジオールに上記式[I]のジオールを共重合することで得られる。
また、本発明のポリエーテルには、本発明の特性を損なわない程度で上記式[III]のジオールおよび1,4−ブタンジオール以外のジオールをジオール成分として適宜加えても良い。
【0022】
本発明で用いられる上記式[III]のジオールおよび1,4−ブタンジオール以外のジオール成分の種類には特に制限はなく、必要な特性に応じてポリエーテルの原料として使用できるすべてのジオール成分を用いることができる。
【0023】
上記式[II]のジオール以外のジオール成分の例としては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、2−メチル−1,3−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,3−ヘキサンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,5−ヘキサンジオール、2−エチル−1,5−ペンタンジオール、2−プロピル−1,5−ペンタンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,2−プロパンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、メタキシリレングリコール、パラキシリレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、およびポリブチレングリコールなどの脂肪族ジオール類;1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,3−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,2−デカヒドロナフタレンジメタノール、1,3−デカヒドロナフタレンジメタノール、1,4−デカヒドロナフタレンジメタノール、1,5−デカヒドロナフタレンジメタノール、1,6−デカヒドロナフタレンジメタノール、2,7−デカヒドロナフタレンジメタノール、テトラリンジメタノール、ノルボルナンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、5−メチロール−5−エチル−2−(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−1,3−ジオキサン、ペンタシクロドデカンジメタノール、および3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカンなどの脂環族ジオール類;4,4’−(1−メチルエチリデン)ビスフェノール、メチレンビスフェノール(ビスフェノールF)、4,4’−シクロヘキシリデンビスフェノール(ビスフェノールZ)、4,4’−スルホニルビスフェノール(ビスフェノールS)などのビスフェノール類のアルキレンオキシド付加物;ヒドロキノン、レゾルシン、4,4’―ジヒドロキシビフェニル、4,4’―ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’―ジヒドロキシジフェニルベンゾフェノンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物のアルキレンオキシド付加物などが挙げられる。
【0024】
また、本発明のポリエーテルには、本発明の特性を損なわない程度で下記式[VI]で表される構造単位を少量含有させても良い。
【化6】
上記式[VI]中のnは1以上の整数であり、Aは脂肪族基、脂環族基および芳香族から選ばれる3価以上の基である。
【0025】
上記式[VI]中のAはその種類には特に制限はなく、必要な特性に応じてポリエーテルとして使用できるすべての基を用いることができる。式[VI]の構造を生成する3官能性のポリオールの例としては、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールおよびジペンタエリスリトールなどが挙げられる。
【0026】
本発明のポリエーテルの末端は70%以上に水酸基を有するかあるいは70%以上にカルボキシル基を有することが好ましい。
【0027】
また、ポリエーテルの末端は90%以上に水酸基を有するかあるいは90%以上にカルボキシル基を有することが好ましい。
ポリウレタンの原料として使用する場合には、イソシアネートと反応してウレタンとなる水酸基を末端に有することが必要である。また、ポリエーテルポリアミドの原料とする場合には、イソシアネートと反応してアミドとなるカルボキシル基を末端に有することが必要である。
【0028】
本発明のポリエーテルの数平均分子量は特に限定されないが、好ましくは400〜10000であり、特に好ましくは400〜5000である。
【0029】
また、本発明のポリエーテルは示差走査熱量計で測定される融解発熱ピーク温度が15℃以下であるか或いは融解発熱ピークが観察されないことが好ましく、低温での弾性特性に優れたポリウレタンを得ることができる。
【0030】
本発明のポリエーテルを製造する方法に特に制限はなく、従来公知の方法を適用することが出来る。例えば、ヘテロポリ酸を触媒としたテトラヒドロフランとジオールとの共重合により製造することができる。
【0031】
本発明の末端に水酸基を有するポリエーテルは、ポリウレタンの製造原料として有用である。すなわち、末端が水酸基のポリマー、ポリイソシアネート及び必要に応じて鎖延長剤を反応させてポリウレタンを製造する際に、末端が水酸基のポリマーの少なくとも一部に本発明のポリエーテルを使用することにより、末端に位置する水酸基中のそれぞれ1個の水素原子を除いた形の構造単位を主鎖中に含むポリウレタンが製造される。
【0032】
ポリウレタンを製造するにあたって用いる末端が水酸基のポリマーは単独または2種以上を使用してもよい。本発明のポリエーテルは、末端が水酸基のポリマーの20重量%以上、より好ましくは50重量%以上であることが望ましい。
【0033】
本発明のポリエーテルと併用できる末端が水酸基のポリマーとしては、通常のポリウレタンの製造に使用できるものが使用できる。例えば、末端が水酸基のポリエステルとしてポリテトラメチレンアジペート、ポリエチレンアジペート、ポリネオペンチレンアジペート、ポリヘキサメチレンアジペートおよびポリカプロラクトンジオール等から選ばれる公知のポリエステル、1,9−ノナンジオールまたは1,6−ヘキサンジオールをアルキレングリコール成分とするポリアルキレンカーボネート等の公知のポリカーボネート、ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコール等から選ばれる公知のポリエーテル等が挙げられる。
【0034】
本発明のポリウレタンを製造する方法に特に制限はなく、従来公知の方法を適用することができる。
【0035】
例えば、末端が水酸基のポリエーテルと必要に応じて2個以上の活性水素原子を有する低分子化合物(鎖延長剤)等とを均一に混合して、約60℃に予熱した後、これら混合物中の活性水素原子数とイソシアネート基のモル比が0.95〜1:1.05になる量のポリイソシアネートを加え、回転ミキサーで短時間かき混ぜながら二軸スクリューを有する連続重合装置に供給し、連続的に反応させることによりポリウレタンを製造することができる。また、末端が水酸基のポリエーテルとポリイソシアネートとを予め反応させ、末端イソシアネート基のプレポリマーを製造し、その後、鎖延長剤を反応させることにより、ポリウレタンを製造することもできる。
【0036】
これらの製造に於いては三級アミンや錫、チタンなどの有機金属塩等に代表される公知の重合触媒を用いる事も可能である。
【0037】
また、これらの反応は、通常、無溶媒で行われるが、溶媒を用いて行なってもよく、好ましい溶剤として、例えば、ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、メチルイソブチルケトン、ジオキサン、シクロヘキサノン、ベンゼン、トルエンおよびエチルセルソルブ等がある。
【0038】
本発明のポリウレタンを製造するに当り、イソシアネート基に反応する活性水素を一つだけ含有する化合物、例えばエチルアルコール、プロピルアルコール等の一価アルコール、及びジエチルアミン、ジn−プロピルアミン等の二級アミン等を末端停止剤として使用することができる。
【0039】
ポリウレタンには、熱安定剤(例えば酸化防止剤)や光安定剤などの安定剤を添加することが望ましい。また、可塑剤、無機充填剤、滑剤、着色剤、シリコンオイル、発泡剤および難燃剤等から選ばれるものを必要に応じて適宜添加しても良い。
【0040】
ポリイソシアネートとしては、例えば、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート等をあげることができ、これらのポリイソシアネートは単独で用いても、または2種以上を併用してもよい。
【0041】
鎖延長剤は、2個以上の活性水素原子を有するジオールまたはジアミン等の低分子化合物を用いることができる。鎖延長剤としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなどの炭素数2〜10のジオール類、ブロピレンジアミン、イソホロンジアミン等の炭素数2〜10のジアミン類などが挙げられ、単独で使用しても、また2種以上を併用してもよい。鎖延長剤としてジオール、ジアミン等の活性水素原子を2個有するものを用いると、熱可塑性ポリウレタンを製造し易い。
【0042】
鎖延長剤の使用量は、特には限定されないが、ポリエーテルに対して、好ましくは、モル比で0.1〜20倍である。さらに、必要により、メタノール、エタノール等の一価の低分子アルコール、メチルアミン、エチルアミン等の一価の低分子アミン等を変性剤として用いてもよい。
【0043】
本発明のポリウレタンの重量平均分子量は特に限定されないが、好ましくは、10,000〜500,000である。
【0044】
重合反応を無溶媒で行った場合、得られたポリウレタンは、重合後、直ちに成形加工に付すことができる。重合条件により、該ポリウレタン中に未反応のポリイソシアネートが0.2重量%以上存在する場合は、必要により60〜80℃ で4〜30時間の熟成を行い、反応を完結させた後、成形加工に付すことができる。
【0045】
重合反応を溶媒中で行った場合、ポリウレタンの貧溶媒、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン等の炭素数6〜10の脂肪族飽和炭化水素、または、メタノール、エタノール等を添加混合してポリウレタンを凝集析出させ、ろ過分離し、乾燥した後、成形加工に付すことができる。
【0046】
本発明のポリウレタンは、種々の方法で成形加工することができ、成形加工法としては、例えば、押し出し成形法、射出成形法、カレンダー成形法、ブロー成形法などがあげられる。
【0047】
本発明のポリウレタンは、優れた弾性特性等を有し、ポリウレタンエラストマー、塗料、接着剤、コーティング剤、フォーム、バインダー、弾性繊維、合成皮革、人工皮革、シーリング材、防水材、床材等に利用することができる。
【0048】
本発明のポリエーテルは、ポリウレタンエラストマー、ポリアミドエラストマーおよびポリエステルエラストマー等から選ばれるエラストマーの製造原料として使用した場合、低温での引張ヒステリシスにおける残留歪みが小さく優れていた。また低温での引張試験では既存のポリウレタンと同等以上であり、優れていた。
【0049】
本発明の末端が水酸基のポリエーテルは、既知の方法でアンモニアおよび水素と反応させることにより、末端アミンのポリエーテルジアミンを得ることができる。その際使用される触媒としては、ラネー・ニッケルなどの合金触媒、担体上にルテニウム、パラジウム、白金などの遷移金属を担持した触媒、Fe、RuO、TiOなどの金属酸化物などが知られている。得られたポリエーテルジアミンと他のジアミンおよびジカルボン酸を重縮合することにより、ポリアミドエラストマーを合成することができる。
【0050】
本発明のポリウレタンは、優れた弾性特性等を有し、ポリウレタンエラストマー、塗料、接着剤、コーティング剤、フォーム、バインダー、弾性繊維、合成皮革、人工皮革、シーリング材、防水材、床材等に利用することができる。
【0051】
本発明のポリエーテルは、従来知られた方法により末端水酸基にアクリレートまたはメタクリレートを反応させてそれぞれポリエーテルアクリレートまたはポリエーテルメタクリレートとすることができる。また、末端水酸基にポリイソシアネートを反応させた後、水酸基を有するアクリレートまたはメタクリレートを反応させることによりそれぞれポリエーテルウレタンアクリレートまたはポリエーテルウレタンメタクリレートとすることができる。これらのアクリレート、メタクリレートは塗料、接着剤、印刷インキ、コーティング材料、封止材料および光学材料等に好適に利用することができる。
【0052】
本発明のポリエーテルは、粘着剤、被覆材などの構成材料の他、高分子改質剤、高分子可塑剤などとして種々の用途に適用することができる。
【0053】
本発明のポリエーテルの用途は本明細書記載のものに限定されるものではなく、各用途での要求物性に合えば適宜使用される。
【実施例】
【0054】
以下に実施例を示すが本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0055】
ポリエーテルの性状等の測定は以下の方法によった。
(1)水酸基価
ポリエーテルの水酸基価および酸価は、JIS K 1557に準拠して測定した。
(2)数平均分子量及び共重合ポリカーボネートの共重合モル比
ポリカーボネートの数平均分子量(Mn)及び共重合ポリカーボネートの共重合モル比は日本電子株式会社製核磁気共鳴装置(型式:JNM−ECA500)を使用して、重クロロホルム溶媒中でプロトンの核磁気共鳴を測定して求めた。Mnは、分子末端の隣のメチレンプロトンシグナルとエーテル結合の隣のメチレンプロトンシグナルの積分値を使用して求めた。共重合モル比は各モノマーのメチレンプロトンシグナルおよびメチルプロトンシグナルの積分値より求めた。
(3)ガラス転移温度、融点及び融解熱量
ポリエーテルのガラス転移温度(Tg)、融点(Tm)及び融解熱量(ΔH)は、株式会社島津製作所製、示差走査型熱量計(型式:DSC/TA−60WS)を使用し、試料約10mgをアルミニウム製非密封容器に入れ、窒素ガス(30ml/min)気流中昇温速度10℃/minで60℃まで昇温後、−120℃まで急冷し、再度昇温速度10℃/minで昇温して測定した。
【0056】
また、ポリウレタンの物性等の測定は以下の方法によった。
(1)分子量
ポリウレタンの分子量は昭和電工株式会社製GPC装置(型式:ポンプ:Shodex DS−4,カラム:Shodex GPC KD−806M×2+KD−802+KD−G)を用いて、N,N’−ジメチルホルムアミドを溶媒としてRI検出器(型式:Shodex RI−101)で測定した。ポリエチレンオキシドを標準物質として数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)を求めた。
(2)弾性特性
弾性特性は引張試験により評価した。ポリウレタンの引張試験は、インストロン社製、材料試験システム(型式:5582型)を使用し、JIS K 7162に準拠し、試験片は5A型を使用し、温度:23℃、0℃、−20℃で測定した。破壊強度、破壊伸度及び応力変動率を求めた。応力変動率は下式により求めた。
応力変動率(倍)=600%伸長時の応力/100%伸長時の応力
(3)引張ヒステリシス
ポリウレタンの引張ヒステリシス試験は、インストロン社製、材料試験システム(型式:5582型)を使用し、試験片はJIS K 7162の5A型を使用し、チャック間距離:25mm、試験速度:1000%/minで伸長回復を3回繰り返した。3回目の回復時の応力が0となる時の歪みを残留歪みとして求めた。温度:23℃、0℃、−20℃で測定した。
【0057】
(原料ジオールの合成)
<参考例1>
3,3’−オキシビス(2,2−ジメチルプロパン−1−オール)(式[VII])の合成
【化7】
(1)2−(5,5−ジメチル−1,3−ジオキサン−2−イル)−2−メチル−プロパン−1−オールの調製(アセタール化)
2,2−ジメチル−3−ヒドロキシ−プロピオンアルデヒド(ヒドロキシピバルアルデヒド、三菱瓦斯化学株式会社製、純度99.8%)131.3gと、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール、東京化成工業株式会社製試薬)136.0gと、ベンゼン705gと、粒状ナフィオン(商品名「NR−50」、シグマアルドリッチ社製)3.0gと、を2リットルの丸底フラスコに収容し、常圧下で生成する水をベンゼンと共沸させながらディーン・スターク・トラップを用いて系外へ抜き出して、水の留出が止まるまで反応させた。これを濾過したのちに濃縮及び冷却することにより再結晶させて、2−(5,5−ジメチル−1,3−ジオキサン−2−イル)−2−メチル−プロパン−1−オールの結晶を得た。
【0058】
(2)触媒担体の調製
金属成分の担体として用いた酸化ジルコニウムを下記の方法で調製した。
酸化ジルコニウム(ZrO)換算で25質量%の濃度のオキシ硝酸ジルコニウム水溶液505gに、撹拌しながら28%アンモニア水15.5gを滴下することにより白色沈殿物を得た。これを濾過し、イオン交換水で洗浄した後に、110℃、10時間乾燥して含水酸化ジルコニウムを得た。これを磁製坩堝に収容し、電気炉を用いて空気中で400℃、3時間の焼成処理を行った後、メノウ乳鉢で粉砕して粉末状酸化ジルコニウム(以下、「担体A」と表記する。)を得た。担体AのBET比表面積を窒素吸着法により測定した。102.7m/gであった。
【0059】
(3)触媒の調製
50gの担体Aに0.66質量%塩化パラジウム−0.44質量%塩化ナトリウム水溶液を添加し、担体上に金属成分を吸着させた。そこにホルムアルデヒド−水酸化ナトリウム水溶液を注加して吸着した金属成分を瞬時に還元した。その後、イオン交換水により触媒を洗浄し、乾燥することにより2.0質量%パラジウム担持酸化ジルコニウム触媒(以下、「A触媒」と表記する。)を調製した。
【0060】
(4) 2−(5,5−ジメチル−1,3−ジオキサン−2−イル)−2−メチル−プロパン−1−オールの水素化還元
500mLのSUS製反応器内に、A触媒6.00g、2−(5,5−ジメチル−1,3−ジオキサン−2−イル)−2−メチル−プロパン−1−オール24.0g、及び1,4−ジオキサン240gを収容し、反応器内を窒素ガスで置換した。その後、反応器内に水素ガスを8.5MPa充填し、反応温度である230℃へ昇温して、反応器内圧を13MPaに維持しつつ5時間反応させた。その後に冷却して反応器の内容物を回収した。得られた反応液を濾過して触媒を分離した後に再結晶して3,3’−オキシビス(2,2−ジメチルプロパン−1−オール)を得た。得られた生成物をNMR分析することで、構造を確認した。
【0061】
【化8】
【0062】
繰り返し反応を行うことにより、実施例での必要量を確保した。
【0063】
<参考例2>
2−エチル−2−((3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロポキシ)メチル)ヘキサン−1−オール(式[VIII])の合成
【化9】
2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロパナール(ヒドロキシピバルアルデヒド、三菱瓦斯化学株式会社製、純度99.8%)73.6g、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール(東京化成工業株式会社製試薬)111.8g、ベンゼン705gと粒状ナフィオン(商品名「NR−50」、シグマアルドリッチ社製)3.0gとを2Lの丸底フラスコに入れ、常圧下で生成する水をベンゼンと共沸させながら、ディーン・スターク装置を用いて系外に抜き出して水の留出が止まるまで反応させた。ろ過、濃縮後、減圧蒸留することにより、2−(5−ブチル−5−エチル−1,3−ジオキサン−2−イル)−2−メチルプロパン−1−オールを得た。
【0064】
500mLのSUS製反応器内に、参考例1のA触媒6.0g、2−(5−ブチル−5−エチル−1,3−ジオキサン−2−イル)−2−メチルプロパン−1−オール24.0g、及び1,4−ジオキサン240gを入れ、反応器内を窒素ガスで置換した。その後、反応器内に水素ガスを8.5MPa充填し、反応温度である230℃へ昇温して、反応器内圧を13MPaに維持しつつ5時間反応させた。その後に冷却して反応器の内容物をろ過して触媒を分離した後に、減圧蒸留精製することにより、目的物を得た。得られた生成物をNMR分析することで、構造を確認した。
【0065】
【化10】
【0066】
繰り返し反応を行うことにより、実施例での必要量を確保した。
【0067】
(ポリエーテルの合成)
ポリエーテルの合成に用いた触媒は以下の方法により調製した。
【0068】
<触媒調製例1>
リンタングステン酸含水物(HPW1240・nHO、シグマアルドリッチ社試薬)505.9gを粉体飛散防止トラップ付きの500mlナス型フラスコに入れ、真空ポンプで減圧しながら320℃まで加熱することにより結晶水を飛ばして粉末状固体425.3gを得た。この一部を坩堝に取り出して電気焼成炉にて430℃焼成を行ったところ、重量減少は認められなかったことから、得られた固体はリンタングステン酸無水塩(H3PW12O40)と判断した。
【0069】
<実施例1>
テトラヒドロフラン(和光純薬製特級試薬、安定剤不含)402.4g、参考例1で得た3,3’−オキシビス(2,2−ジメチルプロパン−1−オール)(以下「dNG」と呼ぶ)80.18g、触媒調製例1で得たリンタングステン酸無水塩 340.25gを撹拌機及び還流コンデンサー付きの1000ml丸底フラスコに入れた。これを撹拌しながら60℃に加熱して9時間反応させた。反応開始時に粉体として液中に分散していたリンタングステン酸は時間とともに凝集する傾向を示し、さらに時間が経過すると部分的に液状化してスラリー状に分散した。反応終了後、撹拌停止して静置するとフラスコ内容物は透明な有機物からなる上層とリンタングステン酸スラリーからなる下層に分離した。
デカンテーションにより上層 272.4gを回収し、ヘキサン(252g)−水(135g)−消石灰(2.64g)と混合して、室温で激しく撹拌することにより液中に含まれる酸成分を中和した。撹拌後に静置することにより有機物からなる上層と消石灰及びその塩を含む水からなる下層に分離した。再びデカンテーションにより上層を回収し、1ミクロン径のPTEF製フィルターで濾過した後に、減圧下に加熱して軽沸点成分を留去することでポリエーテル(1)162.4gを得た。
得られたポリエーテルは、13C−NMR測定により、原料のモノマー単位が共重合されており、半分のネオペンチルグリコール単位に分解されて共重合した部分は検出されないことを確認した。
得られたポリエーテルの性状、物性を表1に示す。
【0070】
<実施例2>
テトラヒドロフラン(和光純薬製特級試薬、安定剤不含)490.0g、参考例2得た2−エチル−2−((3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロポキシ)メチル)ヘキサン−1−オール(以下「NBG」と呼ぶ)83.38g、触媒調製例1で得たリンタングステン酸無水塩 362.85gを撹拌機及び還流コンデンサー付きの1000ml丸底フラスコに入れた。これを撹拌しながら60℃に加熱して11時間反応させた。反応終了後、撹拌停止して静置するとフラスコ内容物は透明な有機物からなる上層とリンタングステン酸スラリーからなる下層に分離した。
デカンテーションにより上層 446.9gを回収し、ヘキサン(297g)−水(199g)−消石灰(2.23g)と混合して、室温で激しく撹拌することにより液中に含まれる酸成分を中和した。撹拌後に静置することにより有機物からなる上層と消石灰及びその塩を含む水からなる下層に分離した。再びデカンテーションにより上層を回収し、1ミクロン径のPTEF製フィルターで濾過した後に、減圧下に加熱して軽沸点成分を留去することでポリエーテル(2)179.6gを得た。
得られたポリエーテルの性状、物性を表1に示す。
【0071】
<比較例1>
ポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG)(和光純薬工業株式会社製試薬)の性状、物性を表1に示す。
【0072】
<比較例2>
テトラヒドロフラン(和光純薬製特級試薬、安定剤不含)499.1g、ネオペンチルグリコール(2,2−ジメチル−プロパン−1,3−ジオール、三菱ガス化学製)40.1g、触媒調製例1で得たリンタングステン酸 240.22gを撹拌機及び還流コンデンサー付きの1000ml丸底フラスコに入れた。これを撹拌しながら60℃に加熱して9時間反応させた。反応終了後、撹拌停止して静置するとフラスコ内容物は透明な有機物からなる上層とリンタングステン酸スラリーからなる下層に分離した。
デカンテーションにより上層 406.8gを回収し、ヘキサン(293g)−水(182g)−消石灰(1.97g)と混合して、室温で激しく撹拌することにより液中に含まれる酸成分を中和した。撹拌後に静置することにより有機物からなる上層と消石灰及びその塩を含む水からなる下層に分離した。再びデカンテーションにより上層を回収し、1ミクロン径のPTEF製フィルターで濾過した後に、減圧下に加熱して軽沸点成分を溜去することでポリエーテル183.0gを得た。
得られたポリエーテルの性状、物性を表1に示す。
【表1】
本発明のポリエーテルは比較例に比べて融点および結晶化度を示す融解熱量が低く、ポリウレタンなどのエラストマーの原料に用いた場合、低温での弾性特性が優れたものとなる。
【0073】
(ポリウレタンの合成)
<実施例3>
攪拌翼、窒素ガス導入管を備えた500mlフラスコに実施例1で得られたポリエーテル(1)141.4gを仕込み、80℃、減圧下で2時間、水分を除いた後、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート 58.5gを添加し2時間、反応を行い、プレポリマーを作製した。その後、鎖延長剤として1,4−ブタンジオール10.2gを添加し、粘度が上がったところで数分後に取り出した。得られた生成物約200gをブラベンダー社製ミキサー(商品名:プラスチコーダラボステーション)に仕込み、160℃、30rpmで10分間混練した。得られたポリウレタンを、有限会社東邦プレス製作所製油圧式成形機を使用してプレス成形を行い、シート状とし、その後切削加工を行い、試験片を作製した。得られた試験片の評価結果を表2に示す。
【0074】
<実施例4>
ポリエーテル(1)の代わりに実施例2で得られたポリエーテル(2)を用いた以外は実施例3と同様な方法でポリウレタンを作製した。得られたポリウレタンの評価結果を表2に示す。
【0075】
<比較例3>
ポリエーテル(1)の代わりに比較例のPTMGを用いた以外は実施例3と同様な方法でポリウレタンを作製した。得られたポリウレタンの評価結果を表2に示す。
【表2】
【0076】
本発明のポリエーテルから得られるポリウレタンは、低温での引張ヒステリシスにおける残留歪みが小さく優れていた。また低温での引張試験では既存のポリウレタンと同等以上であり、優れていた。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明のポリエーテルは、ポリウレタンエラストマー、ポリアミドエラストマーおよびポリエステルエラストマー等から選ばれるエラストマーの製造原料として使用した場合、優れた低温での弾性特性を有する製品を与える。その他、塗料、接着剤、粘着剤、インキ、被覆材、封止材などの構成材料の他、高分子改質剤、高分子可塑剤などとして使用することができる。
【0078】
また、本発明のポリウレタンは、柔軟性、耐熱性、機械物性等のすぐれた特性を保持すると共に、特に低温での弾性特性が優れており、ポリウレタンエラストマー、塗料、接着剤、コーティング剤、フォーム、バインダー、弾性繊維、合成皮革、人工皮革、シーリング材、防水材および床材等から選ばれる用途に利用することができる。