(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる照明補助具の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0016】
(照明補助具の構成)
まず、この発明にかかる実施の形態の照明補助具の構成について説明する。
図1、
図2および
図3は、この発明にかかる実施の形態の照明補助具を示す説明図である。
図1においては、この発明にかかる実施の形態の照明補助具を正面側から見た状態を示している。
図2においては、この発明にかかる実施の形態の照明補助具を背面側から見た状態を示している。
図3においては、この発明にかかる実施の形態の照明補助具を、
図1における紙面左側から見た状態を示している。
【0017】
図1、
図2および
図3において、この発明にかかる実施の形態の照明補助具100は、照明補助部110と骨組部120と固定部130とを備えている。照明補助部110は、所定形状をなすシート状の部材111によって実現することができる。シート状の部材111は、ポリエチレン樹脂などの絶縁素材によって形成されている。具体的には、たとえば、縦方向の寸法が210mm、横方向の寸法が295mmの長方形状をなすシート状の部材111によって実現することができる。シート状の部材111は、メッシュ(網目)構造をなすことが好ましい。シート状の部材111は、白色であることが好ましい。
【0018】
照明補助部110は、ループ状部材112を備えている。ループ状部材112は、長方形状をなすシート状の部材111における2つの長辺の両端にそれぞれ設けられている。ループ状部材112は、シート状の部材111を形成する絶縁素材と同様に、ポリエチレン樹脂などの絶縁素材によって形成されている。
【0019】
骨組部120は、複数(この実施の形態においては、3本)の骨組部材121を備えている。複数の骨組部材121は、それぞれ、可撓性を有する材料によって形成された棒状の部材によって実現することができる。骨組部材121は、加えられた外力に応じて変形する柔軟性を備え、かつ、外力から解放された場合に解放される直前の形状を維持する性質を備えた材料によって形成されている。これによって、骨組部120は、任意の形状に曲げ撓めることができる。
【0020】
骨組部120は、具体的には、たとえば、軟銅によって形成することができる。軟銅は、硬銅を焼き鈍し(加工硬化による内部のひずみを取り除いて組織を軟化させ、展延性を向上させる熱処理)をすることによって形成される。
【0021】
複数の骨組部材121のうち、2本は、シート状の部材111がなす長方形状における隣り合わない二頂点を結ぶ線分、すなわち、対角線に沿って配されている。これにより、2本の骨組部材121は、シート状の部材111の中央部で交差している。
【0022】
対角線に沿って配された2本の骨組部材121は、それぞれ、シート状の部材111に設けられたポケット状の支持部201に、端部を挿入することによってシート状の部材111に取り付けられている。支持部201は、たとえば、シート状の部材111を形成する材料と同じ、ポリエチレン樹脂などの絶縁素材によって形成することができる。
【0023】
複数の骨組部材121のうち、1本は、シート状の部材111がなす長方形状における長辺の中央部を通り、短辺に平行な方向に沿って配されている。短辺に平行な方向に沿って配された骨組部材121は、シート状の部材111の短辺の寸法よりも長い。短辺に平行な方向に沿って配された骨組部材121の一端は、シート状の部材111に設けられたポケット状の支持部201に挿入することによって、シート状の部材111に対する位置が固定されている。
【0024】
短辺に平行な方向に沿って配された骨組部材121(以降「骨組部材121a」)の他端は、シート状の部材111の短辺よりも外方に突出している。骨組部材121aは、シート状の部材111に設けられたベルト通し状の支持部201に挿入され、シート状の部材111に対する位置が固定されている。骨組部材121aの他端には、図示を省略する雌ねじが設けられている。この雌ねじには、固定部130が備える雄ねじ(
図4における符号405を参照)が螺合される。これにより、骨組部材121aの他端に、固定部130を取り付けることができる。
【0025】
図4は、固定部130の一例を示す説明図である。
図4において、固定部130は、直線状に連なる3つの平面401a、401b、401cを、隣り合う平面(平面401aと平面401bおよび平面401bと平面401c)どうしが直角をなすように折り曲げた、略「コ」の字形状をなす基材401を備えている。平面401a、401b、401cは、たとえば、縦30mm、横25mm程度の大きさとすることが好ましい。基材401は、たとえば、金属材料を用いて形成することができる。
【0026】
基材401において、直線状に連なる3つの平面401a、401b、401cのうちの端に位置する一の平面401aには、ねじ穴402が設けられている。このねじ穴402には、ボルト403が螺合されている。ボルト403は、締まる方向に回転することによって、先端が他方の平面401cに近づく。
【0027】
ねじ穴402が設けられた平面401aに対向する平面には、ねじ穴402に対向する位置に突出部404が設けられている。突出部404を設けることにより、ボルト403を確実に締め込むことができ、照明補助具100の取り付け対象とする間接活線工具(たとえば、
図7における符号700を参照)に対して固定部130を確実に固定することができる。
【0028】
基材401において、直線状に連なる3つの平面401a、401b、401cのうちの中央の平面401bには、雄ねじ405が設けられている。固定部130は、骨組部材121aに対して着脱可能に設けられている。これにより、照明補助具100を用いておこなう間接活線作業に際しては、当該作業に用いる間接活線工具に応じて固定部130を取り外し、別の固定部130を取り付けて使用することができる。
【0029】
図5および
図6は、別の固定部の一例を示す説明図である。
図5においては、別の固定部を、雄ねじ405の直径方向に平行に見た場合の別の固定部501を示している。
図5において、別の固定部501は、略「コ」の字形状をなす基材401に代えて、略環形状をなす基材502を備えている。基材502は、保持部502aと、開口部502bと、導入部502cと、を備えている。保持部502aは、照明補助具100の取り付け対象とする間接活線工具の外径に応じた内径の略環形状をなす。基材502の外周面には、雄ねじ405が設けられている。別の固定部501は、骨組部材121aの他端に設けられた雌ねじに、雄ねじ405を螺合させることによって当該骨組部材121に取り付けることができる。
【0030】
開口部502bは、保持部502aがなす環形状の一部を開放する。開口部502bは、照明補助具100の取り付け対象とする間接活線工具の外径よりも小さい幅で開口している。開口部502bは、保持部502aがなす環形状の一部を常時開放するものに限らない。開口部502bは、保持部502aがなす環形状を開放可能とする構成であればよい。
【0031】
具体的には、外力が加えられていない状態においては保持部502aが閉塞された環形状をなすように、長手方向の中央部分から左右対象に湾曲させた略長方形状をなす絶縁性のプラスチック製の平板の一部を当接させ、当該当接部分を開く方向への外力が加えられた場合に、照明補助具100の取り付け対象とする間接活線工具の外径の通過が可能な幅で開口する開口部502bを形成するような構成とすることができる。
【0032】
導入部502cは、開口部502bを介して保持部502aに連続しており、開口部502b側ほど幅が狭くなるような形状をなしている。導入部502cは、保持部502aと一体に形成されている。導入部502cを設けることにより、導入部502cを間接活線工具に押しつけるだけで、別の固定部501を間接活線工具に取り付けることができる。別の固定部501において、保持部502aの内周面には、滑り止め部材503が設けられている。
【0033】
図6においては、雄ねじ405の軸心方向に平行な方向に沿って、基材502の内周側から別の保持部502aを見た状態を示している。滑り止め部材503は、保持部502aの内周面に複数設けられている。滑り止め部材503は、少なくとも保持部502aの内周面であって、雄ねじ405の裏面側となる位置に設けられている。滑り止め部材503は、たとえば、ゴムなどのように、表面の摩擦抵抗が大きい材料を用いて形成することができる。これにより、間接活線工具に取り付ける場合にも、照明補助具100の自重によって、主軸に対する照明補助具100の位置がずれてしまうことを防止できる。
【0034】
(照明補助具100の使用例)
つぎに、この発明にかかる実施の形態の照明補助具100の使用例について説明する。
図7、
図8および
図9は、この発明にかかる実施の形態の照明補助具100の取り付け対象となる間接活線工具の一例を示す説明図である。照明補助具100は、たとえば、間接活線工具の1つであるヤットコに取り付けて使用する。
図7においては、ヤットコの全体を示している。
図8および
図9においては、ヤットコの先端を示している。
【0035】
図7、
図8および
図9において、ヤットコ700は、主軸701と、把持部702と、操作部703とを備えている。主軸701は、中空の棒形状をなす。主軸701は、変形しにくく、絶縁性の低下が少ない(低下しない)材料を用いて形成されている。具体的には、たとえば、吸湿性の少ないエポキシ樹脂系強化プラスチック、ポリエステル樹脂系強化プラスチックなどを用いて形成することができる。主軸701は、長さ方向の両端に詰栓が設けられており、防水処理が施されている。主軸701は、表面をコーティング処理するなどして防水処理が施されていてもよい。
【0036】
主軸701の中間部には、安全限界つば704が設けられている。安全限界つば704は、たとえば、軟質性の合成ゴムを用いて形成することができる。安全限界つば704を設けることにより、作業者が触れても安全な部分とそれ以外の部分との境界を明確に示すことができ、これにより感電事故を防止することができる。主軸701において、把持部702との境界位置から安全限界つば704までの長さは、所定の安全限界距離以上とされている。
【0037】
主軸701において、把持部702との境界位置と安全限界つば704との間には、水きり用のつば(水きりつば)705が設けられている。水きりつば705を設けることにより、降雨時の作業に際しての感電事故を防止することができる。水きりつば705は、安全限界つば704と同様に、たとえば、軟質性の合成ゴムを用いて形成することができる。
【0038】
把持部702は、主軸701の先端に設けられた固定具706を介して、主軸701の先端に設けられている。把持部702は、たとえば、アルミニウム合金を用いて形成することができる。把持部702は、一対のアーム707a、707bを組み合わせることによって構成されている。
【0039】
一対のアーム707a、707bのうちの一方のアーム707aは、固定具706により、主軸701に対する位置が固定されている。ヤットコ700の主軸701における先端部分901であって、固定具706と主軸701との境界部分は、主軸701の一端側を覆う略キャップ形状をなす。
【0040】
一対のアーム707a、707bのうちの他方のアーム707bは、ピン708bを介して固定具706に連結されている。他方のアーム707bは、ピン708aを中心として、一方のアーム707aに対して先端側が接離する方向に回動可能に連結されている。
【0041】
他方のアーム707bの他端は、連結棒709の一端に連結されている。連結棒709は、中空の棒形状をなし、主軸701と平行に設けられている。連結棒709は、絶縁材料を用いて形成され、たとえば、主軸701と同様に、エポキシ樹脂系強化プラスチックやポリエステル樹脂系強化プラスチックなどを用いて形成することができる。連結棒709の中間部には、水きりつば710が嵌合固定されている。他方のアーム707bの他端と連結棒709の一端とは、連結ピン711によって回動可能に連結されている。
【0042】
連結棒709の他端は、操作部703における連結部712に回動可能に連結されている。連結部712は、操作部703における操作レバー713に固定されている。操作レバー713は、支持具714を介して主軸701に取り付けられている。操作レバー713は、支持具714に対して、当該支持具714との連結位置を中心として回動可能に取り付けられている。作業者が、操作レバー713を回動させるように操作すると、操作レバー713の動作に連動して連結棒709が主軸に対してスライドする方向に沿って変位し、これにともなって他方のアーム707bが一方のアーム707aに対して先端側が接離するように回動する。
【0043】
操作レバー713は、図示を省略する付勢部材によって、支持具714とは反対側の端部が主軸701から離間する方向へ付勢されている。操作レバー713は、たとえば、アルミニウム合金を用いて形成することができる。
【0044】
一対のアーム707a、707bの先端部には、互いに対向している部分に、それぞれ、把持面が形成されている。把持部702は、アーム707a、707bの先端側を互いに接近させ、把持面の間に被把持物を挟むことによって、被把持物を把持する。把持面の表面全体には、滑り止め加工が施されている。滑り止め加工は、たとえば、把持面に複数の細溝を設けることによって実現することができる。一対のアーム707a、707bにおける側面には、それぞれ、凹部801が設けられている。
【0045】
(照明補助具100を用いた作業方法)
つぎに、この発明にかかる実施の形態の照明補助具100を用いた作業方法について説明する。
図10、
図11および
図12は、この発明にかかる実施の形態の照明補助具100を用いた作業の一例を示す説明図である。照明補助具100を用いた作業に際しては、まず、上述したヤットコ700に照明補助具100を取り付ける。
【0046】
具体的には、略「コ」の字形状をなす基材401を備えた固定部130を用いる場合、照明補助具100は、ヤットコ700の把持部702における凹部801に固定して使用する。具体的には、照明補助具100は、基材401によってヤットコ700のいずれかのアーム707aまたは707bを挟んだ状態で、ボルトを締めることによってヤットコ700の把持部702に固定することができる(
図10を参照)。
【0047】
また、具体的には、略環形状をなす基材502を備えた固定部501を用いる場合、照明補助具100は、ヤットコ700の主軸701における先端部分901に固定して使用することができる。より具体的には、固定部501における基材502を先端部分901に抱きつかせるように押し付けることにより、固定部501を用いる照明補助具100を先端部分901に取り付けることができる。
【0048】
つぎに、骨組部材121を曲げ撓めて、シート状の部材111の形状を調整する(
図11を参照)。骨組部材121は、たとえば、シート状の部材111が把持部側を覆うドーム状に湾曲するように曲げ撓める。骨組部材121は、シート状の部材111における中央部が作業者から離間した状態で湾曲するように曲げ撓める。
【0049】
このようにシート状の部材111の形状を調整した状態で、ヤットコ700を用いた間接活線作業をおこなう。間接活線作業に際しては、従来と同様に、投光器、キャップランプ、懐中電灯などの照明具を用いて、作業対象箇所(
図12における符号1200を参照)を照らす。具体的には、たとえば、変圧器の取り替えに際して高圧引下線を接続する作業をおこなう場合であれば、接続対象とする電線の先端部分や接続に用いるスリーブの先端部分を照らす。
【0050】
照明具が発した光のうち、作業対象箇所1200を直接照らさず当該作業対象箇所1200を通過した光は、シート状の部材111によって反射される。このとき、シート状の部材111の形状を、把持部702側を覆うドーム状に湾曲するように調整しておくことにより、シート状の部材111によって反射された光を把持部あるいは把持部の周辺に集光し、作業者から見て、作業対象箇所1200の裏側から作業対象箇所1200を照らすことができる。
【0051】
これにより、照明器具が発した直接光によって作業対象箇所1200を表側から照らすとともに、照明補助具100によって反射された光によって作業対象箇所1200を裏側から照らすことができる。このように、照明補助具100を用いることにより、照明具が発した光を有効に利用し、作業対象箇所1200を表裏から照らすことができ、作業対象箇所1200における明るさを確保することができる。そして、これにより、作業対象箇所1200を正確に確認し、作業を確実におこなうことができる。
【0052】
図13は、この発明にかかる実施の形態の照明補助具100の別の一例を示す説明図である。骨組部材121は、ポケット状の支持部201に限るものではない。
図13に示すように、両端が閉塞された筒状の支持部1301によって実現してもよい。これにより
【0053】
以上説明したように、この発明にかかる実施の形態の照明補助具100は、加えられた外力に応じた形状に変形する柔軟性を備えた材料を用いて形成された骨組部120と、骨組部120に支持されてシート形状をなす照明補助部110と、骨組部120を、取り付け対象とする間接活線工具(たとえばヤットコ700)の一部に固定する固定部130(501)と、を備えたことを特徴としている。
【0054】
この発明にかかる実施の形態の照明補助具100によれば、固定部130あるいは固定部501を介して、骨組部120および照明補助具100を間接活線工具(たとえばヤットコ700)に取り付けることができる。
【0055】
その後、骨組部材121を曲げ撓めて、シート状の部材111の形状を調整するだけで、作業対象箇所1200の正面側および裏側から光を当てることができ、作業対象箇所1200における明るさを確保することができる。そして、これにより、この発明にかかる実施の形態の照明補助具100によれば、作業対象箇所1200を正確に確認し、作業を確実におこなうことができる。
【0056】
また、この発明にかかる実施の形態の照明補助具100は、骨組部120が、硬銅を焼き鈍しした軟銅によって形成された複数(たとえば3本)の棒状部材を実現する骨組部材121であることを特徴としている。
【0057】
この発明にかかる実施の形態の照明補助具100によれば、骨組部材121を任意の形状に曲げ撓めることができ、作業対象箇所1200における明るさを一層確実に確保することができる。これにより、この発明にかかる実施の形態の照明補助具100によれば、作業対象箇所1200を正確に確認し、作業を確実におこなうことができる。
【0058】
また、この発明にかかる実施の形態の照明補助具100は、照明補助部110が、少なくとも一部がメッシュ構造をなすシート状の部材であることを特徴としている。
【0059】
この発明にかかる実施の形態の照明補助具100によれば、照明補助具100の軽量化を図り、間接活線工具の先端に照明補助具100を取り付けることによる作業者の負担軽減を図ることができる。また、メッシュ構造とすることにより、昼間の作業において照明補助具100を使用した場合に、照明補助具100によって作業対象箇所1200が暗くなることを防止できる。これにより、昼夜にかかわらず、作業対象箇所1200を容易かつ正確に把握することができる。
【0060】
また、この発明にかかる実施の形態の照明補助具100は、照明補助部110が、白色のシート状の部材であることを特徴としている。
【0061】
この発明にかかる実施の形態の照明補助具100によれば、シート状の部材111を白色とすることにより、作業対象箇所1200と、背景となる照明補助具100との境界を明確にすることができ、作業対象箇所1200の確認をより正確におこなうことができる。これにより、昼間の作業と同様に、作業対象箇所1200を容易かつ正確に把握することができ、間接活線作業を安全かつ確実におこなうことができる。
【0062】
また、この発明にかかる実施の形態の照明補助具100は、固定部130(501)が、骨組部120に対して着脱可能であることを特徴としている。
【0063】
この発明にかかる実施の形態の照明補助具100によれば、骨組部材121に対して固定部130を着脱可能とすることにより、作業現場に適した固定部130を用いて照明補助具100を間接活線工具(たとえばヤットコ700)に取り付けることができる。これにより、作業者や作業環境に適した、使いやすい照明補助具100を提供することができる。