特許第6443081号(P6443081)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6443081
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】コネクタ装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 11/30 20160101AFI20181217BHJP
   H01R 13/631 20060101ALI20181217BHJP
   H01R 13/73 20060101ALI20181217BHJP
【FI】
   H02K11/30
   H01R13/631
   H01R13/73 C
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-14043(P2015-14043)
(22)【出願日】2015年1月28日
(65)【公開番号】特開2016-140186(P2016-140186A)
(43)【公開日】2016年8月4日
【審査請求日】2017年5月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】特許業務法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石橋 武士
【審査官】 三澤 哲也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−187224(JP,A)
【文献】 特開2013−140821(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 11/30
H01R 13/631
H01R 13/73
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータ側端子を備えたモータ側コネクタと、
インバータ側端子を備えたインバータ側コネクタと、
前記モータ側コネクタが設けられたモータケースと、
前記インバータ側コネクタが設けられたインバータケースと、が具備され、
前記モータケースに対し前記インバータケースを重ねて結合することに伴い、前記両コネクタが嵌合されるコネクタ装置であって、
前記モータ側コネクタは、前記モータケースに設けられた取付孔を貫通して同モータケースに固着され、
前記インバータ側コネクタは、前記インバータケースに設けられた取付孔を貫通した形態で径方向に遊動可能に同インバータケースに支持されており、
前記インバータケースには、前記インバータ側コネクタの外面に周設されたフランジを径方向の遊動可能に受ける段付孔が形成されるとともに、前記フランジの周縁に係止可能な係止孔を開口した係止板が前記インバータケースの表面に装着されることによって、
前記インバータ側コネクタを径方向の遊動可能に貫通した形態で支持する前記取付孔が形成されているコネクタ装置。
【請求項2】
前記モータ側端子と前記インバータ側端子とが、可撓性導電部材を介在させた形態で接続可能となっている請求項1記載のコネクタ装置。
【請求項3】
前記インバータ側端子が、前記モータ側端子と接続される第1接続部と、前記インバータの出力部に接続される第2接続部とを前記可撓性導電部材で接続して形成されている請求項2記載のコネクタ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータとインバータとを電気接続するために用いるコネクタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車やハイブリッド車において、モータとインバータとを電気接続するに当たり、従来はモータの端子(コネクタ)と、インバータの端子(コネクタ)とをワイヤハーネスを用いて接続していた。
一方、近年、省スペース等を目的として、モータケースにモータ側端子を備えたモータ側コネクタを、インバータケースにインバータ側端子を備えたインバータ側コネクタを互いに対向して設け、モータケースに対しインバータケースを直結することに伴って両コネクタを嵌合し、すなわち両端子同士を接続するようにしたコネクタ装置が提案されている。このようなコネクタ装置は、例えば下記特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−225488号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ケースにコネクタを装着する構造としては、ケースに開口した取付孔にコネクタを挿通した形態において、同コネクタをケースにねじ止め等で固定する手段が採用されるが、取付孔を形成するに際して加工精度上で形成位置にばらつきが出たり、取付孔内でコネクタが位置ずれする等に起因し、コネクタの装着位置にばらつきが出る可能性がある。そのような場合は、両ケースを正規姿勢で対向させたとしても、コネクタ同士が正規に対向せず、すなわち位置ずれが生じ、両コネクタがこじて嵌合されたり、極端な場合は嵌合ができない不具合を招くおそれがあった。
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、その目的は、ケース同士を重ねて結合することに伴いモータ側コネクタとインバータ側コネクタとを嵌合する形式のものにおいて、両コネクタの正規嵌合を担保するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、モータ側端子を備えたモータ側コネクタと、インバータ側端子を備えたインバータ側コネクタと、前記モータ側コネクタが設けられたモータケースと、前記インバータ側コネクタが設けられたインバータケースと、が具備され、前記モータケースに対し前記インバータケースを重ねて結合することに伴い、前記両コネクタが嵌合されるコネクタ装置であって、前記モータ側コネクタは、前記モータケースに設けられた取付孔を貫通して同モータケースに固着され、前記インバータ側コネクタは、前記インバータケースに設けられた取付孔を貫通した形態で径方向に遊動可能に同インバータケースに支持されているところに特徴を有する。
【0006】
インバータ側コネクタはフローティング状態でインバータケースに設けられているから、インバータケースをモータケースに重ねるに当たって、仮にインバータ側コネクタとモータ側コネクタとの軸心がずれていたような場合も、インバータ側コネクタが径方向に遊動しつつ両コネクタが心合わせされ、両コネクタが正規に嵌合される。また、インバータ側コネクタがフローティング状態で設けられていることにより、モータまたはインバータの振動が両コネクタを介して相手側に伝わるのが途中で中断され、すなわち振動の伝達が回避される。
【0007】
また、以下のような構成としてもよい。
(1)前記インバータケースには、前記インバータ側コネクタの外面に周設されたフランジを径方向の遊動可能に受ける段付孔が形成されるとともに、前記フランジの周縁に係止可能な係止孔を開口した係止板が前記インバータケースの表面に装着されることによって、前記インバータ側コネクタを径方向の遊動可能に貫通した形態で支持する前記取付孔が形成されている。
簡単な構造により、インバータ側コネクタのフローティング機能を実現することができる。
【0008】
(2)前記モータ側端子と前記インバータ側端子とが、可撓性導電部材を介在させた形態で接続可能となっている。
モータ側若しくはインバータ側の振動が、接続された両端子を介して相手側に伝達されようとした場合に、同振動が可撓性導電部材で吸収されて相手側に伝達されることが回避される。
(3)前記インバータ側端子が、前記モータ側端子と接続される第1接続部と、前記インバータの出力部に接続される第2接続部とを前記可撓性導電部材で接続して形成されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ケース同士を重ねて結合することに伴いモータ側コネクタとインバータ側コネクタとを嵌合する場合において、両コネクタの正規嵌合を担保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係るモータ側コネクタの分解斜視図
図2】インバータ側コネクタの分解斜視図
図3】モータ側コネクタの装着構造を示す平面図
図4】インバータ側コネクタの装着構造を示す平面図
図5】両コネクタの嵌合前の正面図
図6】同正断面図(図3図4のVI−VI線断面図)
図7】同側面図
図8】同側断面図(図3図4のVIII−VIII線断面図)
図9】締結ボルトの斜視図
図10】両コネクタの嵌合工程における嵌合開始直前の状態を示す部分断面図
図11】嵌合初期の状態を示す部分断面図
図12】嵌合中盤の状態を示す部分断面図
図13】嵌合完了時の状態を示す部分断面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
<実施形態>
本発明の一実施形態を図1ないし図13に基づいて説明する。
この実施形態では、図5及び図6に示すように、モータを構成するモータケース10にはモータ側コネクタ30が、インバータPCU(以下、単にインバータと言う。)を構成するインバータケース50にはインバータ側コネクタ60が上下に対向して装着され、インバータケース50をモータケース10上に載置して結合することに伴い、モータ側コネクタ30とインバータ側コネクタ60とが嵌合されるようになっている。モータ側コネクタ30とインバータ側コネクタ60は、共に3極のコネクタである。
【0012】
モータ側について説明する。モータ側コネクタ30は、図1図8及び図10に示すように、3本のモータ側端子31が、合成樹脂製の雄ハウジング35内にインサート成形により埋設して装着されている。モータ側端子31は丸ピンからなる雄端子であって、下端部には、接続孔32Aが開口された接続板部32が形成されている。
【0013】
雄ハウジング35は、長円形の筒状をなす上面開口のフード部36の下面側に端子台37が連設された形状であって、フード部36内には、2枚の仕切壁36Aが底面から立ち上がり形成されている。
この雄ハウジング35に対してモータ側端子31が3本並んで埋設され、各モータ側端子31の先端がフード部36内における仕切壁36Aで仕切られた3つの領域にそれぞれ突出しているとともに、各モータ側端子31の接続板部32は、端子台37の下端部において露出した形態で並んで配されている。
端子台37における接続板部32の裏面側にはそれぞれナット収容孔38が形成され、各ナット収容孔38には方形のナット39が回り止めされて収容され、背面に装着されたホルダ38Aにより保持されている。
【0014】
モータ側コネクタ30は、図3及び図6に示すように、シールドシェル20の所定位置に保持された形態において、モータケース10に装着されるようになっている。
そのため、図10に示すように、雄ハウジング35におけるフード部36の下端部外周には、小径の上フランジ41と、大径の下フランジ42とが所定間隔を開けて形成されている。下フランジ42の内周側と上フランジ41との間に構成される溝部43には、第2軸シール44が嵌着されるようになっている。
【0015】
シールドシェル20はアルミダイキャスト製であって、図1に示すように、厚肉の帯板状に形成されている。このシールドシェル20には、モータ側コネクタ30を下方から嵌合可能な保持孔21が形成されている。
保持孔21は、図10に示すように、下端側が雄ハウジング35に形成された下フランジ42が略緊密に嵌合される大径孔21Aで、上端側が上フランジ41が略緊密に嵌合される小径孔21Bとなった段付孔であり、小径孔21Bの上面の孔縁には同小径孔21Bの内面とほぼ面一に周壁22が立ち上がり形成されている。大径孔21Aは上フランジ41の厚さよりも大きい深さ(高さ)を有している。
【0016】
モータ側コネクタ30は、シールドシェル20の保持孔21に下方から嵌合され、下フランジ42が保持孔21の段差部21Cに当たったところで嵌合が停止され、そのとき上フランジ41が、周壁22の上端部内に達し、雄ハウジング35の上端部が周壁22の上方に突出する。また、第2軸シール44により雄ハウジング35の外周と保持孔21の内周との間がシールされるようになっている。
下フランジ42の下面には、後記するモータケース10に開口された取付孔11の上面の孔縁に押し付けられてシールする面シール45が装着されているとともに、雄ハウジング35の先端部の外周には装着溝46が周設され、同装着溝46には、後記するインバータケース50に開口された嵌合凹部55Aの内周面との間をシールする第1軸シール47が装着されている。
【0017】
シールドシェル20における保持孔21の側方には、図1及び図3に示すように、雌ねじ台24が突出形成されており、同雌ねじ台24の中心には、後記するインバータケース50側に装着された締結ボルト100が螺合されるねじ孔25が形成されている。
シールドシェル20の端部と、雌ねじ台24の両側には、ボルト挿通孔26が開口されている。
【0018】
モータケース10の上面には、図6に示すように、シールドシェル20の各保持孔21から下方に突出した雄ハウジング35の下部側が略緊密に嵌合される取付孔11が、保持孔21と同心に開口されている。
シールドシェル20は、雄ハウジング35の下部側が対応する取付孔11に嵌合された形態でモータケース10の上面に重ねられ、ボルト挿通孔26にボルト27が挿通されて、モータケース10に形成されたねじ孔(図示せず)にねじ込まれることにより固定されるようになっている。雄ハウジング35の端子台37は、モータケース10内に突出する。
端的には、モータ側コネクタ30は、モータケース10の上面に開口された取付孔11を貫通した形態において、シールドシェル20を介して固定的に装着されるようになっている。
【0019】
次に、インバータ側について説明する。
インバータ側コネクタ60は、図2図8及び図10に示すように、合成樹脂製の雌ハウジング80と、雌ハウジング80に装着される3本のインバータ側端子70と、インバータ側端子70を抜け止め保持するバックリテーナ90とを備えて構成されている。インバータ側端子70は、上記したモータ側端子31と接続される雌端子71と、インバータの出力端子(図示せず)と接続されるBA端子72とが、編組線73を介して繋がれた構造である。
【0020】
雌ハウジング80は、モータ側コネクタ30における雄ハウジング35内に嵌合可能な外形長円形をなすブロック状に形成されており、同雌ハウジング80内には、インバータ側端子70のうちの雌端子71が収容されるキャビティ81が3個並んで形成されている。
バックリテーナ90は同じく合成樹脂製であって、図2に示すように、一対の分割リテーナ91A,91Bを組み立てることで形成され、一体に組み立てられたバックリテーナ90は、概ね雄ハウジング35の上面開口を覆う横長の方形の厚板状に形成されている。
【0021】
一体化されたバックリテーナ90の下面には、図10に示すように、雌ハウジング80の上端部が緊密に嵌る長円形をなす所定深さの嵌合凹部92が形成されている。同嵌合凹部92の天井面には、編組線73における雌端子71との接続端を挿通可能な3個の挿通孔93が、キャビティ81と同じピッチで形成されている。3個の挿通孔93のうち左右両端の挿通孔93では、それぞれの並び方向の外側の面(左端の挿通孔93では左側の面、右端の挿通孔93では右側の面)が、上方に向けて斜めに開いたテーパ面94とされている。
【0022】
図2に示すように、各分割リテーナ91A,91Bのうち一方の分割リテーナ91Aには、長さ方向の両端と、各挿通孔93の間の位置において、都合4本のロック片95が突出形成されているとともに、他方の分割リテーナ91Bには、各ロック片95を受け入れて抜け止めする4個のロック受け部96が対応位置に形成されている。
各分割リテーナ91A,91Bにおける嵌合凹部92の直線状の壁面からは、装着突部97が一対ずつ突出形成されているとともに、雌ハウジング80の上端部における直線状の前後の面には、装着突部97が嵌合される一対ずつの装着凹部83が穿設されている。
【0023】
インバータ側コネクタ60を組み立てるに当たっては、インバータ側端子70の各雌端子71が雌ハウジング80の対応するキャビティ81に上方から挿入され、キャビティ81内に設けられたランス82により一次係止される(図8参照)。続いて、一対の分割リテーナ91A,91Bが、雌ハウジング80の上端部を前後に挟んで配され、装着突部97を装着凹部83に嵌合し、またロック片95をロック受け部96に挿入しつつ対向縁同士が突き合わされ、正規に突き合わされたところでロック片95がロック受け部96内で弾性的に係止されることにより、バックリテーナ90が一体に組み立てられる。併せてバックリテーナ90は、雌ハウジング80の上端部を嵌合凹部92内に嵌めた形態で装着される。バックリテーナ90が装着されると、雌端子71の上端のバレル71Aが各挿通孔93の下側の孔縁に係止され、すなわち二重に抜け止めされる。
【0024】
雌端子71のバレル71Aに接続された編組線73は、バックリテーナ90の挿通孔93を通って上方に引き出される。この実施形態では、図5及び図6に示すように、3本のインバータ側端子70について、雌端子71よりもBA端子72の方が大きいピッチで配設されるようになっており、そのため左右両端の2本のインバータ側端子70では、それぞれの編組線73が、バックリテーナ90の挿通孔93から出たところで左側または右側に屈曲される必要があるが、両端の挿通孔93にはテーパ面94が形成されているから、編組線73は挿通孔93の内面と干渉することなく上記の屈曲が許容される。
【0025】
上記したモータ側コネクタ30は、モータケース10に対して固定的に装着されるのに対して、インバータ側コネクタ60は、インバータケース50に対してフローティング状態で装着されるようになっている。
インバータケース50は、図5に概略を示すように、本体ケース51の正面側に、インバータ側コネクタ60を装着するためのコネクタ装着ケース52(以下、装着ケース52)が、所定寸法底上げされた形態で張り出し形成されている。したがって詳細には、インバータ側コネクタ60は装着ケース52に対してフローティング状態で装着されている。
【0026】
インバータ側コネクタ60の装着構造を図6及び図8によって説明する。インバータ側コネクタ60を構成する雌ハウジング80における上端寄りの位置には、フランジ85が全周に亘って張り出し形成されている。
装着ケース52の底面52Aには、下面開口の載置台55が立ち上がり形成されている。載置台55は平面略平行四辺形をなし、同載置台55の内部が、上記したモータ側コネクタ30を構成する雄ハウジング35の上端部が嵌合される嵌合凹部55Aとされている。
【0027】
載置台55における天井壁56には、雌ハウジング80を上方から挿通して支持する支持孔57が開口されている。支持孔57は、図8に示すように、下側が、雌ハウジング80の外周をクリアランスを持って嵌合可能な小径孔58Aで、上側が、雌ハウジング80のフランジ85をクリアランスを持って嵌合可能な大径孔58Bである段付孔となっている。上側の大径孔58Bの深さは、フランジ85の厚さよりも少し小さい寸法を有している。
なお、各載置台55における左右の側壁は肉厚に形成されている。
【0028】
載置台55上には、金属板製のブラケット75が被着されるようになっている。ブラケット75は、載置台55の上面とほぼ等しい平面形状をなし、図6に示すように、雌ハウジング80の外周をクリアランスを持って嵌合可能な係止孔76が開口されている。ブラケット75の両端部には、図4に示すように、ねじ挿通孔77が開口され、同ねじ挿通孔77に通したねじ78(図10参照)を、載置台55の左右の側壁に形成されたねじ孔(図示せず)に螺合して締め付けることで、ブラケット75は、その係止孔76を支持孔57と同心に配した形態で、載置台55の上面に固定されるようになっている。
【0029】
雌ハウジング80の装着の手順としては、雌ハウジング80が載置台55の支持孔57に上方から挿通され、フランジ85が支持孔57における小径孔58Aの孔縁で受けられて支持される。続いてブラケット75が、雌ハウジング80の上端部を係止孔76に挿通しつつ載置台55の上面に重ねられてねじ78で止められて固定され、フランジ85が係止孔76の孔縁に係止されて雌ハウジング80の上方への抜け止めがなされる。
これにより雌ハウジング80は、その上端部を載置台55の支持孔57からブラケット75の係止孔76に亘って貫通させた形態において、主にフランジ85と大径孔58Bとの間のクリアランスに相当する分、径方向に遊動可能に支持された状態となり、すなわち装着ケース52に対してフローティング状態で装着される。したがって、装着ケース52に設けられた載置台55の支持孔57と、載置台55上に固定されたブラケット75の係止孔76とによって、インバータ側コネクタ60を径方向の遊動可能に貫通した形態で支持する取付孔79が構成されている。
【0030】
本実施形態では、一部既述したようにインバータケース50をモータケース10上に載置して結合することに伴い、モータ側コネクタ30とインバータ側コネクタ60とが嵌合されるようになっており、両ケース10,50は、締結ボルト100(図9参照)並びに補助ボルト(図示せず)によって締結され、それに伴い、両コネクタ30,60を正規嵌合させるようになっており、以下その構造について説明する。
【0031】
インバータケース50の装着ケース52の底面における載置台55の側方には、図4に示すように、締結ボルト100を吊り下げて軸線回りの回転可能に支持する台座110が形成されている。台座110は、下面が開放された形態で載置台55の略中央高さ位置まで立ち上がり形成されている。台座110に吊り下げ支持された締結ボルト100における雄ねじ部101の下端は、装着ケース52の底面52Aから所定寸法突出し、モータケース10の上面に固定されたシールドシェル20に設けられた雌ねじ台24のねじ孔25に螺合可能となっている。
また、補助ボルトは、インバータケース50における本体ケース51の底面と、モータケース10の上面との間を、複数箇所において締結できるようになっている。
【0032】
モータケース10上にインバータケース50を載置するに当たって所定位置に載置できるように、図示しない位置決め機構が設けられており、インバータケース50がモータケース10と正規に位置決めされて対向した場合には、インバータ側コネクタ60とモータ側コネクタ30同士が同一軸線上で対向し、また締結ボルト100と雌ねじ台24のねじ孔25とが同一軸線上で対向する設定となっている。
【0033】
本実施形態は上記のような構造であって、続いてその作用を説明する。
図6に示すように、モータ側では、モータ側コネクタ30が、シールドシェル20の保持孔21内に第2軸シール44を介して水密に嵌着された形態で保持され、このシールドシェル20が、雄ハウジング35の下端部をモータケース10の上面の取付孔11に嵌合しつつ同モータケース10上にねじ止めされて固定される。これにより、モータ側コネクタ30は、モータケース10の上面において固定的に装着され、また取付孔11の上側の孔縁は、面シール45によってシールされる。
【0034】
一方、インバータ側では、インバータ側コネクタ60が、インバータケース50の装着ケース52に形成された載置台55の天井壁56とブラケット75とに亘って形成された取付孔79を径方向の遊動可能に貫通した形態で支持され、すなわちフローティング状態で装着される。また、3本のインバータ側端子70について、左右両側のインバータ側端子70の編組線73が外側に屈曲されつつ、BA端子72のピッチが広げられる。
それとともに、締結ボルト100が台座110に対して回転可能に吊り下げ支持される。
【0035】
インバータ側コネクタ60を対応するモータ側コネクタ30に嵌合する場合は、以下のようにして行う。
図6に示す状態から、インバータケース50が、位置決め機構により位置決めされてモータケース10上に降ろされ、図10に示すように、インバータ側コネクタ60がモータ側コネクタ30に対して嵌合を開始する。ここでインバータ側コネクタ60とモータ側コネクタ30とが心ずれしていたとしても、インバータ側コネクタ60はフローティング状態で支持されているから、インバータ側コネクタ60が径方向に遊動しつつ心合わせされ、両コネクタ30,60は正規にスムーズに嵌合される。
【0036】
図11に示すように、インバータ側コネクタ60が対向するモータ側コネクタ30に所定量嵌合されたところで、締結ボルト100の雄ねじ部101の先端が、シールドシェル20の雌ねじ台24に切られたねじ孔25の入口に臨む。
続いて、トルクレンチ等の工具により締結ボルト100の雄ねじ部101がねじ孔25にねじ込まれ、その際の倍力機能によって、図12に示すように、装着ケース52を含むインバータケース50がモータケース10の上面に引き寄せられ、併せてインバータ側コネクタ60がモータ側コネクタ30に次第に嵌合される。
【0037】
締結ボルト100のねじ込みがさらに進むと、モータ側コネクタ30における雄ハウジング35の上端部の外周に嵌着された第1軸シール47が、載置台55の嵌合凹部55A内に弾縮されて嵌合されつつ、インバータ側コネクタ60のモータ側コネクタ30に対する嵌合がさらに進み、インバータ側端子70の雌端子71とモータ側端子31とが次第に嵌合接続される。
【0038】
図13に示すように、インバータケース50の本体ケース51がモータケース10の上面に当たったところで締結ボルト100の締め込みが停止され、続いて補助ボルトによって、本体ケース51がモータケース10の上面に当てられた状態に固定される。
ここで、インバータ側コネクタ60とモータ側コネクタ30とが正規に嵌合した状態となり、また、モータ側コネクタ30の雄ハウジング35に嵌着された第1軸シール47が、載置台55の嵌合凹部55Aの内周に密着してシールした状態も維持される。
【0039】
これにより、インバータケース50をモータケース10上に載置して結合することに伴い、モータ側コネクタ30とインバータ側コネクタ60とを嵌合する作業が完了する。
モータケース10内では、モータ側コネクタ30の端子台37において、各モータ側端子31の接続板部32に、モータの入力端子が当てられてボルト締めにより接続される。一方、インバータケース50内では、各インバータ側端子70のBA端子72が、図示しない端子台を利用してインバータの出力端子とねじ止めにより接続される。
【0040】
以上説明したように本実施形態によれば、インバータ側コネクタ60はフローティング状態でインバータケース50(装着ケース52)に設けられているから、インバータケース50をモータケース10に重ねるに当たって、仮にインバータ側コネクタ60とモータ側コネクタ30との軸心がずれていたような場合も、インバータ側コネクタ60が径方向に遊動しつつ両コネクタ30,60が心合わせされ、両コネクタ30,60が正規に嵌合される。また、インバータ側コネクタ60がフローティング状態で設けられていることにより、モータまたはインバータの振動が両コネクタ30,60を介して相手側に伝わるのが途中で中断され、すなわち振動の伝達が回避される。
【0041】
ここで、両コネクタ30,60のうちインバータ側コネクタ60をフローティング状態で設けた理由は、以下のとおりである。モータの仕様において、モータケース10内に油を充填するものがあり、その場合はモータ側コネクタ30を貫通して装着した取付孔11を、シールリングでシールする必要がある。ここで、仮にモータ側コネクタ30をフローティング状態で設けると、モータ側コネクタ30の遊動に伴ってシールリングが歪に変形し、シールに支障を及ぼすおそれがある。
それに対して本実施形態では、インバータ側コネクタ60をフローティング状態に設ける一方で、モータ側コネクタ30は固定的に設けたから、面シール45の歪な変形を招くことなく、取付孔11のシールを確実に採ることができる。
【0042】
インバータ側コネクタ60をフローティング状態で支持するための取付孔11は、インバータケース50(装着ケース52)に設けられた載置台55の天井壁56に、インバータ側コネクタ60(雌ハウジング80)の外周面に周設されたフランジ85を径方向の遊動可能に受ける段付き状の支持孔57が形成されるとともに、同フランジ85の周縁に係止可能な係止孔76を開口したブラケット75を載置台55上に固定することで形成されており、すなわち比較的簡単な構造で以て、インバータ側コネクタ60のフローティング機能を実現することができる。
【0043】
また、インバータ側端子70は、雌ハウジング80に収容されて相手のモータ側端子31と接続される雌端子71と、インバータの出力端子と接続されるBA端子72とが、編組線73を介して繋がれた構造となっている。
そのため、モータ側若しくはインバータ側の振動が、接続された両端子31,70を介して相手側に伝達されようとした場合に、同振動が編組線73で吸収されて相手側に伝達されることが回避される。
また、インバータ側コネクタ60の装着位置と、インバータ側端子70のBA端子72が配される端子台の位置との間にずれがあった場合に、編組線73が伸縮されつつ位置ずれを吸収することが可能となる。
【0044】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)インバータ側コネクタをフローティング状態で支持するための構造は、上記実施形態に例示したものに限らず、他の構造を採用してもよい。
(2)上記実施形態では、インバータ側端子に設けられる可撓性導電部材として編組線を例示したが、剥き出しの撚り線等の他の部材を採用してもよい。
(3)インバータ側端子は、相手のモータ側端子と接続される第1接続部と、インバータの出力部に接続される第2接続部と、可撓性導電部材とを備える限り、任意の構造で形成することができる。
【符号の説明】
【0045】
10…モータケース
11…取付孔
20…シールドシェル
30…モータ側コネクタ
31…モータ側端子
35…雄ハウジング
50…インバータケース
52…装着ケース
55…載置台
57…支持孔(段付孔)
60…インバータ側コネクタ
70…インバータ側端子
71…雌端子(第1接続部)
72…BA端子(第2接続部)
73…編組線(可撓性導電部材)
75…ブラケット(係止板)
76…係止孔
79…取付孔
80…雌ハウジング
85…フランジ
図1
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