(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら前記した従来の技術には,次のような問題点があった。すなわち,特許文献1の用紙搬送装置では,用紙搬送状態での同部材の位置は,用紙本体側の部材(同図中の「57」)と,閉じられた開閉扉(同図中には図示なし)との間の隙間に規制されているに過ぎないと解される。このため,用紙搬送状態での同部材の位置精度は悪いと考えられる。用紙搬送状態での同部材の位置精度を高めるには,同部材を用紙搬送状態での位置へ向けて何らかの弾性部材で付勢することが考えられる。なお,同文献中の「トーションスプリングS1」等はその役割を果たしていない。
【0006】
しかし単にそれだけで同部材の位置精度を出せるものではない。なぜなら,同部材の歪みが問題となるからである。つまり,同部材を用紙搬送状態での位置へ向けて弾性部材で付勢するということは,同部材を前出の退避状態にしたときには,その弾性部材による弾力を強く受けることになるのである。また,当然ながら同部材は完全な剛体ではあり得ない。このため,同部材を退避状態にし続けると,同部材に掛かる弾性部材の弾力により,同部材に塑性変形による永久歪みが発生する場合がある。これにより結局,同部材の位置精度が得られないのである。
【0007】
本発明は,前記した従来の技術が有する問題点を解決するためになされたものである。すなわちその課題とするところは,用紙をガイドするガイド部材をジャム処理等のために可動としつつ,用紙搬送時におけるガイド部材の位置精度も担保されるようにした用紙搬送装置および画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様における用紙搬送装置は,通紙経路により給紙元から給紙先へ用紙を搬送する装置であって,通紙経路の片面側を覆うとともに退避可能な経路構成部材と,通紙経路に対して経路構成部材と同じ側,かつ,経路構成部材よりも用紙の搬送方向に上流側に位置し,用紙を搬送するときの搬送位置と,搬送位置よりも通紙経路から遠ざかった開放位置との間で可動であ
り,搬送位置から開放位置へ向けて移動する際の操作を,搬送される用紙の幅方向における一端側にて受ける可動ガイド部材と,可動ガイド部材を搬送位置へ向けて付勢する第1付勢部材および第2付勢部材
とを有し,第1付勢部
材は,幅方向
における一端側に配置されており,第2付勢部材は
,幅方向
における他端側に配置されており,第1付勢部材の付勢力が,第2付勢部材の付勢力より強力であるものである。
【0009】
上記態様における用紙搬送装置では,用紙ジャムが起こった場合の対応等のため,通紙経路の片面側を覆う経路構成部材を退避させることができる。経路構成部材を退避させた状態ではさらに,可動ガイド部材をも開放位置とすることができる。ただし通常時には,第1付勢部材および第2付勢部材の付勢により,可動ガイド部材は搬送位置に維持されている。可動ガイド部材
は,搬送位置から開放位置
へ向けて移動する際の操作を,用紙の幅方向
における一端側にて受けるので,可動ガイド部材には,開放位置とされることにより歪みが生じることがある。しかしその場合でも本態様では,搬送位置での
可動ガイド部材の位置精度が高く維持される。
前記一端側に設けられている第1付勢部材が,もう1つの第2付勢部材より強力だからである。
【0010】
前記態様の用紙搬送装置において,
可動ガイド部材を
,操作者の手動操作によ
り開放位置にさせ
られるための取っ手
を,幅方向における前記一端側に有するものとして構成することができる。このようにすると,経路構成部材を退避させている状態で操作者が取っ手を手で引っ張ることにより,可動ガイド部材を開放位置にすることができる。
【0011】
また,前記態様の用紙搬送装置ではあるいは
,経路構成部材と可動ガイド部材とを連結するとともに,経路構成部材を退避させたときに可動ガイド部材を開放位置とし,経路構成部材を退避状態から本来の位置に復帰させたときに可動ガイド部材を搬送位置とする連結部材
を有し,連結部材は,幅方向における前記一端側に配置されているものであってもよい。これにより,経路構成部材を退避位置にすることに連動して可動ガイド部材も開放位置になるので,便利である。
【0012】
本発明の別の態様である画像形成装置は,給紙部と,画像形成部と,給紙部から画像形成部への用紙の搬送を行う,前述のいずれか1つの態様の用紙搬送装置とを有するものである。このような画像形成装置では,可動ガイド部材が開放可能とされつつ,その搬送位置での位置精度を長期にわたり維持できる。よって,画像形成の品質が高い。
【発明の効果】
【0013】
本構成によれば,用紙をガイドするガイド部材をジャム処理等のために可動としつつ,用紙搬送時におけるガイド部材の位置精度も担保されるようにした用紙搬送装置および画像形成装置が提供されている。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下,本発明を具体化した実施の形態について,添付図面を参照しつつ詳細に説明する。本形態は,
図1に示す画像形成装置1に本発明を適用したものである。
図1の画像形成装置1は,用紙貯蔵部10と,画像形成部30と,排紙部50とを有するいわゆるプリンターである。用紙貯蔵部10は,用紙カセット11と,給紙ローラー12とを有している。用紙カセット11は,用紙を収納しており,その用紙が給紙ローラー12により1枚ずつ取り出されるようになっている。
【0016】
画像形成部30には,画像形成ユニット31,露光ユニット32,転写ローラー33,タイミングローラー34,タイミングセンサー35,定着器36が設けられている。画像形成ユニット31には,感光体ドラム37や現像ローラー38等が設けられている。これにより,画像データに基づくトナー像を感光体ドラム37に形成し,そのトナー像を,用紙貯蔵部10から供給された用紙に転写し,さらに定着するようになっている。ここでタイミングローラー34およびタイミングセンサー35により,転写箇所への用紙の突入タイミングが,トナー像の形成タイミングに合わせられる。排紙部50には,排紙ローラー51と排紙トレイ52とが設けられている。これにより,トナー像の定着後の印刷用紙を排紙トレイ52上に排出するようになっている。
【0017】
かかる全体構成の画像形成装置1において,用紙貯蔵部10と画像形成部30との間の用紙搬送部20が,本発明の適用箇所である。したがって用紙搬送部20は,給紙元である用紙貯蔵部10から給紙先である画像形成部30への用紙の搬送を行う機能を有している。また,画像形成装置1における
図1中右側面の下部には,開閉扉2が設けられている。画像形成装置1において用紙搬送部20は,開閉扉2のすぐ内側に位置している。以下,この用紙搬送部20の詳細について説明する。
【0018】
図2に,画像形成装置1における用紙搬送部20付近を拡大して示す。
図2の用紙搬送部20では,主として壁面部材21,22により通紙経路が規定されている。
図2の用紙搬送部20にはこの他,搬送ローラー23や可動ガイド部材25が設けられている。搬送ローラー23は,ローラー対をなしており,用紙カセット11から給紙ローラー12により1枚ずつ取り出された用紙を,通紙経路へ引き込んで搬送するものである。可動ガイド部材25は,搬送ローラー23により引き込まれた用紙を,壁面部材21と壁面部材22とに挟まれた隙間の部分までガイドする部材である。
【0019】
つまり
図2の用紙搬送部20においては,前半部分では壁面部材22と可動ガイド部材25との間の隙間Fの部分が通紙経路であり,後半部分では壁面部材22と壁面部材21との間の隙間Gの部分が通紙経路である。これにより,
図2中左下の搬送ローラー23のある辺りから,
図2中上方のタイミングローラー34の方へ向けて用紙を搬送するようになっている。なお
図2ではタイミングセンサー35を省略している。また
図2では,可動ガイド部材25と壁面部材21との間にも隙間Hがあるが,この隙間Hは,用紙カセット11が多段構成であった場合に,より下方のカセットから供給された用紙が通る部分である。
【0020】
図2中の可動ガイド部材25を
図3に単独で示す。可動ガイド部材25は,
図3中でほぼ逆V字形状をしており,第1部分26と第2部分27とを有している。第1部分26は
図2中で壁面部材22と対面している部分であり,第2部分27は
図2中で壁面部材21と対面している部分である。また,可動ガイド部材25には,支持軸28が設けられている。
図2中では支持軸28の位置が固定されており,可動ガイド部材25は支持軸28を中心にある程度回転できるようになっている。また,
図2に示されるように可動ガイド部材25には引きバネ29が取り付けられている。引きバネ29は,可動ガイド部材25の第1部分26を
図2中で下向きに引っ張っている。この引っ張り力により可動ガイド部材25は,
図2中で反時計回りに付勢されている(矢印M)。さらに,壁面部材22には,当接部19が設けられている。当接部19は
図2中,可動ガイド部材25のほぼ頂部辺りの高さに位置している。
【0021】
可動ガイド部材25について,
図4,
図5によりさらに説明する。
図4は,可動ガイド部材25の全体形を,その周辺のものとともに示す斜視図である。
図4に示されるように,可動ガイド部材25の幅方向両端には,当接部24が設けられている。当接部24は,可動ガイド部材25において第1部分26と第2部分27とが繋がっている部分,すなわち頂部に設けられている。当接部19,24はいずれも,搬送される用紙の最大幅よりも幅方向外側にある。
【0022】
さらに
図4から分かるように,
図2に示した引きバネ29は,実際には2本ある。幅方向手前側のものを引きバネ29A,奥側のものを引きバネ29Bという。引きバネ29Aと引きバネ29Bとは,やや特性が異なるものであるが,その点については後述する。以下,引きバネ29Aと引きバネ29Bとを特に区別せずまとめていうときには,単に引きバネ29という。また,当接部19,24についても,幅方向手前側のものと奥側のものとを区別する際にはA,Bの添え字を付けて示すこととする。
【0023】
図4では,引きバネ29の付勢により,幅方向両端で当接部19と当接部24とが当接している状態にある。これにより,可動ガイド部材25の位置が位置決めされた状態にある。可動ガイド部材25のこの状態が,用紙搬送部20で用紙の搬送を行う状態である。
図2も同じ状態である。なお,この状態で,搬送される用紙が腰の強い種類のものであると,その用紙により,可動ガイド部材25を引きバネ29の付勢と逆向きに移動させようとする力が掛かる。しかし,その程度の力で当接部19と当接部24とが離れてしまうことはない。
【0024】
図5に,可動ガイド部材25およびその周辺のものを上方から見た平面図を示す。
図5に示されるように,可動ガイド部材25の
第1部分26には,切り欠き部18が形成されている。搬送ローラー23との干渉を防止するためである。
図5に示される状態も,
図2,
図4と同様に,当接部19と当接部24とが当接している状態である。前述の引きバネ29による付勢力Mのためである。この付勢力Mは,
図2中で壁面部材22と可動ガイド部材25(第1部分26)との間の通紙経路Fを狭くする方向に働いている。
【0025】
これに対して当接部19と当接部24とが当接することにより,可動ガイド部材25が位置決めされている。これにより通紙経路Fが確保されている。この状態ではまた,可動ガイド部材25のがたつきが付勢力Mにより抑えられている。こうして用紙搬送部20では,可動ガイド部材25の高い位置精度を得ている。用紙の搬送は,可動ガイド部材25がこの位置にある状態で行われる。以下,可動ガイド部材25のこの位置を,可動ガイド部材25の搬送位置という。
【0026】
前述のように本形態の画像形成装置1では,外装板の一部が開閉扉2とされている。こここまでの説明では,開閉扉2が閉じられていることを前提としていた。この開閉扉2を開くと,
図2に示した部分が,
図6に示す状態となる。
図6の状態では,壁面部材21も開閉扉2とともに,画像形成装置1の本体部分から離隔している。つまり,壁面部材21は開閉扉2と一体のものである。
図6ではこれにより,壁面部材21が壁面部材22から退避して,通紙経路Gが開放されている。よって,通紙経路Gにジャム紙があった場合,開閉扉2を開いて
図6の状態とすることで,当該ジャム紙を取り除くことができる。なお,開閉扉2の開閉動作自体は,回転軸を中心とする煽り動作でもよいし,閉状態から平行に引き出される平行移動動作でもよい。煽り動作の場合,回転軸は縦配置でも水平配置でもよい。
【0027】
図6ではまた,可動ガイド部材25も,
図2中に示した搬送位置での状態とは異なる配置で描かれている。すなわち,
図6中の可動ガイド部材25は,
図2中に示された可動ガイド部材25に対して,図中時計回り,つまり
図2中の矢印Mと逆向きに少し回転して開いた位置にある。可動ガイド部材25のこの位置を,可動ガイド部材25の開放位置という。開放位置での可動ガイド部材25は,搬送位置の場合と比較して用紙が通る位置からより遠ざかっている。可動ガイド部材25を開放位置にすると,
図6に示されるように,可動ガイド部材25の第1部分26が壁面部材22から離隔して,通紙経路Fが開放される。よって,通紙経路Fにジャム紙があった場合,可動ガイド部材25を開放位置にすることで,当該ジャム紙を取り除くことができる。なお,ここまでの説明から明らかなように,開閉扉2を閉じたまま可動ガイド部材25を開放位置にすることはできない。
【0028】
ここで,可動ガイド部材25を開放位置にするための構成について説明する。可動ガイド部材25は,開閉扉2を開いたとしてもそれだけで必ず開くとは限らない。ここまでの説明ではまだ言及していないが,可動ガイド部材25を開くための構成が必要である。ここでは,可動ガイド部材25を手動操作で開くための構成と,開閉扉2を開くことに連動して可動ガイド部材25も開かせる構成との2通りを説明する。
【0029】
まず,可動ガイド部材25を手動操作で開くための構成を説明する。この構成の場合の可動ガイド部材25は,
図7に示すように,取っ手17を備えている。取っ手17は,可動ガイド部材25における,
図7中左下側の端部に設けられた突起状の部位である。この位置は,引きバネ29A,29Bのうちの引きバネ29Aに近い方の端部である。また,画像形成装置1の奥行き方向でいえば手前側の位置である。取っ手17はまた,可動ガイド部材25における,高さ方向でいえば頂部,すなわち第1部分26と第2部分27とが繋がっている位置に設けられている。この位置は,可動ガイド部材25中で,支持軸28から最も遠い位置である。なお,
図7中では取っ手17の陰になっているが,手前側の当接部24Aは,
図7に示される可動ガイド部材25でも存在している。
【0030】
可動ガイド部材25に取っ手17を備える構成の画像形成装置では,開閉扉2を開いてもそれによって直ちに可動ガイド部材25も開く訳ではない。しかし,開閉扉2を開くことにより,可動ガイド部材25が外部から見える状態となる。実際にこの状態で外部から見えるのは,可動ガイド部材25のうち,第2部分27と取っ手17である。そこで,操作者が手で取っ手17を摘んで引っ張ることにより,可動ガイド部材25の全体が支持軸28を中心に回転して,前述の開放位置となる。この,可動ガイド部材25を開く動作は,引きバネ29の弾性による付勢力Mに抗して行われることとなる。しかし取っ手17を引っ張る動作は,それほど重いものではない。前述のように取っ手17は回転中心である支持軸28から遠い位置にあり,力のモーメントとして楽な位置だからである。また,取っ手17は,画像形成装置1の奥行き方向における手前側の端部に位置しているので,操作者としては容易に手で摘むことができる。
【0031】
続いて,開閉扉2を開くと連動して可動ガイド部材25も開く構成を説明する。この構成の場合には,開閉扉2と可動ガイド部材25とが,
図8に示す連結部材16で連結されている。ただし
図8では,開閉扉2はまだ開かれていない。
図8の連結部材16は,中空のシリンダー状の部材である。連結部材16の
図8中右端は,開閉扉2に設けられたブロック14に取り付けられている。ブロック14は,開閉扉2に固定して設けられている。連結部材16による開閉扉2と可動ガイド部材25との連結は,画像形成装置1の奥行き方向における手前側の端部にて行われている。つまり,
図7に示した例における取っ手17と同じ幅方向位置である。
【0032】
連結部材16の内部には,圧縮バネ15が設けられている。圧縮バネ15の
図8中左端は,連結部材16の
図8中左端に取り付けられている。また,連結部材16は部分的に開裂された形状のものである。これにより,圧縮バネ15の
図8中右端が可動ガイド部材25を右向きに押すようになっている。この,圧縮バネ15が可動ガイド部材25を押す力は,可動ガイド部材25を開放位置へ向けて付勢する向きに作用する。したがってこの力は,可動ガイド部材25を回転させることに関し,前述の引きバネ29の付勢力Mとは逆向きである。ただし
図8の状態では,圧縮バネ15の押し付け力よりも引きバネ29の付勢力Mの方が勝る。圧縮バネ15がほとんどその自由長に近いほど長い状態にあり,弱い押し付け力しか発生しない状態にあるからである。このためこの状態では,可動ガイド部材25は閉じたままの状態に維持されている。
【0033】
開閉扉2を開くと
図9の状態になる。
図9の状態では,
図8の状態と比較して,壁面部材21とブロック14とが右向きに移動している。開閉扉2を開いたためである。これに伴い連結部材16も,ブロック14に引っ張られて右向きに移動している。一方,
図8および
図9中の搬送ローラー23や支持軸28は,同じ位置にある。これらの位置は画像形成装置1の本体に対して固定されているからである。なお,
図9中における連結部材16および圧縮バネ15以外のものの配置は,
図6中における配置と同じである。
【0034】
これにより,
図9中の可動ガイド部材25は,
図8中での状態に対してやや時計回りに回転した位置にある。また,
図9中の圧縮バネ15は,
図8中での状態よりも圧縮された状態にある。これが,開閉扉2を開いたことに連動して可動ガイド部材25が開放位置になった状態である。
図9における圧縮バネ15は,
図8中での状態と比較して,より圧縮された分,可動ガイド部材25を図中右向きにより強い付勢力Nで押している。このため
図9の状態では,可動ガイド部材25の回転に関し,圧縮バネ15の付勢力Nと引きバネ29の付勢力Mとが釣り合っている。
図9の状態ではこうして,可動ガイド部材25が開放位置に維持されている。この状態から開閉扉2を閉じれば,壁面部材21は本来の位置に戻り,全体として
図8の状態に戻ることとなる。
【0035】
ここで,開放状態での可動ガイド部材25への力の掛かり方について説明する。
図10に,開放位置での可動ガイド部材25およびその周辺のものを上方から見た平面図を示す。
図10は,
図5に示したものを,可動ガイド部材25を開放位置(
図9参照)にして描きなおしたものである。よって
図10では,次の2点が
図5と異なっている。第1に,当接部19と当接部24との間に左右ともに隙間Pがある点である。第2に,可動ガイド部材25における第2部分27がほとんど見えないことである。後者は,
図9中で第2部分27がほぼ垂直になっていることによる。なお
図10に示されるものは,可動ガイド部材25が手動方式(
図7)の場合でも連動方式(
図8および
図9)の場合でも同じである。
【0036】
図10に示す開放位置での可動ガイド部材25には,3つの力が掛かっている。第1に,引きバネ29Aによる付勢力M(29A)である。第2に,引きバネ29Bによる付勢力M(29B)である。第3に,圧縮バネ15による付勢力Nである。第1の付勢力M(29A)および第2の付勢力M(29B)は,可動ガイド部材25を搬送位置にする向きに働いており,
図10中では上向きの矢印で示されている。一方,第3の付勢力Nは,可動ガイド部材25を開放位置にする向きに働いており,
図10中では下向きの矢印で示されている。
図10の開放状態では,力のモーメントとして,付勢力M(29A)と付勢力M(29B)との和が,付勢力Nと釣り合っている。
【0037】
この状態では,
図10中上向きの力である付勢力M(29A),付勢力M(29B)は,可動ガイド部材25の左端と右端とに分散して掛かっている。一方,
図10中下向きの力である付勢力Nは,可動ガイド部材25における
図10中の左端の位置に集中して掛かっている。このため,
図10に示す開放位置での可動ガイド部材25は,付勢力Nのため,
図10中で反時計回りに捻ろうとするねじり応力が掛かっている状態にある。
【0038】
したがって可動ガイド部材25は,長時間にわたり開放位置にされていると(連続,累積を問わず),当該ねじり応力による歪みが発生してしまう。この歪みによる永久変形が生じた状態では,
図10中の当接部19と当接部24との間の隙間Pが,左右で不均一となる。もちろん,付勢力Nが作用する側の端部である
図10中左側の隙間Pが右側の隙間Pより大きい状態となる。
【0039】
このように可動ガイド部材25に歪みが生じた状態では,次のような事態の発生が考えられる。すなわち,可動ガイド部材25を開放位置から搬送位置に戻した際における位置精度が悪くなるのである。なぜなら,
図10中で隙間Pが狭い側である右側の当接部19Bと当接部24Bとを当接させても,それだけでは,
図11に示すように,左側の当接部19Bと当接部24Bとの間に隙間Qが残ってしまうからである。これでは,
図2中の通紙経路Fが本来の広さより広いことになる。このため,通紙経路Fおよびそれに続く通紙経路Gでの用紙の位置が想定した範囲から逸脱し,続くタイミングローラー34による用紙のキャッチに失敗する確率が上昇する。また,
図2中の通紙経路Hは逆に想定より狭くなる。このため通紙経路Hからの給紙が困難になる。
【0040】
しかし本形態の画像形成装置1では,可動ガイド部材25が歪んで変形した状態においても上記の弊害が生じないようになっている。それは,前述の,引きバネ29Aと引きバネ29Bとの特性の相違による。具体的には,引きバネ29Aと引きバネ29Bとではバネ定数が異なり,引きバネ29Aの方が引きバネ29Bより強力なのである。このため,
図10に示した付勢力M(29A)と付勢力M(29B)とでは,前者の方が強力なのである。
【0041】
したがって,本形態の画像形成装置1では,可動ガイド部材25に前述のような歪みが生じている状況であっても,搬送位置では,左右両方の当接部19と当接部24とがいずれも当接している
図5の状態が担保される。
図10中の付勢力M(29A)が,歪みによる変形が既に発生している可動ガイド部材25を,逆に変形させて幅方向左側の当接部19Aと当接部24Aとを当接させてしまうほど強力だからである。また,引きバネ29Aのこの強い付勢力M(29A)により,可動ガイド部材25が搬送位置にある間にその歪みがある程度矯正される効果もある。このため,耐久使用による可動ガイド部材25の歪みによる変形の進行が遅い。このため本形態の画像形成装置1では,搬送位置の状態での可動ガイド部材25の位置精度の高さが,長い使用期間にわたって維持される。
【0042】
以上詳細に説明したように本実施の形態によれば,画像形成装置1の用紙搬送部20では,開閉扉2を開いて通紙経路の一部を開放した状態で,さらに,搬送ローラー23の下流側の可動ガイド部材25をも開放位置とすることができる構成となっている。これにより,用紙のジャム処理を容易に行うことができるようになっている。ここにおいて,可動ガイド部材25を開放位置とするための力は,可動ガイド部材25の幅方向の手前側の端部にあり,可動ガイド部材25に歪みが生じうる構成となっている。しかし,可動ガイド部材25を搬送位置へ向けて付勢する引きバネ29を左右両端に設けるとともに,手前側の方の引きバネ29Aをより強力なものとしている。これにより,可動ガイド部材25に歪みが生じた状況であっても,搬送位置における可動ガイド部材25の位置精度が維持されるようになっている。こうして,用紙搬送時における可動ガイド部材25の位置精度が,耐久使用においても高く維持される用紙搬送部20および画像形成装置1が実現されている。
【0043】
なお,本実施の形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。例えば,前記実施の形態では,可動ガイド部材25を搬送位置へ向けて付勢する付勢部材として引きバネ29を用いたが,圧縮バネでもよいし,板バネ等他の種類のバネでもよい。また,扉の開閉との連動方式の場合の圧縮バネ15についても,他の形式のバネでもよい。
【0044】
また,前記実施の形態では,用紙搬送部20を搭載する機器である画像形成装置1は,プリンターであることとした。しかしこれに限らず,コピー機でもよいし,さらに公衆回線経由で印刷ジョブの送受信を行う機能を有するものであってもよい。また,コピー機等の場合,画像形成部への印刷用紙の搬送箇所の他,読み取り部における原稿の搬送箇所に本発明を適用してもよい。よって,搭載機器はスキャナーであってもよい。また,画像形成装置の場合でも,その形式は,モノクロ機,カラー機,両面機,片面機等何でもよいし,トナーの替わりに液状の発色材を用いるものでもよい。