特許第6443087号(P6443087)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6443087
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】液体噴射ヘッド及び液体噴射装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/14 20060101AFI20181217BHJP
【FI】
   B41J2/14 305
   B41J2/14 603
【請求項の数】8
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-15109(P2015-15109)
(22)【出願日】2015年1月29日
(65)【公開番号】特開2016-137677(P2016-137677A)
(43)【公開日】2016年8月4日
【審査請求日】2017年9月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116665
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 和昭
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(72)【発明者】
【氏名】冨松 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 峻介
【審査官】 中村 博之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−210771(JP,A)
【文献】 特開2005−059328(JP,A)
【文献】 特開2011−218784(JP,A)
【文献】 特開2003−326704(JP,A)
【文献】 特開2007−168352(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0129799(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01−2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を噴射するノズルが形成されたノズル基板を含む複数の基板を積層した構成を有する液体噴射ヘッドであって、
前記複数の基板のうちの少なくとも一部に、前記液体を前記ノズルに導く流路が形成されており、
前記流路は、前記複数の基板が積層された方向である積層方向と交差する第1方向に延びる第1流路と、前記第1方向と交差し且つ前記積層方向の成分を有する第2方向に屈曲する屈曲部と、前記屈曲部から前記第2方向に延びる第2流路と、を含み、
前記流路の内側において、前記屈曲部のうち前記第1流路の内壁と前記第2流路の内壁とに挟まれた隅部に、前記第1方向及び前記第2方向の双方に交差する壁が設けられており、
複数の前記ノズルが配列したノズル列の延在方向に延び、前記第1流路、前記屈曲部、前記第2流路を含む共通液室を有し、
前記壁を前記積層方向に平面視した状態で前記第1方向と交差する方向における前記壁の奥行き寸法が、前記第1流路の前記第2方向における幅寸法と、前記第2流路の前記第1方向における幅寸法とのどちらよりも大きい、ことを特徴とする液体噴射ヘッド。
【請求項2】
請求項1に記載の液体噴射ヘッドであって、
前記共通液室に設けられ前記壁は、前記第1流路と前記屈曲部と前記第2流路とを前記第1方向及び前記第2方向で規程される面で切断したときの断面において、前記壁の前記第2方向における寸法が、前記共通液室に接続するインク導入路に近い位置に比較し、前記インク導入路から遠い複数の前記ノズルが配列した前記ノズル列の延在方向の両端部で大きい、ことを特徴とする液体噴射ヘッド。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の液体噴射ヘッドであって、前記第2方向が前記積層方向である
、ことを特徴とする液体噴射ヘッド。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の液体噴射ヘッドであって、前記第1流路と前記
屈曲部と前記第2流路とを前記第1方向及び前記第2方向で規程される面で切断したとき
の断面において、前記壁の前記第2方向における寸法が、前記第1流路の前記第2方向に
おける幅寸法の1/4に等しい、又は前記第1流路の前記第2方向における幅寸法の1/
4を超える、ことを特徴とする液体噴射ヘッド。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の液体噴射ヘッドであって、前記複数の基板は、
樹脂材料で構成された樹脂基板を含み、前記第1流路の少なくとも一部と、前記屈曲部と
、前記第2流路の少なくとも一部とが、前記樹脂基板に形成されている、ことを特徴とす
る液体噴射ヘッド。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の液体噴射ヘッドであって、前記壁が曲面で構成
されている、ことを特徴とする液体噴射ヘッド。
【請求項7】
請求項1から5のいずれか一項に記載の液体噴射ヘッドであって、前記壁が平面で構成
されている、ことを特徴とする液体噴射ヘッド。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の液体噴射ヘッドを備える、ことを特徴とする液
体噴射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体噴射ヘッド及び当該液体噴射ヘッドを備えた液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、液体噴射装置の一例として、インクジェット式のプリンターが知られている。一般的に、インクジェット式のプリンターでは、液体噴射ヘッドの一例である記録ヘッドから液体の一例であるインクを用紙や布帛などの種々の記録媒体に向けて噴射することによって、この記録媒体に印刷を行うことができる。このような記録ヘッドとしては、従来、複数の基板を積層した構成を有するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4258668号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載された記録ヘッドでは、積層された複数の基板の1つである保護基板にリザーバーと、リザーバーに交差する貫通孔とが形成されている。貫通孔は、複数の基板の積層方向に沿って形成されている。このため、リザーバーと貫通孔とが屈曲した状態でつながっている。保護基板は、シリコン単結晶基板で構成されている。そして、保護基板では、シリコン単結晶基板にエッチング加工を施すことによってリザーバーと貫通孔とが形成されている。このため、リザーバーから貫通孔につながる屈曲したインクの流路は、屈曲部で内壁に挟まれた隅部が角張りやすい。このような流路では、角張った隅部でインクの流れが淀みやすい。このような流路に気泡が混入すると、気泡が隅部にとどまりやすくなる。インクジェット式のプリンターでは、流路内に気泡が混入すると、気泡によるノズル詰まりや印字のムラといった印字品位の低下が起こることがある。このため、気泡を流路内から速やかに排出することが望まれる。しかしながら、従来の記録ヘッドでは、記録ヘッド内に混入した気泡が流路の隅部にとどまりやすい。つまり、従来の液体噴射ヘッドでは気泡を排出しにくいという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0006】
[適用例1]本適用例に係る液体噴射ヘッドは、液体を噴射するノズルが形成されたノズル基板を含む複数の基板を積層した構成を有する液体噴射ヘッドであって、前記複数の基板のうちの少なくとも一部に、前記液体を前記ノズルに導く流路が形成されており、前記流路は、前記複数の基板が積層された方向である積層方向と交差する第1方向に延びる第1流路と、前記第1方向と交差し且つ前記積層方向の成分を有する第2方向に屈曲する屈曲部と、前記屈曲部から前記第2方向に延びる第2流路と、を含み、前記流路の内側において、前記屈曲部のうち前記第1流路の内壁と前記第2流路の内壁とに挟まれた隅部に、前記第1方向及び前記第2方向の双方に交差する壁が設けられていることを特徴とする。
【0007】
この適用例の液体噴射ヘッドでは、液体をノズルに導く流路に、第1方向から第2方向に屈曲する屈曲部が含まれている。屈曲部の隅部には、第1方向及び第2方向の双方に交差する壁が設けられているので、流路を流れる液体は、屈曲部で壁に沿って導かれやすい。これにより、液体の流れが第1方向から第2方向に屈曲するときに、液体が隅部で留まることを避けやすい。このため、例えば、流路に気泡が混入したときに、気泡は、液体の流れに沿って屈曲部を通過しやすい。この結果、流路に混入した気泡をノズルを介して排出しやすい。
【0008】
[適用例2]上記適用例に記載の液体噴射ヘッドでは、前記壁を前記積層方向に平面視した状態で、前記第1方向と交差する方向における前記壁の奥行き寸法が、前記第1流路の前記第2方向における幅寸法と、前記第2流路における前記第1方向における幅寸法とのどちらよりも大きい、ことが好ましい。
【0009】
本適用例によれば、前記壁を積層方向に平面視した状態で第1方向と交差する方向における第1流路と屈曲部と第2流路との奥行き寸法が、第1流路の第2方向における幅寸法と、第2流路における第1方向における幅寸法とのどちらよりも大きくなる。これにより、第1流路と屈曲部と第2流路とのそれぞれにおける断面積を広くすることができる。この結果、第1流路と屈曲部と第2流路とを流れる液体の量を増大させやすくすることができる。さらに、流路の断面積が広くなることは、流路の抵抗を下げることにもつながる。流路の抵抗が下がることで、液体をノズルまで供給しやすくすることができる。
【0010】
[適用例3]上記適用例に記載の液体噴射ヘッドでは、前記第2方向が前記積層方向であることが好ましい。
【0011】
この適用例では、積層方向に沿って延びる第2流路を構成することができる。これにより、前記第1流路と後述する貫通流路をつなぐ前記第2流路を、短い距離である積層方向でつなぐことができる。前記第2流路を短い経路で形成できるため、流路内の液体及び、流路内に混入した気泡を短い時間で流路内から排出することができる。
【0012】
[適用例4]上記適用例に記載の液体噴射ヘッドでは、前記第1流路と前記屈曲部と前記第2流路とを前記第1方向及び前記第2方向で規程される面で切断したときの断面において、前記壁の前記第2方向における寸法が、前記第1流路の前記第2方向における幅寸法の1/4に等しい、又は前記第1流路の前記第2方向における幅寸法の1/4を超えることが好ましい。
【0013】
この適用例では、流路を流れる液体を屈曲部で壁に沿って導きやすくすることができる。
【0014】
[適用例5]上記適用例に記載の液体噴射ヘッドでは、前記複数の基板は、樹脂材料で構成された樹脂基板を含み、前記第1流路の少なくとも一部と、前記屈曲部と、前記第2流路の少なくとも一部とが前記樹脂基板に形成されていることが好ましい。
【0015】
この適用例では、樹脂基板に形成された屈曲部で液体の流れを屈曲させることができる。
【0016】
[適用例6]上記適用例に記載の液体噴射ヘッドでは、前記壁が曲面で構成されていることが好ましい。
【0017】
この適用例では、曲面で構成された壁に沿って液体を導くことができる。漸次的に壁面の方向が変化する曲面形状が庇部31にあることで、より液体の流れを第2方向へと導きやすくなる。
【0018】
[適用例7]上記適用例に記載の液体噴射ヘッドでは、前記壁が平面で構成されている、ことが好ましい。
【0019】
この適用例では、平面で構成された壁に沿って液体を導くことができる。
【0020】
[適用例8]上記適用例に記載の液体噴射ヘッドを備えることを特徴とする液体噴射装置。
【0021】
この適用例の液体噴射装置では、液体噴射ヘッドの流路において液体の流れが第1方向から第2方向に屈曲するときに、液体が隅部で留まることを避けやすい。このため、例えば、流路に気泡が混入したときに、気泡は、液体の流れに沿って屈曲部を通過しやすい。この結果、流路に混入した気泡を、ノズルを介して排出しやすい。
[適用例9]
本適用例に係る液体噴射ヘッドは、液体を噴射するノズルが形成されたノズル基板を含む複数の基板を積層した構成を有する液体噴射ヘッドであって、前記複数の基板のうちの少なくとも一部に、前記液体を前記ノズルに導く流路が形成されており、前記流路は、前記複数の基板が積層された方向である積層方向と交差する第1方向に延びる第1流路と、前記第1方向と交差し且つ前記積層方向の成分を有する第2方向に屈曲する屈曲部と、前記屈曲部から前記第2方向に延びる第2流路と、を含み、前記流路の内側において、前記屈曲部のうち前記第1流路の内壁と前記第2流路の内壁とに挟まれた隅部に、前記第1方向及び前記第2方向の双方に交差する壁が設けられている、複数の前記ノズルが配列したノズル列の延在方向に延び、前記第1流路、前記屈曲部、前記第2流路を含む共通液室を有し、前記壁を前記積層方向に平面視した状態で前記第1方向と交差する方向における前記壁の奥行き寸法が、前記第1流路の前記第2方向における幅寸法と、前記第2流路の前記第1方向における幅寸法とのどちらよりも大きい、ことを特徴とする。
[適用例10]
上記適用例に記載の液体噴射ヘッドでは、前記共通液室に設けられ前記壁は、前記第1流路と前記屈曲部と前記第2流路とを前記第1方向及び前記第2方向で規程される面で切断したときの断面において、前記壁の前記第2方向における寸法が、前記共通液室に接続するインク導入路に近い位置に比較し、前記インク導入路から遠い複数の前記ノズルが配列した前記ノズル列の延在方向の両端部で大きい、ことが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】実施形態1に係るインクジェット式記録装置概略図である。
図2】実施形態1に係るヘッドユニットの構成を示す分解斜視図である。
図3】実施形態1に係るヘッドユニットの構成を示す断面図である。
図4図3におけるA部の拡大図である。
図5図4中のB−B線における断面図である。
図6】従来技術に係る屈曲部の液体の流れを示す説明図である。
図7】実施形態1に係る屈曲部の液体の流れを示す説明図である。
図8】実施形態2に係る屈曲部の拡大断面図である。
図9】変形例1に係る屈曲部の拡大断面図である。
図10】変形例1に係る屈曲部を図4中のB−B線で切断したときの断面図である。
図11】変形例2に係る屈曲部の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための形態を、添付図面を参照して説明する。なお、以下の各図においては、各層や各部材を認識可能な程度の大きさにするため、各層や各部材の尺度を実際とは異ならせしめている。また、以下に述べる実施の形態では、本発明の好適な具体例として種々の限定がされているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
【0024】
(実施形態1)
液体噴射装置として、図1に示すインクジェット式記録装置1(以下、単にプリンター1という)を例示する。
【0025】
プリンター1は、液体噴射ヘッドの一種であるインクジェット式記録ヘッドユニット2(以下、単にヘッドユニット2という)を備えている。ヘッドユニット2は、液体の一例であるインクをインク滴として吐出することができる。また、プリンター1は、ヘッドユニット2とインクカートリッジ3とが搭載されるキャリッジ4と、ヘッドユニット2の下方に配設されたプラテン5と、キャリッジ4を記録紙6(ノズル32から噴射されたインクが着弾する着弾対象の一種)の紙幅方向に移動させるキャリッジ移動機構7と、紙幅方向に直交する方向である紙送り方向に記録紙6を搬送する紙送り機構8と、を備えている。ここで、紙幅方向とは、主走査方向(ヘッドユニット2の往復移動方向)であり、紙送り方向とは、副走査方向(即ち、ヘッドユニット2の主走査方向に直交する方向)である。
【0026】
キャリッジ4は、主走査方向に架設されたガイドロッド9に軸支された状態で取り付けられており、キャリッジ移動機構7の作動により、ガイドロッド9に沿って主走査方向に移動するように構成されている。キャリッジ4の主走査方向の位置は、リニアエンコーダー10によって検出され、検出信号が位置情報として制御部(図示せず)に送信される。これにより、制御部はこのリニアエンコーダー10からの位置情報に基づいてキャリッジ4(ヘッドユニット2)の走査位置を認識しながら、ヘッドユニット2からインク滴を吐出させることによって記録動作(噴射動作)等を制御することができる。
【0027】
なお、上述した実施形態においては、液体噴射ヘッドの一例としてインクジェット式記録ヘッドを挙げて説明したが、最近ではごく少量のインクを所定位置に正確に着弾させることができるという特長を生かして各種の製造装置にも応用されている。例えば、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターを製造するディスプレイ製造装置、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイやFED(面発光ディスプレイ)等の電極を形成する電極形成装置、バイオチップ(生物化学素子)を製造するチップ製造装置に応用されている。そして、画像記録装置用の記録ヘッドでは液状のインクを噴射し、ディスプレイ製造装置用の色材噴射ヘッドではR(Red)・G(Green)・B(Blue)の各色材の溶液を噴射する。また、電極形成装置用の電極材噴射ヘッドでは液状の電極材料を噴射し、チップ製造装置用の生体有機物噴射ヘッドでは生体有機物の溶液を噴射する。
【0028】
図2は、ヘッドユニット2の構成を示す分解斜視図である。本実施形態におけるヘッドユニット2は、上流路ユニット11、下流路ユニット12及び圧力発生ユニット13、を備え、これらの部材が積層された状態で構成されている。上流路ユニット11は、ケース基板14、上封止基板15が積層されて構成されている。下流路ユニット12は、連通基板16、下封止基板17、ノズル基板18を有している。圧力発生ユニット13は、圧力室19が形成された圧力室形成基板20、弾性膜21、圧電素子22、及び保護基板23が積層されてユニット化されている。上記の構成により、ヘッドユニット2は、複数の基板を積層した構成を有している。複数の基板には、ノズル基板18と、連通基板16と、圧力室形成基板20と、保護基板23と、ケース基板14と、上封止基板15とが含まれる。なお、ノズル基板18には、複数のノズル32が形成されている。
【0029】
図3は、ヘッドユニット2の構成を示す断面図である。また、図4図3におけるA部の拡大図であり、図5図4中のB−B線における断面図である。
【0030】
ここで、複数のノズル32が配列したノズル列の延在方向をY方向、上記複数の基板が積層される方向(以下、積層方向という)をZ方向、Y方向及びZ方向の双方に直交する方向をX方向とする。X方向が第1方向に対応し、Z方向が第2方向に対応し、Y方向が第3方向に対応する。また、各図面において、矢印の向きを+(正)方向とし、矢印の向きとは反対の向きを−(負)方向とする。
【0031】
図3に示すように、上流路ユニット11の構成部材であるケース基板14には、第1流路24、及び第2流路25が形成されている。第1流路24と第2流路25とは、屈曲部26で交差している。第1流路24は、X方向に延びている。また、第2流路25は、X方向と交差し上記積層方向の成分を有する方向に延びている。つまり、第1流路24から第2流路25に至る流路は、X方向に延びる第1流路24と、X方向と交差し上記積層方向の成分を有する方向に屈曲する屈曲部26と、屈曲部26からX方向と交差し上記積層方向の成分を有する方向に延びる第2流路25とを含む。本実施形態では、X方向と交差し上記積層方向の成分を有する方向は、Z方向である。つまり、本実施形態では、第2流路25は、Z方向に延びている。
【0032】
第1流路24は、図4に示すように、Z方向に幅寸法H1を有しており、第2流路25はX方向に幅寸法H2を有している。第1流路24と第2流路25は屈曲部26を形成するとともに、屈曲部26を介して接続されている。また、第2流路25は、図3に示すように、後述する貫通流路27と接続され、これにより第1流路24と貫通流路27が接続される。ケース基板は成形しやすい材料、たとえば樹脂から作製されている。本実施形態では、ケース基板14は、樹脂の射出成形によって形成されている。
【0033】
第2流路25は、図3に示すように、上封止基板15側から下封止基板17側に向かって延びている。第1流路24と貫通流路27を、最短距離である積層方向(Z方向)につないでいるため、短い経路で流路を構成することができる。これによりインクの流れを最短経路とできるため、流路内の気泡を短い時間で排出することが可能となる。
【0034】
ケース基板14の第1流路24が開口する面側には、上封止基板15が接合され、上封止基板15によって開口が封止されている。また、上封止基板15には、基板厚さ方向(Z方向)に貫通されたインク導入路28が設けられている。インクカートリッジ3(図1)からのインクは、インク導入路28からヘッドユニット2内に導入される。インク導入路28から導入されたインクは、第1流路24、屈曲部26、第2流路25、後述する貫通流路27及び共通連通路29からなる共通液室30に供給される。そして、共通液室30に供給されたインクが、ノズル32からインク滴として記録紙6に吐出される。
【0035】
また、図4に示すように、上流路ユニット11の第1流路24と第2流路25により形成された屈曲部26には、第1流路24の内壁51と第2流路25の内壁52とに挟まれた隅部53にX方向とZ方向の双方に交差する壁54が形成されている。なお、内壁51及び内壁52に挟まれた隅部53とは、図4に示すように、本実施形態では屈曲部26における上封止基板15とケース基板14とで形成される隅部53を指す。つまり、流路内壁に挟まれた隅部53とは、流路の内側において内壁51と内壁52とに挟まれた隅部53を指す。
【0036】
ここで、ケース基板14には、図2に示すように、屈曲部26に庇部31が形成されている。庇部31は、図4に示す第2流路25の内壁52から第1流路24側に向かって突出している。上述した壁54は、庇部31の内壁を構成している。庇部31は、図4中のB−B線における断面図である図5に示すように、Y方向に奥行き寸法W1を有している。庇部31の奥行き寸法W1は、第1流路24の幅寸法H1(図4)と第2流路25の幅寸法H2のどちらよりも大きいことが好ましい。これにより、第1流路24と屈曲部26と第2流路25とのそれぞれにおける流路の断面積を広くすることができる。この結果、第1流路24と屈曲部26と第2流路25に流れるインクの量を増大させやすくすることができる。さらに、流路の断面積が広くなることは、流路の抵抗を下げることにもつながる。流路の抵抗が下がることで、流路内の圧力損失を抑えることができ、インクをノズル32まで供給しやすくできる。
【0037】
図2に示す圧力発生ユニット13の構成部材である圧力室形成基板20は、結晶性基板の一種であるシリコン単結晶基板(以下、単にシリコン基板とも言う。)から作製されている。この圧力室形成基板20には、シリコン基板に対して異方性エッチング処理によって複数の圧力室19が、ノズル基板18の後述する各ノズル32に対応して複数形成されている。このように、シリコン基板に対して異方性エッチングによって圧力室19を形成することで、より高い寸法・形状精度を確保することができる。本実施形態におけるノズル基板18(図3)にはノズル32の列が2条形成されているので、圧力室形成基板20には、圧力室19の列が各ノズル列に対応して2条形成されている。圧力室19は、ノズル32のX方向に長尺な空部である。
【0038】
図3に示すように、圧力室形成基板20(圧力発生ユニット13)が連通基板16に対して位置決めされた状態で接合されると、圧力室19のX方向の一端部は、後述する連通基板16のノズル連通路33を介してノズル32と連通する。また、圧力室19のX方向の他端部は、連通基板16の供給側個別連通路34を介して共通液室30(共通連通路29)と連通する。上記の構成により、第1流路24及び第2流路25を含む共通液室30と、供給側個別連通路34と、圧力室19と、ノズル連通路33とが、インク導入路28からノズル32に至るインクの流路を構成している。
【0039】
下流路ユニット12の構成部材である連通基板16は、シリコン基板から作製されている。この連通基板16には、共通液室30の一部となる貫通流路27が、異方性エッチングにより板厚方向を貫通する状態で形成されている。また、貫通流路27に対して基板中央側の位置には、供給側個別連通路34及びノズル連通路33が、圧力室19に対応する位置に設けられている。いずれも異方性エッチングにより板厚方向に貫通している。さらに、供給側個別連通路34と貫通流路27をまたいで、ハーフエッチングにより供給側連通路29が形成されており、これにより貫通流路27と供給側個別連通路34が連通する。供給側連通路29と貫通流路27の開口部は下封止基板17によって封止される。なお、連通基板16と、後述するノズル基板18の接合部分は、供給側連通路29と貫通流路27の開口部より基板中央側にあるため、この開口部がノズル基板18で覆われることはない。
【0040】
図2に示す下流路ユニット12の構成部材であるノズル基板18は、印刷時のドット形成密度に対応したピッチで、複数のノズル32が列状に開設された部材である。本実施形態では前記ノズル基板18には2条のノズル列が形成されている(図3)。また、ノズル基板18はシリコン基板により構成されており、ドライエッチングにより円筒形状のノズル32が形成されている。ノズル基板18が位置決めされた状態で、連通基板16の開口部のある面側と接合されることにより、ノズル連通路33を介してノズル32と圧力室19が連通する。
【0041】
図3に示すように、圧力室形成基板20の上面(連通基板16との接合面とは反対側の面)には、圧力室19の上部開口を封止する状態で弾性膜21が形成されている。この弾性膜21は、例えば厚さが約1μmの二酸化シリコンから構成される。また、この弾性膜21上には、図示しない絶縁膜が形成される。この絶縁膜は、例えば、酸化ジルコニウムから成る。そして、この弾性膜21および絶縁膜上における各圧力室19に対応する位置に、圧電素子22がそれぞれ形成される。圧電素子22は、所謂撓みモードの圧電素子である。この圧電素子22は、弾性膜21および絶縁膜上に、金属製の下電極膜、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等からなる圧電体層、および、金属製の上電極膜(何れも図示せず)が順次積層された後に、圧力室19毎にパターニングされて構成される。そして、上電極膜または下電極膜の一方が共通電極とされ、他方が個別電極とされる。また、弾性膜21、絶縁膜、および下電極膜が、圧電素子22の駆動時に振動板として機能する。
【0042】
各圧電素子22の個別電極(上電極膜)からは、図示しない電極配線部が絶縁膜上にそれぞれ延出されており、これらの電極配線部の電極端子に相当する部分に、フレキシブルケーブル35の一端側の端子が接続される。このフレキシブルケーブル35は、例えば、ポリイミド等のベースフィルムの表面に銅箔等で導体パターンを形成し、この導体パターンをレジストで被覆した構成とされる。フレキシブルケーブル35の表面には、圧電素子22を駆動する駆動IC36が実装されている。各圧電素子22は、駆動IC36を通じて上電極膜および下電極膜間に駆動信号(駆動電圧)が印加されることにより、撓み変形する。
【0043】
図3に示すように、上記圧電素子22及び弾性膜21が形成された圧力室形成基板20の上面には保護基板23が配置される。この保護基板23は下面側が開口した中空箱体状の部材であり、例えば、ガラス、セラミックス材料、シリコン単結晶基板、金属、合成樹脂等から作製される。この保護基板23の内部には、圧電素子22に対向する領域に当該圧電素子22の駆動を阻害しない程度の大きさの逃げ凹部37が形成されている。さらに、保護基板23において、隣り合う圧電素子列の間には、基板厚さ方向を貫通した配線空部38が形成されている。この配線空部38内には、圧電素子22の電極端子とフレキシブルケーブル35の一端部とが配置される。
【0044】
上流路ユニット11の平面視における中心部分には、ノズル32の並設方向であるY方向(図2)に沿って長尺な開口を有する貫通空部39(図3)がケース基板14及び上封止基板15の厚み方向をそれぞれ貫通する状態で形成されている。この貫通空部39は、図3に示すように、圧力発生ユニット13の配線空部38と連通して、フレキシブルケーブル35の一端部および駆動IC36が収容される空部を形成する。また、上流路ユニット11の下面側には、当該下面からケース基板14の高さ方向の途中まで後退した収容空部40が形成されている。この収容空部40の深さは、圧力発生ユニット13の厚さ(高さ)よりも少し大きく設定されている。また、収容空部40の寸法は、圧力発生ユニット13の外形の寸法よりも少し大きく設定されている。そして、下流路ユニット12が上流路ユニット11の下面に位置決めされた状態で接合されると、連通基板16上に積層された圧力発生ユニット13が収容空部40に収容される。また、上記の貫通空部39の下端は、収容空部40の天井面に開口している。
【0045】
上記の構成のヘッドユニット2を製造する際には、まず、圧力室形成基板20(圧力室19が形成されていない状態のシリコン基板)の上面に弾性膜21、絶縁膜が順次形成された後、圧電素子22が焼成により形成される。この上に、逃げ凹部37に圧電素子22が収容される状態で保護基板23が接合される。そしてこの状態で、圧力室形成基板20の下面側から異方性エッチングによって圧力室19が形成される。このように、圧力室形成基板20に圧力室19が形成される前の段階で、当該圧力室形成基板20の上面側に圧電素子22および保護基板23を積層してユニット化しておくことで、圧力発生ユニット13の組み立て工程中に圧力室形成基板20が破損することが抑制される。
【0046】
次に、ノズル連通路33とノズル32とが連通する状態で、連通基板16の下面にノズル基板18が接着により接合される。さらに、連通基板16の下面に、貫通流路27および供給側連通路29の開口を塞ぐ状態で、下封止基板17が接合される。このようにして下流路ユニット12がユニット化される。続いて、ケース基板14が上封止基板15と接着剤によって接合される。これにより、第1流路24が封止されるとともに、上封止基板15に形成されたインク導入路28が第1流路24と連通する。
【0047】
各ユニットが組みあがったのち、下流路ユニット12における連通基板16の上面に、上記の圧力発生ユニット13が接合される。具体的には、圧力室19のX方向の一端部がノズル連通路33と連通すると共に、圧力室19のX方向の他端部が供給側個別連通路34と連通する状態で、連通基板16の上面に、圧力発生ユニット13の圧力室形成基板20が接着剤によって接合される。
【0048】
下流路ユニット12と圧力発生ユニット13が組み付けられたならば、保護基板23の配線空部38を通じて各圧電素子22の電極端子に対してフレキシブルケーブル35の配線が行われる。即ち、各圧電素子22の電極端子に相当する部分に、フレキシブルケーブル35の一端部の端子がそれぞれ電気的に接続される。
【0049】
続いて、下流路ユニット12の連通基板16と上流路ユニット11のケース基板14とが接着剤により接合される。下流路ユニット12と上流路ユニット11とが接合されると、収容空部40内に圧力発生ユニット13が収容されると共に、第2流路25と貫通流路27とが連通する。これにより、第1流路24、屈曲部26、第2流路25、貫通流路27及び共通連通路29からなる共通液室30が形成される。また、フレキシブルケーブル35の一端部および駆動IC36は、上流路ユニット11の貫通空部39内に収容される。これにより、ヘッドユニット2が組み上がる。
【0050】
そして、ヘッドユニット2の内部には、インク導入路28及び、第1流路24から共通側連通路29までの共通液室30を含む一連の共通流路と、供給側個別連通路34から圧力室19およびノズル連通路33を通ってノズル32に至るまでの個別流路と、が形成される。
【0051】
以上述べたように、本実施形態に係るヘッドユニット2によれば、以下の効果を得ることができる。図4図6、及び図7を用いて、屈曲部26のインクの流れと、庇部31の効果を説明する。図6に、庇部31がない従来構成でのインクの流れを示す。図6に示すように、第1流路24をX方向に流れるインクは、第2流路25の内壁52にあたり、X方向から流れの方向を変える。この時、第2流路25の内壁52はZ方向に沿っているため、第2流路25の内壁52にあたったインクは、上封止基板15側に向かう方向にも変化する。すなわち、内壁52では連通基板16(図3)側に向かってインクの流れが導かれにくく、インクが屈曲部26の隅部53で留まりやすくなる。
【0052】
このようなことに対して、図7に示すように、本実施形態では、庇部31が設けられているので、第1流路24をX方向に流れるインクは、まず庇部31の壁54にあたることで流れの方向を変える。庇部31の壁54はX方向とZ方向の双方に交差しているため、インクの流れは屈曲部26で庇部31の壁54に沿ってZ方向へと導かれやすい。これにより、インクの流れがX方向からZ方向に屈曲するときに、インクが隅部53で留まることを避けやすい。このため、例えば、流路に気泡が混入したときに、気泡はインクの流れに沿って屈曲部26を通過しやすい。この結果、流路に混入した気泡を、ノズル32を介して排出しやすい。
【0053】
また、本実施形態では、図4に示すように、庇部31の壁54が曲面で構成されている。漸次的に壁面の方向が変化する曲面形状が庇部31にあることで、よりインクの流れをZ方向へと導きやすくなる。これにより、インクを隅部53で留めにくいという作用に対して、高い効果を得ることができる。なお、壁54を構成する曲面は、X方向及び−Z方向に凹となる向きに形成されていることが好ましい。これにより、曲面で構成された壁54に沿ってインクの流れをZ方向に導きやすい。
【0054】
また、本実施形態では、庇部31の壁54のZ方向における寸法H3は、第1流路24のZ方向における幅寸法H1の1/4に等しい、又は第1流路24のZ方向における幅寸法H1の1/4を超えることが好ましい。これにより、屈曲部26で庇部31の壁54に沿ってインクの流れをZ方向に導きやすくなる。より好ましくは寸法H3が幅寸法H1の1/2を超えることであり、これにより、より多くのインクをZ方向に導きやすくすることができる。なお、本実施形態では、寸法H3が幅寸法H1の1/2を超えている。
【0055】
上述の如き本実施形態によれば、屈曲部26においてインクの流れがX方向からZ方向に屈曲するときに、インクが隅部53で留まることを避けやすい。このため、例えば、流路に気泡が混入したときに、気泡はインクの流れに沿って屈曲部26を通過しやすい。この結果、流路に混入した気泡を、ノズル32を介して排出しやすい。これにより、ノズル32に至るまでの流路に混入した気泡を排出しやすいヘッドユニット2が可能となる。
【0056】
(実施形態2)
図8は、実施形態2に係る屈曲部26の拡大断面図である。実施形態2に係るヘッドユニット2について、これらの図を参照して説明する。なお、実施形態1と同一の構成部位については、同一の符号を使用し、重複する説明は省略する。
【0057】
図8に示すように、本実施形態では、庇部31の壁54が平面で構成されている。
【0058】
本実施形態に係るヘッドユニット2によれば、実施形態1での効果に加えて、庇部31の形状の管理が行いやすくなる。実施形態1では、庇部31の壁54が曲面で構成されている場合を示したが、曲面形状は漸次的に変化する形状であり、寸法の測定や保証が困難な場合がある。これに対し、庇部31の壁54が平面で構成されている場合、製造工程および検査工程で寸法を精度よく決定することができ、庇部31の形状による効果を寸法測定により保証しやすくすることができる。
【0059】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されず、上述した実施形態に種々の変更や改良などを加えることが可能である。変形例を以下に述べる。
【0060】
(変形例1)
図9は、変形例1に係る屈曲部26の拡大断面図である。上記実施形態1〜2では、図4のように、庇部31の壁54は1つの面から構成されているとして説明したが、この構成に限定するものではない。以下、変形例1に係るヘッドユニット2について説明する。なお、実施形態1と同一の構成部位については、同一の符号を附し、重複する説明は省略する。
【0061】
図9に示すように、変形例1では、庇部31の壁54が複数の面で構成されている。この際、庇部31の壁54を形成しているそれぞれの面は、X方向とY方向のそれぞれに交差している。これらの面の組み合わせは、曲面と曲面、平面と平面、曲面と平面のいずれの組み合わせでもよい。また庇部31の壁54は3つ以上の面により構成されていても構わない。
【0062】
以上述べたように、変形例1に係るヘッドユニット2によれば、実施形態1〜2での効果に加えて、以下の効果を得ることができる。変形例1では、庇部31の壁54が2つの平面から構成されている。これにより、第1流路24をX方向に流れるインクは、庇部31の壁54を構成する2つの平面で流れの方向を変えるため、1つの面のみで構成される壁54に比較して、屈曲部26で庇部31の壁面に沿ってZ方向へインクの流れを導きやすくなる。このため、例えば、流路に気泡が混入したときに、気泡はインクの流れに沿って屈曲部26を通過しやすい。この結果、流路に混入した気泡を、ノズル32を介して排出しやすい。これにより、ノズル32に至るまでの流路に混入した気泡を排出しやすいヘッドが可能となる。
【0063】
(変形例2)
図10は、変形例2に係る屈曲部26を図4中のB−B線で切断したときの断面図である。上記実施形態1〜2および変形例1では、図5のように、庇部31の壁54の断面形状とH3寸法は、Y方向に沿って変化しないものとして説明したが、この構成に限定するものではない。以下、変形例2に係るヘッドユニット2について説明する。なお、実施形態1と同一の構成部位については、同一の符号を附し、重複する説明は省略する。
【0064】
図10に示すように、変形例2では、庇部31の壁54の断面形状、および庇部31の断面形状におけるH3寸法が、Y方向に沿って変化している。
【0065】
以上述べたように、変形例2に係るヘッドユニット2によれば、実施形態1〜2および変形例1での効果に加えて、以下の効果を得ることができる。変形例2では、庇部31の壁54の断面形状が、Y方向に沿って変化している。また、庇部31の断面形状におけるH3寸法が、インク導入路28から遠い位置では大きくなっている。図5に示すように、第1流路24は屈曲部26において奥行き寸法W1を有しているため、インク導入路28から屈曲部26までの間で、流路がY方向に広がっている。このため、図5に示すように、庇部31の断面形状におけるH3寸法が一定の場合、Y方向においてインク導入路28から遠くに位置する屈曲部26では、インクの流速が低下する。流速が遅い領域とはインクの流れが淀んでいる領域であり、庇部31の断面形状におけるH3寸法が一定の場合、Y方向に流速の分布、つまり淀みの分布を持つこととなる。変形例2では、この淀みの分布に沿って庇部31の断面形状におけるH3寸法を変化させ、すなわち淀みの大きくなる位置にある屈曲部26でH3寸法を大きくすることで、淀みの大きくなる位置にある屈曲部26においても、インクの流れをZ方向に導きやすくしている。このため、例えば、流路に気泡が混入したときに、気泡はインクの流れに沿って屈曲部26を通過しやすい。この結果、流路に混入した気泡を、ノズル32を介して排出しやすい。これにより、ノズル32に至るまでの流路に混入した気泡を排出しやすいヘッドが可能となる。
【0066】
(変形例3)
図11は、変形例3に係る屈曲部26の拡大断面図である。上記実施形態1〜2および変形例1〜2では、図4のように、庇部31の壁54はX方向とZ方向の双方に交差するとして説明したが、この構成に限定するものではない。以下、変形例3に係るヘッドユニット2について説明する。なお、実施形態1と同一の構成部位については、同一の符号を附し、重複する説明は省略する。
【0067】
変形例3では、図11に示すように、庇部31の第1流路24側の端部に、段差55が設けられている。すなわち、庇部31の壁54はX方向とZ方向の双方に交差しており、段差55はX方向にのみ交差している。
【0068】
以上述べたように、変形例3に係るヘッドユニット2によれば、実施形態1〜2および変形例1〜2での効果に加えて、以下の効果を得ることができる。庇部31の第1流路24側の先端部分に段差55を設けることで、庇部31の剛性を大きくすることができる。すなわち、応力によって発生する、庇部31の変形や欠けを防止しやすくすることができる。つまり、変形によって庇部31の効果が低下することや、庇部31の欠けから発生した流路内の異物の混入と前記異物によって流路が閉塞すること、を防ぎやすい。これにより、より印字時の信頼性が高いヘッドユニット2を提供することができる。
【符号の説明】
【0069】
1…プリンター、2…インクジェット式記録ヘッドユニット、3…インクカートリッジ、4…キャリッジ、5…プラテン、6…記録紙、7…キャリッジ移動機構、8…紙送り機構、9…ガイドロッド、10…リニアエンコーダー、11…上流路ユニット、12…下流路ユニット、13…圧力発生ユニット、14…ケース基板、15…上封止基板、16…連通基板,17…下封止基板、18…ノズル基板、19…圧力発生室、20…圧力室形成基板、21…弾性膜、22…圧電素子、23…保護基板、24…第1流路、25…第2流路、26…屈曲部、27…貫通流路、28…インク導入路、29…共通連通路、30…共通液室、31…庇部、32…ノズル、33…ノズル連通路、34…供給側個別連通路、35…フレキシブルケーブル、36…駆動IC、37…逃げ凹部、38…配線空部、39…貫通空部、40…収容空部、51…内壁、52…内壁、53…隅部、54…壁、55…段差。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11