特許第6443088号(P6443088)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6443088
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】スイッチング電源装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/28 20060101AFI20181217BHJP
【FI】
   H02M3/28 P
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-16247(P2015-16247)
(22)【出願日】2015年1月30日
(65)【公開番号】特開2016-144237(P2016-144237A)
(43)【公開日】2016年8月8日
【審査請求日】2017年11月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000106276
【氏名又は名称】サンケン電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100100712
【弁理士】
【氏名又は名称】岩▲崎▼ 幸邦
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】早川 章
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 雅章
【審査官】 栗栖 正和
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−157446(JP,A)
【文献】 特開2013−062930(JP,A)
【文献】 特開2008−092794(JP,A)
【文献】 特開2003−164163(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電圧をトランスの一次巻線に印加し、前記一次巻線に接続されたスイッチング素子をスイッチングさせることにより、前記トランスの二次巻線に発生したパルス電圧を整流平滑回路により整流平滑して、得られた出力電圧を負荷に出力するスイッチング電源装置であって、
前記出力電圧と基準電圧との誤差電圧をフィードバック信号として一次側に出力する誤差増幅器と、
軽負荷時に、前記誤差増幅器からの前記フィードバック信号に応じて前記スイッチング素子のスイッチング周波数を低減させる発振器と、
前記フィードバック信号の値に応じて、前記トランスが飽和しない近似線で負荷率に対する前記スイッチング周波数の傾きを表す周波数補正率を変化させることにより、前記発振器のスイッチング周波数を補正する周波数補正回路と、
を備え
前記周波数補正回路は、低減されたスイッチング周波数に対して前記周波数補正率を変化させることにより、前記スイッチング周波数をさらに低減させ、
前記近似線は、前記軽負荷から中間負荷までの前記周波数補正率に対し、前記中間負荷から重負荷までの前記周波数補正率を大きくする複数の線から構成されることを特徴とするスイッチング電源装置。
【請求項2】
前記スイッチング周波数は、上限周波数と下限周波数とを備えることを特徴とする請求項1記載のスイッチング電源装置。
【請求項3】
前記発振器の前記上限周波数と前記下限周波数とを調整するための周波数調整端子を備えることを特徴とする請求項記載のスイッチング電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチング電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のスイッチング電源装置として、例えば、特許文献1に記載されたものが知られている。特許文献1に記載されたスイッチング電源装置は、第1乃至第3のデューティサイクル制御モードを有し、フィードバック信号の値IC1で、第1のデューティサイクル制御モード(重負荷時モード)に入る。第1のデューティサイクル制御モードでは、スイッチング周波数は、平均100%値に調整される。フィードバック信号の値IC2(IC1よりも大)で、制御回路は第1のデューティサイクル制御モードから第2のデューティサイクル制御モード(軽負荷時モード)に移行する。
【0003】
第2のデューティサイクル制御モードでは、制御回路は、ピーク・スイッチ電流を固定値に調整し、フィードバック信号が増大するときは、スイッチング周波数を100%未満に調整する。スイッチング周波数は、フィードバック信号の値IC3(IC2よりも大)に達すると100%値の20%の閾値に達する。フィードバック信号の値IC3(IC2よりも大)で、制御回路は第2のデューティサイクル制御モードから第3のデューティサイクル制御モードに移行する。
【0004】
第1及び第2のデューティサイクル制御モードにより、スイッチング素子のドレインを抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−92794号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、第1のデューティサイクル制御モード全域及び第2のデューティサイクル制御モードの一部では、スイッチング周波数が高いことから、スイッチング素子のスイッチングロスが大きくなり、さらなるスイッチング周波数の高周波化は困難であった。
【0007】
また、従来のスイッチング電源装置では、図6(b)に示すように、フィードバック電圧FBが、負荷電力P0(負荷率)の減少に連動して直線的に減少する。このため、軽負荷時のスイッチング周波数ラインも負荷電力P0(負荷率)の減少に連動して直線的に減少する。この直線状のスイッチング周波数ラインでは、中間負荷での周波数が高くなってしまうため、スイッチングロスが増大して、効率が低下する。
【0008】
また、スイッチング周波数をさらに高周波化してトランスの小型化を図ることが要求されている。しかしながら、スイッチング周波数をさらに高周波化した場合には、重負荷時から中間負荷にかけてスイッチングロスにより効率が低下してしまう。
【0009】
本発明の課題は、トランスの小型化及び重負荷時から中間負荷にかけて高効率化を図ることができるスイッチング電源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るスイッチング電源装置は、直流電圧をトランスの一次巻線に印加し、前記一次巻線に接続されたスイッチング素子をスイッチングさせることにより、前記トランスの二次巻線に発生したパルス電圧を整流平滑回路により整流平滑して、得られた出力電圧を負荷に出力するスイッチング電源装置であって、前記出力電圧と基準電圧との誤差電圧をフィードバック信号として一次側に出力する誤差増幅器と、軽負荷時に、前記誤差増幅器からの前記フィードバック信号に応じて前記スイッチング素子のスイッチング周波数を低減させる発振器と、前記フィードバック信号の値に応じて、前記トランスが飽和しない近似線で負荷率に対する前記スイッチング周波数の傾きを表す周波数補正率を変化させることにより、前記発振器のスイッチング周波数を補正する周波数補正回路とを備え
前記周波数補正回路は、低減されたスイッチング周波数に対して前記周波数補正率を変化させることにより、前記スイッチング周波数をさらに低減させ、
前記近似線は、前記軽負荷から中間負荷までの前記周波数補正率に対し、前記中間負荷から重負荷までの前記周波数補正率を大きくする複数の線から構成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、周波数補正回路は、フィードバック信号の値に応じて、トランスが飽和しない近似線で負荷率に対するスイッチング周波数の傾きを表す周波数補正率を変化させることにより、発振器のスイッチング周波数を補正するので、スイッチング周波数を負荷状態に合わせて高周波化でき、これによって、トランスの小型化及び重負荷時から中間負荷にかけて高効率化を図ることができるスイッチング電源装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施例1に係るスイッチング電源装置の回路構成を示す図である。
図2】本発明の実施例1に係るスイッチング電源装置に設けられた周波数補正回路の詳細な回路構成を示す図である。
図3】本発明の実施例1に係るスイッチング電源装置の軽負荷モード時の高周波化制御を説明するための図である。
図4】本発明の実施例1に係るスイッチング電源装置の通常制御で高周波制御した場合の出力電力と効率との関係を示す図である。
図5】本発明の実施例1に係るスイッチング電源装置の波形損失を説明するための図である。
図6】従来のスイッチング電源装置の軽負荷モード時の制御を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明の実施例1に係るスイッチング電源装置の回路構成を示す図である。実施例1のスイッチング電源装置は、平滑コンデンサC0の直流電圧をトランスTの一次巻線Pに印加し、一次巻線Pの一端に接続されたスイッチング素子Q1をスイッチングさせることにより、トランスTの二次巻線Sに発生したパルス電圧をダイオードD1と出力コンデンサC1とからなる整流平滑回路により整流平滑して、得られた出力電圧Voutを図示しない負荷に出力する。
【0014】
なお、直流電源Eの直流電圧は、図示しないが、交流電源の入力電圧をダイオードで整流した電圧であっても良い。
【0015】
出力コンデンサC1の両端には、誤差増幅器(エラーアンプ)8が接続されている。出力コンデンサC1の一端と誤差増幅器8との間には、フォトカプラPC1のフォトダイオードと抵抗R2との直列回路が接続され、フォトダイオードの両端には抵抗R1が接続されている。
【0016】
誤差増幅器8は、出力コンデンサC1の出力電圧と基準電圧との誤差電圧をフォトカプラPC1のフォトダイオードを介してフィードバック信号として一次側のフォトカプラPC1のフォトトランジスタに出力する。フォトカプラPC1のフォトトランジスタのコレクタには、フィードバック電圧FBを出力するフィードバック端子FBが設けられている。
【0017】
スイッチング素子Q1は、MOSFETからなり、ドレインが一次巻線Pの一端に接続され、ソースが抵抗R3の一端に接続され、抵抗R3の他端は接地されている。
【0018】
抵抗R3の一端には過電流保護端子OCPが設けられ、OCPコンパレータCP1は、過電流保護端子OCPからの電圧が基準電圧Vref以上の場合には、Hレベルをオア回路OR1に出力し、過電流保護端子OCPからの電圧が基準電圧Vref未満の場合には、Lレベルをオア回路OR1に出力する。
【0019】
オア回路OR1は、オア回路OR1からの出力、例えばHレベルをフリップフロップ回路12のリセット端子に出力する。フリップフロップ回路12は、オア回路OR1からの出力、例えばHレベルにより反転出力端子QbからHレベルをノア回路13に出力する。
【0020】
ノア回路13はLレベルをドライブ回路14を介してスイッチング素子Q1のゲートに出力してスイッチング素子Q1をオフさせる。即ち、スイッチング素子Q1に過電流が流れた場合には、スイッチング素子Q1をオフさせることで、過電流保護される。
【0021】
電流センスコンパレータCP2は、過電流保護端子OCPからの電圧がフィードバック電圧FB以上の場合には、Hレベルをオア回路OR1に出力し、過電流保護端子OCPからの電圧がフィードバック電圧FB未満の場合には、Lレベルをオア回路OR1に出力する。オア回路OR1からオア回路OR1、フリップフロップ回路12、ノア回路13の処理は、OCPコンパレータCP1のそれらの処理と同じであるので、ここでは、その説明は省略する。
【0022】
次に、実施例1のスイッチング電源装置の特徴的な構成を説明する。フィードバック端子FBとグランドとの間にはコンデンサC2が接続されている。コンデンサC2は、周波数補正検出コンパレータCP3〜CP5、周波数補正回路10を介して発振器11に接続される。
【0023】
発振器11は、図示しないが、内部にコンデンサとスイッチとを有し、周波数補正回路10からの電流によりコンデンサを充電させコンデンサの充電電圧が所定の電圧に達するとスイッチによりコンデンサの電荷を放電させて、この充放電サイクルによりスイッチング周波数を設定している。発振器11は、軽負荷時に、フィードバック電圧FB(コンデンサC2の電圧)に応じてスイッチング素子Q1のスイッチング周波数を低減させる。
【0024】
周波数補正検出コンパレータCP3〜CP5及び周波数補正回路10は、フィードバック電圧FB(コンデンサC2の電圧)の値に応じて、トランスTが飽和しない近似線で周波数補正率を変化させることにより、発振器11のスイッチング周波数を補正する。
【0025】
周波数補正検出コンパレータCP3〜CP5及び周波数補正回路10は、発振器11により低減されたスイッチング周波数に対して周波数補正率を変化させることにより、スイッチング周波数をさらに低減させる。
【0026】
周波数補正検出コンパレータCP3は、コンデンサC2のフィードバック電圧FBが基準電圧V1(例えば2V)以上になると、出力がLレベルとなるため、ダイオードD2を介して周波数補正回路10から電流を引き込む。
【0027】
周波数補正検出コンパレータCP4は、コンデンサC2のフィードバック電圧FBが基準電圧V1よりも大きい基準電圧V2(例えば3V)以上になると、出力がLレベルとなるため、ダイオードD3を介して周波数補正回路10から電流を引き込む。
【0028】
周波数補正検出コンパレータCP5は、コンデンサC2のフィードバック電圧FBが基準電圧V2よりも大きい基準電圧V3(例えば4V)以上になると、出力がLレベルとなるため、ダイオードD4を介して周波数補正回路10から電流を引き込む。
【0029】
図2は、本発明の実施例1に係るスイッチング電源装置に設けられた周波数補正回路の詳細な回路構成を示す図である。周波数補正回路は、電圧を電流に変換する回路であり、トランジスタTr1,Tr2,Tr3、抵抗R10〜R13、オペアンプOP1を有している。
【0030】
抵抗R11の一端はダイオードD2のアノードに接続され、抵抗R12の一端はダイオードD3のアノードに接続され、抵抗R13の一端はダイオードD4のアノードに接続されている。
【0031】
抵抗R11の他端と抵抗R12の他端と抵抗R13の他端は、オペアンプOP1の反転端子と抵抗R10の一端とトランジスタTr3のエミッタとに接続され、抵抗R10の他端は接地されている。
【0032】
オペアンプOP1は、フィードバック電圧FBと抵抗R10の電圧との差電圧を増幅して差電圧をトランジスタTr3のベースに出力する。トランジスタTr1のエミッタとトランジスタTr2のエミッタとは、図示しない電源に接続され、トランジスタTr1のベースとトランジスタTr2のベースとは、トランジスタTr3のコレクタに接続されている。トランジスタTr2のコレクタは、発振器11に接続され、図示しない発振器11のコンデンサに電流を供給する。
【0033】
周波数補正検出コンパレータCP3〜CP5の基準電圧V1〜V3、周波数補正回路10の抵抗R11〜R13が発振器11の低減されたスイッチング周波数の周波数補正率を変化させる。
【0034】
また、実施例1のスイッチング電源装置は、ピーク負荷での高周波制御を行うことにより重負荷時での効率を改善している。ここで、ピーク負荷とは、ベース負荷(連続してかかる変動の少ない負荷)よりも大きく、一定時間連続してかかる負荷である。
【0035】
次に、このように構成された実施例1のスイッチング電源装置の動作を説明する。
【0036】
実施例1のスイッチング電源装置において、軽負荷モード時に、周波数補正検出コンパレータCP3〜CP5及び周波数補正回路10は、フィードバック電圧FB(コンデンサC2の電圧)の値に応じて、トランスTが飽和しない近似線で周波数補正率を変化させることにより、発振器11のスイッチング周波数を補正する。
【0037】
以下、周波数補正検出コンパレータCP3〜CP5及び周波数補正回路10の動作を説明する。
【0038】
まず、図3に示す負荷率が負荷率40%〜50%未満の範囲では、フィードバック電圧FB、即ち、コンデンサC2の電圧が基準電圧V1を超えないので、周波数補正検出コンパレータCP3〜CP5の出力はHレベルとなり、周波数補正回路10に対して何ら働きかけをしない。周波数補正回路10のオペアンプOP1は、非反転端子の電圧(コンデンサC2電圧)と同等電圧が反転端子に生じる様にトランジスタTr3に極小の電流を流す。このため、トランジスタTr3に流れる極小の電流はトランジスタTr1を介してトランジスタTr2に流れ、発振器11のコンデンサを充電する。ここで、発振器11のコンデンサに流れる電流は極小であるため、発振周波数は、低周波となる。
【0039】
次に、図3に示す負荷率が負荷率40%〜50%の範囲L1では、フィードバック電圧FB、即ち、コンデンサC2の電圧が基準電圧V1(2V)を超えるので、周波数補正検出コンパレータCP3の出力はLレベルとなり、ダイオードD2を介して周波数補正回路10から電流を引き込む。このため、周波数補正検出コンパレータCP3の出力が接地されたことになる。すると、抵抗R10に抵抗R11が並列接続されることになる。
【0040】
ここで、フィードバック電圧FBは、基準電圧V1(2V)より少し高い電圧、例えば2.1Vが印加されており、オペアンプOP1の反転端子にも同等の電圧が印加されなければならない。このため、オペアンプOP1は、フィードバック電圧FBと例えば2.1Vとの誤差電圧を増幅してトランジスタTr3のベースに印加する。このため、トランジスタTr3に抵抗R10に流れる電流に加え抵抗R11に流れる増加した分の電流が流れるので、トランジスタTr1を介してトランジスタTr2には抵抗R10と抵抗R11の小さい電流が発振器11のコンデンサに流れる。このため、発振器11のコンデンサの充放電によりスイッチング周波数は、周波数補正率FA1で変化する。
【0041】
次に、荷率が負荷率80%〜90%の範囲L2では、フィードバック電圧FB、即ち、コンデンサC2の電圧が基準電圧V1,V2を超えるので、周波数補正検出コンパレータCP3,CP4の出力はLレベルとなり、ダイオードD2,D3を介して周波数補正回路10から電流を引き込む。このため、周波数補正検出コンパレータCP3,CP4の出力が接地されたことなる。すると、抵抗R10と、抵抗R11と抵抗R12との合成抵抗となり、オペアンプOP1の反転端子に接続される。このため、オペアンプOP1は、フィードバック電圧FBが例えば3.1VとオペアンプOP1の反転端子電圧との誤差電圧を増幅してトランジスタTr3のベースに印加する。このため、トランジスタTr3に中位の電流が流れるので、トランジスタTr1を介してトランジスタTr2に流れる中位の電流が発振器11のコンデンサに流れる。このため、発振器11のコンデンサの充放電によりスイッチング周波数は、周波数補正率FA1よりも傾きの大きい周波数補正率FA2で変化する。
【0042】
次に、荷率が負荷率90%〜100%の範囲L3では、フィードバック電圧FB、即ち、コンデンサC2の電圧が基準電圧V1,V2,V3を超えるので、周波数補正検出コンパレータCP3,CP4,CP5の出力はLレベルとなり、ダイオードD2,D3,D4を介して周波数補正回路10から電流を引き込む。このため、周波数補正検出コンパレータCP3,CP4,CP5の出力が接地されたことなる。すると、抵抗R10と、抵抗R11と抵抗R12と抵抗R13の合成抵抗となり、オペアンプOP1の反転端子に接続される。このため、オペアンプOP1は、フィードバック電圧FBと例えば4.1Vとの誤差電圧を増幅してトランジスタTr3のベースに印加する。このため、トランジスタTr3に抵抗R10〜R12の合成抵抗に流れる電流分の大きい電流が流れるので、トランジスタTr1を介してトランジスタTr2に流れる大きい電流が発振器11のコンデンサに流れる。このため、発振器11のコンデンサの充放電によりスイッチング周波数は、周波数補正率FA2よりも傾きの大きい周波数補正率FA3で変化する。
【0043】
このように実施例1のスイッチング電源装置によれば、周波数補正回路10及び周波数補正検出コンパレータCP3〜CP5は、フィードバック信号の値に応じて、トランスTが飽和しない近似線で周波数補正率を変化させることにより、発振器11のスイッチング周波数を補正するので、スイッチング周波数をさらに高周波化でき、これによって、トランスTの小型化及び重負荷時の高効率化を図ることができるスイッチング電源装置を提供することができる。
【0044】
また、周波数補正検出コンパレータCP3〜CP5及び周波数補正回路10を用いることにより、図6(a)に示す従来の軽負荷モードの直線状のスイッチング周波数ラインに対して、図3(a)に示すように、周波数補正率を変化させることにより、スイッチング周波数をさらに低減させている。即ち、中間負荷での周波数を低くするので、スイッチングロスを低減でき、高効率化を図ることができる。
【0045】
また、実施例1のスイッチング電源装置は、ピーク負荷での高周波制御を行うことによりスイッチング電流の最大値を抑制し重負荷時での効率を改善することができる。図4は、本発明の実施例1に係るスイッチング電源装置の通常制御で高周波制御した場合の出力電力と効率との関係を示す図である。図4(a)は、交流電圧が100V、図4(b)は、交流電圧が230Vにおけるスイッチング周波数fが65kHz、160kHz、160kHz(ピーク負荷対応)の出力電力に対する効率を示している。
【0046】
図4(a)に示す交流電圧100Vでは、スイッチング周波数fを160kHz(高周波化された周波数)にした場合、オン抵抗ロスが軽減されることにより、効率が向上している。しかし、図4(b)に示す交流電圧230Vでは、スイッチング周波数fを160kHzにした場合、スイッチングロスが増加することにより、中間負荷時の効率が低下している。
【0047】
これに対して、スイッチング周波数fを例えば160kHzとし且つピーク負荷周波数制御(図4(a)(b)のピーク負荷対応)することで、重負荷時及び中間負荷時の交流電圧100V系,200V系の効率を改善することができる。
【0048】
図5は、本発明の実施例1に係るスイッチング電源装置の波形損失を説明するための図である。図5(a)は、交流電圧100V系時波形、図5(b)は、交流電圧230V系時波形を示している。なお、VDSはスイッチング素子Q1のドレイン−ソース間電圧、IDはスイッチング素子Q1にドレイン−ソース間に流れる電流を示している。
【0049】
図5(a)に示す交流電圧100V系時波形では、スイッチング素子Q1のオン期間における導通損失が支配的である。図5(b)に示す交流電圧230V系時波形では、スイッチング素子Q1のスイッチング損失が支配的である。
【0050】
また、実施例1のスイッチング電源装置は、発振器11に接続される周波数リミット調整端子P1を有している。この周波数リミット調整端子P1は、発振器11の上限周波数と下限周波数とを調整するための端子である。外部に設けられた周波数リミット調整端子P1から発振器11の周波数リミットである上限周波数と下限周波数とを調整することができる。
【0051】
一例として、図2に、上限周波数を設定するためのダイオードD6と基準電圧VMAX、下限周波数を設定するためのダイオードD5と基準電圧VMINの接続図を示す。例えば、基準電圧VMINを1V、基準電圧VMAXを5Vに設定することで、フィードバック電圧FBが入力されるオペアンプOP1の非反転端子電圧の下限,上限の値を制限することで、周波数のリミットを調整することができる。
【符号の説明】
【0052】
E 直流電源
Q1 スイッチング素子
D1〜D6 ダイオード
R1〜R5,R10〜R14 抵抗
C0〜C2 コンデンサ
T トランス
P 一次巻線
S 二次巻線
PC1 フォトカプラ
OR1 オア回路
CP1 OCPコンパレータ
CP2 電流センスコンパレータ
CP3〜CP5 周波数補正検出コンパレータ
OP1 オペアンプ
Tr1〜Tr3 トランジスタ
8 誤差増幅器
10 周波数補正回路
11 発振器
12 フリップフロップ回路
13 ノア回路
14 ドライブ回路
15 ヒステリシスコンパレータ
16 レギュレータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6