(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
記録媒体に画像を形成する画像形成部と,前記画像形成部での画像形成の対象である記録媒体を搬送する用紙搬送路と,装置本体側に対して開状態と閉状態とをとる開閉扉とを有し,前記開閉扉が開状態にあるときには前記用紙搬送路が外部に開放されるように構成されている画像形成装置において,
前記開閉扉に,
前記用紙搬送路の記録媒体を搬送する第1搬送ローラーと,
前記第1搬送ローラーを駆動する駆動源と,
前記駆動源および前記第1搬送ローラーとともに回転する元回転部材と,
前記元回転部材とは別軸に設けられた第1連結回転部材と,
前記元回転部材の回転を前記第1連結回転部材に伝達する軸間伝達部材と,
前記元回転部材と前記第1連結回転部材との軸間距離が増減する方向に直線移動可能であるとともに,前記第1連結回転部材を保持する移動部材とを備え,
前記開閉扉よりも装置本体側に,
前記開閉扉が閉状態であるときに前記第1連結回転部材とともに回転する状態となるとともに,前記開閉扉が開状態であるときには前記第1連結回転部材から離間しうる第2連結回転部材と,
前記第2連結回転部材から駆動力の伝達を受けるとともに,前記第1搬送ローラーとは別の位置で前記用紙搬送路の記録媒体を搬送する第2搬送ローラーと,
前記開閉扉が閉状態であるときに,前記移動部材の位置を位置決めする第1位置決め部とを備え,
前記移動部材に,前記開閉扉が閉状態であるときに,前記第1位置決め部に位置決めされる第2位置決め部を備えており,
前記第2連結回転部材は,前記開閉扉を閉状態としたときに,前記第1連結回転部材とともに前記移動部材の移動方向に直線状となる位置に設けられていることを特徴とする画像形成装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら,前記した従来の技術には,次に説明するような問題点があった。すなわち,上記の伝達ギアの配置のためのスペースを大きく取る必要がある。このため,開閉扉が厚くなりがちで,装置のスペック上の難点となっていた。また,ジャム処理時に,揺動するギアのある軸の背後に挟まっている用紙を手で引き出す場合がある。この場合に引き出し方向によっては,揺動するギアの噛み込み方向と逆向きの力が軸に加わることとなる。このためこのため歯飛びが起こってギアにダメージが加わる場合があった。
【0006】
本発明は,前記した従来の技術が有する問題点を解決するためになされたものである。すなわちその課題とするところは,開閉扉と装置本体側との間での駆動伝達を行う構成の画像形成装置であって,当該駆動伝達部分をコンパクト化し,ジャム処理時の歯飛びの発生の可能性を低くした画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様における画像形成装置は,記録媒体に画像を形成する画像形成部と,画像形成部での画像形成の対象である記録媒体を搬送する用紙搬送路と,装置本体側に対して開状態と閉状態とをとる開閉扉とを有し,開閉扉が開状態にあるときには用紙搬送路が外部に開放されるように構成されていることを前提とするものである。ここで,開閉扉に,用紙搬送路の記録媒体を搬送する第1搬送ローラーと,第1搬送ローラーを駆動する駆動源と,駆動源および第1搬送ローラーとともに回転する元回転部材と,元回転部材とは別軸に設けられた第1連結回転部材と,元回転部材の回転を第1連結回転部材に伝達する軸間伝達部材と,元回転部材と第1連結回転部材との軸間距離が増減する方向に
直線移動可能であるとともに,第1連結回転部材を保持する移動部材とを備えている。また,開閉扉よりも装置本体側に,開閉扉が閉状態であるときに第1連結回転部材とともに回転する状態となるとともに,開閉扉が開状態であるときには第1連結回転部材から離間しうる第2連結回転部材と,第2連結回転部材から駆動力の伝達を受けるとともに,第1搬送ローラーとは別の位置で用紙搬送路の記録媒体を搬送する第2搬送ローラーと,開閉扉が閉状態であるときに,移動部材の位置を位置決めする第1位置決め部とを備えている。さらに,移動部材に,開閉扉が閉状態であるときに,第1位置決め部に位置決めされる第2位置決め部を備えて
おり,第2連結回転部材は,開閉扉を閉状態としたときに,第1連結回転部材とともに移動部材の移動方向に直線状となる位置に設けられている。
【0008】
上記態様における画像形成装置では,用紙搬送路での記録媒体の搬送を,少なくとも,第1搬送ローラーの箇所と第2搬送ローラーの箇所との2箇所で行っている。そして,これらの搬送ローラーの駆動源が,装置本体側に対して開閉可能な開閉扉に搭載されている。また,第1搬送ローラーが開閉扉に搭載される一方で,第2搬送ローラーは装置本体側に搭載されている。開閉扉においては,駆動源から第1搬送ローラーおよび元回転部材へと回転駆動が常時伝達される状態となっている。また,開閉扉には,第1連結回転部材が移動部材を介して搭載されており,元回転部材から第1連結回転部材へ,軸間伝達部材により回転が伝達されるようになっている。移動部材の
直線移動
の方向は,元回転部材と第1連結回転部材との軸間距離が増減する方向であるため,この移動は,開閉扉を厚く構成しなくても実現できる。
【0009】
装置本体側では,第2連結回転部材が開閉扉側の第1連結回転部材から駆動を受け,この第2連結回転部材の回転により第2搬送ローラーが駆動されるようになっている。そして,開閉扉を開状態から閉状態にすることで,第1連結回転部材と第2連結回転部材とがともに回転する状態となり,駆動源の回転が第1搬送ローラーと第2搬送ローラーとのいずれにも伝達される状態となる。同時に,第1位置決め部と第2位置決め部とにより,装置本体側に対する移動板の位置が位置決めされる。これにより,各構成部品の寸法精度,組付け精度に関わらず,第1連結回転部材と第2連結回転部材との位置関係が適切なものとなる。この状態で,用紙搬送路における,画像形成のための記録媒体の搬送が行われる。一方,開閉扉を開状態としたときには,用紙搬送路が外部に開放されるので,ジャム処理その他の作業が可能である。
【0010】
上記態様の画像形成装置においては,開閉扉を閉状態としたときの第2連結回転部材の位置が,移動部材の移動による第1連結回転部材の移動経路の先方の位置であることが望ましい。この配置であると,第1連結回転部材の回転による反力が,移動部材を押し戻す方向に作用することがない。このため,ギア抜けおよびそれに伴う歯飛びが起こりにくい。
【0011】
上記態様の画像形成装置においてはさらに,用紙搬送路として,画像形成部による第1面への画像形成に供される記録媒体を画像形成部へ向けて搬送する第1面搬送路と,第1面搬送路より外側に位置し,画像形成部により第1面への画像形成がなされた記録媒体を,第2面への画像形成のために画像形成部の入り側へ搬送する反転搬送路とを有し,開閉扉は,開状態とされることにより反転搬送路を外部に開放するように構成されていることが望ましい。さらに,装置本体と開閉扉との間に中間扉が設けられるとともに,中間扉は,第1面搬送路と反転搬送路との間に位置し,開閉扉が開状態にあるときに限り開閉可能であり,開状態にあるときには用紙搬送路が外部に開放されるように構成されていることが望ましい。この中間扉は,開閉扉に対して結合状態と分離状態とをとり,開閉扉が閉状態にあるときには必ず結合状態にあり,開閉扉が開状態にあるときには結合状態と分離状態とのいずれも取ることが可能なものである。この構成では,第1搬送ローラーおよび第2搬送ローラーは,反転搬送路の記録媒体を搬送するものであり,第2連結回転部材および第2搬送ローラーおよび第1位置決め部は,中間扉に設けられており,第1連結回転部材および第2連結回転部材は,開閉扉と中間扉とが結合状態にあるときにともに回転する状態となるとともに,分離状態にあるときには離間するように配置されており,第1位置決め部および第2位置決め部は,開閉扉と中間扉とが結合状態にあるときに位置決め状態となるように構成されている。
【0012】
つまり本発明は,両面画像形成の第2面目のための反転搬送路を備える構成の画像形成装置にも適用可能なのである。さらにこの場合には,開閉扉の内側に中間扉があり,第2連結回転部材および第2搬送ローラーおよび第1位置決め部は,中間扉に設けられることとなる。中間扉は,装置本体に対して開閉可能なものではあるが,最外の開閉扉に比べれば装置本体側に位置する。
【0013】
中間扉を有する態様の場合,開閉扉と中間扉とが,結合状態で一体として開閉可能なように構成されているものであってもよい。また,開閉扉は,支持軸回りの煽り移動により装置本体に対して開閉するものであり,移動部材の移動方向が,開閉扉の支持軸と平行であることが好ましい。中間扉を有する場合には中間扉も開閉扉と共通の支持軸回りの煽り移動により装置本体に対して開閉するものであることが好ましい。移動部材の移動方向が支持軸と平行であることにより,移動部材の移動のための構成を,開閉扉の厚さ方向の寸法に対してコンパクトにできる。また,第1位置決め部と第2位置決め部との位置関係が,開閉動作には左右されないので,扉を閉じる動作がスムーズである。また,移動部材の移動方向を,用紙搬送路における,開閉扉が開状態とされることにより開放される部位での記録媒体の搬送方向に沿う方向とすることも,開閉扉の厚さ方向のコンパクト化のために有益である。
【0014】
また,本態様の画像形成装置では,軸間伝達部材の典型例は,ベルトやチェーンといった,循環移動する環状の部材である。この場合,開閉扉に,軸間伝達部材に張力を掛けるテンション部材を備えていることが望ましい。テンション部材は,軸間伝達部材に押し当てられるテンションコロと,テンションコロを軸間伝達部材に押し当てる弾性部材と,テンションコロを保持するコロ保持部材とにより構成されている。このコロ保持部材は,元回転部材の回転軸回りに揺動可能に設けられることが望ましい。これにより,張力印加のための複雑な構成なく,環状部材である軸間伝達部材を使用でき,装置構成の簡素化に貢献する。その場合に,元回転部材を第1搬送ローラーと同軸に設けることで,装置構成を寄り簡素化できる。
【0015】
本態様の画像形成装置ではまた,移動部材に,軸間伝達部材から駆動力を受ける被駆動回転部材が設けられており,被駆動回転部材と第1連結回転部材とは,それらの回転軸の回転方向が互いに逆向きとなるように常時結合されて
おり,被駆動回転部材は,開閉扉を閉状態としたときに,第1連結回転部材および第2連結回転部材とともに移動部材の移動方向に直線状に並ぶ位置に設けられている構成であることが望ましい。このようにすることで,第1搬送ローラーと第2搬送ローラーとの回転方向が揃うので,記録媒体の搬送のための駆動伝達系全体の設計が容易である。
【0016】
本態様の画像形成装置においてはさらに,第1位置決め部と第2位置決め部とのうち一方が凸部であるとともに,第1位置決め部と第2位置決め部とのうち他方は,開閉扉が閉状態であるときに凸部を収容するとともに,開閉扉を開状態とするときに凸部が向かう方向が開口した凹部であり,凹部の入り口には,開閉扉を閉状態とするときに凸部をガイドするスロープ形状部が形成されていることが望ましい。かかる構成であると,開閉扉を閉じる際に,スロープ形状部のガイドにより,第1位置決め部と第2位置決め部とが自然に位置決め状態となる。
【0017】
本発明の別の態様に係る画像形成装置は,記録媒体に画像を形成する画像形成部と,画像形成部での画像形成の対象である記録媒体を搬送する用紙搬送路と,装置本体側に対して開状態と閉状態とをとる開閉扉とを有し,開閉扉が開状態にあるときには用紙搬送路が外部に開放されるように構成されているものであって,開閉扉に,用紙搬送路の記録媒体を搬送する第1搬送ローラーと,第1搬送ローラーを駆動する駆動源と,駆動源の駆動力により駆動される第1連結回転部材とを備え,開閉扉よりも装置本体側に,開閉扉が閉状態であるときに第1連結回転部材とともに回転する状態となるとともに,開閉扉が開状態であるときには第1連結回転部材から離間しうる第2連結回転部材と,第1搬送ローラーとは別の位置で用紙搬送路の記録媒体を搬送する第2搬送ローラーと,第2連結回転部材の回転を第2搬送ローラーに伝達する軸間伝達部材と,
開閉扉の回転動作の軸の方向に
直線移動可能であるとともに,第2連結回転部材を保持する移動部材とを備え,開閉扉に,開閉扉が閉状態であるときに,移動部材の位置を位置決めする第1位置決め部を備え,移動部材に,開閉扉が閉状態であるときに,第1位置決め部に位置決めされる第2位置決め部を備えて
おり,第2連結回転部材は,開閉扉を閉状態としたときに,第1連結回転部材とともに前記移動部材の移動方向に直線状となる位置に設けられているものである。すなわち,移動板による位置決め機構は,装置本体側に設けられていてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本構成によれば,開閉扉と装置本体側との間での駆動伝達を行う構成の画像形成装置であって,当該駆動伝達部分をコンパクト化し,ジャム処理時の歯飛びの発生の可能性を低くした画像形成装置が提供されている。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下,本発明を具体化した実施の形態について,添付図面を参照しつつ詳細に説明する。本形態は,
図1に示す画像形成装置1に本発明を適用したものである。
図1の画像形成装置1は,スキャナ部10と,表示・入力部11と,主要部20と,給紙部12とを有している。スキャナ部10は,原稿の画像を読み取って画像データを取得する部分である。表示・入力部11は,ユーザーへの種々の情報表示およびユーザーによる画像形成装置への指示の入力を行う部分である。主要部20は,内部に後述する画像形成部等を内蔵しており,画像形成を実行する部分である。給紙部12は,画像形成に供する記録媒体である印刷用紙を貯蔵して1枚ずつ送出する部分である。
【0021】
図1の画像形成装置1の主要部20における正面から見て右側の側面には,開閉可能な開閉扉21が設けられている。むろん,
図1中の開閉扉21は閉状態にある。
図2に,開閉扉21を開いた状態を示す。開閉扉21の開閉動作は,画像形成装置1の右側面奥側の縦方向の軸(後述する回転軸50)回りの回転移動である。
図3に示すように,開閉扉21の内側には,中間扉22が設けられている。中間扉22は,開閉扉21に比べれば画像形成装置1の本体側に位置する部材である。中間扉22の開閉動作も開閉扉21の場合と同じく,画像形成装置1の右側面奥側の縦方向の軸回りの回転移動である。
【0022】
開閉扉21と中間扉22とは,結合して一体となった結合状態(
図2)と,分離した分離状態(
図3)とを取ることができる。結合状態は,開閉扉21を中間扉22に対して閉じた状態と言える。一方,分離状態は,開閉扉21を中間扉22に対して開いた状態と言える。
図1に示した開閉扉21の閉状態では,中間扉22も閉状態にあり,開閉扉21と中間扉22とは必ず結合状態にある。開閉扉21のみを開状態として中間扉22を閉状態とした状態を
図4に示す。
【0023】
画像形成装置1の
図1中のA−A位置の断面図を
図5に示す。
図5に示されるように,画像形成装置1の主要部20には,画像形成のための感光体ドラム38や露光器39が内蔵されている。また,印刷用紙をその第1面への画像形成のために搬送する第1面搬送路23や,第1面への画像形成が済んだ印刷用紙を第2面への画像形成のために送り返す反転搬送路24が設けられている。主要部20の内部のさらなる詳細事項については後述する。給紙部12には,印刷用紙を貯蔵する用紙カセット13が設けられている。画像形成の際には,いずれか一方の用紙カセット13から,印刷用紙が1枚ずつ第1面搬送路23へ送出されるようになっている。また,主要部20の上面は,印刷済みの印刷用紙が積載される排紙トレイ14となっている。
【0024】
これにより,給紙部12から供給されて第1面搬送路23を搬送される印刷用紙に,主要部20で画像形成が施された上で排紙トレイ14に排出されるようになっている。また,両面印刷の場合には,印刷用紙の第1面への画像形成が済んだ印刷用紙が,反転搬送路24を経て感光体ドラム38の上流側に送り返されるようになっている。送り返された印刷用紙は,表裏が入れ替えられた上で再び画像形成に供され,最終的には排紙トレイ14に排出される。上記より,画像形成装置1における印刷用紙の搬送方向は,第1面搬送路23においては上下方向上向きである。反転搬送路24の大部分においては上下方向下向きである。
【0025】
図5における感光体ドラム38の周辺部分を拡大して
図6に示す。
図6に示されるように,感光体ドラム38の周囲には,帯電器25,現像器26,転写ローラー27,クリーナー28が配置されている。また,露光器39からのレーザ光が,感光体ドラム38の表面における帯電器25と現像器26との間の位置に照射されるようになっている。これにより感光体ドラム38の表面に,画像データに基づくトナー像を形成し,そのトナー像を,第1面搬送路23を搬送される印刷用紙の
図6中左側の面に転写するようになっている。第1面搬送路23における感光体ドラム38および転写ローラー27の上流側には,レジストローラー29が配置されている。レジストローラー29は,印刷用紙の感光体ドラム38へ向けての送出タイミングと,露光器39による描画タイミングとを合わせるものである。
【0026】
第1面搬送路23における感光体ドラム38および転写ローラー27の下流側には,定着器30が配置されている。定着器30は,印刷用紙上のトナー像を熱で定着させるものである。定着器30のさらに下流側には,排紙ローラー31が設けられている。排紙ローラー31のさらに下流側に前述の排紙トレイ14が位置する。排紙ローラー31より
図6中で上方に,反転ローラー32が設けられている。反転ローラー32も,定着器30から見て下流側に位置する。そこで,定着器30のすぐ下流側には,印刷用紙の行き先を排紙ローラー31と反転ローラー32とのいずれにするかを切り替える切り替え爪33が設けられている。
図6に実線で示す切り替え爪33は,行き先が排紙ローラー31とされている状態である。破線で示される切り替え爪33は,行き先が反転ローラー32とされている状態である。
【0027】
反転ローラー32は,両面印刷のうちの第1面の印刷が済んだ印刷用紙を一時的に保持するローラーである。反転ローラー32は,第2面の印刷に供される印刷用紙の進行方向の後端付近を保持する状態となった後,それまでとは逆向きにその印刷用紙を搬送するようになっている。これにより当該印刷用紙は,反転搬送路24へ進入する。反転搬送路24には,搬送ローラー34,35,36が配置されている。搬送ローラー36より下流側の反転搬送路24は,印刷用紙をUターンさせてレジストローラー29の入り側へ送り込むように構成されている。これにより当該印刷用紙が,第1面搬送路23に合流し,1回目の画像形成を受けた面の裏面を感光体ドラム38側に向けて進行するようにされている。また,反転搬送路24における印刷用紙の搬送の駆動源である反転駆動モーター37が設けられている。
【0028】
上記の構成において反転搬送路24は,第1面搬送路23よりも
図6中で右側に位置している。つまり反転搬送路24は第1面搬送路23よりも,より装置の外側寄りに位置している。
図6中,「21」の破線で囲んで示した範囲内のものは,前述の開閉扉21に載っている。また,「22」の破線で囲んで示した範囲内のものは,前述の中間扉22に載っている。よって中間扉22は,第1面搬送路23と反転搬送路24との間に位置している。これにより,開閉扉21を開状態とすると(
図2または
図3または
図4),反転搬送路24が少なくとも部分的に開放されるようになっている。特に,開閉扉21と中間扉22とを分離状態(
図3または
図4)にすると,反転搬送路24の大部分が開放される。さらに,中間扉22を開状態(
図2または
図3)にすると,第1面搬送路23のうちレジストローラー29から定着器30の手前までの部分が開放される。
【0029】
このように開閉扉21や中間扉22を開状態とするのは,印刷用紙のジャムが発生した場合に当該印刷用紙を取り除くためである。ユーザーは,ジャムが発生した箇所に応じて,画像形成装置1を
図2,
図3,
図4のうちいずれか適切な状態としてジャム処理作業を行う。また,後述する駆動伝達系における何らかの消耗部品の交換作業のために開閉扉21や中間扉22を開状態とすることもある。
【0030】
図6に示されるように,反転搬送路24での印刷用紙の搬送に関わる部材のうち,反転駆動モーター37および搬送ローラー34は開閉扉21に載っており,搬送ローラー35,36は中間扉22に載っている。一方で開閉扉21と中間扉22とは前述のように分離可能である。そこで,反転駆動モーター37による搬送ローラー34,35,36の駆動伝達系について説明する。
【0031】
図7および
図8にこの駆動伝達系を,開閉扉21と中間扉22との結合状態にて示す。
図7ではこの駆動伝達系を,画像形成装置1の正面から見る正面視の方向(つまり
図6と同じ視線)で示している。
図8ではこの駆動伝達系を,画像形成装置1の右側面から見る側面視の方向で示している。
図8中に矢印24で示す水平方向の範囲が,反転搬送路24を搬送される印刷用紙の最大幅である。
図8中の右側が
図1の画像形成装置1の奥行き方向奥側で,左側が奥行き方向手前側である。
【0032】
図7および
図8に示されるように開閉扉21には,反転駆動モーター37,搬送ローラー34の他にさらに,駆動プーリー40,被駆動プーリー41,中間ギア48,第1連結ギア42が設けられている。駆動プーリー40と被駆動プーリー41との間には,循環移動する環状の伝達ベルト43が掛け渡されている。駆動プーリー40は,搬送ローラー34における反転搬送路24の外側の方のローラーと同軸である。これらは一体的に回転するものである。また,被駆動プーリー41と中間ギア48とは同軸である。これらは一体的に回転するものである。中間ギア48と第1連結ギア42とは噛み合っている。これら2つのギアは常時噛み合いの関係にあり,分解しない限り噛み合いが解除されることはない。また,
図8に示されるように,反転駆動モーター37,駆動プーリー40,被駆動プーリー41,中間ギア48,第1連結ギア42,伝達ベルト43はいずれも,反転搬送路24の範囲よりも画像形成装置1の奥行き方向奥側に配置されている。
【0033】
中間扉22には,搬送ローラー35,36の他にさらに,第2連結ギア44,駆動プーリー45,被駆動プーリー46が設けられている。駆動プーリー45と被駆動プーリー46との間には,伝達ベルト47が掛け渡されている。第2連結ギア44および駆動プーリー45は,搬送ローラー35における反転搬送路24の外側の方のローラーと同軸である。これらは一体的に回転するものである。被駆動プーリー46は,搬送ローラー36における反転搬送路24の外側の方のローラーと同軸である。これらは一体的に回転するものである。また,
図8に示されるように,第2連結ギア44は反転搬送路24の範囲よりも奥側にあるが,駆動プーリー45,被駆動プーリー46,伝達ベルト47は反転搬送路24の範囲よりも手前側にある。
【0034】
図7および
図8では,開閉扉21の第1連結ギア42と中間扉22の第2連結ギア44とが噛み合っている。これにより,反転駆動モーター37の回転駆動力が次のように伝達されることとなる。
駆動プーリー40および搬送ローラー34
↓(伝達ベルト43による正回転伝達)
被駆動プーリー41および中間ギア48
↓(ギアの噛み合いによる逆回転伝達)
第1連結ギア42
↓(ギアの噛み合いによる逆回転伝達)
第2連結ギア44および搬送ローラー35および駆動プーリー45
↓(伝達ベルト47による正回転伝達)
被駆動プーリー46および搬送ローラー36
【0035】
こうして,搬送ローラー34,35,36のそれぞれのうち反転搬送路24の外側の方の各ローラーがいずれも同じ向きに回転し,印刷用紙を搬送するのである。なお,搬送ローラー34,35,36のそれぞれのうち反転搬送路24の内側の方の各ローラーは従動回転する。
【0036】
上記の駆動伝達系において,開閉扉21と中間扉22とを分離状態とすると,第1連結ギア42と第2連結ギア44との噛み合いが解除される。開閉扉21と中間扉22とを再び結合状態とすると,第1連結ギア42と第2連結ギア44とは再び噛み合い状態となる。以下,この第1連結ギア42と第2連結ギア44とを適切に噛み合わせるための機構を説明する。
【0037】
そのためまず,
図2中に破線の円Bで囲んで示す範囲内の拡大図を,
図9に示す。
図9に示すように,画像形成装置1の本体49の右側面の奥側には,縦方向の回転軸50が設けられている。開閉扉21および中間扉22はいずれも,この回転軸50を中心とする煽り移動により開閉するものである。
【0038】
図9に示すように開閉扉21には,移動板51が設けられている。開閉扉21における移動板51が設けられている位置は,開閉扉21のうち,
図9中で左端付近の位置である。この位置は,開閉扉21を閉状態(
図1)としたときには画像形成装置1の奥側となる位置である。移動板51は開閉扉21に,段ねじ52により取り付けられている。移動板51における段ねじ52が貫通する位置の穴は,縦方向の長穴53となっている。これにより移動板51は,開閉扉21上で上下方向にはある程度可動であるが左右方向には移動できないようになっている。つまり移動板51は,回転軸50の軸方向と平行な方向に直線移動するものである。また,移動板51の移動方向は,画像形成装置1の側方から見ると,反転搬送路24での印刷用紙の搬送方向とも平行である。
【0039】
図9中にはこの他,前述の中間ギア48,第1連結ギア42,第2連結ギア44が見えている。中間ギア48および第1連結ギア42は移動板51に載っている。このため中間ギア48および第1連結ギア42も,移動板51とともに一体的に上下方向にある程度移動可能である。また,
図9では開閉扉21と中間扉22とが結合状態にあるため,第1連結ギア42と第2連結ギア44とが噛み合っている。
【0040】
図9中に示される結合状態での開閉扉21および中間扉22を,
図9中の矢印P1の目線で見た斜視図を
図10に示す。ただし
図10には,
図9よりも上方にやや広い範囲が示されている。
図10に示されるように,移動板51には,凸状のピン部54が固定して形成されている。また,中間扉22には凹形状部55が設けられている。凹形状部55は中間扉22に対して固定されている。また,
図10の結合状態では,ピン部54が凹形状部55に填っている。この填り込みにより,上下移動可能な移動板51が上下方向に位置決めされている。これにより,第1連結ギア42と第2連結ギア44との適切な噛み合わせ状態が得られている。
【0041】
また,開閉扉21における移動板51よりも上方の位置には,固定板56が設けられている。固定板56は,開閉扉21に対して固定されている。前述の駆動プーリー40は,固定板56に設けられている。固定板56にはさらに,モータープーリー57が設けられている。前述の反転駆動モーター37は,モータープーリー57のある位置における固定板56の背後に存在する。また,モータープーリー57から駆動プーリー40へ駆動力を伝達する伝達ベルト58が設けられている。
【0042】
図10中で固定板56上に見える範囲内にはさらに,テンションコロ59と,引きバネ60とが存在する。これらについて説明する。まずテンションコロ59について,
図11により説明する。
図11は,
図10中の駆動プーリー40およびその周辺をさらに拡大して,
図10中の矢印P2の目線で見た斜視図である。
図11に示すようにテンションコロ59は,テンション板61に取り付けられている。テンション板61は,駆動プーリー40と固定板56との間に,駆動プーリー40の回転軸(すなわち搬送ローラー34の回転軸)を中心に回転可能に取り付けられている。これによりテンションコロ59の位置は,
図10中に矢印P3で示されるように駆動プーリー40の回転軸に対して等距離を保ちつつ移動可能である。また,テンションコロ59は
図10中で,伝達ベルト43の外側に位置している。
【0043】
また,引きバネ60は,一端がテンション板61に,他端が固定板56に,それぞれ掛けられており,テンション板61を
図10中で時計回りの向きに付勢している。これによりテンションコロ59は,伝達ベルト43に対して外面側から押し付けられた状態になっている。これにより伝達ベルト43にテンションが掛けられている。テンションコロ59自体は,このように伝達ベルト43に押し付けられた状態にて,伝達ベルト43の循環移動に従動して回転するものである。この伝達ベルト43のテンションにより,移動板51は
図10中で上向きに引っ張られている。ただし
図10中での移動板51は前述のように,ピン部54と凹形状部55との係合により位置決めされている。
【0044】
開閉扉21と中間扉22とを分離状態(
図3または
図4)とすると,
図12(
図10と対比されたい)に示すように,第1連結ギア42と第2連結ギア44とが離れる。また,ピン部54と凹形状部55との係合が解除される。したがって
図12の状態では,
図10と比較して,移動板51が少し上昇している。伝達ベルト43のテンションのためである。また,
図12中のテンションコロ59の位置は,
図10中のテンションコロ59の位置と比較して,わずかに時計回りに移動した位置である。引きバネ60の引っ張り力のためである。なお,中間扉22における第2連結ギア44の位置は,第1連結ギア42の進退移動(移動板51の移動による移動)の先方の位置である。また,移動板51の移動により,駆動プーリー40と中間ギア48との軸間距離は若干増減する。
【0045】
なお,伝達ベルト43におけるテンションコロ59による押圧を受ける位置は,駆動プーリー40と被駆動プーリー41との中央付近ではなく,駆動プーリー40に近い位置である。より詳細には,駆動プーリー40の中心とテンションコロ59の中心との間の距離は,駆動プーリー40と被駆動プーリー41との最大の軸間距離の3分の1以下である。このため,テンションコロ59により,伝達ベルト43に有効にテンションが掛かる。もし,テンションコロ59が駆動プーリー40と被駆動プーリー41との中央付近にあると,あまりテンションが掛からないのである。
【0046】
続いて,開閉扉21と中間扉22とを分離状態から結合状態にするときにおける上記の各部材の動きについて,
図13により説明する。
図13は,
図10に示した固定板56,移動板51,およびそれらに載っているものを,中間扉22の一部である凹形状部55および第2連結ギア44とともに示している。
図13での固定板56および移動板51に対する視線方向は,
図1に示した全閉状態の画像形成装置1においては背面側から透視して見る視線方向に相当する。なお
図13に示されるように,凹形状部55の入り口にはスロープ形状部62が設けられている。このため凹形状部55の開口幅が,凹形状部55の奥の方における開口幅と比較して広げられている。
【0047】
図13には,開閉扉21と中間扉22とが分離状態にあるときの配置(a),結合状態にあるときの配置(c),それらの中間での配置(b)の3通りの配置が示されている。これらの配置において,固定板56の位置は不変である。移動板51は,上下方向にのみ少し移動可能で,左右方向には移動不可である。中間扉22および凹形状部55は,左右方向にのみ移動可能で,上下方向には移動不可である。この中間扉22の
図13中での左右移動は,開閉扉21を基準としたときの中間扉22の開閉移動による移動である。
【0048】
図13の配置(a)で示される分離状態では,ピン部54と凹形状部55とが係合していない。このため移動板51は,伝達ベルト43のテンションにより上向きに引っ張られつつ,その上下方向位置が位置決めされていない状態にある。この状態での第1連結ギア42と第2連結ギア44との上下方向における位置関係は,個体のばらつきにより様々である。開閉扉21や中間扉22を構成する部品の寸法公差の範囲内でのばらつきや組付け精度による。
【0049】
この状態から結合状態へ向けて開閉扉21と中間扉22とを接近させていくと,
図13中では中間扉22が矢印P4に示されるように水平方向左向きに移動していくこととなる。この移動により,ピン部54と凹形状部55とが接近していく。そして,この移動の途中で
図13の配置(b)となる。配置(b)の状態は,ピン部54とスロープ形状部62とが接触した状態である。配置(b)における移動板51の位置は,配置(a)における位置と同じである。
【0050】
配置(b)の状態からさらに開閉扉21と中間扉22とを接近させると,
図13中でも中間扉22が矢印P4の向きにさらに移動して,配置(c)の状態となる。この,配置(b)から配置(c)への動きの際に,移動板51は上下方向(矢印P5,図示の例では下向き)に少し動く。ピン部54と凹形状部55との係合のためである。これにより,配置(c)の結合状態では,部品の寸法精度や組付け精度によるばらつきに関わらず,第1連結ギア42と第2連結ギア44との適切な噛み合わせ状態が得られている。
【0051】
なお,配置(b)から配置(c)にする際には,前述のように移動板51が上下方向に移動する。この移動は,伝達ベルト43のテンションを増減させる方向の移動である。ただし実際には前述のように,テンションコロ59の作用により,実際に伝達ベルト43に掛かるテンションはそれほど変わらない。また,配置(b)から配置(c)にする際には,引きバネ60の引っ張り力に抗する分,若干の操作力を要する。
【0052】
このように,開閉扉21側の第1連結ギア42(移動板51)を上下移動可能な構成としつつ,結合状態では中間扉22側のピン部54により第1連結ギア42が上下方向に位置決めされるようになっている。これにより,個体差に関わらず第1連結ギア42と第2連結ギア44とを適切な噛み合わせ状態にして画像形成を実行できるようになっている。また,凹形状部55の入り口にスロープ形状部62を設けることで,配置(b)から配置(c)への動きの際における,ピン部54(移動板51)が凹形状部55に填る動きがガイドされるようになっている。
【0053】
また,上記の構成では,開閉扉21や中間扉22の回転軸50と,移動板51の移動方向とが平行である。このため,ピン部54と凹形状部55との位置関係は,開閉扉21や中間扉22の開度に影響されない。このため,開閉扉21や中間扉22がいかなる開度にあっても同様の操作感でスムーズに,開閉扉21と中間扉22との結合動作や分離動作(開閉動作)を行うことができる。また,テンションコロ59を支持するテンション板61を,駆動プーリー40の回転軸の軸回りに回転可能に設けている。このため,テンションコロ59を移動可能に支持するための段ねじやスライドレールその他の専用の構成が不要で,比較的簡素な構成で済んでいる。
【0054】
さらに,移動板51の移動方向(上下方向)が,その場所での反転搬送路24の搬送方向(上下方向下向き)に沿う方向である。このため,開閉扉21の厚さ方向の寸法がコンパクトである。また,ジャム処理の際の歯飛びのリスクが小さい。以下,これらのことについて説明する。
【0055】
まず,開閉扉21の厚さ方向のコンパクト性への貢献について説明する。この効果は,移動板51の移動方向が上下方向の直線移動であるとともに,中間ギア48と第1連結ギア42とがいずれも移動板51に載っていることによる。この構成であることにより,中間ギア48および第1連結ギア42が,結合状態において第2連結ギア44が配置される位置に対して,直線的に進退移動することになる。このため
図14に示すように,結合状態では3つのギア48,42,44がほぼ縦一直線に並んだ配置となる。これにより,この中で開閉扉21上の構成物である中間ギア48および第1連結ギア42が
図14中の水平方向に占める幅Cが,ほぼギアの直径1つ分で済んでいるのである。
図14中の水平方向とは開閉扉21の厚さ方向である。このため本形態では開閉扉21はその厚さ方向にコンパクトなのである。
【0056】
もし,第1連結ギア42が中間ギア48を中心に揺動移動する揺動方式であると,上記のようにはならない。第1連結ギア42の移動は,第2連結ギア44の結合状態での位置に対する進退成分を持つ必要があるからである。揺動方式でこのことを実現するためには,
図15の比較例に示すように,第1連結ギア42と中間ギア48との配置を,縦並びではない配置にしなければならない。このため,中間ギア48および第1連結ギア42が水平方向に占める幅Dが,ギアの直径1つ分では済まないくらい大きくなってしまう。このため,開閉扉21もその分厚くなってしまうのである。
図16の比較例に示す,第1連結ギア42が第2連結ギア44の下側からドッキングする形式であっても同じことである。
【0057】
続いて,歯飛びリスクの軽減への貢献について説明する。
図15の比較例に示した揺動方式のギア配置であると,ジャム処理時に歯飛びするリスクがある。
図15に示したギア配置では,第1連結ギア42の位置は,中間ギア48の中心48Aを中心に矢印Rのように揺動可能である。
【0058】
このギア配置の場合における,反転駆動モーター37からの駆動力により印刷用紙を搬送する際(通常動作時)に第1連結ギア42に掛かる力を
図17により説明する。
図17中各矢印Qは,通常動作時の各ギアの回転方向を示す。通常動作時における
図17中の各ギア間における駆動力の伝達順序は,ギア48→ギア42→ギア44,である。このため,中間ギア48と第1連結ギア42との噛み合い箇所では,第1連結ギア42に対して,
図17中の矢印S1の向きに力(以下,力S1という)が掛かる。当該箇所で中間ギア48の歯が第1連結ギア42の歯を蹴る向きが矢印S1だからである。
【0059】
また,第1連結ギア42と第2連結ギア44との噛み合い箇所では,第1連結ギア42に対して,
図17中の矢印S2の向きに力(以下,力S2という)が掛かる。当該箇所で第1連結ギア42の歯が第2連結ギア44の歯を蹴ることによる反作用の向きが矢印S2だからである。力S1と力S2とはいずれも,第1連結ギア42を
図17中矢印R1の向きに移動させようとする向きの力である。第1連結ギア42は実際にはその向きにそれ以上は移動できないので,力S1,S2は,第1連結ギア42が矢印R1と逆向きに揺動することによるギア抜けを防止する力として作用する。
【0060】
一方,画像形成装置1においては,印刷用紙のジャムが発生する場合がある。ジャムは,反転搬送路24で発生することもあり得る。
図18に,反転搬送路24で印刷用紙Tのジャムが発生した状況の斜視図を示す。
図18では,ジャム処理のために開閉扉21および中間扉22を一体的に開いた状態(
図2と同じ)を示している。開閉扉21と中間扉22との関係としては互いに閉じられた結合状態である。この状態で,ユーザーが印刷用紙Tを上向きもしくは下向きに引き出して取り除くことで,ジャムが解消される。
【0061】
図15の比較例のギア配置の装置で
図18のジャムが起こった場合でも,ユーザーは印刷用紙Tを上向きもしくは下向きに引っ張ることとなる。この場合に印刷用紙Tが上向きに引っ張られると,
図15中の各ギアは,引っ張られる印刷用紙Tの動きに引きずられて,
図17中の矢印Qとは逆回りに回転することとなる。しかしこの場合には,各ギア間における駆動力の伝達順序も,通常動作時とは逆であり,ギア44→ギア42→ギア48,である。このため結局,第1連結ギア42に対して,
図17中の力S1,S2と同じ向きの力が掛かる。よってギア抜けが防止される。つまり印刷用紙Tが上向き(反転搬送路24における本来の搬送方向と逆向き)に引っ張られる分には問題がない。
【0062】
しかしながら印刷用紙Tが下向き(反転搬送路24における本来の搬送方向と同じ向き)に引っ張られると,歯飛びが起こる可能性がある。なぜならこの場合には,各ギアの回転方向は通常動作時と同じ(
図17中の矢印Q)であるにもかかわらず,駆動力の伝達順序は通常動作時とは逆順となるからである。このため
図19に示すように,第1連結ギア42には力S3,S4が掛かる。力S3,S4はそれぞれ,
図17に示した力S1,S2と逆向きの力である。このため力S3,S4は,第1連結ギア42を
図19中矢印R2の向き(
図17中の矢印R1と逆)に移動させる向きに作用する。この向きは,第1連結ギア42が第2連結ギア44から外れるギア抜けとなる向きである。このため,ギア抜けによる歯飛びが生じうるのである。
【0063】
これに対し,
図14に示した本実施形態のギア配置の場合には,上記のような問題がない。
図14のギア配置の場合には前述のように,第1連結ギア42に許されている移動は,中間ギア48と一体としての上下方向(
図14中の矢印M)の移動だけである。つまり,中間ギア48を中心とする揺動ではなく,あたかも第2連結ギア44の位置に向かって中間ギア48により直に押し付けられるような移動しかできないのである。一方でギア歯の噛み合いより第1連結ギア42に掛かりうる力N1〜N4はいずれも,矢印Mに対してほぼ垂直な向きである。このため,通常動作時はもちろん,ジャム処理時に印刷用紙Tがどちら向きに引っ張られても,ギア抜けが起こるような事態にはならない。このため歯飛びも起こりえないのである。
【0064】
続いて,本形態の変形例に係る画像形成装置について,
図20により説明する。
図20は,変形例に係る画像形成装置における反転搬送路での印刷用紙の駆動力の伝達系の構成を示す図であり,前出の
図7に相当する図である。変形例に係る画像形成装置では,前述の移動板51が開閉扉21に上下移動可能に設けられる替わりに,中間扉22に移動板151が上下移動可能に設けられている。そして,前述の中間ギア48,第1連結ギア42に相当するギア148,ギア142が,移動板151に載っている。ギア148から駆動プーリー45(ギア44)の軸へ,伝達ベルト143により駆動力が伝達されるようになっている。
【0065】
この変形例では,開閉扉21と中間扉22とを結合状態(
図20)としたときには,ギア142が駆動プーリー40と同軸のギアと噛み合い,駆動の伝達を受ける。開閉扉21と中間扉22とを分離状態としたときには,ギア142が駆動プーリー40と同軸のギアから外れる。これにより基本的には前述の実施形態と同様の機能を奏するようにされている。
【0066】
ただしこの変形例では,部品の個体差を吸収するためのギアの上下移動機能が,開閉扉21に搭載される替わりに中間扉22に搭載されている。そのための移動板151の位置決めは,
図13で説明したのと同様になされるようになっている。また,伝達ベルト143にテンションを掛ける機構としては,
図20では省略しているが,
図11に示したテンションコロ59,テンション板61,引きバネ60と同等の機構を,駆動プーリー45の回転軸に対して設けている。このような形態でも,前述の実施形態と同様の効果が得られる。
【0067】
以上詳細に説明したように本実施の形態によれば,開閉扉21と,開閉扉21よりも装置本体側の部材である中間扉22との間での駆動伝達を行う構成の画像形成装置であって,当該駆動伝達部分をコンパクト化し,ジャム処理時の歯飛びの発生の可能性を低くした画像形成装置が実現されている。
【0068】
なお,本実施の形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。例えば,
図13に示したピン部54および凹形状部55による位置決め機構について,逆に,移動板51に凹形状部を設け,中間扉22にピン部を設ける構成にしてもよい。
【0069】
また,移動板51に搭載される中間ギア48,第1連結ギア42のうち中間ギア48を省略し,第1連結ギア42の軸に伝達ベルト43から直接駆動力を伝達するようにしてもよい。ただしその場合,第1連結ギア42の回転方向が前述の説明とは逆になる。このため,第1連結ギア42と噛み合う第2連結ギア44を,搬送ローラー35における反転搬送路24の内側の方のローラーと同軸に設けることとなる。また,テンションコロ59を,伝達ベルト43の内側に設け,伝達ベルト43を内面側から押すことでテンションを掛けるように構成してもよい。
【0070】
また,画像形成装置1における開閉扉21や中間扉22の開閉動作の回転軸50は,縦置きに限らず横置きでもよい。その場合,移動板51の移動方向は,回転軸50とは平行でないことになる。しかしそれでも移動板51の移動方向は,反転搬送路24の搬送方向に沿った方向であることには変わりない。また,上記説明した第1連結ギア42と第2連結ギア44との位置決め噛み合い機構は,開閉扉21と中間扉22との間のものであったが,これに限らない。開閉扉21と装置本体49との間の駆動伝達に本発明を適用してもよい。むろん,中間扉22と装置本体49との間の駆動伝達にも本発明を適用可能である。また,本発明の適用に当たっては,両面印刷機能を有する画像形成装置であることは必須ではない。
【0071】
また,画像形成装置1は,コピー機以外に,スキャナ機能を有しないプリンタであってもよい。あるいは,公衆回線を介して印刷ジョブの送受信を行う機能を有するものであってもよい。さらに,カラー機であってもよい。また,トナーの替わりに液状の発色材を用いて画像形成を行うものであってもよい。また,伝達ベルト43,143に替えてチェーンやベベルギアを用いたものであってもよい。ベベルギアの場合,テンション印加のための機構は不要である。また,閉状態でのみ必要な噛み合いが実現されれば十分である。また,「ギア」と称したものについては,回転の伝達相手に対して滑らないものであれば,歯の形成されていない摩擦車であってもよい。また,搬送ローラー34,35,36による搬送位置の,反転搬送路24における上下流の順序は任意である。