(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る画像形成装置が、複写機である場合について説明する。
<複写機の構成>
図1は、本実施の形態に係る複写機の構成を説明するための概略図である。
同図に示すように、この複写機は、大きく分けて、イメージリーダー部(原稿読取装置)Aとプリンター部Bとからなる。
【0013】
イメージリーダー部Aは、原稿画像を光学的に読み取って画像信号に変換するスキャナー部10、および、このスキャナー部10の上方に設けられた原稿搬送部(ADFユニット)11を備えており、いわゆるシートスルー方式及びミラースキャン方式の両方式での原稿画像の読み込みを選択的に実行できるように構成されている。
また、プリンター部Bは、電子写真方式により、上記イメージリーダー部Aで読み取った原稿画像や、ネットワークを介して他の端末から送信されてきた画像データに基づき、記録シート上にカラー画像を形成するものである。
【0014】
以下各部の構成について説明する。
(1)イメージリーダー部
(1−1)原稿搬送部
原稿搬送部11は、シートスルー方式の読取り実行時に原稿給紙トレイ111にセットされた原稿束から原稿をピックアップローラー113で繰り出して、捌きローラー部114で原稿を1枚ずつ分離し、レジストローラー対115でスキュー補正をすると共にタイミングを計って、第1読取用ガラス101上の読取り位置に向けて送り出し、当該読取り位置で原稿画像が読み取られた後、排出ローラー対116を介して原稿排出トレイ117に排出するものである。
【0015】
なお、原稿給紙トレイ111に設けられた昇降板112は、ピックアップローラー113による繰出し時に、不図示のカム機構などにより上方に揺動され、原稿束の最上位の原稿の上面をピックアップローラー113に当接させるためのものである。
(1−2)スキャナー部
スキャナー部10の筐体100の上面には、帯板状の第1読取用プラテンガラス101と平板状の第2読取用ガラス102とが設けられている。
【0016】
筺体100内部には、第1スライダー103および第2スライダー104と、集光レンズ105と、ラインセンサー106などが配設される。
ラインセンサー106は、カラー原稿の読取りが可能であり、複数のCCD(Charge Coupled Device)が基板上に直線状に配列されてなる。
第1スライダー103には、線状光源103aと第1ミラー103bとが搭載されており、不図示の駆動モーターにより、矢印C方向にスライド移動される。
【0017】
第2スライダー104には、一対のミラー104a、104bが90度の角度をなして設置されると共に、動滑車を利用したワイヤー駆動により、第1スライダー103の半分の速度で同じC方向に移動するように構成されている。
線状光源103aとしては、通常、蛍光灯やキセノンランプ、LED等の光源が使用される。
【0018】
第2読取用ガラス102上に手置きされた原稿の画像を読み取る場合(ミラースキャン方式)には、第1スライダー103は、矢印Cの方向にスライドしつつ、線状光源103aから第2読取用ガラス102上に載置された原稿に向けて光を照射する。
第2ミラー104aおよび第3ミラー104bが設けられた第2スライダー104は、第1スライダー103の移動速度の半分の速度でC方向にスライドするように構成されているので、原稿面から集光レンズ105に到るまでの光学的距離を一定に保つことができる。これにより、第2読取用ガラス102上に載置された原稿の画像が、集光レンズ105を介してラインセンサー106で結像するようにしている。
【0019】
一方、原稿搬送部11によって第1読取用ガラス101上を搬送される原稿の画像を読み取る場合(シートスルー方式)には、第1スライダー103は、
図1に示すように、線状光源103aが第1読取用ガラス101の真下から原稿に向けて光を照射できる位置に維持される。
ラインセンサー106は、入射された原稿からの反射光を電気信号に変換して制御部50に出力する。
【0020】
(2)プリンター部
プリンター部Bは、画像形成部20、給紙部30、定着部40、制御部50などからなる。画像形成部20は、不図示の駆動源により矢印D方向に周回駆動される中間転写ベルト22と、中間転写ベルト22の下側において、中間転写ベルト22の水平に移動する部分に沿って列設されたプロセスユニット23Y、23M、23C、23Kとを備えている。
【0021】
プロセスユニット23Y、23M、23C、23Kは、それぞれ、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のトナー画像を形成する。
これらのプロセスユニット23Y〜23Kは、充填されるトナーの色を除き、何れも同様の構成になっているので、代表してプロセスユニット23Kの構成についてのみ説明する。
【0022】
プロセスユニット23Kは、感光体ドラム24Kを中心にして、その周囲に帯電器25K、露光器26K、現像器27Kを配設してなる。
感光体ドラム24Kは、帯電器25Kによって外周面が一様に帯電される。
露光器26Kは、イメージリーダー部Aで取得された画像データに基づき、レーザー光源を変調駆動して、帯電された感光体ドラム24Kの表面を露光走査する。これにより感光体ドラム24Kの外周面に静電潜像が形成される。
【0023】
当該静電潜像は、現像器27Kによってブラック色のトナーで現像される。
また、感光体ドラム24Kの上方の、中間転写ベルト22を挟んだ位置に、1次転写ローラー28Kが設けられている。
この1次転写ローラー28Kは、感光体ドラム24Kとの間に電界を形成する。これにより、感光体ドラム24K上のトナー画像は、その電界の作用によって、中間転写ベルト22上に転写される。
【0024】
他のプロセスユニット23Y、23M、23Cの上方にも、同様に、中間転写ベルト22を挟んで1次転写ローラー28Y、28M、28Cがそれぞれ設けられており、プロセスユニット23Y、23M、23Cにおける感光体ドラム上に形成されたY色、M色、C色のトナー画像が中間転写ベルト22上に転写される。中間転写ベルト22上の同じ位置に、Y、M、C、Kの各色のトナー画像を重ねて転写することにより、カラー画像が形成される。
【0025】
中間転写ベルト22上に転写されたトナー画像は、中間転写ベルト22の周回動作によって、2次転写ローラー21と対向する2次転写位置21aへと搬送される。
一方、給紙部30は、給紙カセット31に収納された記録シートSを繰り出して1枚ずつ2次転写位置21aに搬送する。
記録シートSの束は、給紙カセット31内の、リフト機構(不図示)により昇降可能に配された昇降板32の上に載置され、この昇降板32を上方向に揺動させ、シート束の最上位の記録シートSの表面がピックアップローラー33の周面に当接するように構成されている。
【0026】
ピックアップローラー33の回転により繰り出された記録シートSは、給紙ローラー35と捌きローラー34とからなる捌き部のニップ部を通過するが、捌きローラー34には、不図示のトルクリミッターにより搬送方向と反対方向に作用する所定の負荷トルクが与えられており、もし、ピックアップローラー33により記録シートSの二重送りが生じた場合には、捌きニップ部において1枚に捌かれる。
【0027】
捌きニップ部で捌かれた記録シートSは、縦搬送ローラー対36を介して、シート搬送方向下流側のレジストローラー対37まで縦方向に搬送される。レジストローラー対37は、最初は回転を停止しており、縦搬送ローラー対36とレジストローラー対37間にループが形成され、記録シートSの腰の強さにより、記録シートSの先端がレジストローラー対37のニップ部に沿った状態になる。
【0028】
その後、所定のタイミングでレジストローラー対37を回転させて記録シートSを送り出すことにより、記録シートSのスキュー(斜行)が補正された状態でさらに下流側の2次転写位置21aに搬送され、カラーのトナー像が記録シートS上に転写される。
2次転写位置21aでトナー像が転写された記録シートは、2次転写位置21aの上方の定着装置40によって加熱・加圧され、記録シートに転写されたトナー画像が、記録シート上に定着される。
【0029】
トナー画像が定着された記録シートは、排出ローラー対38を介して排出トレイ39上に排出される。
中間転写ベルト22上の、記録シートに転写しきれなかったトナーは、クリーニングブレード29により除去される。
上記では、カラーモードを実行する場合の動作を説明したが、モノクロ、例えばブラック色のプリント(モノクロモード)を実行する場合には、ブラック色用の作像部23Kだけが駆動され、上記と同様の動作によりブラック色に対する帯電、露光、現像、転写、定着の各工程を経て記録シートにブラック色の画像形成が実行される。
【0030】
装置本体の正面側かつ上側であり、ユーザーの操作し易い位置に、操作パネル60(図
図3参照)が配置される。
操作パネル60は、ユーザーからの各種指示を受け付けるハードキーや、タッチパネル式の液晶表示板からなる表示部などを備えており、ユーザーから受け付けた指示内容を制御部50に伝え、あるいは複写機の状態を示す情報などを表示部に表示できるようになっている。
【0031】
なお、定着部40よりシート搬送方向下流側であって、排出ローラー38より上流側の位置には、記録シートに形成された網点パターンの画像を読取る画像読取手段として複数のCCDを列状に配列してなり、カラー画像が読み取り可能なラインセンサー201が、その長手方向を主走査方向と並行にして配置されており、不図示の集光レンズを介して、通過する記録シート上の網点パターンの画像の一部(本実施の形態では、記録シートの中央部における11mm×11mmの矩形範囲の1箇所のみの画像を読み込むようにしている。)を読取って制御部50に送信する。
【0032】
制御部50は、イメージリーダー部Aにおける原稿搬送部11、スキャナー部10、プリンター部Bにおける画像形成部20、給紙部30、定着部40などを制御して円滑なコピー動作やプリント動作を実行させる。
また、操作パネル60からユーザーの指示を受付けて、上記ラインセンサー201により記録シートに形成された網点パターンを読取り、その結果に基づき網点画像におけるモトルの発生を抑止するための線数変更制御を実行する。詳しくは後述する。
【0033】
<網点画像にモトルの発生原因>
図2(a)〜(c)は、それぞれ記録シート上に、同じ階調値(画像の濃度を256段階で階調表現する場合、例えば、階調値180)の画像データに基づき、網点パターンを形成したときにおける、当該網点パターンのドットの拡大図と、網点パターン全体の肉眼による視認状態を示す図である。
【0034】
図2(a)の左側の図に示すように、全てのドットが同形状のきれいな楕円状であって、かつ大きさも揃って形成されている場合には(本例では、線数が、140lpi)、右側の図に示すように全体として、もやもやとした濃度むら(モトル)は発生しない。
ところが、複写機の累積使用時間が長くなるにつれて、前述の感光体ドラムの感光特性の劣化や現像剤の帯電特性の劣化などのドット形状劣化要因の発生により、
図2(b)の左側の図に示すようにドットの形状が崩れると共に、その大きさ(面積)にもばらつきが生じ、これにより、再現画像全体を人が視認すると右側の図ようにモトルの発生が明確に認識でき、画質の劣化が著しい。
【0035】
もちろん、ドット形状劣化の要因となっていた劣化した消耗品のユニットを直ぐに新品に交換すれば、モトルは解消されるが、メンテナンスコストは増加する。また、特に、画質が要求されるカラー画像においては、モトルによる画像劣化は許容できるものではなく、サービスマンが来るまでの間、プリントアウトの作業を停止せざるを得ず、生産性が著しく低下する。
【0036】
そこで、本願発明者は、消耗品の交換をしなくても、このモトルの発生を防止する構成を創出した。
すなわち、線数が高いほどモトルが生じやすいのは、線数が高い場合には各ドットの最大径が小さく、上記のように耐久によりドットの形状が崩れると、その崩れにより1個のドットに付着すべきトナー量の変動率が大きくなり、これがモトルの原因であると考えられる。
【0037】
そこで、線数を140lpiから例えば100lpiに低下させて
図2(a)と同じ階調値の網点パターンを描画させた。
図2(c)の左側の図は、このときに記録シート上に形成されたドットの拡大図である。同じ階調値を維持するため、線数の少なくなった分だけ一つのドットの面積が大きくなるため、その輪郭部で多少形状が崩れても、
図2(b)のように線数が多く一つのドット面積が少ない場合に比較して、面積の変動率および形状の崩れ度合いが相対的に小さくなる。これにより、このときの網点パターン全体の視認状態は、
図2(c)の右側のようにモトルのほとんど発生しないものとなった。
【0038】
当然線数の低減により、描画の緻密性は多少低下するが、モトルの発生による画質劣化に比べれば、許容範囲であると考えられる。
<制御部50の構成>
図3は、上記
図1の複写機における制御部50の構成、および当該制御部50と他のスキャナー部10、原稿搬送部11、・・・・との関係を示すブロック図である。
【0039】
同図に示すように、制御部50は、CPU(Central Processing Unit)51、通信I/F(インターフェース)52、RAM(Random Access Memory)53、ROM(Read Only Memory)54、画像処理部55,画像メモリ56、モトル指標値演算部57、および網点画像生成部58からなる。
CPU51は、複写機への電源投入時などにおいて、ROM54から、制御プログラムを読み出し、RAM53を作業用記憶領域として当該制御プログラムを実行する。
【0040】
操作パネル60からコピーの指示を受けたときは、スキャナー部10で原稿画像を読取って画像データを取得する。また、LANなどの通信ネットワークを介して他の端末からプリントジョブを受け付けたときは、当該プリントジョブのデータから画像データを抽出して取得する。
取得したR、G、Bの画像データは、画像処理部55で現像色であるC、M、Y、Kの濃度データに変換されると共に、エッジ強調やスムージング処理などの公知の画像処理を受けた後、画像メモリ56内に格納される。
【0041】
モトル指標値演算部57は、ラインセンサー201で読取った記録シート上の網点パターンの濃度データに基づき網点パターンのモトルの発生の程度を示す指標値(以下、「モトル指標値」という。)を演算により求めて、CPU51に通知する。
本実施の形態では、ラインセンサー201により、後述するように人の肉眼の解像度に近い所定の解像度で読取った網点画像のカラーの画像データについて明度を示すデータ(明度データ)を求めた後、明度のヒストグラムを作成し、その標準偏差σを演算により求めて、モトル指標値としている。
【0042】
CPU51は、モトル指標値演算部57から通知された標準偏差σの値が所定の閾値よりも小さい場合には、モトルが発生していないと判断して、基準値の線数(第1の線数:本実施の形態では、140lpi)をROM54から読み出して、網点画像生成部58に指示する。
反対に標準偏差σの値が、所定の閾値以上である場合には、モトルが発生していると判断して、線数を第1の線数より低い第2の線数(例えば、100lpi)をROM54から読み出して、網点画像生成部58に基準値の線数を第2の線数に変更するよう指示する。
【0043】
網点画像生成部58は、画像形成時に、画像メモリ56に格納された各現像色の画像データを例えば1頁単位で読み出して、上記CPU51から指示された線数に基づき、網点で表現された画像データ(以下、「網点画像データ」という。)を生成する。
CPU51は、画像形成部10、給紙部20、定着装置30の動作を制御して、上記網点画像データに基づくプリント動作を円滑に実行させる。
【0044】
<線数変更制御のフローチャート>
図4は、特定の1つの現像色(ここではブラック(K)とする。)について、上記制御部50で実行される線数変更制御の内容を示すフローチャートであり、複写機全体の動作を制御するためのメインフローチャート(不図示)のサブルーチンとして実行されるものである。
【0045】
操作パネル60は、ユーザーからのモトル測定の指示を受付ける構成を有しており、制御部50は、まず、当該モトル測定の指示を操作パネル60から受付けたか否かを判断する(ステップS11)。
モトル測定の指示を受け付けていれば(ステップS11でYes)、基準値の線数で所定の階調値の現像色Kの網点パターンを記録シート上に形成する(ステップS12)。
【0046】
そして、ラインセンサー201により、定着部40を通過した直後の記録シートの網点パターンの画像を解像度72dpiで読取る(ステップS13)。
ここで、網点パターンを解像度72dpiで読取るのは、この解像度が人の肉眼における解像度に一番近いからである。
図5は、実験のため線数106lpiのラインスクリーン(網目スクリーン)を、スキャナーで、解像度を600dpiから36dpiまで5段階に変化させて読み取ったときの画像データを拡大して示すものである。
【0047】
600dpi(画素間隔42.3μm)と300dpi(画素間隔84.6μm)では、スクリーンの形状がはっきり認識できるため、モトル評価のための判断対象としてふさわしい画像データとは言えない。150dpi(画素間隔169.3μm)ぐらいからスクリーンの形状がぼやけてきおり、72dpi(画素間隔352.7μm)では、肉眼で見たときに近いもやもやとした濃度むらが見え、より解像度の小さい36dpi(画素間隔705.5μm)では、もはや、もやもやとした濃度むらさえも見えなくなっている。
【0048】
人間の肉眼の解像度は、一般に約300μmと言われており、この解像度に一番近い解像度72dpi(画素間距離352.7μm)の画像データで見ると、一番評価したいもやもやとした濃度むら(モトル)がデータとして認識できるといえる。そこで、本実施の形態では、モトルの有無を判定するため網点パターンを72dpiの解像度で読取るようにしているのでる。
【0049】
このモトル判定のため網点パターンを読取る解像度は、上記72dpi前後の値が一番望ましいが、個人差もあり、解像度50dpi以上100dpi以下の範囲であれば、一応モトル発生の程度を示す画像データとして利用でき、より望ましくは、解像度を60dpi以上80dpi以下の範囲内とすれば、より正確なモトル指標値を求めることができる。
【0050】
図4に戻り、次のステップS14では、上記ラインセンサー201で読み取った網点画像データにおけるモトル発生度合いを評価するため、網点画像データから明度を求め、
当該明度データにヒストグラムを作成する。
本実施の形態では、上述のようにラインセンサー201としてカラー画像が読取り可能なセンサーを用いており、読み取ったR、G、Bの画像データの各画素の濃度値から公知の関係式により明度を算出することができる。そして、明度ヒストグラムは、各画素の明度をスキャンして、横軸に明度の値、縦軸に当該明度を有するドットのカウント値を取ることにより得られる。
【0051】
明度のヒストグラムの作成が完了すると、各画素の明度に基づき標準偏差σを算出する(ステップS15)。
【0052】
【数1】
(式1)
ここで、nは、読み取った画像データの総画素数、mは全画素の明度の加算平均値、diは、スキャンの順番がi番目の画素の明度の値を示す。
【0053】
そして、明度の標準偏差σは、(式1)により求まる分散σ
2の正の平方根であり、これを所定の閾値と比較する(ステップS16)。
なお、上記のように明度のヒストグラムを操作パネル60の表示部に表示させるようにすれば、ユーザーが明度の分散の度合い(モトルの発生の度合い)を視覚的に確認できて便利である。もっとも、明度の標準偏差σを求めるためには、ヒストグラムの作成は必ずしも必須ではない。
【0054】
標準偏差σが所定閾値未満であれば(ステップS16でYes)、モトルが生じていないと判断し、網点画像の線数を基準値(第1の線数)のまま変更せずに(ステップS17)、メインフローチャートにリターンする。
もし、標準偏差σが所定閾値以上であれば(ステップS16でNo)、モトルが生じていると判断し、網点画像の線数を基準値よりも少なくして第2の線数(例えば、100 lpi)に設定する(ステップS18)。その後、メインフローチャートにリターンする。
【0055】
もともとモトルは、肉眼で見たもやもやとした明度の差によって惹起されるものなのでモトルの発生の程度は、明度のばらつき度を示す標準偏差σと、ほぼ線形に近い相関関係があることが本願発明者によって統計的に確認されており、本実施の形態では、モトルの発生の程度を示す指標値として、明度の標準偏差σを用いている。
そして、この標準偏差σが、所定の閾値以上のときに、モトルの発生が確認された。この閾値の値は、多数の被験者による実験を試みた結果、3以上4以下の範囲が望ましく、より望ましくは3.5であった。
【0056】
もちろん、モトル認識の程度は、個人差や画像形成すべき画像の種類に応じて、あるいは機種に応じて、微妙に異なり得るので、当該閾値をユーザーが微調整できるように構成してもよい。
網点画像生成部58は、線数変更制御により決定された線数に基づき、画像メモリ56から取得した画像データを網点画像データに変換する。当該網点画像データに基づきプリント動作を実行することにより、モトルの発生しない、もしくは発生したとしても極めて微少であって画質にほとんど影響を与えない程度に収めることができる。
【0057】
なお、
図4のフローチャートでは、特定の1つの現像色についての線数変更制御について説明したが、他の現像色についても同様の制御が行われ、網点画像生成のため適用すべき線数が決定される。
ただし、基準値の線数(第1の線数)とこれよりも低い第2の線数との間の差が大きいと、基準値の線数のままの現像色と第2の線数に変更した現像色との間での位置ずれが生じ色むらとなることもあり得る。
【0058】
したがって、このような場合には、全ての現像色について第2の線数に低減するのが望ましい。
もしくは、適当な諧調値で、4色の現像色の合成色の網点パターンを形成し、そこで、モトルの発生が確認されたら全色について、網点画像の線数を第2の線数に変更するようにすることも可能である。
【0059】
<変形例>
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明してきたが、本発明が上述の実施の形態に限定されないのは勿論であり、以下のような変形例が考えられる。
(1)上記実施の形態では、コストダウンや画像データの処理時間の短縮化のため、記録シートに形成された網点パターンの特定の1箇所の所定サイズ(11mm×11mm)の読取画像のデータに基づき、モトル指標値を取得するようにしたが、網点パターン全体としてはモトルが発生しているが、たまたまその読取位置においては発生していない場合もあり得る。
【0060】
そのため、1頁内の異なる複数の箇所において網点パターンを読み取り、それらの画像データに基づきモトル指標値を取得すれば、より確実にモトル発生の有無を確認することができる。
そこで、記録シートの1頁内のほぼ全域に網点パターンを形成して、
図6に示すように、当該1頁内に適度に分散され、ほぼ均等な位置に配された10個所(○印の箇所)、5箇所(△印の箇所)および3箇所(×印の箇所)の位置、および中央部の1箇所(□印の箇所)での位置での読取画像に基づいて、モトル指標値(すなわち、明度の標準偏差σ)を求め、それぞれ平均値を求めた。
【0061】
図7は、線数が106lpi、140lpi、170lpi、212lpiで形成されたそれぞれの網点パターンについて上記読取位置での標準偏差σの平均値を求めて結んだときのグラフである。
網点パターン全体のモトル発生の有無を判定するについては読取位置の数が多いほど望ましいのは言うまでもないが、
図7の測定結果によれば、5点測定の結果が、10点測定の結果とほぼ一致しており、一方、3点測定以下では、10点測定の場合とグラフに大きなずれが生じているので、モトルの有無の判定の信頼性を確保するためには、少なくとも5点測定を行うのが望ましいのが分かる。
【0062】
そして、複数個所の標準偏差σのうち一番高いもの(すなわち、一番評価が悪く、モトルが発生している蓋然性が高いもの)と閾値を比較することによりモトル発生の有無を判断するようにすればよい。たとえ、一部でもモトルが発生していれば、画質の劣化の評価を免れないからである。
(2)上記の実施の形態においては、ユーザーが操作パネル60からの指示により、自動的に網点パターンを記録シート上に形成して、これをラインセンサー201で読み取ることにより所定の解像度の画像データを取得し、当該取得された画像データに基づきモトル指標値を求めて、モトル発生の有無を判定するようにした。
【0063】
しかし、複写機の場合には、スキャナーが必ず付属しているので、ユーザーが排紙トレイ39に出力された網点パターンの形成された記録シートをスキャナーでスキャンさせて、上記したように所定の解像度の画像データを取得し、その画像データに基づき、上記と同様なモトル発生の有無の判定を行うようにしてもよい。この場合にはラインセンサー201を省略できるのでコストダウンに資する。
【0064】
(3)上記実施の形態では、モトル指標値としての明度の標準偏差σが、閾値以上のときに線数を一定の第2の線数に変換するようにしたが、この際に、標準偏差σと閾値との差分を求めて、当該差分が大きいほど、適用する第2の線数の値を低減するように構成してもよい。
(4)モトル発生の評価のタイミングは、上述のように操作パネル60を介してユーザーから指示があった場合に限らず、例えば、累積プリント枚数をカウントして、この累積プリント枚数が所定枚数を超えたときに自動的に行うようにしてもよい。
【0065】
また、記録シートに形成した網点画像の階調パターンをスキャナーで読取って階調補正するような機種にあっては、この階調補正のため読取った画像データに基づき、モトル発生の評価も合わせて実行するようにしても構わない。
(5)一旦、第2の線数に変更した後も、感光体ドラムの帯電特性などがさらに劣化して、モトルの発生が再び確認されるような場合には、再度モトル発生の評価を実行して、その結果に基づき、さらに線数を低くするように構成してもよい。しかし、線数があまり低くなると画像の緻密性が劣化してドットが目立つようになるので、線数の低減化にも限度があるのは言うまでもない。このような場合には、ドット劣化発生要因と解される消耗部品を交換するのが望ましい。
【0066】
(6)上記実施の形態においては、本発明に係る画像形成装置をタンデム型のカラー複写機を例として説明したが、網点画像を形成可能な画像形成装置であればよく、ファクシミリ装置やプリンター専用機等にも適用でき、また、モノクロの画像形成装置であってもよい。
(7)また、上記実施の形態及び変形例の内容を可能な限り組み合わせても構わない。