特許第6443193号(P6443193)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6443193
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】車両の制御装置
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/09 20060101AFI20181217BHJP
   B60T 7/12 20060101ALI20181217BHJP
   B60T 1/06 20060101ALI20181217BHJP
【FI】
   G08G1/09 V
   B60T7/12 A
   B60T1/06 G
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-80853(P2015-80853)
(22)【出願日】2015年4月10日
(65)【公開番号】特開2016-200986(P2016-200986A)
(43)【公開日】2016年12月1日
【審査請求日】2017年5月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083998
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 丈夫
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 隆人
(72)【発明者】
【氏名】星屋 一美
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 良雄
(72)【発明者】
【氏名】浅原 則己
(72)【発明者】
【氏名】桑原 清二
(72)【発明者】
【氏名】藤吉 直志
(72)【発明者】
【氏名】岩瀬 雄二
【審査官】 田中 純一
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/049856(WO,A1)
【文献】 特開2007−326416(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0239436(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0294320(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 − 99/00
B60T 1/00 − 7/10
B60T 7/12 − 8/1769
B60T 8/32 − 8/96
G05D 1/00 − 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者の運転操作に依存せずに自動で走行する自動運転走行が可能であり、停車時に車輪の回転をロックして前記停車の状態を維持させるパーキング装置を備え、前記パーキング装置を作動させるアクチュエータがシフト・バイ・ワイヤー方式で構成されている車両の制御装置において、
前記車両の状態を制御するコントローラを備え、
前記コントローラは、
前記自動運転走行中に、前記車両の異常の有無を検出し、
前記異常を検出した場合に、前記自動運転走行の継続の可否を判断し、
前記異常によって前記自動運転走行の継続が不可能と判断し、かつ前記異常が、前記車両のイグニッションスイッチがOFFになった後に再び前記イグニッションスイッチをONにすることができなくなって前記アクチュエータを駆動することができなくなる異常の場合には、前記車両を所定の退避場所まで退避走行させた後に停車させるとともに、作動可能な状態の前記パーキング装置を作動させずに前記自動運転走行を終了する
ように構成されていることを特徴とする車両の制御装置。
【請求項2】
前記車両は、駆動力源から前記車輪への動力伝達を遮断するニュートラルレンジを含む複数のレンジのうちの何れか一つのレンジを設定することができるシフト装置を備え、
前記コントローラは、前記パーキング装置を作動させずに前記自動運転走行を終了した場合に、前記シフト装置を前記ニュートラルレンジに設定するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の車両の制御装置。
【請求項3】
前記コントローラは、前記所定の退避場所の地形に関する情報を参照して、前記車両を停車させる位置の前記車両の前後方向における勾配が所定値よりも小さい場合に、前記パーキング装置を作動させずに前記自動運転走行を終了するように構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、運転者の運転操作に依存せずに自動で走行する自動運転走行が可能な車両の制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、走行車両の位置を検出する位置検出装置、自動運転モードと運転者による手動運転モードとの切り換えを行う運転モード切り換え装置、車両の運転制御を行う自動運転コントローラ、車速および操舵角を制御するアクチュエータ、および、運転モードの切り換え時に行われる運転者のステアリング操作(ステアリングオーバーライド)を検出するオーバーライド検出装置を有する自動運転制御装置が記載されている。この特許文献1に記載された自動運転制御装置は、運転モードの切り換え時に、ステアリングオーバーライドが検出された場合は、自動運転モードから手動運転モードへの切り換えを実行すると共に、ステアリングオーバーライドが検出されない場合には、自動運転モードから手動運転モードへの切り換えを中止して自動運転モードを継続して、一般道路とは別に安全区域として設けられた緊急退避道路へ車両を誘導するように構成されている。
【0003】
なお、特許文献2には、自動運転モードで制御することが可能な車両に対して、地図データが不十分であると判定された場合の車両の制御技術に関する発明が記載されている。この特許文献2に記載された制御では、自動運転走行中に、ナビゲーションシステムの地図データとセンサーデータとが比較され、地図データが不十分であると判断された場合は、運転者に自動運転から手動運転に切り替えることを促す警報が発せられる。また、手動運転に切り替えられなかった場合には、例えば道路の路肩などへ車両が退避走行させられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−276690号公報
【特許文献2】米国特許第8521352号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の特許文献1や特許文献2に記載されているような自動運転走行が可能な車両においては、自動運転中に、例えば車両故障や燃料切れあるいはバッテリの残量不足などのため、その後の自走が困難になるような場合に、自動運転により、車両を安全な場所へ退避走行させて停車させることができる。ただし、その際に、例えばパーキング装置を作動させ、車輪の回転をロックした状態で自動運転を終了してしまうと、その後にパーキング装置によるロックを解除することができなくなってしまう場合がある。パーキング装置によるロックが解除できないと、レッカー車などによる車両の移動が困難になってしまう。
【0006】
この発明は上記のような技術的課題に着目して考え出されたものであり、自動運転走行が可能な車両に対して、自動運転走行中に車両の自走が困難になると判断して車両を停止させた場合であっても、その後の車両移動が困難になってしまうことを防止することができる車両の制御装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明は、運転者の運転操作に依存せずに自動で走行する自動運転走行が可能であり、停車時に車輪の回転をロックして前記停車の状態を維持させるパーキング装置を備え、前記パーキング装置を作動させるアクチュエータがシフト・バイ・ワイヤー方式で構成されている車両の制御装置において、前記車両の状態を制御するコントローラを備え、前記コントローラは、前記自動運転走行中に、前記車両の異常の有無を検出し、前記異常を検出した場合に、前記自動運転走行の継続の可否を判断し、前記異常によって前記自動運転走行の継続が不可能と判断し、かつ前記車両のイグニッションスイッチがOFFになった後に再び前記イグニッションスイッチをONにすることができなくなって前記アクチュエータを駆動することができなくなる異常の場合には、前記車両を所定の退避場所まで退避走行させた後に停車させるとともに、作動可能な状態の前記パーキング装置を作動させずに前記自動運転走行を終了するように構成されていることを特徴とするものである。
また、この発明では、前記車両は、駆動力源から前記車輪への動力伝達を遮断するニュートラルレンジを含む複数のレンジのうちの何れか一つのレンジを設定することができるシフト装置を備え、前記コントローラは、前記パーキング装置を作動させずに前記自動運転走行を終了した場合に、前記シフト装置を前記ニュートラルレンジに設定するように構成されていてもよい。
さらに、この発明では、前記コントローラは、前記所定の退避場所の地形に関する情報を参照して、前記車両を停車させる位置の前記車両の前後方向における勾配が所定値よりも小さい場合に、前記パーキング装置を作動させずに前記自動運転走行を終了するように構成されていてよい。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、自動運転走行中に、例えば故障や燃料切れあるいはバッテリの残量不足などの車両の異常が検出され、その後の自走が困難であると判断された場合には、車両は、安全な退避場所まで退避走行させられた後に停車させられる。そして、その停車の際には、パーキング装置を作動させない状態で自動運転が終了される。そのため、自動運転走行中に車両の自走が困難になると判断して車両を停止させた場合であっても、その後の車両移動が困難になってしまうことを防止することができる
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】この発明の制御装置で制御対象とする自動運転走行が可能な車両の制御系統の概要を説明するための図である。
図2】この発明の制御装置で制御対象とする車両の駆動系統の一例を示す図である。
図3】この発明の制御装置で実行される制御の一例を説明するためのフローチャートである。
図4図3のフローチャートで示す制御を実行した場合の車両の挙動の一例を説明するためタイムチャートである。
図5図3のフローチャートで示す制御を実行した場合の車両の挙動の他の例を説明するためタイムチャートである。
図6】この発明の制御装置で実行される他の制御例を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
この発明を、図を参照して具体的に説明する。この発明で制御の対象とする車両Veは、従来の一般的な車両と同様に、運転者の運転操作に従って走行する手動運転走行と、運転者の運転操作には依存せずに、自動制御されることにより走行する自動運転走行とを切り替えることが可能なように構成されている。
【0011】
具体的には、図1に示すように、車両Veは、前輪1および後輪2を有している。この図1に示す例では、車両Veは、駆動力源(ENG,MG)3が出力する動力を、動力伝達機構(TM)4および駆動軸5を介して、駆動輪1に伝達して駆動力を発生させるように構成されている。なお、各車輪1,2には、それぞれ、制動装置(図示せず)が設けられている。
【0012】
駆動力源3は、例えばエンジンやモータなど、車両Veの駆動力を発生する原動機である。駆動力源3としてエンジンを用いる場合、そのエンジンは、出力の調整や起動および停止の動作を制御することが可能なように構成される。駆動力源3としてモータを用いる場合、そのモータは、インバータを介してバッテリに接続され、回転数やトルク、あるいはモータとしての機能および発電機としての機能の切り替えなどを制御することが可能なように構成される。
【0013】
動力伝達機構4は、例えば、従来一般的な有段の自動変速機や、ベルト式もしくはトロイダル式の無段変速機であり、設定する変速段(もしくは変速比)を制御することが可能なように構成されている。また、ハイブリッド車両においてエンジンおよびモータが出力する動力を合成・分割する動力分割機構もこの動力伝達機構4に相当する。
【0014】
また、車両Veには、シフト装置6が設けられている。シフト装置6は、上記のような動力伝達機構4の伝動状態や変速段もしくは変速比を設定するための装置である。具体的には、動力伝達機構4の伝動状態を、前進、後進、および、ニュートラル等の各状態に切り替えることができるように構成されている。例えば、動力伝達機構4の伝動状態を決めるシフトポジションとして、所定の変速段もしくは変速比の範囲で自動変速して車両Veを前進走行させるD(ドライブ)レンジ、および、車両Veを後進走行させるR(リバース)レンジ等を設定することができる。また、駆動力源からの動力伝達を遮断するN(ニュートラル)レンジ、および、後述するパーキングロック機構23を作動させて車輪の回転をロックするP(パーキング)レンジ等を設定することができる。
【0015】
シフト装置6には、上記のような各シフトポジションを運転者が選択して設定するためのシフトレバーもしくはシフトスイッチ等(図示せず)が備えられている。また、選択されたシフトポジションに対応して動力伝達機構4を作動させるシフトアクチュエータ(図示せず)が備えられている。例えばシフトレバーを運転者が操作することにより、所定のシフトポジションを選択して設定することができるように構成されている。また、シフトアクチュエータを自動制御することにより、所定のシフトポジションを選択して設定することもできるように構成されている。
【0016】
さらに、車両Veには、パーキング装置7が設けられている。パーキング装置7は、車両Veの停車時に車輪の回転を止めてロックするための装置である。パーキング装置7は、例えば、後述するようなパーキングロック機構23から構成されていて、シフト装置6でPレンジが設定されることによって作動して駆動軸5の回転をロックするように構成されている。また、パーキング装置7は、車輪1,2の少なくともいずれかに設けられた制動装置をワイヤやリンケージ等を用いた機械的作動機構によって作動させるパーキングブレーキ(あるいはサイドブレーキ)(図示せず)によって構成することもできる。
【0017】
上記のような駆動力源3、動力伝達機構4、シフト装置6、パーキング装置7、制動装置、および、操舵装置等の動作を制御するためのコントローラ(ECU)8が設けられている。コントローラ8は、例えばマイクロコンピュータを主体にして構成される電子制御装置である。コントローラ8には、車両Ve各部のセンサ・車載装置類9からの検出信号や情報信号などが入力されるように構成されている。
【0018】
センサ・車載装置類9のうち、車両Veの走行状態および各部の作動状態や挙動等を検出する主な内部センサとして、例えば、アクセル開度を検出するアクセルセンサ、ブレーキペダルの踏み込み量を検出するブレーキセンサ(もしくはブレーキスイッチ)、ステアリング機構の舵角を検出する舵角センサ、エンジンの回転数を検出するエンジン回転数センサ、動力伝達機構4の出力軸回転数を検出するアウトプット回転数センサ、各車輪1,2の回転速度をそれぞれ検出して車速を求める車速センサ、および、車両Veの前後加速度を検出する前後加速度センサなどが備えられている。
【0019】
また、センサ・車載装置類9のうち、車両Veの周辺情報や外部状況を検出する主な外部センサとして、例えば、車載カメラ、レーダー[RADAR:Radio Detection and Ranging]、および、ライダー[LIDAR:Laser Imaging Detection and Ranging]などの少なくとも一つが備えられている。さらに、上記のような内部センサや外部センサの他に、GPS[Global Positioning System]受信部、地図データベース、および、ナビゲーションシステムなどが備えられている。
【0020】
上記のような各種のセンサ・車載装置類9からの検出データや情報データが、コントローラ8に入力されるように構成されている。そして、それら入力されたデータおよび予め記憶させられているデータ等を使用して演算を行い、その演算結果を基に、駆動力源3、動力伝達機構4、シフト装置6、パーキング装置7、制動装置、および、操舵装置等の車両Veの各部に設けられたアクチュエータ(図示せず)に対して、制御指令信号を出力するように構成されている。すなわち、上記のような各アクチュエータをバイ・ワイヤで制御することができるように構成されている。
【0021】
コントローラ8は、上記のようにセンサ・車載装置類9からの検出データや情報データに基づいて、例えば数秒から数十秒先の車両Veの走行計画を生成し、その走行計画に基づいて、車両Veの走行を自動で制御するように構成されている。具体的には、スロットルアクチュエータ、ブレーキアクチュエータ、および、操舵アクチュエータなど、自動運転のための主要な各アクチュエータに対して、上記のような走行計画に応じた制御信号が出力される。それによって、車両Veを自動運転走行させることが可能なように構成されている。
【0022】
上記のように自動運転走行が可能な車両Veの駆動系統の一例を図2に示してある。この図2に示す例では、車両Veは、駆動力源3としてエンジン(ENG)11ならびに第1モータ(MG1)12および第2モータ(MG2)13を搭載したハイブリッド車両として構成されている。なお、この発明で制御対象とする車両Veは、この図2に示すようなハイブリッド車両に限定されない。例えば、エンジンおよび1基のモータを駆動力源として搭載した他の方式のハイブリッド車両であってもよく、あるいは、駆動力源としてエンジンのみを搭載した従来一般的な構成の車両であってもよい。
【0023】
図2に示す車両Veは、エンジン11が出力する動力を、動力分割機構14によって第1モータ12と駆動軸5とに分割して伝達するように構成されている。また、第1モータ12で発生した電力で第2モータ13を駆動し、その第2モータ13が出力する動力を駆動軸5に付加することができるように構成されている。
【0024】
具体的には、エンジン11の出力軸11aおよび第1モータ12のロータ軸12aが動力分割機構14を介して駆動軸5側のギヤ列15およびデファレンシャルギヤ16に連結されている。すなわち、エンジン11および第1モータ12の出力トルクが、動力分割機構14を介して、駆動軸5側へ伝達されるように構成されている。また、第2モータ13のロータ軸13aが、ギヤ列15およびデファレンシャルギヤ16を介して駆動軸5に連結されている。
【0025】
動力分割機構14は、例えば、サンギヤ17、キャリア18、および、リングギヤ19を有する遊星歯車機構によって構成されている。その遊星歯車機構のサンギヤ17に、第1モータ12のロータ軸12aが連結されている。キャリア18には、この動力分割機構14の入力軸14aが連結されている。入力軸14aは、ダンパ機構20およびフライホイール21等を介して、エンジン11の出力軸11aに連結されている。リングギヤ19の外周部分には、外歯歯車のドライブギヤ22が一体に形成されていて、そのドライブギヤ22が、上記のギヤ列15に動力伝達可能に連結されている。
【0026】
そして、この車両Veには、パーキングロック機構23が設けられている。パーキングロック機構23は、前述したパーキング装置7を構成するものである。例えば、上記のリングギヤ19の外周部分にドライブギヤ22と一体回転するように形成されたパーキングギヤ24に、パーキングポール(図示せず)を噛み合わせることにより、ギヤ列15およびデファレンシャルギヤ16と共に、駆動軸の回転をロックするように構成されている。
【0027】
前述したように、この車両Veのような自動運転走行が可能な車両においては、自動運転走行中に車両Veの自走が困難になると判断して車両を停止させた場合に、パーキング装置7が駆動軸5の回転をロックした状態のまま作動できなくなり、その結果、その後の車両移動が困難になってしまう可能性があった。例えば、故障によって車両VeのイグニッションスイッチがOFFになった後に、再びイグニッションスイッチをONにすることができなくなるような場合に、パーキング装置7を作動させるアクチュエータがシフト・バイ・ワイヤー方式で構成されていると、パーキング装置7のアクチュエータを駆動することができなくなり、パーキング装置7によるロックを解除できなくなるおそれがあった。そこで、この発明におけるコントローラ8は、車両Veが自動運転走行中に異常の発生によって停車した場合であっても、その後の移動を容易にすることができるように、以下に示す制御を実行するように構成されている。
【0028】
は、コントローラ8により実行される制御の一例を説明するためのフローチャートである。このフローチャートで示されるルーチンは、所定の短時間毎に繰り返し実行される。また、車両Veが自動運転走行中であることが制御実行の前提になっている。図のフローチャートにおいて、先ず、ステップS1では、車両Veに異常があるか否かが判断される。ここでの車両Veの異常は、車両Veが自走不可能となるような故障や燃料切れあるいはバッテリ残量が異常に低下した状態等を含んでいる。
【0029】
上記のような車両Veの異常は発生していないことにより、このステップS1で否定的に判断された場合は、以降の制御を実行することなく、このルーチンを一旦終了する。それに対して、上記のような車両Veの異常が発生したことにより、ステップS1で肯定的に判断された場合には、ステップS2へ進む。
【0030】
ステップS2では、車両Veの走行継続が不可能であるか否かが判断される。すなわち、上記のような車両Veの異常が発生したことにより、今後、車両Veを自走させることが可能であるか否かが判断される。
【0031】
車両Veの走行継続が可能であることにより、このステップS2で否定的に判断された場合は、以降の制御を実行することなく、このルーチンを一旦終了する。それに対して、車両Veの走行が不可能であることにより、ステップS2で肯定的に判断された場合には、ステップS3へ進む。
【0032】
ステップS3では、車両Veを適当な退避場所まで誘導する退避走行が行われ、その退避場所で車両Veが停車させられる。
【0033】
ステップS4では、車両Veが停車した位置の地形に関する情報があるか否かが判断される。少なくとも、その停車位置の車両Veの前後方向における勾配に関する情報の有無について判断される。
【0034】
停車位置の地形に関する情報があることにより、このステップS4で肯定的に判断された場合は、ステップS5へ進む。
【0035】
ステップS5では、停車位置の車両Veの前後方向における勾配が所定値以上であるか否かが判断される。ここでの所定値は、車両Veが動いてしまう可能性がある勾配の大きさを予め定めた閾値である。
【0036】
停車位置の車両Veの前後方向における勾配が所定値以上であることにより、このステップS5で肯定的に判断された場合は、ステップS6およびステップS7へ進む。
【0037】
ステップS6では、パーキング装置7が作動させられる。すなわち、シフト装置6でPレンジが設定され、例えば図2に示したようなパーキングロック機構23によって駆動軸5および車輪1の回転がロックされる。したがって、この場合は、勾配のある場所において車両Veを確実に停車させておくことが優先されて、パーキング装置7が作動させられる。
【0038】
ステップS7では、パーキング装置7が作動中であること、すなわち、シフト装置6でPレンジが設定されていることが表示される。
【0039】
なお、停車位置の地形に関する情報がないことにより、上記のステップS4で否定的に判断された場合には、ステップS5を飛ばして、ステップS6およびステップS7の制御が実行される。
【0040】
一方、停車位置の車両Veの前後方向における勾配が所定値よりも小さいことにより、上記のステップS5で否定的に判断された場合には、ステップS8、ステップS9、および、ステップS10へ進む。
【0041】
ステップS8では、パーキング装置7が作動しない状態が維持される。すなわち、この場合は、車両Veが停車した場合であっても、パーキング装置7が作動されることがない。
【0042】
ステップS9では、シフト装置6でNレンジが設定され、それに伴い、ステップS10では、シフト装置6でNレンジが設定されていることが表示される。したがって、車両Veは、外部からの力によって移動することが可能な状態になる。例えばレッカー車などによって容易に車両Veを移動させることが可能な状態になる。また、Nレンジが設定され、動力伝達機構4における動力伝達が遮断されることにより、後述するステップS11で自動運転走行が終了された後に手動運転走行の状態に切り替えられた際に、例えばクリープトルクの影響によって車両Veが運転者の意図に反して動いてしまうことを防止することができる。
【0043】
ステップS6およびステップS7において、シフト装置6でPレンジが設定されると、もしくは、ステップS9およびステップS10において、シフト装置6でNレンジが設定されると、ステップS11へ進む。
【0044】
ステップS11では、車両Veの自動運転走行が終了される。そしてその後、このルーチンを一旦終了する。
【0045】
上記のように図3のフローチャートで示した制御を実行した場合の車両Veの各部の挙動を、図4および図5のタイムチャートに示してある。図4のタイムチャートは、自動運転走行中に異常が発生したことにより、車両Veが退避走行した後に退避場所で停車した際に、その停車位置の勾配が小さい場合の例を示している。図4のタイムチャートにおいて、時刻t1で車両Veの異常が発生すると、その直後から時刻t2にかけて、走行継続の可否について判断される。すなわち、発生した異常の影響により、今後、車両Veが自走することが可能であるか否かが判断される。
【0046】
時刻t2で、この後の車両Veの自走は不可能であると判断されると、時刻t2から時刻t3にかけて、車両Veが退避走行させられる。そして、時刻t3で車両Veが停車させられると、その停車位置での車両Veの前後方向における勾配(絶対値)が、所定値(勾配閾値)よりも大きいか否かが判断される。この図4のタイムチャートに示す例では、停車位置の勾配は勾配閾値よりも小さくなっている。そのため、この場合は、停車位置の勾配について判定された直後の時刻t4で、シフト装置6のシフトポジションがNレンジに設定される。したがって、パーキング装置7は作動されず、車両Veを移動可能な状態が維持される。その後、時刻t5で、車両Veの状態が自動運転から手動運転に切り替えられる。
【0047】
図5のタイムチャートは、自動運転走行中に異常が発生したことにより、車両Veが退避走行した後に退避場所で停車した際に、その停車位置の勾配が大きく、車両Veが移動してしまう可能性がある場合の例を示している。図5のタイムチャートにおいて、上記の図4のタイムチャートに示した例と同様に、時刻t1で車両Veの異常が発生し、時刻t2から時刻t3にかけて、車両Veが退避走行させられ、そして、時刻t3で車両Veが停車させられると、その停車位置での車両Veの前後方向における勾配(絶対値)が、所定値(勾配閾値)よりも大きいか否かが判断される。この図5のタイムチャートに示す例では、停車位置の勾配は勾配閾値よりも大きくなっている。そのため、この場合は、停車位置の勾配について判定された直後の時刻t4で、シフト装置6のシフトポジションがPレンジに設定される。この場合は、停車位置の勾配が大きいため、停車させた車両Veが重力の作用によって勾配の降坂方向へ移動してしまうおそれがある。したがって、車両Veを確実に停車させておくことが優先されて、パーキング装置7が作動させられ、駆動軸5および車輪2の回転がロックされる。その後、時刻t5で、車両Veの状態が自動運転から手動運転に切り替えられる。
【0048】
なお、この車両Veにおけるパーキング装置7は、前述したように、車輪に設けられた制動装置を機械的作動機構によって作動させるパーキングブレーキ(あるいはサイドブレーキ)によって構成することもできる。その場合の制御例を、図6のフローチャートに示してある。前述の図3のフローチャートで示した制御例と同様に、停車位置の車両Veの前後方向における勾配が所定値以上であることにより、ステップS5で肯定的に判断されると、ステップS21およびステップS22へ進む。
【0049】
ステップS21では、パーキングブレーキが作動させられる。すなわち、例えば、各車輪1,2に設けられた制動装置が作動し、各車輪1,2の回転がロックされる。したがって、この場合は、勾配のある場所において車両Veを確実に停車させておくことができる。また、 ステップS22では、パーキングブレーキが作動中であることが表示される。例えば、パーキングブレーキランプが点灯される。
【0050】
なお、停車位置の地形に関する情報がないことにより、ステップS4で否定的に判断された場合には、ステップS5を飛ばして、これらステップS21およびステップS22の制御が実行される。
【符号の説明】
【0051】
1,2…車輪、 3…駆動力源(ENG,MG)、 4…動力伝達機構(TM)、 5…駆動軸、 6…シフト装置、 7…パーキング装置、 8…コントローラ(ECU)、 9…センサ・車載装置類、 11…エンジン(駆動力源;ENG)、 12…第1モータ(駆動力源;MG1)、 13…第2モータ(駆動力源;MG2)、 14…動力分割機構(動力伝達機構)、 23…パーキングロック機構、 Ve…車両。
図1
図2
図3
図4
図5
図6