特許第6443211号(P6443211)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6443211
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20181217BHJP
【FI】
   H02M7/48 Z
【請求項の数】5
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-95768(P2015-95768)
(22)【出願日】2015年5月8日
(65)【公開番号】特開2016-93090(P2016-93090A)
(43)【公開日】2016年5月23日
【審査請求日】2017年7月28日
(31)【優先権主張番号】特願2014-223069(P2014-223069)
(32)【優先日】2014年10月31日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】特許業務法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原田 脩央
(72)【発明者】
【氏名】中坂 彰
【審査官】 小林 秀和
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−249452(JP,A)
【文献】 特開2010−252461(JP,A)
【文献】 特開2014−090538(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/29
H01L 23/34−23/36
H01L 23/373−23/427
H01L 23/44
H01L 23/467−23/473
H02M 1/00−1/44
H02M 3/155
H02M 3/28
H02M 7/42−7/98
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子(20)を内蔵した半導体モジュール(2)と、
コンデンサ素子(30)と、該コンデンサ素子(30)の正電極に接続した正側コンデンサ端子(4p)と上記コンデンサ素子(30)の負電極に接続した負側コンデンサ端子(4n)との一対のコンデンサ端子(4)とを有するコンデンサ(3)と、
上記半導体モジュール(2)と上記正側コンデンサ端子(4p)とを電気接続する正側直流バスバー(5p)と、上記半導体モジュール(2)と上記負側コンデンサ端子(4n)とを電気接続する負側直流バスバー(5n)との、一対の直流バスバー(5)とを備え、
個々の上記コンデンサ端子(4)は、2個の端子側接続部分と、該2個の端子側接続部分を連結する端子連結部(411)とを有し、該端子連結部(411)を直接、又は該端子連結部(411)から立設した端子立設部(412)を介して間接的に上記コンデンサ素子(30)に接続してあり、
個々の上記直流バスバー(5)は、2個のバスバー側接続部分と、該2個のバスバー側接続部分を連結するバスバー連結部(511)とを有し、該バスバー連結部(511)を直接、又は該バスバー連結部(511)から立設したバスバー立設部(512)を介して間接的に上記半導体モジュール(2)に接続してあり、
上記端子側接続部分と上記バスバー側接続部分とは、互いに接続され、上記コンデンサ端子(4)および上記直流バスバー(5)を電気接続する接続部(6)を構成しており、
上記正側コンデンサ端子(4p)と上記正側直流バスバー(5p)、及び上記負側コンデンサ端子(4n)と上記負側直流バスバー(5n)は、それぞれ2個の上記接続部(6)において互いに接続され、
上記バスバー連結部(511)および上記端子連結部(411)は、所定間隔をおいて互いに重ね合わされている、電力変換装置(1)。
【請求項2】
上記コンデンサ(3)は、上記コンデンサ素子(30)を収容するコンデンサケース(31)と、上記コンデンサ素子(30)を上記コンデンサケース(31)内に封止する封止部材(32)とを備え、上記端子連結部(411)は、上記コンデンサケース(31)内に配されていることを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置(1)。
【請求項3】
上記端子連結部(411)は上記封止部材(32)に封止されており、上記端子連結部(411)と上記バスバー連結部(511)との間に、上記封止部材(32)の一部が介在していることを特徴とする請求項に記載の電力変換装置(1)。
【請求項4】
上記コンデンサ(3)には、上記接続部(6)の厚さ方向に貫通した貫通孔(33)が形成され、上記2個の接続部(6a,6b)のうち少なくとも一部の接続部(6a)は、上記厚さ方向において上記貫通孔(33)と重なる位置に配されており、締結部材(13)を上記貫通孔(33)に、上記接続部(6a)を配した側とは反対側から挿入して、該接続部(6a)を締結してあることを特徴とする請求項1〜請求項のいずれか一項に記載の電力変換装置(1)。
【請求項5】
上記接続部(6)の厚さ方向から見たときに、上記バスバー連結部(511)および上記端子連結部(411)は、それぞれ長尺形状を呈しており、これらの長手方向において、上記バスバー連結部(511)および上記端子連結部(411)を両側から挟む位置に、上記2個の接続部(6)が形成されている、請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の電力変換装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子を内蔵した半導体モジュールと、コンデンサと、これらを電気接続する直流バスバーとを備えた電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
直流電力と交流電力との間で電力変換を行う電力変換装置として、半導体素子を内蔵した半導体モジュールと、コンデンサと、これらを電気接続する一対の直流バスバーとを備えるものが知られている(下記特許文献1参照)。
【0003】
この電力変換装置では、上記コンデンサを用いて、直流電源の電圧を平滑化している。そして、上記半導体素子をスイッチング動作させることにより、上記直流電源から供給される直流電力を交流電力に変換するよう構成されている。
【0004】
コンデンサは、コンデンサ素子と、該コンデンサ素子に接続したコンデンサ端子とを備える。このコンデンサ端子に、上記直流バスバーを接続してある。上記電力変換装置では、ボルト等を用いて、直流バスバーとコンデンサ端子とを一箇所のみ接続してある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−183748号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記電力変換装置は、直流バスバー及びコンデンサ端子に大きなインダクタンスが寄生する可能性がある。すなわち、上記電力変換装置では、直流バスバーとコンデンサ端子とを一箇所のみ接続している。そのため、直流バスバーとコンデンサ端子との間を流れる電流は、1個の接続部を必ず通ることになり、電流が流れる経路の数が1つしかない。電流経路の数が少ないと、大きなインダクタンスが寄生しやすくなる。そのため、上記電力変換装置は、直流バスバー及びコンデンサ端子に大きなインダクタンスが寄生する可能性があった。したがって、半導体素子をスイッチング動作させたときに、上記インダクタンスが原因となって比較的大きなサージが発生する可能性が考えられた。
【0007】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたもので、直流バスバー及びコンデンサ端子に寄生するインダクタンスをより低減できる電力変換装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、半導体素子を内蔵した半導体モジュールと、
コンデンサ素子と、該コンデンサ素子の正電極に接続した正側コンデンサ端子と上記コンデンサ素子の負電極に接続した負側コンデンサ端子との一対のコンデンサ端子とを有するコンデンサと、
上記半導体モジュールと上記正側コンデンサ端子とを電気接続する正側直流バスバーと、上記半導体モジュールと上記負側コンデンサ端子とを電気接続する負側直流バスバーとの、一対の直流バスバーとを備え、
個々の上記コンデンサ端子は、2個の端子側接続部分と、該2個の端子側接続部分を連結する端子連結部とを有し、該端子連結部を直接、又は該端子連結部から立設した端子立設部を介して間接的に上記コンデンサ素子に接続してあり、
個々の上記直流バスバーは、2個のバスバー側接続部分と、該2個のバスバー側接続部分を連結するバスバー連結部とを有し、該バスバー連結部を直接、又は該バスバー連結部から立設したバスバー立設部を介して間接的に上記半導体モジュールに接続してあり、
上記端子側接続部分と上記バスバー側接続部分とは、互いに接続され、上記コンデンサ端子および上記直流バスバーを電気接続する接続部を構成しており、
上記正側コンデンサ端子と上記正側直流バスバー、及び上記負側コンデンサ端子と上記負側直流バスバーは、それぞれ2個の上記接続部において互いに接続され、
上記バスバー連結部および上記端子連結部は、所定間隔をおいて互いに重ね合わされている、電力変換装置にある。
【発明の効果】
【0009】
上記電力変換装置においては、直流バスバーとコンデンサ端子とを、少なくとも2個の接続部において、互いに接続してある。上記直流バスバーは、半導体モジュールに接続したバスバー本体部を備え、このバスバー本体部の少なくとも一部によって、2個の接続部を連結している。また、コンデンサ端子は、コンデンサ素子に接続した端子本体部を備え、この端子本体部の少なくとも一部によって、2個の接続部を連結している。
そのため、直流バスバー及びコンデンサ端子に寄生するインダクタンスをより低減できる。すなわち、上記構成にすると、半導体モジュールとコンデンサ素子との間を流れる電流を、2個の接続部のうち一方の接続部を通る経路と、他方の接続部を通る経路との、少なくとも2つの電流経路に分けて流すことが可能になる。そのため、電流経路の数を増やすことができる。個々の電流経路にはインダクタンスが寄生するが、これらのインダクタンスは互いに並列に接続されている。そのため、各インダクタンスを合成した合成インダクタンスの値は、個々のインダクタンスの値よりも小さくなる。したがって、直流バスバー及びコンデンサ端子に寄生するインダクタンス(合成インダクタンス)を低減でき、半導体素子をオンオフ動作させたときに、このインダクタンスが原因となって大きなサージが発生することを抑制できる。
【0010】
以上のごとく、本発明によれば、直流バスバー及びコンデンサ端子に寄生するインダクタンスをより低減できる電力変換装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例1における、電力変換装置の断面図であって、図2のI-I断面図。
図2図1のII-II断面図。
図3図1のIII-III断面図。
図4】実施例1における、直流バスバーとコンデンサの斜視図。
図5図2のV-V断面図。
図6】実施例1における、電力変換装置の、第2接続部付近の拡大断面図。
図7】実施例1における、電力変換装置の、第1接続部付近の拡大断面図。
図8】実施例1における、電力変換装置の回路図。
図9】実施例1における、電力変換装置の製造工程説明図。
図10図9に続く図。
図11図10に続く図。
図12図11に続く図。
図13】実施例1における、バスバー連結部と端子連結部とが接触した状態での、電力変換装置の拡大断面図。
図14】実施例2における、電力変換装置の断面図であって、図15のXIV-XIV断面図。
図15図14のXV-XV断面図。
図16】実施例3における、電力変換装置の断面図であって、図17のXVI-XVI断面図。
図17図16のXVII-XVII断面図。
図18】実施例4における、電力変換装置の断面図であって、図19のXVIII-XVIII断面図。
図19図18のXIX-XIX断面図。
図20】実施例5における、電力変換装置の断面図であって、図21のXX-XX断面図。
図21図20のXXI-XXI断面図。
図22】実施例6における、電力変換装置の要部拡大断面図。
図23図22のXXIII矢視図。
図24】実施例7における、電力変換装置の断面図。
図25】実施例8における、電力変換装置の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
上記電力変換装置は、電気自動車やハイブリッド車等の車両に搭載するための、車載用電力変換装置とすることができる。
【実施例】
【0013】
(実施例1)
上記電力変換装置に係る実施例について、図1図12を用いて説明する。図1に示すごとく、本例の電力変換装置1は、半導体モジュール2と、コンデンサ3と、直流バスバー5(5p,5n)とを備える。半導体モジュール2は、半導体素子20(図8参照)を内蔵している。コンデンサ3は、コンデンサ素子30と、該コンデンサ素子30に接続したコンデンサ端子4とを有する。直流バスバー5(5p,5n)は、半導体モジュール2とコンデンサ端子4とを電気接続している。
【0014】
コンデンサ端子4と直流バスバー5とは、2個の接続部6(第1接続部6a、第2接続部6b)において、互いに接続されている。
直流バスバー5は、半導体モジュール2に接続したバスバー本体部51を備える。バスバー本体部51の一部によって、2個の接続部6a,6bを連結している。
また、コンデンサ端子4は、コンデンサ素子30に接続した端子本体部41を備える。端子本体部41の一部によって、2個の接続部6a,6bを連結している。
【0015】
本例の電力変換装置1は、電気自動車やハイブリッド車等の車両に搭載するための、車載用電力変換装置である。
【0016】
図2に示すごとく、コンデンサ3は、直流電源8(図8参照)の正電極88に電気接続した正側コンデンサ端子4pと、直流電源8の負電極89に電気接続した負側コンデンサ端子4nとの、2つのコンデンサ端子4(4p,4n)を備える。また、電力変換装置1は、正側コンデンサ端子4pに接続した正側直流バスバー5pと、負側コンデンサ端子4nに接続した負側直流バスバー5nとの、2つの直流バスバー5(5p,5n)を備える。
【0017】
また、図1に示すごとく、本例では、複数の半導体モジュール2と、該半導体モジュール2を冷却する複数の冷却管11とを積層して積層体10を形成してある。
【0018】
図1図4に示すごとく、バスバー本体部51は、2個の接続部6a,6bを連結するバスバー連結部511と、該バスバー連結部511から立設するバスバー立設部512とを有する。バスバー連結部511は、積層体10の積層方向(X方向)に長い長尺形状を呈する。バスバー立設部512は、バスバー連結部511から、接続部6の厚さ方向(Z方向)における、半導体モジュール2側に立設している。
【0019】
また、端子本体部41は、2個の接続部6a,6bを連結する端子連結部411と、該端子連結部411から立設する端子立設部412とを有する。端子立設部412は、X方向に長い長尺形状を呈する。端子立設部412は、端子連結部411から、Z方向における、コンデンサ素子30側に立設している。
【0020】
図2に示すごとく、2つの直流バスバー5p,5nにそれぞれ形成されたバスバー立設部512(512p,512n)は、所定間隔をおいて互いに隣り合うように配されている。
【0021】
図8に示すごとく、本例では、複数の半導体モジュール2によって、インバータ回路200を構成してある。個々の半導体モジュール2に内蔵された半導体素子20(IGBT素子)をスイッチング動作させることにより、直流電源8から供給される直流電力を交流電力に変換している。そして、得られた交流電力を用いて三相交流モータ81を駆動し、上記車両を走行させている。
【0022】
図2に示すごとく、コンデンサ3は、上記コンデンサ素子30と、該コンデンサ素子30を収納するコンデンサケース31と、コンデンサ素子30をコンデンサケース31内に封止する封止部材32と、上記コンデンサ端子4とを備える。
【0023】
図6図7に示すごとく、本例では、バスバー連結部511と端子連結部411とを、互いに重ね合わせてある。バスバー連結部511と端子連結部411との間には、隙間Sが形成されている。そのため、電流Iは、2つの接続部6a,6bのうち一方の接続部6aを通る経路と、他方の接続部6bを通る経路との、2つの経路に分かれて流れる。また、バスバー連結部511を流れる電流Iの向きと、端子連結部411を流れる電流Iの向きとは、互いに逆向きになる。
【0024】
また、図1図4に示すごとく、本例ではコンデンサケース31内に、筒状部34を形成してある。この筒状部34内には、貫通孔33が形成されている。貫通孔33は、コンデンサケース31の底壁部311(図1参照)から開口部312へZ方向に貫通している。第1接続部6aは、Z方向において貫通孔33と重なる位置に形成されている。後述するように本例では、電力変換装置1を製造する際に、締結部材13を上記底壁部311側から貫通孔33内に挿入し、第1接続部6aを締結している。また、第2接続部6bは、コンデンサケース31の外側に形成されている。
【0025】
一方、図3に示すごとく、本例では上述したように、複数の半導体モジュール2と複数の冷却管11とをX方向に積層して積層体10を構成してある。X方向に隣り合う2つの冷却管11は、X方向とZ方向との双方に直交する幅方向(Y方向)における両端部にて、連結管15によって連結されている。また、複数の冷却管11のうち、X方向における一端に位置する端部冷却管11aには、冷媒18を導入するための導入管16と、冷媒18を導出するための導出管17とが取り付けられている。冷媒18を導入管16から導入すると、冷媒18は連結管15を通って全ての冷却管11を流れ、導出管17から導出する。これにより、半導体モジュール2を冷却するよう構成されている。
【0026】
積層体10は、フレーム70内に固定されている。X方向において積層体10に隣り合う位置には、加圧部材14(板ばね)が配されている。この加圧部材14によって、積層体10をフレーム70の壁部700に向けて押圧している。これにより、半導体モジュール2と冷却管11との接触圧を確保すると共に、積層体10をフレーム70内に固定している。フレーム70は、ケース71に固定されている。
【0027】
図2に示すごとく、半導体モジュール2は、半導体素子20を内蔵する封止部21と、該封止部21から突出する複数のパワー端子22と、制御端子23とを備える。パワー端子22には、正側直流バスバー5pに接続される正極端子22pと、負側直流バスバー5nに接続される負極端子22nと、交流電力を出力する交流端子22cとがある。交流端子22には、図示しない交流バスバーが接続される。この交流バスバーを介して、交流端子22と三相交流モータ81(図8参照)とを電気的に接続してある。
【0028】
また、制御端子23は、制御回路基板12に接続している。この制御回路基板12によって、半導体素子20のスイッチング動作を制御している。これにより、直流電源8(図8参照)から供給される直流電力を交流電力に変換するよう構成されている。
【0029】
図5に示すごとく、パワー端子22は、半導体モジュール2の封止部21からZ方向に突出した突出部221と、該突出部221の先端からX方向に延出した延出部222とを備える。
【0030】
また、直流バスバー5p,5nの上記バスバー立設部512には、櫛歯状部521(図4参照)が形成されている。図5に示すごとく、この櫛歯状部521と、パワー端子22の延出部222とを重ね合わせてある。延出部222の先端229は、櫛歯状部521に重ね合わされていない。この先端229と櫛歯状部521とにレーザ光線Lを照射し、これらを溶接してある。
【0031】
次に、電力変換装置1の製造方法について説明する。電力変換装置1を製造するにあたって、まず図9に示すごとく、半導体モジュール2と冷却管11とを積層して積層体10を構成し、加圧部材14(図3参照)を用いて、積層体10をフレーム70内に固定する。そして、半導体モジュール2の制御端子23に制御回路基板12を接続する。
【0032】
次いで、図10に示すごとく、半導体モジュール2の負極端子22nに、負側直流バスバー5nを接続する。この際、負側直流バスバー5nの櫛歯状部521(図5参照)と、負極端子22nの延出部222とにレーザ光線Lを照射し、これらを溶接する。
【0033】
次いで、図11に示すごとく、半導体モジュール2の正極端子22pに、正側直流バスバー5pを接続する。この際、正側直流バスバー5pの櫛歯状部521(図5参照)と、正極端子22pの延出部222とにレーザ光線Lを照射し、これらを溶接する。
【0034】
その後、図12に示すごとく、直流バスバー5のバスバー連結部511と、コンデンサ端子4の端子連結部411とを重ね合わせる。そして、上記接続部6a,6b(図1参照)を締結する。この際、第1接続部6aについては、コンデンサケース31の底壁部311側から締結部材13を貫通孔33に挿入して、締結する。
【0035】
次いで、積層体10とコンデンサ3とをケース71内に収容する。そして、フレーム70とコンデンサ3とをそれぞれケース71に固定する。以上の工程を行うことにより、電力変換装置1を製造する。
【0036】
次に、本例の作用効果について説明する。図1に示すごとく、本例では、直流バスバー5とコンデンサ端子4とを、少なくとも2個の接続部6a,6bにおいて、接続してある。直流バスバー5は、半導体モジュール2に接続したバスバー本体部51を備える。バスバー本体部51の一部によって、2個の接続部6a,6bを連結してある。また、コンデンサ端子4は、コンデンサ素子30に接続した端子本体部41を備える。端子本体部41の一部によって、2個の接続部6a,6bを連結している。
そのため、直流バスバー5及びコンデンサ端子4に寄生するインダクタンスをより低減できる。すなわち、上記構成にすると、図6図7に示すごとく、半導体モジュール2とコンデンサ素子30との間を流れる電流Iを、2個の接続部6a,6bのうち一方の接続部6aを通る経路と、他方の接続部6bを通る経路との、少なくとも2つの電流経路に分けて流すことができる。そのため、電流経路の数を増やすことができる。個々の電流経路にはインダクタンスが寄生するが、これらのインダクタンスは互いに並列に接続されているため、複数のインダクタンスを合成した合成インダクタンスの値は、個々のインダクタンスの値よりも小さくなる。したがって、直流バスバー5及びコンデンサ端子4に寄生するインダクタンス(合成インダクタンス)を低減でき、半導体素子20をオンオフ動作させたときに、このインダクタンスが原因となって大きなサージが発生することを抑制できる。
【0037】
また、図13に示すごとく、バスバー本体部51と端子本体部41とが接触した場合には、電流Iは、接続部6a,6bを通ることなく、バスバー本体部51と端子本体部41との間を直接、流れる。そのため、電流経路の長さが短くなる。したがって、この場合も、直流バスバー5及びコンデンサ端子4に寄生するインダクタンスを低減できる。
【0038】
また、図1に示すごとく、本例では、バスバー連結部511と端子連結部411とを、互いに重ね合わせてある。
そのため、図6図7に示すごとく、バスバー連結部511と端子連結部411とを接近させることができる。バスバー連結部511を流れる電流Iの向きと、端子連結部411を流れる電流Iの向きとは逆向きである。したがって、バスバー連結部511と端子連結部411とを接近させることにより、バスバー連結部511を流れる電流Iによって発生した磁界と、端子連結部411を流れる電流Iによって発生した磁界とを、互いに打消し合わせることができる。そのため、バスバー連結部511と端子連結部411との間に寄生する相互インダクタンスを低減できる。
【0039】
また、本例では図1に示すごとく、コンデンサ3に、Z方向に貫通する貫通孔33を形成してある。2個の接続部6(6a,6b)のうち一部の接続部6(第1接続部6a)は、Z方向において貫通孔33と重なる位置に配置されている。そして、締結部材13を貫通孔33に、第1接続部6aを配した側とは反対側から挿入して、第1接続部6aを締結してある。
そのため、第1接続部6aを、Z方向から見たときに、コンデンサ3の外縁の内側に配置することができる。したがって、端子連結部411およびバスバー連結部511のX方向長さを短くでき、直流バスバー5やコンデンサ端子4を軽量化することできる。また、本例では締結部材13を貫通孔33に入れて第1接続部6aを締結しているため、締結作業を行う際に、フレーム70や加圧部材14等が邪魔にならず、締結作業をスムーズに行うことができる。
【0040】
また、上述のように、コンデンサケース31内に貫通孔33を形成すれば、封止部材32の表面積を増やすことができる。そのため、コンデンサ素子30の冷却効率を高めることができる。
【0041】
また、図2に示すごとく、本例では、一対の直流バスバー5p,5nを隣接配置し、各直流バスバー5p,5nのバスバー立設部512p,512nを、所定間隔をおいて近接配置してある。
そのため、正側直流バスバー5pのバスバー立設部512pと、負側直流バスバー5nのバスバー立設部512nとの間に寄生する相互インダクタンスを低減することができる。したがって、半導体素子20をスイッチング動作させたときに生じるサージを、より低減することができる。
【0042】
また、図1に示すごとく、本例では、第2接続部6bを、Z方向から見たときにコンデンサ3と重ならない位置に形成してある。
そのため、第2接続部6bを締結する際、コンデンサ3が邪魔になりにくくなり、締結作業をスムーズに行うことができる。
【0043】
また、図1図2に示すごとく、本例の直流バスバー5は、上記バスバー立設部512を備える。バスバー立設部512は、バスバー連結部511からZ方向に立設している。
このようにすると、バスバー立設部512に接続される半導体モジュール2を、接続部6a,6bから離れた位置に配することができる。そのため、接続部6a,6bを接続する作業を行う際に、半導体モジュール2等が邪魔になりにくく、接続作業を容易に行うことが可能になる。
【0044】
また、本例では、半導体モジュール2のパワー端子22と直流バスバー5とを、レーザ光線Lを用いて溶接してある。
従来は、パワー端子22と直流バスバー5とをTIG溶接によって溶接していたため、溶接時に大きな熱が発生しやすかった。そのため、パワー端子22を短くすると、溶接によって発生した熱がパワー端子22を通って半導体素子20に伝わり、半導体素子20の特性が変化する可能性があった。したがって、パワー端子22を長く形成せざるを得ず、パワー端子22に大きなインダクタンスが寄生しやすかった。しかしながら、本例ではパワー端子22と直流バスバー5とをレーザ溶接によって溶接してあるため、このような問題を抑制できる。すなわち、レーザ溶接は、狭い範囲に高いエネルギーを集中できるため、余分な熱が発生しにくい。そのため、パワー端子22の長さを短くしても、大きな熱がパワー端子22を通って半導体素子20に伝わり、半導体素子20の特性が変化することを抑制できる。したがって、パワー端子22を短くでき、パワー端子22に寄生するインダクタンスを低減することができる。そのため、半導体素子20に加わるサージをより低減することができる。
【0045】
以上のごとく、本例によれば、直流バスバー及びコンデンサ端子に寄生するインダクタンスをより低減できる電力変換装置を提供することができる。
【0046】
なお、本例では図1に示すごとく、締結部材13を用いて接続部6を締結したが、本発明はこれに限るものではなく、例えば接続部6を溶接することもできる。
【0047】
また、本例では、第1接続部6aと第2接続部6bとの2個の接続部6を形成したが、本発明はこれに限るものではない。すなわち、バスバー連結部511と端子連結部411とをY方向に延出し、これらを接続して別の接続部6を形成してもよい。これにより、3個以上の接続部6を形成してもよい。
【0048】
また、本例では、接続部6をZ方向に締結しているが、本発明はこれに限るものではない。すなわち、接続部6を折り曲げ、Y方向又はZ方向から締結するよう構成してもよい。
【0049】
また、本例の直流バスバー5は、バスバー連結部511と、バスバー立設部512とを備えるが、本発明はこれに限るものではない。すなわち、バスバー立設部512を形成せず、バスバー連結部511に半導体モジュール2を直接、接続してもよい。つまり、バスバー本体部51の全ての部位によって、2個の接続部6a,6bを連結するようにしてもよい。
同様に、本例のコンデンサ端子4は、端子連結部411と端子立設部412とを備えるが、本発明はこれに限るものではない。すなわち、端子立設部412を形成せず、端子連結部411にコンデンサ素子30を直接、接続してもよい。つまり、端子本体部41の全ての部位によって、2個の接続部6a,6bを連結するようにしてもよい。
【0050】
(実施例2)
以下の実施例においては、図面に用いた符号のうち、実施例1において用いた符号と同一のものは、特に示さない限り、実施例1と同様の構成要素等を表す。
【0051】
本例は、コンデンサ端子4の形状を変更した例である。図14図15に示すごとく、本例では、端子連結部411を、コンデンサケース31内に配してある。端子連結部411は、封止部材32に封止されていない。また、バスバー連結部511は、コンデンサケース31の外側に配されている。
【0052】
本例の作用効果について説明する。本例では、端子連結部411をコンデンサケース31内に配してある。そのため、端子立設部412のZ方向長さを短くすることができ、コンデンサ端子4を軽量化することが可能になる。
【0053】
また、本例では、バスバー連結部511を、コンデンサケース31の外側に配してある。そのため、バスバー連結部511と端子連結部411との間に、比較的広い隙間Sを形成することができる。電力変換装置1を稼働すると、半導体モジュール2が発熱し、この熱が直流バスバー5に伝わる。そのため、バスバー連結部511の温度が上昇する。しかしながら、本例のように、バスバー連結部511と端子連結部411との間に広い隙間Sを形成すれば、バスバー連結部511の熱が端子連結部411に伝わりにくくなる。そのため、コンデンサ素子30の温度が上昇することを抑制できる。
その他、実施例1と同様の構成および作用効果を備える。
【0054】
(実施例3)
本例は、コンデンサ端子4の形状を変更した例である。図16図17に示すごとく、本例では、実施例2と同様に、端子連結部411をコンデンサケース31内に収納してある。端子連結部411は、封止部材32によって封止されている。端子連結部411とバスバー連結部511との間には、封止部材32の一部が存在している。また、バスバー連結部511は、コンデンサケース31の外側に配されている。
【0055】
本例の作用効果について説明する。本例では、端子連結部411とバスバー連結部511との間に、封止部材32の一部が存在している。上述したように、電力変換装置1を稼働すると、半導体モジュール2が発熱し、この熱が伝わって、バスバー連結部511の温度が上昇する。本例のように、端子連結部411とバスバー連結部511との間に封止部材32の一部を設ければ、バスバー連結部511から放射される熱を、封止部材32によって遮蔽できる。そのため、バスバー連結部511から端子連結部411に熱が伝わりにくくなり、コンデンサ素子30の温度上昇を効果的に抑制できる。
【0056】
また、本例では、バスバー連結部511を、コンデンサケース31の外側に配してある。そのため、バスバー連結部511と封止部材32との間に広い隙間Sを形成することができる。したがって、バスバー連結部511から端子連結部411へ伝わる熱を、上記隙間Sによって、効果的に抑制できる。
その他、実施例1と同様の構成および作用効果を備える。
【0057】
(実施例4)
本例は、コンデンサ3の配置位置を変更した例である。図18図19に示す如く、本例では、コンデンサ3を、積層体10に対してX方向に隣り合う位置に配置してある。コンデンサ端子4の端子連結部411と、直流バスバー5のバスバー連結部511とは、それぞれY方向に細長い長尺形状を呈している。これら端子連結部411とバスバー連結部511とをY方向から挟む位置に、2つの接続部6a,6bが形成されている。また、本例では、締結部材13を用いて、接続部6をX方向から締結している。
その他、実施例1と同様の構成および作用効果を備える。
【0058】
(実施例5)
本例は、コンデンサ3の配置位置を変更した例である。図20図21に示すごとく、本例では、コンデンサ3を、積層体10に対してY方向に隣り合う位置に配置してある。コンデンサ端子4の端子連結部411と、直流バスバー5のバスバー連結部511とは、それぞれX方向に細長い長尺形状を呈している。これら端子連結部411とバスバー連結部511とをX方向から挟む位置に、2つの接続部6a,6bが形成されている。また、本例では、締結部材13を用いて、接続部6をY方向から締結している。
その他、実施例1と同様の構成および作用効果を備える。
【0059】
(実施例6)
本例は、直流バスバー5の形状を変更した例である。図22図23に示すごとく、本例では、直流バスバー5の櫛歯状部521に、クリップ部59を形成してある。このクリップ部59によって、パワー端子22の延出部222をZ方向から挟持している。これにより、延出部222と櫛歯状部521とを溶接する際に、これらがZ方向に離れないようにしてある。そのため、延出部222と櫛歯状部521との間に隙間が形成されにくくなり、これらを容易に溶接することができる。
その他、実施例1と同様の構成および作用効果を備える。
【0060】
(実施例7)
本例は、第1接続部6aの形成位置を変更した例である。図24に示すごとく、本例では、第1接続部6aを、Z方向から見たときにコンデンサ3と重ならない位置に形成してある。
そのため、コンデンサ3に貫通孔33を形成しなくても、第1接続部6aを容易に接続することができる。そのため、コンデンサ3の構造を簡素にすることができる。
その他、実施例1と同様の構成および作用効果を備える。
【0061】
(実施例8)
本例は、コンデンサ3の形状、および第2接続部6bの形成位置を変更した例である。図25に示すごとく、本例のコンデンサ3は、2つの筒状部34(34a,34b)を備える。各筒状部34a,34b内には、貫通孔33(33a,33b)が形成されている。2つの接続部6a,6bは、それぞれ、Z方向において貫通孔33a,33bと重なる位置に形成されている。電力変換装置1を製造する際には、これら2つの貫通孔33a,33bに、底壁部311側から締結部材13を挿入し、2つの接続部6a,6bをそれぞれ締結する。
【0062】
このように構成すると、封止部材32の表面積をより増やすことができるため、コンデンサ素子30の冷却効率をより高めることができる。また、2つの接続部6a,6bの接続作業をそれぞれ行うときに、積層体10やフレーム70等が邪魔になりにくい。そのため、接続作業を容易に行うことができる。
その他、実施例1と同様の構成および作用効果を備える。
【符号の説明】
【0063】
1 電力変換装置
2 半導体モジュール
20 半導体素子
3 コンデンサ
30 コンデンサ素子
4 コンデンサ端子
41 端子本体部
5 直流バスバー
51 バスバー本体部
6 接続部
図1
図2
図3
図4
図5
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