(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
被検体に向けて送信超音波の送信と反射超音波の受信とを行う超音波探触子を備え、当該超音波探触子により得られた受信信号から超音波画像データを生成する超音波画像診断装置であって、
駆動信号を生成して前記超音波探触子に出力することにより当該超音波探触子に前記送信超音波を生成させる送信部と、
前記超音波探触子から受信信号を受信する受信部と、
前記受信信号から高調波成分を抽出し、当該高調波成分に基づいて超音波画像データを生成する画像生成部と、を備え、
前記送信部は、前記駆動信号を用いて前記超音波探触子を駆動し、波連長が前記超音波探触子の送信−6dB帯域の下限周波数成分の1.5波相当以上であり、前記送信−6dB帯域内の周波数成分の信号強度の標準偏差が6以下であり、最大強度を0[dB]として規格化した後の送信−6dB帯域の下限周波数成分の信号強度が−8[dB]以上である送信超音波を前記超音波探触子に送信させ、
前記画像生成部は、前記送信超音波を送信することより得られた受信信号の高調波成分に基づいて超音波画像データを生成する超音波画像診断装置。
被検体に向けて送信超音波の送信と反射超音波の受信とを行う超音波探触子を備え、当該超音波探触子により得られた受信信号から超音波画像データを生成する超音波画像診断装置であって、
駆動信号を生成して前記超音波探触子に出力することにより当該超音波探触子に前記送信超音波を生成させる送信部と、
前記超音波探触子から受信信号を受信する受信部と、
前記受信信号から高調波成分を抽出し、当該高調波成分に基づいて超音波画像データを生成する画像生成部と、を備え、
前記送信部は、駆動時間が前記超音波探触子の送信−6dB帯域の下限周波数成分の1.5波相当以上であり、前記送信−6dB帯域内の周波数成分の信号強度の標準偏差が7以下であり、前記送信−6dB帯域の下限周波数成分の信号強度が10[dB]以上である駆動信号を用いて前記超音波探触子を駆動する超音波画像診断装置。
前記送信部は、AM変調及びFM変調の少なくとも一つにより変調した複数の時間波形を合成することにより前記駆動信号を生成する請求項1又は2に記載の超音波画像診断装置。
前記送信部は、AM変調及びFM変調の少なくとも一つにより変調した複数の時間波形を合成することにより得られた波形を送信部の電圧ステート数に応じて割り当てを行った波形情報を記憶しておき、これに基づいて前記駆動信号を生成する請求項1又は2に記載の超音波診断装置。
被検体に向けて送信超音波の送信と反射超音波の受信とを行う超音波探触子を備え、当該超音波探触子により得られた受信信号から超音波画像データを生成する超音波画像診断装置であって、
駆動信号を生成して前記超音波探触子に出力することにより当該超音波探触子に前記送信超音波を生成させる送信部と、
前記超音波探触子から受信信号を受信する受信部と、
前記受信信号から高調波成分を抽出し、当該高調波成分に基づいて超音波画像データを生成する画像生成部と、を備え、
前記送信部は、駆動時間が前記超音波探触子の送信−6dB帯域の下限周波数成分の1.5波相当以上であり、前記駆動時間の各区間を0.5波とみなして周波数換算し、当該換算した周波数を前記超音波探触子の送受信−6dB帯域の中心周波数で規格化した値の標準偏差が0.1以上0.3以下である駆動信号を用いて前記超音波探触子を駆動する超音波画像診断装置。
【発明を実施するための形態】
【0026】
添付図面を参照して本発明に係る実施の形態を詳細に説明する。なお、本発明は、図示例に限定されるものではない。なお、以下の説明において、同一の機能及び構成を有するものについては、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0027】
先ず、
図1〜
図3を参照して、本実施の形態の超音波画像診断装置Sの装置構成を説明する。
図1は、本実施の形態の超音波画像診断装置Sの外観図である。
図2は、超音波画像診断装置Sの機能構成を示すブロック図である。
図3は、送信部12の機能構成を示すブロック図である。
【0028】
本実施の形態に係る超音波画像診断装置Sは、
図1及び
図2に示すように、超音波画像診断装置本体1と、超音波探触子2と、を備えている。超音波探触子2は、図示しない生体等の被検体に対して超音波(送信超音波)を送信するとともに、この被検体で反射した超音波の反射波(反射超音波:エコー)を受信する。超音波画像診断装置本体1は、超音波探触子2とケーブル3を介して接続され、超音波探触子2に電気信号の駆動信号を送信することによって超音波探触子2に被検体に対して送信超音波を送信させるとともに、超音波探触子2にて受信した被検体内からの反射超音波に応じて超音波探触子2で生成された電気信号である受信信号に基づいて被検体内の内部状態を超音波画像データとして画像化する。
【0029】
超音波探触子2は、圧電素子からなる振動子2a、送信超音波を焦点に向けて集束させる音響レンズ等を備えており、この振動子2aは、例えば、方位方向に一次元アレイ状に複数配列されている。本実施の形態では、例えば、192個の振動子2aを備えた超音波探触子2を用いている。なお、振動子2aは、二次元アレイ状に配列されたものであってもよい。また、振動子2aの個数は、任意に設定することができる。また、本実施の形態では、超音波探触子2について、リニア走査方式の電子スキャンプローブを採用したが、電子走査方式あるいは機械走査方式の何れを採用してもよく、また、リニア走査方式、セクタ走査方式あるいはコンベックス走査方式の何れの方式を採用することもできる。
【0030】
超音波画像診断装置本体1は、例えば、
図2に示すように、操作入力部11と、送信部12と、受信部13と、画像生成部14と、画像処理部15と、DSC(Digital Scan Converter)16と、表示部17と、制御部18と、を備える。
【0031】
操作入力部11は、例えば、診断開始を指示するコマンドや被検体の個人情報等のデータの入力などを行うための各種スイッチ、ボタン、トラックボール、マウス、キーボード等を備えており、操作信号を制御部18に出力する。
【0032】
送信部12は、制御部18の制御に従って、超音波探触子2にケーブル3を介して電気信号である駆動信号を供給して超音波探触子2に送信超音波を発生させる回路である。より具体的には、送信部12は、
図3に示すように、例えば、クロック発生回路121、パルス発生回路122、時間及び電圧設定部123及び遅延回路124を備えている。
【0033】
クロック発生回路121は、駆動信号の送信タイミングや送信周波数を決定するクロック信号を発生させる回路である。パルス発生回路122は、所定の周期で駆動信号としてのパルス信号を発生させるための回路である。パルス発生回路122は、例えば、3値(+HV/0(GND)/−HV)、5値(+HV/+MV/0(GND)/−MV/−HV)の電圧を切り替えて出力することにより、矩形波による駆動信号を発生させることができる。このとき、パルス信号の振幅については、正極性及び負極性で同一となるようにしたが、これに限定されない。本実施の形態では、3値、5値の電圧を切り替えて駆動信号を出力するようにしたが、3値、5値に限定されず、適宜の値に設定することができるが、5値以下が好ましい。これにより、低コストで周波数成分の制御の自由度を向上させることができ、より高分解能である送信超音波を得ることができる。
【0034】
時間及び電圧設定部123は、パルス発生回路122から出力される駆動信号の同一電圧レベルの各区間の持続時間及びその電圧レベルを設定する。すなわち、パルス発生回路122は、時間及び電圧設定部123によって設定された各区間の持続時間及び電圧レベルに従ったパルス波形による駆動信号を出力する。時間及び電圧設定部123で設定される各区間の持続時間及び電圧レベルは、例えば、操作入力部11による入力操作により可変することができる。
【0035】
遅延回路124は、駆動信号の送信タイミングを振動子毎に対応した個別経路毎に遅延時間を設定し、設定された遅延時間だけ駆動信号の送信を遅延させて送信超音波によって構成される送信ビームの集束を行うための回路である。
【0036】
以上のように構成された送信部12は、制御部18の制御に従って、駆動信号を供給する複数の振動子2aを、超音波の送受信毎に所定数ずらしながら順次切り替え、出力の選択された複数の振動子2aに対して駆動信号を供給することによりスキャンを行う。
【0037】
本実施の形態では、後述する高調波成分を抽出するために、パルスインバージョン法を実施することができる。すなわち、送信部12は、パルスインバージョン法を実施する場合には、第1のパルス信号と、この第1のパルス信号とは極性反転した第2のパルス信号とを同一走査線上に時間間隔をおいて送信することができる。なお、このとき、第1のパルス信号の複数のデューティーのうちの少なくとも1つを異ならせて極性反転させた第2のパルス信号を送信するようにしてもよい。また、第2のパルス信号は、第1のパルス信号とは時間反転させたものであってもよい。
【0038】
受信部13は、制御部18の制御に従って、超音波探触子2からケーブル3を介して電気信号の受信信号を受信する回路である。受信部13は、例えば、増幅器、A/D変換回路、整相加算回路を備えている。増幅器は、受信信号を、振動子2a毎に対応した個別経路毎に、予め設定された所定の増幅率で増幅させるための回路である。A/D変換回路は、増幅された受信信号をアナログ−デジタル変換(A/D変換)するための回路である。整相加算回路は、A/D変換された受信信号に対して、振動子2a毎に対応した個別経路毎に遅延時間を与えて時相を整え、これらを加算(整相加算)して音線データを生成するための回路である。
【0039】
画像生成部14は、受信部13からの音線データに対して包絡線検波処理や対数増幅などを実施し、ゲインの調整等を行って輝度変換することにより、Bモード画像データを生成する。すなわち、Bモード画像データは、受信信号の強さを輝度によって表したものである。画像生成部14にて生成されたBモード画像データは、画像処理部15に送信される。また、画像生成部14は、高調波成分抽出部14aを備えている。
【0040】
高調波成分抽出部14aは、受信部13から出力された受信信号からパルスインバージョン法を実施して高調波成分を抽出する。本実施の形態では、高調波成分抽出部14aにより、2次高調波成分を抽出することができる。2次高調波成分は、上述した第1のパルス信号及び第2のパルス信号からそれぞれ発生した2つの送信超音波にそれぞれ対応する反射超音波から得られる受信信号を加算(合成)して受信信号に含まれる基本波成分を除去した上で必要に応じてフィルター処理を行うことにより抽出することができる。
【0041】
画像処理部15は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)などの半導体メモリーによって構成された画像メモリー部15aを備えている。画像処理部15は、画像生成部14から出力されたBモード画像データをフレーム単位で画像メモリー部15aに記憶する。フレーム単位での画像データを超音波画像データ、あるいはフレーム画像データということがある。画像処理部15は、画像メモリー部15aに記憶した超音波画像データを適宜読み出してDSC16に出力する。
【0042】
DSC16は、画像処理部15より受信した超音波画像データをテレビジョン信号の走査方式による画像信号に変換し、表示部17に出力する。
【0043】
表示部17は、LCD(Liquid Crystal Display)、CRT(Cathode-Ray Tube)ディスプレイ、有機EL(Electronic Luminescence)ディスプレイ、無機ELディスプレイ
及びプラズマディスプレイ等の表示装置が適用可能である。表示部17は、DSC16から出力された画像信号に従って表示画面上に超音波画像の表示を行う。
【0044】
制御部18は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)を備えて構成され、ROMに記憶されているシステムプログラム等の各種処理プログラムを読み出してRAMに展開し、展開したプログラムに従って超音波画像診断装置Sの各部の動作を集中制御する。ROMは、半導体等の不揮発メモリー等により構成され、超音波画像診断装置Sに対応するシステムプログラム及び該システムプログラム上で実行可能な各種処理プログラムや、各種データ等を記憶する。これらのプログラムは、コンピューターが読み取り可能なプログラムコードの形態で格納され、CPUは、当該プログラムコードに従った動作を逐次実行する。RAMは、CPUにより実行される各種プログラム及びこれらプログラムに係るデータを一時的に記憶するワークエリアを形成する。
【0045】
次に、
図4(a)〜
図6(d)を参照して、本実施の形態における超音波画像データ生成のための駆動信号生成、超音波送受信の方法について説明する。
図4(a)は、本実施の形態の一例の送信超音波の信号強度の周波数特性を示す図である。
図4(b)は、深度が表層部における反射超音波の信号強度の周波数特性を示す図である。
図4(c)は、深度が焦点近傍における反射超音波の周波数特性を示す図である。
図4(d)は、深度が焦点より深い部分における反射超音波の信号強度の周波数特性を示す図である。
図5は、本実施の形態及び従来例における表示深度に対する総合画質を示す図である。
図6(a)は、送信直後における送信超音波の時間波形を示す図である。
図6(b)は、表層部における送信超音波の時間波形を示す図である。
図6(c)は、表層から焦点における送信超音波の時間波形を示す図である。
図6(d)は、焦点近傍における送信超音波の時間波形を示す図である。
【0046】
本実施の形態では、超音波探触子2の帯域を充分に利用した広帯域の超音波送出を行うだけでなく、駆動信号の波形、ひいては送信超音波の波形の周波数成分分布を制御することにより、超音波探触子−20dB帯域下限周波数の1.5波相当以上の長時間の駆動信号を入力しながら、パルス圧縮等の手法を用いずに、被検体の浅部では分解能とS/Nとに優れた高調波画像が得られ、なおかつ深部での顕著な解像度低下を抑制して、浅部から深部まで均一性の高い高調波画像を得ることが可能となる。
【0047】
より具体的には、広い周波数成分を含む送信を行い、
図6(a)〜
図6(d)のように深達性の高い、低い周波数成分は時間的な大きな広がりを持つが、高い周波数成分は時間的な広がりが小さい送信超音波を送信することにより達成される。
【0048】
ティッシュハーモニックイメージングに用いられる高調波成分は、送信超音波の集束により音圧が向上して伝搬非線形を生じることにより生成される。送信超音波の集束は、超音波探触子2のように、音響レンズを用いる一般的な超音波探触子を用いる場合には、短軸方向は音響レンズによる音波の屈折により集束され、長軸方向は電子フォーカスによる送信遅延により集束される。このとき、周波数により音波の集束性が異なることを利用して高調波の生成を制御する。
【0049】
例えば、
図4(a)のような、基本波f1,f2,f3を含む送信超音波を送信する構成を考える。
図4(a)において、横軸が周波数を示し、縦軸が感度(信号強度)を示し、太線の実線が超音波探触子の周波数成分(送受信周波数帯域)を示す。また、
図4(b)〜
図4(d)において、横軸が周波数を示し、縦軸が信号強度を示し、中線の実線が反射超音波の各周波数成分をまとめた周波数成分を示し、太線の実線が超音波探触子2の周波数成分(送受信周波数帯域)を示す。
【0050】
ホイヘンスの原理に基づく超音波ビームの集束幅は周波数の逆数に比例することが知られている。
図4(a)の送信超音波波形の構成になっている場合、基本波f1に対して3倍の周波数を有する基本波f3成分は集束によるビーム幅が1/3となる。すなわち基本波f1と比較して3倍の密度で集束するため、この成分を含む領域は音響レンズによる集束でも容易に音圧が上昇し、高調波を生成する非線形領域に達する。
【0051】
図6(a)〜
図6(d)において、横軸が時間を示し、縦軸が音圧を示し、送信超音波における基本波f1,f2成分が主体となる時間波形領域を破線で示し、同じく基本波f3成分が主体となる時間波形領域を一点鎖線で示す。また、音圧が正の閾値よりも高い又は負の閾値よりも低い領域が非線形領域を表し、音圧が正の閾値以下負の閾値以上にある領域が線形領域を表している。
図5の表示深度aが
図6(a)の深度に対応し、
図5の表示深度bが
図6(b)の深度に対応し、
図5の表示深度cが
図6(c)の深度に対応し、
図5の表示深度dが
図6(d)の深度に対応するものとする。
【0052】
図6(a)に示すように、超音波探触子2からの送信超音波の送信直後では、基本波成分は線形領域内であるが、周波数の高い成分が局在化している一点鎖線に示した様に相応に高い状態となっている。
図6(b)に示すように、被検体の表層部(音響レンズによる集束)の送信超音波では、周波数が高く集束性の高い基本波f3成分を主体とする領域が音響レンズ集束により非線形領域に到達し、伝搬速度差を生じて高調波を生成する。よって浅部としての表層部では、電子フォーカス焦点が深部にある場合でも、
図4(b)のようなf3の差音を中心とする広帯域な高調波成分が音響レンズにより生成される。送信超音波のうち、集束により非線形領域に達するのは波形のうち高周波成分を含む領域だけであるため、波形全体のパルス長は長いが高調波を生成する非線形領域到達部分は短く、高分解能な画像が得られる。
図4(b)に示すように、送波直後〜表層部で生成して反射受信される高調波成分は、基本波f1,f2に由来する成分よりも基本波f3に由来する成分の信号強度が強くなっている。
【0053】
図6(c)に示すように、表層から長軸焦点までの中間領域においては、基本波f3成分による表層部での高調波生成と、基本波f1,f2成分による焦点近傍での高調波生成との双方が相補うように生成する。
【0054】
図6(d)に示すように、焦点近傍では、高い周波数成分の基本波f3を主体とする時間波形領域は減衰および高調波成分へのエネルギー移行により減少して線形領域の音圧まで低下するが、代わりに減衰が弱く表層部では線形領域にとどまっていた低周波の基本波f1,f2を主体とする成分の音圧が電子フォーカスによる集束により非線形領域まで達することにより高調波成分を生成するようになる。表層部と同様、送信超音波のパルス長は長いものの、高調波を生成する非線形領域に達する領域は一部であるため高い分解能が得られる。
図4(c)に示すように、焦点近傍では、新たに生成する高調波成分は、基本波f1,f2に由来する成分が主体となる。基本波f3に由来する高調波成分は殆ど生成しなくなるため、減衰により表層部より減少して、反射受信される高調波の信号強度関係は図示したような関係になる。また、ここで示されている3f1成分、すなわち3次高調波成分は、他の成分がパルスインバージョンの加算演算により抽出されるのとは別に減算演算および帯域通過処理により抽出され、必要に応じて位相調整された後、他の高調波成分の音線信号に加算されることを示している。必要に応じて位相をオールパスフィルターなどで調整することにより波の重ね合わせ原理により他の高調波成分と結合して広帯域な受信信号を得ることが可能となる。
図4(d)に示すように、焦点よりも深い部分では、高調波の生成より減衰の方が優るため、次第に反射受信できる高調波成分は減少していくが、基本波f1,f2に由来する高調波成分はある程度高調波生成が継続して急激に減少しないのに対し、基本波f3に由来する高調波成分は減衰の影響のみを受けるため、反射受信される高調波成分に占める割合はかなり小さくなる。
【0055】
図5に示すように、
図4(a)の送信超音波を用いた場合の表示深度に対応する総合画質の特性は、後述の比較例1に示した様な、超音波探触子の帯域の低周波側の基本波を用いて高調波画像を得る従来技術の総合画質の特性に比べて高くなる。総合画質は、生成される画像データの超音波画像のS/N、分解能を含む総合的な画質を示す。
図5において、破線が、基本波f3成分による第1段の生成高調波成分を示し、一点鎖線が、基本波f1,f2成分による第2段の生成高調波成分を示す。本実施の形態の第1段、第2段の生成高調波成分をまとめた総合画質の周波数特性を実線の太線で示し、従来例の総合画質の周波数特性を実線の中線で示す。従来例では送波されている音波の周波数が低いために浅部では充分に音圧が上昇せずに充分な高調波信号が得られないため画質が向上しないのに対し、こうして集束特性の差を利用して高調波の生成を多段生成とすることにより、表層部から焦点近傍の広い領域に渡って高S/Nで分解能の高い超音波画像を得ることが可能となる。
【0056】
図4(a)で説明した送信超音波波形は1例であり、この構成に限定されないが、送信超音波を構成する周波数成分のうち、周波数の高い成分ほど時間的な広がりが狭く集中しており、周波数の低い成分ほど時間的な広がりが広いことが高調波多段生成のための必要条件となる。
【0057】
次に、
図7(a)〜
図10(c)を参照して、上記に示した送信超音波波形を具体的に生成させる方法を説明する。先ず、
図7(a)〜
図8を参照して、上記送信超音波波形を生成させる第一の方法を説明する。
図7(a)は、従来の波形合成を示す図である。
図7(b)は、本実施の形態の波形合成を示す図である。
図8は、本実施の形態の波形合成による後述する実施例5の駆動信号の時間波形生成を示す図である。
【0058】
そこで、上記送信超音波波形を生成させる第一の方法は、送信部12(パルス発生回路122)で、周波数の異なる複数の時間波形(パルス)を変調して合成し、これを駆動信号の波形とする方法である。しかし、
図7(a)に示すように、従来の波形合成方法として、点線で示す同じ時間幅の矩形窓を用いてフィルタリングした複数(3つ)の周波数の波形を単純に合成して駆動信号を生成する方法では、駆動時間が送信−6dB帯域の下限周波数成分の1.5波相当以上になると、
図6(a)に示された、高い周波数成分が時間的な広がりが小さく、低い周波数成分が時間的な広がりの大きい送信超音波を生成できないため、高調波の多段生成が実現できない。
図7(a)、(b)の各波形において、横軸が時間を示し、縦軸が信号強度(電圧)を示す。
【0059】
本実施の形態の変調の方法は、例えば
図7(b)に示すように、点線で示すハニング窓等を用いて、周波数の時間波形の振幅を変調する方法(AM(Amplitude Modulation)変調)と、周波数を遷移させる方法(FM(Frequency Modulation)変調)と、のいずれか一方又はこれらの組合せを用いて波形を合成する合成方法である。
【0060】
図7(b)の例では、左から1番目の波形が、FM変調した所定波形を矩形窓によりフィルタリングされた時間波形であり、2、3番目の波形が、点線で示すハニング窓を用いてAM変調された時間波形である。送信部12が、これら1〜3番目の波形を生成して合成して駆動することにより、
図6(a)に示された送信超音波を生成できる。波形の合成にあたっては、1〜3番目の波形の振幅に各々適当な倍率を乗じて合成することが好ましい。この倍率は超音波探触子の送信感度差を補正し、所望の周波数強度比の送信超音波が送出されるよう決定される。
【0061】
なお、AM変調は、
図7(b)に示したような同じ時間幅の窓を利用した方法だけにとどまらず、時間幅の異なる窓を利用する方法も利用することができる。すなわち必ずしも振幅を段階的に変化させる方法だけでなく、振幅をON−OFFする方法であるいわゆる矩形窓で、各周波数成分の時間的な広がりを制御する方法も本実施の形態においては利用することが可能である。
【0062】
図7(b)の例では、1〜3番目の時間波形が、駆動信号の基本波f1,f2,f3成分に対応する。合成に用いられる周波数成分の数は特に限定されないが、上述の送信超音波波形の構成を構築するためには最低2つの周波数、好ましくは3つ以上の周波数を合成して駆動波形を生成することが好ましい。
【0063】
また、用いられる周波数成分の周波数差が少ないと、上述の超音波ビームの集束性の差が生じにくくなり、この差を利用した高調波の多段生成が成しえないため、合成に用いる波形のうち、最も低い周波数成分の2倍以上高い周波数成分を少なくとも含むことが好ましい。
【0064】
上記方法により複数の周波数成分を合成して得られた駆動信号の波形は、そのまま任意波形送信機等として送信部12を用いて駆動しても良いが、電圧ステート数が限定された送信部12で駆動可能とするためにステート数、例えば5値の電圧値にこれを割り当てた近似駆動波形を用いて駆動しても良い。つまり、パルス発生回路122は、AM変調及びFM変調の少なくとも一つにより変調された時間波形を合成した波形に基づき、当該合成波形に、時間及び電圧設定部123により設定された各区間の持続時間及び電圧レベルを割り当てて駆動信号を生成し、当該駆動信号に遅延回路124の遅延を与えて、超音波探触子2に出力する構成としてもよいし、あらかじめ割り当て済みの波形情報を記憶部(図示略)に記憶しておき、これに基づいて駆動信号を生成する方法でも良いが、後者の方が装置の複雑化を招かないため好ましい。駆動制御の調整を細かく行える点では任意波形送信機を用いて駆動することが好ましいが、5値程度の電圧ステート数でも実用上充分な駆動制御が可能であり、装置のコストを抑えるという点ではこの態様が好ましい。
【0065】
合成波形の各電圧ステートへの割り当ての具体的な方法を、後述する実施例5に示す波形番号12の駆動信号の波形12を例にとって説明する。ここで、実施例5の駆動信号の波形12は、
図34(a)に示す信号強度の時間特性を有する駆動信号であり、
図34(b)に示す信号強度の周波数特性を有する。
【0066】
まず
図8に示すように
図7(b)のごとく変調を行った3つの各波形W1,W2,W3を生成し、上から1番目の波形W1は振幅を2倍、他の波形W2,W3は1倍として加算して合成波形W4を得る。その後、正極側と負極側の振幅バランスを考慮して、直流成分のため送波に影響しない振幅方向のバイアスを波形全体に加え、これを
図8に示したように5値に割り当てて、実施例5の駆動信号の波形12としての波形W5を得ている。
【0067】
さらに、FM変調を行う場合は、
図7(b)の1番目の時間波形のように、波形の持続時間中において、低周波→高周波→低周波と遷移する変調であることが上記に示した送信超音波波形を得るためには好ましい。
加えて、合成する波形のうち最も低い周波数成分はFM変調を行うことが、周波数帯域幅を保ちながら低周波成分を増加させるうえで好ましい。
【0068】
次いで、
図9〜
図11(b)を参照して、上記送信超音波波形を生成させる第二の方法上記送信超音波波を説明する。
図9は、駆動信号の各区間を示す図である。
図10(a)は、後述する比較例2の駆動信号の各区間の周波数成分換算値分布を示す図である。
図10(b)は、後述する実施例2の駆動信号の各区間の周波数成分換算値分布を示す図である。
図10(c)は、後述する比較例8の駆動信号の各区間の周波数成分換算値分布を示す図である。
図11(a)は、超音波探触子2の送受信の規格化感度の周波数特性を示す図である。
図11(b)は、超音波探触子2の送信の規格化感度の周波数特性を示す図である。
【0069】
上記送信超音波波形を生成させる第二の方法は、例えば
図9の様に、駆動信号の1区間の持続時間を離散化し、広帯域を確保する方法である。
図9において、横軸が時間を示し、縦軸が信号強度(電圧)を示し、駆動信号の波形の1値が持続する時間を両矢印で示す1区間とする。この場合の1値とは、電源電圧等の変動による実測値としての電圧揺らぎは考慮しないものとし、駆動信号の論理値として1値が持続している時間を1区間とする。こうして得られた駆動信号の各区間の持続時間を0.5波とみなして周波数換算する。
【0070】
ここで、後述する比較例2に示す波形番号2の駆動信号の波形2と、後述する実施例2に示す波形番号8の駆動信号の波形8と、後述する比較例8に示す波形番号10の駆動信号の波形10を例にとって第二の方法を説明する。ここで、比較例2の駆動信号の波形2は、
図14(a)に示す信号強度の時間特性を有する駆動信号であり、
図14(b)に示す信号強度の周波数特性を有する。実施例2の駆動信号の波形8は、
図26(a)に示す信号強度の時間特性を有する駆動信号であり、
図26(b)に示す信号強度の周波数特性を有する。比較例8の駆動信号の波形10は、
図30(a)に示す信号強度の時間特性を有する駆動信号であり、
図30(b)に示す信号強度の周波数特性を有する。
【0071】
比較例2、実施例2、比較例8の駆動信号の各区間の周波数(1次)成分換算値を、それぞれ、
図10(a)〜
図10(c)に黒丸●で示す。また、
図10(a)〜
図10(c)において、横軸が周波数[MHz]を示し、縦軸が信号強度(相対値)を示し、超音波探触子2の送信感度の−20dB帯域(送信−20dB帯域)を両矢印で示し、各区間の周波数(矩形)3次高調波成分換算値を白四角□で示す。
【0072】
ここで、
図11(a)、
図11(b)を参照して、超音波探触子2の周波数特性を説明する。
図11(a)、(b)において、横軸が周波数[MHz]を示し、縦軸が規格化感度[dB]を示す。規格化感度では、最大の感度の値を0[dB]にとっている。
図11(a)において、送受信の−6dB感度帯域を示す送受信−6dB帯域を黒の両矢印で示し、送受信の−20dB感度帯域を示す送受信−20dB帯域を白の両矢印で示す。送受信−6dB帯域の上限値を周波数FH6とし、下限値を周波数FL6とする。送受信−20dB帯域の上限値を周波数FH20とし、下限値を周波数FL20とする。超音波探触子2の送受信−6dB帯域の中心の周波数を中心周波数FC6とする。
【0073】
図11(b)において、送信の−6dB感度帯域を示す送信−6dB帯域を黒の両矢印で示し、送信−20dB感度帯域を示す送信−20dB帯域を白の両矢印で示す。送信−6dB帯域の上限値を周波数TxFH6とし、下限値を周波数TxFL6とする。送信−20dB帯域の上限値を周波数TxFH20とし、下限値を周波数TxFL20とする。
図10(a)〜
図10(c)には、
図11(b)の超音波探触子2の送信−20dB帯域が示されている。
【0074】
比較例2の波形2の様に、一定の駆動時間を繰り返す波形の場合、
図10(a)に示すように、矩形波に含まれる周波数3次高調波成分換算値を考慮しても、超音波探触子2の送信−20dB帯域の一部のみに周波数成分を持つ形となるため、送出される音波も狭帯域となって広帯域な高調波成分を得ることが出来ない。しかしながら、実施例2の波形8の様に、1区間の持続時間を離散化して駆動パルスの規則性を分散させると、
図10(b)に示すように、超音波探触子2の送信−20dB帯域内に万遍なく駆動周波数成分が得られ、帯域平坦性が向上し、これらの各成分から生成する高調波は広帯域な成分が得られるようになる。また、1区間の持続時間を中央付近ほど短く、端部ほど長く設定することにより、上述の時間波形の周波数成分毎の時間的広がりが制御され、高調波の多段生成が可能となる。
【0075】
しかしながら、比較例8の波形10の様に各区間に過度に離散させると、
図10(c)に示すように、深部高調波生成に大きく寄与する低周波成分が相対的に低下し、所期の目的であるペネトレーションが低下する。よってこの離散度は、各区間を0.5波とみなして周波数換算し、これを超音波探触子2の送受信−6dB帯域の中心周波数FC6で規格化した値の標準偏差が0.1〜0.3の間であることが好ましい。例えば区間の持続時間が125[nsec]の場合、0.5波として見なした場合の周波数換算値は4[MHz]となり、このとき送受信−6dB帯域の中心周波数FC6が10.25[MHz]であれば、規格化値は0.39となる。
また、各区間を0.5波として周波数換算した際の周波数値は、超音波探触子2の送信−20dB帯域下限値の周波数TxFL20の1/3〜超音波探触子2の送信−20dB帯域上限値の周波数TxFH20の間であることが好ましい。周波数値が周波数TxFL20の1/3より低いと周波数の1次成分のみならず、矩形波であるが故に必然的に含まれる3次高調波成分も周波数TxFL20より低くなり、送信超音波の送出に寄与しなくなる。同様に、周波数値が周波数TxFH20より高いと1次成分と3次成分のいずれもが周波数TxFH20より高くなり、こちらもまた送信超音波の送出に寄与しなくなるためである。
【0076】
次に、
図11(a)〜
図41(b)を参照して、超音波探触子2の具体例と、駆動信号、送信超音波の具体例としての実施例及び比較例と、を説明する。先ず、
図11(a)、(b)を参照して、超音波探触子2の具体例を説明する。
【0077】
以下の実施例及び比較例の駆動信号及び送信超音波の生成においては、
図11(a)の超音波送受信の規格化感度の周波数特性と、
図11(b)の超音波送信の規格化感度の周波数特性と、を有する超音波探触子2を用いるものとする。
図11(a)では、送受信−20dB帯域が、4.0〜18.3[MHz]であり、送受信−6dB帯域の中心周波数FC6が、10.25[MHz]であるものとする。
【0078】
図11(b)では、送信−20dB帯域が、3.4〜21.3[MHz]であり、周波数TxFL6が、5.0[MHz]であるものとする。
【0079】
次いで、
図12(a)〜
図41(b)を参照して、実施例1〜6及び比較例1〜10の駆動信号及び送信超音波を説明する。
【0080】
<比較例1>
比較例1の駆動信号の波形を波形1(波形番号:1)とする。
図12(a)は、比較例1の駆動信号の信号強度の時間特性を示す図である。
図12(b)は、比較例1の駆動信号のパワースペクトルを示す図である。
図13(a)は、比較例1の送信超音波の信号強度の時間特性を示す図である。
図13(b)は、比較例1の送信超音波のパワースペクトルを示す図である。
【0081】
送信部12が生成する比較例1の駆動信号の波形は、
図12(a)に示す信号強度の時間特性の波形となる。
図12(a)に示す駆動信号をフーリエ変換して得られたパワースペクトルは、
図12(b)に示す信号強度の周波数特性となる。
図12(a)に示す駆動信号を超音波探触子2に入力して送信される送信超音波の波形は、
図13(a)に示す信号強度の時間特性の波形となる。
図13(a)に示す送信超音波をフーリエ変換して得られたパワースペクトルは、
図13(b)に示す信号強度の周波数特性となる。
【0082】
ここで、
図12(a)、
図13(a)…
図41(a)において、横軸が時間[μs]を示し、縦軸が信号強度(電圧)[V]を示す。また、
図12(b)、
図13(b)…
図41(b)において、横軸が周波数[MHz]を示し、縦軸が信号強度[dB]を示す。
【0083】
<比較例2>
比較例2の駆動信号の波形を波形2(波形番号:2)とする。
図14(a)は、比較例2の駆動信号の信号強度の時間特性を示す図である。
図14(b)は、比較例2の駆動信号のパワースペクトルを示す図である。
図15(a)は、比較例2の送信超音波の信号強度の時間特性を示す図である。
図15(b)は、比較例2の送信超音波のパワースペクトルを示す図である。
【0084】
送信部12が生成する比較例2の駆動信号の波形は、
図14(a)に示す信号強度の時間特性の波形となる。
図14(a)に示す駆動信号をフーリエ変換して得られたパワースペクトルは、
図14(b)に示す信号強度の周波数特性となる。
図14(a)に示す駆動信号を超音波探触子2に入力して送信される送信超音波の波形は、
図15(a)に示す信号強度の時間特性の波形となる。
図15(a)に示す送信超音波をフーリエ変換して得られたパワースペクトルは、
図15(b)に示す信号強度の周波数特性となる。
【0085】
<比較例3>
比較例3の駆動信号の波形を波形3(波形番号:3)とする。
図16(a)は、比較例3の駆動信号の信号強度の時間特性を示す図である。
図16(b)は、比較例3の駆動信号のパワースペクトルを示す図である。
図17(a)は、比較例3の送信超音波の信号強度の時間特性を示す図である。
図17(b)は、比較例3の送信超音波のパワースペクトルを示す図である。
【0086】
送信部12が生成する比較例3の駆動信号の波形は、
図16(a)に示す信号強度の時間特性の波形となる。
図16(a)に示す駆動信号をフーリエ変換して得られたパワースペクトルは、
図16(b)に示す信号強度の周波数特性となる。
図16(a)に示す駆動信号を超音波探触子2に入力して送信される送信超音波の波形は、
図17(a)に示す信号強度の時間特性の波形となる。
図17(a)に示す送信超音波をフーリエ変換して得られたパワースペクトルは、
図17(b)に示す信号強度の周波数特性となる。
【0087】
<比較例4>
比較例4の駆動信号の波形を波形4(波形番号:4)とする。
図18(a)は、比較例4の駆動信号の信号強度の時間特性を示す図である。
図18(b)は、比較例4の駆動信号のパワースペクトルを示す図である。
図19(a)は、比較例4の送信超音波の信号強度の時間特性を示す図である。
図19(b)は、比較例4の送信超音波のパワースペクトルを示す図である。
【0088】
送信部12が生成する比較例4の駆動信号の波形は、
図18(a)に示す信号強度の時間特性の波形となる。
図18(a)に示す駆動信号をフーリエ変換して得られたパワースペクトルは、
図18(b)に示す信号強度の周波数特性となる。
図18(a)に示す駆動信号を超音波探触子2に入力して送信される送信超音波の波形は、
図19(a)に示す信号強度の時間特性の波形となる。
図19(a)に示す送信超音波をフーリエ変換して得られたパワースペクトルは、
図19(b)に示す信号強度の周波数特性となる。
【0089】
<比較例5>
比較例5の駆動信号の波形を波形5(波形番号:5)とする。
図20(a)は、比較例5の駆動信号の信号強度の時間特性を示す図である。
図20(b)は、比較例5の駆動信号のパワースペクトルを示す図である。
図21(a)は、比較例5の送信超音波の信号強度の時間特性を示す図である。
図21(b)は、比較例5の送信超音波のパワースペクトルを示す図である。
【0090】
送信部12が生成する比較例5の駆動信号の波形は、
図20(a)に示す信号強度の時間特性の波形となる。
図20(a)に示す駆動信号をフーリエ変換して得られたパワースペクトルは、
図20(b)に示す信号強度の周波数特性となる。
図20(a)に示す駆動信号を超音波探触子2に入力して送信される送信超音波の波形は、
図21(a)に示す信号強度の時間特性の波形となる。
図21(a)に示す送信超音波をフーリエ変換して得られたパワースペクトルは、
図21(b)に示す信号強度の周波数特性となる。
【0091】
<比較例6>
比較例6の駆動信号の波形を波形6(波形番号:6)とする。
図22(a)は、比較例6の駆動信号の信号強度の時間特性を示す図である。
図22(b)は、比較例6の駆動信号のパワースペクトルを示す図である。
図23(a)は、比較例6の送信超音波の信号強度の時間特性を示す図である。
図23(b)は、比較例6の送信超音波のパワースペクトルを示す図である。
【0092】
送信部12が生成する比較例6の駆動信号の波形は、
図22(a)に示す信号強度の時間特性の波形となる。
図22(a)に示す駆動信号をフーリエ変換して得られたパワースペクトルは、
図22(b)に示す信号強度の周波数特性となる。
図22(a)に示す駆動信号を超音波探触子2に入力して送信される送信超音波の波形は、
図23(a)に示す信号強度の時間特性の波形となる。
図23(a)に示す送信超音波をフーリエ変換して得られたパワースペクトルは、
図23(b)に示す信号強度の周波数特性となる。
【0093】
<実施例1>
実施例1の駆動信号の波形を波形7(波形番号:7)とする。
図24(a)は、実施例1の駆動信号の信号強度の時間特性を示す図である。
図24(b)は、実施例1の駆動信号のパワースペクトルを示す図である。
図25(a)は、実施例1の送信超音波の信号強度の時間特性を示す図である。
図25(b)は、実施例1の送信超音波のパワースペクトルを示す図である。
【0094】
送信部12が生成する実施例1の駆動信号の波形は、
図24(a)に示す信号強度の時間特性の波形となる。
図24(a)に示す駆動信号をフーリエ変換して得られたパワースペクトルは、
図24(b)に示す信号強度の周波数特性となる。
図24(a)に示す駆動信号を超音波探触子2に入力して送信される送信超音波の波形は、
図25(a)に示す信号強度の時間特性の波形となる。
図25(a)に示す送信超音波をフーリエ変換して得られたパワースペクトルは、
図25(b)に示す信号強度の周波数特性となる。
【0095】
<実施例2>
実施例2の駆動信号の波形を波形8(波形番号:8)とする。
図26(a)は、実施例2の駆動信号の信号強度の時間特性を示す図である。
図26(b)は、実施例2の駆動信号のパワースペクトルを示す図である。
図27(a)は、実施例2の送信超音波の信号強度の時間特性を示す図である。
図27(b)は、実施例2の送信超音波のパワースペクトルを示す図である。
【0096】
送信部12が生成する実施例2の駆動信号の波形は、
図26(a)に示す信号強度の時間特性の波形となる。
図26(a)に示す駆動信号をフーリエ変換して得られたパワースペクトルは、
図26(b)に示す信号強度の周波数特性となる。
図26(a)に示す駆動信号を超音波探触子2に入力して送信される送信超音波の波形は、
図27(a)に示す信号強度の時間特性の波形となる。
図27(a)に示す送信超音波をフーリエ変換して得られたパワースペクトルは、
図27(b)に示す信号強度の周波数特性となる。
【0097】
<比較例7>
比較例7の駆動信号の波形を波形9(波形番号:9)とする。
図28(a)は、比較例7の駆動信号の信号強度の時間特性を示す図である。
図28(b)は、比較例7の駆動信号のパワースペクトルを示す図である。
図29(a)は、比較例7の送信超音波の信号強度の時間特性を示す図である。
図29(b)は、比較例7の送信超音波のパワースペクトルを示す図である。
【0098】
送信部12が生成する比較例7の駆動信号の波形は、
図28(a)に示す信号強度の時間特性の波形となる。
図28(a)に示す駆動信号をフーリエ変換して得られたパワースペクトルは、
図28(b)に示す信号強度の周波数特性となる。
図28(a)に示す駆動信号を超音波探触子2に入力して送信される送信超音波の波形は、
図29(a)に示す信号強度の時間特性の波形となる。
図29(a)に示す送信超音波をフーリエ変換して得られたパワースペクトルは、
図29(b)に示す信号強度の周波数特性となる。
【0099】
<比較例8>
比較例8の駆動信号の波形を波形10(波形番号:10)とする。
図30(a)は、比較例8の駆動信号の信号強度の時間特性を示す図である。
図30(b)は、比較例8の駆動信号のパワースペクトルを示す図である。
図31(a)は、比較例8の送信超音波の信号強度の時間特性を示す図である。
図31(b)は、比較例8の送信超音波のパワースペクトルを示す図である。
【0100】
送信部12が生成する比較例8の駆動信号の波形は、
図30(a)に示す信号強度の時間特性の波形となる。
図30(a)に示す駆動信号をフーリエ変換して得られたパワースペクトルは、
図30(b)に示す信号強度の周波数特性となる。
図30(a)に示す駆動信号を超音波探触子2に入力して送信される送信超音波の波形は、
図31(a)に示す信号強度の時間特性の波形となる。
図31(a)に示す送信超音波をフーリエ変換して得られたパワースペクトルは、
図31(b)に示す信号強度の周波数特性となる。
【0101】
<実施例3>
実施例3の駆動信号の波形を波形11(波形番号:11)とする。
図32(a)は、実施例3の駆動信号の信号強度の時間特性を示す図である。
図32(b)は、実施例3の駆動信号のパワースペクトルを示す図である。
図33(a)は、実施例3の送信超音波の信号強度の時間特性を示す図である。
図33(b)は、実施例3の送信超音波のパワースペクトルを示す図である。
【0102】
送信部12が生成する実施例3の駆動信号の波形は、
図32(a)に示す信号強度の時間特性の波形となる。
図32(a)に示す駆動信号をフーリエ変換して得られたパワースペクトルは、
図32(b)に示す信号強度の周波数特性となる。
図32(a)に示す駆動信号を超音波探触子2に入力して送信される送信超音波の波形は、
図33(a)に示す信号強度の時間特性の波形となる。
図33(a)に示す送信超音波をフーリエ変換して得られたパワースペクトルは、
図33(b)に示す信号強度の周波数特性となる。
【0103】
<実施例4>
実施例4の駆動信号の波形を波形12(波形番号:12)とする。
図34(a)は、実施例4の駆動信号の信号強度の時間特性を示す図である。
図34(b)は、実施例4の駆動信号のパワースペクトルを示す図である。
図35(a)は、実施例4の送信超音波の信号強度の時間特性を示す図である。
図35(b)は、実施例4の送信超音波のパワースペクトルを示す図である。
【0104】
送信部12が生成する実施例4の駆動信号の波形は、
図34(a)に示す信号強度の時間特性の波形となる。
図34(a)に示す駆動信号をフーリエ変換して得られたパワースペクトルは、
図34(b)に示す信号強度の周波数特性となる。
図34(a)に示す駆動信号を超音波探触子2に入力して送信される送信超音波の波形は、
図35(a)に示す信号強度の時間特性の波形となる。
図35(a)に示す送信超音波をフーリエ変換して得られたパワースペクトルは、
図35(b)に示す信号強度の周波数特性となる。
【0105】
<実施例5>
実施例5の駆動信号の波形を波形13(波形番号:13)とする。
図36(a)は、実施例5の駆動信号の信号強度の時間特性を示す図である。
図36(b)は、実施例5の駆動信号のパワースペクトルを示す図である。
図37(a)は、実施例5の送信超音波の信号強度の時間特性を示す図である。
図37(b)は、実施例5の送信超音波のパワースペクトルを示す図である。
【0106】
送信部12が生成する実施例5の駆動信号の波形は、
図36(a)に示す信号強度の時間特性の波形となる。
図36(a)に示す駆動信号をフーリエ変換して得られたパワースペクトルは、
図36(b)に示す信号強度の周波数特性となる。
図36(a)に示す駆動信号を超音波探触子2に入力して送信される送信超音波の波形は、
図37(a)に示す信号強度の時間特性の波形となる。
図37(a)に示す送信超音波をフーリエ変換して得られたパワースペクトルは、
図37(b)に示す信号強度の周波数特性となる。
【0107】
<比較例9>
比較例9の駆動信号の波形を波形14(波形番号:14)とする。
図38(a)は、比較例9の駆動信号の信号強度の時間特性を示す図である。
図38(b)は、比較例9の駆動信号のパワースペクトルを示す図である。
図39(a)は、比較例9の送信超音波の信号強度の時間特性を示す図である。
図39(b)は、比較例9の送信超音波のパワースペクトルを示す図である。
【0108】
送信部12が生成する比較例9の駆動信号の波形は、
図38(a)に示す信号強度の時間特性の波形となる。
図38(a)に示す駆動信号をフーリエ変換して得られたパワースペクトルは、
図38(b)に示す信号強度の周波数特性となる。
図38(a)に示す駆動信号を超音波探触子2に入力して送信される送信超音波の波形は、
図39(a)に示す信号強度の時間特性の波形となる。
図39(a)に示す送信超音波をフーリエ変換して得られたパワースペクトルは、
図39(b)に示す信号強度の周波数特性となる。
【0109】
<比較例10>
比較例10の駆動信号の波形を波形15(波形番号:15)とする。
図40(a)は、比較例10の駆動信号の信号強度の時間特性を示す図である。
図40(b)は、比較例10の駆動信号のパワースペクトルを示す図である。
図41(a)は、比較例10の送信超音波の信号強度の時間特性を示す図である。
図41(b)は、比較例10の送信超音波のパワースペクトルを示す図である。
【0110】
送信部12が生成する比較例10の駆動信号の波形は、
図40(a)に示す信号強度の時間特性の波形となる。
図40(a)に示す駆動信号をフーリエ変換して得られたパワースペクトルは、
図40(b)に示す信号強度の周波数特性となる。
図40(a)に示す駆動信号を超音波探触子2に入力して送信される送信超音波の波形は、
図41(a)に示す信号強度の時間特性の波形となる。
図41(a)に示す送信超音波をフーリエ変換して得られたパワースペクトルは、
図41(b)に示す信号強度の周波数特性となる。
【0111】
<画質評価>
実施例1〜5、比較例1〜10の駆動信号及び送信超音波の各種指標値と、超音波画像診断装置Sにおいて、当該駆動信号及び送信超音波を用いて生成された画像データの超音波画像の画質評価結果を次表1〜表3に示す。
【表1】
【0114】
尚、表1〜表3における各指標値の定義および算出法は下記の通りとする。
【0115】
駆動信号波形の時間波形特性の各項目を説明する。
先ず、駆動信号波形の信号強度(周波数成分信号強度)は実際の駆動電圧の値にかかわらず、正極側と負極側の最大電圧値が±50[V]となるような倍率を乗じて換算用駆動信号波形を得、駆動信号波形を含む5[μsec]の時間領域を周波数換算して得た値に基づく。正極側と負極側の最大電圧絶対値が不同である場合には、大きい方の電圧絶対値が50[V]以内に収まるような倍率を乗じて換算用駆動信号波形を得る。
【0116】
駆動信号波形の「駆動時間」とは、上記換算用駆動信号波形においてその電圧絶対値が最初に5[V]に達した時間から最後に5[V]を切った時間までの時間を駆動時間[nsec]とする。
【0117】
駆動信号波形の「TxFL6相当波数」とは、駆動信号波形の駆動時間を超音波探触子2の送受信−6dB帯域の下限周波数TxFL6の周期で割った波数である。駆動信号波形の「各区間時間」とは、上記換算用駆動信号波形の各区間の時間[nsec]である。駆動信号波形の「0.5波換算周波数」とは、1区間を0.5波とみなした駆動信号波形の各区間の換算周波数[MHz]である。駆動信号波形の「FC6周波数比」とは、駆動信号波形の0.5波換算周波数を超音波探触子2の送受信−6dB帯域の中心周波数FC6で割って規格化した値である。
【0118】
駆動信号波形の「換算周波数標準偏差」とは、上記駆動信号波形の周波数成分信号強度で得られた値に基づき、所定周波数区間内の周波数成分信号強度値から下記式(1)により算出する。
【数1】
【0119】
なお、表2の実施例3〜5、比較例9、10における駆動信号波形の時間波形特性における各区間時間、0.5換算周波数、FC6周波数比、換算周波数信号強度は、矩形波からなる駆動波でないため、記載していない。
【0120】
表1、表2における駆動信号波形の超音波探触子送信−6dB帯域内周波数特性の各項目を説明する。
駆動信号波形の「最大強度周波数」とは、超音波探触子2の送信−6dB帯域内の駆動信号の最大の信号強度(感度)の周波数[MHz]である。駆動信号波形の「規格化後信号強度標準偏差」とは、超音波探触子2の送信−6dB帯域内の最大信号強度を0[dB]として規格化した駆動信号波形の規格化信号強度(感度)について、式(1)を用いて算出した標準偏差である。駆動信号波形の「TxFL6周波数信号強度」とは、超音波探触子2の送信−6dB帯域内の周波数TxFL6における駆動信号の信号強度(感度)の絶対値[dB]である。
【0121】
表1、表2における送信超音波波形の時間波形特性の各項目を説明する。
先ず、設定された駆動信号波形にて超音波探触子2の1素子のみを駆動し、送出された超音波を水中の3[mm]以内の距離にて30[MHz]以上の帯域を有するハイドロフォンにて受信して得られた送信超音波電圧時間波形を用い、送出超音波信号を含む5[μsec]の時間領域を周波数換算する。こうして得られた周波数成分強度の最大値を0[dB]として規格化した値に基づく。すなわち、最大強度の周波数成分強度が−50[dB]で求めるべき周波数の成分強度が−60[dB]の場合、規格化後の求めるべき周波数成分強度は−10[dB]となる。
【0122】
送信超音波波形の「波連長」とは、上述の送信超音波電圧時間波形の電圧最大絶対値に基づき、その電圧絶対値が最初に最大絶対値の1/5に達した時間から最後に最大絶対値の1/5を切った時間までの時間とする。すなわち、最大電圧値が1[mV]の場合、最初に±0.2[mV]に達した時間から、最後に±0.2[mV]を切った時間までから算出される時間長さ[nsec]である。
【0123】
送信超音波波形の「TxFL6相当波数」とは、送信超音波波形の波連長を超音波探触子2の送受信−6dB帯域の下限周波数TxFL6の周期で割った波数である。
【0124】
表1、表2における送信超音波波形の超音波探触子送信−6dB帯域内周波数特性の各項目を説明する。
送信超音波波形の「最大強度周波数」とは、超音波探触子2の送信−6dB帯域内の送信超音波の最大の信号強度(感度)の周波数[MHz]である。送信超音波波形の「規格化後信号強度標準偏差」とは、上記送信超音波の規格化後周波数成分信号強度で得られた値に基づき、超音波探触子2の送信−6dB帯域内の周波数成分信号強度値から式(1)により算出する標準偏差である。送信超音波波形の「規格化後TxFL6周波数信号強度」とは、上記送信超音波の規格化後周波数成分信号強度で得られた値に基づき、超音波探触子2の送信−6dB帯域内の周波数TxFL6における送信超音波の規格化後周波数成分信号強度[dB]である。
【0125】
表3における画質評価結果の各項目を説明する。
画質評価結果における「Phantom−PSF(Point Spread Function:点像強度関数)」の項目は、Gammex RMI 404GS-LE0.5と同一の音響等価材の深度15mm位置に50μmのSUS(ステンレス)ワイヤーを埋設し、送信焦点15mmで超音波送受信・画像化を行い、生成した画像データの超音波画像のワイヤー描出輝度を音響強度[dB]に変換し、その20dB分解能を得る画質評価方法において、得た評価結果としての20dB分解能(距離分解能[μm]、方位分解能[μm])である。
画質評価結果における「スペックル均一性」の項目はGammex RMI 404GS-LE0.5を用い、そのマトリクス部を送信焦点30mmで超音波送受信・画像化を行い、生成した画像データを用いて評価を行う。画像データの深度10mmを中心とした10mm四方の領域と深度35mmを中心とした10mm四方の領域の2箇所について輝度値の標準偏差を求めた値を示している。標準偏差値が小さいほどマトリクス部のスペックルが高精細で均一に描出されていることを示し、10mm深度領域と35mm深度領域の値に大きな差がなければ深度方向に対して均一に描写されていることを示す。
【0126】
画質評価結果におけるPhantom−Penetration深度とは、Gammex RMI 403GS-LE0.5の音響等価材部に対し、送信焦点15mmで超音波送受信・画像化を行い、生成した画像データの連続する2フレームを取得してこの2フレームの超音波画像の相関が0.5を下回る深度をPenetration深度として得る画質評価方法において、得た評価結果としてのPenetration深度[mm]である。
【0127】
画質評価結果の評価スコアとしての描出性スコアにおける手根、MP(Metacarpophalangeal joint)関節屈筋腱、膝蓋下脂肪体部、下肢(腓腹筋およびヒラメ筋)の各部位の項目を説明する。この画質評価方法では、被検体の手根、MP関節屈筋腱、膝蓋下脂肪体部、下肢(腓腹筋およびヒラメ筋)の各部位について、超音波送受信・画像化し、生成された画像データの超音波画像を、整形外科関連に従事する医師、臨床検査技師、合わせて10名により下記評価基準により各部位の描出の評点を得、その値を平均(小数点第二位以下四捨五入)することにより画質評価結果としての描出性スコアとした。描出性スコアの各点数は、下記の描出性に対応する。
10=組織状態の把握に対して申し分のない描出性
8=組織状態の把握に対して実用上問題のない描出性
6=良好ではないが組織状態の把握は可能なレベルの描出性
4=組織状態の把握に支障があるレベルの描出性
2=組織状態の把握は困難なレベルの描出性
上記のうち、手根およびMP関節屈筋腱は浅部に位置するため、浅部の解像度、S/Nを評価可能な部位となる。膝蓋下脂肪体部は深度が深く、深部描出の解像度、S/Nを評価することが可能で、下肢(腓腹筋およびヒラメ筋)は浅部から深部まで観察対象が存在するため、浅部から深部までの描出均一性が描出性スコアに影響する。
【0128】
表1、2の送信超音波のTxFL6相当波数、規格化後信号強度標準偏差及び規格化後TxFL6周波数信号強度に示すように、実施例1〜5は、送信超音波の波連長が超音波探触子2の送信−6dB帯域の下限周波数TxFL6成分の1.5波相当以上であり、送信超音波の送信−6dB帯域内の周波数成分の規格化後の信号強度の標準偏差が6以下であり、規格化後の送信−6dB帯域の下限周波数TxFL6成分の信号強度が−8[dB]以上であるという複数のAND条件を満たす。比較例1〜10は、当該複数のAND条件の少なくとも一つを満たしていない。
【0129】
また、表1、2の駆動信号のTxFL6相当波数、規格化後信号強度標準偏差及びTxFL6周波数信号強度に示すように、実施例1〜5は、駆動信号の駆動時間が超音波探触子2の送信−6dB帯域の下限周波数TxFL6成分の1.5波相当以上であり、駆動信号の送信−6dB帯域内の周波数成分の信号強度の標準偏差が7以下であり、送信−6dB帯域の下限周波数成分の信号強度が10[dB]以上であるという複数のAND条件を満たす。比較例1〜10は、当該複数のAND条件の少なくとも一つを満たしていない。
【0130】
また、表1、2の駆動信号のTxFL6相当波数、換算周波数標準偏差に示すように、実施例1、2は、駆動信号の駆動時間が超音波探触子2の送信−6dB帯域の下限周波数TxFL6成分の1.5波相当以上であり、駆動信号の駆動時間の各区間を0.5波とみなして周波数換算し、当該換算した周波数を送受信−6dB帯域の中心周波数FC6で規格化した値の標準偏差が0.1〜0.3であるという複数のAND条件を満たす。比較例1〜10は、当該複数のAND条件の少なくとも一つを満たしていない。
【0131】
また、表2の実施例1,2の駆動信号の各区間時間に示すように、駆動時間の最大区間は最初もしくは最後であることが好ましい。最大区間すなわち周波数の最も低い周波数成分による駆動が最初もしくは最後以外であると、低い周波数成分による駆動の前後にそれより高い周波数成分による駆動を行うこととなるため、
図6(a)に示した周波数の高い成分が局在化した送信音波を得ることが難しくなる。なお、駆動時間の最初の区間と最後の区間の両方が、全区間中の最大区間であることも好ましい。
また同様の理由により、表2の実施例1,2の駆動信号の各区間時間に示すように、駆動時間の最初の区間と最後の区間の間の区間全てが最初の区間と最後の区間のいずれよりも短い区間であることが好ましい。
【0132】
そして、表3の駆動信号の画質評価結果に示すように、実施例1〜5は、比較例1〜8よりも距離分解能が高く(距離分解能の長さが短く)、比較例1〜3、5、6よりも方位分解能が高く(方位分解能の長さが短く)、比較例1〜10よりもPenetration深度が深い。また、実施例1〜5は、比較例1〜8、10に比べて、スペックル均一性の標準偏差値が小さく、高精細で均一に描出されている。更に、実施例1〜5は、比較例1〜10に比べて、スペックル均一性の10mm深度領域と35mm深度領域の値に大きな差がなく、深度方向に対して均一に描写されている。
【0133】
また、実施例1〜5は、比較例1〜3、5〜10よりも、手根、MP関節屈筋腱の描出性スコアが高く、浅部描出の解像度、S/Nが高いことを示している。更に実施例1〜5は、比較例1〜10よりも、膝蓋下脂肪体部の描出性スコアが高く、深部描出の解像度、S/Nが高いことを示している。加えて、実施例1〜5は、比較例1〜10よりも、下肢の描出性スコアが高いので、浅部から深部までの描出均一性が優れていることがわかる。
【0134】
以上、本実施の形態によれば、超音波画像診断装置Sにおいて、送信部12が、駆動信号を生成して超音波探触子2に出力することにより超音波探触子に送信超音波を生成させ、
受信部13が、超音波探触子2から受信信号を受信し、画像生成部14が受信信号から高調波成分を抽出し、当該高調波成分に基づいて超音波画像データを生成する。送信部12は、駆動信号を用いて超音波探触子2を駆動し、波連長が超音波探触子2の送信−6dB帯域の下限周波数成分の1.5波相当以上であり、前記送信−6dB帯域内の周波数成分の信号強度の標準偏差が6以下であり、最大強度を0[dB]として規格化した後の送信−6dB帯域の下限周波数成分の信号強度が−8[dB]以上である送信超音波を超音波探触子2に送信させる。画像生成部14は、送信超音波を送信することより得られた受信信号の高調波成分に基づいて超音波画像データを生成する。
【0135】
このため、駆動電圧を大きくする構成や、パルス圧縮技術を用いることなく、超音波画像データの超音波画像の浅部の分解能及びS/Nを高く維持でき、Penetration深度を深め、浅部及び深部の解像度を高め(解像度の顕著な低下を抑制し)、浅部から深部までの描出均一性が均一であるので、浅部から深部まで均一性及び画質の高い超音波画像を容易に得ることができる。
【0136】
また、超音波画像診断装置Sにおいて、送信部12は、駆動時間が超音波探触子2の送信−6dB帯域の下限周波数成分の1.5波相当以上であり、送信−6dB帯域内の周波数成分の信号強度の標準偏差が7以下であり、送信−6dB帯域の下限周波数成分の信号強度が10[dB]以上である駆動信号を用いて超音波探触子2を駆動して高調波受信信号を生成させる。
【0137】
このため、駆動電圧を大きくする構成や、パルス圧縮技術を用いることなく、超音波画像データの超音波画像の浅部の分解能及びS/Nを高く維持でき、Penetration深度を深め、浅部及び深部の解像度を高め(解像度の顕著な低下を抑制し)、浅部から深部までの描出均一性が均一であるので、浅部から深部まで均一性及び画質の高い超音波画像を容易に得ることができる。
【0138】
また、送信部12は、AM変調及びFM変調の少なくとも一つにより変調した複数の時間波形を合成することにより駆動信号を生成する。このため、
図6(a)に示すような、浅部で高調波成分を生成する周波数成分と深部で高調波成分を生成する周波数成分とを有する送信超音波を生成する駆動信号を生成できる。
【0139】
また、送信部12は、AM変調及びFM変調の少なくとも一つにより変調した複数の時間波形を合成することにより得られた波形を送信部の電圧ステート数に応じて割り当てを行った波形情報を記憶しておき、これに基づいて駆動信号を生成する。このため、
図6(a)に示すような、浅部で高調波成分を生成する周波数成分と深部で高調波成分を生成する周波数成分とを有する送信超音波を生成する駆動信号を生成できる。
【0140】
また、超音波画像診断装置Sにおいて、送信部12は、駆動時間が超音波探触子2の送信−6dB帯域の下限周波数成分の1.5波相当以上であり、駆動時間の各区間を0.5波とみなして周波数換算し、当該換算した周波数を送受信−6dB帯域の中心周波数FC6で規格化した値の標準偏差が0.1以上0.3以下である駆動信号を用いて超音波探触子2を駆動して高調波受信信号を生成させる。
【0141】
このため、駆動電圧を大きくする構成や、パルス圧縮技術を用いることなく、超音波画像データの超音波画像の浅部の分解能及びS/Nを高く維持でき、Penetration深度を深め、浅部及び深部の解像度を高め(解像度の顕著な低下を抑制し)、浅部から深部までの描出均一性が均一であるので、浅部から深部まで均一性及び画質の高い超音波画像を容易に得ることができる。
【0142】
また、駆動時間の最初の区間と最後の区間の少なくともいずれか一方が、全区間中の最大区間である。このため、
図6(a)に示した周波数の高い成分が局在化した送信超音波を容易に得ることができる。
【0143】
また、駆動時間の最初の区間と最後の区間の間の区間全てが、最初の区間と最後の区間のいずれよりも短い区間である。このため、
図6(a)に示した周波数の高い成分が局在化した送信超音波を容易に得ることができる。
【0144】
また、送信部12は、それぞれ波形の異なる駆動信号を同一走査線上に時間間隔をおいて複数回出力し、画像生成部14は、複数回の駆動信号によって生成された送信超音波に対応する反射超音波から得られた各受信信号の演算により高調波成分を抽出し、当該高調波成分に基づいて超音波画像データを生成する。これにより不要成分を減殺した、高い分解能の超音波画像を得ることができる。
【0145】
なお、上記実施の形態における記述は、本発明に係る好適な超音波画像診断装置の一例であり、これに限定されるものではない。
【0146】
また、以上の実施の形態における超音波画像診断装置Sを構成する各部の細部構成及び細部動作に関して本発明の趣旨を逸脱することのない範囲で適宜変更可能である。