(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、冷房や暖房の効果を損なわずに換気できる装置として、換気の際に給気と排気との間で熱交換をさせる熱交換換気装置(熱交換器)が提案されている。この熱交換器としては、スペーサーを介して複数の仕切り板(ライナー)を積層させ、室外の空気を室内に導入する給気経路と、室内の空気を室外に排出する排気経路とが区画されている全熱交換器エレメント(以下エレメントともいう)を有するものが広く採用されている。新鮮な外気を供給すると共に、室内の汚れた空気を排出する際に熱交換を行う空気対空気の熱交換器において、顕熱(温度)と同時に潜熱(湿度)の熱交換を行う全熱交換器エレメントのライナー部分は、伝熱性と透湿度の両方を有する必要があるため、多くの場合、天然パルプを主成分とする紙が用いられている。さらに、全熱交換器エレメントに使用する原紙、特にライナー部に使用する原紙としては、伝熱性と透湿度以外にも、高い耐熱性(防炎性)、及び、該ライナーを介して給気と排気が交じり合わないよう、ガスバリア性(主としてCO
2バリア性)が求められている。
【0003】
ライナー部は潜熱の熱交換を行うために空気中の水分を捕獲することにより水分量が変化するため、特にカビの増殖が問題となる。一般に低水分を好むカビとしては、ペニシリウム(青カビ)やアスペルギルス(コウジカビ)があり、高水分を好むものとしてはクラドスポリウム(黒カビ)等が挙げられる。
全熱交換器エレメント用原紙に防カビ性を付与する方法としては、ライナー部に無機系吸湿剤と無機系多孔質材と光触媒を含有させるものが提案されている(特許文献1)。この場合、ライナー部に光があたらない場合は、光触媒が機能しないため、防カビ効果を得ることが困難となる。
また、空気の流通経路とライナーのうち少なくとも一方に気化性防カビ剤を含有させるものが提案されている(特許文献2)。この場合は、防カビ剤を空気中に放散させるため、経時的に防カビ効果は損なわれてしまうため、長期間にわたる防カビ効果を得ることは困難と考えられる。
さらには、エレメントを構成するスペーサーとライナーとを接着する接着剤の中に防カビ剤を配合させる、あるいはエレメントの外側に防カビ剤を塗布する方法が提案されている(特許文献3)。この場合も最もカビが生育し易いライナー部すべてに対して防カビ処理を行うことは困難であり、十分な防カビ効果は得られにくく、満足な防カビ性を備えた全熱交換器エレメント用原紙は得られていないのが現状である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の全熱交換器エレメント用原紙(以下、エレメント用原紙とも言う)の原料として使用するパルプは、針葉樹パルプ、広葉樹パルプでもよく、蒸解方法や漂白方法は特に限定されない。ただし、原紙の強度やCO
2バリア性の発現効果を考慮し、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)を主原料として使用することが好ましい。また、木材パルプ以外にも、麻パルプやケナフ、竹などの非木材パルプが使用できると共に、レーヨン繊維やナイロン繊維、その他熱融着繊維など、パルプ繊維以外の材料も副資材として配合することが可能である。
抄造後にパーチメント処理を行うことによって、紙力やCO
2バリア性を得ることも可能である。
【0011】
本発明で使用するパルプのフリーネスは、適宜選定可能であるが、原紙を薄葉化し、かつ、CO
2バリア性を得るための高透気度を発現させるためには、基材紙を構成するパルプの変則フリーネス(本発明において、パルプ採取量を通常の3g/Lから0.3g/Lに変更した以外はJIS P 8121−2:2012に準じて測定したフリーネスを意味する)が、200〜600mlの範囲にあることが好ましい。変則フリーネスが200ml未満の場合は、実機操業での叩解に時間を要するとともに、抄紙時の脱水性が悪化するため、操業効率が低下してしまう。また、紙自体も脆くなりやすいという問題が発生するおそれがある。
逆に、変則フリーネスが600mlを超えると、薄葉化を維持しつつCO
2バリア性を発現することが困難になるという問題が発生するおそれがある。使用するパルプの実機での叩解方法、装置は特に限定されるものではないが、叩解効率が高いダブルディスクリファイナー(DDR)が好適に使用される。
【0012】
上記叩解して得たパルプスラリーには、各種製紙用内添薬品を添加する。内添薬品としては、紙力増強剤、湿潤紙力増強剤、硫酸バンド、カチオン化デンプン等、各種定着剤が挙げられる。また、填料や着色剤などを任意に配合可能である。特に、エレメント用原紙は、吸湿性が高くなるので、強度保持の観点からも、湿潤紙力剤を配合することが好ましい。
【0013】
このように調成したパルプスラリー原料を常法により抄紙することで、本発明のエレメント用原紙の基材紙を得る。本発明は、さらに吸湿剤を主成分とした薬液を基材紙に添加させて全熱交換器エレメント用原紙が得られる。薬液の基材紙への添加は、抄紙機のオンマシンサイズプレス装置やスプレー装置等を用いて行うことができる。また、オフマシンの含浸機によって浸漬することも可能である。操業性、生産性を考慮すれば、オンマシンでのサイズプレスによる添加が好ましい。従って、本発明の基材紙を抄紙する抄紙機の形式については、長網抄紙機、短網抄紙機、円網抄紙機等、特に限定されるものではないが、オンマシンでサイズプレス機、もしくは含浸機が装備されているものを用いることが好ましい。このような抄紙機を用いて薬液を添加させることにより、紙基材の全面において後述する防カビ剤を含有する全熱交換器エレメント用原紙を得ることができる。
【0014】
薬液中に含有させる吸湿剤としては特に限定するものではないが、例えば塩化カルシウム、塩化リチウム等の水溶性塩類、尿素、カラギーナン、アルギン酸、アルギン酸塩等の保湿剤が挙げられ、なかでも塩化カルシウムが吸湿効果と経済性に優れているため好ましい。吸湿剤の付着量も特に限定するものではなく、例えば基材紙絶乾坪量に対し、5〜30質量%の範囲、より好ましくは10〜25質量%程度の範囲で調整される。
吸湿剤の付着量が5質量%未満では、吸放湿性能が不十分となる。また、吸湿剤の付着量が30質量%を超える場合は、結露を起こす可能性があり、全熱交換効率を損なうおそれがあるため好ましくない。
【0015】
なお、抄紙設備によっては、塩化カルシウム等の塩類により錆が発生するおそれがあるため、塩化カルシウムの水溶液に水溶性の防錆剤を配合しておくことが好ましい。防錆剤としては、環境安全性を考慮し、脂肪族カルボン酸のナトリウム塩等の非亜硝酸系のものを選択するのが好ましい。また、塩化カルシウム水溶液に対する防錆剤の添加量は、特に限定はないが、薬液中の固形分含有率として、0.5〜10質量%程度の範囲で調整される。
【0016】
また、基材紙の吸湿率は、15〜30%の範囲内でコントロールする必要がある。吸湿率が15%未満では、熱交換効率が不十分となるが、吸湿率が30%を超えると、結露や液ダレが発生するおそれがある。
なお、吸湿剤に塩化カルシウムを用いる場合、塩化カルシウムは吸湿性が高く、通常結晶水を保持しており、乾燥質量による付着量が算出しにくい。従って、塩化カルシウムの付着量は、塩化カルシウムの水溶液のウェット付着量に、塩化カルシウムの無水物としての濃度を乗じたものである。塩化カルシウム水溶液における塩化カルシウム(無水物)の濃度は、EDTA滴定法により求めることができる。
【0017】
薬液には必要に応じて難燃剤を添加することも可能である。難燃剤としては特に限定するものではないが、本発明では例えば、リン酸グアニジン、スルファミン酸グアニジン等の脱水により難燃性が得られる化合物が好ましい。
【0018】
エレメント用原紙の吸放湿性、熱交換効率の指標としては、透湿度が有効であり、透湿度が高い方が、概して熱交換効率が高い。本発明のエレメント用原紙は、温度20℃、湿度65%RH環境下での透湿度(JIS Z 0208:1976「防湿包装材料の透湿度試験方法(カップ法)」に準ずる。詳細は実施例の測定方法参照。)が2000g/m2・24hr以上を達成可能である。
【0019】
また、基材紙に吸湿剤を添加することで、紙の保水性が高くなるため、巻き取り時のブロッキングの防止や、各工程におけるロール剥離性を考慮し、ブロッキング防止剤も添加することが望ましい。ブロッキング防止剤としては特に限定するものではないが、例えばポリエチレン系ワックス、ステアリン酸亜鉛、ポリエチレン系ワックス乳化物、酸化ポリエチレン系ワックス、パラフィンワックスなどから選ばれたワックス類、シリコーン系樹脂や高級脂肪酸カルシウム塩などの金属石鹸類等の中から選ばれる。ブロッキング防止剤の添加については、塗工、含浸、噴霧等、常法より適宜選択可能である。また、抄紙機のオンマシンによるサイズプレスにより行うことが生産性の点から好適である。ブロッキング防止剤の添加量には特に限定はないが、例えば、薬液に対して0.01〜0.5質量%程度加えることが好ましい。0.01質量%未満では十分な効果が得られないおそれがあり、0.5質量%を超えた場合は、ペーパーロールやカレンダーロール上に付着したり、後工程の加工時に滑りトラブルが発生するおそれがあるため好ましくない。
【0020】
本発明の全熱交換器エレメント用原紙は、その基材紙中に疎水性有機化合物である防カビ剤を含有させるものである。本実施形態においては、上記防カビ剤として、エマルション型防カビ剤を使用することができる。エマルション型防カビ剤は疎水性物質の水性分散物であるため、基材紙に塗布または含浸させた後は基材紙中に定着する。したがって、空気中の水分には再溶解しにくく、長期間にわたって防カビ効果を発現すると考えられ、全熱交換器エレメント用原紙に特に好適である。
水溶性の防カビ剤では、高水分になった場合に流れ出て効果が失われるおそれがある。また、無機粒子粉末の防カビ剤については、一般に比重が大きいため、含浸やサイズプレス塗工等の方法では基材紙中に保持させることが難しく、全熱交換器エレメント用原紙には適していない。
【0021】
本発明では疎水性有機化合物である防カビ剤の全熱交換器エレメント用原紙全体に対する含有率は特に限定するものではないが、例えば0.01〜5.0質量%、より好ましくは0.1〜3.0質量%程度の範囲で調整される。含有率が0.01質量%未満の場合は満足な防カビ性能が得られない。また、5.0質量%を超える場合は、防カビ性能に対して過剰量となり経済的に好ましくない。なお、防カビ剤の含有率は、たとえば元素分析や赤外分光法により化合物の構造を特定した後、定量分析を行うことにより測定することが可能である。
【0022】
防カビ剤の種類としては特に限定するものではないが、例えばベンズイミダゾール系化合物、ピリチオン系化合物、ヨードプロペニルブチルカルバメート系化合物、イソチアゾロン系化合物、有機窒素硫黄系化合物等のエマルションが挙げられる。また、2種以上を併用することも可能である。
なかでもベンズイミダゾール系、ピリチオン系の化合物が防カビ性の面で好ましく、さらにピリチオン系の化合物が安全性も高いため最も好ましい。
【0023】
本発明において、防カビ剤の添加方法としては、吸湿剤を主成分とする薬液中に添加して、オンマシンでサイズプレス、もしくは含浸させることが好ましい。
【0024】
本発明では、その効果を損なわない範囲において他の防カビ剤を併用することも可能である。例えば、上記エマルション型防カビ剤と同様の成分で水溶性のもの、銀をリン酸ジルコニウムに担持させたもの、無機層状化合物に有機物を担持させたもの等が挙げられる。
【0025】
本発明においては、基材紙にPVAやデンプン、SBR等のラテックス類やアクリル系樹脂等の高分子樹脂を塗工や含浸等の手段により添加することで、さらにガスバリア性の向上を図ることができる。なお、ガスバリア性向上のために添加する高分子樹脂としては、PVAがCO
2バリア性に特に有効なため好適に利用可能である。高分子樹脂の添加方法としては、常法より適宜選択可能であるが、吸湿剤の添加と同様、抄紙機のオンマシンによるサイズプレスにより行うことが好適である。
なお、薬液にはポリアクリルアミド等の紙力剤、さらにはポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン化合物等の湿潤紙力剤等を添加することも可能である。
【0026】
本発明の全熱交換器エレメント用原紙は、前述の通り、基材紙に薬液を添加した後、さらにカレンダー処理を施して得ることが好適である。カレンダー処理を施すことによって、原紙が高密度となると同時に厚さが減少する。高密度となることによって、ガスバリア性が向上し、また厚さが減少することによって熱伝導率が上昇し、熱交換効率が上昇するという効果が得られる。本発明のエレメント用原紙の密度は特に限定するものではないが、ガスバリア性の観点からは、0.9〜1.2g/cm
3の範囲であることが好ましい。なお、パーチメント等、他の方法でガスバリア性を高める場合はこの限りではない。
【0027】
また、熱伝導率の観点から、厚さが薄いものほど好ましく、具体的には厚さ70μm以下とすることがより好ましい。なお、全熱交換器エレメント用原紙は、所定のガスバリア性を有する前提であれば、低坪量であるほど好ましく、具体的には坪量70g/m
2以下であることがより好ましい。全熱交換器エレメント用原紙の低坪量化、薄葉化は、エレメントの軽量化や、同サイズでのエレメントの積層段数の増加を可能にするため、熱交換効率の向上にも有効である。
【0028】
なお、本発明においては、全熱交換器エレメント用原紙に高いガスバリア性を付与するため、前述のカレンダー処理後に、後加工としてさらにPVA等の高分子樹脂を塗工することも可能である。この場合、紙基材の少なくとも表面に、高分子樹脂により構成される樹脂層が形成されることとなる。
【0029】
全熱交換器エレメント用原紙においては、吸気と排気を混合させないため、十分なガスバリア性を有する必要がある。ガスバリア性の中でも特にCO2バリア性が重要である。ガスバリア性とは透気度(JAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法No.5−2:2000の王研式透気度法)で表現することが可能であり、透気度が5000秒以上であることが好ましい。
全熱交換器エレメント用原紙は、とくに限定されないが、たとえばロール状に巻き取られている。これにより、搬送に供する際等における取扱い性を向上させることができる。また、全熱交換器エレメント用原紙は、たとえば全熱交換器エレメントを構成するスペーサーまたはライナーを形成するために用いられ、とくにライナーを形成するために好適に用いることができる。本実施形態は、このように上述の全熱交換器エレメント用原紙を用いて形成されたライナーを備える全熱交換器エレメントを実現し得るものである。
【実施例】
【0030】
以下実施例により本発明をさらに詳しく説明する。なお、実施例及び比較例における%、部は、特に断りのない限り質量%、質量部を表す。
【0031】
<実施例1>
針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)80%と広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)20%を混合し、DDRにて、変則フリーネス(パルプ採取量0.3g/L)が450mlとなるように叩解した。内添薬品としては、パルプ質量に対し、絶乾でポリアクリルアミド系紙力剤(商品名:「ポリストロン117」、荒川化学工業社製)0.5%、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン系湿潤紙力剤(商品名:「アラフィックス255」、荒川化学工業社製)0.5%、硫酸バンド0.5%を添加した。上記で得た原料を長網抄紙機で抄紙し、マングル含浸機により下記吸湿剤を主成分とする薬液を含浸付着させて乾燥させたものを基材紙とし、該基材紙をスーパーカレンダー処理して本発明の全熱交換器エレメント用原紙を得た。なお、上記の基材紙の坪量は絶乾で40g/m
2、吸湿剤(塩化カルシウム)の付着量は、無水塩化カルシウム換算で4.5g/m
2であった。また、全熱交換器エレメント用原紙全体に対する防カビ剤の含有率は、0.56質量%であった。
【0032】
[吸湿剤を主成分とする薬液]
塩化カルシウム(吸湿剤:セントラル硝子社製):89%(無水物換算固形分含有率)、脂肪族カルボン酸ナトリウム塩系防錆剤(商品名:「メタレックスANK」、油化産業社製)5.98%(固形分含有率)、ポリエチレン系ブロッキング防止剤(商品名:「ノプコートPEM−17」、サンノプコ社製)0.02%(固形分含有率)、ピリチオン系エマルション型防カビ剤(商品名:「アモルデンN−718」、大和化学社製)5%(固形分含有率)を配合し、上記の成分の薬液を薬液濃度20%で調製した。
【0033】
<実施例2>
実施例1の薬液調製において、防カビ剤の固形分含有率を2.5%とし、且つ塩化カルシウムの固形分含有率を91.5%とした以外は実施例1と同様にして本発明の全熱交換器エレメント用原紙を得た。また、全熱交換器エレメント用原紙全体に対する防カビ剤の含有率は、0.27質量%であった。
【0034】
<実施例3>
実施例1の薬液調製において、防カビ剤の固形分含有率を24%とし、且つ塩化カルシウムの固形分含有率を70%とした以外は実施例1と同様にして本発明の全熱交換器エレメント用原紙を得た。また、全熱交換器エレメント用原紙全体に対する防カビ剤の含有率は、3.3質量%であった。
【0035】
<実施例4>
実施例1の薬液調製において、ピリチオン系エマルション型防カビ剤の替わりにベンズイミダゾール系エマルション型防カビ剤(商品名:「アモルデンN−7820」、大和化学社製)を固形分含有率5%使用した以外は実施例1と同様にして本発明の全熱交換器エレメント用原紙を得た。また、全熱交換器エレメント用原紙全体に対する防カビ剤の含有率は、0.56質量%であった。
【0036】
<比較例1>
実施例1の薬液調製において、防カビ剤を添加せず、且つ塩化カルシウムの固形分含有率を94%とした以外は実施例1と同様にしてエレメント用原紙を得た。
【0037】
<比較例2>
実施例4の薬液調製において、ベンズイミダゾール系エマルション型防カビ剤の替わりに、ベンズイミダゾール系水溶性防カビ剤(商品名:「アモルデンHS」、大和化学社製)を固形分含有率5%使用した以外は実施例4と同様にしてエレメント用原紙を得た。また、全熱交換器エレメント用原紙全体に対する防カビ剤の含有率は、0.56質量%であった。
【0038】
<比較例3>
実施例1の薬液調製において、ピリチオン系エマルション型防カビ剤の替わりにヨードプロペニルブチルカルバメート系水溶性防カビ剤(商品名:「アモルデンTIP−05」、大和化学社製)を固形分含有率5%使用した以外は実施例1と同様にしてエレメント用原紙を得た。また、全熱交換器エレメント用原紙全体に対する防カビ剤の含有率は、0.56質量%であった。
【0039】
<比較例4>
実施例1の薬液調製において、ピリチオン系エマルション型防カビ剤の替わりに銀をリン酸ジルコニウムに担持させた水不溶性粉末(商品名:「ノバロンAG1100」、東亞合成社製)を固形分含有率5%使用した以外は実施例1と同様にしてエレメント用原紙を得た。また、全熱交換器エレメント用原紙全体に対する防カビ剤の含有率は、0.56質量%であった。
【0040】
実施例、比較例で得た各エレメント用原紙を試料として下記の方法で評価した。その結果を表1に示す。
【0041】
[評価方法]
<透湿度>
20℃×65%RHの条件下で、JIS Z 0208:1976「防湿包装材料の透湿度試験方法(カップ法)」に準拠して測定する。
但し、下記式により算出。
透湿度=(a+b)/2
a=測定開始1時間後の質量増分
b=測定開始1時間後から測定開始2時間後の1時間の質量増分
【0042】
<吸湿率>
下記式で算出する。
吸湿率={(A−B)/B}×100
A=試料質量(20℃×65%RHの条件下の質量)
B=試料絶乾質量(105℃のオーブンで2時間加熱乾燥後の質量)
【0043】
<透気度>
JAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法No.5−2:2000の王研式透気度法に準拠して測定する。
【0044】
<防カビ性>
JIS Z 2911:2010の「かび抵抗性試験方法(湿式法)」に準拠して評価する。ただし、流水による前処理は実施しない。試験期間:1週間、2週間、4週間。
供試菌:JIS Z 2911中の第1群アスペルギルスニゲル、第2群ペニシリウムシトリナム、第4群クラドスポリウムクラドスポリオイデス、第5群ケトミウムグロボスム。
(防カビ性の評価基準)
0:試料又は試験片の接種した部分に菌糸の発育が認められない。
1:試料又は試験片の接種した部分に認められる菌糸の発育部分の面積は、全面積の1/3を超えない。
2:試料又は試験片の接種した部分に認められる菌糸の発育部分の面積は、全面積の1/3を超える。
【0045】
【表1】
【0046】
実施例からも明らかなように、実施例1〜4は、高い透湿度と適切な吸湿率、高いガスバリア性をもつと同時に長期間安定した防カビ性を有しており、優れたエレメント用原紙であった。比較例1〜3は、安定した防カビ性は有しておらず、また比較例4で使用した防カビ剤は薬液中に分散しづらく沈降が確認され、エレメント用原紙に所定量が付着しなかったと考えられ、やはり安定した防カビ性は得られなかった。