(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記回生制動力制御部は、前記第一回生制動力算出部及び前記第二回生制動力算出部が前記回生制動力を算出すると、前記走行速度が予め設定した切換車速以上であるときには前記第二の回生制動力を前記モータに発生させ、前記走行速度が前記切換車速未満であるときには前記第一の回生制動力を前記モータに発生させることを特徴とする請求項1に記載した制駆動力制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下の詳細な説明では、本発明の実施形態について、完全な理解を提供するように、特定の細部について記載する。しかしながら、かかる特定の細部が無くとも、一つ以上の実施形態が実施可能であることは明確である。また、図面を簡潔なものとするために、周知の構造及び装置を、略図で表す場合がある。
【0009】
(第一実施形態)
以下、本発明の第一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
(制駆動力制御装置の構成)
図1から
図4を用いて、制駆動力制御装置1の構成について説明する。
図1中に表すように、制駆動力制御装置1は、モータ制御部2と、摩擦制動力制御部4を備える。
モータ制御部2は、制駆動力制御装置1を備える車両に発生させる回生制動力と駆動力を制御する。また、モータ制御部2は、例えば、マイクロコンピュータで構成する。
なお、マイクロコンピュータは、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等を備えた構成である。
【0010】
また、モータ制御部2は、第一車速算出部20と、マップ記憶部22と、基本制駆動力算出部24と、勾配検出部26と、制駆動力補正部28と、制駆動力分配部30と、駆動力制御部32と、第一要求制動力算出部34と、回生制動力制御部36を備える。
第一車速算出部20は、車輪速センサ6から、車輪の回転速度を含む車輪速信号の入力を受ける。そして、第一車速算出部20は、車輪速信号が含む回転速度を用いて、車両の走行速度(以降の説明では、「車速」と記載する場合がある)を算出する。これに加え、第一車速算出部20は、算出した車速を含む情報信号(以降の説明では、「第一車速信号」と記載する場合がある)を、第一要求制動力算出部34と、駆動力制御部32へ出力する。
【0011】
マップ記憶部22は、予め、制駆動力マップを記憶している。
制駆動力マップは、アクセルペダルAPの操作量(開度)と、車両に発生させる駆動力及び制動力との関係を表すマップである。
アクセルペダルAPは、車両の運転者が、制動力要求または駆動力要求に応じて操作するペダルである。
基本制駆動力算出部24は、アクセルセンサ8から、アクセルペダルAPの操作量(制駆動力操作量)を含む情報信号の入力を受ける。
【0012】
そして、基本制駆動力算出部24は、アクセルペダルAPの操作量をマップ記憶部22が記憶している制駆動力マップに入力して、車両に発生させる駆動力の目標値(目標駆動力)、または、制動力の目標値(目標制動力)を算出する。なお、基本制駆動力算出部24が算出する目標駆動力及び目標制動力は、車両が平坦な路面上を走行する場合(平地走行)の目標駆動力及び目標制動力である。
目標駆動力を算出した基本制駆動力算出部24は、算出した目標駆動力を含む情報信号(以降の説明では、「基本駆動力信号」と記載する場合がある)を、制駆動力補正部28へ出力する。
目標制動力を算出した基本制駆動力算出部24は、算出した目標制動力を含む情報信号(以降の説明では、「基本制動力信号」と記載する場合がある)を、制駆動力補正部28へ出力する。
【0013】
以下、基本制駆動力算出部24が行う具体的な処理を説明する。
・アクセルペダルAPが未操作である場合。
アクセルペダルAPが未操作である場合(遊び分を越えて踏み込まれていない場合も含む)には、停止保持必要制動トルクに応じた目標制動力を算出する。
停止保持必要制動トルクは、車両の停止状態を保持するための制動トルクであり、例えば、車両の重量、回生制動力の能力や摩擦制動力の能力に応じて設定する。
【0014】
・アクセルペダルAPの操作量が制動範囲内である場合。
アクセルペダルAPの操作量が制動範囲内である場合には、アクセルペダルAPの操作量の増加に応じて、目標制動力を、停止保持必要制動トルクに応じた制動力から減少させる。
制動範囲は、未操作状態から制駆動力変更点操作量までの、アクセルペダルAPの操作量に対応する範囲である。
制駆動力変更点操作量は、アクセルペダルAPの操作量(開度)のうち、車両に発生させる駆動力と制動力を切り替える操作量(開度)に相当する。なお、制駆動力変更点操作量は、例えば、25%程度のアクセルペダルAPの操作量(開度)に設定する。
【0015】
・アクセルペダルAPの操作量が駆動範囲内である場合。
アクセルペダルAPの操作量が駆動範囲内のときには、アクセルペダルAPの操作量の、制駆動力変更点操作量からの増加量に応じて、目標駆動力を増加させる。
駆動範囲は、アクセルペダルAPの、制駆動力変更点操作量を超える操作量に対応する範囲である。
以上により、基本制駆動力算出部24は、アクセルペダルAPの操作量が制駆動力変更点操作量以下である場合には、車両に駆動力を発生させない処理を行う。したがって、第一実施形態の制駆動力制御装置1を備えた車両は、駆動源として内燃機関を備えるオートマチックトランスミッション(AT)車両で発生する、クリープ現象が発生しない。なお、図示しないスイッチ等の操作により、AT車両と同様のクリープ現象を発生させる制御を行ってもよい。
【0016】
勾配検出部26は、予め、平地(平坦路)で発生させている駆動トルクと車輪の回転速度との関係を、基準(平地基準)として記憶している。なお、平坦路で発生させている駆動トルクと車輪の回転速度との関係は、例えば、平坦路に相当する範囲内の勾配に形成した試験用の路面を用いて算出し、勾配検出部26に平地基準として記憶させる。
また、勾配検出部26は、駆動力制御部32から、駆動電流指令値を含む駆動トルク信号の入力を受け、車輪速センサ6から、車輪の回転速度を含む車輪速信号の入力を受ける。
【0017】
なお、駆動トルク信号の説明は、後述する。
また、車輪速センサ6は、車両が備える全ての車輪(四輪)Wに対し、回転速度に対応したパラメータを検出する。なお、車輪速センサ6の具体的な説明は、後述する。
そして、勾配検出部26は、電流指令値を用いて算出した現在の駆動トルクと、車輪Wの回転速度との関係(現在関係)を算出する。さらに、算出した現在関係の、記憶している平地基準からの乖離度合いを用いて、走行路面の勾配の大きさを検出する。
例えば、駆動トルクに対する車輪Wの回転速度が平地基準よりも遅い場合には、走行路面の勾配が登り勾配であると判定する。これに加え、車輪Wの回転速度が遅いほど、大きい登り勾配として検出する。
【0018】
一方、駆動トルクに対する車輪Wの回転速度が平地基準よりも速い場合には、走行路面の勾配が下り勾配であると判定する。これに加え、車輪Wの回転速度が速いほど、大きい下り勾配として検出する。
したがって、勾配検出部26は、車両が走行する走行路面の勾配の傾斜方向と、走行路面の勾配の大きさを検出する。
走行路面の勾配の傾斜方向及び大きさを検出した勾配検出部26は、検出した傾斜方向及び大きさを含む情報信号(以降の説明では、「路面勾配信号」と記載する場合がある)を、制駆動力補正部28と、第一要求制動力算出部34へ出力する。
制駆動力補正部28は、基本制駆動力算出部24、勾配検出部26、交通情報受信部10から、情報信号の入力を受ける。
【0019】
そして、制駆動力補正部28は、基本駆動力信号が含む平地走行の目標駆動力、または、基本制動力信号が含む平地走行の目標制動力を、勾配検出部26及び交通情報受信部10から入力を受けた情報信号を用いて補正する。
例えば、路面勾配信号が登り勾配の傾斜方向を含む場合、登り勾配の大きさに応じて、基本駆動力信号が含む平地走行の目標駆動力を増加させる補正を行う。また、交通情報受信部10から駆動力増加要求の入力を受けた場合、基本駆動力信号が含む平地走行の目標駆動力を増加させる補正を行う。
【0020】
なお、交通情報受信部10は、例えば、サーバから車両への駆動力増加要求、または、制動力増加要求を含む情報を受信可能である。また、制駆動力補正部28は、例えば、交通情報受信部10が受信した情報のうち、駆動力増加要求のみを受信する。
サーバから車両への駆動力増加要求は、例えば、ナビゲーションシステムで設定した車両の走行経路上において、車両の進行方向に登り勾配の坂道が存在する場合に、登り勾配の坂道に到達する前に駆動力を増加させておく要求である。
平地走行の駆動力を補正した制駆動力補正部28は、補正した目標駆動力(補正駆動力)を含む情報信号(以降の説明では、「補正駆動力信号」と記載する場合がある)を、制駆動力分配部30へ出力する。
平地走行の制動力を補正した制駆動力補正部28は、補正した目標制動力(補正制動力)を含む情報信号(以降の説明では、「補正制動力信号」と記載する場合がある)を、制駆動力分配部30へ出力する。
【0021】
なお、平地走行の目標駆動力を補正する必要が無い場合、制駆動力補正部28は、基本駆動力信号と同様の情報信号を、補正駆動力信号として制駆動力分配部30へ出力する。同様に、平地走行の目標制動力を補正する必要が無い場合、制駆動力補正部28は、基本制動力信号と同様の情報信号を、補正制動力信号として制駆動力分配部30へ出力する。
制駆動力分配部30は、制駆動力補正部28から補正駆動力信号の入力を受けると、補正駆動力信号と同様の情報信号を、駆動力分配信号として駆動力制御部32へ出力する。また、制駆動力分配部30は、制駆動力補正部28から補正制動力信号の入力を受けると、補正制動力信号と同様の情報信号を、制動力分配信号として第一要求制動力算出部34へ出力する。
【0022】
駆動力制御部32は、制駆動力分配部30と第一車速算出部20から、情報信号の入力を受ける。そして、駆動力制御部32は、駆動力分配信号が含む補正駆動力と、第一車速信号が含む車速を参照して、駆動電流指令値を演算する。
駆動電流指令値は、駆動用モータDMで補正駆動力に応じた駆動トルクを発生させるための電流指令値である。
さらに、駆動力制御部32は、演算した駆動電流指令値を含む情報信号(以降の説明では、「駆動トルク信号」と記載する場合がある)を、勾配検出部26と、インバータINVへ出力する。
【0023】
上述したように、基本制駆動力算出部24は、アクセルペダルAPの操作量が駆動範囲内のときには、アクセルペダルAPの操作量の、制駆動力変更点操作量からの増加量に応じて、目標駆動力を増加させる。したがって、駆動力制御部32は、アクセルセンサ8が検出したアクセルペダルAPの操作量が駆動範囲内のときには、制駆動力変更点操作量とアクセルペダルAPの操作量との偏差に応じた駆動力を発生させる。すなわち、駆動力制御部32は、アクセルセンサ8が検出したアクセルペダルAPが制駆動力変更点操作量よりも大きいときには、制駆動力変更点操作量とアクセルペダルAPの操作量との偏差に応じた駆動力を、駆動用モータDMで発生させる。
【0024】
第一要求制動力算出部34は、予め、
図2中に表す第一減速度マップを記憶している。なお、
図2(a)は、平地走行時に用いる第一減速度マップ、
図2(b)は、登り勾配路面の走行時に用いる第一減速度マップ、
図2(c)は、下り勾配路面の走行時に用いる第一減速度マップである。
第一減速度マップは、車速に応じて発生させる回生制動力と、回生制動力に応じた減速度を表すマップである。
なお、
図2中に表す「回生」は、回生制動力に相当する領域である。また、
図2中に表す「回生制限線」は、車速に応じた回生制動力の上限値を表す線である。さらに、
図2中に表す「第一閾値車速」は、回生制動力の上限値が車速の変化に応じて変化する変化領域と、回生制動力の上限値が一定である固定領域との境界線に相当する車速である。なお、第一閾値車速は、例えば、10[km/h]に設定する。したがって、第一減速度マップにおける変化領域は、第一車速算出部20で算出した車速の変化に対して回生制動力の要求値(要求)が変化する領域である。
【0025】
すなわち、第一減速度マップは、第一車速算出部20で算出した車速をフィードバックして、駆動用モータDMで発生させる回生制動力(回生量)を決定するためのマップである。したがって、第一減速度マップには、車速が変化することで減速度も変化することが表されている。
また、
図2(a)中に表すように、回生制限線は、車両が走行する走行路面が平坦な路面である場合に、車両の走行時にのみ、すなわち、車速が「0[km/h]」を超えている場合にのみ、車両を停止させる回生制動力を発生させる値である。したがって、
図2(a)中に表す、平地走行時に用いる回生制限線は、車速が「0[km/h]」である状態で、第一減速度及び回生制動力が「0」となる、車速に応じた回生制動力の上限値を表す線である。
【0026】
ここで、
図2中に表す「制御限界ゲイン」について、詳細に説明する。
制駆動力制御装置1が、応答遅れの要素を有するシステムである場合、
図2中において「制御限界ゲイン」で表す線の傾きを上げ過ぎる(傾斜角度を増加させすぎる)と、駆動用モータDMの電流指令値がハンチングするおそれがある。これは、制御限界ゲインで表す線の傾斜角度が増加するほど、第一閾値車速以下の変化領域において、車速の変化に対する減速度の変化度合いが増加するためである。
なお、「応答遅れ」とは、車速の変化に対する減速度の変化度合いが増加することにより、車速の変化が、回生制動力に応じた減速度の急激な変化に追従することができず、回生制動力に応じた減速度の変化に対して、車速の変化が遅れることである。
電流指令値がハンチングすると、減速中の車両に、運転者の要求とは異なる制動力の変動が発生して、運転者の要求とは異なる車速の変動が発生することとなる。
【0027】
電流指令値のハンチングは、例えば、下り勾配の路面を走行中に車両を減速させる状態で、第一減速度マップを用いて、回生制動力に応じた減速度を決定することにより、以下に表す要素(1.〜6.)から発生する。
1.走行路面が下り勾配のため、車速が増加する。
2.車速の増加に伴い、回生制動力に応じた減速度が増加する。
3.回生制動力に応じた減速度が増加したため、車速が減少する。
4.車速が減少したため、回生制動力に応じた減速度が減少する。
5.回生制動力に応じた減速度が減少したため、車速が減少する。
6.上記の2〜5が繰り返されることにより、電流指令値のハンチングが発生する。
【0028】
そして、制御限界ゲインで表す線の傾きがなだらか(傾斜角度が小さい)であれば、車速の変化に対して、回生制動力に応じた減速度が急激に増減することはない。このため、回生制動力に応じた減速度の変化に対し、車速の変化の位相遅れが発生することを抑制して、電流指令値のハンチングを抑制することが可能となる。すなわち、制御限界ゲインで表す線の傾斜角度を小さくすることにより、電流指令値の制御を安定させることが可能となる。
以上により、電流指令値の制御が安定な状態と、電流指令値の制御が不安定な状態との境界線が、
図2中に制御限界ゲインで表す線に相当する。すなわち、
図2中に制御限界ゲインで表す線は、第一閾値車速以下の車速に応じた、回生制動力の変化度合いの上限値である。また、
図2中に制御限界ゲインで表す線の傾斜角度は、例えば、駆動用モータDMの性能(回生制動力の発生能力)や、車両の重量等に応じて設定する。すなわち、
図2中に表す制御限界ゲインは、回生制動力に応じた減速度の変化に、第一車速算出部20で算出した車速の変化が追従可能な、車速に対する回生制動力に応じた減速度の変化度合いの上限値である。
【0029】
したがって、第一減速度マップ内の変化領域における、第一車速算出部20で算出した車速の変化に対する回生制動力の要求値(回生制動力に応じた減速度)の変化度合いは、制御限界ゲイン以下である。
また、第一要求制動力算出部34は、勾配検出部26から入力を受けた路面勾配信号を用いて、減速度マップを補正する。
具体的には、路面勾配信号が登り勾配の傾斜方向を含む場合、
図2(b)中に表すように、平地走行よりも、車速に応じて発生させる回生制動力の上限値(回生制限線)を減少させる補正を行う。また、路面勾配信号が下り勾配の傾斜方向を含む場合、
図2(c)中に表すように、平地走行よりも、車速に応じて発生させる回生制動力の上限値(回生制限線)を増加させる補正を行う。
すなわち、第一要求制動力算出部34は、勾配検出部26が検出した走行路面の勾配の傾斜方向と、走行路面の勾配の大きさに応じて、回生制限線を補正する。
【0030】
さらに、第一要求制動力算出部34は、制駆動力分配部30から入力を受けた制動力分配信号が含む補正制動力と、第一車速算出部20から入力を受けた第一車速信号が含む車速を参照して、車両に発生させる減速度を算出する。そして、第一要求制動力算出部34は、算出した減速度に応じた回生制動力の要求値(回生要求制動力)を演算し、回生要求制動力を含む情報信号(以降の説明では、「回生要求信号」と記載する場合がある)を、摩擦制動力制御部4へ出力する。
具体的には、
図2中に表す第一減速度マップに、第一車速信号が含む車速と、制動力分配信号が含む補正制動力に応じた減速度をフィードバックして、アクセルペダルAPの操作量に応じた回生制動力の要求値(要求)を算出する。
【0031】
ここで、制駆動力変更点操作量以下のアクセルペダルAPの操作量は、予め設定した閾値未満におけるアクセルペダルAPの操作量に対応する。
したがって、第一要求制動力算出部34は、制駆動力変更点操作量以下、すなわち、予め設定した閾値未満におけるアクセルペダルAPの操作量と、車両の走行速度と、に対応した、第一の回生制動力(回生制動力の要求値)を算出する。
また、第一要求制動力算出部34は、アクセルセンサ8が検出したアクセルペダルAPの操作量が制動範囲内のときは、車両が停止するまで第一車速算出部20が算出した車速が減少するように、回生制限線を上限値として回生制動力の要求値を算出する。
また、第一要求制動力算出部34は、アクセルセンサ8が検出したアクセルペダルAPの操作量が制動範囲内のときは、勾配検出部26が検出した傾斜方向と勾配の大きさに応じて補正した回生制限線を上限値として、回生制動力の要求値を算出する。
【0032】
以上により、第一要求制動力算出部34は、アクセルペダルAPの操作量に応じて、車両を停止させる回生制動力の要求を算出する。
また、第一要求制動力算出部34は、回生制限線を、勾配検出部26が検出した傾斜方向及び大きさに応じて補正した値を上限として、回生制動力の要求を算出する。
また、第一要求制動力算出部34は、アクセルペダルAPの操作量が制駆動力変更点操作量以下のときに、車両を停止させる回生制動力の要求を、アクセルペダルAPの操作量に応じて算出する。
【0033】
回生制動力制御部36は、摩擦制動力制御部4から回生要求値信号の入力を受ける。これに加え、バッテリBATから、現在の充電状態(SOC:State Of Charge)を取得する。そして、回生制動力制御部36は、回生要求値信号が含む回生制動力の要求値と、バッテリBATの現在の充電状態を参照して、回生実行量を演算する。
回生要求量は、駆動用モータDMで発生させる回生制動力の目標値である。
回生実行量は、駆動用モータDMで実際に発生させる回生制動力である。
回生実行量の演算は、例えば、現在の充電状態が満充電に近く、回生制動により発電した電力をバッテリBATに充電することが不可能な場合には、「0」として演算する。また、回生実行量の演算は、例えば、回生制動により発電した電力をバッテリBATに充電することが可能な場合には、回生要求量の全てとして演算(回生要求量=回生実行量)する。
回生実行量を演算した回生制動力制御部36は、回生電流指令値を演算する。
【0034】
回生電流指令値は、回生実行量に応じた回生トルクを駆動用モータDMで発生させるための電流指令値である。
回生電流指令値を演算した回生制動力制御部36は、演算した回生電流指令値を含む情報信号(以降の説明では、「回生トルク信号」と記載する場合がある)を、インバータINVと、摩擦制動力制御部4へ出力する。
したがって、回生制動力制御部36は、摩擦制動力制御部4が算出した回生制動力の要求値(要求)に応じた回生制動力を、駆動用モータDMで発生させる。なお、摩擦制動力制御部4が算出した回生制動力の要求値(要求)は、後述する回生協調制御部46が選択した回生制動力の要求値(要求)である。
摩擦制動力制御部4は、制駆動力制御装置1を備える車両に発生させる摩擦制動力を制御する。また、摩擦制動力制御部4は、モータ制御部2と同様、例えば、マイクロコンピュータで構成する。
【0035】
また、摩擦制動力制御部4は、第二車速算出部40と、第二要求制動力算出部42と、要求制動力合算部44と、回生協調制御部46と、摩擦制動力算出部48と、制動油圧制御部50を備える。
第二車速算出部40は、第一車速算出部20と同様、車輪速センサ6から入力を受けた車輪速信号が含む回転速度を用いて、車両の走行速度(車速)を算出する。これに加え、第二車速算出部40は、算出した車速を含む情報信号(以降の説明では、「第二車速信号」と記載する場合がある)を、第二要求制動力算出部42へ出力する。
【0036】
第二車速算出部40と第一車速算出部20は、共に、同じ車輪速センサ6から入力を受けた車輪速信号が含む回転速度を用いて、車速を算出する。すなわち、第二車速算出部40が算出する車速は、第一車速算出部20が算出する車速と同値である。
第二要求制動力算出部42は、ブレーキセンサ12から、ブレーキペダルBPの操作量(制動力操作量)を含む情報信号の入力を受ける。これに加え、第二要求制動力算出部42は、第二車速算出部40から、第二車速信号の入力を受ける。
なお、ブレーキペダルBPは、車両の運転者が制動力要求のみに応じて踏込むペダルであり、アクセルペダルAPとは別個に設ける。
また、第二要求制動力算出部42は、予め、
図3中に表す第二減速度マップを記憶している。
【0037】
第二減速度マップは、ブレーキペダルBPの操作量に応じた減速度と、ブレーキペダルBPの操作量に応じた減速度及び車速に応じて発生させる、回生制動力及び摩擦制動力を表すマップである。
なお、
図3中に表す「回生」は、回生制動力に相当する領域である。さらに、
図3中に表す「摩擦」は、摩擦制動力に相当する領域である。また、
図3中に表す「回生協調配分線」は、ブレーキペダルBPの操作量及び車速に応じた回生制動力の上限値を表す線である。
【0038】
また、
図3中に表す「第二閾値車速」は、回生制動力の上限値が車速の変化に応じて変化する変化領域と、回生制動力の上限値が一定である固定領域との境界線に相当する車速である。なお、第二閾値車速は、第一閾値車速と同様、例えば、10[km/h]に設定する。したがって、第二減速度マップにおける変化領域は、第二車速算出部40で算出した車速の変化に対して回生制動力の要求値が変化する領域である。
さらに、
図3中に表す「制御限界ゲイン」は、第二閾値車速以下の車速に応じた回生制動力の変化度合いの上限値である。また、
図3中に制御限界ゲインで表す線は、
図2中に制御限界ゲインで表す線と同様、電流指令値の制御が安定な状態と、電流指令値の制御が不安定な状態との境界線に相当する。すなわち、
図3中に表す制御限界ゲインは、回生制動力に応じた減速度の変化に、第二車速算出部40で算出した車速の変化が追従可能な、車速に対する回生制動力に応じた減速度の変化度合いの上限値である。
【0039】
したがって、第二減速度マップ内の変化領域における、第二車速算出部40で算出した車速の変化に対する回生制動力の要求値(回生制動力に応じた減速度)の変化度合いは、制御限界ゲイン以下である。
また、
図3中に表す「回生制限車速」は、ブレーキペダルBPの操作量及び車速に応じた制動力を、摩擦制動力のみで発生させる領域と、回生制動力及び摩擦制動力のうち少なくとも回生制動力で発生させる領域の境界線に相当する車速である。
図3中に表すように、回生制限車速は、車速が「0」よりも大きい状態、すなわち、走行中の車両が停車する前の状態で、ブレーキペダルBPの操作量及び車速に応じた制動力を、摩擦制動力のみで発生させる値に設定する。これは、車速が回生制限車速(例えば、3[km/h])以下の状態では、回生制動力を発生させるために駆動用モータDMで消費する電力が、回生制動力により発電した電力を超えるため、車両全体として、エネルギー効率が低下するためである。
【0040】
また、車両の停止状態を維持(車速が0[km/h]の状態を保持)するためには、回生制動力よりも摩擦制動力を用いる方が、エネルギー効率が良好であるため、ブレーキペダルBPが操作されて車両の停止状態を維持する際には、摩擦制動力のみを発生させる。
したがって、回生協調配分線は、車速の走行時にのみ、回生制動力を発生させる値である。
また、第二要求制動力算出部42は、ブレーキペダルBPの操作量と、第二車速信号が含む車速を参照して、運転者の制動力要求に応じた制動力の目標値(目標要求制動力)を算出する。
【0041】
目標要求制動力は、ブレーキペダルBPの操作量に応じた回生制動力及び摩擦制動力の要求値である。
ブレーキペダルBPの操作量に応じた回生制動力及び摩擦制動力の要求値は、例えば、
図3中に表す第二減速度マップに、第二車速信号が含む車速と、ブレーキペダルBPの操作量に応じた減速度をフィードバックして算出する。なお、第二車速信号が含む車速が第二閾値車速を超える値である場合には、摩擦制動力の要求値を「0」として算出する。
目標要求制動力を算出した第二要求制動力算出部42は、目標要求制動力を含む情報信号(以降の説明では、「ドライバ要求制動力信号」と記載する場合がある)を、要求制動力合算部44へ出力する。
【0042】
したがって、第二要求制動力算出部42は、ブレーキペダルBPが操作されると、ブレーキセンサ12で検出したブレーキペダルBPの操作量に応じて、回生協調配分線を上限値として回生制動力の要求値(要求)を算出する。これに加え、第二要求制動力算出部42は、ブレーキペダルBPが操作されると、ブレーキセンサ12で検出したブレーキペダルBPの操作量に応じて、回生協調配分線を超える制動力を、摩擦制動力の要求値として算出する。
また、第二要求制動力算出部42は、ブレーキセンサ12で検出したブレーキペダルBPの操作量に応じた制動力のうち、回生協調配分線を超える分の制動力を、摩擦制動力で発生させるように、目標要求制動力を算出する。
【0043】
また、第二要求制動力算出部42は、車速が回生制限車速を超える走行時にのみ、第二の回生制動力を発生させる第二回生制限値を上限として、第二の回生制動力を算出する。
以上により、第二要求制動力算出部42は、ブレーキペダルBPの操作量と車両の走行速度に対応した、第二の回生制動力(回生制動力の要求値)を算出する。
要求制動力合算部44は、第一要求制動力算出部34、第二要求制動力算出部42、交通情報受信部10から、情報信号の入力を受ける。なお、要求制動力合算部44は、例えば、交通情報受信部10が受信した情報のうち、サーバから車両への制動力増加要求のみを受信する。
【0044】
そして、要求制動力合算部44は、回生要求信号が含む回生要求制動力と、ドライバ要求制動力信号が含む目標要求制動力と、交通情報受信部10から入力を受けた制動力増加要求が含む制動力を合算する。すなわち、要求制動力合算部44は、第一要求制動力算出部34が算出した制動力の要求値(要求)と、第二要求制動力算出部42が算出した制動力の要求値(要求)を合算する。
したがって、要求制動力合算部44は、第一要求制動力算出部34が算出した第一の回生制動力と、第二要求制動力算出部42が算出した第二の回生制動力とを合算する。
なお、要求制動力合算部44の構成を、ブレーキペダルBPの操作を検出した場合には、交通情報受信部10から入力を受けた制動力増加要求が含む制動力を合算しない構成としてもよい。
各制動力を合算した要求制動力合算部44は、合算した制動力の要求値(合算要求制動力)を含む情報信号(以降の説明では、「合算制動力信号」と記載する場合がある)を、回生協調制御部46と、摩擦制動力算出部48へ出力する。
【0045】
なお、サーバから車両への制動力増加要求は、例えば、ナビゲーションシステムで設定した車両の走行経路上において、車両の進行方向に交通量の多い交差点が存在する場合に、交差点へ到達する前に制動力を増加させておく要求である。
回生協調制御部46は、要求制動力合算部44から、合算制動力信号の入力を受ける。
そして、回生協調制御部46は、合算制動力信号が含む合算要求制動力を用いて、回生制動力の要求値(上限値)を選択する。
回生制動力の要求値を選択した回生協調制御部46は、選択した要求値を含む情報信号(以降の説明では、「回生要求値信号」と記載する場合がある)を、回生制動力制御部36へ出力する。
【0046】
具体的には、合算制動力信号が含む回生要求制動力に応じた減速度と、合算制動力信号が含む目標要求制動力のうち回生制動力の要求値に応じた減速度とを比較し、大きい減速度を選択(セレクトハイ)する。そして、選択した減速度に対応する回生制動力を、回生制動力の要求値として選択する。
上述したように、合算制動力信号は、第一要求制動力算出部34が算出した第一の回生制動力(回生要求制動力)と、第二要求制動力算出部42が算出した目標要求制動力のうち、第二の回生制動力(回生制動力の要求値)を含む。
【0047】
したがって、回生協調制御部46が回生制動力の要求値を選択する際には、例えば、
図4中に表すマップに、同一の車速に対応した、第一の回生制動力に応じた減速度と、第二の回生制動力に応じた減速度を入力する処理を行う。そして、第一の回生制動力に応じた減速度と、第二の回生制動力に応じた減速度のうち、大きい減速度を選択し、この選択した減速度に対応する回生制動力を、回生制動力の要求値として選択することとなる。
図4中に表すマップ(回生要求値算出マップ)は、回生要求制動力に応じた減速度と、目標要求制動力に応じた減速度と、車速との関係を表すマップである。
【0048】
なお、
図4中に表す「回生制限線」は、
図2中に表す「回生制限線」と同様であり、
図4中に表す「回生協調配分線」は、
図3中に表す「回生協調配分線」と同様である。なお、
図4中には、「回生制限線」として、
図2(a)に表す平地走行時に用いる第一減速度マップと同様の「回生制限線」を表す。すなわち、
図4中に表す回生要求値算出マップは、平坦な路面上を走行する車両に対し、回生制動力の要求値を選択する際に用いるマップである。
さらに、
図4中に表す「回生要求上限値」は、回生制限線と回生協調配分線のうち、同一の車速における大きい値を連続する線である。
【0049】
また、
図4中に表す「閾値車速」は、回生制動力の上限値が車速の変化に応じて変化する変化領域と、回生制動力の上限値が一定である固定領域との境界線に相当する車速である。なお、閾値車速は、第一閾値車速及び第二閾値車速と同様、例えば、10[km/h]に設定する。
さらに、
図4中に表す「制御限界ゲイン」は、
図2中に表す「制御限界ゲイン」と同様である。
また、
図4中に表す「切換車速」は、回生要求上限値が回生制限線である領域と、回生要求上限値が回生協調配分線である領域の境界線に相当する車速である。さらに、
図4中に表す「回生制限車速」は、
図3中に表す「回生制限車速」と同様である。
なお、切換車速は、例えば、車両Cの性能・諸元(車重、駆動用モータDMの性能等)に応じて、予め設定する。
【0050】
また、切換車速は、例えば、勾配検出部26が検出した勾配の傾斜方向及び大きさにより変化する。
すなわち、
図2(b)中に表すように、登り勾配路面の走行時には、
図2(a)中に表す平地走行時よりも、車速に応じた回生制動力の上限値(回生制限線)が減少する。このため、登り勾配路面の走行時には、平地走行時よりも、切換車速が増加する。
一方、
図2(c)中に表すように、下り勾配路面の走行時には、
図2(a)中に表す平地走行時よりも、車速に応じた回生制動力の上限値(回生制限線)が増加する。このため、下り勾配路面の走行時には、平地走行時よりも、切換車速が減少する。
【0051】
図4中に表すように、回生要求上限値は、車速が切換車速以上である領域では、回生協調配分線と同値である。また、回生要求上限値は、車速が切換車速未満である領域では、回生制限線と同値である。
したがって、回生協調制御部46は、車両が走行中であれば(停止しなければ)、回生要求上限値を、「0」を超える値として選択する。
また、
図4中に表すように、回生要求上限値が表す線の傾斜角度は、車速が閾値車速、切換車速、回生制限車速未満となっても、それぞれ、制御限界ゲインで表す線の傾斜角度以下となる。
【0052】
以上により、回生協調制御部46は、アクセルペダルAPの操作量が閾値未満であり、且つブレーキペダルBPが操作されている場合、第一要求制動力算出部34、または、第二要求制動力算出部42が算出した要求値のうち大きい値を選択する。すなわち、回生協調制御部46は、アクセルペダルAPの操作量が閾値未満であり、且つブレーキペダルBPが操作されている場合、第一の回生制動力と第二の回生制動力のうち、大きい回生制動力を選択する。なお、第一実施形態では、一例として、アクセルペダルAPの操作量が閾値未満であるときは、車両が停止するまで回生制動力を発生させて車速を減少させているときに相当する場合を説明する。
【0053】
すなわち、回生協調制御部46は、第一要求制動力算出部34が算出した回生制動力の要求、または、第二要求制動力算出部42が算出した回生制動力の要求のうち、大きい値を選択する。
摩擦制動力算出部48は、要求制動力合算部44から合算制動力信号の入力を受け、回生制動力制御部36から回生トルク信号の入力を受ける。そして、合算制動力信号が含む合算要求制動力から、回生トルク信号が含む回生実行量を減算して、摩擦実行量を演算する。
【0054】
摩擦実行量は、車輪Wで実際に発生させる摩擦制動力である。
摩擦実行量を演算した摩擦制動力算出部48は、摩擦制動力指令値を演算する。
摩擦制動力指令値は、摩擦実行量に応じた摩擦制動力を発生させるために、マスタシリンダ14内で発生させる液圧の目標値である。
摩擦制動力指令値を演算した摩擦制動力算出部48は、演算した摩擦制動力指令値を含む情報信号(以降の説明では、「摩擦制動力信号」と記載する場合がある)を、制動油圧制御部50へ出力する。
【0055】
制動油圧制御部50は、摩擦制動力指令値をマスタシリンダ14へ出力する。
マスタシリンダ14は、ホイールシリンダ16へブレーキ液(ブレーキフルード)を供給する装置である。
摩擦制動力指令値の入力を受けたマスタシリンダ14は、例えば、マスタシリンダ14が内蔵する制動用モータ(図示せず)等を作動させて、マスタシリンダ14内のピストンを作動させ、マスタシリンダ14内で、摩擦制動力指令値に応じた液圧を発生させる。そして、摩擦制動力指令値に応じた液圧のブレーキ液を、ホイールシリンダ16へ供給する。なお、ホイールシリンダ16の詳細な構成は、後述する。
以上により、摩擦制動力制御部4は、マスタシリンダ14及びホイールシリンダ16で、車両が備える車輪に摩擦制動力を発生させる。
【0056】
また、摩擦制動力制御部4は、回生要求上限値が回生協調配分線と同値である場合には、制動力操作量に応じた制動力のうち、回生協調配分線を超える分の制動力を、マスタシリンダ14及びホイールシリンダ16で発生させる。すなわち、摩擦制動力制御部4は、回生協調制御部46が、第二要求制動力算出部42が算出した要求値を選択すると、制動力操作量に応じた制動力のうち回生協調配分線を超える分の制動力を、マスタシリンダ14及びホイールシリンダ16で発生させる。
また、摩擦制動力制御部4は、要求制動力合算部44が合算した要求値と回生制動力制御部36が駆動用モータDMで発生させる回生制動力との偏差に応じた摩擦制動力を、マスタシリンダ14及びホイールシリンダ16で発生させる。ここで、要求制動力合算部44が合算した要求値と回生制動力制御部36が駆動用モータDMで発生させる回生制動力との偏差に応じた摩擦制動力は、制動力操作量に応じた制動力のうち回生協調配分線を超える分の制動力に替えて発生させる。
なお、制駆動力制御装置1は、例えば、運転者がブレーキペダルBPを操作している情報信号の入力を受けている状態で、運転者がアクセルペダルAPを操作している情報信号の入力を受けると、目標駆動力を「0」として算出する処理を行う。
【0057】
(車両の構成)
図1から
図4を参照しつつ、
図5を用いて、制駆動力制御装置1を備える車両Cの構成について説明する。
図5中に表すように、制駆動力制御装置1を備える車両Cは、アクセルペダルAPと、アクセルセンサ8と、ブレーキペダルBPと、ブレーキセンサ12と、車輪速センサ6と、交通情報受信部10と、モータ制御部2と、摩擦制動力制御部4を備える。これに加え、車両Cは、マスタシリンダ14と、ホイールシリンダ16と、バッテリBATと、インバータINVと、駆動用モータDMと、変速機TRと、車輪W(右前輪WFR、左前輪WFL、右後輪WRR、左後輪WRL)を備える。
【0058】
アクセルペダルAPは、車両Cの運転者が制動力要求または駆動力要求に応じて踏込むペダルである。
アクセルセンサ8は、運転者によるアクセルペダルAPの操作量(踏み込み操作量)を検出するセンサである。
また、アクセルセンサ8は、運転者によるアクセルペダルAPの操作量を含む情報信号を、モータ制御部2へ出力する。
なお、アクセルセンサ8は、例えば、ペダルストロークセンサを用いて形成する。また、アクセルセンサ8の構成は、ペダルストロークセンサを用いて形成した構成に限定するものではなく、例えば、運転者の踏み込み操作によるアクセルペダルAPの開度を検出する構成としてもよい。
【0059】
すなわち、アクセルセンサ8は、運転者によるアクセルペダルAPの操作量を検出するセンサである。
ブレーキペダルBPは、車両Cの運転者が制動力要求のみに応じて踏込むペダルであり、アクセルペダルAPとは別個に設ける。
ブレーキセンサ12は、運転者によるブレーキペダルBPの操作量(踏み込み操作量)を検出するセンサである。
また、ブレーキセンサ12は、運転者によるブレーキペダルBPの操作量を含む情報信号を、摩擦制動力制御部4へ出力する。
【0060】
なお、ブレーキセンサ12は、例えば、ペダルストロークセンサを用いて形成する。また、ブレーキセンサ12の構成は、ペダルストロークセンサを用いて形成した構成に限定するものではなく、例えば、運転者の踏み込み操作によるブレーキペダルBPの開度を検出する構成としてもよい。
すなわち、ブレーキセンサ12は、運転者によるブレーキペダルBPの操作量を検出するセンサである。
車輪速センサ6は、各車輪Wに対応して設ける。
また、車輪速センサ6は、対応する車輪Wの一回転について、予め設定した数の車輪速パルスを発生させる。そして、車輪速センサ6は、発生させた車輪速パルスを含む情報信号(以降の説明では、「車輪速パルス信号」と記載する場合がある)を、モータ制御部2及び摩擦制動力制御部4へ出力する。
【0061】
なお、
図5中では、右前輪WFRの一回転について車輪速パルスを発生させる車輪速センサ6を、車輪速センサ6FRと示し、左前輪WFLの一回転について車輪速パルスを発生させる車輪速センサ6を、車輪速センサ6FLと表す。同様に、
図5中では、右後輪WRRの一回転について車輪速パルスを発生させる車輪速センサ6を、車輪速センサ6RRと示し、左後輪WRLの一回転について車輪速パルスを発生させる車輪速センサ6を、車輪速センサ6RLと表す。また、以降の説明においても、各車輪Wや各車輪速センサ6を、上記のように表す場合がある。
【0062】
交通情報受信部10、モータ制御部2、摩擦制動力制御部4、マスタシリンダ14に関する説明は、上述したため省略する。
ホイールシリンダ16は、ディスクブレーキを構成するブレーキパッド(図示せず)を、ディスクロータ(図示せず)に押し付けるための押圧力を発生させる。ディスクロータは、各車輪Wと一体に回転し、ブレーキパッドと接触して摩擦抵抗を発生させる。
すなわち、マスタシリンダ14と、各ホイールシリンダ16は、前輪WF及び後輪WRのそれぞれに設けられて、各車輪Wに摩擦制動力を発生させる摩擦ブレーキを形成する。
したがって、車両Cが備える摩擦ブレーキは、全ての車輪W(右前輪WFR、左前輪WFL、右後輪WRR、左後輪WRL)に、摩擦制動力を発生させる。
【0063】
なお、
図5中では、右前輪WFRに対して配置したホイールシリンダ16を、ホイールシリンダ16FRと示し、左前輪WFLに対して配置したホイールシリンダ16を、ホイールシリンダ16FLと表す。同様に、
図5中では、右後輪WRRに対して配置したホイールシリンダ16を、ホイールシリンダ16RRと示し、左後輪WRLに対して配置したホイールシリンダ16を、ホイールシリンダ16RLと表す。また、以降の説明においても、各ホイールシリンダ16を、上記のように表す場合がある。
バッテリBATは、例えば、リチウムイオン電池を用いて形成する。
また、バッテリBATには、バッテリBATの電流値、電圧値、温度等を検出可能なバッテリコントローラ(図示せず)を設ける。バッテリコントローラは、バッテリBATのSOCを検出し、検出したSOCを含む情報信号を、回生制動力制御部36へ出力する。
【0064】
また、バッテリBATには、駆動用モータDMが回生制動により発電した電力を、インバータINVを介して充電する。
インバータINVは、駆動力制御部32から駆動電流指令値の入力を受けると、駆動トルク信号が含む駆動電流指令値を、駆動用モータDMへ出力する。また、インバータINVは、回生制動力制御部36から回生トルク信号の入力を受けると、回生トルク信号が含む回生電流指令値を、駆動用モータDMへ出力する。
駆動用モータDMは、インバータINVから駆動電流指令値の入力を受けると、駆動電流指令値に応じた駆動力を発生させる。
駆動用モータDMが発生させた駆動力は、ドライブシャフト(図示せず)等を介して、各車輪Wに付与する。
【0065】
また、駆動用モータDMは、インバータINVから回生電流指令値の入力を受けると、駆動電流指令値に応じた回生制動力を発生させる。
駆動用モータDMが発生させた回生制動力は、ドライブシャフト等を介して、各車輪Wに付与する。
なお、第一実施形態では、一例として、駆動用モータDMが、右前輪WFR及び左前輪WFL、すなわち、前輪WFのみに、駆動力または回生制動力を発生させる構成について説明する。
【0066】
したがって、第一実施形態の車両Cは、駆動力を発生する駆動源が電動モータの車両(EV:Electric Vehicle)である。また、第一実施形態の車両Cは、駆動方式が二輪駆動の車両(2WD車両)である。また、第一実施形態の車両Cは、右前輪WFR及び左前輪WFLが駆動輪である。
変速機TRは、運転者によるシフトレバー(シフトスイッチ)の操作状態に応じて、走行レンジ(例えば、「P:パーキング」レンジ、「D:ドライブ」レンジ、「R:リバース」レンジ等)を切り換える。これにより、車輪Wの回転方向や回転状態を切り換える。
車輪Wには、駆動用モータDMから、駆動力、または、回生制動力を付与する。
また、車輪Wには、ホイールシリンダ16を介して、摩擦制動力を付与する。
【0067】
(動作)
次に、
図1から
図5を参照しつつ、
図6を用いて、第一実施形態の制駆動力制御装置1を用いて行なう動作を説明する。
図6中に表すように、制駆動力制御装置1を用いて行なう動作を開始(START)すると、まず、ステップS100の処理を行う。
ステップS100では、各車輪速センサ6により、対応する車輪Wの回転状態を車輪速パルスとして検出する。これにより、ステップS100では、各車輪Wの回転速度を検出(図中に表す「車輪速度検出」)する。ステップS100において、各車輪Wの回転速度を検出すると、制駆動力制御装置1を用いて行なう動作は、ステップS102へ移行する。
【0068】
ステップS102では、アクセルセンサ8により、運転者によるアクセルペダルAPの操作量を検出する。これにより、ステップS102では、アクセルペダルAPの開度を検出(図中に表す「アクセル開度検出」)する。ステップS102において、アクセルペダルAPの開度を検出すると、制駆動力制御装置1を用いて行なう動作は、ステップS104へ移行する。
ステップS104では、基本制駆動力算出部24により、ステップS102で検出したアクセルペダルAPの開度が、閾値である制駆動力変更点操作量以下であるか否かを判定する処理(図中に表す「開度≦閾値」)を行う。
ステップS104において、アクセルペダルAPの開度が制駆動力変更点操作量以下である(図中に表す「Yes」)と判定した場合、制駆動力制御装置1を用いて行なう動作は、ステップS106へ移行する。
【0069】
一方、ステップS104において、アクセルペダルAPの開度が制駆動力変更点操作量を超える(図中に表す「No」)と判定した場合、制駆動力制御装置1を用いて行なう動作は、ステップS124へ移行する。
ステップS106では、第一要求制動力算出部34により、アクセルペダルAPの操作量と車速に対応した第一の回生制動力を算出する。なお、ステップS106で算出する回生制動力の要求値は、例えば、
図2(a)中に表すように、平地での走行において、車速が第一閾値車速以下となると、車速と第一減速度が共に低下し、さらに、車速が「0」となると第一減速度も「0」となるように算出する。
【0070】
すなわち、ステップS106では、車速が第一閾値車速以下となると、車両をスムーズに停止(スムーズストップ:SS)可能な第一減速度が発生するように、第一の回生制動力を算出する処理(図中に表す「SS用減速度算出」)を行う。ステップS106において、車両をスムーズに停止可能な第一減速度が発生するように第一の回生制動力を算出すると、制駆動力制御装置1を用いて行なう動作は、ステップS108へ移行する。
ステップS108では、第一要求制動力算出部34から摩擦制動力制御部4へ、第一の回生制動力を含む回生要求信号を出力する処理(図中に表す「回生要求制動力出力」)を行う。ステップS108において、回生要求信号を出力すると、制駆動力制御装置1を用いて行なう動作は、ステップS110へ移行する。
【0071】
ステップS110では、ブレーキセンサ12により、運転者によるブレーキペダルBPの操作量を検出する。これにより、ステップS110では、ブレーキペダルBPの操作量を検出(図中に表す「ブレーキ操作量検出」)する。ステップS102において、ブレーキペダルBPの操作量を検出すると、制駆動力制御装置1を用いて行なう動作は、ステップS112へ移行する。
ステップS112では、第二要求制動力算出部42により、運転者によるブレーキペダルBPの操作量に応じた制動力の目標値である目標要求制動力を算出する処理(図中に表す「ドライバ要求制動力算出」)を行う。ステップS112において、目標要求制動力を算出すると、制駆動力制御装置1を用いて行なう動作は、ステップS114へ移行する。
【0072】
ステップS114では、要求制動力合算部44により、ステップS106で算出した回生制動力の要求値と、ステップS112で算出した目標要求制動力と、制動力増加要求が含む制動力を合算する処理(図中に表す「全制動要求合算」)を行う。ステップS114において、回生制動力の要求値と、目標要求制動力と、制動力増加要求が含む制動力を合算すると、制駆動力制御装置1を用いて行なう動作は、ステップS116へ移行する。
ステップS116では、回生協調制御部46により、回生制動力の要求値を算出する処理(図中に表す「回生要求値算出」)を行う。ステップS116において、回生制動力の要求値を算出すると、制駆動力制御装置1を用いて行なう動作は、ステップS118へ移行する。
【0073】
ステップS118では、回生協調制御部46から、回生制動力の要求値を含む回生要求値信号を、回生制動力制御部36へ出力する処理(図中に表す「回生要求出力」)を行う。ステップS118において、回生要求値信号を回生制動力制御部36へ出力すると、制駆動力制御装置1を用いて行なう動作は、ステップS120へ移行する。
ステップS120では、回生制動力制御部36により、回生電流指令値を演算する。さらに、回生電流指令値を含む回生トルク信号をインバータINVへ出力する。これにより、ステップS120では、駆動用モータDMにより、回生電流指令値に応じた回生制動力を発生させる(図中に表す「モータ回生実行値出力」)。
すなわち、ステップS120では、回生制動力制御部36が、アクセルペダルAPの操作量が閾値未満であり、且つブレーキペダルBPが操作されている場合、第一の回生制動力と第二の回生制動力のうち大きい回生制動力を、駆動用モータDMに発生させる。
ステップS120において、回生電流指令値に応じた回生制動力を発生させると、制駆動力制御装置1を用いて行なう動作は、ステップS122へ移行する。
【0074】
ステップS122では、摩擦制動力算出部48により摩擦制動力指令値を演算し、制動油圧制御部50から摩擦制動力指令値をマスタシリンダ14へ出力する。これにより、ステップS122では、摩擦制動力指令値に応じた摩擦制動力を発生させる(図中に表す「摩擦制動実行」)。ステップS122において、摩擦制動力指令値に応じた摩擦制動力を発生させると、制駆動力制御装置1を用いて行なう動作を終了(END)する。
ステップS124では、制駆動力分配部30から駆動力制御部32へ、駆動力分配信号を出力する処理(図中に表す「駆動要求出力」)を行う。ステップS118において、駆動力分配信号を駆動力制御部32へ出力すると、制駆動力制御装置1を用いて行なう動作は、ステップS126へ移行する。
【0075】
ステップS126では、駆動力制御部32により、駆動電流指令値を演算し、演算した駆動トルク信号をインバータINVへ出力する。これにより、ステップS126では、駆動用モータDMで、駆動電流指令値に応じた駆動力を発生させる(図中に表す「駆動制動実行」)。ステップS126において、駆動電流指令値に応じた駆動力を発生させると、制駆動力制御装置1を用いて行なう動作を終了(END)する。
上述したように、ブレーキペダルBPが未操作の状況で、車両をスムーズに停止可能な回生制動力を出力している状態(SS制御中)で、ステップS116で算出する要求値は、ステップS106で算出した要求値と同じ値となる(
図2参照)。
そして、SS制御中にブレーキペダルBPが操作されると、車両に発生させる制動力の要求値として、車両をスムーズに停止可能な回生制動力に、ブレーキペダルBPの操作量に応じた目標要求制動力が合算される(ステップS114参照)。
【0076】
また、SS制御中にブレーキペダルBPが操作されると、回生協調制御部46により、回生制動力の要求値を算出する際に、車速が切換車速以上である領域において、回生協調配分線が回生要求上限値となる(
図4参照)。また、車速が切換車速未満である領域において、回生制限線が回生要求上限値となる(
図4参照)。
したがって、SS制御中にブレーキペダルBPが操作されると、ステップS116で算出する要求値は、車速が切換車速以上であると、回生協調配分線を上限値とした値となる。一方、車速が切換車速未満であると、回生制限線を上限値とした値となる(
図4参照)。
【0077】
このため、SS制御中にブレーキペダルBPが操作されると、車速が閾値車速以上の状態では、回生制動力の要求値が回生協調配分線の最大値となり、回生減速度が最大値となって、回生制動により発電してバッテリBATに充電する電力が最大値となる。
また、SS制御中にブレーキペダルBPが操作されると、車速が閾値車速未満であり、且つ切換車速以上の状態では、車速の変化に伴い、回生減速度が回生協調配分線の傾斜角度に沿って変化する。さらに、SS制御中にブレーキペダルBPが操作されると、車速が切換車速未満の状態では、車速の変化に伴い、回生減速度が回生制限線の傾斜角度に沿って変化する。
【0078】
ここで、
図2から
図4中に表すように、回生協調配分線の傾斜角度と、回生制限線の傾斜角度は、共に、制御限界ゲインで表す線の傾斜角度以下である。
したがって、SS制御中にブレーキペダルBPが操作された場合であっても、車速に応じた回生制動力の変化度合いは、電流指令値の制御を安定させることが可能な変化度合いとなる。このため、SS制御中にブレーキペダルBPが操作された場合であっても、電流指令値のハンチングを抑制することが可能となる。
また、
図4中に表す回生要求上限値は、回生制限線と回生協調配分線のうち、同一の車速における大きい値を連続する線である。
このため、SS制御中にブレーキペダルBPが操作された場合であっても、バッテリBATの充電量が大きい回生制動力を発生させることが可能となる。
【0079】
また、ステップS120で発生させた回生制動力が、ステップS114で合算した制動力未満であると、ステップS122において、ステップS114で合算した制動力に足りない分を補填する制動力として、摩擦制動力指令値に応じた摩擦制動力を発生させる。
すなわち、摩擦制動力制御部4は、回生制動力制御部36が第二の回生制動力を駆動用モータDMに発生させると、ブレーキペダルBPの操作量に応じた制動力のうち、第二回生制限値を超える分の制動力を、車両Cが備える摩擦ブレーキで発生させる。
このため、SS制御中にブレーキペダルBPが操作された場合であっても、回生要求上限値を超える回生制動力を発生させることなく、目標要求制動力と、回生要求制動力と、制動力増加要求が含む制動力を合算した制動力を発生させることが可能となる。
【0080】
なお、上述した駆動用モータDMは、車両に回生制動力を発生させるモータと、車両に駆動力を発生させる駆動源に対応する。
また、上述した車輪速センサ6、第一車速算出部20、第二車速算出部40は、車両の走行速度を検出する車速センサに対応する。
また、第一要求制動力算出部34は、予め設定した閾値未満(制駆動力変更点操作量以下)におけるアクセルペダルAPの操作量と、車両の走行速度と、に対応した第一の回生制動力を算出する、第一回生制動力算出部に対応する。
【0081】
また、第二要求制動力算出部42は、ブレーキペダルBPの操作量と、車両の走行速度と、に対応した第二の回生制動力を算出する、第二回生制動力算出部に対応する。
また、上述した回生制限線は、第一回生制限値に対応する。
また、上述した回生協調配分線は、第二回生制限値に対応する。
また、上述したように、第一実施形態の制駆動力制御装置1の動作で実施する制駆動力制御方法では、SS制御中にブレーキペダルBPが操作されると、第一の回生制動力と第二の回生制動力のうち、大きい回生制動力を、駆動用モータDMに発生させる。
なお、上述した第一実施形態は、本発明の一例であり、本発明は、上述した第一実施形態に限定されることはなく、この実施形態以外の形態であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0082】
(第一実施形態の効果)
第一実施形態の制駆動力制御装置1であれば、以下に記載する効果を奏することが可能となる。
(1)回生制動力制御部36が、アクセルペダルAPの操作量が閾値未満であり、且つブレーキペダルBPが操作されている場合、第一の回生制動力と第二の回生制動力のうち大きい回生制動力を、駆動用モータDMに発生させる。
このため、アクセルペダルAPの操作量に応じた回生制動力が発生している状態で、ブレーキペダルBPが操作されても、第一の回生制動力と第二の回生制動力のうち一方の、大きい回生制動力のみを、駆動用モータDMに発生させる。
【0083】
その結果、アクセルペダルAPの操作量に応じた回生制動力が発生している状態でブレーキペダルBPが操作された状況で、第一の回生制動力と第二の回生制動力のうち大きい回生制動力を発生させることが可能となる。これにより、二つの回生制動力が同時に入力されることを防止して、回生制動力の変動を抑制することが可能となり、走行中の車両に対し、運転者の意図しない車速の変動を抑制することが可能となる。
また、アクセルペダルAPの操作量に応じた回生制動力が発生している減速時にブレーキペダルBPが操作された状況における制御の、適用範囲を拡大することが可能となる。
【0084】
以下、
図1から
図6を参照しつつ、
図7及び
図8を用いて、回生協調制御部46が、SS制御中にブレーキペダルBPが操作されると、回生制限線または回生協調配分線を上限値として算出した要求値のうち大きい値を選択する効果について説明する。すなわち、回生制動力制御部36が、アクセルペダルAPの操作量が閾値未満であり、且つブレーキペダルBPが操作されている場合、第一の回生制動力と第二の回生制動力のうち大きい回生制動力を、駆動用モータDMに発生させる効果について説明する。
アクセルペダルAPの操作量に応じた回生制動力と、ブレーキペダルBPの操作量に応じた回生制動力を発生可能な構成では、別個の減速度マップ(二つの減速度マップ)を用いて、要求される減速度及び車速に応じて発生させる回生制動力を設定する。これは、アクセルペダルAPの操作量に応じた回生制動力と、ブレーキペダルBPの操作量に応じた回生制動力では、それぞれの主たる使用方法が異なるため、適合性等も含めると、別個のマップで管理することが望ましいためである。
【0085】
しかしながら、上述したSS制御中にブレーキペダルBPが操作されると、例えば、
図7中に表すように、二つの減速度マップにおける回生制動力の上限値(回生制限線、回生協調配分線)が足し合わされることとなる。これにより、
図7中に表すように、回生要求上限値が大きくなる。このため、回生制動力の上限値が車速の変化に応じて変化する変化領域において、車速の変化に対する減速度の変化度合いが、別個の減速度マップ(
図2、
図3参照)と比較して、急激に増加することとなる。
なお、
図7中には、回生制動力に相当する領域を「回生」と示し、車速に応じた回生制動力の上限値を表す線を「回生制限線」と示し、ブレーキペダルBPの操作量及び車速に応じた回生制動力の上限値を表す線を「回生協調配分線」と表す。さらに、回生制動力の上限値が車速の変化に応じて変化する変化領域と、回生制動力の上限値が一定である固定領域との境界線に相当する車速を「閾値車速」と示し、回生制限線と回生協調配分線を足し合わせた値を連続する線を「回生要求合計値」と表す。
【0086】
変化領域において車速の変化に対する減速度の変化度合いが急激に増加すると、車両の減速時に、車速の変化を、回生制動力に応じた減速度の急激な変化に追従させることができず、回生制動力に応じた減速度の変化に対して、車速の変化の遅れが発生する。
このため、
図8(a)中に表すように、車速が閾値車速以下となって回生実行量の減少を開始してから車両が停車するまでの間において、減速を開始した時点から増加した回生実行量に車速の変化が追従されずに、回生実行量にハンチングが発生する。なお、
図8中には、減速を開始した時点を「t1」で示し、車速が閾値車速以下となって回生実行量の減少を開始した時点を「t2」で示し、車両が停車した時点を「t3」で表す。
【0087】
これに対し、第一実施形態の制駆動力制御装置1であれば、SS制御中にブレーキペダルBPが操作されると、回生制限線または回生協調配分線を上限値として算出した要求値のうち、大きい値を選択する。このため、
図8(b)中に表す時点t2から時点t3の間において、回生制動力の上限値が、回生制限線と回生協調配分線を足し合わせた値ではなく、回生制限線または回生協調配分線のうち、車速に応じた値が大きい線に相当する値となる。
したがって、第一実施形態の制駆動力制御装置1であれば、SS制御中にブレーキペダルBPが操作されると、時点t2から時点t3の間において、回生実行量に車速の変化が追従するため、
図8(b)中に表すように、回生実行量にハンチングが発生しない。このため、アクセルペダルAPの操作量に応じた回生制動力が発生している状態で、ブレーキペダルBPが操作された場合であっても、駆動用モータDMを適切に制御することが可能となるため、車両Cをスムーズに停止させることが可能となる。
【0088】
(2)回生協調配分線を、車速が回生制限車速を超える走行時にのみ、第二の回生制動力を発生させる値に設定する。これに加え、摩擦制動力制御部4が、ブレーキセンサ12が検出したブレーキペダルBPの操作量に応じた制動力のうち、回生協調配分線を超える分の制動力を、マスタシリンダ14と各ホイールシリンダ16で発生させる。ここで、回生協調配分線を超える分の制動力は、回生協調制御部46が、第二要求制動力算出部42が算出した第二の回生制動力を選択すると発生させる。
このため、回生制動力を発生させるために駆動用モータDMで消費する電力が、回生制動力により発電した電力を超え、車両全体としてエネルギー効率が低下する状況や、車両の停止状態を維持する状況において、摩擦制動力を発生させることが可能となる。
その結果、回生制動力よりも摩擦制動力を用いることでエネルギー効率を向上させることが可能である状況において、エネルギー効率を向上させることが可能となる。
【0089】
(3)要求制動力合算部44が、第一要求制動力算出部34が算出した第一の回生制動力と、第二要求制動力算出部42が算出した第二の回生制動力を合算する。これに加え、摩擦制動力制御部4が、要求制動力合算部44が合算した回生制動力と回生制動力制御部36が駆動用モータDMで発生させる回生制動力との偏差に応じた摩擦制動力を、マスタシリンダ14と各ホイールシリンダ16で発生させる。
このため、運転者によるブレーキペダルBPの操作量が増加して、回生制動力だけでは要求された制動力を発生させることが困難な場合であっても、回生実行量を超える分の制動力を、摩擦制動力で発生させることが可能となる。また、摩擦制動力は、回生制動力と比較して、指令値の入力に対するレスポンスが鈍感であるため、摩擦制動力に応じた減速度の変化に車速の変化を追従させることが容易である。
その結果、アクセルペダルAPの操作量に応じた回生制動力が発生している状態で、ブレーキペダルBPが操作され、回生実行量を超える制動力の要求が発生した場合であっても、摩擦制動力により、回生実行量を超える制動力を補填することが可能となる。
【0090】
(4)回生制限線を、車両Cが走行する走行路面が平坦な路面である場合に、車両Cの走行時にのみ回生制動力を発生させる値とする。
このため、アクセルペダルAPの操作量が制動範囲内となると、車両Cの停車時には回生制動力の発生を停止させるように、車両Cを減速させることが可能となる。
その結果、駆動用モータDMに加わる負荷を低減させることが可能となるとともに、駆動用モータDMで消費する電力の増加を抑制することが可能となる。
【0091】
(5)勾配検出部26が、車両Cが走行する走行路面の勾配の傾斜方向及び大きさを検出する。これに加え、第一要求制動力算出部34が、勾配検出部26が検出した傾斜方向及び大きさに応じて補正した回生制限線を上限値として、第一の回生制動力を算出する。
その結果、アクセルペダルAPの操作量が制動範囲内となると、車両Cが走行する走行路面に応じて、車両Cをスムーズに停車させるための減速度が発生するように、回生制動力を発生させることが可能となる。
【0092】
(6)駆動力制御部32が、アクセルセンサ8で検出したアクセルペダルAPの操作量が駆動範囲内のときは、制駆動力変更点操作量とアクセルセンサ8で検出したアクセルペダルAPの操作量との偏差に応じた駆動力を、駆動用モータDMで発生させる。これに加え、第一要求制動力算出部34が、アクセルペダルAPの操作量が制駆動力変更点操作量以下のときに、車両を停止させる第一の回生制動力を、アクセルペダルAPの操作量と車両の走行速度に応じて算出する。
このため、アクセルペダルAPの操作量が駆動範囲内にある場合には、運転者によるアクセルペダルAPの操作量に応じて、駆動力の大きさを制御することが可能となる。また、アクセルペダルAPの操作量が制駆動力変更点操作量以下のときには、アクセルペダルAPの操作量に応じて、制動力の大きさを制御することが可能となる。
その結果、運転者によるアクセルペダルAPのみの操作により、車両Cの加速及び減速を制御して、車両Cを走行させることが可能となる。
【0093】
(7)回生制限線及び回生協調配分線が、車速の変化に対して回生制動力が変化する領域である変化領域を含む。これに加え、変化領域における車速の変化に対する回生制動力の変化度合いを、回生制動力の変化に応じた減速度の変化に車速の変化が追従可能な変化度合いの上限値である、制御限界ゲイン以下とする。
このため、アクセルペダルAPの操作量に応じた回生制動力が発生している状態で、ブレーキペダルBPが操作された場合であっても、共に制御限界ゲイン以下である回生制限線または回生協調配分線を、回生制動力として算出することが可能となる。
その結果、アクセルペダルAPの操作量に応じた回生制動力が発生している状態で、ブレーキペダルBPが操作された場合であっても、常に、回生制動力に応じた減速度の変化に車速の変化を追従させることが可能となる。
【0094】
(8)第一実施形態の制駆動力制御装置1の動作で実施する制駆動力制御方法では、SS制御中にブレーキペダルBPが操作されると、第一の回生制動力と第二の回生制動力のうち、大きい回生制動力を、駆動用モータDMに発生させる。
このため、アクセルペダルAPの操作量に応じた回生制動力が発生している状態で、ブレーキペダルBPが操作されても、第一の回生制動力と第二の回生制動力のうち一方の、大きい回生制動力のみを、駆動用モータDMに発生させる。
その結果、アクセルペダルAPの操作量に応じた回生制動力が発生している状態でブレーキペダルBPが操作された状況で、第一の回生制動力と第二の回生制動力のうち大きい回生制動力を発生させることが可能となる。これにより、二つの回生制動力が同時に入力されることを防止して、回生制動力の変動を抑制することが可能となり、走行中の車両に対し、運転者の意図しない車速の変動を抑制することが可能となる。
これにより、回生実行量のハンチングを防止することが可能となり、駆動用モータDMを適切に制御することが可能となるため、車両Cをスムーズに停止させることが可能となる。
また、アクセルペダルAPの操作量に応じた回生制動力が発生している減速時にブレーキペダルBPが操作された状況における制御の、適用範囲を拡大することが可能となる。
【0095】
(第一実施形態の変形例)
(1)第一実施形態では、回生要求値算出マップを用いて回生制動力を算出したが、これに限定するものではない。すなわち、例えば、予め設定した数式を用いて、回生制動力を算出してもよい。回生制動力を算出するための数式は、例えば、アクセルペダルAPの操作量、ブレーキペダルBPの操作量、回生制限線、回生協調配分線等の関係で構成する。
(2)第一実施形態では、回生協調配分線を、車速が回生制限車速を超える走行時にのみ、第二の回生制動力を発生させる値に設定したが、これに限定するものではない。すなわち、例えば、
図9中に表すように、車両の走行時にのみ第二の回生制動力を発生させる値、すなわち、車速が「0」で第二の回生制動力が「0」となる値に設定してもよい。
この場合、車両の減速中には、常に回生制動力を発生させる制御を行うため、演算負荷を低減させることが可能となり、制御の簡略化が可能となる。
【0096】
(3)第一実施形態では、駆動用モータDMで駆動源及び回生制動力発生モータを形成して、駆動用モータDMにより、車両Cの駆動力と回生制動力を発生させたが、これに限定するものではない。すなわち、例えば、車両Cの駆動力は駆動用モータDMで発生させ、車両Cの回生制動力は、リレー回路を備えた小型のモータ(回生制動力発生モータ)等で発生させる構成としてもよい。この場合、車両Cの力行時には、リレー回路を切断して、回生制動力発生モータを電路から遮断する。
また、回生制動力発生モータの構成を、クラッチを備える構成としてもよい。この場合、車両Cの力行時には、クラッチを遮断して、駆動用モータDMと駆動輪との間の駆動力伝達経路から、回生制動力発生モータの機械的な連結を解除する。そして、車両Cの回生時には、クラッチを接続して、回生制動力発生モータを駆動力伝達経路へ機械的に連結する。
【0097】
(第二実施形態)
以下、本発明の第二実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
(制駆動力制御装置の構成)
図1から
図4を参照しつつ、
図10を用いて、制駆動力制御装置1の構成について説明する。なお、上述した第一実施形態と同様の構成については、その説明を省略する場合がある。
図10中に表すように、制駆動力制御装置1は、モータ制御部2と、摩擦制動力制御部4を備える。
【0098】
モータ制御部2の構成は、上述した第一実施形態と同様であるため、その説明を省略する。
摩擦制動力制御部4は、第二車速算出部40と、第二要求制動力算出部42と、要求制動力合算部44と、回生協調制御部46と、摩擦制動力算出部48と、制動油圧制御部50を備える。
第二車速算出部40は、車輪速センサ6から入力を受けた車輪速信号が含む回転速度を用いて、車両の走行速度(車速)を算出する。これに加え、第二車速算出部40は、算出した車速を含む第二車速信号を、第二要求制動力算出部42と、回生協調制御部46へ出力する。
【0099】
第二要求制動力算出部42と要求制動力合算部44の構成は、上述した第一実施形態と同様であるため、その説明を省略する。
回生協調制御部46は、要求制動力合算部44と、第二車速算出部40から、情報信号の入力を受ける。
そして、回生協調制御部46は、合算制動力信号が含む合算要求制動力と、第二車速信号が含む車速を用いて、回生制動力の要求値(要求)を選択する。
回生制動力の要求値を選択した回生協調制御部46は、選択した要求値(要求)を含む回生要求値信号を、回生制動力制御部36へ出力する。
具体的には、第二車速信号が含む車速が、予め設定した切換車速以上であるか否かを判定する。
【0100】
そして、第二車速信号が含む車速が切換車速以上であると、回生協調配分線で表す値のうち、第二車速信号が含む車速に応じた値を、回生制動力の要求値(要求)として選択する(
図4参照)。一方、第二車速信号が含む車速が切換車速未満であると、回生制限線で表す値のうち、第二車速信号が含む車速に応じた値を、回生制動力の要求値(要求)として選択する(
図4参照)。
すなわち、回生協調制御部46は、第一要求制動力算出部34及び第二要求制動力算出部42が回生制動力を算出し、車速が切換車速以上であると、第二要求制動力算出部42が算出した第二の回生制動力を選択する。また、回生協調制御部46は、第一要求制動力算出部34及び第二要求制動力算出部42が回生制動力を算出し、車速が切換車速未満であると、第一要求制動力算出部34が算出した第一の回生制動力を選択する。
【0101】
なお、切換車速は、例えば、車両Cの性能・諸元(車重、駆動用モータDMの性能等)に応じて、予め設定する。
また、切換車速は、例えば、勾配検出部26が検出した勾配の傾斜方向及び大きさにより変化する。
すなわち、
図2(b)中に表すように、登り勾配路面の走行時には、
図2(a)中に表す平地走行時よりも、車速に応じた回生制動力の上限値(回生制限線)が減少する。このため、登り勾配路面の走行時には、平地走行時よりも、切換車速が増加する。
一方、
図2(c)中に表すように、下り勾配路面の走行時には、
図2(a)中に表す平地走行時よりも、車速に応じた回生制動力の上限値(回生制限線)が増加する。このため、下り勾配路面の走行時には、平地走行時よりも、切換車速が減少する。
【0102】
また、切換車速は、
図4中に表す値に限定するものではなく、閾値車速以下の車速のうち、例えば、車両Cの性能や走行特性等に応じて、
図4中に表す値と異なる値に設定してもよい。
すなわち、切換車速は、
図4中に表す、回生要求上限値が回生制限線である領域と、回生要求上限値が回生協調配分線である領域の境界線に相当する車速と異なる値に設定してもよい。この場合、切換車速を、例えば、回生要求上限値が回生制限線である領域を増加させる値に設定することにより、要求される制動力に対して、回生制動力及び摩擦制動力のうち、摩擦制動力が占める割合を増加させることが可能となる。
【0103】
以上により、回生協調制御部46は、車両が停止するまで回生制動力を発生させて車速を減少させているときに、ブレーキペダルBPが操作されると、車速に応じて、第一要求制動力算出部34、または、第二要求制動力算出部42が算出した回生制動力を選択する。
摩擦制動力算出部48と制動油圧制御部50の構成は、上述した第一実施形態と同様であるため、その説明を省略する。
【0104】
(車両の構成)
制駆動力制御装置1を備える車両Cの構成は、上述した第一実施形態と同様であるため、その説明を省略する。
(動作)
次に、
図1から
図6、
図10を参照して、第二実施形態の制駆動力制御装置1を用いて行なう動作を説明する。
第二実施形態の制駆動力制御装置1を用いて行なう動作は、ステップS116の動作を除き、上述した第一実施形態と同様である。このため、以降の説明では、ステップS116の動作についてのみ記載する。
上述したように、SS制御中では、ステップS116で算出する要求値が、ステップS106で算出した要求値と同じ値となる(
図2参照)。
【0105】
そして、SS制御中にブレーキペダルBPが操作されると、車両に発生させる制動力の要求値として、車両をスムーズに停止可能な回生制動力に、ブレーキペダルBPの操作量に応じた目標要求制動力が合算される(ステップS114参照)。
また、SS制御中にブレーキペダルBPが操作され、第一要求制動力算出部34及び第二要求制動力算出部42が回生制動力を算出すると、回生協調制御部46により、回生制動力を算出する際に、車速が切換車速以上であるか否かを判定する。
そして、車速が切換車速以上であると、回生協調配分線で表す値のうち、第二車速信号が含む車速に応じた値を、回生制動力の要求値(要求)として選択する(
図4参照)。一方、車速が切換車速未満であると、回生制限線で表す値のうち、第二車速信号が含む車速に応じた値を、回生制動力の要求値(要求)として選択する(
図4参照)。
【0106】
したがって、SS制御中にブレーキペダルBPが操作されると、車速が切換車速以上であると、ステップS116で算出する要求値(要求)は、回生協調配分線で表す値のうち、第二車速信号が含む車速に応じた値となる(
図4参照)。一方、車速が切換車速未満であると、ステップS116で算出する要求値(要求)は、回生制限線で表す値のうち、第二車速信号が含む車速に応じた値となる(
図4参照)。
このため、SS制御中にブレーキペダルBPが操作されると、車速が閾値車速以上の状態では、回生制動力の要求値が回生協調配分線の最大値となり、回生減速度が最大値となって、回生制動により発電してバッテリBATに充電する電力が最大値となる。
【0107】
また、SS制御中にブレーキペダルBPが操作されると、車速が閾値車速未満であり、且つ切換車速以上の状態では、車速の変化に伴い、回生減速度が回生協調配分線の傾斜角度に沿って変化する。さらに、SS制御中にブレーキペダルBPが操作されると、車速が切換車速未満の状態では、車速の変化に伴い、回生減速度が回生制限線の傾斜角度に沿って変化する。
なお、上述したように、第二実施形態の制駆動力制御装置1の動作で実施する制駆動力制御方法では、車両の走行速度に応じて、第一の回生制動力または第二の回生制動力のいずれか一方の回生制動力を、駆動用モータDMに発生させる。また、車両の走行速度に応じて、第一の回生制動力または第二の回生制動力のいずれか一方の回生制動力を、駆動用モータDMに発生させる処理は、SS制御中にブレーキペダルBPが操作されると行う。
また、上述した第二実施形態は、本発明の一例であり、本発明は、上述した第二実施形態に限定されることはなく、この実施形態以外の形態であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0108】
(第二実施形態の効果)
第二実施形態の制駆動力制御装置1であれば、以下に記載する効果を奏することが可能となる。
(1)回生制動力制御部36が、アクセルペダルAPの操作量が閾値未満であり、且つブレーキペダルBPが操作されている場合、車両Cの走行速度に応じて、第一の回生制動力または第二の回生制動力のいずれか一方を、駆動用モータDMに発生させる。
このため、アクセルペダルAPの操作量に応じた回生制動力が発生している状態で、ブレーキペダルBPが操作されても、車両Cの走行速度に応じて、第一の回生制動力または第二の回生制動力のうち一方のみを、駆動用モータDMに発生させる。
【0109】
その結果、アクセルペダルAPの操作量に応じた回生制動力が発生している状態でブレーキペダルBPが操作された状況で、車両Cの走行速度に応じた回生制動力を発生させることが可能となる。これにより、二つの回生制動力が同時に入力されることを防止して、回生制動力の変動を抑制することが可能となり、走行中の車両Cに対し、運転者の意図しない車速の変動を抑制することが可能となる。
これにより、回生実行量のハンチングを防止することが可能となり、駆動用モータDMを適切に制御することが可能となるため、車両Cをスムーズに停止させることが可能となる。
また、アクセルペダルAPの操作量に応じた回生制動力が発生している減速時にブレーキペダルBPが操作された状況における制御の、適用範囲を拡大することが可能となる。
【0110】
(2)回生協調制御部46が、第一要求制動力算出部34及び第二要求制動力算出部42が回生制動力を算出し、第二車速算出部40が算出した車速が切換車速以上であるときには、第二の回生制動力を、駆動用モータDMに発生させる。これに加え、回生協調制御部46が、第一要求制動力算出部34及び第二要求制動力算出部42が回生制動力を算出し、第二車速算出部40が算出した車速が切換車速未満であるときには、第一の回生制動力を、駆動用モータDMに発生させる。
その結果、SS制御中にブレーキペダルBPが操作された減速時において、常に、回生制動力を発生させることが可能となる。
【0111】
(3)第二実施形態の制駆動力制御装置1の動作で実施する制駆動力制御方法では、車両Cの走行速度に応じて、第一の回生制動力または第二の回生制動力のいずれか一方の回生制動力を、駆動用モータDMに発生させる。また、車両Cの走行速度に応じて、第一の回生制動力または第二の回生制動力のいずれか一方の回生制動力を、駆動用モータDMに発生させる処理は、SS制御中にブレーキペダルBPが操作されると行う。
このため、アクセルペダルAPの操作量に応じた回生制動力が発生している状態で、ブレーキペダルBPが操作されても、車両Cの走行速度に応じて、第一の回生制動力または第二の回生制動力のうち一方のみを、駆動用モータDMに発生させる。
【0112】
その結果、アクセルペダルAPの操作量に応じた回生制動力が発生している状態でブレーキペダルBPが操作された状況で、車両Cの走行速度に応じた回生制動力を発生させることが可能となる。これにより、二つの回生制動力が同時に入力されることを防止して、回生制動力の変動を抑制することが可能となり、走行中の車両Cに対し、運転者の意図しない車速の変動を抑制することが可能となる。
これにより、回生実行量のハンチングを防止することが可能となり、駆動用モータDMを適切に制御することが可能となるため、車両Cをスムーズに停止させることが可能となる。
また、アクセルペダルAPの操作量に応じた回生制動力が発生している減速時にブレーキペダルBPが操作された状況における制御の、適用範囲を拡大することが可能となる。
【0113】
(第二実施形態の変形例)
(1)第二実施形態では、回生要求値算出マップを用いて回生制動力を算出したが、これに限定するものではない。すなわち、例えば、予め設定した数式を用いて、回生制動力を算出してもよい。回生制動力を算出するための数式は、例えば、車速、アクセルペダルAPの操作量、ブレーキペダルBPの操作量、回生制限線、回生協調配分線等の関係で構成する。