特許第6443270号(P6443270)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6443270
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】発泡金属の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B22D 27/15 20060101AFI20181217BHJP
   C22C 1/08 20060101ALI20181217BHJP
   B22D 17/00 20060101ALI20181217BHJP
   B22D 17/22 20060101ALI20181217BHJP
【FI】
   B22D27/15
   C22C1/08 B
   B22D17/00 Z
   B22D17/22 Z
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2015-172742(P2015-172742)
(22)【出願日】2015年9月2日
(65)【公開番号】特開2017-47452(P2017-47452A)
(43)【公開日】2017年3月9日
【審査請求日】2017年9月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
【住所又は居所】愛知県豊田市トヨタ町1番地
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100105463
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 三男
(74)【代理人】
【識別番号】100099128
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 康
(74)【代理人】
【識別番号】100129861
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 滝治
(72)【発明者】
【氏名】小山 友宏
【住所又は居所】愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自動車株式会社内
【審査官】 藤長 千香子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2004−508202(JP,A)
【文献】 特開2004−058130(JP,A)
【文献】 特表2008−501855(JP,A)
【文献】 特開2008−143061(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 27/00−27/20
B22D 15/00−17/32
C22C 1/08−1/10
C22C 47/00−49/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型を用いて金属母材内に気泡を有する発泡金属を製造する方法であって、
溶存ガスを含む金属溶湯を閉じた金型のキャビティ内に注入する工程と、
前記金属溶湯の注入後に前記キャビティ内を密閉する工程と、
前記キャビティ内の密閉を維持した状態で第1の型開きを行って前記キャビティ内を減圧し前記溶存ガスを気泡化する工程と、
気泡化が進行した前記金属母材を冷却する工程と、
前記金属母材の冷却後に第2の型開きを行い前記金型から発泡金属を脱型する工程と、を少なくとも有し、
前記金属母材が、溶存ガス量が5cc/100gAlのアルミニウムであり、
前記溶存ガスを気泡化する工程において、前記キャビティの容積増加率が1.0%以下となるように前記第1の型開きを行うことを特徴とする発泡金属の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は発泡金属の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属あるいは合金の内部に多数の気泡を有する発泡金属は知られている。独立気泡体のものもあり連続気泡体のものもある。発泡金属は所要の強度を備えながらも軽量であることから、多くの分野で用いられている。発泡金属の製造は、主に、金属母材と発泡剤を混合したものを用意し、発泡剤の分解によって生じるガスを気泡として母材内に含ませることによって行われる。発泡剤は一般に高価であり製造コストが高くなることから、発泡剤を用いない発泡金属の製造方法が提案されており、その一例が特許文献1に記載されている。
【0003】
特許文献1に記載の方法は、溶融した金属母材を金型のキャビティ内に導入すると共に、該母材内へガスを混入させる工程と、その後、金型を開いて金型の内部の空間を広げることにより、母材内に前記ガスによる気泡を発生させる工程と、気泡が形成された母材を冷却する工程とを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−007097号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1に記載される発泡金属の製造方法は、専用の発泡剤を使用しないことから、低コストで発泡金属を製造できる利点がある。しかし、キャビティ内に導入する金属母材(金属溶湯)に発泡の核となるガスを混入するようにしており、この工程において、混入したガスを金属母材中に均一に分散させることは困難であり、結果として、気泡が不均一に分布した発泡金属となる可能性が高い。また、金属溶湯に発泡の核となるガスを混入する工程も必要となる。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、金型を用いて金属母材内に気泡を有する発泡金属を製造する方法において、発泡剤を用いることなく、かつ形成される気泡の分布をより均一化することができ、それにより、均質性の高い発泡金属を低コストで得ることができるようにした、より改良された発泡金属の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による発泡金属の製造方法は、金型を用いて金属母材内に気泡を有する発泡金属を製造する方法であって、溶存ガスを含む金属溶湯を閉じた金型のキャビティ内に注入する工程と、前記金属溶湯の注入後に前記キャビティ内を密閉する工程と、前記キャビティ内の密閉を維持した状態で第1の型開きを行って前記キャビティ内を減圧し前記溶存ガスを気泡化する工程と、気泡化が進行した前記金属母材を冷却する工程と、前記金属母材の冷却後に第2の型開きを行い前記金型から発泡金属を脱型する工程と、を少なくとも有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明による発泡金属の製造方法では、金属溶湯に通常含まれる溶存ガスを気泡の形成に積極的に利用する。金属溶湯を収容しかつ密閉状態にあるキャビティを、密閉状態を保持したままで、第1の型開きを行う。それにより、キャビティの容積は大きくなり、キャビティ内圧力は減圧された状態となる。その減圧により、金属溶湯内の溶存ガスは気泡化する。溶存ガスは金属溶湯内にほぼ均一に存在しており、形成される気泡もキャビティ内で均一に分散した状態となる。その状態でキャビティ内を冷却することで、キャビティ内には気泡がほぼ均一に分散した発泡金属が形成される。冷却後に第2の型開きを行い、金型から成形された発泡金属を取り出す。
【0009】
この製造方法によれば、金属溶湯内に発泡の核となるガスを外部から注入する工程が不要であり、工程数が少なくなって、製造コストが低下する。さらに、気泡が均一に分散した品質の高い発泡金属を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明による発泡金属の製造方法の製造工程を示す第1の図。
図2】本発明による発泡金属の製造方法の製造工程を示す第2の図。
図3】本発明による発泡金属の製造方法の製造工程を示す第3の図。
図4】製造された発泡金属を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態を説明する。
【0012】
図1は、本発明による発泡金属の製造方法の製造工程を示す第1の図である。本方法を実施するための装置は、基本的に、通常のダイカスト鋳造などに用いられている装置であってよく、装置30は、対をなす2つの金型1、2と、型開きおよび型締め等のときにいずれか一方あるいは双方の金型を移動するための図示しない金型移動機構を備える。図示の装置30では、金型1は移動型であり、金型2は固定型である。また、金型1は窪み3を有し、金型2は該窪み3に入り込む凸部4を有する。図1は型を閉じた状態、すなわち、双方の金型1、2がそのパーティング面同士を衝接させた状態を示しており、その状態で、金型1の窪み3と金型2の凸部4との間には、成形空間となるキャビティ5が形成される。
【0013】
金型2には、形成されるキャビティ5に連通するスリーブ6が付設されており、スリーブ6内には、開口7から溶融した金属、すなわち金属溶湯20が供給される。スリーブ6にはプランジャー8が備えられており、スリーブ6内に供給された金属溶湯20は、プランジャー8の移動によって、キャビティ5内に圧送される。
【0014】
上記の構成は従来知られた鋳造装置と同じであってよい。本発明による発泡金属の製造装置30は、さらに、キャビティ5内に金属溶湯20を充填した状態で、キャビティ5内を外気から遮断された密閉状態に維持しておくことのできる密閉手段9を備える。密閉手段9に制限はないが、図示のものでは、金型1、2のパーティング面の外周縁を気密に覆うことのできる部材10で構成されている。そして、部材10は、金型1が開く方向に移動するときに、キャビティ5内の気密性を保持しながら、金型1と共に移動するようにされている。
【0015】
発泡金属の製造に当たり、図示に示すように、型を閉めた状態として、開口7からスリーブ6内に溶存ガスを含む金属溶湯20を供給する。図1はその状態を示している。次に、プランジャー8を図で左方向に移動して、スリーブ6内の金属溶湯20をキャビティ5内に送り込む。図2はその状態を示している。なお、キャビティ5内への金属溶湯20の充填を容易にするために、キャビティ5内の空気を金属溶湯20の充填とともに、外部へ排気するようにしてもよい。ただし、金属溶湯20の充填後、適宜の手段で、その排気口と外気との連通を遮断できるようにする。
【0016】
キャビティ5内への金属溶湯20の充填が完了した時点で、好ましくは、充填が終了した直後に、金型1を図で左方向にわずかに移動する第1の型開きを行う。その状態が図3に示される。第1の型開きにより、キャビティ5の容積が膨張する。移動距離に制限はないが、通常、数ミリ程度である。前記したように、この第1の型開きを行っても、キャビティ5内と外気との連通は遮断されており、外気がキャビティ5内に入り込むことはない。そのために、キャビティ5内の圧力は、その容積膨張量に比例して、減圧する。キャビティ5内の圧力が低下することで、金属溶湯20内の溶存ガスが気泡化し、金属溶湯20内に多くの気泡21が形成されるようになる。
【0017】
その状態で、従来法により金型の冷却を行い、冷却後に、第2の型開きを行って、金型から成形品の脱型を行う。脱型後の鋳造品(発泡金属よりなる鋳造品)40の断面図が図4に示される。図示のように、気泡21がほぼ均一に分散している鋳造品40が得られる。
【0018】
なお、本発明による発泡金属の製造方法において、前記した第1の型開きでの開き距離をどの程度とするかは、用いる金型でのキャビティの容積、用いる金属溶湯の溶存カスの量、および得ようとする発泡金属における気泡が占める割合等を考慮しながら、計算によりあるいは実験的に設定する。また、金属溶湯である金属母材としては、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛、真鍮、およびその合金等を用いることができる。
【0019】
本発明者らの実験では、溶存ガス量が5cc/100gAlのアルミニウムを金属母材として用い、容積670cmのキャビティ5内に、溶融アルミニウムを充填し、充填直後にキャビティ5の容積増加率が0.65%となるように第1の型開きを行って、発泡アルミニウムを製造したときに、得られた鋳造品での気泡が占める割合は、0.5容積%であった。また、第1の型開きの開き距離を変えてキャビティ5の容積増加率を制御することで、気泡割合の異なる発泡アルミニウムを製造することができた。
【0020】
さらに、本発明者らの実験では、高品質の発泡アルミニウムを製造するには、キャビティ5の容積増加率が1.0%以下、より好ましくは、0.7%以下であった。キャビティ5の容積増加率が1.0%を超えると、欠肉のような不都合が生じ、高品質の発泡アルミニウムは製造できなかった。
【符号の説明】
【0021】
30:鋳造装置、
40…発泡金属からなる鋳造品、
1、2…金型、
5…キャビティ、
6…スリーブ、
8…プランジャー、
9(10)…密閉手段、
20…金属溶湯、
21…気泡。
図1
図2
図3
図4