特許第6443288号(P6443288)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6443288繊維強化複合材用の繊維構造体、繊維強化複合材用の繊維構造体の製造方法、及び繊維強化複合材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6443288
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】繊維強化複合材用の繊維構造体、繊維強化複合材用の繊維構造体の製造方法、及び繊維強化複合材
(51)【国際特許分類】
   D02J 1/18 20060101AFI20181217BHJP
   D04H 1/74 20060101ALI20181217BHJP
   C08J 5/06 20060101ALI20181217BHJP
【FI】
   D02J1/18 A
   D04H1/74
   C08J5/06CER
   C08J5/06CEZ
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-196884(P2015-196884)
(22)【出願日】2015年10月2日
(65)【公開番号】特開2017-66571(P2017-66571A)
(43)【公開日】2017年4月6日
【審査請求日】2018年1月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】吉川 元基
(72)【発明者】
【氏名】神谷 隆太
【審査官】 加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭62−147509(JP,U)
【文献】 特開2015−30959(JP,A)
【文献】 特開平6−137103(JP,A)
【文献】 特開昭50−160564(JP,A)
【文献】 特開昭61−31739(JP,A)
【文献】 特開2013−87204(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D02J 1/18
C08J 5/06
D04H 1/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非連続繊維製の繊維構造体にマトリックス樹脂を含浸させて構成された繊維強化複合材用の繊維構造体であって、
平面視で一方向に沿って連続的に幅が変化する部分を含み、
前記一方向に沿って幅が連続的に広くなる部分では、非連続繊維が前記一方向に沿って放射状に配向され、かついずれの部分でも厚み、及び非連続繊維の密度が一定であることを特徴とする繊維強化複合材用の繊維構造体。
【請求項2】
非連続繊維製の繊維構造体にマトリックス樹脂を含浸させて構成された繊維強化複合材用の繊維構造体の製造方法であって、
前記繊維構造体は、平面視で一方向に沿って連続的に幅が変化する部分を含み、前記一方向に沿って幅が連続的に広くなる部分では、非連続繊維が前記一方向に沿って放射状に配向され、かついずれの部分でも厚み、及び前記非連続繊維の密度が一定であり、
前記非連続繊維製で一定幅の繊維束を、複数のローラ群を有するドラフト装置によって前記一方向へ引き延ばす際、
前記ドラフト装置のドラフト倍率を連続的に異ならせて、前記一方向に沿って前記繊維束の厚みを連続的に変化させて前駆体を製造した後、
前記前駆体を厚み方向にのみプレスして厚みを一定とすることを特徴とする繊維強化複合材用の繊維構造体の製造方法。
【請求項3】
繊維構造体にマトリックス樹脂を含浸させてなる繊維強化複合材であって、前記繊維構造体が請求項1に記載の繊維構造体であることを特徴とする繊維強化複合材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維強化複合材用の繊維構造体、繊維強化複合材用の繊維構造体の製造方法、及び繊維強化複合材に関する。
【背景技術】
【0002】
軽量、高強度の材料として繊維強化複合材が使用されている。繊維強化複合材は、繊維構造体が樹脂等のマトリックス中に複合化されることにより、マトリックス自体に比べて力学的特性(機械的特性)が向上する。繊維強化複合材は、例えば、衝撃吸収材として使用される。衝撃吸収材は、衝撃荷重を受けた場合に、衝撃荷重を受けた方向に圧縮破壊することにより衝撃エネルギを吸収する。
【0003】
衝撃吸収材として使用される繊維強化複合材には、例えば、扇形状のように平面視で円弧状の部分を含んだものがある。このような繊維強化複合材の繊維構造体としては、例えば、特許文献1に開示のものがある。特許文献1に開示の繊維要素は、平面視で扇形状であり、プリフォームの製造の際に繊維構造体の表面に付着される。
【0004】
図6に示すように、繊維要素80は、長手方向の一端縁に第1の円弧部81を備え、長手方向の他端縁に第2の円弧部82を備える。第1の円弧部81の円弧の長さは、第2の円弧部82の円弧の長さより短く、繊維要素80は、長手方向に沿って第1の円弧部81から第2の円弧部82に向かうに従い連続的に幅が広くなる形状である。
【0005】
特許文献1では、繊維要素80の幅を連続的に変化させるために、図7に示す可変スロート83を通過させている。可変スロート83は、円筒状のバー84の両端に円板85を備え、2枚の円板85は、バー84の周方向に沿って厚みが連続的に変化している。このため、可変スロート83において、2枚の円板85で挟まれた通過セクション86の開口幅もバー84の周方向に沿って連続的に変化している。そして、幅が一定の繊維要素80を可変スロート83の通過セクション86を通過させることにより、繊維要素80の幅を連続的に変化させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−63738号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1の繊維要素80は、通過セクション86を通過させて幅を変化させている。このため、繊維要素80において、幅狭な部分の厚みは、幅広な部分の厚みより厚くなっており、繊維要素80の幅が変化する毎に繊維の配向構成が異なり、第1の円弧部81から第2の円弧部82に向かう方向に沿って、繊維構造体の物性がばらついてしまう。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、幅が連続的に変化する部分において物性のばらつきを抑えることができる繊維強化複合材用の繊維構造体、繊維強化複合材用の繊維構造体の製造方法、及び繊維強化複合材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記問題点を解決するための繊維強化複合材用の繊維構造体は、非連続繊維製の繊維構造体にマトリックス樹脂を含浸させて構成された繊維強化複合材用の繊維構造体であって、平面視で一方向に沿って連続的に幅が変化する部分を含み、前記一方向に沿って幅が連続的に広くなる部分では、非連続繊維が前記一方向に沿って放射状に配向され、かついずれの部分でも厚み、及び非連続繊維の密度が一定であることを要旨とする。
【0010】
これによれば、繊維構造体が、平面視で幅狭の部分と幅広の部分とを有する形状であっても、いずれの部分でも厚み、及び非連続繊維の密度が一定である。このため、いずれの部分であっても非連続繊維の配向構成に差がなく、物性の差がなくなる。
【0011】
上記問題点を解決するための繊維強化複合材用の繊維構造体の製造方法は、非連続繊維製の繊維構造体にマトリックス樹脂を含浸させて構成された繊維強化複合材用の繊維構造体の製造方法であって、前記繊維構造体は、平面視で一方向に沿って連続的に幅が変化する部分を含み、前記一方向に沿って幅が連続的に広くなる部分では、非連続繊維が前記一方向に沿って放射状に配向され、かついずれの部分でも厚み、及び前記非連続繊維の密度が一定であり、前記非連続繊維製で一定幅の繊維束を、複数のローラ群を有するドラフト装置によって前記一方向へ引き延ばす際、前記ドラフト装置のドラフト倍率を連続的に異ならせて、前記一方向に沿って前記繊維束の厚みを連続的に変化させて前駆体を製造した後、前記前駆体を厚み方向にのみプレスして厚みを一定とすることを要旨とする。
【0012】
これによれば、ドラフト装置を用い、ドラフト倍率を連続的に異ならせることで、一方向に沿って連続的に繊維束の厚みを変化させた前駆体を製造することができる。前駆体では、厚みが厚くなるほどドラフト装置によって引き延ばされておらず、ドラフト装置により引き延ばしを受ける前の厚みに近付く。一方、前駆体では厚みが薄くなるほどドラフト装置によって非連続繊維が引き延ばされており、ドラフト装置により引き延ばしを受ける前の繊維束の厚みより薄くなる。そして、厚みに差のある前駆体を厚み方向にのみプレスし、厚みを一定とすることで、厚みの厚い部分ほど幅方向に広げられる。その結果として、繊維構造体のいずれの位置でも厚みを一定としつつ、非連続繊維の密度も一定とすることができる。
【0013】
上記問題点を解決するための繊維強化複合材は、繊維構造体にマトリックス樹脂を含浸させてなる繊維強化複合材であって、前記繊維構造体が請求項1に記載の繊維構造体であることを要旨とする。
【0014】
これによれば、繊維構造体を用いた繊維強化複合材を衝撃吸収材として使用し、幅狭な部分を衝撃荷重を受ける側とした場合、受けた衝撃荷重は一方向に沿って幅広側へ放射状に伝播する。このとき、繊維構造体において、いずれの部分であっても厚み及び密度が一定であることから、衝撃荷重が徐々に伝播して圧縮破壊されていき、繊維強化複合材によって衝撃エネルギを好適に吸収することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、幅が連続的に変化する部分において物性のばらつきを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施形態の繊維構造体及び繊維強化複合材を模式的に示す斜視図。
図2】(a)は繊維構造体の平面図、(b)は繊維構造体を示す図2(a)の2b−2b線断面図。
図3】(a)はドラフト装置を模式的に示す図、(b)は繊維束を模式的に示す平面図。
図4】(a)はドラフト装置によって製造された前駆体を示す平面図、(b)は前駆体を示す側面図。
図5】プレス装置によって前駆体をプレスする状態を模式的に示す図。
図6】背景技術の繊維要素を示す図。
図7】繊維要素を製造するための可変スロートを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、繊維強化複合材用の繊維構造体、繊維強化複合材用の繊維構造体の製造方法、及び繊維強化複合材を具体化した一実施形態を図1図5にしたがって説明する。
図1に示すように、繊維強化複合材10は、強化基材としての繊維構造体11にマトリックス樹脂Maを含浸させて形成されたものである。
【0018】
繊維構造体11は、平面視で扇形状(扇形の一部であり、両端に円弧部を有する形状)である。繊維構造体11は、円弧状の第1の円弧部12と、円弧状で、かつ円弧の長さが第1の円弧部12より長い第2の円弧部13を有する。
【0019】
図2(a)に示すように、繊維構造体11において、第1の円弧部12の中心点P1と第2の円弧部13の中心点P2とを結ぶ方向に延びる直線を中心軸線Lとする。繊維構造体11は、中心軸線Lの延びる方向において、両端に円弧部を有する形状である。繊維構造体11は、第1の円弧部12と第2の円弧部13とを繋ぐ側辺部14を一対有する。
【0020】
繊維構造体11において、平面視及び底面視で第1の円弧部12と、第2の円弧部13と、一対の側辺部14とで囲まれた面を頂面15a、及び底面15bとする。繊維構造体11において、頂面15a及び底面15bを最短距離で結ぶ直線の延びる方向を厚み方向とするとともに、その厚み方向に沿う寸法を厚みとする。また、繊維構造体11において、頂面15a及び底面15bに沿い、かつ中心軸線Lに直交する方向を幅方向とし、その幅方向に沿う寸法を幅とする。繊維構造体11は、平面視で、中心軸線Lに沿って第1の円弧部12から第2の円弧部13に向かうに従い幅が連続的に広くなる形状である。よって、繊維構造体11は、中心軸線Lの延びる方向(一方向)に沿って頂面15a及び底面15bの幅が連続的に変化している。よって、繊維構造体11における頂面15a及び底面15bは、一方向に沿って幅が連続的に変化した面である。
【0021】
繊維構造体11では、非連続繊維11aが第1の円弧部12を中心として、各側辺部14に沿うように放射状に引き揃えられている。具体的には、繊維構造体11の中心軸線L付近では、非連続繊維11aは中心軸線Lに沿って延びる状態に配置されている。また、非連続繊維11aは、繊維構造体11の一方の側辺部14付近では、その一方の側辺部14に沿って延びる状態に配置されている。さらに、非連続繊維11aは、繊維構造体11の他方の側辺部14付近では、その他方の側辺部14に沿って延びる状態に配置されている。なお、非連続繊維11aは、例えば、炭素繊維で構成されている。
【0022】
図2(b)に示すように、繊維構造体11は、いずれの位置であっても厚みは同じであり、単位体積当たりに存在する非連続繊維11aの重さ(以下、密度とする)が同じである。したがって、繊維構造体11は、いずれの位置であっても、非連続繊維11aの配向構成に差がなく、繊維構造体11の強度、賦形性等の物性に差がない。
【0023】
次に、繊維構造体11の製造方法について作用とともに説明する。
図3(b)に示すように、繊維構造体11は、非連続繊維11aの繊維束40を使用して製造される。繊維束40は、非連続繊維11aを一定幅で引き揃えた材料である。
【0024】
図3(a)に示すように、繊維構造体11は、繊維束40をドラフト装置50で引き延ばして繊維構造体11の前駆体16(図4及び図5参照)を製造した後、図5に示すように、前駆体16をプレス装置60で厚み方向にのみプレスして形成されている。
【0025】
図3(a)に示すように、ドラフト装置50は、繊維束40を搬送する搬送コンベア55と、図示しない送出コンベアから送られた繊維束40を受け取って引き延ばすローラ部51と、ドラフト装置50で引き延ばされた繊維束40を搬送コンベア55に向けてガイドするガイドローラ53と、を備える。ドラフト装置50では、繊維束40はローラ部51を通過した後、ガイドローラ53によって搬送コンベア55に送り出される。ドラフト装置50で繊維束40の流れる方向を流通方向Xとする。
【0026】
ドラフト装置50において、ローラ部51は、複数のローラ群52を有する。各ローラ群52は、3本のローラ52a,52b,52cで1組である。ローラ群52では、2本の上ローラ52a,52bの間に1本の下ローラ52cが位置している。各ローラ群52では、3本のローラ52a,52b,52cが同一周速度になるように駆動され、繊維束40を下ローラ52cと上ローラ52a,52bとで挟むように移送する。また、複数のローラ群52はそれぞれ周速度が変更可能である。
【0027】
図5に示すように、プレス装置60は、繊維束40から製造された前駆体16を厚み方向にのみプレスする。プレス装置60は、一対のプレスロール61を備え、一対のプレスロール61はそれぞれ回転可能に支持されている。一対のプレスロール61は、互いに接離可能に支持されている。そして、一対のプレスロール61を接離させることで、一対のプレスロール61の間隔の大きさが調節可能である。
【0028】
さて、図3(a)に示すように、繊維構造体11を製造する場合、まず、ドラフト装置50における繊維束40の供給側(流通方向Xの上流)において、繊維束40の中の非連続繊維11aを任意の方法で一方向に引き揃える。
【0029】
次に、複数のローラ群52をそれぞれ駆動させ、繊維束40をローラ群52で搬送する。その搬送中に複数のローラ群52同士の間で、下流側に対して上流側の周速度を連続的に早くさせる。周速度の変更により、ドラフト装置50のドラフト倍率が連続的に変更される。
【0030】
すると、図4(a)及び図4(b)に示すように、流通方向Xにおける下流側に向かうほど、繊維束40の厚みが徐々に薄くなるように非連続繊維11aが引き延ばされるとともに、繊維束40の幅が徐々に狭くなる。ここで、流通方向Xにおける上流側ほど、繊維束40の非連続繊維11aはドラフト装置50によるドラフト倍率が低いため、繊維束40の上流側ほど、繊維束40の厚みが、引き延ばされる前の繊維束40の厚みに近付いていく。
【0031】
その結果、繊維束40は、流通方向Xにおける最上流では平面視形状が最も幅広で、かつ厚みが、ドラフト装置50により引き延ばしを受ける前の繊維束40と同じままである一方、下流側に向かうほど、平面視形状が連続的に幅狭となり、かつ厚みが連続的に薄くなり、平面視が扇形状となる前駆体16が製造される。
【0032】
前駆体16は、平面視が、繊維構造体11よりも一回り小さい扇形状である。前駆体16は、平面視円弧状の第1プレス前円弧部17と、平面視円弧状で、かつ円弧の長さが第1プレス前円弧部17より長い第2プレス前円弧部18を有する。前駆体16は、第1プレス前円弧部17と第2プレス前円弧部18を繋ぐプレス前側辺部19を一対有する。第1プレス前円弧部17の円弧の長さは、繊維構造体11の第1の円弧部12の円弧より短く、第2プレス前円弧部18の円弧の長さは、繊維構造体11の第2の円弧部13の円弧より短い。
【0033】
そして、ドラフト装置50で製造された前駆体16を、図5に示すように、プレス装置60の一対のプレスロール61間を通過させる。このとき、一対のプレスロール61間の間隔を前駆体16における厚みの最も薄い部分である第1プレス前円弧部17での厚みに合わせる。そして、前駆体16を、幅狭な第1プレス前円弧部17側から一対のプレスロール61の間を通過させる。
【0034】
すると、前駆体16は、一対のプレスロール61間を通過していくのに合わせ、徐々に押し潰されていく。その結果、第1プレス前円弧部17及び第2プレス前円弧部18の円弧の長さが延びる。その結果、前駆体16は、プレス装置60を通過する前と比べて、全体的に幅広に成形される。
【0035】
また、前駆体16は、厚みの薄い第1プレス前円弧部17側ほどプレス量が少なく、厚みの厚い第2プレス前円弧部18に近付くほどプレス量が多くなるため、第2プレス前円弧部18に近付くほど、幅方向に押し広げられる。すると、前駆体16は幅が広がる方向に潰され、非連続繊維11aは放射状に分散される。その結果、前駆体16をプレスして得られる繊維構造体11は、頂面15a及び底面15bのいずれの部分でも、非連続繊維11aの密度が一定でありながら、厚みも一定となる。
【0036】
製造された繊維構造体11に、熱硬化性のマトリックス樹脂Maを含浸硬化させる。マトリックス樹脂Maの含浸硬化はRTM(レジン・トランスファー・モールディング)法で行われる。その結果、繊維構造体11を強化基材とした繊維強化複合材10が製造される。
【0037】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)繊維構造体11は、中心軸線Lの延びる方向に沿って第1の円弧部12から第2の円弧部13に向かうに従い連続的に幅広となる形状である。このような繊維構造体11であっても、いずれの部分であっても、厚み、及び非連続繊維11aの密度が一定である。したがって、繊維構造体11のいずれの部分であっても、繊維配向の構成が同じとなり、物性に差がない。
【0038】
そして、このような繊維構造体11を用いた繊維強化複合材10を衝撃吸収材として使用し、第1の円弧部12を衝撃荷重を受ける部分とした場合、第1の円弧部12で受けた衝撃荷重は、中心軸線Lの延びる方向に沿って第2の円弧部13側へ放射状に伝播する。このとき、繊維構造体11において、いずれの部分であっても厚み、及び非連続繊維11aの密度が一定であることから、衝撃荷重が徐々に伝播していき、繊維強化複合材10によって衝撃エネルギを好適に吸収することができる。
【0039】
(2)繊維構造体11は、繊維束40を引き延ばした後、プレスして形成されている。繊維構造体11の平面視が扇形状であっても、非連続繊維11aが放射状に分散され、かつ非連続繊維11aの密度も一定である。このため、繊維構造体11には、非連続繊維11aが局所的に集中した場所や、非連続繊維11aが局所的に少ない場所がなく、繊維強化複合材10においてマトリックス樹脂Maのみが存在する樹脂リッチな部分が形成されず、樹脂リッチな部分によって繊維強化複合材10の強度が低下することがない。
【0040】
(3)ドラフト装置50におけるドラフト倍率を異ならせることで繊維束40の厚み及び幅を異ならせた前駆体16を製造することができる。そして、前駆体16をプレス装置60で厚み方向にのみプレスすることで、非連続繊維11aの密度を一定としたまま厚みの差を均すことができる。よって、繊維構造体11は、平面視が扇形状で、幅が連続的に変化する形状でありながら、いずれの部分でも非連続繊維11aの密度及び厚みの差を無くして製造することができる。
【0041】
(4)プレス装置60は、一対のプレスロール61を備え、一対のプレスロール61が回転することにより、前駆体16を搬送しながらプレスすることができる。このため、前駆体16のプレスのために、前駆体16の搬送を停止させることがなく、繊維構造体11の生産性が低下しない。
【0042】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
○ 繊維強化複合材10は、複数の繊維構造体11を、側辺部14同士を隣り合わせて並設して、複数の繊維構造体11から構成された円環状としてもよいし、円環状の部分を積み上げて円筒状としてもよい。さらには、複数の繊維構造体11を厚み方向に積層したものとしてもよい。
【0043】
○ 繊維構造体11は、平面視三角形状であってもよいし、平面視台形状であってもよい。要は、繊維構造体11は、一方向に沿って幅が連続的に変化する形状であればよい。
○ 繊維構造体11は、中心軸線Lに沿う方向が長手方向となる扇形状であるが、中心軸線Lに沿う方向が短手方向となる扇形状であってもよい。
【0044】
○ 繊維構造体11は、中心軸線Lの延びる方向に沿って幅が一定な部分と、中心軸線Lの延びる方向に沿って幅が連続的に変化する部分の両方を含む形状であってもよい。
○ 繊維構造体11を使用した繊維強化複合材10は、衝撃吸収材ではなく、構造材料として使用してもよい。
【0045】
○ ドラフト装置50において、ローラ群52の数は適宜変更してもよい。
○ 前駆体16のプレスはプレスロール61によるプレスではなく、平板状のプレス板で一括してプレスしてもよい。
【0046】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について以下に追記する。
(イ)前記プレスは、前記前駆体を一対のプレスロールの間を通過させて行う繊維積層体の製造方法。
【0047】
(ロ)前記繊維構造体は、平面視扇形状であり、両端に円弧部を有する形状である繊維強化複合材用の繊維構造体。
【符号の説明】
【0048】
Ma…マトリックス樹脂、10…繊維強化複合材、11…繊維構造体、11a…非連続繊維、40…繊維束、50…ドラフト装置、52…ローラ群。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7