(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
燃料タンク(190)から内燃機関(110)のコモンレール(30)へと供給された液化ガス燃料の一部が、戻り燃料経路(85)を通じて前記燃料タンクに還流される燃料供給装置であって、
前記戻り燃料経路に設けられ、当該戻り燃料経路を流れる液化ガス燃料が流入する流入部(90)と、
前記コモンレールから前記流入部への液化ガス燃料の流通を制御する第一制御弁(71)と、
前記流入部から前記燃料タンクへの液化ガス燃料の流通を制御する第二制御弁(89)と、
前記内燃機関の停止後に、前記第二制御弁を閉弁させつつ前記第一制御弁を開弁させて、前記コモンレール内の液化ガス燃料を前記流入部に移動させる第一移送状態と、前記第一制御弁を閉弁させつつ前記第二制御弁を開弁させることにより、前記第一移送状態にて前記流入部に移動した液化ガス燃料を前記燃料タンクに移動させる第二移送状態とを交互に繰り返させる弁制御部(61)と、
を備える燃料供給装置。
前記弁制御部は、前記第一移送状態において、前記コモンレールの圧力と前記流入部の圧力とが実質的に等しくなった場合に、当該第一移送状態から前記第二移送状態へと切り替えることを特徴とする請求項2に記載の燃料供給装置。
前記弁制御部は、前記第二移送状態において、前記流入部の圧力と前記燃料タンクとの圧力差が実質的に無くなった場合に、当該第二移送状態から前記第一移送状態へと切り替えることを特徴とする請求項2又は3に記載の燃料供給装置。
燃料タンク(190)から内燃機関(110)のコモンレール(30)へと供給された液化ガス燃料の一部が、戻り燃料経路(85)を通じて前記燃料タンクに還流される燃料供給装置において、前記戻り燃料経路に設けられた流入部(90)への前記コモンレールからの液化ガス燃料の流通を制御する第一制御弁(71)と、前記流入部から前記燃料タンクへの液化ガス燃料の流通を制御する第二制御弁(89)と、をプロセッサ(58)によって制御する制御方法であって、
前記内燃機関の停止後に、前記コモンレール及び前記流入部の各圧力(Pc,Ps)を取得する第一圧力取得ステップ(S103,S203)と、
前記第一圧力取得ステップにて取得した前記各圧力の差に基づき、前記第二制御弁を閉弁させつつ前記第一制御弁を開弁させて前記コモンレール内の液化ガス燃料を前記流入部に移動させる第一移送状態から、前記第一制御弁を閉弁させつつ前記第二制御弁を開弁させて前記流入部に移動した液化ガス燃料を前記燃料タンクに移動させる第二移送状態へと切り替える第一切替ステップ(S104〜S106,S204〜S206)と、
前記第二移送状態への切り替え後に、前記流入部及び前記燃料タンクの各圧力(Ps,Pm)を取得する第二圧力取得ステップ(S107,S207)と、
前記第二圧力取得ステップにて取得した前記各圧力の差に基づき、前記第二移送状態から前記第一移送状態へと切り替える第二切替ステップ(S108〜S110,S208〜S210)と、
を含むことを特徴とする制御方法。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の複数の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、各実施形態において対応する構成要素には同一の符号を付すことにより、重複する説明を省略する場合がある。各実施形態において構成の一部分のみを説明している場合、当該構成の他の部分については、先行して説明した他の実施形態の構成を適用することができる。また、各実施形態の説明において明示している構成の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても複数の実施形態の構成同士を部分的に組み合わせることができる。そして、複数の実施形態及び変形例に記述された構成同士の明示されていない組み合わせも、以下の説明によって開示されているものとする。
【0017】
(第一実施形態)
図1に示す燃料供給装置100は、メイン燃料タンク190及び内燃機関110と共に車両に搭載されている。燃料供給装置100は、メイン燃料タンク190に貯留された液化ガス燃料を内燃機関110に供給する。内燃機関110へと供給されたDME燃料の一部は、メイン燃料タンク190に還流される。
【0018】
メイン燃料タンク190は、液化ガス燃料の一種であるジメチルエーテル(Dimethyl Ether,DME)を貯留している。メイン燃料タンク190内のDME燃料は、燃料蒸気圧に応じた圧力で加圧されることによって液化されている。メイン燃料タンク190には、安全弁が設けられている。安全弁は、メイン燃料タンク190内の圧力が所定の上限圧力を超えた場合に開弁する。上限圧力は、例えば1.8MPa程度に設定されている。
【0019】
内燃機関110は、車両のエンジンルーム120内に格納されている。内燃機関110は、具体的にはディーゼル機関であり、各気筒に配置されたインジェクタ40から噴射されるDME燃料を各気筒内にて圧縮する。内燃機関110は、各燃焼室111において圧縮により燃焼するDME燃料の熱エネルギーを動力に変換する。
【0020】
内燃機関110は、セルモータ112、サプライポンプ20、コモンレール30、及びインジェクタ40を有している。セルモータ112は、内燃機関110を始動させるための電動機である。セルモータ112は、内燃機関110の出力軸に動力を伝達して、当該出力軸を回転させることができる。
【0021】
図1及び
図2に示すサプライポンプ20は、往復変位するプランジャ23によってDME燃料を圧送するプランジャポンプである。サプライポンプ20は、高圧ライン21によってコモンレール30と接続されている。サプライポンプ20は、内燃機関110の出力軸によって駆動される。サプライポンプ20は、燃料供給装置100から供給されるDME燃料をさらに加圧し、昇圧されたDME燃料を、高圧ライン21を通じてコモンレール30に供給する。
【0022】
サプライポンプ20は、上述のプランジャ23に加えて、ポンプボディ22、デリバリバルブ25及びオーバーフローバルブ27等によって構成されている。ポンプボディ22には、燃料ギャラリ22a及び吐出流路22cを含むポンプ燃料流路22e、並びにプランジャ収容室22b等が形成されている。燃料ギャラリ22aは、ポンプ燃料流路22eのうちでプランジャ収容室22bにDME燃料を供給する区間である。燃料ギャラリ22aは、プランジャ収容室22bの周囲を囲む環状に形成されている。プランジャ収容室22bは、プランジャ23を往復変位可能に収容している。プランジャ収容室22bの一部は、プランジャ23の変位によってDME燃料を圧縮する加圧室22dとなっている。吐出流路22cは、加圧室22dにて昇圧された高圧のDME燃料を高圧ライン21へ流通させる燃料流路である。
【0023】
デリバリバルブ25は、ポンプボディ22に組み付けられており、サプライポンプ20の吐出部24を形成している。デリバリバルブ25は、吐出弁ボディ25a、吐出弁部25b、及びスプリング25cを有している。吐出弁ボディ25aは、ボルト状に形成されており、ポンプボディ22に螺合している。吐出弁ボディ25aには、燃料流路25dが軸方向に沿って形成されている。燃料流路25dは、吐出流路22cと高圧ライン21とを連通させている。
【0024】
吐出弁部25b及びスプリング25cは、吐出弁ボディ25aに収容されている。吐出弁部25bは、吐出弁ボディ25aの軸方向に沿って、燃料流路25d内を往復変位可能である。吐出弁部25bは、加圧室22d側から作用するDME燃料の圧力が低い場合に、スプリング25cによって付勢されて、燃料流路25dの連通を遮断している。そして、サプライポンプ20の作動によって加圧室22dからのDME燃料の吐出が開始されると、吐出弁部25bは、圧送されるDME燃料の圧力によって開弁し、コモンレール30へ向けたDME燃料の吐出を許容する。
【0025】
ここで、内燃機関110が停止された直後の状態における燃料ギャラリ22aのDME燃料の圧力をギャラリ圧力Pgaとする。また、メイン燃料タンク190におけるDME燃料の圧力をメインタンク圧力Pmとする。吐出弁部25bの開弁圧力Pdoは、ギャラリ圧力Pgaとメインタンク圧力Pmとの差圧よりも高く設定されている(Pdo>Pga−Pm)。
【0026】
具体的に、内燃機関110の停止状態において想定されるギャラリ圧力Pgaは、例えば燃料温度が摂氏70℃程度におけるDME燃料の飽和蒸気圧(約2.0MPa)とされる。一方、メインタンク圧力Pmは、例えば燃料温度が摂氏30℃程度におけるDME燃料の飽和蒸気圧(約0.7MPa)とされる。故に、吐出弁部25bの開弁圧力Pdoは、これらの差圧約1.3MPaよりも高く設定されており、具体的には1.5MPa程度に設定されている。
【0027】
オーバーフローバルブ27は、ポンプボディ22に組み付けられており、サプライポンプ20の余剰燃料排出部26を形成している。オーバーフローバルブ27は、調圧弁ボディ27a、調圧弁部27b、及びスプリング27cを有している。調圧弁ボディ27aは、ボルト状に形成されており、ポンプボディ22に螺合している。調圧弁ボディ27aには、燃料流路27dが軸方向に沿って形成されている。燃料流路27dは、燃料ギャラリ22aと、後述するオーバーフローライン87とを連通させている。
【0028】
調圧弁部27b及びスプリング27cは、調圧弁ボディ27aに収容されている。調圧弁部27bは、調圧弁ボディ27aの軸方向に沿って、燃料流路27d内を往復変位可能である。調圧弁部27bは、スプリング27cの付勢力によって閉弁し、燃料ギャラリ22aの最大圧力を規定している。調圧弁部27bは、燃料ギャラリ22aの圧力上昇によって開弁し、燃料ギャラリ22aからオーバーフローライン87へのDME燃料の排出を許容する。調圧弁部27bの開弁圧力Proは、燃料ギャラリ22aにおけるDME燃料の飽和蒸気圧よりも高く設定されており、具体的には、2.0MPa程度に設定されている。調圧弁部27bの開弁圧力Proは、吐出弁部25bの開弁圧力Pdoと同程度か、又は吐出弁部25bの開弁圧力Pdoよりも高い圧力に設定されている。
【0029】
図1に示すコモンレール30は、鉄鋼材等の金属材料によって形成された管状部材である。コモンレール30は、サプライポンプ20にて加圧されたDME燃料を、圧力を維持させたまま蓄積する。コモンレール30は、例えば30cc程度のDME燃料を蓄積することができる。コモンレール30は、分配ライン31によって各インジェクタ40と接続されている。コモンレール30は、各分配ライン31を通じて、各インジェクタ40にDME燃料を供給する。
【0030】
インジェクタ40は、コモンレール30から供給されるDME燃料を、内燃機関110の各気筒内に供給する。インジェクタ40は、内燃機関110のヘッド部に形成された貫通孔に挿入されることにより、燃焼室111内に噴孔を露出させている。インジェクタ40は、入力される制御信号に基づいて、燃焼室111に露出した噴孔からDME燃料を噴射する。
【0031】
次に燃料供給装置100の構成を説明する。燃料供給装置100は、燃料ライン80、フィードポンプ10、サブ燃料タンク90、各センサ73〜78、減圧弁71、供給遮断弁82、還流遮断弁89、及び制御装置50等によって構成されている。
【0032】
燃料ライン80は、メイン燃料タンク190及び内燃機関110の間においてDME燃料を流通させる配管である。燃料ライン80は、例えば金属製のパイプ部材により形成されている。燃料ライン80には、供給ライン81、リターン燃料ライン85、インジェクタリークライン86、オーバーフローライン87が含まれている。
【0033】
供給ライン81は、メイン燃料タンク190とサプライポンプ20とを繋ぐ配管である。供給ライン81は、フィードポンプ10からサプライポンプ20にDME燃料を供給する燃料流路を形成している。リターン燃料ライン85は、コモンレール30とメイン燃料タンク190とを繋ぐ配管である。リターン燃料ライン85は、コモンレール30から排出される余剰燃料をメイン燃料タンク190へ戻す燃料流路を形成している。
【0034】
インジェクタリークライン86は、各インジェクタ40とリターン燃料ライン85とを繋ぐ配管である。インジェクタリークライン86は、各インジェクタ40にて噴射されずに排出されるリーク燃料を、リターン燃料ライン85を流れるDME燃料に合流させる燃料流路を形成している。オーバーフローライン87は、サプライポンプ20のオーバーフロー燃料排出口とメイン燃料タンク190とを繋ぐ配管である。オーバーフローライン87は、サプライポンプ20から排出されるオーバーフロー燃料をメイン燃料タンク190へ戻す燃料流路を形成している。
【0035】
フィードポンプ10は、メイン燃料タンク190の内部に配置された電動ポンプである。フィードポンプ10は、電動モータの動力を用いて、メイン燃料タンク190に貯留されたDME燃料を吸い込む。フィードポンプ10は、DME燃料にフィード圧力(例えば1〜2MPa)を加えて昇圧させ、供給ライン81を通じてサプライポンプ20に圧送する。
【0036】
サブ燃料タンク90は、リターン燃料ライン85に設けられた容器である。サブ燃料タンク90の容量は、例えば100cc程度確保されており、コモンレール30の容量よりも大きくされている。一方で、サブ燃料タンク90の容量は、メイン燃料タンク190の容量よりも非常に小さくされている。サブ燃料タンク90には、コモンレール30から排出されてリターン燃料ライン85を流れるDME燃料が流入する。サブ燃料タンク90は、車両においてメイン燃料タンク190よりも高い位置に設けられている。サブ燃料タンク90は、内燃機関110の熱の影響を受け難いよう、車両のエンジンルーム120を避けて配置されている。
【0037】
尚、便宜的に、リターン燃料ライン85のうちで、コモンレール30からサブ燃料タンク90までを第一区間85aとし、サブ燃料タンク90からメイン燃料タンク190までを第二区間85bとする。第一区間85aは、サブ燃料タンク90の天井壁と接続されている。第二区間85bは、サブ燃料タンク90の底壁と接続されている。
【0038】
レール圧力センサ73及びレール温度センサ74は、コモンレール30の端部に一体化された形態で取り付けられている。サブタンク圧力センサ75及びサブタンク温度センサ76は、サブ燃料タンク90の壁部に取り付けられている。メインタンク圧力センサ77及びメインタンク温度センサ78は、メイン燃料タンク190に取り付けられている。各センサ73〜78は、制御装置50と電気的に接続されている。
【0039】
各圧力センサ73,75,77は、圧力を受ける金属製のダイアフラム部と、圧力に起因したダイアフラム部の変形を電気信号に変換するひずみゲージ又は抵抗素子等とを備えている。レール圧力センサ73は、コモンレール30内のレール圧力Pcに応じた電気信号を制御装置50へ出力する。サブタンク圧力センサ75は、サブ燃料タンク90内のサブタンク圧力Psに応じた電気信号を制御装置50へ出力する。メインタンク圧力センサ77は、メイン燃料タンク190内のメインタンク圧力Pmに応じた電気信号を制御装置50へ出力する。
【0040】
各温度センサ74,76,78は、温度によって抵抗値を変化させるサーミスタ、又は温度によって電圧を変化させる熱電対等を備えている。レール温度センサ74は、コモンレール30内のレール温度Tcに応じた電気信号を制御装置50へ出力する。サブタンク温度センサ76は、サブ燃料タンク90内のサブタンク温度Tsに応じた電気信号を制御装置50へ出力する。メインタンク温度センサ78は、メイン燃料タンク190内のメインタンク温度Tmに応じた電気信号を制御装置50へ出力する。
【0041】
減圧弁71は、コモンレール30の軸方向の端部に取り付けられている。減圧弁71は、制御装置50と電気的に接続された電磁弁である。減圧弁71の開弁により、コモンレール30からリターン燃料ライン85へとDME燃料が排出される。減圧弁71は、コモンレール30内の燃料圧力が所定の上限圧力を超えた場合に開弁する。加えて減圧弁71は、制御装置50によって開度を調整されることにより、コモンレール30からサブ燃料タンク90へのDME燃料の流通を制御することができる。
【0042】
供給遮断弁82は、供給ライン81に設けられた二方弁である。供給遮断弁82は、DME燃料を流通させる弁本体と、弁本体を制御するアクチュエータ等とによって構成されている。供給遮断弁82の弁本体には、それぞれ供給ライン81と接続された流入ポート部82a及び流出ポート部82bが設けられている。供給遮断弁82は、アクチュエータに入力される制御信号に基づいて、供給ライン81におけるDME燃料の流通を遮断することができる。
【0043】
還流遮断弁89は、リターン燃料ライン85の第二区間85bに設けられた二方弁である。還流遮断弁89は、DME燃料を流通させる弁本体と、弁本体を制御するアクチュエータ等とによって構成されている。還流遮断弁89の弁本体には、それぞれ第二区間85bと接続された流入ポート部89a及び流出ポート部89bが設けられている。還流遮断弁89は、アクチュエータに入力される制御信号に基づいて、第二区間85bにおけるDME燃料の流通を遮断することができる。加えて還流遮断弁89は、制御装置50によって開度を調整されることにより、サブ燃料タンク90からメイン燃料タンク190へのDME燃料の流通を制御することができる。
【0044】
制御装置50は、演算回路としてのプロセッサ58、RAM、及び書き換え可能な不揮発性の記憶媒体としてのフラッシュメモリ59等によって構成されている。制御装置50は、入力部51及び出力部52を有している。
【0045】
入力部51は、各センサ73〜78を含む多数の車載センサに加えて、イグニッションスイッチ54等の操作部とも接続されている。イグニッションスイッチ54には、内燃機関110の始動及び停止を指示する操作が入力される。車両の運転者等の操作者がイグニッションスイッチ54を操作すると、入力部51には、内燃機関110の始動信号及び停止信号のいずれかが入力される。
【0046】
出力部52は、セルモータ112、フィードポンプ10、サプライポンプ20、各インジェクタ40、減圧弁71、供給遮断弁82、及び還流遮断弁89と接続されている。出力部52は、プロセッサ58によって生成された制御信号を、これらの構成へ向けて出力する。
【0047】
さて、
図1に示す内燃機関110の停止後にコモンレール30内に残留しているDME燃料は、内燃機関110によって加熱されて、コモンレール30内で高圧な気体の状態となる。気化したDME燃料は、分配ライン31を通じて、インジェクタ40の噴孔から燃焼室111へと漏出する。燃焼室111に漏れ出たDME燃料は、次回の内燃機関110の始動時に異常な燃焼を生じさせてしまう虞がある。
【0048】
そこで、燃料供給装置100は、コモンレール30内に残るDME燃料を、メイン燃料タンクへと回収する作動を行う。以下、燃料供給装置100によって実施される回収の詳細を説明する。
図1及び
図3に示す制御装置50は、フラッシュメモリ59に記憶された制御プログラムをプロセッサ58にて実行することにより、圧力取得部62、温度取得部63、モータリング制御部64、気液判定部65、及び弁制御部61を、機能ブロックとして有する。
【0049】
圧力取得部62は、レール圧力センサ73によって計測されたレール圧力Pc、サブタンク圧力センサ75によって計測されたサブタンク圧力Ps、メインタンク圧力センサ77によって計測されたメインタンク圧力Pmを取得する。温度取得部63は、レール温度センサ74によって計測されたレール温度Tc、サブタンク温度センサ76によって計測されたサブタンク温度Ts、メインタンク温度センサ78によって計測されたメインタンク温度Tmを取得する。
【0050】
モータリング制御部64は、レール温度Tcとサブタンク温度Tsとの温度差に基づいて、セルモータ112を通電させる。これにより、内燃機関110の出力軸を介して、サプライポンプ20を一時的に作動させる。気液判定部65は、圧力取得部62及び温度取得部63によって取得されたレール圧力Pc及びレール温度Tcから、
図4に示す飽和蒸気圧線に基づいて、コモンレール30内のDME燃料が気化しているか否かを判定する。
【0051】
弁制御部61は、減圧弁71、供給遮断弁82、及び還流遮断弁89の開閉を制御する。弁制御部61は、DME燃料の回収のために、内燃機関110の停止後に、還流遮断弁89を閉弁させつつ減圧弁71を開弁させた状態(以下、「第一移送状態」)とする。この第一移送状態の後に、弁制御部61は、圧力取得部62によって取得されるレール圧力Pcとサブタンク圧力Psとの圧力差に基づいて、減圧弁71を閉弁させつつ還流遮断弁89を開弁させた状態(以下、「第二移送状態」)へと切り替える。弁制御部61は、サブタンク圧力Psとメインタンク圧力Pmとの圧力差に基づいて、第二移送状態から第一移送状態へと切り替える。弁制御部61は、第一移送状態と第二移送状態とを交互に繰り返させ、気液判定部65による気化の肯定判定がなされた場合に、これらの繰り返しを終了する。
【0052】
次に、制御装置50のプロセサによって実施される具体的な処理を、
図5及び
図6に基づき、
図1を参照しつつ、さらに説明する。
図5のフローチャートに示す処理は、イグニッションスイッチ54への入力に基づく停止信号を取得した制御装置50によって開始される。
【0053】
S101では、減圧弁71を開弁状態へと切り替える制御信号を出力し、S102に進む。S102では、還流遮断弁89を閉弁状態へと切り替える制御信号を出力し、S103に進む。S101及びS102により、燃料供給装置100は、コモンレール30内のDME燃料をサブ燃料タンク90に移動させる第一移送状態となる。
【0054】
S103では、レール圧力センサ73及びサブタンク圧力センサ75からレール圧力Pc及びサブタンク圧力Psを取得し、S104に進む。S104では、S103にて取得したレール圧力Pcとサブタンク圧力Psとを比較する。S104にて、レール圧力Pcがサブタンク圧力Psよりも高いと判定した場合、S103及びS104の処理を繰り返すことにより、レール圧力Pcとサブタンク圧力Psとが実質的に等しくなるまで待機する。そして、レール圧力Pcがサブタンク圧力Ps以下となったことにより、S105へ進む。
【0055】
S101〜S104による第一移送状態では、
図6に示すように、コモンレール30内のレール圧力Pc及びレール温度Tcは、DME燃料の流出によって時間の経過とともに低下していく。対して、DME燃料の流入するサブ燃料タンク90では、サブタンク圧力Ps及びサブタンク温度Tsが次第に上昇していく。そして、コモンレール30からサブ燃料タンク90へのDME燃料の移動は、サブタンク温度Tsの上昇に伴い、レール圧力Pc及びサブタンク圧力Psの圧力差が少なくなることによって停止する。これにより、第一移送状態から第二移送状態への切り替えが実施される。以上の第一移送状態では、サブ燃料タンク90の容量がコモンレール30の容量よりも大きいため、サブタンク圧力Ps及びサブタンク温度Tsの増加幅は、レール圧力Pc及びレール温度Tcの減少幅よりも小さくなる。
【0056】
図5に示すS105では、減圧弁71を閉弁状態へと切り替える制御信号を出力し、S106に進む。S106では、還流遮断弁89を開弁状態へと切り替える制御信号を出力し、S107に進む。S105及びS106により、燃料供給装置100は、第一移送状態にてサブ燃料タンク90に移動したDME燃料を、メイン燃料タンク190に移動させる第二移送状態となる。
【0057】
S107では、サブタンク圧力センサ75及びメインタンク圧力センサ77からサブタンク圧力Ps及びメインタンク圧力Pmを取得し、S108に進む。S108では、S107にて取得したサブタンク圧力Psとメインタンク圧力Pmとを比較する。S108にて、サブタンク圧力Psがメインタンク圧力Pmよりも高いと判定した場合、S107及びS108の処理を繰り返すことにより、サブタンク圧力Psとメインタンク圧力Pmとが実質的に等しくなるまで待機する。そして、サブタンク圧力Psがメインタンク圧力Pm以下となったことにより、S109へ進む。
【0058】
S105〜S108による第二移送状態では、
図6に示すように、サブ燃料タンク90及びメイン燃料タンク190間の圧力差と、重力とにより、サブ燃料タンク90内のDME燃料は、メイン燃料タンク190へと移動する。サブ燃料タンク90からメイン燃料タンク190へとDME燃料が抜け出ることにより、サブ燃料タンク90内にてDME燃料の気化が生じる。その結果、サブタンク圧力Ps及びサブタンク温度Tsは、時間の経過とともに低下していく。対して、メインタンク圧力Pm及びメインタンク温度Tmは、ほぼ一定のまま推移する。サブ燃料タンク90からメイン燃料タンク190へのDME燃料の移動は、サブタンク圧力Psがメインタンク圧力Pmまで低下し、これらの圧力差が少なくなることによって停止する。
【0059】
図5に示すS109では、レール圧力センサ73及びレール温度センサ74からレール圧力Pc及びレール温度Tcを取得し、S110に進む。S110では、コモンレール30内のDME燃料の回収が完了できたか否かを確認する。具体的にS110では、飽和蒸気圧線(
図4参照)に基づいて、コモンレール30内のDME燃料が全て気化しているか否かを判定する。
【0060】
S110にて、コモンレール30内に液体DME燃料が存在していると判定した場合には、S101に戻る。S101〜S110の反復により、
図6に示す如く、第一移送状態と第二移送状態とが交互に繰り返される。その結果、第一移送状態終了時におけるレール圧力Pc及びレール温度Tcは、徐々に低下していく。そして、
図5に示すS110にて、DME燃料が全て気化したと判定した場合に、S111に進む。S111では、還流遮断弁89を閉弁状態へと切り替える制御信号を出力し、一連の回収処理を終了する。
【0061】
ここまで説明した第一実施形態では、第二移送状態において、サブ燃料タンク90内で気化するDME燃料により、サブタンク温度Tsひいてはサブタンク圧力Psの低下が引き起こされる。故に、第二移送状態から再び第一移動状態とされることで、コモンレール30内の液化ガス燃料は、サブ燃料タンク90に移動できる。したがって、第一移送状態と第二移送状態とを繰り返す作動により、燃料供給装置100の構成の複雑化を避けつつ、コモンレール30内のDME燃料をメイン燃料タンク190に回収することが可能となる。
【0062】
加えて、サブ燃料タンク90にて気化したDME燃料の蒸発潜熱により、コモンレール30から吸い出されたDME燃料は、サブ燃料タンク90にて冷却されたうえで、メイン燃料タンク190へと移動することとなる。そのため、メインタンク温度Tm及びメインタンク圧力Pmの上昇が防がれ得る。その結果、第二移送状態においては、サブ燃料タンク90からメイン燃料タンク190へと、DME燃料が確実に移動できる。
【0063】
また第一実施形態では、第一移送状態から第二移送状態への切り替えは、レール圧力Pcとサブタンク圧力Psとの圧力差に基づき、これらの圧力Pc,Psが実質的に等しくなった場合に行われる。こうした制御によれば、コモンレール30からサブ燃料タンク90へとDME燃料が移動し難くなるタイミングで、第一移送状態を適切に終了させることができる。
【0064】
同様に、第二移送状態から第一移送状態への切り替えは、サブタンク圧力Psとメインタンク圧力Pmとの圧力差に基づき、これらの圧力Ps,Pmが実質的に等しくなった場合に行われる。こうした制御によれば、サブ燃料タンク90からメイン燃料タンク190へとDME燃料が移動し難くなるタイミングで、第二移送状態を適切に終了させることができる。
【0065】
さらに第一実施形態では、サブ燃料タンク90がメイン燃料タンク190よりも高い位置に設けられているため、第二移送状態において、サブ燃料タンク90内のDME燃料は、重力の作用をさらに受けて、メイン燃料タンク190へと移動する。その結果、サブ燃料タンク90内のDME燃料が速やかに抜けて、DME燃料の気化が効果的に発生し得る。したがって、コモンレール30からのDME燃料の回収をより確実に実施することが可能となる。
【0066】
また第一実施形態では、サブ燃料タンク90の容量がコモンレール30の容量よりも大きくされているので、一回の第一移送状態にて、コモンレール30からのサブ燃料タンク90へと、多くのDME燃料を移動させることが可能となる。その結果、第一移動状態と第二移送状態の繰り返し回数を減らし得るので、DME燃料の回収に要する時間の短縮が可能となる。
【0067】
さらに第一実施形態では、吐出弁部25bの開弁圧力Pdoがギャラリ圧力Pgaとメインタンク圧力Pmの差圧よりも高く設定されている。こうした構成であれば、内燃機関110の停止直後、コモンレール30内のDME燃料が回収されて、メインタンク圧力Pm近傍までコモンレール30内の圧力が低下した場合でも、吐出弁部25bは、閉弁状態を維持し得る。故に、供給ライン81のDME燃料は、コモンレール30側に抜かれることなく、供給ライン81に留まり得る。
【0068】
以上によれば、内燃機関110を再始動する際に、供給ライン81をDME燃料で満たすための時間が短縮され、サプライポンプ20からインジェクタ40へのDME燃料の圧送が迅速に開始される。このように、DME燃料の移送に要する時間を短くすることで、内燃機関110の再始動を円滑に開始することが可能になる。尚、供給遮断弁82が閉弁されていた場合でも、供給ライン81に残留していたDME燃料は、コモンレール30側に流出することなく、供給ライン81に留まり得る。
【0069】
加えて第一実施形態では、調圧弁部27bの開弁圧力Proが吐出弁部25bの開弁圧力Pdoよりも高く設定されている。故に、調圧弁部27bの開弁により、燃料ギャラリ22aを通じて、供給ライン81からオーバーフローライン87へDME燃料が抜け出てしまう事態も、防がれ得る。以上によれば、内燃機関110の迅速な再始動がさらに確実に可能になる。
【0070】
さらに第一実施形態では、コモンレール30からメイン燃料タンク190へのDME燃料の回収は、コモンレール30内のDME燃料が全て気化した状態となるまで、継続される。コモンレール30内のDME燃料が全て気化した状態であれば、燃焼室111への漏出に繋がるような圧力上昇は生じ難い。故に、DME燃料の気化が確認されるまで回収動作を継続する構成であれば、内燃機関110における異常燃焼の発生を確実に防ぐことができる。
【0071】
そして第一実施形態のように、エンジンルーム120内を避けてサブ燃料タンク90を配置すれば、サブ燃料タンク90は、内燃機関110から放出される熱の影響を受け難くなる。その結果、第二移送状態では、サブ燃料タンク90内におけるDME燃料の気化が確実に発生するようになる。したがって、コモンレール内のDME燃料を吸い出すサブ燃料タンク90の機能が確実に発揮可能となる。
【0072】
尚、第一実施形態において、燃料ギャラリ22aが特許請求の範囲に記載の「ギャラリ区間」に相当し、減圧弁71が特許請求の範囲に記載の「第一制御弁」に相当し、リターン燃料ライン85が特許請求の範囲に記載の「戻り燃料経路」に相当する。また、還流遮断弁89が特許請求の範囲に記載の「第二制御弁」に相当し、サブ燃料タンク90が特許請求の範囲に記載の「流入部」に相当する。さらに、エンジンルーム120が特許請求の範囲に記載の「内燃機関を格納している空間」に相当し、メイン燃料タンク190が特許請求の範囲に記載の「燃料タンク」に相当する。
【0073】
そして、S103の処理が特許請求の範囲に記載の「第一圧力取得ステップ」に相当し、S104〜S106の処理が特許請求の範囲に記載の「第一切替ステップ」に相当する。また、S107の処理が特許請求の範囲に記載の「第二圧力取得ステップ」に相当し、S108〜S110の処理が特許請求の範囲に記載の「第二切替ステップ」に相当する。
【0074】
(第二実施形態)
図7及び
図8に示す本発明の第二実施形態は、第一実施形態の変形例である。第二実施形態では、モータリング制御部64(
図3参照)の機能を用いてセルモータ112を作動させることにより、レール温度Tcを上昇させる。その具体的な処理の内容を、
図7を用いて、
図1を参照しつつ説明する。尚、
図7のS201〜S208及びS213〜S215はそれぞれ、第一実施形態のS101〜S108及びS109〜S111(
図5参照)と実質的に同一である。
【0075】
S209では、レール温度センサ74及びサブタンク温度センサ76からレール温度Tc及びサブタンク温度Tsを取得し、S210に進む。S210では、レール温度Tc及びサブタンク温度Tsを比較することにより、レール温度Tcの温度低下を検出する。具体的にS210では、レール温度Tcとサブタンク温度Tsとの温度差が予め設定された閾値α(例えば5℃程度)を超えているか否かを判定する。S210にて、レール温度Tcとサブタンク温度Tsとの温度差が5℃を超えていると判定した場合には、S213に進む。
【0076】
一方で、S210にて、レール温度Tcとサブタンク温度Tsとの温度差が5℃以下であると判定した場合には、S211に進む。S211では、レール温度Tcとサブタンク温度Tsとの温度差を拡大させるために、セルモータ112を通電状態にする。S211の制御により、セルモータ112によって駆動された内燃機関110の出力軸がサプライポンプ20を作動させる。S212では、通電を終了することによってセルモータ112及びサプライポンプ20を停止させ、S213に進む。
【0077】
以上のS209〜S212による内燃機関110のモータリング動作によれば、
図8に示すように、コモンレール30内のレール圧力Pc及びレール温度Tcを再び高めることができる。故に、第二移送状態から第一移送状態へと切り替えられた後、コモンレール30内のDME燃料は、確実にサブ燃料タンク90へと排出される。その結果、レール圧力Pcは、モータリングによって高められる直前の圧力よりも、低い値まで低下可能となる。一方で、レール温度Tcは、以前の温度よりも高い温度となる。故に、DME燃料は、気化した状態となる。このDME燃料の気化が確認されることで、回収処理は終了される。
【0078】
ここまで説明した第二実施形態でも、第一実施形態と同様に第一移送状態と第二移送状態との繰り返しにより、コモンレール30内のDME燃料をメイン燃料タンク190に回収することができる。
【0079】
加えて第二実施形態では、サプライポンプ20内の加圧室や流出流路等に残留している高圧のDME燃料の利用により、レール圧力Pcとサブタンク圧力Psとの間の圧力差の拡大が図られている。その結果、コモンレール30からメイン燃料タンク190へのDME燃料の回収は、コモンレール30内のDME燃料が気体の状態となるまで、確実に継続されるようになる。
【0080】
さらに第二実施形態のようにサプライポンプ20を作動させた場合でも、供給ライン81のDME燃料は、コモンレール30側に抜け切らずに、供給ライン81内に留まり得る。故に、供給ライン81にDME燃料を残留させて、内燃機関110の再始動を円滑に開始可能にする効果は、第二実施形態においても発揮可能となる。
【0081】
尚、第二実施形態において、サプライポンプ20が特許請求の範囲に記載の「高圧ポンプ」に相当し、モータリング制御部64が特許請求の範囲に記載の「ポンプ制御部」に相当する。そして、S203の処理が特許請求の範囲に記載の「第一圧力取得ステップ」に相当し、S204〜S206の処理が特許請求の範囲に記載の「第一切替ステップ」に相当する。また、S207の処理が特許請求の範囲に記載の「第二圧力取得ステップ」に相当し、S208〜S210の処理が特許請求の範囲に記載の「第二切替ステップ」に相当する。
【0082】
(他の実施形態)
以上、本発明による複数の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定して解釈されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の実施形態及び組み合わせに適用することができる。
【0083】
上記実施形態において、第一移送状態と第二移送状態との切り替えは、レール圧力Pc及びサブタンク圧力Ps間の圧力差、並びにサブタンク圧力Ps及びメインタンク圧力Pm間の圧力差に基づいて行われていた。しかし、第一移送状態から第二移送状態への切り替えは、レール温度Tc及びサブタンク温度Ts間の温度差に基づいて行うことが可能である。同様に、第二移送状態から第一移送状態への切り替えは、例えばサブタンク温度Ts及びメインタンク温度Tm間の温度差に基づいて行うことが可能である。
【0084】
さらに、例えば、第一移送状態及び第二移送状態のそれぞれの継続時間が予め設定されていてもよい。こうした構成では、第一移送状態と第二移送状態との切り替えは、継続時間の超過に基づいて行われる。また、上述したような圧力差、温度差、及び継続時間を組み合わせることにより、第一移送状態及び第二移送状態を互いに切り替えるタイミングが決定されてもよい。
【0085】
上記実施形態では、レール圧力Pc及びサブタンク圧力Ps間の圧力差が実質無くなった場合に、第一移送状態から第二移送状態へと切り替えられていた。しかし、レール圧力Pc及びサブタンク圧力Ps間の圧力差が、予め設定された閾値以下となった場合に、第一移送状態から第二移送状態への切り替えを行うことが可能である。同様に、サブタンク圧力Ps及びメインタンク圧力Pm間の圧力差が、予め設定された閾値以下となった場合に、第二移送状態から第一移送状態への切り替えを行うことが可能である。
【0086】
上記実施形態では、「第一制御弁」及び「第二制御弁」として、それぞれ「減圧弁」及び「還流制御弁」が用いられていたが、これらの構成及び取り付けられる位置は、適宜変更可能である。
【0087】
上記実施形態では、コモンレール内のDME燃料が気化したことに基づいて、第一移送状態と第二移送状態との繰り返しは、終了されていた。このような繰り返しの終了条件は、コモンレール内のDME燃料の気液判定に限定されず、適宜変更可能である。例えば、予め設定された所定回数以上、第一移送状態と第二移送状態との繰り返しを実施した場合に、終了条件が成立してもよい。又は、内燃機関の停止から予め設定された時間以上、第一移送状態と第二移送状態との繰り返しを続けた場合に、終了条件が成立してもよい。
【0088】
上記実施形態では、第二移送状態から第一移送状態へと切り替えるタイミングにて、終了条件の成立を確認する判定が実施されていた。しかし、第一移送状態から第二移送状態へと切り替えるタイミングにて、終了条件の成立が確認されてもよい。
【0089】
上記第二実施形態では、レール温度Tc及びサブタンク温度Ts間の温度差が減少した場合に、モータリングによるサプライポンプの作動が実施されていた。しかし、レール圧力Pc及びサブタンク圧力Ps間の圧力差が減少した場合に、サプライポンプの作動が実施されてもよい。さらに、第一移送状態と第二移送状態が所定の回数繰り返された場合に、サプライポンプの作動が実施されてもよい。
【0090】
上記実施形態におけるサブ燃料タンクに相当する構成は、容量及び配置等を適宜変更可能である。例えば、サブ燃料タンクの容量は、コモンレールの容量に応じて適宜変更可能である。また、サブ燃料タンクは、メイン燃料タンクと同じ高さとなるよう、当該タンクと並べて配置されていてもよい。さらに、サブ燃料タンクは、エンジンルーム内に配置されていてもよい。
【0091】
上記実施形態では、一方向弁であるデリバリバルブ25及びオーバーフローバルブ27の機能により、内燃機関110の停止後においてコモンレール30からDME燃料が回収されても、供給ライン81のDME燃料は、抜かれずに残されていた。このような各バルブの形式は、適宜変更可能である。また、各バルブの開弁圧力は、メイン燃料タンクの飽和蒸気圧を上回る範囲で適宜変更されてよい。例えば、オーバーフローバルブの開弁圧力は、デリバリバルブの開弁圧力よりも僅かに低く設定されていてもよい。
【0092】
上記実施形態では、吐出弁部25bの開弁圧力Pdoの設定に、ギャラリ圧力Pgaが基準として用いられていた。しかし、ポンプ燃料流路22eのうちで燃料ギャラリ22a以外の区間の圧力が、開弁圧力Pdoを設定する際の基準として用いられてもよい。例えば、吐出弁部25bの開弁圧力Pdoは、吐出流路22cにおけるDME燃料の圧力と、メインタンク圧力Pmとの差圧よりも高く設定されてもよい。
【0093】
上記実施形態のサプライポンプは、内燃機関の出力軸によって駆動されていた。しかし、このような「高圧ポンプ」は、電動モータによって駆動される電動ポンプであってもよい。以上の構成であれば、モータリング制御部64(
図3参照)に替えて、レール温度Tcとサブタンク温度Tsとの温度差に基づき電動モータを通電させることにより、高圧ポンプを一時的に作動させる機能ブロックが設けられる。
【0094】
上記実施形態では、燃料供給システムによって内燃機関に供給される液化ガス燃料として、DME燃料を例示した。しかし、液化ガス燃料は、DME燃料に限定されない。例えば、主成分としてDMEを含む軽油等のディーゼル燃料が、液化ガス燃料として使用可能である。
【0095】
上記実施形態の制御装置によって提供されていた機能は、所定のプログラムを実行するプロセッサの機能ブロックであってもよく、又は専用の集積回路によって実現されていてもよい。或いは、上述のものとは異なるハードウェア及びソフトウェア、或いはこれらの組み合わせによって、特許請求の範囲に記載の「制御方法」を実現するための各機能が提供されてよい。
【0096】
上記実施形態では、車両に搭載された内燃機関に燃料を供給する燃料供給装置に本発明を適用した例を説明した。しかし、車載された内燃機関に限らず、船舶、鉄道車両、及び航空機等に搭載された内燃機関に燃料を供給する燃料供給装置にも、本発明は適用可能である。さらに、発電用の内燃機関にて消費される燃料を供給する燃料供給装置にも、本発明は適用可能である。