特許第6443308号(P6443308)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6443308
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】車両
(51)【国際特許分類】
   B60L 3/00 20060101AFI20181217BHJP
【FI】
   B60L3/00 J
【請求項の数】1
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-226596(P2015-226596)
(22)【出願日】2015年11月19日
(65)【公開番号】特開2017-99072(P2017-99072A)
(43)【公開日】2017年6月1日
【審査請求日】2017年11月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
【住所又は居所】愛知県豊田市トヨタ町1番地
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西村 幸将
【住所又は居所】愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自動車株式会社内
【審査官】 今井 貞雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−118797(JP,A)
【文献】 特開2014−124045(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両であって、
コンデンサを含み、第1の蓄電装置と負荷との間で電力を変換する電力変換装置と、
前記車両の衝突を検出するための検出信号を出力する検出装置と、
前記電力変換装置を制御する制御装置と、
前記検出装置および前記制御装置に電力を供給する第2の蓄電装置とを備え、
前記検出信号は、ハイレベルおよびローレベルの両方を含むパターンによって前記車両が衝突した旨を表し、かつ、ハイレベルおよびローレベルの両方を含む他のパターンによって前記車両が衝突していない旨を表す一方で、前記第2の蓄電装置から前記検出装置への電力供給が遮断されると、ハイレベルおよびローレベルのうちのいずれかに一方に固着し、
前記制御装置は、前記第2の蓄電装置から前記制御装置への電力供給が瞬間的に遮断された履歴があり、かつ、前記検出信号がハイレベルおよびローレベルのうちのいずれかに一方に固着している場合に、前記電力変換装置を制御することによって、前記コンデンサに蓄えられた残留電荷を放電する放電制御を実行する、車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両に関し、より特定的には、コンデンサを含む電力変換装置を備えた車両において、コンデンサに蓄えられた残留電荷を放電するための制御に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、バッテリに蓄えられた電力から生じる駆動力を用いて走行する電動車両として、ハイブリッド自動車、電気自動車、および燃料自動車等が実用化されている。これらの電動車両はモータジェネレータと、車両の走行状態に応じてバッテリとモータジェネレータとの間で電力を変換する電力変換装置(より具体的にはコンバータおよびインバータ等)とをさらに備える。この電力変換装置には一般に、電圧を安定化するための大容量かつ高電圧のコンデンサ(いわゆる平滑コンデンサ)が設けられている。
【0003】
このような構成を有する電動車両が被衝突物(他の車両または障害物等)に衝突した場合には、コンデンサに蓄えられた残留電荷を速やかに放電することが求められる。そのため、残留電荷を放電するための各種制御が提案されている。たとえば国際公開第2010/131340号(特許文献1)は、車両の衝突が検知された場合に、コンデンサの残留電荷による電圧を、電力変換装置を制御する制御装置の制御用電圧として利用することにより、残留電荷を放電する構成を開示する(たとえば特許文献1の段落[0069]参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2010/131340号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような構成を有する電動車両は、多くの場合、電力変換装置を制御する制御装置と、車両の衝突を検出する検出装置とを備える。検出装置は、Gセンサ等を用いて車両の衝突を検出すると、その旨を示す検出信号を制御装置に出力する。より具体的に、車両が衝突した旨は、検出信号においてハイレベルおよびローレベルの両方を含む特定のパターンによって表される。制御装置は、検出装置からの検出信号が上記特定パターンであることを読み取ると、車両が衝突したと判定し、コンデンサの残留電荷を放電するための制御を電力変換装置に実行させる。
【0006】
ここで、制御装置および検出装置は、主に補機バッテリからの電力供給を受けて動作する。そのため、以下に2通りの条件を説明するように、車両が衝突することによって補機バッテリからの電力供給に異常が生じた場合には、車両が衝突したとの衝突判定を制御装置が行なうことができなくなる可能性がある。
【0007】
第1の条件として、車両が衝突することにより、たとえば補機バッテリと検出装置とを結ぶ電力線が地絡することで、補機バッテリから検出装置への電力供給が永続的に遮断され得る。そうすると、検出装置は、上記特定パターンの検出信号を出力することができなくなる。つまり、検出信号がハイレベルおよびローレベルのうちのいずれかに一方に固着してしまうので、制御装置は、車両が衝突したと判定することができなくなる。
【0008】
第2の条件として、車両が衝突することにより、補機バッテリから制御装置への電力供給の瞬間的な遮断または瞬間的な電圧低下(いわゆる瞬断)が発生する可能性がある。瞬断の発生に伴い、たとえば制御装置が再起動(リセット)されると、衝突判定が可能な状態へと制御装置が復帰するまでには、ある程度の時間を要する。この間(瞬断から復帰までの間)、制御装置は、車両が衝突したと判定することができない。
【0009】
このように、検出装置から出力される検出信号の固着、および補機バッテリから制御装置への電力供給の瞬断が発生した場合には、制御装置は、衝突判定を適切に行なうことができなくなる可能性がある。その結果として、コンデンサに蓄えられた残留電荷を放電するための制御が実行されなくなってしまうことが懸念される。
【0010】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、コンデンサを含む電力変換装置を備えた車両において、車両が衝突した場合に、より確実にコンデンサを放電するための技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のある局面に従う車両は、コンデンサを含み、第1の蓄電装置と負荷との間で電力を変換する電力変換装置と、車両の衝突を検出するための検出信号を出力する検出装置と、電力変換装置を制御する制御装置と、検出装置および制御装置に電力を供給する第2の蓄電装置とを備える。検出信号は、ハイレベルおよびローレベルの両方を含むパターンによって車両が衝突した旨を表す一方で、第2の蓄電装置から検出装置への電力供給が遮断されると、ハイレベルおよびローレベルのうちのいずれかに一方に固着する。制御装置は、第2の蓄電装置から制御装置への電力供給が瞬間的に遮断された履歴があり、かつ、検出信号がハイレベルおよびローレベルのうちのいずれかに一方に固着している場合に、電力変換装置を制御することによって、コンデンサに蓄えられた残留電荷を放電する放電制御を実行する。
【0012】
検出信号がハイレベルおよびローレベルのうちのいずれかに一方に固着したとの条件が成立した場合、制御装置は、車両が衝突したと判定することができない。また、第2の蓄電装置から制御装置への電力供給が瞬間的に遮断されたとの条件が成立した場合にも、制御装置は、車両が衝突したと判定することができない。しかしながら、これら両方の条件が成立した場合には、車両が衝突した可能性が高い。したがって、上記構成によれば、両方の条件が成立した場合には、車両が衝突したものとして放電制御が実行される。これにより、ハイレベルおよびローレベルの両方を含む上記パターンを用いて車両が衝突したと判定できない場合であっても、放電制御を実行することができる。よって、より確実にコンデンサを放電することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施の形態に係る車両の全体構成を概略的に示すブロック図である。
図2】車両の制御装置および車両負荷の構成例を示す図である。
図3】比較例における車両衝突時の制御を説明するためのタイムチャートである。
図4】本実施の形態における車両衝突時の制御を説明するためのタイムチャートである。
図5】本実施の形態における車両衝突時の制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0015】
以下に示す実施の形態においては、本発明に係る車両がハイブリッド車である例について説明する。しかし、本発明に係る車両は、コンデンサを含む電力変換装置を搭載した電動車両であればこれに限定されるものではなく、電気自動車または燃料電池車であってもよい。
【0016】
<車両の構成>
図1は、本実施の形態に係る車両の全体構成を概略的に示すブロック図である。車両1は、エンジン100と、モータジェネレータ10,20と、動力分割機構30と、駆動軸40と、減速機50と、車輪60と、電力制御装置(PCU:Power Control Unit)200と、メインバッテリ150と、システムメインリレー(SMR:System Main Relay)160と、ハイブリッド用電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)(以下「HVECU」とも記載する)300とを備える。
【0017】
エンジン100は、ガソリンエンジンまたはディーゼルエンジン等の内燃機関である。エンジン100は、HVECU300からの制御信号に応じて車両1が走行するための動力を発生する。エンジン100により発生した動力は動力分割機構30に出力される。
【0018】
モータジェネレータ10,20の各々は、たとえば三相交流永久磁石型モータである。モータジェネレータ10は、エンジン100を始動させる際にはメインバッテリ150の電力を用いてエンジン100のクランクシャフトを回転させる。また、モータジェネレータ10は、エンジン100の動力を用いて発電することも可能である。モータジェネレータ10によって発電された交流電力は、PCU200により直流電力に変換されてメインバッテリ150に充電される。また、モータジェネレータ10によって発電された交流電力がモータジェネレータ20に供給される場合もある。
【0019】
モータジェネレータ20は、メインバッテリ150からの供給電力およびモータジェネレータ10による発電電力のうちの少なくとも一方を用いて出力軸を回転させる。また、モータジェネレータ20は、回生制動によって発電することも可能である。モータジェネレータ20によって発電された交流電力は、PCU200により直流電力に変換されてメインバッテリ150に充電される。
【0020】
動力分割機構30は、たとえば遊星歯車機構(図示せず)を含んで構成され、エンジン100のクランクシャフト、モータジェネレータ10の回転軸、および駆動軸40の三要素を機械的に連結する。動力分割機構30は、上記三要素のうちのいずれか一つを反力要素とすることによって、他の2つの要素間での動力の伝達を可能とする。
【0021】
減速機50は、動力分割機構30およびモータジェネレータ20のうちの少なくとも一方からの動力を車輪60に伝達する。また、車輪60が受けた路面からの反力は、減速機50を介してモータジェネレータ20に伝達される。これにより、モータジェネレータ20は回生制動時に発電する。
【0022】
PCU200は、メインバッテリ150に蓄えられた直流電力を昇圧し、昇圧された電圧を交流電圧に変換してモータジェネレータ10,20(負荷)に供給する。また、PCU200は、モータジェネレータ10,20で発電された交流電力を直流電力に変換して、メインバッテリ150に供給する。
【0023】
SMR160は、メインバッテリ150とPCU200とを結ぶ電力線に接続されている。SMR160は、ECU300からの制御信号に応じて開放または閉成される。これにより、メインバッテリ150とPCU200との間の電気的な接続および遮断が切り替えられる。
【0024】
メインバッテリ150は、再充電が可能に構成された直流電源である。メインバッテリ150は、代表的にはニッケル水素二次電池もしくはリチウムイオン二次電池などの二次電池、または電気二重層キャパシタなどのキャパシタを含んで構成される。メインバッテリ150の電圧は、たとえば約200Vの高電圧である。
【0025】
車両1は、補機バッテリ350と、図示しないエアバッグを作動させるためのエアバッグシステム400とをさらに備える。これらの構成の詳細については図2にて説明する。なお、車両1において、PCU200と、HVECU300と、エアバッグシステム400とは、たとえば乗員座席の前部領域であるエンジンルーム(図示せず)に配置される。
【0026】
<電気系統の構成>
図2は、車両1の電気系統の構成例を示す回路ブロック図である。PCU200は、電圧センサ210と、コンデンサC1と、コンバータ220と、コンデンサC2と、電圧センサ230と、インバータ240,250と、MGECU260とを含む。HVECU300は、制御部310および記憶部320を含む。エアバッグシステム400は、衝突センサ410と、エアバッグ点火装置420と、リレー430と、エアバッグECU440とを含む。
【0027】
メインバッテリ150とコンバータ220とは、SMR160を介して電力線PL1,NLにより電気的に接続される。コンデンサC1は、電力線PL1と電力線NLとの間に電気的に接続される。コンデンサC1は、電力線PL1と電力線NLとの間の電圧変動の交流成分を平滑化する。電圧センサ210は、コンデンサC1の電圧VLを検出して、その検出結果をMGECU260に出力する。
【0028】
コンバータ220は、MGECU260からの制御信号に基づいて、メインバッテリ150から供給された直流電圧を昇圧し、昇圧された電圧をインバータ240,250に供給する。より具体的には、コンバータ220は、スイッチング素子Q1,Q2と、スイッチング素子Q1,Q2にそれぞれ逆並列に接続された逆並列ダイオードD1,D2と、リアクトルL1とを有する。スイッチング素子Q1および逆並列ダイオードD1はコンバータ220の上アームを構成し、スイッチング素子Q2および逆並列ダイオードD2はコンバータ220の下アームを構成する。リアクトルL1の一方端は電力線PL1に接続され、リアクトルL1の他方端はスイッチング素子Q1のエミッタとスイッチング素子Q2のコレクタとの接続ノードに接続される。スイッチング素子Q1のコレクタは、電力線PL2に電気的に接続される。スイッチング素子Q2のエミッタは、電力線NLに電気的に接続される。
【0029】
コンデンサC2は、電力線PL2と電力線NLとの間に接続される。コンデンサC2は、電力線PL2と電力線NLとの間の電圧変動の交流成分を平滑化する。電圧センサ230は、コンデンサC2の電圧VHを検出して、その検出結果をMGECU260に出力する。
【0030】
インバータ240,250の各々は、たとえば三相インバータである。インバータ240,250は、MGECU260からの制御信号に基づいて、コンバータ220により昇圧された直流電圧を交流電圧に変換し、モータジェネレータ10,20にそれぞれ供給する。
【0031】
MGECU260は、HVECU300による制御および電圧センサ210,230の検出結果に基づいて、コンバータ220およびインバータ240,250を制御する。この制御については後述する。
【0032】
補機バッテリ350は、図示しない補機類を動作させるための電力を供給する。補機バッテリ350から供給される電力の電圧は、メインバッテリ150から供給される電力の電圧(たとえば約200V)と比べて相対的に低く、たとえば約14Vである。
【0033】
より詳細には、補機バッテリ350は、HVECU300を動作させるための電力を、電力線IGCTを経由してHVECU300に供給する。また、補機バッテリ350は、エアバッグECU440を動作させるための電力を、電力線IG2を経由してエアバッグECU440に供給する。なお、車両1の電気系統は、メインバッテリ150の高電圧を、補機バッテリ350を充電するための低電圧に降圧するDC/DCコンバータ(図示せず)をさらに備えてもよい。
【0034】
衝突センサ410は、たとえばGセンサ(加速度センサ)を含み、車両1が衝突したか否かを検出し、その検出結果を示す信号をエアバッグECU440に出力する。
【0035】
エアバッグECU440は、衝突センサ410からの出力信号に応答して、エアバッグ点火装置420に点火指令IGを出力する。これにより、図示しないエアバッグが点火され、エアバッグが作動する。また、エアバッグECU440は、衝突センサ410からの出力信号に応じて、HVECU300に衝突信号COLを出力する。衝突信号COLの詳細については後述する。なお、エアバッグECU440は、内部電源442(後述)を含む。
【0036】
リレー430は、補機バッテリ350とエアバッグECU440とを結ぶ電力線IG2上に設けられる。電力線IG2の地絡時にはリレー430が開放されることにより、補機バッテリ350とエアバッグECU440とが電気的に遮断される。
【0037】
HVECU300は、CPU(Central Processing Unit)を含んで構成される制御部310と、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)またはSRAM(Static Random Access Memory)等の不揮発性メモリを含んで構成される記憶部320と、バッファ(図示せず)とを有する。記憶部320は、制御部310で動作させるマップおよびプログラムを記憶する。制御部310は、各センサから送られる信号、ならびに記憶部320に記憶されたマップおよびプログラムに基づいて、車両1が所望の状態となるように機器類を制御する。
【0038】
また、補機バッテリ350からHVECU300への電力供給が瞬間的に遮断された場合には、HVECU300がリセットされる。記憶部320は、HVECU300のリセット履歴を管理するためにも用いられる。HVECU300のリセット履歴は、たとえば以下のように管理される。
【0039】
HVECU300は、起動状態では記憶部320内に設けられた不揮発性の特定の領域に「起動」を書き込む。また、HVECU300は、正常終了時には、一連の終了処理において上記領域に「終了」と書き込む。そして、HVECU300は、次回起動時には上記領域に書き込まれた内容を読み込む。HVECU300は、上記領域から「終了」が読み込まれた場合には、前回に正常な終了処理が行なわれた(すなわち、HVECU300のリセットは行なわれなかった)と判定し、上記領域から「起動」が読み込まれた場合には、正常な終了処理が行なわれずにHVECU300がリセットされたと判定する。
【0040】
<残留電荷の放電制御>
上述のように、メインバッテリ150の電圧は高電圧(たとえば約200V)である。この高電圧は、コンバータ220によってさらに高い電圧(たとえば約600V)に昇圧されてインバータ240,250に供給される。そのため、コンバータ220の前段および後段にそれぞれ設けられたコンデンサC1,C2は、高電圧かつ大容量である。したがって、特に車両1の衝突事故が発生した場合には、安全上の観点から、コンデンサC1,C2に蓄えられた残留電荷を速やかに放電することが求められる。
【0041】
HVECU300は、衝突センサ410からの衝突信号COLによって車両1の衝突を検出すると、MGECU260に対して放電指令DCHを出力する。MGECU260は、放電指令DCHに応答して、コンデンサC1とコンデンサC2との間で昇圧動作および降圧動作を繰り返すようにコンバータ220を制御する。これにより、リアクトルL1によるエネルギー損失(銅損など)およびスイッチング素子Q1,Q2によるエネルギー損失(スイッチング損失)によって、昇圧動作時にはコンデンサC1の残留電荷が消費され、降圧動作時にはコンデンサC2の残留電荷が消費される。以下では、この制御を「放電制御」とも称する。なお、放電制御は、コンデンサC2の残留電荷を消費するためのインバータ240,250の制御をさらに含んでもよい。
【0042】
このような放電制御を実行するためには、HVECU300において、車両1が衝突したとの判定を適切に行なうことが必要となる。本実施の形態に係る車両1は、衝突信号COLを用いたHVECU300における衝突判定に特徴を有する。以下では、本実施の形態における衝突判定の特徴を明確にするために、まず、比較例における衝突判定を説明する。なお、比較例に係る車両の構成は、基本的には図1に示した車両1の構成と同等であるため、説明は繰り返さない。
【0043】
図3は、比較例における衝突判定を説明するためのタイムチャートである。図3において、横軸は経過時間を示す。縦軸は、上から順にエアバッグECU440の状態(エアバッグECU440の起動/停止、および、衝突信号COLの状態)、HVECU300の状態(HVECU300の起動/停止、および、HVECU300が衝突を判定可能か判定不能かの状態)、ならびに衝突の有無のHVECU300による判定結果を示す。
【0044】
衝突信号COLは、Hレベル(ハイレベル)およびLレベル(ローレベル)を含むパルス信号である。このパルス信号の波形は、衝突時と通常時(衝突の非発生時)とで異なり、車両1の衝突時には特定のパターンがエアバッグECU440からHVECU300へと出力される。したがって、HVECU300は、衝突信号COLの特定のパターンを読み取ることによって車両1が衝突したと判定することができる。
【0045】
時刻t11までの期間、HVECU300およびエアバッグECU440は、いずれも補機バッテリ350からの供給電力を用いて動作している。エアバッグECU440は、車両1の衝突が発生していないことを示すパターンの衝突信号COLをHVECU300に出力している。これにより、HVECU300は、車両1の衝突は発生していないとの判定を行なっている。
【0046】
時刻t11において車両1の衝突が発生すると、補機バッテリ350の電力をエアバッグECU440に供給するための電力線IG2に地絡故障が発生する可能性がある。この場合、電力線IG2上に設けられたリレー430が開放されることによって、補機バッテリ350からエアバッグECU440への電力供給が遮断される。
【0047】
ただし、エアバッグECU440には内部電源442が設けられているので、エアバッグECU440の電源は直ちには喪失しない。内部電源442からの供給電力を用いることで、エアバッグECU440からのパルス波形としての衝突信号COLの出力は継続される。しかし、内部電源442に蓄えられた電力は、短時間(たとえば数百ms程度)で消費される。そのため、時刻t14において、エアバッグECU440は、完全に電源を喪失する。そうすると、衝突信号COLは、HレベルおよびLレベルのうちのいずれか一方(図3に示す例ではHレベル)に固着する。
【0048】
一方、HVECU300においても、車両1の衝突により、たとえば補機バッテリ350からHVECU300への電力伝達経路である電力線IGCT上に設けられたワイヤハーネス(図示せず)が瞬間的に地絡する可能性がある(時刻t11)。これにより、補機バッテリ350からHVECU300への電力供給の瞬間的な遮断または瞬間的な電圧低下(いわゆる瞬断)が発生することによって、HVECU300が再起動(リセット)され得る。
【0049】
時刻t12においてリセットから復帰すると、HVECU300は、通常の電源投入時と同様に、車両1の各機器が正常動作しているか否かを確認するための処理(プライマリチェック)を実行する。そのため、HVECU300は、リセットから復帰してもプライマリチェックが終了するまでは衝突判定を行なうことができない。図3に示す例では、時刻t13においてプライマリチェックが終了し、HVECU300は、衝突判定が可能な状態となる。
【0050】
時刻t13から時刻t14までの期間Tは、エアバッグECU440から内部電源442の電力を用いて衝突信号COLが正常に出力されており、かつ、HVECU300が衝突判定を可能な状態になった後の期間である。しかしながら、一般に、車両1が衝突したことを示す衝突信号COLのパターンは複数のパルスからなり、この複数パルスの出力が完了するには、ある程度の時間を要する。したがって、期間Tが十分に長くないと、たとえHVECU300が衝突判定を可能な状態にあったとしても、パルス数の不足により、衝突判定を適切に行なうことはできない。
【0051】
時刻t14以降は、HVECU300は衝突判定可能な状態にあるものの、上述のように衝突信号COLがHレベルに固着しているため、HVECU300は衝突判定を行なうことができない。
【0052】
このように、車両1が衝突することによって、エアバッグECU440から出力される衝突信号COLの固着、および補機バッテリ350からHVECU300への電力供給の瞬断に伴うHVECU300のリセットが発生した場合には、期間ΔTが十分に長くないと、HVECU300は、車両1の衝突判定を適切に行なうことができなくなる可能性がある。その結果として、コンデンサC1,C2に蓄えられた残留電荷を放電するための放電制御が実行されなくなってしまうことが懸念される。
【0053】
そこで、本発明者は以下の点に着目した。すなわち、衝突信号COLの固着およびHVECU300のリセットのいずれか一方であれば、車両1が衝突していない状況であっても発生する可能性がある。しかしながら、衝突信号COLの固着およびHVECU300のリセットの両方が発生した場合には、それは車両1の衝突によるものである可能性が高い。
【0054】
よって、本実施の形態においては、補機バッテリ350からHVECU300への電力供給が瞬間的に遮断された履歴(すなわちリセット履歴)があり、かつ、衝突信号COLがHレベルに固着している場合には、車両1の衝突が発生したものと判定し、コンバータ220によるコンデンサC1,C2の放電制御を実行する構成を採用する。
【0055】
図4は、本実施の形態における衝突判定を説明するためのタイムチャートである。このタイムチャートは、縦軸にリセット履歴の有無がさらに含まれる点において、比較例におけるタイムチャート(図3参照)と異なる。HVECU300の初期状態(開始時刻0における状態)でのリセット履歴は「なし」である。なお、時刻t21までの制御は、比較例における時刻t11までの制御と同等である。
【0056】
時刻t22においてリセットから復帰すると、HVECU300は、プライマリチェックを開始するとともに、リセット履歴を「なし」から「あり」に切り替える。
【0057】
時刻t23においてプライマリチェックが完了するので、HVECU300は、衝突判定が可能な状態となる。しかし、図4に示す例では、HVECU300が衝突信号COLのパターンに基づいて車両1の衝突が発生したと判定するのに先立って、時刻t24においてエアバッグECU440の電源が喪失する。その結果、衝突信号COLがHレベルに固着する。
【0058】
本実施の形態においては、HVECU300は、リセット履歴が「あり」であり、かつ、衝突信号COLがHレベルに固着した状態で所定の期間Twaitが経過すると、衝突が発生したと判定する(時刻t25参照)。そして、HVECU300からMGECU260へと放電指令DCHが出力される結果、コンバータ220による放電制御が実行される。これにより、コンデンサC1,C2に蓄えられた残留電荷が放電される。
【0059】
図5は、本実施の形態における車両衝突時の制御を示すフローチャートである。このフローチャートの処理は、たとえば所定の制御周期毎にメインルーチンから呼び出されて繰り返し実行される。このフローチャートの各ステップ(以下Sと略す)は、基本的にはHVECU300によるソフトウェア処理によって実現されるが、HVECU300内に作製された電子回路を用いたハードウェア処理によって実現されてもよい。
【0060】
S10において、HVECU300は、リセット履歴があるか否かを判定する。リセット履歴が「なし」の場合、より具体的には、記憶部320内に設けられた特定の領域(上述)に「終了」が書き込まれていた場合(S10においてNO)、HVECU300は、処理をS20に進め、通常の衝突時の処理を実行する。すなわち、HVECU300は、衝突信号COLにおいて衝突を示す特定のパターンを読み取った場合には(S20においてYES)、車両1の衝突が発生したと判定する(S60)。
【0061】
上記特定のパターンを読み取っていない場合(S20においてNO)には、HVECU300は、車両1の衝突は発生していないと判定する(S30)。この場合、HVECU300は、コンデンサC1,C2の放電制御を実行することなく(S40)、処理をメインルーチンへと戻す。
【0062】
S10においてリセット履歴が「あり」の場合、より具体的には、記憶部320内の上記領域に「起動」が書き込まれていた場合(S10においてYES)、HVECU300は、処理をS50に進め、衝突信号COLがHレベルの状態において所定の期間Twait(たとえば1.2秒よりも長い期間)が経過したか否かを判定する。
【0063】
ここで衝突信号COLがHレベルの状態において期間Twaitが経過するまで待機するのは以下の理由による。すなわち、エアバッグの起動直後には、たとえば1秒間程度、衝突信号COLのパルスが不定となり得る。また、非衝突時(図4における時刻t21までの期間)の衝突信号COLのパルスは、たとえば0.2秒程度の周期を有する。したがって、上記の和(すなわち1秒+0.2秒=1.2秒)よりも長い期間Twaitが経過するまで待機することによって、衝突信号COLが実際にはHレベルに固着していないにもかかわらずHレベルに固着しているとの誤判定を防止することができる。
【0064】
リセット履歴が「あり」であっても衝突信号COLがHレベルに固着していない場合(S50においてNO)には、HVECU300は、処理をS20に進め、通常の衝突時と同様に衝突信号COLから衝突を示す特定のパターンが読み取られるか否かを判定する。
【0065】
これに対し、リセット履歴が「あり」であり(S10においてYES)、かつ、衝突信号COLがHレベルに固着している場合(S50においてYES)に、HVECU300は、車両1の衝突が発生したと判定する(S60)。そして、HVECU300は、以下のS110〜S130において、コンバータ220によるコンデンサC1,C2の放電処理を実行する。
【0066】
S110において、HVECU300は、SMR160を開放することによって、PCU200をメインバッテリ150から電気的に遮断する。メインバッテリ150からの電力がPCU200に供給され続けると、コンデンサC1,C2の電荷を放電できないためである。
【0067】
S120において、HVECU300は、PCU200に含まれるコンバータ220およびインバータ240,250(以下では総括して「電力変換機」とも称する)の「低圧保護機能」を無効とするように設定する。低圧保護機能とは、これらの電力変換機への入力電圧が低下すると、電力変換機の動作を停止するように、電力変換機に一般的に設けられる保護機能である。
【0068】
コンデンサC1,C2の残留電荷を放電する際には、放電動作が進むに従って残留電荷が消費されるために、コンデンサC1,C2の電圧(すなわち電力変換機への入力電圧)が徐々に低下する。そのため、低圧保護機能が有効であると、入力電圧が所定の基準電圧以下となった時点で低圧保護機能が動作することによって電力変換動作が行なわれなくなるので、それ以降はコンデンサC1,C2の残留電荷が消費されなくなる。したがって、放電制御においては、コンデンサC1,C2の残留電荷を所望のレベルまで消費できるように低圧保護機能が無効に設定される。
【0069】
S130において、HVECU300は、MGECU260に放電指令DCHを出力する。MGECU260は、放電指令DCHに応答して、電圧センサ210により検出されるコンデンサC1の電圧VLが所定の目標放電電圧よりも小さくなるまで残留電荷の放電制御を実行する。電圧VLが目標放電電圧よりも低くなると、放電制御は停止される。放電制御については図2にて詳細に説明したため、ここでは説明は繰り返さない。なお、放電制御が完了したか否かの判定は、コンデンサC2の電圧VHによって行なってもよい。その後、処理はメインルーチンへと戻される。
【0070】
以上のように、本実施の形態によれば、HVECU300のリセット履歴が「あり」であり、かつ、衝突信号COLがHレベルに固着している場合には、放電制御が実行される。これにより、HVECU300が衝突信号COLの特定のパターンに基づいて車両1が衝突したことを判定できない場合であっても、放電制御を実行することが可能になる。よって、より確実にコンデンサC1,C2に蓄えられた残留電荷を放電することができる。
【0071】
なお、本実施の形態においては、メインバッテリ150が本発明に係る「第1の蓄電装置」に相当し、補機バッテリ350が本発明に係る「第2の蓄電装置」に相当する。PCU200が本発明に係る「電力変換装置」に相当する。エアバッグECU440が本発明に係る「検出装置」に相当し、衝突信号COLが本発明に係る「検出信号」に相当する。HVECU300が本発明に係る「制御装置」に相当する。
【0072】
なお、上述の実施の形態では、コンデンサを含む電力変換装置を搭載した電動車両において、衝突判定に基づいて放電制御を実行する例について説明した。しかし、本発明に係る衝突の判定手法は、電力変換装置を搭載しない車両(いわゆるコンベ車)の衝突時にエンジンのフューエルカットを実行するために用いることもできる。
【0073】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0074】
1 車両、10,20 モータジェネレータ、30 動力分割機構、40 駆動軸、50 減速機、60 車輪、100 エンジン、150 メインバッテリ、200 PCU、210,230 電圧センサ、220 コンバータ、240,250 インバータ、300 HVECU、310 制御部、320 記憶部、350 補機バッテリ、400 エアバッグシステム、410 衝突センサ、420 エアバッグ点火装置、430 リレー、440 エアバッグECU、442 内部電源、C1,C2 コンデンサ、D1,D2 逆並列ダイオード、L1 リアクトル、Q1,Q2 スイッチング素子、IG2,IGCT,NL,PL1,PL2 電力線。
図1
図2
図3
図4
図5