(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
[実施の形態1の構成]
図1は、本発明の実施の形態1の構成を説明するための図である。
図1に示す構成は車体10を備えている。
図1は、車体10を側面視で模式的に示したものである。ここでは、
図1における左側が車両の前方であり、右側が車両の後方である。また、
図1中に符号vと共に示す矢印は、車体10が、時速vで前方に移動していることを表している。
【0011】
車体10の前面には、レーザセンサ12が装着されている。レーザセンサ12は、車体前方の路面を走査範囲とするセンサである。本実施形態において、レーザセンサ12の検出信号は、路面上に存在する凹凸の位置及び大きさを検知するために用いられる。尚、レーザセンサ12は、路面上の凹凸検知に用い得るものであれば、例えば画像センサのような他のセンサに置き換えることが可能である。
【0012】
車体10の前方には、サスペンション装置14を介して前輪16が装着されている。サスペンション装置14及び前輪16は、車体10の左右に夫々連結されている。それらの構造は実質的に同じであるため、ここでは、左右前輪のサスペンション装置を総称して「サスペンション装置14」と、また、左右前輪を総称して「前輪16」と称することとする。
【0013】
前輪16のサスペンション装置14は、ばね要素18とショックアブソーバ20を備えている。
図1に示す符号Ksf及びCsfは、ばね要素18のばね定数、及びショックアブソーバ20の減衰係数を夫々表している。本実施形態において、ショックアブソーバ20は、減衰係数Csfをハード値とソフト値の二段階に切り替えることができる。但し、減衰係数の切り換え段数は二に限るものではなく、ショックアブソーバ20は、より多段の切り替えが可能なものに置き換えることもできる。
【0014】
サスペンション装置14は、サスペンションアームを介して前輪16に連結されるばね下部材22を有している。ばね下部材22には、ばね下加速度センサ24が装着されている。ばね下加速度センサ24は、前輪16の夫々について、車輪を含むばね下部分の上下加速度を検知することができる。以下、この上下加速度は、上向きが正、下向きが負の符号を有するものとする。
【0015】
サスペンション装置14は、また、車体10側に連結されるばね上部材26を備えている。ばね上部材26には、ばね上加速度センサ28が装着されている。ばね上加速度センサ28は、前輪16の各位置において車体10に生ずる上下加速度を検知することができる。以下、この上下加速度も、上向きが正、下向きが負の符号を有するものとする。
【0016】
サスペンション装置14には、更に、ストロークセンサ30が装着されている。ストロークセンサ30は、ショックアブソーバ20のストローク量、つまり、ばね下部材22とばね上部材26の相対変移量を検知することができる。
【0017】
図1に示すように、車体10の後方には、サスペンション装置32を介して後輪34が装着されている。前輪側の場合と同様に、「サスペンション装置32」及び「後輪34」は、夫々、車体後方の左右に連結されているサスペンション装置及び左右後輪の総称であるものとする。
【0018】
後輪34のサスペンション装置32は、前輪16のサスペンション装置14と同様に、ばね要素36及びショックアブソーバ38を備えている。
図1に示す符号Ksr及びCsrは、それらのばね定数及び減衰係数を夫々表している。また、
図1に示すように、後輪34のサスペンション装置32にも、ばね下加速度センサ40、ばね上加速度センサ42、及びストロークセンサ44が装着されている。これらの構成及び機能は、実質的に前輪側のものと同様であるため、ここでは、それらについての説明は省略する。
【0019】
図1に示す構成は、ECU(Electronic Control Unit)50を備えている。各輪に配置されている上記各種センサ、並びに車体10に配置されているレーザセンサ12は、何れもECU50と電気的に接続されている。
【0020】
ECU50は、それらのセンサから供給される信号に基づいて、公知の手法により、前輪16のばね下変移量Xwf及びばね上変移量Xbfを演算することができる。以下、それらの演算手法を例示する。
【0021】
前輪16におけるばね下変移量Xwfは、各輪の位置におけるばね下加速度の積分値に対応する。従って、ECU50は、ばね下加速度センサ24からの信号を積分処理することにより、ばね下変移量Xwfを演算することができる。
【0022】
ばね下変移量Xwfは、また、レーザセンサ12の検出値を用いても演算することができる。本実施形態では、レーザセンサ12により、車体前方の路面の凹凸の位置と大きさを検知することができる。路面凹凸の位置がわかれば、車両の時速vに基づいて、左前輪がその凹凸に到達するタイミング、乗り上げるタイミング、通過するタイミング等を演算することができる。そして、その結果を凹凸の大きさと組み合わせて解析すれば、リアルタイムでばね下変移量Xwfを演算することが可能である。
【0023】
前輪におけるばね上変移量Xbfは、各輪の位置におけるばね上加速度の積分値に対応する。従って、ECU50は、ばね上加速度センサ28からの信号を積分処理することにより、ばね上変移量Xbfを演算することができる。ばね上変移量Xbfは、また、ばね下変移量Xwfと、ショックアブソーバ20のストローク量との和に対応する。従って、ECU50は、既述の手法で演算したばね下変移量Xwfとストロークセンサ30からの信号とに基づいてばね上変移量Xbfを演算することもできる。
【0024】
ECU50は、後輪の各輪についても、各種センサの出力値に基づいてばね下変移量Xwrとばね上変移量Xbrを演算することができる。それらの演算の手法は、実質的に前輪側の演算と同様であるため、ここでは、その詳細な説明は省略する。
【0025】
[実施の形態1が解決すべき課題]
図2は、本実施形態に係る車両の走行中に、前輪16が路面上の突起52に乗り上げた状態を模式的に示した図である。前輪16が突起52に乗り上げると、前輪16の位置が上昇し、その結果、
図2中に破線で示すように、車体10の前方位置が上方に持ち上げられる。
【0026】
図3は、
図2に示す乗り上げが生じた後に車体10に生ずる挙動の変化を、後輪34の減衰係数との関係で示したタイミングチャートである。ここで、最上段の「前輪入力」の欄は、前輪16のばね下変移量Xwfの波形を示している。また、二段目の「後輪減衰係数要求値」の欄は、後輪34の減衰係数Csrに対する要求値の波形を示している。この欄において、破線54は減衰係数Csrがハード値に固定されている状態を、一点鎖線56は減衰係数Csrがソフト値に固定されている状態を、また実線58は、比較例の制御による減衰係数Csrの変化を、夫々示している。
【0027】
図3において、三段目の「後輪ばね上加速度」の欄は、後輪34に配置されたばね上加速度センサ42(
図1参照)の信号波形を示す。また、四段目の「ピッチ加速度」の欄は、車体10に生ずるピッチ加速度の波形を示す(前傾側への加速が正、後傾側への加速が負)。これらの欄において、破線(ハード)、一点鎖線(ソフト)、及び実線(比較例)は、二段目の欄に示す減衰係数の波形の線種に夫々対応している。
【0028】
図3に示す例では、時刻t1頃から前輪入力がピーク値に向かって上昇し、時刻t3頃に前輪入力がほぼゼロに戻っている。このような前輪入力は、時刻t1頃に前輪16が突起52に差し掛かり、時刻t3頃に前輪16が突起52を通過することで生ずる。
【0029】
前輪16が突起52に乗り上げると、車体10の前方が持ち上げられ、車体10の荷重が後輪側に移行する。そして、車体10の加重が後方に移行すれば、後輪34のサスペンション装置32にかかる荷重が増え、車体10の後方に沈み込みの挙動が現れる。
【0030】
サスペンション装置32には、ばね要素36が組み込まれているため、車体10の後方に生じた沈み込みはやがて収束する。そして、ばね要素36が伸び行程に移行するのに伴い、車体10の後方に今度は浮き上がりの挙動が生ずる。
図3の三段目において、時刻t1以後、後輪34のばね上加速度が振動を示しているのは、上記の沈み込みを起点とするばね上の振動の結果である。
【0031】
また、サスペンション装置32には、ばね要素36と共にショックアブソーバ38が組み込まれている。このため、後輪34のばね上振動は、徐々に減衰される。
図3に示すばね上加速度の振幅が、徐々に減衰されて時刻t3以後収束に向かっているのは、そのショックアブソーバ38による減衰効果によるものである。
【0032】
ところで、車体10の振動は、車両の搭乗者に強い突き上げ感を与えることなく、短時間で収束させることが望ましい。後輪34の減衰係数が常にハード値に設定されていると(破線54参照)、
図3に示すように後輪ばね上加速度の振幅は早期に収束するものの、後輪34からの突き上げが搭乗者に伝わり易い状態となる。
【0033】
他方、後輪34の減衰係数が常にソフト値に設定されていると(一点鎖線56)、後輪34からの突き上げ感は搭乗者に伝わり難くなるものの、
図3に示すように、後輪ばね上加速度の振幅が長期に渡って収束しないという事態が生ずる。
【0034】
これらの不都合を回避する手法としては、例えば、
図3中に実線58で示す比較例のように、時刻t1から時刻t3の期間だけ、後輪34の減衰係数をソフト値とすることが考えられる。このような手法によれば、突起52に起因して前輪16が強制振動を強いられる期間中、つまり、
図3において後輪34のばね上加速度が大きな振幅を示す期間中、後輪の減衰係数がソフト値となり、搭乗者に突き上げ感が伝わり難い状況を作り出すことができる。また、この制御によれば、前輪16が突起52を通過した後は、後輪34の減衰係数をハード値として、後輪34の振動を速やかに収束させることができる。
【0035】
しかしながら、上記比較例の制御によれば、後輪34のばね上に最も大きな沈みこみが生じ易い時刻t1の直後に、後輪の減衰係数がソフト値とされる。このため、
図3の最終段に示すように、比較例の場合のピッチ加速度は、時刻t1から時刻t3に掛けて、減衰係数が常にソフト値とされる場合とほぼ同じ振幅を示す。つまり、比較例の制御によれば、車体10には、減衰係数が常にソフト値に維持される場合と同様の大きなピッチ挙動が生ずることとになる。
【0036】
[実施の形態1の特徴]
図4は、本実施形態の制御に伴う車体10の挙動を説明するためのタイミングチャートである。本実施形態では、前輪16が突起52に乗り上げた際に、後輪34の減衰係数要求値が、
図4の二段目に実線60で示すように制御される。具体的には、その要求値は、時刻t1において前輪16の乗り上げが検知された後、後輪ばね上加速度が負の領域で変化している間はハード値に維持される。
【0037】
その結果、
図4の最下段に示すように、本実施形態によるピッチ加速度は、時刻t1から時刻t2にかけて、減衰係数が常時ハードとされる場合と同様の値となる。つまり、本実施形態によれば、前輪16が突起52に乗り上げたことで車体後部が最も大きく沈み込み易い期間において、車体10のピッチ挙動を有効に抑えることができる。
【0038】
また、ばね上加速度が負の値を示す過程では、路面からの突き上げが車両の搭乗者には伝わり難い。従って、時刻t1から時刻t2の間は、後輪34の減衰係数Csrがハードであっても、車両の乗り心地が大きく損なわれることはない。このため、本実施形態によれば、車両の乗り心地を損なうことなく、前輪16が突起52に乗り上げたことによる車体10のピッチ挙動を有効に抑制することができる。
【0039】
図4中の実線60が示すように、本実施形態では、後輪ばね上加速度が正の値に反転したと検知されると(時刻t2)、後輪34の減衰係数Csrがソフト値に変更される。つまり、本実施形態では、前輪16の突起乗り上げに起因して車体10の後部が振動している状況において、後輪34のばね上加速度が正の値である間は後輪34の減衰係数Csrがソフト値とされる。
【0040】
車体10の後部に正のばね上加速度が発生している間は、後輪34からの突き上げが車両の搭乗者に伝わり易い。このため、そのような状況下で減衰係数Csrがハード値に維持されると、搭乗者が突き上げを感じ易くなる。本実施形態では、そのような状況において後輪34の減衰係数Csrがソフト値とされるため、搭乗者が感ずる突き上げ感を有効に抑制することができる。このため、本実施形態によれば、時刻t2から時刻t3に渡る期間中も、車両の搭乗者に対して良好な乗り心地を提供することができる。
【0041】
更に、本実施形態では、前輪16が突起52を通過する時刻t3の後は、後輪34の減衰係数Csrを通常制御に委ねることとしている。通常制御によれば、後輪34のばね上に大きな振動が生じていれば減衰係数Csrがハード値とされる。このため、時刻t3の時点で未だ振動が収束していなければ、減衰係数Csrがハード値とされ、その振動の速やかな収束が図られることになる。
【0042】
[ECUにおける処理]
図5は、上記の機能を実現するために本実施形態においてECU50が実行するルーチンのフローチャートである。
図5に示すルーチンは、本実施形態を搭載する車両の始動後、所定のサンプリング時間毎に繰り返し起動されるものとする。
【0043】
図5に示すルーチンでは、先ず、前輪16及び後輪34のばね上変移量Xbf、Xbr及びばね下変移量Xwf、Xfrの基礎となる各種センサ値がECU50に入力される(ステップ100)。ここでは、具体的には、レーザセンサ12、ばね下加速度センサ24,40、ばね上加速度センサ28,42及びストロークセンサ30,44の出力信号がECU50に取り込まれる。
【0044】
次に、路面の平均的高さを表す路面平面量Xwが算出される(ステップ102)。ここでは、先ず、今回のサンプリングタイミングで得られたセンサ値に基づいて、前輪のばね下変移量Xwf及び後輪のばね下変移量Xwrが算出される。次いで、それらの平均値(Xwf+Xwr)/2が算出される。この平均値は、今回のサンプリングタイムにおける車両中心のばね下高さに相当する。そして、前回のルーチンで算出された路面平面量Xw(n-1)に、予め定められているなましの割合で今回の平均値(Xwf+Xwr)/2を反映させることにより、路面平面量Xwの更新が行われる。このようにして算出された路面平面量Xwは、車両中心のばね下高さのなまし値であり、車両が走行中の路面の平均的高さとして取り扱うことができる。
【0045】
次に、ばね下変移量Xwf、Xwr及び路面平面量Xwに基づいて、車両の前輪16が路面凹凸の影響を受けて路面平面量Xwから大きく変移しているかが判別される(ステップ104)。具体的には、ここでは、以下の2つの条件が何れも成立しているかが判別される。
|Xwf−Xw|>δ1 ・・・(条件1)
|Xwr−Xw|<δ1 ・・・(条件2)
δ1は、本実施形態において突起(又は窪み)とみなすべき凹凸を判定するための閾値であり、この種の凹凸上を車輪が通過する際にばね下変移量Xwf、Xwrと路面平面量Xwとの間に発生する最小差異に相当している。従って、上記条件1が成立する場合は、前輪16が凹凸上を通過中であると判断することができる。また、上記条件2が成立する場合は、後輪34は凹凸のない平棚路を走行中であると判断することができる。そして、これらの条件1及び2が何れも成立している場合は、後輪34は平坦な路面上にあり、前輪だけが突起に乗り上げている(又は窪みに入り込んでいる)と判断することができる。つまり、本ステップ104の条件は、
図4に示す例によれば、時刻t1から時刻t3の間に限り成立と判定され、その他の期間中は不成立と判定されることになる。
【0046】
上記の条件が不成立と判定された場合、つまり、前輪16のみが突起52に乗り上げている状態ではない、との判断がなされた場合は、以後、後輪34の減衰係数Csrを対象として通常制御が実行される(ステップ106)。ここでは、具体的には、所謂スカイフック制御により、例えば、ばね上(車体10)が下方に移動する際には、下からの支えを強めるべくショックアブソーバ38の減衰係数Csrがハード値とされ、また、ばね上が上方に移動する際には、上からの抑えを強めるべく減衰係数Csrがハード値とされる。他方、ばね上に顕著な上下動がなければ、減衰係数Csrがソフト値とされる。このような通常制御によれば、車両姿勢を安定に維持しながら、良好な乗り心地を確保することができる。
【0047】
これに対して、上記ステップ104の条件が成立すると判別された場合は、次に、後輪34側のばね上加速度Xbr’’がゼロ以下であるかが判別される(ステップ108)。「Xbr’’」はXbrの2回微分値=(d2/dx2)Xbrを意味しており、本実施形態において、その値Xbr’’は、ばね上加速度センサ42によって検知することができる。後輪34のばね上、つまり車体10の後方は、前輪16が凹凸に入り込んだ後、加重移動の影響により振動を始める。この際、ばね上加速度Xbr’’は、正の領域での増減と負の領域での増減を繰り返す。本ステップ106の条件は、その期間中、ばね上加速度Xbr’’がゼロ又は負の値をとる場合に成立する。
【0048】
ステップ108において上記の条件が成立すると判別された場合は、以後、ステップ106において通常制御が実行される。ステップ108を経由してステップ106が実行される際には、車体10の後方に大きな動きが生じている。このため、通常制御が行われることにより、後輪34の減衰係数Csrはハード値に設定される。その結果、車体後方の沈み込みが抑えられ、車体10のピッチ量が抑制される。また、ばね上加速度Xbr’’がゼロ又は負の場合は、突き上げ感が搭乗者に伝わり難い。このため、本ステップ108の処理により減衰係数Csrがハード化されても乗り心地が損なわれることはない。
【0049】
一方、上記ステップ108において、後輪34側のばね上加速度Xbr’’がゼロ以下でない、つまり、後輪34のばね上に正の加速度Xbr’’が生じていると判別された場合は、他の要求に係らず、後輪34の減衰係数Csrをソフト値とする制御が行われる(ステップ110)。後輪34のばね上加速度Xbr’’が正の値を示す場合、つまり、後輪34のばね上に上向きの加速度Xbr’’が生じている場合は、後輪34からの突き上げ感が搭乗者に伝わり易い。上記の処理によれば、このような状況下で後輪34の減衰係数Csrをソフトとすることにより、突き上げ感が搭乗者に伝わり難い状況を作り出すことができる。このため、本実施形態の制御によれば、車両の乗り心地を損なうことなく、前輪16が凹凸を通過する際のピッチ挙動を有効に抑制することができる。
【0050】
図4に示す例では、時刻t1から時刻t2の期間は、ステップ106において通常制御が実行される。この際、後輪34のばね上には大きな動きが生じていることから、後輪34の減衰係数Csrがハード値となる。その結果、車体10のピッチが有効に抑制される。時刻t2から時刻t3の期間は、ステップ108において後輪34の減衰係数Csrがソフト値とされる。その結果、車両において良好な乗り心地が確保される。そして、時刻t3以降は、再びステップ106において通常制御が実行される。この際、ばね上に大きな動きが生じていれば減衰係数Csrはハード値とされ、ばね上の状態が安定していれば減衰係数Csrはソフト値とされる。その結果、良好な乗り心地と安定した車両挙動とが共に実現される。このように、本実施形態によれば、前輪16が凹凸を通過する際に、車両の乗り心地を損なうことなく、車体10のピッチ挙動を有効に抑えることができる。
【0051】
[実施の形態1の変形例]
ところで、上述した実施の形態1では、主として、前輪16が路面の突起52を通過する場合を例にとって説明を進めているが、
図5に示すルーチンにより後輪34の減衰係数Csrが変更されるのはその場合に限定されるものではない。即ち、後輪34の減衰係数Csrは、前輪16が路面の凹部を通過する際にも、
図5に示すルーチンにより適宜変更される。
【0052】
また、上述した実施の形態1では、前輪16が凹凸を通過する際に後輪34の減衰係数Csrを切り替える制御を例示しているが、本発明はこれに限定されるものではない。即ち、後輪34が路面の凹凸を通過する際に、前輪16の減衰係数Csfを、実施の形態1の制御の手法で切り替えることとしてもよい。
【0053】
更に、上述した実施の形態1では、前輪16が路面の凹凸を通過する際に後輪34の減衰係数Csrを適宜制御することでピッチ挙動を抑えることとしているが、本発明によって抑制し得る挙動はこれに限定されるものではない。即ち、左右の一方の車輪が路面の凹凸を通過する際に、左右の他方の車輪の減衰係数を同様に制御することで、車体10のロール挙動を抑えることとしてもよい。
【0054】
また、上述した実施の形態1では、ステップ108において、後輪34のばね上加速度と比較する閾値をゼロとしているが、本発明はこれに限定されるものではない。即ち、この閾値は、車両の挙動変化を抑える目的と、良好な乗り心地を実現する目的の重要性に応じて、ゼロでない値に設定してもよい。
【0055】
尚、上述した実施の形態1においては、ばね下加速度センサ24,40又はレーザセンサ12が本発明における「路面入力センサ」に相当する。また、ばね上加速度センサ28,42又はばね下加速度センサ24,40及びストロークセンサ30,44が本発明における「ばね上挙動センサ」に相当する。更に、ECU50が、上記ステップ104の処理を実行することにより本発明における「凹凸判断手段」が、上記ステップ108の処理を実行することにより本発明における「突き上げ判断手段」が、夫々実現されている。加えて、ECU50が、上記ステップ106において減衰係数Csrをハード値とすることで本発明における「第1制御手段」が、また、上記ステップ108の処理を実行することにより本発明における「第2制御手段」が、夫々実現されている。