(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ポリオレフィン系のヒートシール樹脂(B)が、プロピレンランダム共重合体および/またはプロピレンブロック共重合体からなる請求項1あるいは請求項2記載の延伸ポリプロピレン積層フィルム。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、ヒートシール性延伸ポリプロピレン積層フィルムに関する。更に詳しくは、包装用途として使用するのに十分なヒートシール強度を有し、透明性が良好で、高温での寸法安定性や高い剛性が求められる様々な分野で好適に用いることができ、耐熱性、機械特性に優れたヒートシール性延伸ポリプロピレン積層フィルムに関する。本発明の延伸ポリプロピレン積層フィルムの特徴は基材層(A)に用いるポリプロピレン樹脂の分子量分布状態にある。
本発明は、ポリプロピレン樹脂を主体として構成された延伸ポリプロピレン積層フィルムであって、150℃でのMD方向およびTD方向の熱収縮率が10%以下であり、衝撃強度が0.6J以上であり、ヘイズが6%以下であることが必要である。
【0015】
ここで、MD方向とは、フィルムの流れ方向であり、TD方向とは、フィルムの流れ方向に垂直な方向である。
【0016】
(フィルム特性)
本発明の延伸フィルムのMD方向およびTD方向の150℃熱収縮率の下限は好ましくは0.5%であり、より好ましくは1%であり、さらに好ましくは1.5%であり、特に好ましくは2%であり、最も好ましくは2.5%である。上記範囲であるとコスト面などで現実的な製造が容易となったり、厚みムラが小さくなったりすることがある。
MD方向およびTD方向の150℃熱収縮率の上限は好ましくは10%であり、より好ましくは9%であり、さらに好ましくは8%であり、特に好ましくは7%であり、最も好ましくは6%である。上記範囲であると150℃程度の高温に晒される可能性のある用途で使用がより容易なる。なお、150℃熱収縮率は2.5%程度までなら、例えば低分子量成分を多くする、延伸条件、固定条件を調整することで可能であるが、それ以下はオフラインでアニール処理をすることが好ましい。
従来の延伸ポリプロピレン積層フィルムでは、MD方向およびTD方向の150℃熱収縮率は15%以上であり、120℃熱収縮率は3%程度である。熱収縮率を上記の範囲とすることで、耐熱性の優れた延伸ポリプロピレン積層フィルムを得ることができる。
【0017】
本発明の延伸ポリプロピレンフィルムの耐衝撃性(23℃)の下限は好ましくは0.6Jであり、より好ましくは0.7Jである。上記範囲であるとフィルムとして十分な強靱性があり、取り扱い時に破断したりすることがない。
耐衝撃性の上限は現実的な面から好ましくは3Jであり、より好ましくは2.5Jであり、さらに好ましくは2.2Jであり、特に好ましくは2Jである。耐衝撃性は例えば低分子量成分が多い場合全体での分子量が低い場合、高分子量成分が少ない場合や高分子量成分の分子量が低い場合に耐衝撃性が低下する傾向となるため、用途に合わせてこれら成分を調整して範囲内とすることが出来る。
【0018】
本発明の延伸ポリプロピレン積層フィルムのヘイズは現実的値として下限は好ましくは0.1%であり、より好ましくは0.2%であり、さらに好ましくは0.3%であり、特に好ましくは0.4%であり、最も好ましくは0.5%である。
ヘイズの上限は好ましくは6%であり、より好ましくは5%であり、さらに好ましくは4.5%であり、特に好ましくは4%であり、最も好ましくは3.5%である。上記範囲であると透明が要求される用途で使いやすくなることがある。ヘイズは例えば延伸温度、熱固定温度が高すぎる場合、冷却ロール(CR)温度が高く冷却速度が遅い場合、低分子量が多すぎる場合に悪くなる傾向があり、これらを調節することで範囲内とすることが出来る。
【0019】
(ポリプロピレン樹脂)
本発明の延伸ポリプロピレン積層フィルムの基材層(A)を構成するポリプロピレン樹脂はプロピレンモノマーのみから得られる完全ホモポリプロピレンや微量であれば共重合モノマーとの共重合体であっても良い。共重合モノマー種としてはエチレン、ブテン、ヘキセン、オクテン等が可能である。
【0020】
本発明の基材層(A)には、必要に応じて、添加剤やその他の樹脂を添加しても良いが、30wt%以下であることが好ましい。
添加剤としては、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、造核剤、粘着剤、防曇剤、難燃剤、アンチブロッキング剤、無機または有機の充填剤等が挙げられる。その他の樹脂としては、本発明で用いられるポリプロピレン樹脂以外のポリプロピレン樹脂、プロピレンとエチレンやブテン、ヘキセン、オクテンなどの炭素数4以上のα−オレフィンの共重合体であるランダムコポリマーや、各種エラストマー等が挙げられる。
【0021】
(ポリプロピレン樹脂の分子量分布)
本発明の延伸ポリプロピレン積層フィルムを構成するポリプロピレン樹脂は、例えば質量平均分子量(Mw)が10万程度の低分子量の成分を主とし、さらに例えばMwが150万程度の非常に分子量の高い高分子量成分が含まれている。低分子量成分を主とすることで結晶性を大きく高めることができ、従来にはない高剛性、高耐熱性の延伸ポリプロピレンフィルムが得られていると考えられる。一方、低分子量のポリプロピレン樹脂は加熱軟化した場合の溶融張力が低く、一般には延伸フィルムとすることはできない。そこに高分子量成分を数%〜数十%存在させることで延伸を可能にさせると共に、高分子量成分が結晶核の役割を果たし、さらにフィルムの結晶性を上げ、本発明の延伸ポリプロピレン積層フィルムの効果を達成しているものと考えられる。
【0022】
このような分子量分布を表す指標としては、高分子量成分を重視した平均分子量であるZ+1平均分子量(Mz+1)と数平均分子量(Mn)の比である(Mz+1)/Mnが好適である。
Mz+1/Mnの下限は好ましくは50であり、より好ましくは60であり、さらに好ましくは70であり、特に好ましくは80であり、最も好ましくは90である。上記未満であると高温での低い熱収縮率など本願の効果が得られにくくなることがある。
Mz+1/Mnの上限は好ましくは300であり、より好ましくは200である。上記を越えると現実的な樹脂の製造が困難になることがある。
【0023】
上記分子量分布を有するポリプロピレン樹脂を、一般的に分子量分布の広さの指標である質量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)で表すと当然にその値はおおきなものになるが、Mw/Mnの下限は好ましくは5.5であり、より好ましくは6であり、さらに好ましくは6.5であり、特に好ましくは7であり、最も好ましくは7.2である。
Mw/Mnの上限は好ましくは30であり、より好ましくは25であり、さらに好ましくは20であり、特に好ましくは15であり、最も好ましくは13である。なお、これらの平均分子量は、ゲルマパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定することにより得ることができる。
【0024】
本発明の基材層(A)を構成するポリプロピレン樹脂全体のGPCによるMz+1の下限は好ましくは2500000であり、より好ましくは3000000であり、さらに好ましくは3300000であり、特に好ましくは3500000であり、最も好ましくは3700000である。上記範囲であると高分子量成分が十分であり、本発明の効果が得られやすい。
全体のMz+1の上限は好ましくは40000000であり、より好ましくは35000000であり、さらに好ましくは30000000である。上記範囲であると現実的な樹脂の製造が容易であったり、延伸が容易となったり、フィルム中のフィッシュアイが少なくなることがある。
【0025】
本発明の基材層(A)を構成するポリプロピレン樹脂全体のGPCで得られるMnの下限は好ましくは20000であり、より好ましくは22000であり、さらに好ましくは24000であり、特に好ましくは26000であり、最も好ましくは27000である。上記範囲であると延伸が容易となる、厚み斑が小さくなる、延伸温度や熱固定温度が上げられやすく熱収縮率が低くなるという利点が生じることがある。
全体のMnの上限は好ましくは65000であり、より好ましくは60000であり、さらに好ましくは55000であり、特に好ましくは53000であり、最も好ましくは52000である。上記範囲であると低分子量物の効果である高温での低い熱収縮率など本願の効果が得られやすくなったり、延伸容易となることがある。
【0026】
本発明の基材層(A)を構成するポリプロピレン樹脂全体のGPCで得られる質量平均分子量(Mw)の下限は好ましくは250000であり、より好ましくは260000であり、さらに好ましくは270000であり、特に好ましくは280000であり、最も好ましくは290000である。上記範囲であると延伸が容易となる、厚み斑が小さくなる、延伸温度や熱固定温度が上げられやすく熱収縮率が低くなるという利点が生じることがある。
全体のMwの上限は好ましくは500000であり、より好ましくは450000であり、さらに好ましくは400000であり、特に好ましくは380000であり、最も好ましくは370000である。上記範囲であると機械的負荷が小さく延伸容易となることがある。
【0027】
本発明の基材層(A)を構成するポリプロピレン樹脂全体のメルトフローレート(MFR)(230℃、2.16kgf)の下限は好ましくは1g/10minであり、より好ましくは1.2g/10minであり、さらに好ましくは1.4g/10minであり、特に好ましくは1.5g/10minであり、最も好ましくは1.6g/10minである。上記範囲であると機械的負荷が小さく延伸が容易となることがある。
全体のMFRの上限は好ましくは20g/10minであり、より好ましくは17g/10minであり、さらに好ましくは15g/10minであり、特に好ましくは14g/10minであり、最も好ましくは13g/10minである。上記範囲であると延伸が容易となったり、厚み斑が小さくなったり、延伸温度や熱固定温度が上げられやすく熱収縮率がより低くなることがある。
【0028】
フィルムを構成するポリプロピレン樹脂全体のGPC積算カーブを測定した場合、分子量10万以下の成分の量の下限は好ましくは35質量%であり、より好ましくは38質量%であり、さらに好ましくは40質量%であり、特に好ましくは41質量%であり、最も好ましくは42質量%である。上記範囲であると低分子量物の効果である高温での低い熱収縮率など本願の効果が得られやすくなったり、延伸が容易となることがある。
分子量10万以下の成分の量の上限は好ましくは65質量%であり、より好ましくは60質量%であり、さらに好ましくは58質量%であり、特に好ましくは56質量%であり、最も好ましくは55質量%である。
【0029】
分子量1万以下程度の分子は分子鎖同士の絡み合いには寄与せず、可塑剤的に分子同士の絡み合いをほぐす効果があるため、分子量1万以下の成分の量が特定量含まれることが好ましい。これにより、低い延伸応力での延伸が可能となり、その結果として残留応力も低く高温での収縮率を低くできているものと考えられる。
分子量1万以下の成分の量の下限は好ましくは2質量%であり、より好ましくは2.5質量%であり、さらに好ましくは3質量%であり、特に好ましくは3.3質量%であり、最も好ましくは3.5質量%である。
GPC積算カーブでの分子量1万以下の成分の量の上限は好ましくは20質量%であり、より好ましくは17質量%であり、さらに好ましくは15質量%であり、特に好ましくは14質量%であり、最も好ましくは13質量%である。
【0030】
このような分子量分布の特徴を有するポリプロピレン樹脂を形成するのに好適な高分子量成分と低分子量成分に関して説明するが、分子量分布を広げるための手段はこれに限定されるものではない。
【0031】
(高分子量成分)
高分子量成分のMFR(230℃、2.16kgf)の下限は好ましくは0.0001g/10minであり、より好ましくは0.0005g/10minであり、さらに好ましくは0.001g/10minであり、特に好ましくは0.005g/10minであ
る。上記範囲であると現実的に樹脂の製造が容易であったり、フィルムのフィッシュアイを低減できることがある。
なお、高分子量成分の230℃、2.16kgfでのMFRは小さすぎて現実的測定が困難となる場合がある。10倍の加重(21.6kgf)でのMFRであらわすと、好ましい下限は0.1g/10minであり、より好ましくは0.5g/10minであり、さらに好ましくは1g/10minであり、特に好ましくは5g/10minである。
高分子量成分のMFRの上限は好ましくは0.5g/10minであり、より好ましくは0.35g/10minであり、さらに好ましくは0.3g/10minであり、特に好ましくは0.2g/10minであり、最も好ましくは0.1g/10minである。上記範囲であると全体のMFRを維持するために多くの高分子成分の量が必要でなく、低分子量物の効果である高温での低い熱収縮率など本願の効果がより得られやすくなることがある。
【0032】
高分子量成分のMwの下限は好ましくは500000であり、より好ましくは600000であり、さらに好ましくは700000であり、特に好ましくは800000であり、最も好ましくは1000000である。上記範囲であると全体のMFRを維持するために多くの高分子成分の量が必要でなく、低分子量物の効果である高温での低い熱収縮率など本願の効果がより得られやすくなることがある。
高分子量成分のMwの上限は好ましくは10000000であり、より好ましくは8000000であり、さらに好ましくは6000000であり、特に好ましくは5000000である。上記範囲であると現実的に樹脂の製造が容易であったり、フィルムのフィッシュアイを低減できることがある。
【0033】
高分子量成分の量の下限は好ましくは2質量%であり、より好ましくは3質量%であり、さらに好ましくは4質量%であり、特に好ましくは5質量%である。上記範囲であると全体のMFRを維持するため低分子量物の分子量を上げる必要がなく、高温での低い熱収縮率など本願の効果がより得られやすくなることがある。
高分子量成分の量の上限は好ましくは30質量%であり、より好ましくは25質量%であり、さらに好ましくは22質量%であり、特に好ましくは20質量%である。上記範囲であると低分子量物の効果である高温での低い熱収縮率など本願の効果がより得られやすくなることがある。
ここで、高分子量成分は、直鎖状のポリプロピレン樹脂の代わりに、長鎖分岐や架橋構造を有するポリプロピレン樹脂を用いることもでき、これには高溶融張力ポリプロピレンとして知られている、Borealis社製Daploy WB130HMS、WB135HMS等がある。
【0034】
(低分子量成分)
低分子量成分のMFR(230℃、2.16kgf)の下限は好ましくは70g/10minであり、より好ましくは80g/10minであり、さらに好ましくは100g/10minであり、特に好ましくは150g/10minであり、最も好ましくは200g/10minである。上記範囲であると結晶性が良くなり、高温での低い熱収縮率など本願の効果がより得られやすくなることがある。
低分子量成分のMFRの上限は好ましくは2000g/10minであり、より好ましくは1800g/10minであり、さらに好ましくは1600g/10minであり、特に好ましくは1500g/10minであり、最も好ましくは1500g/10minである。上記範囲であると全体でのMFRを維持しやすくなり、製膜性に優れることがある。
【0035】
低分子量成分のMwの下限は好ましくは50000であり、より好ましくは53000であり、さらに好ましくは55000であり、特に好ましくは60000であり、最も好
ましくは70000である。上記範囲であると全体でのMFRを維持しやすくなり、製膜性に優れることがある。
低分子量成分のMwの上限は好ましくは150000であり、より好ましくは140000であり、さらに好ましくは130000であり、特に好ましくは120000であり、最も好ましくは110000である。上記範囲であると結晶性が良くなり、高温での低い熱収縮率など本願の効果がより得られやすくなることがある。
【0036】
低分子量成分の量の下限は好ましくは40質量%であり、より好ましくは50質量%であり、さらに好ましくは55質量%であり、特に好ましくは60質量%である。上記範囲であると低分子量物の効果である高温での低い熱収縮率など本願の効果がより得られやすくなることがある。
低分子量成分の量の上限は好ましくは98質量%であり、より好ましくは97質量%であり、さらに好ましくは96質量%であり、特に好ましくは95質量%である。上記範囲であると全体のMFRを維持するため低分子量物の分子量を上げる必要がなく、高温での低い熱収縮率など本願の効果がより得られやすくなることがある。
【0037】
低分子量成分のMFR/高分子量成分のMFR比の下限は好ましくは500であり、より好ましくは1000であり、さらに好ましくは2000であり、特に好ましくは4000である。上記範囲であると高温での低い熱収縮率など本願の効果がより得られやすくなることがある。
低分子量成分のMFR/高分子量成分のMFR比の上限は好ましくは1000000である。
【0038】
高分子量成分、低分子量成分はそれぞれの成分に該当する2つ以上の樹脂の混合物であっても良く、その場合の配合量は合計量である。
また、上記範囲の高分子量成分や低分子量成分以外に、ポリプロピレン樹脂全体としてMFRを調整するために本発明の低分子量成分や高分子量成分以外の分子量を有する成分を添加しても良く、また、分子鎖の絡み合いをほぐしやすくして延伸性などを調節するために低分子量成分の分子量以下、特に分子量3万程度以下、さらには分子量1万程度以下のポリプロピレン樹脂を添加しても良い。
【0039】
高分子量成分、低分子量成分を用いて好ましいポリプロピレン樹脂の分子量分布状態とするためには、例えば、用いる低分子量成分の分子量が低めの場合は高分子量成分の分子量を上げる、高分子量成分の量を増やすなどして分布状態を調整すると共に延伸フィルムとして製造しやすいMFRに調整することができる。
【0040】
(ポリプロピレン樹脂の規則性)
本発明の基材層(A)を構成するポリプロピレン樹脂のメソペンタッド分率([mmmm]%)の下限は好ましくは96%であり、より好ましくは96.5%であり、さらに好ましくは97%である。上記範囲であると結晶性が向上し、高温での熱収縮率がより低くなることがある。
メソペンタッド分率([mmmm]%)の上限は好ましくは99.5%であり、より好ましくは99.3%であり、さらに好ましくは99%である。上記範囲であると現実的な製造が容易となることがある。
【0041】
本発明の基材層(A)を構成するポリプロピレン樹脂においては、頭−頭結合のような異種結合は認められないことが好ましい。なお、ここで認められないとは、
13C−NMRでピーク見られないことを言う。
【0042】
本発明の基材層(A)を構成するポリプロピレン樹脂のメソ平均連鎖長の下限は好ましくは100であり、より好ましくは120であり、さらに好ましくは130である。上記範囲であると結晶性が向上し、高温での熱収縮率が小さくなることがある。
メソ平均連鎖長の上限は現実的な面から好ましくは5000である。
【0043】
本発明の基材層(A)を構成するポリプロピレン樹脂のキシレン可溶分の下限は現実的な面から好ましくは0.1質量%である。
キシレン可溶分の上限は好ましくは7質量%であり、より好ましくは6質量%であり、さらに好ましくは5質量%である。上記範囲であると結晶性が向上し、高温での熱収縮率が小さくなることがある。
【0044】
本発明の基材層(A)を構成するポリプロピレン樹脂はプロピレンモノマーのみから得られる完全ホモポリプロピレンであることが最も好ましいが、微量であれば共重合モノマーとの共重合体であっても良い。共重合モノマー種としてはエチレン、ブテンが好ましい。
【0045】
共重合モノマー量の上限は好ましくは0.1mol%であり、より好ましくは0.05mol%であり、さらに好ましくは0.01mol%である。上記範囲であると結晶性が向上し、高温での熱収縮率が小さくなることがある。
【0046】
なお、完全なホモポリプロピレンでは結晶性の高さや、溶融軟化後に急速に溶融張力が低下するなど、延伸できる条件範囲が非常に狭いために、工業的には製膜しづらく、通常は0.5%前後の共重合成分(主にエチレン)を添加していた。しかし、上記のような分子量分布状態のポリプロピレン樹脂は共重合成分がほとんど、もしくは全くなくても溶融軟化後の張力低下が穏やかであり、工業的な延伸が可能である。
【0047】
また、本発明において、ヒートシール層(B)に用いる樹脂は、融点が150℃以下の低融点のプロピレンランダム共重合体またはエラストマー成分を含むプロピレンブロック共重合体が好ましく、また、これらを単独または混合して使用することができる。コモノマーとしては、エチレン、または、ブテン、ペンテン、ヘキセン、オクテン、デセン等の炭素数が3〜10のα−オレフィンから選ばれた1種以上を用いることが好ましい。
【0048】
さらにまた、ヒートシール層(B)を形成するプロピレンランダム共重合体の融点は、好ましくは60〜150℃にすることが望ましい。これにより、延伸ポリプロピレン系樹脂積層フィルムに十分なヒートシール強度を与えることができる。ヒートシール層(B)を形成するプロピレンランダム共重合体の融点が60℃未満ではヒートシール部の耐熱性が乏しく、150℃を越えるとヒートシール強度の向上が期待できない。また、プロピレンブロック共重合体中に含まれるエラストマー成分の融点も150℃以下であることが好ましい。
また、MFRは0.1〜100g/10min、好ましくは0.5〜20g/10min、さらに好ましくは、1.0〜10g/10minの範囲のものを例示することができる。
【0049】
(ポリプロピレン樹脂の製造方法)
ポリプロピレンは、チーグラー・ナッタ触媒やメタロセン触媒等の公知の触媒を用いて、原料となるプロピレンを重合させて得られる。中でも異種結合をなくすためにはチーグラー・ナッタ触媒を用い、かつ、規則性の高い重合が可能な触媒を用いることが好ましい。
プロピレンの重合方法としては、公知の方法でよく、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、キシレン等の不活性溶剤中で重合する方法、液状のプロピレンやエチレン中で重合する方法、気体であるプロピレンやエチレン中に触媒を添加し、気相状態で重合する方法、または、これらを組み合わせて重合する方法等が挙げられる。
高分子量成分、低分子量成分は別々に重合した後に混合しても良く、多段階の反応器で一連のプラントで製造しても良い。特に、多段階の反応器を持つプラントを用い、高分子量成分を最初に重合した後にその存在下で低分子量成分を重合する方法が好ましい。
【0050】
(添加剤)
本発明のフィルム成形用樹脂組成物には、必要に応じて、添加剤やその他の樹脂を添加しても良い。添加剤としては、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、造核剤、粘着剤、防曇剤、難燃剤、アンチブロッキング剤、無機または有機の充填剤等が挙げられる。その他の樹脂としては、本発明で用いられるポリプロピレン樹脂以外のポリプロピレン樹脂、プロピレンとエチレンおよび/または炭素数4以上のα−オレフィンの共重合体であるランダムコポリマーや、各種エラストマー等が挙げられる。これらは、ポリプロピレン樹脂とヘンシェルミキサーでブレンドするか、事前に溶融混錬機を用いて作製したマスターペレットを所定の濃度になるようにポリプロピレンで希釈するか、予め全量を溶融混練して使用しても良い。
【0051】
このような特徴的分子量分布を持つポリプロピレン樹脂を基材層(A)に用いることで、従来では十分な延伸が不可能であった低分子量を主体としたポリプロピレンを延伸することが可能となり、また、高い熱固定温度を採用することができ、高い結晶性、強い熱固定の相乗効果で高温での熱収縮率を低くすることができているものと考えられる。
【0053】
本発明のヒートシール性ポリプロピレン積層延伸フィルムが二軸延伸フィルムである場合、MD方向のヤング率(23℃)の下限は好ましくは1.8GPaであり、より好ましくは1.9GPaであり、さらに好ましくは2.0GPaであり、特に好ましくは2.1GPaであり、最も好ましくは2.2GPaである。
MD方向のヤング率の上限は好ましくは3.7GPaであり、より好ましくは3.6GPaであり、さらに好ましくは3.5GPaであり、特に好ましくは3.4GPaであり、最も好ましくは3.3GPaである。上記範囲ではと現実的な製造が容易であったり、MD−TDバランスが良化することがある。
【0054】
本発明のヒートシール性ポリプロピレン積層延伸フィルムが二軸延伸フィルムである場合、TD方向のヤング率(23℃)の下限は好ましくは3.7GPaであり、より好ましくは3.8GPaであり、さらに好ましくは3.9GPaであり、特に好ましくは4.0GPaである。
TD方向のヤング率の上限は好ましくは8GPaであり、より好ましくは7.5GPaであり、さらに好ましくは7GPaであり、特に好ましくは6.5GPaである。上記範囲だと現実的な製造が容易であったり、MD−TDバランスが良化することがある。
なお、ヤング率は延伸倍率を高くすることで高めることができ、MD−TD延伸の場合はMD延伸倍率を低めに設定し、TD延伸倍率を高くすることでTD方向のヤング率を大きくすることができる。
【0055】
本発明の延伸ポリプロピレン積層フィルムの厚み均一性の下限は好ましくは0%であり、より好ましくは0.1%であり、さらに好ましくは0.5%であり、特に好ましくは1%である。
厚み均一性の上限は好ましくは20%であり、より好ましくは17%であり、さらに好ましくは15%であり、特に好ましくは12%であり、最も好ましくは10%である。上記範囲だとコートや印刷などの後加工時に不良が生じにくく、精密性を要求される用途に用いやすい。
【0056】
(ポリプロピレンフィルムの製造方法)
本発明の延伸ポリプロピレン積層フィルムとしては長手方向(MD方向)もしくは横方向(TD方向)の一軸延伸フィルムでも良いが、二軸延伸フィルムであることが好ましい。二軸延伸の場合は逐次二軸延伸であっても同時二軸延伸であっても良い。
延伸フィルムとすることで、従来の延伸ポリプロピレン積層フィルムでは予想できなかった150℃でも熱収縮率が低いフィルムを得ることができる。
【0057】
以下に最も好ましい例である縦延伸−横延伸の逐次二軸延伸のフィルムの製造方法を説明する。
まず、一方の押し出し機より基材層(A)を溶融押し出しし、もう一方の押し出し機によりヒートシール層(B)を溶融押し出しし、Tダイ内にて、ポリプロピレン系樹脂層(A)とヒートシール層(B)となるように積層し、冷却ロールにて冷却固化し未延伸シートを得る。溶融押出し条件としては、樹脂温度として200〜280℃となるようにして、Tダイよりシート状に押出し、10〜100℃の温度の冷却ロールで冷却固化する。ついで、120〜165℃の延伸ロールでフィルムを長さ(MD)方向に3〜7倍に延伸し、引き続き幅(TD)方向に155℃〜175℃、好ましくは158℃〜170℃の温度で6〜12倍延伸を行う。
さらに、165〜175℃、好ましくは166〜173℃の雰囲気温度で1〜15%のリラックスを許しながら熱処理を施す。
必要であれば、少なくとも片面にコロナ放電処理を施した後、ワインダーで巻取ることによりロールサンプルを得ることができる。
【0058】
MDの延伸倍率の下限は好ましくは3倍であり、より好ましくは3.5倍である。上記未満であると膜厚ムラとなることがある。
MDの延伸倍率の上限は好ましくは8倍であり、より好ましくは7倍である。上記を越えると引き続き行うTD延伸がしにくくなることがある。
【0059】
MDの延伸温度の下限は好ましくは120℃であり、より好ましくは125℃であり、さらに好ましくは130℃である。上記未満であると機械的負荷が大きくなったり、厚みムラが大きくなったり、フィルムの表面粗れが起こることがある。
MDの延伸温度の上限は好ましくは160℃であり、より好ましくは155℃であり、さらに好ましくは150℃である。温度が高い方が熱収縮率の低下には好ましいが、ロールに付着し延伸できなくなることがある。
【0060】
TDの延伸倍率の下限は好ましくは4倍であり、より好ましくは5倍であり、さらに好ましくは6倍である。上記未満であると厚みムラとなることがある。
TD延伸倍率の上限は好ましくは20倍であり、より好ましくは17倍であり、さらに好ましくは15倍である。上記を越えると熱収縮率が高くなったり、延伸時に破断することがある。
【0061】
TD延伸での予熱温度は速やかに延伸温度付近にフィルム温度を上げるため、好ましくは延伸温度より10〜15℃高く設定する。
【0062】
TDの延伸では従来のヒートシール性ポリプロピレン積層延伸フィルムより高温で行う。
TDの延伸温度の下限は好ましくは157℃であり、より好ましくは158℃である。上記未満であると十分に軟化せずに破断したり、熱収縮率が高くなることがある。
TD延伸温度の上限は好ましくは170℃であり、より好ましくは168℃である。熱収縮率を低くするためには温度は高い方が好ましいが、上記を越えると低分子成分が融解、再結晶化して表面粗れやフィルムが白化することがある。
【0063】
延伸後のフィルムは熱固定される。熱固定は従来のポリプロピレンフィルムより高温で行うことが可能である。熱固定温度の下限は好ましくは165℃であり、より好ましくは166℃である。上記未満であると熱収縮率が高くなることがある。また、熱収縮率を低くするために長時間が必要になり、生産性が劣ることがある。
熱固定温度の上限は好ましくは175℃であり、より好ましくは173℃である。上記を越えると低分子成分が融解、再結晶化して表面粗れやフィルムが白化することがある。
【0064】
熱固定時にリラックス(緩和)させることが好ましい。リラックスの下限は好ましくは2%であり、より好ましくは3%である。上記未満であると熱収縮率が高くなることがある。
リラックスの上限は好ましくは10%であり、より好ましくは8%である。上記を越えると厚みムラが大きくなることがある。
【0065】
さらに、熱収縮率を低下させるためには上記の工程で製造されたフィルムを一旦ロール状に巻き取った後、オフラインでアニールさせることもできる。
オフラインアニール温度の下限は好ましくは160℃であり、より好ましくは162℃であり、さらに好ましくは163℃である。上記未満であるとアニールの効果が得られないことがある。
オフラインアニール温度の上限は好ましくは175℃であり、より好ましくは174℃であり、さらに好ましくは173℃である。上記を越えると透明性が低下したり、厚みムラがおおきくなったりすることがある。
【0066】
オフラインアニール時間の下限は好ましくは0.1分であり、より好ましくは0.5分であり、さらに好ましくは1分である。上記未満であるとアニールの効果が得られないことがある。
オフラインアニール時間の上限は好ましくは30分であり、より好ましくは25分であり、さらに好ましくは20分である。上記を越えると生産性が低下することがある。
【0067】
フィルムの厚みは各用途に合わせて設定されるが、フィルム厚みの下限は好ましくは2μmであり、より好ましくは3μmであり、さらに好ましくは4μmである。フィルム厚みの上限は好ましくは300μmであり、より好ましくは250μmであり、さらに好ましくは200μmであり、特に好ましくは100μmであり、最も好ましくは50μmである。
【0068】
このようにして得られたポリプロピレンフィルムは通常、幅2000〜12000mm、長さ1000〜50000m程度のロールとして製膜され、ロール状に巻き取られる。さらに、各用途に合わせてスリットされ幅300〜2000mm、長さ500〜5000m程度のスリットロールとして供される。
【0069】
本発明の延伸ポリプロピレン積層フィルムは上記の様な従来にはない優れた特性を有する。
包装フィルムとしても用いた場合には、高剛性であるため薄肉化が可能であり、コストダウン、軽量化ができる。
また、耐熱性が高いため、コートや印刷の乾燥時に高温乾燥か可能となり、生産の効率化や従来用いられにくかったコート剤やインキ、ラミネート接着剤などを用いることができる。有機溶剤等を使用するラミネート工程の必要がないため、経済的にも地球環境に与える影響の面からも好ましい。
【実施例】
【0070】
以下に本発明を実施例に基づき詳細に説明するが、本発明はかかる実施例に限定されるものではない。実施例における物性の測定方法は次のとおりである。
【0071】
1)メルトフローレート(MFR、g/10分)
JIS K7210に準拠し、温度230℃で測定した。
【0072】
2)分子量および分子量分布
分子量および分子量分布は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて単分散ポリスチレン基準により求めた。
GPC測定での使用カラム、溶媒は以下のとおりである。
溶媒:1,2,4−トリクロロベンゼン
カラム:TSKgel GMH
HR−H(20)HT×3
流量:1.0ml/min
検出器:RI
測定温度:140℃
数平均分子量(Mn)、質量平均分子量(Mw)、Z+1平均分子量(Mz+1)はそれぞれ、分子量校正曲線を介して得られたGPC曲線の各溶出位置の分子量(Mi)の分子数(Ni)により次式で定義される。
数平均分子量:Mn=Σ(Ni・Mi)/ΣNi
質量平均分子量:Mw=Σ(Ni・Mi
2)/Σ(Ni・Mi)
Z+1平均分子量:Mz+1=Σ(Ni・Mi
4)/Σ(Ni・Mi
3)
分子量分布:Mw/Mn、Mz+1/Mn
また、GPC曲線のピーク位置の分子量をMpとした。
ベースラインが明確でないときは、標準物質の溶出ピークに最も近い高分子量側の溶出ピークの高分子量側のすそ野の最も低い位置までの範囲でベースラインを設定することとする。
ピーク分離は、得られたGPC曲線から、分子量の異なる2つ以上の成分にピーク分離を行った。各成分の分子量分布はガウス関数を仮定し、通常のポリプロピレンの分子量分布と同様になるようにMw/Mn=4とした。得られた各成分のカーブから、各平均分子量を計算した。
【0073】
3)立体規則性
メソペンタッド分率([mmmm]%)およびメソ平均連鎖長の測定は、
13C−NMRを用いて行った。メソペンタッド分率は、Zambelliら、Macromolecules,第6巻,925頁(1973)に記載の方法に従い、メソ平均連鎖長は、J.C.Randallによる、“Polymer Sequence Distribution”第2章(1977年)(Academic Press,New York)に記載の方法に従って算出した。
13C−NMR測定は、BRUKER社製AVANCE500を用い、試料200mgをo−ジクロロベンゼンと重ベンゼンの8:2の混合液に135℃で溶解し、110℃で行った。
【0074】
4)冷キシレン可溶部(CXS、質量%)
ポリプロピレン試料1gを沸騰キシレン200mlに溶解して放冷後、20℃の恒温水槽で1時間再結晶化させ、ろ過液に溶解している質量の、元の試料量に対する割合をCXS(質量%)とした。
【0075】
5)熱収縮率(%)
JIS Z 1712に準拠して測定した。
(延伸フィルムを20mm巾で200mmの長さでMD、TD方向にそれぞれカットし、150℃の熱風オーブン中に吊るして5分間加熱した。加熱後の長さを測定し、元の長さに対する収縮した長さの割合で熱収縮率を求めた。)
【0076】
6)耐衝撃性
東洋精機製フィルムインパクトテスターを用いて、23℃にて測定した。
【0077】
7)ヤング率(単位:GPa)
JIS K 7127に準拠してMDおよびTD方向のヤング率を23℃で測定した。
【0078】
8)ヘイズ(単位:%)
JIS K7105に従って測定した。
【0079】
9)ヒートシール強度
ヒートシール温度140℃、圧力1kg/cm
2、ヒートシール時間1秒の条件で、積層延伸フィルムのヒートシール層(B)面同士を重ね合わせて熱板シールを行い、10mm幅の試験片を作製した。この試験片の180度剥離強度を測定し、ヒートシール強度(N/15mm)とした。
【0080】
10)カール性
9)の評価で得られたフィルムの積層延伸フィルムのカールの程度をカールの程度を目視で測定した。
○:カール性なし
△:ややカール性あり
×:著しいカール性あり
【0081】
11)厚み斑
巻き取ったフィルムロールから長さが1mの正方形のサンプルを切り出し、MD方向およびTD方向にそれぞれ10等分して測定用サンプルを100枚用意した。測定用サンプルのほぼ中央部を接触式のフィルム厚み計で厚みを測定した。
得られた100点のデータの平均値を求め、また最小値と最大値の差(絶対値)を求め、最小値と最大値の差の絶対値を平均値で除した値をフィルムの厚み斑とした。
【0082】
12)ヒートシール外観
作製したフィルムと東洋紡績株式会社製パイレンフィルム−CT P1128を重ねて、西部機械株式会社製テストシーラーを用いて、170℃、荷重2kgで1秒間保持することによりヒートシールを行った。ヒートシール後のフィルムの収縮による外観の変化の具合を目視により評価した。ヒートシール部の変形量が小さく、使用に影響しない範囲のものを○、ヒートシールによる収縮が大きく、変形量が大きいものを×とした。
【0083】
(実施例1)
2台の溶融押出機を用い、第1の押出機にて、ポリプロピレン樹脂として、Mw/Mn=7.7、Mz+1/Mn=140、MFR=5.0、[mmmm]=97.3%であるプロピレン単独重合体(日本ポリプロ(株)製:ノバテックPP「SA4L」)を基材層(A)とし、第2の押出機にて、プロピレン−エチレン−ブテンランダム共重合体(Pr−Et−Bu)(密度0.89g/cm
3、MFR4.6g/10分、融点128℃)を85重量%、プロピレン−ブテンランダム共重合体(Pr−Bu)(密度0.89g/cm
3、MFR9.0g/10分、融点130℃)を15重量%とした混合樹脂をヒートシール層(B)として、ダイス内にて基材層(A)/ヒートシール層(B)とるように、基材層(A)、ヒートシール層(B)の順にTダイ方式にて250℃でTダイよりシート状に溶融共押出し後、30℃の冷却ロールで冷却固化した後、135℃で長さ方向に4.5倍に延伸し、ついで両端をクリップで挟み、熱風オーブン中に導いて、170℃で予熱後、160℃で横方向に8.2倍に延伸し、ついでリラックスを6.7%させながら168℃で熱処理した。その後、フィルムの片面にコロナ処理を行い、ワインダーで巻き取った。こうして得られたフィルムの厚みは20μmであり、基材層、ヒートシール層の厚みがそれぞれ順に18μm、2μmである積層延伸フィルムを得た。表1、表2、表3に示すとおり、得られた積層延伸フィルムは本発明の要件を満足するものであり、熱収縮率が低く、十分なヒートシール強度と腰感、耐カール性を有するものであった。
【0084】
(実施例2)
基材層(A)には、「SA4L」90重量部に対して、分子量10000である低分子量ポリプロピレン(三井化学(株)製 ハイワックス「NP105」)を10重量部加えて100重量部とし、両者をドライブレンドした後、30mmの2軸押出機にて溶融混錬して、混合物のペレットを得た。このペレットを用いて基材層(A)とし、実施例1と同様な方法で積層フィルムを得た。得られたフィルムの物性を表1、表2、表3に示した。
【0085】
(実施例3)
横延伸における予熱温度を173℃、延伸温度と熱処理温度を167℃とした以外は、実施例1と同様な方法で積層フィルムを得た。得られたフィルムの物性を表1、表2、表3に示した。
【0086】
(実施例4)
長さ方向に5.5倍、横方向に12倍延伸した以外は、実施例2と同様な方法で積層フィルムを得た。得られたフィルムの物性を表1、表2、表3に示した。
【0087】
(実施例5)
実施例1で作製した積層フィルムを用いて、テンター式熱風オーブン中で、170℃で5分間熱処理を行った。得られたフィルムの物性を表1、表2、表3に示した。
【0088】
(実施例6)
基材層(A)には、ポリプロピレン樹脂として、Mw/Mn=8.9、Mz+1/Mn=110、MFR=3.0g/10min、メソペンタッド分率[mmmm]=97.1%であるポリプロピレン単独重合体(サムスントタル社製「HU300」)を用い、横延伸の予熱温度を171℃、横延伸後の熱処理温度を170℃とした以外は、実施例1と同様な方法で延伸ポリプロピレン積層フィルムを得た。得られたフィルムの厚みは20μmであり、その物性は表1、表2および表3に示すとおりであった。
【0089】
(比較例1)
基材層(A)には、ポリプロピレン樹脂として、住友化学(株)製の住友ノーブレン「FS2011DG3」(Mw/Mn=4、Mz+1/Mn=21、MFR=2.5g/10分、「mmmm」=97.0%、エチレン量=0.6mol%)を用い、横延伸における予熱温度を168℃、延伸温度を155℃、熱処理温度を163℃とした以外は、実施例1と同様な方法で積層フィルムを得た。得られたフィルムの物性を表1、表2、表3に示した。
【0090】
(比較例2)
予熱温度を171℃、延伸温度を160℃、熱処理温度を165℃とした以外は、比較例1と同様に積層フィルムを作製した。得られたフィルムの物性を表1、表2、表3に示した。
【0091】
(比較例3)
基材層(A)には、ポリプロピレン樹脂として、MFR=0.5g/10min、Mw/Mn=4.5、Mz+1/Mn=10のプロピレン単独重合体を用い、比較例2と同様にしてフィルムを作製した。得られたフィルムの物性を表1、表2、表3に示した。
【0092】
(比較例4)
基材層(A)には、ポリプロピレン樹脂として、日本ポリプロ(株)製のノバテックPP「SA03」(MFR=30g/10分)を用い、実施例1と同様に二軸延伸を試みたが、横延伸で破断してフィルムを得ることができなかった。
【0093】
【表1】
【0094】
【表2】
【0095】
【表3】