(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
90〜100℃の温水中で剥離性を有するか、または100〜200℃の媒体中で剥離性を有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の光硬化性組成物または請求項6に記載の仮固定剤を硬化させて得られた、硬化物。
請求項1〜4のいずれか1項に記載の光硬化性組成物、または請求項6に記載の仮固定剤から形成された硬化物により仮固定された2枚の被着体を、90〜100℃の温水中で剥離するか、または100〜200℃の媒体中で剥離する、剥離方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
なお、本発明は、以下の実施の形態のみには限定されない。
【0012】
また、本明細書において、範囲を示す「X〜Y」は「X以上Y以下」を意味する。
【0013】
本発明の一形態は、(A)〜(D)成分を含み、且つ、
(C)成分の添加量が(A)成分と(B)成分との合計100質量部に対して8〜25質量部であり、硬化物が90〜100℃の温水中で剥離性を有するか、又は、
(C)成分の添加量が(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して1〜8質量部であり、硬化物が100〜200℃の媒体中で剥離性を有する、
光硬化性組成物である。
【0014】
(A)成分:ウレタン結合を有さず、且つ、主骨格にエステル結合及びエーテル結合から選択される少なくとも1種類の結合を有する、分子内に2以上のアクリル基を有する化合物
(B)成分:ジエチルアクリルアミド及びジメチルアクリルアミドから選択される少なくとも1種類
(C)成分:水
(D)成分:光開始剤。
【0015】
ここで、本形態の一態様は、(A)〜(D)成分を含み、(C)成分の添加量が(A)成分と(B)成分との合計100質量部に対して8〜25質量部であり、硬化物が90〜100℃の温水中で剥離性を有する光硬化性組成物である。
【0016】
(A)成分:ウレタン結合を有さず、且つ、主骨格にエステル結合及びエーテル結合から選択される少なくとも1種類の結合を有する、分子内に2以上のアクリル基を有する化合物
(B)成分:ジエチルアクリルアミド及びジメチルアクリルアミドから選択される少なくとも1種類
(C)成分:水
(D)成分:光開始剤。
【0017】
また、本形態の他の一態様は、(A)〜(D)成分を含み、(C)成分の添加量が(A)成分と(B)成分との合計100質量部に対して1〜8質量部であり、硬化物が100〜200℃の媒体中で剥離性を有する光硬化性組成物である。
【0018】
(A)成分:ウレタン結合を有さず、且つ、主骨格にエステル結合及びエーテル結合から選択される少なくとも1種類の結合を有する、分子内に2以上のアクリル基を有する化合物
(B)成分:ジエチルアクリルアミド及びジメチルアクリルアミドから選択される少なくとも1種類
(C)成分:水
(D)成分:光開始剤。
【0019】
本発明の一形態に係る光硬化性組成物によれば、被着体を貼り合わせた状態で、エネルギー線照射により仮固定することに適し、貼り合わせ後に行われる被着体の加工作業でも剥離することなく、90〜200℃の媒体で硬化物が溶解することなく良好に剥離することができる。
【0020】
〔(A)成分〕
本発明の一形態で使用することができる(A)成分としては、ウレタン結合を有さず、且つ、主骨格にエステル結合及びエーテル結合から選択される少なくとも1種類の結合を有する、分子内に2以上のアクリル基を有する化合物である。ここで、主骨格とは主鎖とも表現される。また、アクリル基を有する化合物はアクリレート化合物とも表現される。ウレタン結合を有するアクリル基を有する化合物は、本発明の一形態の(B)成分と(C)成分との相溶性が良くないため使用することができない。
【0021】
エステル結合を有する、分子内に2以上のアクリル基を有する化合物の合成方法としては、ポリオールと多価カルボン酸との合成によりエステル結合を形成して、未反応の水酸基にアクリル酸を付加させる合成方法が知られているが、この合成方法に限定されるものではない。
【0022】
エステル結合を有する、分子内に2以上のアクリル基を有する化合物としては、たとえば、二官能ポリエステルアクリレート、多官能ポリエステルアクリレート等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。具体的には市販品である東亜合成株式会社製のアロニックス(登録商標)M−6100、M−6200、M−6250、M−6500、M−7100、M−7300K、M−8030、M−8060、M−8100、M−8530、M−8560、M−9050などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0023】
エーテル結合を有する、分子内に2以上のアクリル基を有する化合物の合成方法としては、ポリエーテルポリオールの水酸基や、ビスフェノールなどの芳香族系水酸基を有する化合物のポリオール付加物や、ビスフェノールA型エポキシ樹脂にアクリル酸を付加させる合成方法が知られているが、この合成方法に限定されるものではない。
【0024】
エーテル結合を有する、分子内に2以上のアクリル基を有する化合物としては、たとえば、トリエチレングルコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリテトラメチレングリコールジアクリレート、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物ジアクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物ジアクリレート、ビスフェノールAタイプエポキシアクリレート等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。具体例としては、市販品である日本合成化学工業製の共栄社化学株式会社製のライトアクリレート3EG−A、4EG−A、9EG−A、14EG−A、PTMGA−250、BP−4EA、BP−4PA、BP−10EAなど、およびダイセル・サイテック株式会社製のEBECRYL3700などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0025】
(A)成分としては、ウレタン結合を有さないことを特徴する。ここで、ウレタン結合を有するアクリル基を有する化合物の合成方法としては、たとえば、ポリオールとポリイソシアネートによりウレタン結合を形成して、未反応の水酸基にアクリル酸を付加させる合成方法などが知られている。具体例としては、市販品である共栄社化学株式会社製のAH−600、AT−600、UA−306H、UF−8001等が挙げられるが、これらは(A)成分としては使用されない。
【0026】
(A)成分を2種以上用いるときは、エステル結合を有する、分子内に2以上のアクリル基を有する化合物のみ、若しくはエーテル結合を有する、分子内に2以上のアクリル基を有する化合物のみを用いてもよく、またはエステル結合を有する、分子内に2以上のアクリル基を有する化合物及びエーテル結合を有する、分子内に2以上のアクリル基を有する化合物の両方を用いてもよい。
【0027】
〔(B)成分〕
本発明の一形態で使用することができる(B)成分としては、ジエチルアクリルアミド及びジメチルアクリルアミドから選択される少なくとも1種類の化合物である。原因は解明されていないが、本発明の一形態においては(B)成分と(C)成分を組み合わせることにより、剥離性が向上している。ジエチルアクリルアミドとジメチルアクリルアミド以外のアクリルアミドでは(A)成分と(C)成分を互いに相溶させることができず、組成物が白濁や分離する傾向が見られる。
【0028】
(B)成分は、ジエチルアクリルアミドのみ、若しくはジメチルアクリルアミドのみを用いてもよく、またはジエチルアクリルアミド及びジメチルアクリルアミドの両方を用いてもよい。
【0029】
(A)成分100質量部に対して、(B)成分は1〜30質量部を添加することが好ましい。(B)成分が1質量部以上である場合は(C)成分との相溶性が良好であり、(B)成分が30質量部以下である場合は他の成分と(A)成分と(C)成分の両成分を相溶させることができる。上記観点より、1〜20質量部であることがより好ましく、2〜20質量部であることがさらに好ましい。
【0030】
〔(C)成分〕
本発明の一形態で使用することができる(C)成分としては、水である。水道水、精製装置によりイオン交換水または蒸留水などを使用することができるが、より好ましい(C)成分は不純物が少ないイオン交換水または蒸留水である。
【0031】
(1)硬化物が90〜100℃の温水中で剥離性を有する場合
光硬化性組成物から形成される硬化物が90〜100℃の温水中で剥離性を有するとき、(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して、(C)成分は8〜25質量部を添加する。(C)成分が8質量部以上である場合は良好な剥離性を維持することができる。(C)成分が25質量部以下である場合は被着体を仮固定するために必要な強度を維持することができる。上記観点より、好ましくは、10〜20質量部である。
【0032】
(2)硬化物が100〜200℃の媒体中で剥離性を有する場合
光硬化性組成物から形成される硬化物が100〜200℃の媒体中で剥離性を有するとき、(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して、(C)成分は1〜8質量部を添加する。(C)成分が1質量部以上である場合は良好な剥離性を維持することができる。(C)成分が8質量部以下である場合は被着体を仮固定するために必要な強度を維持することができる。上記観点より、好ましくは、2〜7質量部である。
【0033】
ここで、(C)成分が8質量部である場合は、硬化物が、(1)90〜100℃の温水中、(2)100〜200℃の媒体中、の両方において剥離性を有するため、汎用性の観点から好ましい。
【0034】
〔(D)成分〕
本発明の一形態で使用することができる(D)成分としては、光開始剤である。光開始剤としては、可視光線、紫外線、X線、電子線等のエネルギー線によりラジカル種を発生するラジカル系光開始剤であれば限定はない。具体的には、具体的としては、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−2−モルホリノ(4−チオメチルフェニル)プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)ブタノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノンオリゴマー等のアセトフェノン類;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン類;ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4′−メチル−ジフェニルサルファイド、3,3′,4,4′−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、4−ベンゾイル−N,N−ジメチル−N−[2−(1−オキソ−2−プロペニルオキシ)エチル]ベンゼンメタナミニウムブロミド、(4−ベンゾイルベンジル)トリメチルアンモニウムクロリド等のベンゾフェノン類;2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、2−(3−ジメチルアミノ−2−ヒドロキシ)−3,4−ジメチル−9H−チオキサントン−9−オンメソクロリド等のチオキサントン類などが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0035】
(D)成分は1種類のみを用いても、2種類以上を用いてもよい。
【0036】
(A)成分が100質量部に対して、(D)成分は0.1〜5.0質量部を添加することが好ましい。(D)成分が0.1質量部以上である場合は光硬化性を維持することができる。一方、(D)成分が5.0質量部以下である場合は保存時に増粘すること無く保存安定性を維持することができる。上記観点より、好ましくは、1〜4質量部である。
【0037】
〔他の成分〕
本発明の一形態の(D)成分と合わせて、カチオン系光開始剤を使用することもできる。前記カチオン系光開始剤の具体例としては、ジアゾニウム塩、スルホニウム塩、ヨードニウム塩等が挙げられるが、具体的にはベンゼンジアゾニウムヘキサフルオロアンチモネート、ベンゼンジアゾニウムヘキサフルオロフォスフェート、ベンゼンジアゾニウムヘキサフルオロボーレート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロフォスフェート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロボーレート、4,4‘−ビス[ビス(2−ヒドロキシエトキシフェニル)スルフォニオ]フェニルスルフィドビスヘキサフルオロフォスフェート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロフォスフェート、ジフェニル−4−チオフェノキシフェニルスルフォニウムヘキサフルオロフォスフェート等を挙げることができるが、これに限定されるものではない。
【0038】
保存安定性を保つために重合禁止剤を使用することもできるが、重合禁止剤は添加量が多すぎると保存安定性が良くなる一方で、反応性が遅くなるため0.001〜0.1質量%にすることが好ましい。具体例としては、ヒドロキノン、メトキシヒドロキノン、ベンゾキノン、p−tert−ブチルカテコール等のキノン系重合禁止剤;2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2,4−ジ−tert−ブチルフェノール、2−tert−ブチル−4,6−ジメチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,4,6−トリ−tert−ブチルフェノール等のアルキルフェノール系重合禁止剤;アルキル化ジフェニルアミン、N,N′−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、フェノチアジン、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1,4−ジヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−ヒドロキシ−4−ベンゾイリオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等のアミン系重合禁止剤;2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル等のN−オキシル系重合禁止剤などが上げられるが、これに限定されるものではない。
【0039】
また、本発明の一形態には(E)成分として球状の樹脂ビーズを添加することができる。
【0040】
本発明の好ましい一形態は、さらに(E)成分として、球状の樹脂ビーズを含む光硬化性組成物である。
【0041】
板状の被着体を貼り合わせて仮固定する場合、仮固定剤にスペーサーとして球状の樹脂ビーズを添加することで略平行な樹脂層が形成されうる。当該原料具体的には、アクリルやウレタン製の樹脂ビーズなどが挙げられる。粒度分布がシャープな樹脂ビーズが好ましく、平均粒径としては10〜100μmが好ましい。10μm以上であると剥離作業の際に剥離しやすくなり、100μm以下であると塗膜の厚さが安定する。上記観点より、30〜70μmであることがより好ましい。
【0042】
本発明の一形態に係る光硬化性組成物は、本発明の特性を損なわない範囲において、その他のモノマーを添加してもよい。その他のモノマーとしては(A)成分以外の分子内にアクリル基またはメタクリル基を1つ以上有する化合物であることが、光硬化性組成物の粘度を下げることができる点より好ましい。
【0043】
これらの化合物の分子量は、光硬化性組成物の粘度低下の観点より、1000以下であることが好ましい。
【0044】
(A)成分以外の分子内にアクリル基またはメタクリル基を1つ以上有する化合物として使用できる1官能性モノマーの具体例としては、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、イソボルニルアクリレート、ベンジルアクリレート、フェニルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、フェノキシジエチレングリコールアクリレート、フェノキシテトラエチレングリコールアクリレート、ノニルフェノキシエチルアクリレート、ノニルフェノキシテトラエチレングリコールアクリレート、メトキシジエチレングリコールアクリレート、エトキシジエチレングリコールアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、ブトキシトリエチレングリコールアクリレート、2−エチルヘキシルポリエチレングリコールアクリレート、ノニルフェニルポリプロピレングリコールアクリレート、メトキシジプロピレングリコールアクリレート、グリシジルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、エチルカルビトールアクリレート、グリセロールアクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、ポリプロピレングリコールアクリレート、エピクロロヒドリン(以下ECHと略記)変性ブチルアクリレート、ECH変性フェノキシアクリレート、エチレンオキサイド(以下EOと略記)変性フタル酸アクリレート、EO変性コハク酸アクリレート、EO変性リン酸アクリレート等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0045】
(A)成分以外の分子内にアクリル基またはメタクリル基を1つ以上有する化合物として使用できる2官能性モノマーの具体例としては、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、ジシクロペンテニルジアクリレート、ジアクリロイルイソシアヌレート等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0046】
これらの化合物の具体例としては、市販品である株式会社日本触媒製の2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、新中村化学工業株式会社製のビスコート#190、共栄社化学株式会社製のライトアクリレートDCP−A等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0047】
(A)成分以外の分子内にアクリル基またはメタクリル基を1つ以上有する化合物の添加量としては、光硬化性組成物の粘度低下の観点より、(A)成分100質量部に対して、0.1〜70質量部であることが好ましく、0.1〜60質量部であることがより好ましい。
【0048】
さらに、本発明の一形態には、本発明の特性を損なわない範囲において顔料、染料などの着色剤、金属粉、炭酸カルシウム、タルク、シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム等の無機充填剤、難燃剤、有機充填剤、可塑剤、酸化防止剤、消泡剤、カップリング剤、レベリング剤、レオロジーコントロール剤等の添加剤を適量配合しても良い。これらの添加により樹脂強度・接着強さ・作業性・保存性等に優れた光硬化性組成物およびその硬化物が得られる。
【0049】
〔光硬化性組成物の製造方法〕
光硬化性組成物は、特に限定されないが、前記(A)〜(D)、および必要であれば他の成分を適宜混合し、攪拌することで製造することができる。各成分は、同時に混合してもよいし、逐次混合してもよい。たとえば、前記(A)〜(C)成分を混合、攪拌した後に(D)成分を混合、攪拌し、さらに他の成分を混合、攪拌する方法等が挙げられる。混合および攪拌温度、ならびに攪拌時間は、特に限定されず、適宜選択することができる。一例としては、特定成分の混合を25℃(室温)にて行い、その後30分間攪拌する方法等が挙げられる。また、攪拌に用いる装置等は公知のものを用いることができる。
【0050】
〔剥離用媒体〕
本発明の一形態の光硬化性組成物より形成される硬化物は、特定の剥離用媒体中で剥離性を有する。被着体の仮固定を充分に行えると共に、硬化物が被着体に残留すること無く剥離させるためには、90〜200℃の剥離用媒体中で剥離をさせることが必要である。
【0051】
本発明の一形態の光硬化性組成物よりなる硬化物が剥離性を示す剥離用媒体としては、90〜100℃の温水または100〜200℃の媒体が挙げられる。
【0052】
特に、100℃〜200℃の媒体中で剥離性を有することが、被着体の仮固定をする能力に優れ、加工作業時に外部からかかる応力に対しても剥離することなく仮固定ができる点から好ましい。
【0053】
100〜200℃の媒体としては、水と水溶性有機溶媒の混合物、または水溶性有機溶媒の単体を用いることができる。水と水溶性有機溶媒の混合物としては、水と沸点が100℃以上の水溶性有機溶剤の混合物を用いることが好ましい。
【0054】
本発明の好ましい一形態は、硬化物が100℃〜200℃の媒体中で剥離性を有するとき、媒体が、水、および沸点が100℃以上の水溶性有機溶剤の混合物である光硬化性組成物である。
【0055】
水溶性有機溶剤としては、たとえば単体または混合してエチレングリコール、プロピレングリコールなどを使用することができるができ、特定の温度を設定することができれば任意に混合することができる。
【0056】
光硬化性組成物は、その硬化物による剥離用媒体の汚染を低減し、剥離用媒体の交換頻度を低下することができるとの観点より、硬化物が剥離用媒体である温水、および媒体に対して溶解し難いことが好ましく、不溶であることがより好ましい。
【0057】
本発明の好ましい一形態は、硬化物が、剥離性を有する温水または媒体に対して不溶である光硬化性組成物である。
【0058】
[硬化物]
本発明の他の一形態は、90〜100℃の温水中で剥離性を有するか、または100〜200℃の媒体中で剥離性を有する、光硬化性組成物、または後述の仮固定剤を硬化させて得られた硬化物である。
【0059】
硬化物の硬度、強度、90℃温水中の剥離時間の測定方法、および120℃媒体中の剥離時間の測定方法は、実施例に記載の方法で測定することができる。各特性の好ましい条件についても、実施例中の測定方法の説明と合わせて記載する。
【0060】
本発明の一形態の光硬化性組成物から形成される硬化物は、光硬化性組成物に可視光線、紫外線、X線、電子線等のエネルギー線を照射することより形成することができる。照射するエネルギー線としては、紫外線であることが好ましい。ここで、紫外線の積算光量としては、1000〜4000mJ/cm
2であることが好ましい。
【0061】
本発明の一形態の光硬化性組成物を用いた被着体同士の仮固定は、たとえば、一方の被着体と他方の被着体の間に光硬化性組成物を配置させ、光硬化性組成物を介して被着体同士を貼り合せた状態で、エネルギー線を照射することにより行うことができる。光硬化性組成物の配置方法としては、たとえば、一方の被着体上に光硬化性組成物を配置させた後、光硬化性組成物塗工層上に他方の被着体を積層させる方法等が挙げられる。また、光硬化性組成物の配置方法としては、特に限定されないが、たとえば、バーコート法、フローコート法、ロールコート法、グラビアロール法、ワイヤバー法、リップダイコート法等の公知の方法により光硬化性組成物を塗布する方法や、光硬化性組成物を滴下する方法等が挙げられる。
【0062】
〔被着体〕
本発明の一形態の光硬化性組成物は、被着体を仮固定して、切削・研磨等の作業工程を行う用途に適しているが、これらの用途に限定されない。本発明の一形態の光硬化性組成物は、特に、無機物を仮固定して、切削・研磨等の作業工程を行う用途に適している。無機物の被着体としては、特に限定されないが、たとえば、シリコーンウェハ、サファイアガラス、セラミックス材料、ガラス(たとえば、光学用ガラスなど)、水晶、磁性材料などが挙げられる。本発明の一形態の光硬化性組成物は、特に板状の被着体を面同士で貼り合わせて仮固定するために用いることが好ましい。板状の被着体としては、たとえばガラス板などが挙げられる。
【0063】
本発明の他の一形態は、光硬化性組成物を硬化させることにより、被着体同士の貼り合わせに用いる、光硬化性組成物の使用方法である。
【0064】
本発明の他の一形態は、光硬化性組成物、または後述の仮固定剤により貼合された、2枚の被着体よりなる積層体である。
【0065】
〔仮固定剤〕
本発明の他の一形態は、光硬化性組成物からなる仮固定剤である。
【0066】
本発明の一形態の光硬化性組成物は、仮固定剤として好ましく用いることができる。本発明の一形態の光硬化性組成物と用いた被着体同士を仮固定は、一方の被着体と他方の被着体の間に光硬化性組成物を配置させ、光硬化性組成物を介して被着体同士を貼り合せた状態で、エネルギー線を照射することにより行うことができる。
【0067】
[剥離方法]
本発明の他の一形態は、光硬化性組成物、または仮固定剤から形成された硬化物により仮固定された2枚の被着体を、90〜100℃の温水中で剥離するか、または100〜200℃の媒体中で剥離する、剥離方法である。
【実施例】
【0068】
次に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0069】
[実施例1〜11、比較例1〜14]
90℃温水中にて剥離性を有する硬化物を形成する光硬化性組成物を調製するために下記成分を準備した(以下、光硬化性組成物を単に組成物と言う)。
【0070】
(A)成分:ウレタン結合を有さず、且つ、主骨格にエステル結合とエーテル結合から選択される少なくとも1種類の結合を有するアクリレート
・多官能ポリエステルアクリレート(アロニックス(登録商標)M−8060 東亜合成株式会社製)
・二官能ポリエステルアクリレート(アロニックス(登録商標)M−6200 東亜合成株式会社製)
・ビスフェノールAタイプエポキシアクリレート(EBECRYL(登録商標)3700 ダイセル・サイテック株式会社製)
・ポリエチレングリコールジアクリレート(ライトアクリレート9EG−A 共栄社化学株式会社製)。
【0071】
(A’)成分:ウレタン結合を有するアクリレート
・無黄変タイプオリゴウレタンアクリレート(UF−8001 共栄社化学株式会社製)
・フェニルグリシジルエーテルアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー(AH−600 共栄社化学株式会社製)。
【0072】
(B)成分:ジエチルアクリルアミドとジメチルアクリルアミドから選択される少なくとも1種類
・ジメチルアクリルアミド(DMAA 興人フィルム&ケミカルズ株式会社製)
・ジエチルアクリルアミド(DEAA 興人フィルム&ケミカルズ株式会社製)。
【0073】
(B’)成分:ジエチルアクリルアミドとジメチルアクリルアミド以外のアクリルアミド
・アクリロイルモルホリン(ACMO 興人フィルム&ケミカルズ株式会社製)
・ジメチルアミノエチルアクリレート塩化メチル4級塩(DMAEA−Q 興人フィルム&ケミカルズ株式会社製)
・ジメチルアミノプロピルアクリルアミド(DMAPAA 興人フィルム&ケミカルズ株式会社製)
・ジメチルアミノプロピルアクリルアミド塩化メチル4級塩(DMAPAA−Q 興人フ
ィルム&ケミカルズ株式会社製)
・ヒドロキシエチルアクリルアミド(HEAA 興人フィルム&ケミカルズ株式会社製)。
【0074】
(C)成分:水
・純水製造装置(Milli−Q メルク株式会社製)によりイオン交換された水。
【0075】
(D)成分:光開始剤
・1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(Suncure84 Chemark Chemical Co.,Ltd製)。
【0076】
その他のモノマー:(A)成分以外の分子内にアクリル基またはメタクリル基を1つ以上有する化合物
・2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA 株式会社日本触媒製)
・エチルカルビトールアクリレート(ビスコート#190 新中村化学工業株式会社製)
・ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート(ライトアクリレートDCP−A 共栄社化学株式会社製)。
【0077】
(E)成分:球状の樹脂ビーズ
・平均粒径50μmの架橋アクリルビーズ(アートパール(登録商標)SE−050T 根上工業株式会社製)。
【0078】
前記(A)〜(C)成分(比較例の場合は、(A’)成分と(B’)成分を含む場合あり)とその他のモノマーを秤量、混合して、30分間撹拌した。その後、(D)成分を秤量、混合して30分間攪拌した後、(E)成分を秤量、混合してさらに30分間攪拌した。詳細な調製量は表1に従い、数値は全て質量部で表記した。
【0079】
【表1】
【0080】
実施例1〜11、比較例1〜15の組成物に対して、外観確認、外観(貼合時)確認、組成物分離確認、硬度測定、90℃温水中の剥離時間確認を実施した。その結果を表2にまとめた。
【0081】
[組成物外観確認]
組成物をガラス瓶に入れて、25℃で放置した時の状態を目視で確認した。組成物の白濁度合いと分離状態を確認して、以下の三段階で評価を行い、「組成物外観」とした。組成物の取り扱いの観点から○または△であることが好ましい。
【0082】
○:無し
△:若干有り
×:有り。
【0083】
[貼合時外観確認]
厚さ0.7mm×幅100mm×長さ100mmのガラス板2枚を用いて組成物を貼り合わせた。紫外線照射装置にて、積算光量3000mJ/cm
2で紫外線を照射してテストピースを作製した。目視にて貼り合わせ部分を確認し、以下の三段階で評価を行い、「貼合時外観」とした。仮固定を行うに当たり、取り扱いの観点から○または△であることが好ましい。
【0084】
○:透明
△:白濁
×:分離。
【0085】
[硬度測定]
透明な円筒形プラスチック容器に、3mmの厚みで組成物を滴下した。紫外線照射装置にて、積算光量3000mJ/cm
2で紫外線を照射して板状の硬化物を作成した。当該硬化物を取り出して、照射とは逆の方向から再度、紫外線照射装置にて、積算光量3000mJ/cm
2で紫外線を照射した。これより、測定面が平滑な円形に成形した硬化物を作製した。硬度計はショアーD型硬度計を用いた。硬化物を測定台に置き、デュロメーターの加圧基準面を試料表面に水平に保ちながら、衝撃を伴うことなく速やかに測定面に5kgfの力で押しつけ、加圧基準面と試料を密着させた。操作が完了したら原則として、1秒以内に指針の最大指示値を「硬度(単位無し)」として読み取った。ショアー硬度はD20より硬く、D85より柔らかいことが好ましい。硬度がD20より柔らかいと、作業中の応力で被着体が脱落する恐れがある。一方、硬度がD85より硬いと、脆くなりすぎて作業中の応力で硬化物に亀裂が入る恐れがある。
【0086】
[90℃温水中の剥離時間測定]
貼合時外観確認と同様に、厚さ0.7mm×幅100mm×長さ100mmのガラス板を2枚を用いてテストピースを作成した。90℃に設定したウォーターバスにテストピースを浸漬し、硬化物とガラス板が剥離するまでの時間を測定し、「90℃剥離時間(分)」とした。ここで、剥離しない場合は、「不可」と表記した。剥離時間は作業性の観点から、10分以内に剥離することが好ましい。10分より長くかかるまたは剥離しない場合、剥離作業において時間かかかりすぎて、次の処理工程に支障が発生する。
【0087】
なお、実施例1〜11および比較例1〜15の組成物より形成される硬化物は、温水に対して不溶であった。
【0088】
[強度測定]
実施例1と2に対して、引張せん断接着強さ測定と90度剥離接着強さ測定を行った。
【0089】
引張剪断接着強さには、厚さ5mm×幅25mm×長さ100mmのガラス板同士を被着体として、25mm×5mmの接着面で貼り合わせて、治具で固定を行った。紫外線照射装置にて、積算光量3000mJ/cm
2で紫外線を照射してテストピースを作製した。このテストピースを用いて、引張試験器により、速度200mm/minで剪断方向に引っ張って測定を行ったが、いずれも被着体が材料破壊をして数値を測定することができなかった。
【0090】
90度剥離接着強さ測定には、被着体として厚さ5mm×幅25mm×長さ100mmのガラス板と厚さ50μm×幅20mm×長さ200mmのPETフィルムを使用した。PETフィルムを、組成物を用いて、20mm×20mmの接着面でガラス板と貼り合わせた。組成物の厚みはマスキングを行い、未硬化の状態で50μmに設定した。紫外線照射装置にて、積算光量3000mJ/cm
2で紫外線を照射してテストピースを作成した。テストピースのガラス板側を引張試験器のチャックに固定して、ガラス板に対して垂直方向にPETフィルムを速度200mm/minで引っ張った。「最大強度(N)」を測定して「剥離接着強さ(N/20mm)」とした。その結果、実施例1は0.098N/20mm、実施例2は0.098N/20mmであった。組成物は、せん断方向の強度は十分発現する。一方、90℃温水中で硬化物を剥離させる際には、加工作業において剥離方向の強度が0.050N/20mm以上あれば加工作業において被着体の脱落は発生しない。
【0091】
【表2】
【0092】
明確な理由は解明されていないが、(A)成分および(A´)成分であるアクリル基を有する化合物の親水性官能基の割合違いで外観観察における分離状態が異なると考えられる。特に、分子内に2以上のアクリル基を有する化合物としては、(A)成分であるウレタン結合を有さず、且つ、主骨格にエステル結合またはエーテル結合から選択される少なくとも1種類の結合を有する、分子内に2以上のアクリル基を有する化合物で表される特定の構造のオリゴマーが好ましい。組成物外角確認と貼合時外観確認において、分離しているものは海島構造が現れる傾向があり、被着体同士が密着していない恐れがある。実施例1〜11においては、分離が発生しておらず仮固定剤として使用することができる。一方、ウレタン結合を有するアクリル基を有する化合物を含む比較例4、5および15においては、分離が発生しており仮固定剤としては適していない。
【0093】
また、実施例1〜11において、90℃以上の温度の温水で剥離を行うとガラス板の貼り合わせ面の内部から剥離が見られるため仮固定剤として適する。一方、(B)成分および(C)成分を含まない比較例1〜5、(B)成分を含むが(C)成分の添加量が適していない比較例6〜9、(B)成分以外のアクリルアミド化合物を使用した比較例10〜14では、組成物または硬化物の分離が発生するか、または剥離ができず、仮固定剤としては適していない。
【0094】
[実施例12〜15]
さらに、100〜200℃の媒体中で剥離性を有する硬化物を形成する組成物について以下に説明する。組成物を調製するため、前記(A)〜(C)成分とその他のモノマーを秤量、混合して30分間撹拌した。その後、(D)成分を秤量、混合して30分間攪拌した後、(E)成分を秤量、混合してさらに30分間撹拌した。詳細な調製量は表3に従い、数値は全て質量部で表記した。実施例12〜15に対して、組成物外観確認、貼合時外観確認、硬度測定、120℃媒体中の剥離時間確認を実施した。組成物外観確認、貼合時外観確認および硬度測定は前記実施例1〜11および比較例1〜15の試験方法に従う。その結果を表4にまとめた。
【0095】
【表3】
【0096】
[120℃媒体中の剥離時間確認]
貼合時外観確認と同様に、厚さ0.7mm×幅100mm×長さ100mmのガラス板を2枚を用いてテストピースを作製した。剥離用媒体は、水とエチレングリコールの混合媒体(エチレングリコール 80質量%)をオイルバスに満たして使用した。120℃に設定したオイルバスにテストピースを浸漬し、硬化物とガラス板が剥離するまでの時間を測定し、「120℃剥離時間(分)」とした。ここで、剥離しない場合は、「不可」と表記する。剥離時間は作業性の観点から、10分以内に剥離することが好ましい。10分より長くかかるまたは剥離しない場合、剥離作業において時間かかかりすぎて、次の処理工程に支障が発生する。
【0097】
なお、実施例12〜15の組成物より形成される硬化物は、混合媒体に対して不溶であった。
【0098】
[強度測定]
前記強度測定と同様の方法で、実施例13と実施例15に関して、引張せん断接着強さ測定と90度はく離接着強さ測定を行った。引張せん断接着強さ測定では、いずれも被着体材料破壊であり測定することができなかった。一方、90度剥離接着強さ測定では、実施例13は0.180N/20mm、実施例15は0.185N/20mmであった。組成物は、せん断方向の強度は十分発現する。一方、120℃媒体中で硬化物を剥離させる際には、加工作業において剥離方向の強度が0.100N/20mm以上あれば加工作業において被着体の脱落は発生しない。
【0099】
【表4】
【0100】
(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して(C)成分の添加量が8〜25質量部を外れる場合(比較例1〜9)、90〜100℃の温水で剥離を行うことが出来ないが、(C)成分の添加量が1〜8質量部の場合は、100〜200℃の媒体中では剥離が十分に発揮された(実施例12〜15)。表2の実施例1〜11と同様に、実施例12〜15においてはガラス板の貼合面内部から剥離が見られた。これより、実施例12〜15の組成物は、好ましい剥離性を有する仮固定剤であることが確認された。