特許第6443341号(P6443341)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6443341光反射フィルムおよびこれを用いた光反射体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6443341
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】光反射フィルムおよびこれを用いた光反射体
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/28 20060101AFI20181217BHJP
   G02B 5/26 20060101ALI20181217BHJP
   G02B 1/14 20150101ALI20181217BHJP
   G02B 5/22 20060101ALI20181217BHJP
   B32B 7/02 20060101ALI20181217BHJP
【FI】
   G02B5/28
   G02B5/26
   G02B1/14
   G02B5/22
   B32B7/02 103
【請求項の数】8
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2015-553515(P2015-553515)
(86)(22)【出願日】2014年12月12日
(86)【国際出願番号】JP2014083038
(87)【国際公開番号】WO2015093413
(87)【国際公開日】20150625
【審査請求日】2017年9月26日
(31)【優先権主張番号】特願2013-261319(P2013-261319)
(32)【優先日】2013年12月18日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】高 友香子
【審査官】 大竹 秀紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−148661(JP,A)
【文献】 特開2012−030599(JP,A)
【文献】 特表2010−504873(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/183544(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/28
G02B 5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーを含む高屈折率層とポリマーを含む低屈折率層とが積層されてなる積層体を少なくとも1つ以上有する反射層と、
一方の最外層に配置される粘着層と、
他方の最外層に配置されるハードコート層と、を含む光反射フィルムにおいて、
前記粘着層の弾性率と前記ハードコート層の弾性率とが下記式(1)を満たし、
前記粘着層とガラスとの貼付け時点の即粘着力が2〜8N/25mmであることを特徴とする、光反射フィルム。
式(1)ハードコート層の弾性率[Pa]/粘着層の弾性率[Pa]≧3
【請求項2】
貼付け時点の前記粘着層とガラスとの即粘着力が4〜8N/25mmであり、
貼付け状態のまま、30℃、湿度60%RHの条件で1週間放置した時点の前記粘着層とガラスとの経時粘着力が7〜15N/25mmであることを特徴とする、請求項1に記載の光反射フィルム。
【請求項3】
前記経時粘着力が10〜15N/25mmであることを特徴とする請求項2に記載の光反射フィルム。
【請求項4】
前記高屈折率層および前記低屈折率層に含まれるポリマーが、ポリエステル、ポリカーボネートおよびポリ(メタ)アクリレートからなる群から選択される少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の光反射フィルム。
【請求項5】
前記高屈折率層および前記低屈折率層に含まれるポリマーが、ポリビニルアルコール系樹脂を少なくとも1種含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の光反射フィルム。
【請求項6】
前記ハードコート層が熱線遮蔽性微粒子を含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の光反射フィルム。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の光反射フィルムを光透過性基体に貼り付けた光反射体。
【請求項8】
前記光透過性基体が曲面を有する、請求項7に記載の光反射体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光反射フィルムおよびこれを用いた光反射体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、省エネルギー対策への関心が高まり、建物や車両の窓ガラスから、太陽光の中、熱線の透過を遮断する近赤外光反射フィルムの開発が盛んに行われる様になってきている。これにより冷房設備にかかる負荷を減らすことが出来、省エネルギー対策として有効だからである。
【0003】
近年、近赤外光反射フィルムとして、高屈折率層と低屈折率層とを交互に積層させた積層膜が、特定波長の光を選択的に反射させることが理論的に裏付けられた(特表2002−509279号公報)。
【0004】
また、特開2011−183742号公報ではプラスチックフィルム層と、窓との吸着面を有するシリコーンゴム層とを含む、窓貼り用積層フィルムが開示され、前記窓貼り用積層フィルムは、容易に貼り剥がしが可能であり、耐候性に優れていることが記載されている。
【0005】
一方、特開2013−80221号公報では、少なくとも1種の金属粒子を含有する金属粒子含有層(すなわち、熱線遮蔽層)と粘着層とを有する熱線遮蔽材が、高い遮熱性能(日照反射率)を有すること、ガラスに貼り合わせた場合の遮熱耐久性に優れること、被着体への貼り直しが容易であること、および被着体への粘着力が良好であることが記載されている。
【発明の概要】
【0006】
このような状況のもと、本発明者が特表2002−509279号公報に記載されている高屈折率層及び低屈折率層を用いた積層膜に、特開2011−183742号公報及び特開2013−80221号公報に記載の構成を取り入れ、熱線の透過を遮断する光反射フィルムとしての使用を試みたところ、該光反射フィルム(赤外遮蔽フィルム)では、例えばガラスの曲面に貼り付ける際に、フィルムと被着体との密着性が確保できず、さらにフィルムの貼り直しのためにフィルムを被着体から剥離する際に、糊残りが起こり、再度張り付けた際に密着性が悪く剥がれてしまうと言う問題が生じた。
【0007】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、曲面を持つ被着体への密着性を確保しつつ、貼り直しのためにフィルムを被着体から剥がした際に糊残りが少なく、再度貼付けが可能であり、耐久性および遮熱性能に優れた光反射フィルムを提供することを目的とする。
【0008】
本発明者は、上記の問題を解決すべく、鋭意研究を行った。
【0009】
その結果、ポリマーを含む高屈折率層およびポリマーを含む低屈折率層が積層された積層体を有する反射層と、一方の最外層に配置される粘着層と、他方の最外層に配置されるハードコート層と、を含む光反射フィルムであり、前記粘着層の弾性率と前記ハードコート層の弾性率との比が一定の値を満たし、さらに、前記粘着層とガラスとの貼付け時点の即粘着力も一定の値を満たすことで上記課題が解決できることを見出した。
【0010】
すなわち、本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
【0011】
1.ポリマーを含む高屈折率層とポリマーを含む低屈折率層とが積層されてなる積層体を少なくとも1つ以上有する反射層と、一方の最外層に配置される粘着層と、他方の最外層に配置されるハードコート層と、を含む光反射フィルムにおいて、前記粘着層の弾性率と前記ハードコート層の弾性率とが式(1)ハードコート層の弾性率[Pa]/粘着層の弾性率[Pa]≧3を満たし、前記粘着層とガラスとの貼付け時点の即粘着力が2〜8N/25mmであることを特徴とする、光反射フィルム。
【0012】
2.貼付け時点の前記粘着層とガラスとの即粘着力が4〜8N/25mmであり、貼付け状態のまま、30℃、湿度60%RHの条件で1週間放置した時点の前記粘着層とガラスとの経時粘着力が7〜15N/25mmであることを特徴とする、前記1.に記載の光反射フィルム。
【0013】
3.前記経時粘着力が10〜15N/25mmであることを特徴とする前記2.に記載の光反射フィルム。
【0014】
4.前記高屈折率層および前記低屈折率層に含まれるポリマーが、ポリエステル、ポリカーボネートおよびポリ(メタ)アクリレートからなる群から選択される少なくとも1種を含むことを特徴とする前記1.〜3.のいずれかに記載の光反射フィルム。
【0015】
5.前記高屈折率層および前記低屈折率層に含まれるポリマーが、ポリビニルアルコール系樹脂を少なくとも1種含有することを特徴とする前記1.〜4.のいずれかに記載の光反射フィルム。
【0016】
6.前記フィルムに熱線遮蔽性微粒子を含有することを特徴とする前記1.〜5.のいずれかに記載の光反射フィルム。
【0017】
7.前記1.〜6.のいずれか1項に記載の光反射フィルムを光透過性基体に貼り付けた光反射体。
【0018】
8.前記光透過性基体が曲面を有する、前記7.に記載の光反射体。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態に用いられる光反射フィルム(赤外遮蔽フィルム)の一般的な構成を示す概略断面図である。
図2】本発明の他の一実施形態に用いられる光反射フィルム(赤外遮蔽フィルム)の一般的な構成を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本形態に係る光反射フィルムは、ポリマーを含む高屈折率層とポリマーを含む低屈折率層とが積層されてなる積層体を少なくとも1つ以上有する反射層と、一方の最外層に配置される粘着層と、他方の最外層に配置されるハードコート層と、を含む光反射フィルムにおいて、前記粘着層と前記ハードコート層との弾性率が式(1)ハードコート層の弾性率[Pa]/粘着層の弾性率[Pa]≧3を満たし、前記粘着層とガラスとの貼付け時点の即粘着力が2〜8N/25mmであることを特徴とする。かような構成を有する本発明によれば、被着体(特に曲面を有するもの)への密着性を確保しつつ、貼り直しのためにフィルムを被着体から剥がした際に糊残りが少なく、再度貼付けが可能であり、耐久性および遮熱性能に優れた光反射フィルムを提供することができる。
【0021】
以下、添付した図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0022】
図1は、本発明の一実施形態に用いられる光反射フィルム(赤外遮蔽フィルム)の一般的な構成を示す概略断面図である。
【0023】
図1に示すように、本実施形態の光反射フィルム1は、基材11と、基材11両面に形成された下引層12と、基材11両面の下引層12上に形成された反射層13とを有する。基材11両面に形成された各反射層13は、低屈折率層14と、高屈折率層15とが積層されてなる積層体(積層体とは、低屈折率層14と、高屈折率層15とが1層ずつ積層された2層からなる構造のことを言う。)を少なくとも1つ以上有してなるように構成されている。また、具体的には、図1に示す本実施形態では、積層体数が4.5個からなる構成であって、基材側の最下層と最上層に低屈折率層14が配置されるように、5層の低屈折率層14と、4層の高屈折率層15とを交互に積層した9層重層品(反射層13)が、基板11の両面にそれぞれ形成された構成となっている。本実施形態では、基材11の片面(例えば、太陽光Lが差し込む側とは反対側の屋内側の面)の9層重層品(反射層13)の最上層の低屈折率層14上に透明なハードコート層(HC層)16が形成されている。また、基材11のもう一方の面(例えば、自動車窓などの基体18に貼りつけられる面)の9層重層品(反射層13)の最上層の低屈折率層14上には粘着層17が形成されている。この場合には、自動車窓や建物のガラス窓などの基体18の屋内(車内または室内)側に光反射フィルム1を貼りつければよい(図1では基体18に光反射フィルム1を貼りつけた後の様子を表している)。また、本実施形態では、基材11両面上に下引層12を形成した例を示したが、下引層12を形成することなく、基材11上に直接、反射層13を形成してもよい。また、粘着層17の上には、剥離層(図示せず)を設けておき、基体18に貼りつける際に、この剥離層を剥がすようにしてもよい。同様に、ハードコート層(HC層)16の上にも、剥離層(図示せず)を設けておき、基体18に貼りつけた後に、この剥離層を剥がすようにしてもよい。また、他の層(例えば、導電性層、帯電防止層、ガスバリア層、易粘着層、防汚層、消臭層、流滴層、易滑層、耐摩耗性層、反射防止層、電磁波シールド層、紫外線吸収層、赤外線吸収層、印刷層、蛍光発光層、ホログラム層、剥離層、粘着層、粘着層、本発明の高屈折率層および低屈折率層以外の赤外線カット層(金属層、液晶層)、着色層(可視光線吸収層)、合わせガラスに利用される中間膜層などの機能層の1つ以上)を単独もしくは適当に組み合わせて用いてもよい。
【0024】
図2は、本発明の他の一実施形態に用いられる光反射フィルム(赤外遮蔽フィルム)の一般的な構成を示す概略断面図である。図2に示すように、本実施形態の光反射フィルム1’は、基材11と、基材11上に形成された下引層12と、下引層12上に形成された反射層13を有する。反射層13は、低屈折率層14と、高屈折率層15とが積層された積層体を少なくとも1つ以上有してなるように構成されている。具体的には、図2に示す本実施形態では、4.5個の積層体が2組含まれる構成であって、基材側の最下層と最上層に低屈折率層14が配置されるように、5層の低屈折率層14と、4層の高屈折率層15とを交互に積層した9層重層品が形成され、更にその上に、同様の構成となるように5層の低屈折率層14と、4層の高屈折率層15とを交互に積層した9層重層品が形成された片面18層重層品(反射層13)の構成となっている。本実施形態では、基材11の片面(例えば、太陽光Lが差し込む側とは反対側の屋内側の面)の18層重層品(反射層13)の最上層の低屈折率層14上に透明なハードコート層(HC層)16が形成されており、基材11のもう一方の面(例えば、自動車窓などの基体18に貼りつけられる面)上に粘着層17が形成されている。この場合には、自動車窓や建物のガラス窓などの基体18の屋内(車内または室内)側に光反射フィルム1’を貼りつければよい(図2でも基体18に光反射フィルム1’を貼りつけた後の様子を表している)。また、本実施形態では、基材11片面に下引層12を形成した例を示したが、下引層12を形成することなく、基材11上に直接、反射層13を形成してもよい。また、粘着層17の上には、剥離層(図示せず)を設けておき、基体18に貼りつける際に、この剥離層を剥がすようにしてもよい。同様に、ハードコート層(HC層)16の上にも、剥離層(図示せず)を設けておき、基体18に貼りつけた後に、この剥離層を剥がすようにしてもよい。また、他の層(例えば、導電性層、帯電防止層、ガスバリア層、易粘着層、防汚層、消臭層、流滴層、易滑層、耐摩耗性層、反射防止層、電磁波シールド層、紫外線吸収層、赤外線吸収層、印刷層、蛍光発光層、ホログラム層、剥離層、粘着層、粘着層、本発明の高屈折率層および低屈折率層以外の赤外線カット層(金属層、液晶層)、着色層(可視光線吸収層)、合わせガラスに利用される中間膜層などの機能層の1つ以上)を単独もしくは適当に組み合わせて用いてもよい。
【0025】
本発明の光反射フィルムの全体の厚みは、好ましくは12μm〜315μm、より好ましくは15μm〜200μm、さらに好ましくは20μm〜100μmである。
【0026】
<基材>
本発明の光反射フィルムは基材を有していてもよい。適用可能な基材としては、フィルム支持体であることが好ましく、フィルム支持体は、透明であっても不透明であってもよく、種々の樹脂フィルムを用いることができる。例えば、ポリオレフィンフィルム(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリエステルフィルム(ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリ塩化ビニル、3酢酸セルロース等を用いることができ、好ましくはポリエステルフィルムである。ポリエステルフィルム(以降ポリエステルと称す)としては、特に限定されるものではないが、ジカルボン酸成分とジオール成分を主要な構成成分とするフィルム形成性を有するポリエステルであることが好ましい。
【0027】
また、本発明において用いられる基材としては、上記に挙げたもののほか、低屈折率層と高屈折率層とが積層されてなる積層体(誘電体多層膜)が自己支持性を有する場合には当該誘電体多層膜を使用することもできる。自己支持性を有する誘電体多層膜としては、特に制限されないが、たとえば例えば共押出法や共流涎法にて作製された誘電体多層膜等が挙げられる。
【0028】
本発明に用いられる基材の厚みは、10〜300μm、特に20〜150μmであることが好ましい。また、本発明の基材は、2枚以上重ねたものであっても良く、この場合、その種類が同じでも異なってもよい。
【0029】
<反射層>
本発明において、光反射フィルムは、ポリマーを含む高屈折率層および低屈折率層が積層された積層体(ユニット)を少なくとも1つ以上有する反射層を有する。前記高屈折率層と前記低屈折率層とは、以下のように考える。
【0030】
例えば、高屈折率層を構成する成分(以下、高屈折率層成分)と低屈折率層を構成する成分(以下、低屈折率層成分)とが、ふたつの層の界面で混合され、高屈折率層成分と低屈折率層成分とを含む層(混合層)が形成される場合がある。この場合、混合層において、高屈折率層成分が50質量%以上である部位の集合を高屈折率層とし、低屈折率層成分が50質量%を超える部位の集合を低屈折率層とする。具体的には、低屈折率層が、例えば、低屈折率成分として第1の金属酸化物を、また、高屈折率層は高屈折率成分として第2の金属酸化物を含有している場合、これらの積層膜における膜厚方向での金属酸化物濃度プロファイルを測定し、その組成によって、高屈折率層または低屈折率層とみなすことができる。積層膜の金属酸化物濃度プロファイルは、スパッタ法を用いて表面から深さ方向へエッチングを行い、XPS表面分析装置を用いて、最表面を0nmとして、0.5nm/minの速度でスパッタし、原子組成比を測定することで観測することが出来る。また、低屈折率成分または高屈折率成分に金属酸化物粒子が含有されておらず、高屈折率層または低屈折率層の一方が水溶性樹脂(有機バインダー)のみから形成されている積層体においても、同様にして、水溶性樹脂(有機バインダー)濃度プロファイルにて、例えば、膜厚方向での炭素濃度を測定することにより混合領域が存在していることを確認し、さらにその組成をEDXにより測定することで、スパッタでエッチングされた各層が、高屈折率層または低屈折率層とみなすことができる。
【0031】
前記反射層は、基材上に、ポリマーを含む高屈折率層および低屈折率層が交互に積層された積層体(ユニット)を少なくとも1つ以上有する構成であればよいが、高屈折率層および低屈折率層の総数の上限としては、100層以下、すなわち50ユニット以下であることが好ましい。また、本発明の光反射フィルムは、上記基材上にユニットを少なくとも1つ以上有する構成であればよく、たとえば、積層膜の最表層や最下層のどちらも高屈折率層または低屈折率層となる積層膜であってもよい。
【0032】
本発明の光反射フィルム(赤外遮蔽フィルム)において、高屈折率層の好ましい屈折率としては1.70〜2.50であり、より好ましくは1.80〜2.20であり、さらに好ましくは1.90〜2.20である。また、本発明の低屈折率層は、屈折率が1.10〜1.60であることが好ましく、1.30〜1.55であるのがより好ましく、1.30〜1.50がさらに好ましい。
【0033】
光反射フィルム(赤外遮蔽フィルム)においては、高屈折率層と低屈折率層の屈折率の差を大きく設計することが、少ない層数で赤外反射率を高くすることができる観点から好ましいが、本発明では、高屈折率層と低屈折率層から構成されるユニットの少なくとも1つにおいて、隣接する該高屈折率層と低屈折率層との屈折率差が0.1以上であることが好ましく、より好ましくは0.3以上であり、さらに好ましくは0.4以上である。
【0034】
また、本発明の光反射フィルム(赤外遮蔽フィルム)においては、隣接する高屈折率層と低屈折率層との屈折率差が0.1以上であることが好ましいが、高屈折率層と低屈折率層を上記のようにそれぞれ複数層有する場合には、全ての屈折率層が本発明で規定する要件を満たすことが好ましい。ただし、最表層や最下層に関しては、本発明で規定する要件外の構成であってもよい。
【0035】
特定波長領域の反射率は、隣接する2層(高屈折率層と低屈折率層)の屈折率差と積層数で決まり、屈折率差が大きいほど、少ない層数で同じ反射率を得られる。この屈折率差と必要な層数については、市販の光学設計ソフトを用いて計算することができる。たとえば、赤外遮蔽率90%以上を得るためには、屈折率差が0.1より小さいと、100層を超える積層が必要になり、生産性が低下するだけでなく、積層界面での散乱が大きくなり、透明性が低下する。反射率の向上と層数を少なくする観点からは、屈折率差に上限はないが、実質的には1.40程度が限界である。
【0036】
上記屈折率差は、高屈折率層、低屈折率層の屈折率を下記の方法に従って求め、両者の差分を屈折率差とする。
【0037】
(必要により基材を用いて)各屈折率層を単層で作製し、このサンプルを10cm×10cmに断裁した後、下記の方法に従って屈折率を求める。分光光度計として、U−4000型(日立製作所社製)を用いて、各サンプルの測定面とは反対側の面(裏面)を粗面化処理した後、黒色のスプレーで光吸収処理を行って裏面での光の反射を防止して、5度正反射の条件にて可視光領域(400nm〜700nm)の反射率を25点測定して平均値を求め、その測定結果より平均屈折率を求める。
【0038】
[低屈折率層と高屈折率層]
本明細書において、「高屈折率層」および「低屈折率層」なる用語は、隣接した2層の屈折率差を比較した場合に、屈折率が高い方の屈折率層を高屈折率層とし、低い方の屈折率層を低屈折率層とすることを意味する。したがって、「高屈折率層」および「低屈折率層」なる用語は、光反射フィルムを構成する各屈折率層において、隣接する2つの屈折率層に着目した場合に、各屈折率層が同じ屈折率を有する形態以外のあらゆる形態を含むものである。
【0039】
さらには、本発明の光反射フィルムの光学特性として、JIS R3106−1998により測定される可視光領域の透過率が50%以上であり、かつ、波長900nm〜1400nmの領域に反射率50%を超える領域を有することが好ましい。
【0040】
屈折率層の1層あたりの厚み(乾燥後の厚み)は、20〜1000nmであることが好ましく、50〜500nmであることがより好ましい。
【0041】
[ポリマー]
低屈折率層及び高屈折率層は必須にポリマー材料を含む。屈折率層を形成するのがポリマー材料であれば、塗布やスピンコートなどの成膜方法が選択可能となる。これらの方法は簡便であり、基材の耐熱性を問わないので選択肢が広く、特に樹脂基材に対して有効な成膜方法といえる。たとえば塗布型ならばロール・ツー・ロール法などの大量生産方式が採用でき、コスト面でもプロセス時間面でも有利になる。また、ポリマー材料を含む膜はフレキシブル性が高いため、生産時や運搬時に巻き取りを行っても、これらの欠陥が発生しづらく、取扱性に優れているという長所がある。
【0042】
高屈折率層に含まれるポリマーは、成膜性が良好であるため、ポリエステル、ポリカーボネートおよびポリ(メタ)アクリレートからなる群から選択される少なくとも1種を含む。屈折率層を構成するポリマーは1種であってもよいし、2種以上であってもよい。ポリエステル、ポリカーボネートおよびポリ(メタ)アクリレートのポリマー中の含有率は、上記効果を鑑みると、ポリマー全質量に対して60〜100質量%であることが好ましく、80〜100質量%であることがより好ましい。
【0043】
ポリエステルは、ジカルボン酸成分とジオール成分とが重縮合して得られる構造を有する。ポリエステルは共重合体であっても良い。ポリエステルとして用いうるものとしては、例えば、ポリエチレンナフタレート(PEN)およびその異性体(例えば、2,6−、1,4−、1,5−、2,7−、および2,3−PEN)、ポリアルキレンテレフタレート(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、およびポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)、ポリエチレンジフェニルレートなどが挙げられる。中でも、赤外遮蔽効果が高く、また安価であり、非常に多岐にわたる用途に用いることができるので、ポリアルキレンテレフタレート、ポリアルキレンナフタレートであることが好ましく、ポリアルキレンテレフタレートであることがより好ましく、ポリエチレンテレフタレートであることがさらに好ましい。
【0044】
ポリ(メタ)アクリレートとしては、アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルの重合体であり、例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレートが挙げられる。
【0045】
高屈折率層に含まれるポリエステル、ポリカーボネートおよびポリ(メタ)アクリレートの重量平均分子量は、10000〜1000000程度であり、50000〜800000であることが好ましい。なお、重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定した値を採用する。
【0046】
高屈折率層には、ポリエステル、ポリカーボネートおよびポリ(メタ)アクリレート以外のその他のポリマーを含んでいてもよい。その他のポリマーとしては、下記低屈折率層に用いられるポリマーとして列挙したポリマーが挙げられる。
【0047】
低屈折率層に含まれるポリマーとしては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレンナフタレート(PEN)およびその異性体(例えば、2,6−、1,4−、1,5−、2,7−、および2,3−PEN)、ポリアルキレンテレフタレート(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、およびポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)、ポリイミド(例えば、ポリアクリル酸イミド)、ポリエーテルイミド、アタクチックポリスチレン、ポリカーボネート、ポリメタクリレート(例えば、ポリイソブチルメタクリレート、ポリプロピルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、およびポリメチルメタクリレート)、ポリ(メタ)アクリレート(例えば、ポリブチルアクリレートおよびポリメチルアクリレート)、セルロース誘導体(例えば、エチルセルロース、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酢酸セルロースブチレート、および硝酸セルロース)、ポリアルキレンポリマー(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリイソブチレン、およびポリ(4−メチル)ペンテン)、フッ素化ポリマー(例えば、パーフルオロアルコキシ樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素化エチレン−プロピレンコポリマー、ポリフッ化ビニリデン、およびポリクロロトリフルオロエチレン)、塩素化ポリマー(例えば、ポリ塩化ビニリデンおよびポリ塩化ビニル)、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリエーテルアミド、アイオノマー樹脂、エラストマー(例えば、ポリブタジエン、ポリイソプレン、およびネオプレン)、ならびにポリウレタンが挙げられる。コポリマー、例えば、PENのコポリマー(例えば、2,6−、1,4−、1,5−、2,7−、および/または2,3−ナフタレンジカルボン酸あるいはそれらのエステルと、(a)テレフタル酸もしくはそのエステル、(b)イソフタル酸もしくはそのエステル、(c)フタル酸もしくはそのエステル、(d)アルカングリコール、(e)シクロアルカングリコール(例えば、シクロヘキサンジメタノールジオール)、(f)アルカンジカルボン酸、および/または(g)シクロアルカンジカルボン酸(例えば、シクロヘキサンジカルボン酸)とのコポリマー)、ポリアルキレンテレフタレートのコポリマー(例えば、テレフタル酸もしくはそのエステルと、(a)ナフタレンジカルボン酸もしくはそのエステル、(b)イソフタル酸もしくはそのエステル、(c)フタル酸もしくはそのエステル、(d)アルカングリコール、(e)シクロアルカングリコール(例えば、シクロヘキサンジメタノールジオール)、(f)アルカンジカルボン酸、および/または(g)シクロアルカンジカルボン酸(例えば、シクロヘキサンジカルボン酸)とのコポリマー)、スチレンコポリマー(例えば、スチレン−ブタジエンコポリマーおよびスチレン−アクリロニトリルコポリマー)、ならびに4,4’−二安息香酸およびエチレングリコールのコポリマーなども利用できる。更に、個々の層にはそれぞれ、2つ以上の上記のポリマーまたはコポリマーのブレンド(例えば、sPSとアタクチックポリスチレンとのブレンド)が含まれていてもよい。
【0048】
上記のうち、低屈折率層に含まれるポリマー材料としては、赤外遮蔽効果の点からポリ(メタ)アクリレート、ポリアルキレンポリマー、セルロース誘導体などが好ましい。
【0049】
低屈折率層に含まれるポリマーの重量平均分子量は、10000〜1000000程度であり、50000〜800000であることが好ましい。なお、重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定した値を採用する。
【0050】
また、低屈折率層中、ポリマーの含有量は、低屈折率の全固形分に対して、50〜100質量%、より好ましくは70〜100質量%である。
【0051】
[ポリビニルアルコール系樹脂]
本発明では、別の形態として前記高屈折率層および前記低屈折率層に含まれるポリマーが、ポリビニルアルコール系樹脂を少なくとも1種含有することが好ましい。
【0052】
前記ポリビニルアルコール系樹脂としては、ポリ酢酸ビニルを加水分解して得られる通常のポリビニルアルコールの他、各種の変性ポリビニルアルコールも含まれる。
【0053】
酢酸ビニルを加水分解して得られるポリビニルアルコールは、平均重合度が1,000以上であることが好ましく、平均重合度が1,500〜5,000であることが特に好ましい(高屈折率層:PVA−124、重合度2400、ケン化度88mol%、低屈折率層:)。また、ケン化度は、70〜100%であることが好ましく、80〜99.9%であることが特に好ましい。
【0054】
変性ポリビニルアルコールとしては、カチオン変性ポリビニルアルコール、アニオン変性ポリビニルアルコール、ノニオン変性ポリビニルアルコール、ビニルアルコール系ポリマーが挙げられる。また、酢酸ビニル系樹脂(例えば、株式会社クラレ製「エクセバール」)、ポリビニルアルコールにアルデヒドを反応させて得られるポリビニルアセタール樹脂(例えば、積水化学工業株式会社製「エスレック」)、シラノール基を有するシラノール変性ポリビニルアルコール(例えば、株式会社クラレ製「R−1130」)、分子内にアセトアセチル基を有する変性ポリビニルアルコール系樹脂(例えば、日本合成化学工業株式会社製「ゴーセファイマー(登録商標)Z/WRシリーズ」)等もポリビニルアルコール系樹脂に含まれる。
【0055】
アニオン変性ポリビニルアルコールは、例えば、特開平1−206088号公報に記載されているようなアニオン性基を有するポリビニルアルコール、特開昭61−237681号公報および同63−307979号公報に記載されているようなビニルアルコールと水溶性基を有するビニル化合物との共重合体、および特開平7−285265号公報に記載されているような水溶性基を有する変性ポリビニルアルコールが挙げられる。
【0056】
また、ノニオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば、特開平7−9758号公報に記載されているようなポリアルキレンオキサイド基をビニルアルコールの一部に付加したポリビニルアルコール誘導体、特開平8−25795号公報に記載されているような疎水性基を有するビニル化合物とビニルアルコールとのブロック共重合体、シラノール基を有するシラノール変性ポリビニルアルコール、アセトアセチル基やカルボニル基、カルボキシル基などの反応性基を有する反応性基変性ポリビニルアルコール等が挙げられる。
【0057】
カチオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば、特開昭61−10483号公報に記載されているような、第1級〜第3級アミノ基や第4級アンモニウム基を上記ポリビニルアルコールの主鎖または側鎖中に有するポリビニルアルコールであり、カチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体と酢酸ビニルとの共重合体をケン化することにより得られる。
【0058】
カチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体としては、例えば、トリメチル−(2−アクリルアミド−2,2−ジメチルエチル)アンモニウムクロライド、トリメチル−(3−アクリルアミド−3,3−ジメチルプロピル)アンモニウムクロライド、N−ビニルイミダゾール、N−ビニル−2−メチルイミダゾール、N−(3−ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド、ヒドロキシルエチルトリメチルアンモニウムクロライド、トリメチル−(2−メタクリルアミドプロピル)アンモニウムクロライド、N−(1,1−ジメチル−3−ジメチルアミノプロピル)アクリルアミド等が挙げられる。カチオン変性ポリビニルアルコールのカチオン変性基含有単量体の比率は、酢酸ビニルに対して0.1〜10モル%であることが好ましく、0.2〜5モル%であることがより好ましい。
【0059】
ビニルアルコール系ポリマーとしては、エクセバール(商品名:株式会社クラレ製)やニチゴーGポリマー(商品名:日本合成化学工業株式会社製)などが挙げられる。
【0060】
なお、上述の水溶性高分子は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、水溶性高分子は合成品を用いてもよいし、市販品を用いてもよい。
【0061】
水溶性高分子の重量平均分子量は、1,000〜200,000であることが好ましく、3,000〜60,000であることがより好ましい。なお、本明細書において、「重量平均分子量」の値は、静的光散乱法、ゲルパーミエーションクロマトグラフ法(GPC)、TOFMASSなどによって測定した値を採用するものとする。水溶性高分子の重量平均分子量が上記範囲にあると、湿式製膜法における塗布が可能となり、生産性を向上させることができることから好ましい。
【0062】
屈折率層における水溶性高分子の含有量は、低屈折率層の全固形分100質量%に対して、5〜75質量%であることが好ましく、10〜70質量%であることがより好ましい。水溶性高分子の含有量が5質量%以上であると、湿式製膜法で低屈折率層を形成する場合に、塗布して得られた塗膜の乾燥時に、膜面が乱れによる透明性の劣化を防止できることから好ましい。一方、水溶性高分子の含有量が75質量%以下であると、低屈折率層中に金属酸化物粒子を含有する場合に好適な含有量となり、低屈折率層と高屈折率層との屈折率差を大きくできることから好ましい。なお、本明細書において、水溶性高分子の含有量は、蒸発乾固法の残固形分より求められる。具体的には、光反射フィルムを95℃の熱水に2時間浸し、残ったフィルムを除去した後、熱水を蒸発させ、得られた固形物の量を水溶性高分子量とする。この際、IR(赤外分光)スペクトルにおいて1700〜1800cm−1、900〜1000cm−1、および800〜900cm−1の領域にそれぞれ1つずつピークが見られる場合、その水溶性高分子はポリビニルアルコールであると断定することができる。
【0063】
[金属酸化物粒子]
本発明では更に高屈折率層及び/または低屈折率層に金属酸化物粒子を含有することが好ましい。
【0064】
金属酸化物粒子としては、金属酸化物を構成する金属が、Li、Na、Mg、Al、Si、K、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Rb、Sr、Y、Nb、Zr、Mo、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Cs、Ba、La、Ta、Hf、W、Ir、Tl、Pb、Bi及び希土類金属からなる群より選ばれる1種または2種以上の金属である金属酸化物を用いることができる。
【0065】
《主に高屈折率層に用いられる金属酸化物粒子》
高屈折率層に用いられる金属酸化物粒子としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化マグネシウム、酸化バリウム、酸化インジウム、酸化錫、酸化鉛、これら酸化物より構成される複酸化物であるニオブ酸リチウム、ニオブ酸カリウム、タンタル酸リチウム、アルミニウム・マグネシウム酸化物(MgAl)等の粒子および複合粒子の中で、屈折率が1.6を満たすものが挙げられる。
【0066】
また、金属酸化物粒子として、希土類酸化物を用いることもでき、具体的には、酸化スカンジウム、酸化イットリウム、酸化ランタン、酸化セリウム、酸化プラセオジム、酸化ネオジム、酸化サマリウム、酸化ユウロピウム、酸化ガドリニウム、酸化テルビウム、酸化ジスプロシウム、酸化ホルミウム、酸化エルビウム、酸化ツリウム、酸化イッテルビウム、酸化ルテチウム等も挙げられる。
【0067】
高屈折率層に用いられる金属酸化物粒子としては、屈折率が1.90以上の金属酸化物粒子が好ましく、例えば、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化チタン、酸化亜鉛等を挙げることができるが、屈折率が高いことから、酸化チタンが好ましく、特に、ルチル型酸化チタン粒子を用いることが好ましい。高屈折率層に用いられる金属酸化物粒子は、1種単独であってもよいし、2種以上併用してもよい。
【0068】
また、金属酸化物粒子は、平均一次粒径が100nm以下であることが好ましく、4〜50nmであることがより好ましい。
【0069】
金属酸化物粒子の平均粒径は、粒子そのものあるいは層の断面や表面に現れた粒子を電子顕微鏡で観察し、1,000個の任意の粒子の粒径を測定し、その単純平均値(個数平均)として求められる。ここで個々の粒子の粒径は、その投影面積に等しい円を仮定したときの直径で表したものである。
【0070】
〈酸化チタン粒子〉
本発明において、酸化チタン粒子は、酸化チタンゾルの表面を変性して水または有機溶剤等に分散可能な状態にしたものを用いることが好ましい。水系の酸化チタンゾルの調製方法としては、例えば、特開昭63−17221号公報、特開平7−819号公報、特開平9−165218号公報、特開平11−43327号公報、特開昭63−17221号公報等に記載された事項を参照にすることができる。
【0071】
また酸化チタンのその他の製造方法については、例えば、「酸化チタン−物性と応用技術」清野学 p255〜258(2000年)技報堂出版株式会社、または国際公開第2007/039953号の段落「0011」〜「0023」に記載の工程(2)の方法を参考にすることができる。上記工程(2)による製造方法とは、酸化チタン水和物をアルカリ金属の水酸物またはアルカリ土類金属の水酸化物からなる群から選択される少なくとも1種の塩基性化合物で処理する工程(1)の後に、得られた酸化チタン分散物を、カルボン酸基含有化合物および無機酸で処理する工程(2)からなる。
【0072】
本発明に係る第1の金属酸化物粒子に用いられる酸化チタンの体積平均粒径は、100nm以下であることが好ましく、50nm以下であることがより好ましく、ヘイズ値が低く可視光透過率に優れる観点から1〜30nmであることがさらに好ましく、1〜20nmであることがより好ましい。なお、ここで体積平均粒径とは、粒子そのものをレーザー回折散乱法、動的光散乱法、あるいは電子顕微鏡を用いて観察する方法や、屈折率層の断面や表面に現れた粒子像を電子顕微鏡で観察する方法により、1,000個の任意の粒子の粒径を測定し、それぞれd1、d2・・・di・・・dkの粒径を持つ粒子がそれぞれn1、n2・・・ni・・・nk個存在する粒子状の金属酸化物の集団において、粒子1個当りの体積をviとした場合に、体積平均粒径mv={Σ(vi・di)}/{Σ(vi)}で表される体積で重み付けされた平均粒径である。
【0073】
また本発明において、酸化チタンが含ケイ素水和酸化物で被覆されたコアシェル粒子の形態であってもよい。当該コアシェル粒子は、酸化チタン粒子の表面を、コアとなる酸化チタンに含ケイ素の水和酸化物からなるシェルが被覆してなる構造を有する。かようなコアシェル粒子を高屈折率層に含有させることで、シェル層の含ケイ素の水和酸化物と水溶性樹脂との相互作用により、低屈折率層と高屈折率層との層間混合が抑制されうる。
【0074】
本明細書において「被覆」とは、酸化チタン粒子の表面の少なくとも一部に、含ケイ素の水和酸化物が付着されている状態を意味する。すなわち、本発明に係る第1の金属酸化物粒子として用いられる酸化チタン粒子の表面が、完全に含ケイ素の水和酸化物で被覆されていてもよく、酸化チタン粒子の表面の一部が含ケイ素の水和酸化物で被覆されていてもよい。被覆された酸化チタン粒子の屈折率が含ケイ素の水和酸化物の被覆量により制御される観点から、酸化チタン粒子の表面の一部が含ケイ素の水和酸化物で被覆されることが好ましい。
【0075】
前記含ケイ素の水和酸化物としては、無機ケイ素化合物の水和物、有機ケイ素化合物の加水分解物および/または縮合物のいずれであってもよいが、シラノール基を有することが好ましい。よって、前記コアシェル粒子としては、酸化チタン粒子がシリカ変性されたシリカ変性(シラノール変性)酸化チタン粒子であることが好ましい。
【0076】
かようなシリカ変性酸化チタン粒子は、公知の方法を採用することができ、例えば、以下の(i)〜(v)に示す方法を挙げることができる。
【0077】
(i)酸化チタン粒子を含有する水溶液を加熱加水分解し、または酸化チタン粒子を含有する水溶液にアルカリを添加し中和して、体積平均粒径が1〜30nmの酸化チタンを得た後、モル比で表して酸化チタン粒子/鉱酸が1/0.5〜1/2の範囲になるように、前記酸化チタン粒子と鉱酸とを混合したスラリーを、50℃以上該スラリーの沸点以下の温度で加熱処理し、その後得られた酸化チタン粒子を含むスラリーに、ケイ素の化合物(例えば、ケイ酸ナトリウム水溶液)を添加し、酸化チタン粒子の表面にケイ素の含水酸化物を析出させて表面処理し、次いで得られた表面処理された酸化チタン粒子のスラリーから不純物を除去する方法(特開平10−158015号公報に記載の方法)。
【0078】
(ii)含水酸化チタンなどの酸化チタンを一塩基酸またはその塩で解膠処理して得られる酸性域のpHで安定した酸化チタンゾルと、分散安定化剤としてのアルキルシリケートを常法により混合し、中性化する方法(特開2000−053421号公報に記載の方法)。
【0079】
(iii)過酸化水素および金属スズを、2〜3のH/Snモル比に保持しつつ同時にまたは交互にチタン塩(例えば、四塩化チタン)等の混合物水溶液に添加し、チタンを含む塩基性塩水溶液を生成し、該塩基性塩水溶液を0.1〜100時間かけて50〜100℃の温度で保持して酸化チタンを含む複合体コロイドの凝集体を生成させ、次いで、該凝集体スラリー中の電解質を除去し、酸化チタンを含む複合体コロイド粒子の安定な水性ゾルが製造される。一方、ケイ酸塩(例えば、ケイ酸ナトリウム水溶液)等を含有する水溶液を調製し、水溶液中に存在する陽イオンを除去することで、二酸化ケイ素を含む複合体コロイド粒子の安定な水性ゾルが製造される。得られた酸化チタンを含む複合体水性ゾルを金属酸化物TiOに換算して100質量部と、得られた二酸化ケイ素を含む複合体水性ゾルを金属酸化物SiOに換算して2〜100質量部と混合し、陰イオンを除去後、80℃で1時間加熱熟成する方法(特開2000−063119号公報に記載の方法)。
【0080】
(iv)含水チタン酸のゲルまたはゾルに過酸化水素を加えて含水チタン酸を溶解し、得られたペルオキソチタン酸水溶液に、ケイ素化合物等を添加し加熱し、ルチル型構造をとる複合固溶体酸化物からなるコア粒子の分散液が得られ、次いで、該コア粒子の分散液にケイ素化合物等を添加した後、加熱しコア粒子表面に被覆層を形成し、複合酸化物粒子が分散されたゾルが得られ、さらに、加熱する方法(特開2000−204301号公報に記載の方法)。
【0081】
(v)含水酸化チタンを解膠して得られた酸化チタンのヒドロゾルに、安定剤としてのオルガノアルコキシシラン(R1SiX4−n)または過酸化水素および脂肪族もしくは芳香族ヒドロキシカルボン酸から選ばれた化合物を添加し、溶液のpHを3以上9未満へ調節し熟成させた後に脱塩処理を行う方法(特許第4550753号公報に記載の方法)。
【0082】
本発明に係る第1の金属酸化物粒子としての酸化チタン粒子の含ケイ素の水和酸化物での被覆量を調整するには、例えば、(1)上記方法(i)および(iv)において、使用する酸化チタン粒子に対するケイ素の化合物の添加量を調整することによって、含ケイ素の水和酸化物の被覆量を調整する方法;(2)上記方法(iii)において、得られた酸化チタンを含む複合体水性ゾルおよび二酸化ケイ素を含む複合体水性ゾルをそれぞれ金属酸化物TiOおよびSiOに換算し、該当するTiOに対して該当するSiOの量を調整することによって、含ケイ素の水和酸化物の被覆量を調整する方法;(3)上記方法(v)において、使用するオルガノアルコキシシランの添加量を調整することによって、含ケイ素の水和酸化物の被覆量を調整する方法;(4)上記方法(ii)において、アルキルシリケートの添加量を調整する方法などが挙げられる。
【0083】
本発明において、シリカ変性酸化チタン粒子を調製する際に、含ケイ素の水和酸化物で被覆された酸化チタン粒子を含む懸濁液において、懸濁液全体の固形分(100質量%)に対して、当該シリカ変性酸化チタン粒子の好ましい固形分濃度は、1〜40質量%である。また、当該固形分濃度は、15〜25質量%であることがより好ましい。これは、当該固形分濃度を1質量%以上にすることで、固形分濃度が大きくして溶媒揮発負荷を低減し生産性が向上でき、また、当該固形分濃度を40質量%以下にすることで、高粒子密度による凝集を防止でき、塗布時の欠陥を減らすことができるからである。本発明に係る第1の金属酸化物粒子を調製する際に、含ケイ素の水和酸化物で被覆された酸化チタン粒子を含む懸濁液のpH範囲は、3〜9であることが好ましく、4〜8であることがより好ましい。懸濁液のpHを9以下にすることでアルカリ溶解による体積平均粒径の変化を抑えることができ、懸濁液のpHを3以上にすることでハンドリング性を向上することができるからである。
【0084】
上述のシリカ変性酸化チタン粒子において、酸化チタン粒子に対して、含ケイ素の水和酸化物の被覆量は、SiOとして好ましくは3〜30質量%であり、より好ましくは3〜10質量%、さらに好ましくは3〜8質量%である。被覆量が3〜30質量%であれば、高屈折率層の高屈折率化が容易となりまた、被覆した粒子を安定に形成することができる。
【0085】
〈ルチル型酸化チタン〉
一般的に、酸化チタン粒子は、粒子表面の光触媒活性の抑制や、溶媒等への分散性を向上する目的で、表面処理が施された状態で使用されることが多く、例えば、酸化チタン粒子表面をシリカからなる被覆層で覆われたシリカ変性酸化チタン粒子、粒子表面が負電荷を帯びたものや、アルミニウム酸化物からなる被覆層が形成されたpH8〜10で表面が正電荷を帯びたものが知られている。
【0086】
さらに、酸化チタン粒子は、単分散であることが好ましい。ここでいう単分散とは、下記式で求められる単分散度が40%以下をいう。更に好ましくは30%以下であり、特に好ましくは0.1〜20%となる粒子である。
【0087】
単分散度=(粒径の標準偏差)/(粒径の平均値)×100
高屈折率層における金属酸化物粒子の含有量としては、高屈折率層の固形分100質量%に対して、赤外遮蔽の観点および曲面形状のガラスにフィルムを適用した場合の色ムラ低減の観点から、20〜80質量%であることが好ましく、30〜70質量%であることがより好ましく、40〜60質量%であることがさらに好ましい。
【0088】
《主に低屈折率層に用いられる金属酸化物粒子》
主に低屈折率層に用いられる金属酸化物粒子としては、金属酸化物粒子として二酸化ケイ素を用いることが好ましく、コロイダルシリカを用いることが特に好ましい。低屈折率層に含まれる金属酸化物粒子(好ましくは二酸化ケイ素)は、その平均粒径が3〜100nmであることが好ましい。一次粒子の状態で分散された二酸化ケイ素の一次粒子の平均粒径(塗布前の分散液状態での粒径)は、3〜50nmであるのがより好ましく、3〜40nmであるのがさらに好ましく、3〜20nmであるのが特に好ましく、4〜10nmであるのがもっとも好ましい。また、二次粒子の平均粒径としては、30nm以下であることが、ヘイズが少なく可視光透過性に優れる観点で好ましい。低屈折率層中の金属酸化物の平均粒径は、粒子そのものあるいは屈折率層の断面や表面に現れた粒子を電子顕微鏡で観察し、1,000個の任意の粒子の粒径を測定し、その単純平均値(個数平均)として求められる。ここで個々の粒子の粒径は、その投影面積に等しい円を仮定したときの直径で表したものである。
【0089】
低屈折率層における金属酸化物粒子の含有量としては、低屈折率層の固形分100質量%に対して、屈折率の観点から、30〜90質量%であることが好ましく、40〜80質量%であることがさらに好ましい。
【0090】
コロイダルシリカは、珪酸ナトリウムの酸等による複分解やイオン交換樹脂層を通過させて得られるシリカゾルを加熱熟成して得られるものであり、たとえば、特開昭57−14091号公報、特開昭60−219083号公報、特開昭60−219084号公報、特開昭61−20792号公報、特開昭61−188183号公報、特開昭63−17807号公報、特開平4−93284号公報、特開平5−278324号公報、特開平6−92011号公報、特開平6−183134号公報、特開平6−297830号公報、特開平7−81214号公報、特開平7−101142号公報、特開平7−179029号公報、特開平7−137431号公報、および国際公開第94/26530号パンフレットなどに記載されているものである。この様なコロイダルシリカは合成品を用いてもよいし、市販品を用いてもよい。コロイダルシリカは、その表面をカチオン変性されたものであってもよく、また、Al、Ca、MgまたはBa等で処理された物であってもよい。
【0091】
また、本発明に係る高屈折率層と低屈折率層には、必要に応じて各種の添加剤を含有させることが出来る。
【0092】
例えば、特開昭57−74193号公報、同57−87988号公報及び同62−261476号公報に記載の紫外線吸収剤、特開昭57−74192号公報、同57−87989号公報、同60−72785号公報、同61−146591号公報、特開平1−95091号公報および同3−13376号公報等に記載されている退色防止剤、アニオン、カチオンまたはノニオンの各種界面活性剤、特開昭59−42993号公報、同59−52689号公報、同62−280069号公報、同61−242871号公報および特開平4−219266号公報等に記載されている蛍光増白剤、硫酸、リン酸、酢酸、クエン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム等のpH調整剤、消泡剤、ジエチレングリコール等の潤滑剤、防腐剤、帯電防止剤、マット剤等の公知の各種添加剤を含有していてもよい。
【0093】
<粘着層>
本発明の光反射フィルムは、粘着層を有する。粘着層を構成する粘着剤としては、特に制限されず、例えば、アクリル系粘着剤、シリコン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ポリビニルブチラール系粘着剤、エチレン−酢酸ビニル系粘着剤などを例示することができる。
【0094】
本発明の光反射フィルムはガラスとの貼付け時点の即粘着力が2〜8N/25mmであり、前記即粘着力が4〜8N/25mmであることが好ましい。即粘着力とは、本発明に係る光反射フィルムをガラスに貼付けて24時間後に計測した粘着層の粘着力のことを示す。
【0095】
粘着層の粘着力は粘着層を構成する材料を種種選択することで調整が可能である。
【0096】
また、貼付け時点の前記粘着層とガラスとの即粘着力が4〜8N/25mmであり、貼付け状態のまま、30℃、湿度60%の条件で1週間放置した時点の前記粘着層とガラスとの経時粘着力が7〜15N/25mmであることが曲面密着性の観点から好ましい。更に、前記経時粘着力が10〜15N/25mmであることが耐久性向上と糊残りが減少するという観点からより好ましい。経時粘着力とは、本発明に係る光反射フィルムをガラスに貼付け、一定期間経過した後に計測した粘着層の粘着力のことを示す。
【0097】
本発明の光反射フィルムは、窓ガラスに貼り合わせる場合、窓に水を吹き付け、濡れた状態のガラス面に光反射フィルムの粘着層を合わせる貼り方、いわゆる水貼り法が張り直し、位置直し等の観点で好適に用いられる。そのため、水が存在する湿潤下では粘着力が弱い粘着剤が好ましい。
【0098】
この粘着層には、添加剤として、例えば安定剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、シランカップリング剤、難燃剤、帯電防止剤、抗酸化剤、熱安定剤、滑剤、充填剤、着色、接着調整剤等を含有させることもできる。特に、窓貼用として使用する場合は、紫外線による光反射フィルムの劣化を抑制するためにも、紫外線吸収剤の添加は有効である。
【0099】
粘着層の層厚は、1〜100μmが好ましく、3〜50μmがより好ましい。1μm以上であれば粘着性が向上する傾向にあり、十分な粘着力が得られる。逆に100μm以下であれば光反射フィルムの透明性が向上するだけでなく、光反射フィルムを窓ガラスに貼り付けた後、剥がしたときに粘着層間で凝集破壊が起こらず、ガラス面への粘着剤残りが無くなる傾向にある。
【0100】
反射層上への粘着層の形成方法としては、特に制限されないが、反射層とは別に、セパレーター上に粘着層用塗布液を塗布し乾燥させて粘着層を形成した後、粘着層と反射層とを貼り合わせる方法が好ましい。
【0101】
この際用いられるセパレーターとしては、例えば、シリコーンコート離型PETフィルム、シリコーンコートPEフィルム等が挙げられる。セパレーター上への粘着層用塗布液の塗布方法は、特に制限されず、ワイヤーバーによるコーティング、スピンコーティング、ディップコーティング等により塗布液を塗布し製膜する方法が挙げられ、また、ダイコーター、グラビアコーター、コンマコーターなどの連続塗布装置でも塗布・製膜することが可能である。
【0102】
なお、本明細書において、「粘着力」は、JIS A 5759:2008 6.8粘着力試験に準じて測定することによって求められ、より具体的には、下記実施例に記載される方法に従って測定される。
【0103】
<ハードコート層>
本発明に係る光反射フィルムは、耐擦過性を高めるための表面保護層として、誘電体多層膜の粘着層が形成される側とは反対側の面にハードコート層(以下、単にHC層とも称する)を有する。
【0104】
本発明に係るハードコート層を構成するハードコート材料としては、ポリシロキサン系に代表される無機系材料や、紫外線硬化性ウレタンアクリレート樹脂等の硬化性樹脂など、硬化後の収縮応力が小さい材料を使用することが好ましい。これらハードコート材料は、単独でもまたは2種以上混合しても用いることができる。
【0105】
本発明に係るハードコート層の形成に適用可能なポリシロキサン系ハードコート材料としては、下記一般式(1)で表される化合物が好ましい。
【0106】
【化1】
【0107】
上記一般式(1)において、RおよびRは、それぞれ独立して、炭素数1〜10の直鎖状、分枝状、または環状のアルキル基を表し、mおよびnは、m+n=4の関係を満たす整数である。
【0108】
具体的な化合物としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−iso−プロポキシシラン、テトラ−n−ポロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、テトラ−tert−ブトキシシラン、テロラペンタエトキシシラン、テトラペンタ−iso−プロポキシシラン、テトラペンタ−n−プロポキシシラン、テトラペンタ−n−ブトキシシラン、テトラペンタ−sec−ブトキシシラン、テトラペンタ−tert−ブトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、ジメチルメトキシシラン、ジメチルプロポキシシラン、ジメチルブトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン等が挙げられる。また、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−β−(N−アミノベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルメトキシシラン・塩酸塩、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、アミノシラン、メチルメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、オクタデシルジメチル[3−(トリメトキシシリル)プロピル]アンモニウムクロライドを挙げることができる。これらのメトキシ基、エトキシ基などの加水分解性基がヒドロキシ基に置換した状態のものが、一般的にポリオルガノシロキサン系ハードコート材料といわれている。
【0109】
前記ポリオルガノシロキサン系ハードコート材料は、具体的にはサーコートシリーズ、BP−16N(以上、株式会社動研製)、SR2441(東レ・ダウコーニング株式会社製)、Perma−New 6000(California Hardcoating Company社製)などを利用することができる。
【0110】
また、本発明に係るハードコート層で使用される硬化性樹脂としては、熱硬化性樹脂や活性エネルギー線硬化性樹脂が挙げられるが、成形が容易なことから、活性エネルギー線硬化性樹脂が好ましい。このような硬化性樹脂は、単独でもまたは2種以上組み合わせても用いることができる。
【0111】
ハードコート材料として、活性エネルギー線硬化性樹脂を使用することも好ましい。活性エネルギー線硬化性樹脂とは、紫外線や電子線のような活性エネルギー線照射により架橋反応等を経て硬化する樹脂をいう。活性エネルギー線硬化性樹脂としては、エチレン性不飽和二重結合を有するモノマーを含む成分が好ましく用いられ、紫外線や電子線のような活性エネルギー線を照射することによって硬化させて、活性エネルギー線硬化性樹脂層、すなわちハードコート層が形成される。活性エネルギー線硬化性樹脂としては紫外線硬化性樹脂や電子線硬化性樹脂等が代表的なものとして挙げられるが、紫外線照射によって硬化する紫外線硬化性樹脂が好ましい。
【0112】
紫外線硬化性樹脂としては、例えば、紫外線硬化性ウレタンアクリレート樹脂、紫外線硬化性ポリエステルアクリレート樹脂、紫外線硬化性エポキシアクリレート樹脂、紫外線硬化性ポリオールアクリレート樹脂、紫外線硬化性アクリルアクリレート樹脂、または紫外線硬化性エポキシ樹脂等が好ましく用いられる。紫外線硬化性ウレタンアクリレート樹脂は、一般にポリエステルポリオールにイソシアネートモノマー、またはプレポリマーを反応させて得られた生成物にさらに2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(以下、アクリレートにはメタクリレートを包含するものとしてアクリレートのみを表示する)、2−ヒドロキシプロピルアクリレート等の水酸基を有するアクリレート系のモノマーを反応させることによって容易に得ることができる。例えば、特開昭59−151110号公報に記載のユニディック(登録商標)17−806(DIC株式会社製)100質量部とコロネート(登録商標)L(日本ポリウレタン工業株式会社製)1質量部との混合物等が好ましく用いられる。紫外線硬化性ポリエステルアクリレート樹脂は、一般にポリエステル末端の水酸基やカルボキシル基に2−ヒドロキシエチルアクリレート、グリシジルアクリレート、アクリル酸のようなモノマーを反応させることによって容易に得ることができる(例えば、特開昭59−151112号公報)。紫外線硬化性エポキシアクリレート樹脂は、エポキシ樹脂の末端の水酸基にアクリル酸、アクリル酸クロライド、グリシジルアクリレートのようなモノマーを反応させて得られる。紫外線硬化性ポリオールアクリレート樹脂としては、例えば、エチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ペンタエリスリトールエチレンオキサイド変性テトラアクリレート等のモノマーの1種または2種以上を硬化させて得られる樹脂を挙げることができる。
【0113】
ハードコート層の形成に用いられる活性エネルギー線硬化性樹脂の市販品の例としては、上記の他に、例えば、ビームセット577(荒川化学工業株式会社製)、ヒタロイド(登録商標)シリーズ(日立化成株式会社製)、紫光シリーズ(日本合成化学工業株式会社製)、ETERMER2382(ETERNAL CHEMICAL社製)等を挙げることができる。
【0114】
また、太陽光曝露状況下においても、当該ハードコート層は収縮を促進しないような構成を有することが望ましい。そのため、該ハードコート層は、紫外線吸収剤および/または酸化防止剤を含有することが好ましい。これら紫外線吸収剤および酸化防止剤の含有量は、ハードコート層の全質量に対して、0.05質量%以上4質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上3質量%以下であることが好ましい。これは、ハードコート層に紫外線が照射された場合、ハードコート層内の反応が促進し収縮応力が上昇する。また、ハードコート層内において、樹脂が分解することにより、ハードコート層自身が脆くなるという現象が起こりうる。そのため、ハードコート層内に紫外線吸収剤や酸化防止剤を含有させることで、ハードコート層の収縮や分解を抑えることができるため、耐候密着性を向上させることができる。
【0115】
(粘着層の弾性率とハードコート層の弾性率)
本発明に係る光反射フィルムの前記粘着層の弾性率と前記ハードコート層の弾性率は、下記式(1)を満たす。
【0116】
式(1)ハードコート層の弾性率[Pa]/粘着層の弾性率[Pa]≧3
前記粘着層の弾性率と前記ハードコート層の弾性率とが、上記式(1)を満たし、前記粘着層とガラスとの貼付け時点の即粘着力が2〜8N/25mmであることを満たすことにより、曲面を持つ被着体への密着性を確保しつつ、貼り直しのためにフィルムを被着体から剥がした際に糊残りがなく、再度貼付けが可能であり、耐久性および遮熱性能に優れた光反射フィルムを提供することができる。曲面をもつ被着体への密着性という観点からは、前記式(1)は、ハードコート層の弾性率[Pa]/粘着層の弾性率[Pa]≧3であることが好ましく、ハードコート層の弾性率[Pa]/粘着層の弾性率[Pa]≧4であることがより好ましい。上限は特に規定はないが、曲げガラスへの貼る際の効率を維持でき、また貼った後の剥がれ防止を効果的に維持するためにもハードコート層の弾性率[Pa]/粘着層の弾性率[Pa]≦20、好ましくはハードコート層の弾性率[Pa]/粘着層の弾性率[Pa]≦10である。
【0117】
弾性率は、試料に対して超微小な荷重で圧子を連続的に負荷、除荷して得られた荷重−変位曲線から弾性率を求めるナノインデンテーション法により測定することができる。
【0118】
粘着層及びハードコート層のそれぞれの弾性率はそれらの層を構成する材料を種々選択することで調整が可能である。
【0119】
<熱線遮蔽性微粒子>
また、熱線遮蔽効果の点から、光反射フィルムに熱線遮蔽吸収能を有する熱線遮蔽性微粒子を含有することが好ましい。前記熱線遮蔽性微粒子は、平均粒径が0.2μm以下であることが好ましい。これは熱線遮蔽性微粒子による散乱および吸収により可視光の反射が目立たなくなるためである。前記熱線遮蔽性微粒子としては、Sn、Ti、Si、Zn、Zr、Fe、Al、Cr、Co、Ce、In、Ni、Ag、Cu、Pt、Mn、Ta、W、V、Moの金属、酸化物、窒化物、硫化物あるいはSbやFのドープ物の各単独物もしくはこれらの中から少なくとも2種以上を選択してなる複合物が挙げられ、熱線遮蔽効果の点からはアンチモンドープ酸化スズ(ATO)または酸化インジウムスズ(ITO)であることが好ましい。
【0120】
熱線遮蔽性微粒子は合成品を用いてもよいし市販品を用いてもよい。市販品の例としては、例えば、酸化亜鉛系として、セルナックス(登録商標)シリーズ(日産化学工業株式会社製)、パゼットシリーズ(ハクスイテック株式会社製)、酸化錫系として、ATO分散液(実施例)、ITO分散液(以上、三菱マテリアル株式会社製)、KHシリーズ(住友金属鉱山株式会社製)等が挙げられる。有機系の市販品としては、例えば、NIR−IM1、NIR−AM1(以上、ナガセケミテックス株式会社製)、Lumogen(登録商標)シリーズ(BASF社製)等が挙げられる。
【0121】
熱線遮蔽性微粒子の平均粒径は、可視光の反射を抑制しつつ、熱線遮蔽効果を確保できること、また散乱によるヘイズの劣化が生じず、透明性を確保できることから、0.2μm以下であるが、好ましくは0.15μm以下である。なお、平均粒径の下限は特に限定されるものではないが、0.10μm以下であることが好ましい。上記平均粒径は、粒子そのものあるいは屈折率層の断面や表面に現れた粒子を電子顕微鏡で観察し、1,000個の任意の粒子の粒径を測定し、その単純平均値(個数平均)として求められる。ここで個々の粒子の粒径は、その投影面積に等しい円を仮定したときの直径で表したものである。
【0122】
上記熱線遮蔽性微粒子はハードコート層に含有させることができる。熱線遮蔽性微粒子の含有量は、ハードコート層の全質量に対して、55質量%以上80質量%以下であることが好ましい。この範囲であれば、ハードコート層中の上記樹脂成分が少なくなるため、収縮応力が小さくなるため好ましい。赤外線吸収剤の含有量が55質量%より少ない場合、ハードコート層の層厚が厚くなって、収縮応力が大きくなり、耐候性が悪くなる傾向にある。一方、80質量%より多い場合、樹脂成分が少なすぎるため、粒子過多な状態となり、ハードコート層としての硬度が発現しない虞がある。
【0123】
また、ハードコート層は、上記赤外線吸収剤以外の無機微粒子を含有してもよい。好ましい無機微粒子としては、チタン、シリカ、ジルコニウム、アルミニウム、マグネシウム、アンチモン、亜鉛またはスズなどの金属を含む無機化合物の微粒子が挙げられる。この無機微粒子の平均粒径は、可視光線の透過性を確保することから、1000nm以下が好ましく、10〜500nmの範囲にあるものがより好ましい。また、無機微粒子は、ハードコート層を形成する硬化性樹脂との結合力が高い方がハードコート層からの脱落を抑制できることから、単官能または多官能のアクリレートなどの光重合反応性を有する感光性基を表面に導入しているものが好ましい。
【0124】
また、ハードコート層に染料や顔料を添加して色相を調整することができる。例えば、カドミウムレッド、モリブデンレッド、クロムパーミリオン、酸化クロム、ビリジアン、チタンコバルトグリーン、コバルトグリーン、コバルトクロムグリーン、ビクトリアグリーン、群青、ウルトラマリンブルー、紺青、ベルリンブルー、ミロリブルー、コバルトブルー、セルリアンブルー、コバルトシリカブルー、コバルト亜鉛ブルー、マンガンバイオレット、ミネラルバイオレッド、コバルトバイオレット等の有色無機顔料や、フタロシアニン顔料等の有機顔料、アントラキノン系染料が好ましく使用される。
【0125】
ハードコート層の層厚は0.1〜50μmが好ましく、1〜20μmがより好ましい。0.1μm以上であればハードコート性が向上する傾向にあり、逆に50μm以下であれば反射層膜フィルムの透明性が向上する傾向にある。
【0126】
反射層膜上へのハードコート層の形成方法としては、ワイヤーバーによるコーティング、スピンコーティング、ディップコーティング等によりハードコート層用塗布液を、高屈折率層及び低屈折率層からなる反射層上に塗布し製膜する方法が挙げられ、蒸着などの乾式製膜法でも形成することができる。また、ダイコーター、グラビアコーター、コンマコーターなどの連続塗布装置でも塗布・製膜することが可能である。例えば、ポリシロキサン系ハードコート材料の場合、塗布後、溶剤を乾燥させた後、該ハードコート材料の硬化・架橋を促進するため、50〜150℃の温度範囲内で30分〜数日間の熱処理を行うことが好ましい。塗布基材の耐熱性や積層ロール状にした時の基材の安定性を考慮して、40〜80℃の範囲内で2日間以上処理することが好ましい。活性エネルギー線硬化性樹脂を用いる場合、活性エネルギー線の照射波長、照度、光量によってその反応性が変わるため、使用する樹脂によって最適な条件を選択する必要があるため一概には言えない。しかしながら、例えば、活性エネルギー線として紫外線ランプを用いる場合、その照度は50〜1500mW/cmが好ましく、照射エネルギー量は50〜1500mJ/cmが好ましい。
【0127】
ハードコート層用塗布液に用いられる溶媒としては、上記<ハードコート層>の欄で例示した溶媒が挙げられる。
【0128】
ハードコート層形成のための塗布液には、界面活性剤を添加して、レベリング性、撥水性、滑り性等を付与することができる。界面活性剤の種類として、特に制限はなく、アクリル系界面活性剤、シリコン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤等を用いることができる。特にレベリング性、撥水性、滑り性という観点で、フッ素系界面活性剤を用いることが好ましい。フッ素系界面活性剤の例としては、例えば、DIC株式会社製のメガファック(登録商標)Fシリーズ(F−430、F−477、F−552〜F−559、F−561、F−562等)、DIC株式会社製のメガファック(登録商標)RSシリーズ(RS−76−E等)、AGCセイミケミカル株式会社製のサーフロン(登録商標)シリーズ、OMNOVA SOLUTIONS社製のPOLYFOXシリーズ、株式会社T&K TOKAのZXシリーズ、ダイキン工業株式会社製のオプツールシリーズ、株式会社ネオス製のフタージェント(登録商標)シリーズ等の市販品を使用することができる。
【0129】
なお、本発明の光反射フィルムに含まれるハードコート層は、1層のみでもまたは2層以上有していてもよい。2層以上有する場合、各ハードコート層の構成は、同じでもよいし異なっていてもよい。
【0130】
<光反射フィルム(赤外遮蔽フィルム)の製造方法>
本発明の光反射フィルムの製造方法について特に制限はなく、高屈折率層および低屈折率層が交互に積層された積層体を少なくとも1つ形成することができるのであれば、いかなる方法でも用いられうる。
【0131】
本発明の光反射フィルムの製造方法では、高屈折率層と低屈折率層とから構成されるユニットを積層して形成される。具体的には、(1)基材上に高屈折率層と低屈折率層とを交互に塗布、乾燥して積層体を形成する方法、(2)同時押し出しにより積層体を形成後、該積層体を延伸してフィルムを形成する方法が挙げられる。本発明では、高屈折率層に金属酸化物を含有するので、上記(1)および(2)の双方の製造方法でフィルムを作製することができる。
【0132】
上記(1)の方法における塗布方式としては、例えば、ロールコーティング法、ロッドバーコーティング法、エアナイフコーティング法、スプレーコーティング法、カーテン塗布方法、あるいは米国特許第2,761,419号、同第2,761,791号公報に記載のホッパーを使用するスライドビード塗布方法、エクストルージョンコート法等が好ましく用いられる。
【0133】
上記(1)の方法は、具体的には以下の形態が挙げられる;(1)基材上に、高屈折率層塗布液を塗布し乾燥して高屈折率層を形成した後、低屈折率層塗布液を塗布し乾燥して低屈折率層を形成し、フィルムを形成する方法;(2)基材上に、低屈折率層塗布液を塗布し乾燥して低屈折率層を形成した後、高屈折率層塗布液を塗布し乾燥して高屈折率層を形成し、フィルムを形成する方法;(3)基材上に、高屈折率層塗布液と、低屈折率層塗布液とを交互に逐次重層塗布・乾燥して、高屈折率層、および低屈折率層を含むフィルムを形成する方法;(4)基材上に、高屈折率層塗布液と、低屈折率層塗布液とを同時重層塗布し、乾燥して、高屈折率層、および低屈折率層を含むフィルムを形成する方法;などが挙げられる。
【0134】
上記(2)における同時押出し工程は、米国特許第6049419号に記載の方法を用いることができる。すなわち、高屈折率層材料のポリマー、金属酸化物粒子およびその他の添加剤(高屈折率層形成用組成物)ならびに低屈折層材料のポリマーおよびその他の添加剤(低屈折率層形成用組成物)を同時押出し法を用いて高屈折率層および低屈折率層を形成することができる。
【0135】
一実施形態として、各屈折率層材料を100〜400℃で押出しに適当な粘度になるように溶融させ、必要に応じて各種添加剤を添加し、両方のポリマーを交互に二層になるように押出し機によって押し出すことができる。次に、押し出された積層膜を、冷却ドラム等により冷却固化し、積層体を得る。
【0136】
その後、この積層体を加熱してから二方向に延伸し、光反射フィルムを得ることができる。
【0137】
延伸方法としては、前述の冷却ドラムから剥離され、得られた未延伸フィルムを複数のロール群および/または赤外線ヒーター等の加熱装置を介してガラス転移温度(Tg)−50℃からTg+100℃の範囲内に加熱し、フィルム搬送方向(長手方向ともいう)に、一段または多段縦延伸することが好ましい。次に、上記のようにして得られた延伸されたフィルムを、フィルム搬送方向に直交する方向(幅手方向ともいう)に延伸することも好ましい。フィルムを幅手方向に延伸するには、テンター装置を用いることが好ましい。
【0138】
フィルム搬送方向またはフィルム搬送方向に直交する方向に延伸する場合は、1.5〜5.0倍の倍率で延伸することが好ましく、より好ましくは2.0〜4.0倍の範囲である。
【0139】
また、延伸に引き続き熱加工することもできる。熱加工は、Tg−100℃〜Tg+50℃の範囲内で通常0.5〜300秒間搬送しながら行うことが好ましい。
【0140】
熱加工手段は特に制限なく、一般的に熱風、赤外線、加熱ロール、マイクロ波等で行うことができるが、簡便さの点で、熱風で行うことが好ましい。フィルムの加熱は段階的に高くしていくことが好ましい。
【0141】
熱加工されたフィルムは通常Tg以下まで冷却され、フィルム両端のクリップ把持部分をカットし巻き取られる。また冷却は、最終熱加工温度からTgまでを、毎秒100℃以下の冷却速度で徐冷することが好ましい。
【0142】
冷却する手段は特に限定はなく、従来公知の手段で行えるが、特に複数の温度領域で順次冷却しながらこれらの処理を行うことがフィルムの寸法安定性向上の点で好ましい。なお、冷却速度は、最終熱加工温度をT1、フィルムが最終熱加工温度からTgに達するまでの時間をtとしたとき、(T1−Tg)/tで求めた値である。
【0143】
<光反射体>
本発明により提供される光反射フィルムは、幅広い分野に応用することができる。例えば、建物の屋外の窓や自動車窓等長期間太陽光に晒らされる設備に貼り合せ、赤外遮蔽効果を付与する赤外遮蔽フィルム等の窓貼用フィルムとして用いることができる。
【0144】
すなわち、本発明のさらに他の形態によれば、上述の光反射フィルムを光透過性基体に貼り付けた光反射体も提供される。前記光反射体は、光反射フィルムが粘着層を介して光透過性基体に接合されてなる構造を有する。
【0145】
前記光透過性基体の具体的な例としては、例えば、ガラス、ポリカーボネート樹脂、ポリスルホン樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリスルフィド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリイミド樹脂、ウレタン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、スチレン樹脂、塩化ビニル樹脂等が挙げられる。また、前記光透過性基体は、全光透過性を有していても、部分的な波長領域に対する光透過性を有していてもよい。
【0146】
本発明の作用効果は、前記前記光透過性基体が曲面であるときに、よりいっそう効果的に発現させられる。「曲面」とは、曲率半径が3m以下の範囲である面を意味する。曲率半径が3m以下とするのは、曲率半径が3mを超えると、平面状の基体との差異がなくなるからである。
【実施例】
【0147】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが本発明はこれにより限定されるものではない。なお、実施例において「部」または「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」または「質量%」を表す。
【0148】
(実施例1)
[光反射フィルム(赤外遮蔽フィルム)の製造]
<反射層1の形成>
米国特許第6049419号に記載の溶融押し出し方法に従い、ポリエチレンナフタレート(PEN)TN8065S(帝人化成社製)とポリメチルメタクリレート(PMMA)樹脂アクリペットVH(三菱レイヨン社製)とを、300℃に溶融し、押出しにより積層し、(PMMA(152nm)/PEN(137nm))64/(PMMA(164nm)/PEN(148nm))64/(PMMA(177nm)/PEN(160nm))64/(PMMA(191m)/PEN(173nm))64となるように縦横約3倍に延伸した後、熱固定、冷却を行って、計256層交互積層した反射層1を得た。ここで、上記層構成において、「(PMMA(152nm)/PEN(137nm))64」とは、膜厚152nmのPMMA、膜厚137nmのPENをこの順に積層したユニットを64個積層させたという意味である。
【0149】
<粘着層の形成>
下記の処方で粘着層塗布液を作製した。
【0150】
粘着剤:日本合成化学工業製 N−2147(固形分35%) 100部
BASF製UV吸収剤 Tinuvin477(固形分80%) 2.1部
イソシアネート系硬化剤 日本ポリウレタン工業製 コロネートL55E(固形分55%) 5部
上記粘着層塗布液をセパレーターSP−PET(銘柄:PET−O2−BU)(三井化学東セロ株式会社製)のシリコン面に対して、コンマコーターにて乾燥膜厚が10μmになるように塗工し、80℃、1分間乾燥し、第2給紙から反射層を形成したフィルムを給紙し、反射層とラミネートして、反射層上に粘着層を形成した。
【0151】
<ハードコート層(HC層)の形成>
紫外線硬化性樹脂として、ビームセット577(荒川化学工業株式会社製)を用い、溶媒としてメチルエチルケトンを添加した。さらに、フッ素系界面活性剤(商品名:フタージェント(登録商標)650A、株式会社ネオス製)を0.08質量%添加し、全固形分が40質量部となるように調製して、ハードコート層用塗布液Aを作製した。
【0152】
粘着層を形成した層とは反対側の最外層に、上記調製したハードコート層用塗布液Aを、グラビアコーターにて、乾燥層厚が5μmとなる条件で塗工後、乾燥区間温度90℃で1分間乾燥後、紫外線ランプを用い照射部の照度が100mW/cmで、照射量を0.5J/cmとしてハードコート層を硬化させ、ハードコート層を形成した。
【0153】
以上のようにして、光反射フィルムを作製した。
【0154】
(実施例2)
実施例1からハードコート層用塗布液を下記塗布液Bに変更した以外は同様にして光反射フィルムを作成した。
【0155】
ハードコート層用塗布液Bの調製
赤外線吸収剤としてATO(商品名:SR35M、ANP社製)を用い、紫外線硬化性樹脂として、ビームセット577(荒川化学工業株式会社製)を用い、溶媒としてメチルエチルケトンを添加した。さらに、フッ素系界面活性剤(商品名:フタージェント(登録商標)650A、株式会社ネオス製)を0.08質量%添加し、全固形分が40質量部、およびATOの添加量が全固形分に対して55質量%となるように調製して、ハードコート層用塗布液Bを作製した。
【0156】
(実施例3)
基材としてフィルム支持体を用い、高屈折率層および低屈折率層を以下の構成に変更した以外は実施例2と同様にして光反射フィルムを作成した。
【0157】
<基材2>
基材2として、ポリエチレンテレフタレートフィルム(A4300、両面易接着層、厚さ:50μm、長さ200m×幅210mm、東洋紡績株式会社製)を準備した。
【0158】
<反射層2の形成>
《低屈折率層用塗布液》
はじめに低屈折率層用塗布液を調製した。具体的には、430部のコロイダルシリカ(10質量%)(スノーテックスOXS;日産化学工業株式会社製)、150部のホウ酸水溶液(3質量%)、85部の水、300部のポリビニルアルコール(4質量%)(JP−45;重合度:4500;ケン化度:88mol%;日本酢ビ・ポバール株式会社製)、3部の界面活性剤(5質量%)(ソフタゾリンLSB−R;川研ファインケミカル株式会社製)、を45℃でこの順に添加した。そして、純水で1000部に仕上げ、低屈折率層用塗布液を調製した。
【0159】
《高屈折率層用塗布液》
次に、高屈折率層用塗布液を調製した。具体的には、あらかじめシリカ変性酸化チタン粒子の分散液を調製し、これに溶媒等を添加した。
【0160】
シリカ変性酸化チタン粒子の分散液は以下のように調製した。
【0161】
硫酸チタン水溶液を公知の手法により熱加水分解して酸化チタン水和物を得た。得られた酸化チタン水和物を水に懸濁させて、水性懸濁液(TiO濃度:100g/L)10Lを得た。これに水酸化ナトリウム水溶液(濃度10mol/L)30Lを撹拌下で添加し、90℃に昇温して、5時間熟成した。得られた溶液を塩酸で中和し、ろ過、水洗することで、塩基処理チタン化合物を得た。
【0162】
次に、塩基処理チタン化合物をTiO濃度20g/Lになるよう純水に懸濁させて撹拌した。撹拌下、TiO量に対し0.4mol%の量のクエン酸を添加した。95℃まで昇温し、濃塩酸を塩酸濃度30g/Lとなるように加え、液温を維持して3時間撹拌した。ここで、得られた混合液のpHおよびゼータ電位を測定したところ、pHは1.4、ゼータ電位は+40mVであった。また、ゼータサイザーナノ(マルバーン社製)により粒径測定を行ったところ、体積平均粒径は35nm、単分散度は16%であった。
【0163】
ルチル型酸化チタン粒子を含む20.0質量%酸化チタンゾル水系分散液1kgに純水1kgを添加して、10.0質量%酸化チタンゾル水系分散液を調製した。
【0164】
上記の10.0質量%酸化チタンゾル水系分散液0.5kgに、純水2kgを加えた後、90℃に加熱した。その後、SiO濃度が2.0質量%のケイ酸水溶液1.3kgを徐々に添加した。得られた分散液をオートクレーブ中、175℃で18時間加熱処理を行い、さらに濃縮することで、SiOで被覆されたルチル型構造を有する酸化チタンを含む、20質量%のシリカ変性酸化チタン粒子の分散液(ゾル水分散液)を得た。
【0165】
このように調製したシリカ変性酸化チタン粒子のゾル水分散液に溶媒等を添加して高屈折率層用塗布液を調製した。具体的には、300部のシリカ変性酸化チタン粒子のゾル水分散液(20.0質量%)、100部のクエン酸水溶液(1.92質量%)、20部のポリビニルアルコール(10質量%)(PVA−103、重合度:300、ケン化度:99mol%、株式会社クラレ製)、100部のホウ酸水溶液(3質量%)、350部のポリビニルアルコール(4質量%)(PVA−124、重合度:2400、ケン化度:88mol%、株式会社クラレ製)、1部の界面活性剤(5質量%)(ソフタゾリンLSB−R、川研ファインケミカル株式会社製)を45℃でこの順に添加した。そして、純水で1000部に仕上げ、高屈折率層用塗布液を調製した。
【0166】
《塗布、乾燥》
20層重層塗布可能なスライドホッパー塗布装置を用い、低屈折率層用塗布液および高屈折率層用塗布液を45℃に保温しながら、45℃に加温した基材2上に、21層重層塗布を行った。この際、最下層および最上層は低屈折率層とし、それ以外は低屈折率層および高屈折率層がそれぞれ交互に積層されるように設定した。塗布量については、乾燥時の膜厚が低屈折率層は各層150nm、高屈折率層は各層130nmになるように調節した。なお、前記膜厚は、製造した光反射フィルムを切断し、その切断面を電子顕微鏡により観察することで確認した。この際、2つの層間の界面を明確に観測することができない場合には、XPS表面分析装置により得た層中に含まれるTiOの厚さ方向のXPSプロファイルにより界面を決定した。
【0167】
塗布直後、5℃の冷風を吹き付けてセットした。このとき、表面を指で触れても指に何もつかなくなるまでの時間(セット時間)は5分であった。
【0168】
セット完了後、80℃の温風を吹き付けて乾燥させて、20層からなる重層塗布品を作製した。
【0169】
(実施例4)
実施例3からハードコート層の照射量を3J/cmに変更し、粘着層塗布液の硬化剤を5部から7部に変更した以外は同様にして光反射フィルムを作成した。
【0170】
(実施例5)
実施例3から粘着層を以下の記載の通り変更した以外は同様にして光反射フィルムを作成した。
【0171】
粘着剤:サイデン化学工業製 OC−8962K(固形分35%) 100部
BASF製UV吸収剤 Tinuvin477(固形分80%) 2.1部
信越化学工業製 シランカップリング剤 KBM−403(固形分100%) 0.09部
イソシアネート系硬化剤 日本ポリウレタン工業製 コロネートL55E(固形分55%) 0.5部
(実施例6)
実施例3から粘着層を以下の記載の通り変更した以外は同様にして作成した。
【0172】
粘着剤:サイデン化学工業製 TPO−3232(固形分35%) 100部
BASF製UV吸収剤 Tinuvin477(固形分80%) 2.1部
イソシアネート系硬化剤 日本ポリウレタン工業製 コロネートL55E(固形分55%) 0.5部
(比較例1)
実施例1から粘着層を以下の記載の通り変更した以外は同様にして光反射フィルムを作成した。
【0173】
N−2147(アクリル系粘着剤) 100部(濃度35%)
酢酸エチル 121.6部
T−477(トリアジン系UV吸収剤) 3.15部(濃度80%)
KBM403(シランカップリング剤) 0.90部(濃度10%)
コロネートL55E(トリレンジイソシアネート) 5部(濃度55%)
(比較例2)
実施例3から粘着層を比較例1の記載の通り変更した以外は同様にして光反射フィルムを作成した。
【0174】
(比較例3)
特開2007−232931の実施例1に記載の近赤外線吸収層をPET上に設け反対側に、実施例1の粘着層を作製し、光反射フィルムを作製した。
【0175】
(弾性率測定)
ガラス基材上に、ハードコート層塗布液、粘着層塗布液、をそれぞれ単独で塗布して乾燥時膜厚2μmの各々のサンプルを作製し、ナノインデンテーション法(セイコーインスツルメンツ社製、走査型プローブ顕微鏡 SPI3800Nに、HYSITRON社製、TriboScopeを装着した装置、圧子は90°Cube corner tip、最大荷重を20μN)で測定した。測定数n=3とし、弾性率の単位はPaとして、測定値の平均値を求めた。結果を下記の表1に示す。
【0176】
(粘着力測定)
粘着力の測定はJIS A5759 6.8.1に基づき測定を行った。水洗いし、アルコールで脱脂したフロート板ガラスに、短冊状(幅25mm×長さ30cm)の光反射フィルムを設置し、圧着ローラを用いて毎分約300mmの早さで1往復させて圧着した。引っ張り試験機(東洋精機株式会社製)を用いて当該サンプルを180度引きはがし試験により、粘着力(即粘着力)を求めた。結果を下記の表1に示す。
【0177】
[評価項目]
<赤外透過率>
分光光度計(積分球使用、日立製作所社製、U−4000型)を用い、各赤外遮蔽フィルム試料の300nm〜2000nmの領域における赤外透過率(800〜1300nm)を測定した。結果を下記の表1に示す。
【0178】
<曲面施工性>
作成した光反射フィルムを曲面ガラス(曲率半径3m以下)に水貼りし、目視により外観を以下の評価基準に従って評価した。結果を下記の表1に示す。
○:問題なく綺麗に貼れた
△:端部の一部にしわがみられた
×:しわが数か所見られた。
【0179】
<曲面密着性>
作成した光反射フィルムを曲面ガラス(曲率半径3m以下)に水貼りし、25℃、50%RHの条件で3ヶ月放置後、23℃、50%RHの条件で以下の評価基準に従って3カ月後の密着性及び外観を評価した。結果を下記の表1に示す。
○:問題なし
△:端部が一部浮きあがっている
×:端部に剥がれがみられた。
【0180】
<糊残り評価>
作成した光反射フィルムを曲面ガラス(曲率半径3m以下)に水貼りし、25℃、50%RHの条件で7日間放置後、23℃、50%RHの条件で引っ張り試験機(東洋精機株式会社製)を用いて引っ張り試験を行い、以下の評価基準に従って粘着力を評価した。結果を下記の表1に示す。
○:粘着力が2N以上、糊残りなし
△:粘着力が2N以上、糊が僅かに残る
×:粘着力が2N未満で糊が全面に残る。
【0181】
<耐久性>
JISB7753に規定するサンシャインウェザーメーター(スガ試験機(製)S80)を用いてブラックパネル温度計63℃、相対湿度50%、1サイクル2時間、1サイクル中18分間降雨という条件下で3000時間後の密着性を、以下の評価基準に従って評価した。
○:問題なし
△:端部が一部浮きあがっている
×:端部に剥がれがみられた。
【0182】
【表1】
【0183】
表1に示す結果から、本発明によれば、被着体特に曲面を有する被着体への密着性を確保しつつ、フィルムを被着体から剥がした際に糊残りが少なく、再度貼付けが可能であり、耐久性および遮熱性能に優れた光反射フィルムを提供することができることがわかる。
【0184】
本出願は、2013年12月18日に出願された日本特許出願番号2013−261319号に基づいており、その開示内容は、参照により全体として組み入れられている。
【符号の説明】
【0185】
1、1’ 光反射フィルム、
11 基材、
12 下引層、
13 反射層、
14 低屈折率層、
15 高屈折率層、
16 ハードコート層、
17 透明接着層、
18 基体、
L 太陽光。
図1
図2