特許第6443354号(P6443354)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6443354
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】車両の電動制動装置
(51)【国際特許分類】
   B60T 13/74 20060101AFI20181217BHJP
   F16D 65/18 20060101ALI20181217BHJP
   F16D 121/24 20120101ALN20181217BHJP
   F16D 131/02 20120101ALN20181217BHJP
【FI】
   B60T13/74 G
   F16D65/18
   F16D121:24
   F16D131:02
【請求項の数】2
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2016-10270(P2016-10270)
(22)【出願日】2016年1月22日
(65)【公開番号】特開2017-128284(P2017-128284A)
(43)【公開日】2017年7月27日
【審査請求日】2017年12月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】301065892
【氏名又は名称】株式会社アドヴィックス
(72)【発明者】
【氏名】安井 由行
(72)【発明者】
【氏名】勝山 智徳
【審査官】 山田 康孝
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−068445(JP,A)
【文献】 特開2014−075866(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 13/74
F16D 65/18
F16D 121/24
F16D 131/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の運転者の制動操作部材の操作量に応じて、該車両の車輪と一体となって回転する回転部材に摩擦部材を押圧する力である押圧力を、減速機を介して発生する電気モータと、
前記電気モータの回転角を検出する回転角センサと、
前記回転角に基づいて前記電気モータを駆動するよう、マイクロプロセッサ、及び、ブリッジ回路を実装する回路基板と、
を備えた車両の電動制動装置において、
前記回路基板は、前記電気モータと前記減速機との間に配置され、
前記回転角センサの端面が、前記回路基板に接するよう固定された、車両の電動制動装置。
【請求項2】
車両の運転者の制動操作部材の操作量に応じて、該車両の車輪と一体となって回転する回転部材に摩擦部材を押圧する力である押圧力を発生する電気モータと、
前記押圧力を検出する押圧力センサと、
前記押圧力に基づいて前記電気モータを駆動するよう、マイクロプロセッサ、及び、ブリッジ回路を実装する回路基板と、
を備えた車両の電動制動装置において、
前記押圧力センサの端面が、前記回路基板に接するよう固定された、車両の電動制動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の電動制動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、「電気回路部との一体構造とした電動ブレーキ装置において、該駆動回路の熱に対する対策を改善することを目的に、ブレーキパッドに対しモータを挟んで電気回路部DCPを設け、電気回路部DCPの金属製アウターケース500の内面に放熱面が対向するようにパワーモジュール408を設け、パワーモジュール408に対してモータ側に制御回路基板404を配置する」ことが記載されている。
【0003】
電動制動装置は、その搭載において、タイヤホイール内に収納され、且つ、サスペンションメンバ等との干渉を回避することが要求される。このため、電動制動装置には、小型化され得る構成が切望されている。特許文献1の構成では、電気モータ、及び、動力伝達機構が同軸となって構成され、各センサがセンサ端子を介して電気回路に接続される。センサには、検出部だけでなく、信号を出力するための回路等が必要となる。例えば、上記構成では、回転角センサにおいて、センサ信号は、減速機の外周部からセンサ端子によって電気回路に接続される。したがって、該構成では、電気モータの径方向において、小型化され難い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−278311号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、車両の電動制動装置において、センサと電気回路基板との接続を簡素化し、該装置を小型化し、車両への搭載性を向上し得るものを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る車両の電動制動装置は、車両の運転者の制動操作部材(BP)の操作量(Bpa)に応じて、該車両の車輪(WHL)と一体となって回転する回転部材(KTB)に摩擦部材(MSB)を押圧する力である押圧力(Fba)を、減速機(GSK)を介して発生する電気モータ(MTR)と、前記電気モータの回転角(Mka)を検出する回転角センサ(MKA)と、前記回転角(Mka)に基づいて前記電気モータ(MTR)を駆動するよう、マイクロプロセッサ(MPR)、及び、ブリッジ回路(BRG)を実装する回路基板(KBN)と、を備える。
【0007】
本発明に係る車両の電動制動装置では、前記回路基板(KBN)は、前記電気モータ(MTR)と前記減速機(GSK)との間に配置され、前記回転角センサ(MKA)の端面(Mmk)が、前記回路基板(KBN)に接するよう固定される。このように、回転角センサ(MKA)が配置されることによって、電気モータMTRの回転軸線Jmt方向の寸法が短縮され、電動制動装置の車両への搭載性が向上される。
【0008】
本発明に係る車両の電動制動装置は、車両の運転者の制動操作部材(BP)の操作量(Bpa)に応じて、該車両の車輪(WHL)と一体となって回転する回転部材(KTB)に摩擦部材(MSB)を押圧する力である押圧力(Fba)を発生する電気モータ(MTR)と、前記押圧力(Fba)を検出する押圧力センサ(FBA)と、前記押圧力(Fba)に基づいて前記電気モータ(MTR)を駆動するよう、マイクロプロセッサ(MPR)、及び、ブリッジ回路(BRG)を実装する回路基板(KBN)と、を備える。
【0009】
本発明に係る車両の電動制動装置では、前記押圧力センサ(FBA)の端面(Mfb)が、前記回路基板(KBN)に接するよう固定される。このように、押圧力センサ(FBA)が配置されることによって、電気モータMTRの回転軸線Jmt方向(変換機構HNKの回転軸線Jps方向と同一方向)の寸法が短縮され、電動制動装置の車両への搭載性が向上される。さらに、キャリパCRPに対する回路基板KBNの固定が、より堅固になり、電動制動装置の耐振動性が向上され得る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係る車両の電動制動装置の全体構成図である。
図2】駆動回路基板の第1実施形態について説明するための概要図である。
図3】合成押圧力演算ブロックを説明するための機能ブロック図である。
図4】駆動回路基板の第2実施形態について説明するための概要図である。
図5】電気モータの回転軸線に対する垂直方向視において、回転角センサ、及び、押圧力センサと、駆動回路基板との位置関係を説明するための部分断面図である。
図6】電気モータの回転軸線に対する平行方向視において、回転角センサ、及び、押圧力センサと、駆動回路基板との位置関係を説明するための配置図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態に係る車両の電動制動装置について図面を参照しつつ説明する。
【0012】
<本発明の実施形態に係る車両の電動制動装置の全体構成>
図1の全体構成図を参照して、本発明の実施形態に係る電動制動装置DSSについて説明する。車両には、電動制動装置DSS、制動操作部材BP、操作量取得手段BPA、回転部材(例えば、ブレーキディスク、ブレーキドラム)KTB、及び、摩擦部材(例えば、ブレーキパッド、ブレーキシュー)MSBが備えられる。電動制動装置DSSは、電子制御ユニットECU、通信線SGL、電力線PWL、及び、制動手段BRKにて構成される。
【0013】
制動操作部材(例えば、ブレーキペダル)BPは、運転者が車両を減速するために操作する部材である。制動操作部材BPの操作に応じて、制動手段BRKによって、車輪WHLの制動トルクが調整される。その結果として、車輪WHLに制動力が発生され、走行中の車両が減速される。
【0014】
制動操作部材BPには、操作量取得手段BPAが設けられる。操作量取得手段BPAによって、制動操作部材BPの操作量(制動操作量)Bpaが取得(検出)される。操作量取得手段BPAとして、マスタシリンダの圧力を検出するセンサ(圧力センサ)、制動操作部材BPの操作力を検出するセンサ(踏力センサ)、及び、制動操作部材BPの操作変位を検出するセンサ(ストロークセンサ)のうちの、少なくとも1つが採用される。従って、制動操作量Bpaは、マスタシリンダ圧力、ブレーキペダル踏力、及び、ブレーキペダルストロークのうちの少なくとも何れか1つに基づいて演算される。検出された制動操作量Bpaは、電子制御ユニットECUに入力される。
【0015】
≪電子制御ユニットECU≫
電子制御ユニットECUは、目標押圧力演算ブロックFBT、車体側通信部CMB、及び、コネクタCNCにて構成される。なお、電子制御ユニットECUは、制御手段(コントローラ)CTLの一部に相当する。
【0016】
目標押圧力演算ブロックFBTでは、摩擦部材MSBが回転部材KTBを押す力(押圧力)に関する目標値(目標押圧力)Fbtが演算される。具体的には、目標押圧力Fbtは、制動操作量Bpa、及び、予め設定された演算マップCHfbに基づいて、制動操作量Bpaが増加するにしたがって目標押圧力Fbtがゼロから単調増加するように演算される。
【0017】
目標押圧力Fbtは、車体側通信部CMBに入力される。車体側通信部CMBによって、通信線SGL、及び、コネクタCNCを介して、制動手段BRK内の回路基板KBN(特に、車輪側通信部CMW)に、信号(Fbt等)が送信される。コネクタCNCにて接続される通信線SGLは、車体に固定される電子制御ユニットECUと、車輪に固定される制動手段BRKとの間の通信手段である。信号線SGLとして、シリアル通信バス(例えば、CANバス)が採用され得る。また、コネクタCNCには、電力線PWLが接続される。電力線PWLによって、電子制御ユニットECUから、制動手段BRKに電力の供給が行われる。
【0018】
≪制動手段(ブレーキアクチュエータ)BRK≫
制動手段BRKは、車輪WHLに設けられ、車輪WHLに制動トルクを与え、制動力を発生させる。制動手段BRKによって、走行中の車両は減速される。制動手段BRKとして、所謂、ディスク型制動装置(ディスクブレーキ)の構成が例示されている。この場合、摩擦部材MSBはブレーキパッドであり、回転部材KTBはブレーキディスクである。制動手段BRKは、ドラム型制動装置(ドラムブレーキ)であってもよい。ドラムブレーキの場合、摩擦部材MSBはブレーキシューであり、回転部材KTBはブレーキドラムである。
【0019】
制動手段BRK(ブレーキアクチュエータ)は、ブレーキキャリパCRP、押圧部材PSN、電気モータMTR、回転角センサMKA、減速機GSK、入力部材(入力シャフト)SFI、出力部材(出力シャフト)SFO、動力変換機構HNK、押圧力センサFBA、及び、駆動回路基板KBNにて構成される。上記の各部材(PSN等)は、ブレーキキャリパCRPの内部に収納されている。
【0020】
ブレーキキャリパCRP(単に、キャリパともいう)として、浮動型キャリパが採用され得る。キャリパCRPは、2つの摩擦部材(ブレーキパッド)MSBを介して、回転部材(ブレーキディスク)KTBを挟み込むように構成される。キャリパCRP内にて、押圧部材(ブレーキピストン)PSNが、回転部材KTBに対して移動(前進、又は、後退)される。押圧部材PSNの移動によって、摩擦部材MSBが回転部材KTBに押し付けられて摩擦力が発生する。キャリパCRPは、その一部が箱型構造にて構成される。具体的には、キャリパCRPは、内部に空間(スペース)をもち、ここに各種部材(回路基板KBN等)が収納される。
【0021】
押圧部材PSNの移動は、電気モータMTRの動力によって行われる。具体的には、電気モータMTRの出力(モータ軸まわりの回転動力)が、入力部材(入力シャフト)SFIから、減速機GSKを介して、出力部材(出力シャフト)SFOに伝達される。そして、出力部材SFOの回転動力(トルク)が、動力変換機構HNK(例えば、ねじ機構)によって、直線動力(押圧部材PSNの軸方向の推力)に変換され、押圧部材PSNに伝達される。その結果、押圧部材PSNが、回転部材KTBに対して移動される。押圧部材PSNの移動によって、摩擦部材MSBが、回転部材KTBを押す力(押圧力)が調整される。回転部材KTBは車輪WHLに固定されているため、摩擦部材MSBと回転部材KTBとの間に摩擦力が発生し、車輪WHLの制動力が調整される。
【0022】
電気モータMTRは、押圧部材(ピストン)PSNを駆動(移動)するための動力源である。例えば、電気モータMTRとして、ブラシ付モータ、又は、ブレシレスモータが採用され得る。電気モータMTRの回転方向において、正転方向が、摩擦部材MSBが回転部材KTBに近づいていく方向(押圧力が増加し、制動トルクが増加する方向)に相当し、逆転方向が、摩擦部材MSBが回転部材KTBから離れていく方向(押圧力が減少し、制動トルクが減少する方向)に相当する。
【0023】
回転角センサMKAは、電気モータMTRのロータ(回転子)の位置(回転角)Mkaを取得(検出)する。回転角センサMKAは、回路基板KBNに面実装されている。そして、検出された回転角(検出値)Mkaは、回路基板KBNに入力される。
【0024】
押圧力センサFBAは、押圧部材PSNが摩擦部材MSBを押す力(押圧力)Fbaを取得(検出)する。検出された押圧力(検出値)Fbaは、回路基板KBNに、押圧力ピンPFBを介して、入力される。例えば、押圧力センサFBAは、出力部材SFOにおいて、動力変換機構HNKとキャリパCRPとの間に設けられる。
【0025】
駆動回路基板(単に、回路基板ともいう)KBNは、電気モータMTRを駆動する電気回路である。回路基板KBNは、マイクロプロセッサ(演算処理装置であり、単に、プロセッサともいう)MPR、ブリッジ回路BRG等のハードウエアと、マイクロプロセッサMPRにプログラムされた制御アルゴリズム(ソフトウエア)にて構成される。電気モータMTRと回路基板KBNとは、モータピンPMTを介して、電気接続される。回路基板KBNは、キャリパCRPに固定され、電気モータMTRと減速機GSKとの間に配置される。なお、回路基板KBNは、制御手段(コントローラ)CTLの一部に相当する。
【0026】
回路基板KBNには、コネクタCNCが固定されている。電子制御ユニットECUから信号線SGLを介して送信された目標押圧力Fbtに基づいて、電気モータMTRの出力トルク(回転動力)が制御される。また、電子制御ユニットECUから電力線PWLを介して伝達される電力が、コネクタCNCを介して、回路基板KBNに入力される。この電力が、電気モータMTRの動力源となるとともに、回転角センサMKA、及び、押圧力センサFBAの電源となる。
【0027】
<駆動回路基板KBNの第1実施形態>
図2の概要図を参照して、駆動回路基板(単に、回路基板ともいう)KBNの第1実施形態について説明する。これは、電気モータMTRとして、ブラシ付モータ(単に、ブラシモータともいう)が採用される例である。回路基板KBNによって、電気モータMTRが駆動される。
【0028】
電気モータ(ブラシモータ)MTRは、モータピンPMTによって、回路基板KBNと電気接続される。回路基板KBNにはピンPMT用のスルーホール(貫通孔)Ts、Tbが設けられ、2つのモータピンPMTが、2つのスルーホールTs、Tbに圧入され、電気的な接続状態が形成される。具体的には、モータピンPMTの端子として、プレスフィットコネクタ(プレスフィット端子)が採用される。
【0029】
回路基板KBNには、押圧力センサFBAの取得結果(実押圧力)Fbaが、押圧力ピンPFBによって入力される。回路基板KBNには、押圧力ピンPFB用のスルーホール(貫通孔)Tfが設けられ、ピンPFBが、スルーホールTfに圧入され、電気的な接続状態が形成される。具体的には、押圧力ピンPFBの端子として、プレスフィットコネクタが採用される。
【0030】
ここで、「プレスフィットコネクタ(プレスフィット端子)」は、はんだを使用しない電気接続である。ピン端子(プレスフィット端子)が、回路基板(プリント基板)KBNにあけられたスルーホール(貫通孔)に挿入される。そして、プレスフィット端子の外周とスルーホールの内周とが互いに接触することで通電が行われる。即ち、ピンの端子部分(プレスフィット部分)がプリント基板へ圧入され、その際の弾性変形によって発生する弾性力で、接触通電がなされる。このため、ピン端子に弾性を持たせるコンプライアント形状が必要であり、例えば、ピン端子に切欠き部が形成され、その切欠き部にたわみが生じるような形状が採用され得る。
【0031】
回転角センサMKAは、回路基板KBNに面実装される。したがって、回転角センサMKAの取得結果(モータ回転角)Mkaは、回路基板KBNに直接入力される。
【0032】
回路基板KBNは、コネクタCNC、車輪側通信部CMW、モータ制御演算部CMT、ブリッジ回路BRG、及び、ノイズ低減フィルタ(ノイズ低減回路ともいう)LPFにて構成される。回路基板KBNは、キャリパCRPに固定される。
【0033】
回路基板(モータ駆動用の電気回路基板)KBNには、コネクタCNCが固定されている。コネクタCNCによって、電力線PWL、及び、信号線SGLが、電子制御ユニットECUと制動手段BRKとの間で接続される。電力線PWLを通して、車体側に固定された蓄電池BAT、発電機ALTから、電力が、回路基板KBNに供給される。また、信号線(通信バス)SGLを通して、車体側の電子制御ユニットECU(特に、車体側通信部CMB)から、目標押圧力Fbtが、回路基板KBN(特に、車輪側通信部CMW)に入力される。
【0034】
回路基板KBNの車輪側通信部CMWは、電子制御ユニットECUの車体側通信部CMBから、信号線SGLを介して、押圧力の目標値Fbtを受信する。車輪側通信部CMWは、通信プロトコルであり、回路基板KBNに実装されるマイクロプロセッサ(単に、プロセッサともいう)MPRに組み込まれている。
【0035】
≪モータ制御演算部CMT≫
モータ制御演算部CMTでは、電気モータMTRを駆動するため、電気モータMTRへの通電量(即ち、電気モータMTRの出力トルク)、及び、通電方向(即ち、電気モータMTRの回転方向)が制御される。モータ制御演算部CMTは、指示通電量演算ブロックIST、押圧力フィードバック制御ブロックFBC、目標通電量演算ブロックIMT、パルス幅変調ブロックPWM、及び、スイッチング制御ブロックSWTにて構成される。モータ制御演算部CMTは、制御アルゴリズムであり、回路基板KBN上に実装されるプロセッサMPR内にプログラムされている。
【0036】
指示通電量演算ブロックISTは、目標押圧力Fbt、及び、予め設定された演算特性(演算マップ)CHs1、CHs2に基づいて、指示通電量Istを演算する。指示通電量Istは、目標押圧力Fbtが達成されるための、電気モータMTRへの通電量の目標値である。具体的には、目標押圧力Fbtの増加に伴い、指示通電量Istが単調増加するように演算される。ここで、指示通電量Istの演算マップは、制動手段BRKのヒステリシスを考慮して、2つの特性CHs1、CHs2で構成されている。
【0037】
ここで、「通電量」とは、電気モータMTRの出力トルクを制御するための状態量(変数)である。電気モータMTRは電流に概ね比例するトルクを出力するため、通電量の目標値として電気モータMTRの電流目標値が用いられ得る。また、電気モータMTRへの供給電圧を増加すれば、結果として電流が増加されるため、目標通電量として供給電圧値が用いられ得る。さらに、パルス幅変調におけるデューティ比によって供給電圧値が調整され得るため、このデューティ比が通電量として用いられ得る。
【0038】
押圧力フィードバック制御ブロックFBCは、目標押圧力(目標値)Fbt、実押圧力(検出値)Fba、及び、モータ回転角(検出値)Mkaに基づいて、押圧力フィードバック通電量(単に、フィードバック通電量ともいう)Ibtを演算する。押圧力フィードバック制御ブロックFBCは、合成押圧力演算ブロックFBG、及び、フィードバック通電量演算ブロックIBTにて構成される。
【0039】
合成押圧力演算ブロックFBGでは、実際の押圧力(検出値)Fba、及び、実際のモータ回転角(検出値)Mkaに基づいて、合成押圧力Fbgが演算される。合成押圧力Fbgは、押圧力の実際値が、検出値Fbaよりも高精度で演算されたものである。合成押圧力演算ブロックFBGでの演算方法については後述する。
【0040】
次に、押圧力フィードバック制御ブロックFBCでは、目標押圧力Fbtと合成押圧力Fbgとの偏差(押圧力偏差)eFb(=Fbt−Fbg)が演算される。押圧力フィードバック制御ブロックFBC内のフィードバック通電量演算ブロックIBTにて、押圧力偏差eFbに基づいて、押圧力の目標値Fbtと合成値(実際値)Fbgとが一致するように、押圧力フィードバック通電量Ibtが演算される。
【0041】
具体的には、押圧力偏差eFbに比例ゲイン(所定値)Kpが乗算されて、フィードバック通電量Ibtの比例項が決定される。押圧力偏差eFbの微分値が演算され、これに微分ゲイン(所定値)Kdが乗算されて、フィードバック通電量Ibtの微分項が演算される。また、押圧力偏差eFbの積分値が演算され、これに積分ゲイン(所定値)Kiが乗算されて、フィードバック通電量Ibtの積分項が演算される。そして、フィードバック通電量Ibtの比例項、微分項、及び、積分項が加算されて、最終的なフィードバック通電量Ibtが決定される。即ち、押圧力フィードバック制御ブロックFBCでは、所謂、押圧力に基づくフィードバック制御(PID制御)に基づいて、フィードバック通電量Ibtが決定される。
【0042】
目標通電量演算ブロックIMTでは、電気モータMTRへの最終的な目標値である目標通電量Imtが演算される。指示通電量Istは目標押圧力Fbtに相当する値として演算されるが、制動手段BRKの動力伝達部材の効率変動により目標押圧力Fbtと実際の押圧力との間に誤差が生じる場合がある。そこで、指示通電量Istがフィードバック通電量Ibtによって調整され、上記の誤差を減少するように、目標通電量Imtが決定される。具体的には、指示通電量Istに対して、フィードバック通電量Ibtが加えられて、目標通電量Imtが演算される。
【0043】
目標通電量Imtの符号(値の正負)に基づいて電気モータMTRの回転方向が決定され、目標通電量Imtの大きさに基づいて電気モータMTRの出力(回転動力)が制御される。例えば、目標通電量Imtの符号が正符号である場合(Imt>0)には、電気モータMTRが正転方向(押圧力の増加方向)に駆動され、目標通電量Imtの符号が負符号である場合(Imt<0)には、電気モータMTRが逆転方向(押圧力の減少方向)に駆動される。また、目標通電量Imtの絶対値が大きいほど電気モータMTRの出力トルクが大きくなるように制御され、目標通電量Imtの絶対値が小さいほど出力トルクが小さくなるように制御される。
【0044】
パルス幅変調ブロックPWMでは、目標通電量Imtに基づいて、パルス幅変調を行うための指示値(目標値)Dutが演算される。具体的には、パルス幅変調ブロックPWMでは、目標通電量Imt、及び、予め設定される特性(演算マップ)に基づいて、パルス幅のデューティ比Dut(周期的なパルス波において、その周期に対するオン状態の割合)が決定される。併せて、パルス幅変調ブロックPWMでは、目標通電量Imtの符号(正符号、又は、負符号)に基づいて、電気モータMTRの回転方向が決定される。例えば、電気モータMTRの回転方向は、正転方向が正(プラス)の値、逆転方向が負(マイナス)の値として設定される。入力電圧(電源の電圧)、及び、デューティ比Dutによって最終的な出力電圧が決まるため、パルス幅変調ブロックPWMでは、電気モータMTRの回転方向と、電気モータMTRへの通電量(即ち、電気モータMTRの出力)が決定される。
【0045】
さらに、パルス幅変調ブロックPWMでは、所謂、電流フィードバック制御が実行される。通電量取得手段IMAの検出値(例えば、実際の電流値)Imaが、パルス幅変調ブロックPWMに入力され、目標通電量Imtと、実際の通電量Imaとの偏差(通電量偏差)eImに基づいて、デューティ比Dutが修正(微調整)される。この電流フィードバック制御によって、目標値Imtと実際値Imaとが一致するよう制御され、高精度なモータ制御が達成され得る。
【0046】
スイッチング制御ブロックSWTでは、デューティ比(目標値)Dutに基づいて、ブリッジ回路BRGを構成するスイッチング素子SW1乃至SW4を駆動する信号(駆動信号)Sw1乃至Sw4が決定される。デューティ比Dutが大きいほど、単位時間当りの通電時間が長くされるように駆動信号Sw1〜Sw4が決定され、より大きな電流が電気モータMTRに流される。これらの駆動信号Sw1〜Sw4によって、各スイッチング素子SW1〜SW4における通電/非通電、及び、単位時間当りの通電時間が制御される。即ち、駆動信号Sw1〜Sw4によって、電気モータMTRの回転方向と出力トルクが制御される。以上、モータ制御演算部CMTについて説明した。
【0047】
ブリッジ回路BRGは、双方向の電源を必要とすることなく、単一の電源で電気モータへの通電方向が変更され、電気モータの回転方向(正転方向、又は、逆転方向)が制御され得る回路である。ブリッジ回路BRGは、スイッチング素子SW1乃至SW4によって構成され、回路基板KBNに実装されている。スイッチング素子SW1〜SW4は、電気回路の一部をオン(通電)、又は、オフ(非通電)に切り替えできる素子である。例えば、スイッチング素子SW1〜SW4として、MOS−FET、IGBTが用いられる。
【0048】
電気モータMTRが正転方向に駆動される場合には、スイッチング素子SW1、SW4が通電状態(オン状態)にされ、スイッチング素子SW2、SW3が非通電状態(オフ状態)にされる。逆に、電気モータMTRが逆転方向に駆動される場合には、スイッチング素子SW1、SW4が非通電状態(オフ状態)にされ、スイッチング素子SW2、SW3が通電状態(オン状態)にされる。即ち、電気モータMTRの逆転駆動では、電流が正転駆動とは逆方向に流される。
【0049】
ブリッジ回路BRGには、電気モータ用の通電量取得手段(例えば、電流センサ)IMAが設けられる。通電量取得手段IMAは、電気モータMTRの通電量(実際値)Imaを取得する。例えば、モータ電流センサIMAによって、実通電量Imaとして、実際に電気モータMTRに流れる電流値が検出され得る。
【0050】
回路基板KBNには、供給電力を安定化するために、ノイズ低減フィルタ(ノイズ低減回路ともいう)LPFが実装される。ノイズ低減回路LPFは、少なくとも1つのコンデンサ(キャパシタ)、及び、少なくとも1つのインダクタ(コイル)の組み合わせにて構成される。ノイズ低減回路LPFは、電圧変動等を低減するための、安定化回路であり、所謂、LC回路(LCフィルタともいう)である。
【0051】
<合成押圧力演算ブロックFBG>
図3の機能ブロック図を参照して、合成押圧力演算ブロックFBGの詳細について説明する。合成押圧力演算ブロックFBGは、第1寄与度演算ブロックKY1、第2寄与度演算ブロックKY2、及び、剛性値演算ブロックGCPで構成される。合成押圧力演算ブロックFBGでは、押圧力センサFBAの検出値Fba、及び、回転角センサMKAの検出値Mkaに基づいて、合成押圧力(演算値)Fbgが演算される。ここで、合成押圧力Fbgは、検出値Fbaの精度が、検出値Mkaによって補償された、高精度な押圧力の実際値である。
【0052】
第1寄与度演算ブロックKY1にて、制動操作量Bpaに基づいて、第1寄与度Ky1が演算される。第1寄与度Ky1は、合成押圧力Fbgの演算における押圧力センサFBAの検出値Fbaの影響度合を決定する係数である。第1寄与度Ky1は、制動操作量Bpa、及び、演算特性(演算マップ)CHkyに基づいて演算される。操作量Bpaが所定値bk1未満の場合には、第1寄与度Ky1は「0」と演算され、操作量Bpaが所定値bk1以上、且つ、所定値bk2(>bk1)未満の場合には、第1寄与度Ky1は操作量Bpaの増加にしたがって「0」から「1」まで増加(単調増加)される。操作量Bpaが所定値bk2以上の場合には、第1寄与度Ky1は「1」と演算される。ここで、Ky1=0の場合には、合成押圧力Fbgの演算において、検出押圧力Fbaは用いられない。
【0053】
第2寄与度演算ブロックKY2にて、第1寄与度Ky1に基づいて、第2寄与度Ky2が演算される。具体的には、「Ky2=1−Ky1」の式によって、第2寄与度Ky2が決定される。ここで、Ky2=0の場合には、合成押圧力Fbgの演算において、推定押圧力Fbeは用いられない。
【0054】
剛性値演算ブロックGCPにて、制動操作量Bpaに基づいて、剛性値Gcpが演算される。剛性値Gcpは、制動手段BRK全体の剛性(ばね定数)に相当する。即ち、剛性値Gcpは、キャリパCRP、及び、摩擦部材MSBの直列ばねとしてのばね定数を表す。剛性値Gcpは、制動操作量Bpa、及び、剛性特性(演算マップ)CHgcに基づいて演算される。ここで、剛性特性CHgcは、操作量Bpaに基づいて剛性値Gcpを推定するための特性である。操作量Bpaが所定値bg1未満の場合には、剛性値Gcpは所定値gc1と演算され、操作量Bpaが所定値bg1以上、且つ、所定値bg2(>bg1)未満の場合には、剛性値Gcpは操作量Bpaの増加にしたがって所定値gc1から所定値gc2(>gc1)まで増加(単調増加)される。操作量Bpaが所定値bg2以上の場合には、剛性値Gcpは所定値gc2と演算される。
【0055】
剛性値Gcp、及び、電気モータMTRの回転角Mkaに基づいて、押圧力の推定値Fbeが演算される。押圧力推定値Fbeは、回転角Mkaから推定される押圧力である。具体的には、制動手段BRK全体のばね定数を表す剛性値Gcpに、電気モータMTRの実際の回転角Mkaが乗算されて、押圧力の推定値Fbeが演算される。
【0056】
押圧力検出値(押圧力センサFBAの検出値)Fba、及び、第1寄与度Ky1に基づいて、合成押圧力Fbgにおける検出値Fbaの成分である検出値成分Fbasが演算される。検出値成分Fbasは、第1寄与度Ky1によって、その影響度合が考慮された押圧力検出値Fbaの成分である。具体的には、押圧力実際値Fbaに係数Ky1が乗算されて決定される(即ち、Fbas=Ky1×Fba)。
【0057】
押圧力推定値(Mkaに基づいて推定された押圧力)Fbe、及び、第2寄与度Ky2に基づいて、合成押圧力Fbgにおける推定値Fbeの成分である推定値成分Fbesが演算される。推定値成分Fbesは、第2寄与度Ky2によって、その影響度合が考慮された押圧力推定値Fbeの成分である。具体的には、押圧力推定値Fbeに係数Ky2が乗算されて決定される(即ち、Fbes=Ky2×Fbe=Ky2×Gcp×Mka)。
【0058】
そして、押圧力検出値Fbaによる成分(検出値成分)Fbas、及び、押圧力推定値Fbeによる成分(推定値成分)Fbesが加算されて、合成押圧力Fbgが演算される(即ち、Fbg=Fbas+Fbes=Ky1×Fba+Ky2×Fbe)。即ち、合成押圧力Fbgは、操作量Bpaの大きさに応じて、検出値Fba、及び、推定値Fbeの影響度合が加味された演算された、精度の高い押圧力の実際値である。
【0059】
押圧力の検出値Fbaは、「歪み(力が作用した場合の変形)」を検出する素子(歪み検出素子)によって得られる。一般的に、歪み検出素子からはアナログ信号が送信されて、それがアナログ・デジタル変換(AD変換)されて、プロセッサMPRに取り込まれる。検出値Fbaは、アナログ・デジタル変換手段ADHを介して、プロセッサMPRに入力されるため、押圧力検出の分解能(解像度)は、AD変換の性能(分解能)に依存する。一方、電気モータの実際の位置(回転角)は、ホールIC、或いは、レゾルバからのデジタル信号として、プロセッサMPRに取り込まれる。さらに、電気モータの出力は、減速機GSK等によって減速されて押圧力に変換される。そのため、押圧力取得手段FBAにて取得される押圧力検出値Fbaよりも、回転角センサMKAにて取得される電気モータMTRの回転角Mkaから演算される押圧力推定値Fbeの方が、押圧力の分解能(解像度)が高い。一方、押圧力推定値Fbeは、アクチュエータBRKの剛性(ばね定数)Gcpに基づいて演算される。剛性値Gcpは摩擦部材MSBの磨耗状態によって変動するため、押圧力検出値Fbaは、押圧力推定値Fbeよりも信頼性が高い(真値からの誤差が小さい)。
【0060】
また、電気モータの位置Mkaに対する押圧力Fbaの特性(即ち、制動装置全体のばね定数の変化)は、非線形であり、「下に凸」の形状をもつ。このため、押圧力が大きい領域では、押圧力の検出感度(変位に対する押圧力の変化量)は十分に高いため、押圧力検出値Fbaが、押圧力フィードバック制御に利用可能である。しかし、押圧力が小さい領域では、押圧力検出値Fbaの検出感度は低くなるため、押圧力検出値Fbaに加え(又は、代えて)、押圧力推定値Fbeが、押圧力フィードバック制御に採用されることが望ましい。
【0061】
以上の知見から、制動操作量Bpaが小さい場合には、第1寄与度Ky1が相対的に小さい値に演算されるとともに、第2寄与度Ky2が相対的に大きい値に演算される。この結果、微小な制動トルクの調整が求められる押圧力が小さい領域(即ち、制動操作量が小さく、制動トルクが小さい領域)において、発生している押圧力検出の分解能(最下位ビット、LSB)が向上され、精密な押圧力フィードバック制御が実行され得る。そして、制動操作量Bpaが大きい場合には、第1寄与度Ky1が相対的に大きい値に演算されるとともに、第2寄与度Ky2が相対的に小さい値に演算され、回転角Mkaから推定された押圧力推定値Fbeの影響度合が減少され、実際に検出された押圧力検出値Fbaの影響度合が増加される。この結果、制動操作量Bpaに対する車両減速度の関係が一定であることが求められる押圧力が大きい領域(即ち、制動操作量が大きく、制動トルクが大きい領域)では、信頼性の高い(即ち、真値からの誤差が小さい押圧力に基づく)押圧力フィードバック制御が実行され得る。
【0062】
さらに、制動操作量Bpaが所定操作量(所定値)bk1よりも小さい場合には、第1寄与度Ky1がゼロに設定され得る。また、制動操作量Bpaが所定操作量(所定値)bk2よりも大きい場合には、第2寄与度Ky2がゼロに演算される。従って、操作量Bpaが小さい(制動トルクが小さい)領域での押圧力フィードバック制御の分解能が向上されるとともに、操作量Bpaが大きい(制動トルクが大きい)領域での押圧力フィードバック制御の信頼性が向上され得る。
<駆動回路基板KBNの第2実施形態>
図4の概要図を参照して、駆動回路基板KBNの第2実施形態について説明する。これは、電気モータMTRとして、ブラシレスDCモータ(3相ブラシレスモータ、単に、ブラシレスモータともいう)が採用される例である。この場合、ブリッジ回路BRGは、6つのスイッチング素子ZW1乃至ZW6によって構成される。ここで、車輪側通信部CMW、及び、モータ制御演算部CMTは、ブラシモータの場合と同様であるため、その記載は省略されている。
【0063】
ブラシレスモータMTRでは、ブラシ付モータの機械式整流子に代えて、電気回路によって電流の転流が行われる。ブラシレスモータMTRの構造では、回転子(ロータ)が永久磁石に、固定子(ステータ)が巻線回路(電磁石)とされる。そして、ロータの回転位置(回転角)Mkaが検出され、回転角Mkaに合わせてスイッチング素子ZW1乃至ZW6が切り替えられることによって、供給電流が転流される。ブラシレスモータMTRの回転子の位置(回転角)Mkaは、回転角センサMKAによって検出される。スイッチング素子ZW1乃至ZW6にて構成されるブリッジ回路BRGは、キャリパCRPに固定されている駆動回路基板KBNに実装される。
【0064】
回路基板KBNには、コネクタCNCが固定されている。信号線SGL、及び、電力線PWLによって供給される、信号Fbt、及び、電力が、車体側に設けられた電子制御ユニットECUから、コネクタCNCを介して、回路基板KBNに入力される。
【0065】
ブラシモータの場合と同様に、パルス幅変調ブロックPWMにて、通電量の目標値Imt、及び、実際値Imaに基づいてパルス幅変調を行うよう、デューティ比(目標値)Dutが演算される。また、パルス幅変調ブロックPWMにて、目標通電量Imtの大きさ(絶対値)に基づいて、パルス幅のデューティ比Dutが決定され、目標通電量Imtの符号(値の正負)に基づいて電気モータMTRの回転方向が決定される。
【0066】
そして、スイッチング制御ブロックSWTにて、デューティ比Dutに基づいて、スイッチング素子ZW1乃至ZW6の通電状態/非通電状態を制御する駆動信号Zw1乃至Zw6が演算される。ここで、ブラシレスモータでは、回転角センサMKAによって、電気モータMTRのロータ位置(回転角)Mkaが取得され、これに基づいて、3相ブリッジ回路BRGを構成する6つのスイッチング素子ZW1〜ZW6を駆動するための信号Zw1〜Zw6が決定される。スイッチング素子ZW1〜ZW6によって、電気モータMTRのU相、V相、及び、W相のコイル通電量の方向(即ち、励磁方向)が順次切り替えられて、電気モータMTRが駆動される。ブラシレスモータMTRの回転方向(正転、或いは、逆転方向)は、ロータと励磁する位置との関係によって決定される。
【0067】
同様に、電気モータMTRの回転方向において、正転方向は、摩擦部材MSBと回転部材KTBとを近づかせ、制動トルクが増加され、走行中の車両の減速度が増加される回転方向であり、逆転方向は、摩擦部材MSBを回転部材KTBから引き離し、制動トルクが減少され、走行中の車両の減速度が減少される回転方向である。
【0068】
ブラシレスモータMTRのU相、V相、及び、W相のコイルは、3つのモータピンPMTによって、夫々、回路基板KBN(特に、スルーホールTu、Tv、Tw)に電気接続されている。ここで、モータピンPMTは、プレスフィットコネクタである。また、回転角センサMKAは、回路基板KBNに、面実装されることによって電気接続される。
【0069】
回路基板KBNには、供給電力を安定化するために、少なくとも1つのコンデンサ(キャパシタ)、及び、少なくとも1つのインダクタ(コイル)の組み合わせにて、ノイズ低減(電力変動低減)のフィルタ回路(LC回路であり、LCフィルタともいう)が形成される。
【0070】
例えば、コンデンサCND、及び、第1、第2インダクタIND1、IND2が、回路基板KBNに実装される。これらが、組み合わされてローパスフィルタ(T型フィルタ)LPFが形成され、ノイズ低減が行われ得る。具体的には、T型のノイズ低減回路LPFは、2つの直列インダクタIND1、IND2、及び、1つの並列コンデンサCNDにて構成され、高調波の減衰性能(減衰帯域での減衰量)が向上され得る。
【0071】
また、X部の吹き出しに図示されるように、第1、第2コンデンサCND1、CND2、及び、インダクタINDが、回路基板KBNに実装され、π型のローパスフィルタ(ノイズ低減フィルタ)LPFが形成され得る。具体的には、π型ローパスフィルタLPFは、ラインに並列な2つのコンデンサCND1、CND2と、1つの直列インダクタとで構成される。一般的に、コンデンサ(キャパシタ)は、インダクタよりも安価であるため、π型のノイズ低減回路LPFが採用されることで、部品コストが抑制され、良好なノイズ低減効果が得られる。
【0072】
<電気モータの回転軸線Jmtに対する垂直方向視における、回転角センサMKA、及び、押圧力センサFBAの配置>
図5の部分断面図を参照して、回転角センサMKA、及び、押圧力センサFBAの回路基板KBNへの取り付けについて説明する。具体的には、電気モータMTRの回転軸線Jmtに対して垂直な方向視において、回転角センサMKA、及び、押圧力センサFBAと、回路基板KBNとの取り付け配置について説明する。ここで、電気モータMTRの回転軸線Jmtと、動力変換機構(単に、変換機構ともいう)HNKの回転軸線Jpsとは、同軸ではなく、平行で、且つ、所定の距離djkだけ離れている。即ち、減速機GSKにおいて、入力シャフトの回転軸線Jmtと、出力シャフトの回転軸線Jpsとの2つの回転軸線をもつ、所謂、2軸構成が、制動手段BRKとして採用されている。
【0073】
キャリパCRPは、摩擦部材MSBによって回転部材KTBを挟み込む部材(部位)の他に、電気モータMTR等を配置するための部材(部位)を有する。キャリパCRPの電気モータMTR等が設けられる部材が、ケース部材CASである。キャリパCRPのケース部材CASには、2つの空間(スペース)が設けられる。1つの空間は、変換機構HNK、押圧部材PSN等を収納するためのものである。この空間が、「押圧室Hps」と称呼される。
【0074】
電気モータMTRは、ケース部材CAS(キャリパCRPの一部分)の取付壁Wmtに、シール部材(図示せず)を介して固定される。入力シャフトSFIは、電気モータMTRのロータと一体となって回転するよう、電気モータMTRの出力軸に固定される。ケース部材CASの取付壁Wmtには、入力シャフトSFI用の貫通孔が設けられている。
【0075】
ケース部材CASの取付壁Wmtに対して、押圧室Hpsとは反対側に、もう1つの空間が設けられる。ここには、回路基板KBN、及び、減速機GSKが収納される。この空間は、密閉部材CMPによって、シール部材(図示せず)を介して蓋をされ、防水、防塵のために密閉状態にされる。
【0076】
ケース部材CASと密閉部材CMPとで形成される空間は、仕切部材CSK(仕切板)によって、2つに分割される。2つに分割されたケース部材CASの空間のうちで、仕切部材CSKに対して、電気モータMTRに近い側にある空間内に回路基板KBNが固定される。また、仕切部材CSKに対して、電気モータMTRから遠い側にある空間内に減速機GSKが設けられる。回路基板KBNが収納される空間が「基板室Hkb」と称呼され、減速機GSKが収納される空間が「減速室Hgs」と称呼される。換言すれば、仕切部材CSKは、基板室Hkbと減速室Hgsとを区画する部材である。減速機GSKには、潤滑のためグリス等の潤滑剤が塗布されるが、潤滑剤が回路基板KBNに触れないよう、仕切部材CSKによって回路基板KBNが囲われる。
【0077】
単一の回路基板KBNが、基板室Hkb内でケース部材CASに、円柱形状をもつ、固定部材KBKによって、固定される。具体的には、ケース部材CASの取付壁Wmt、押圧壁Wfbに、固定部材KBKの一方側端面が固定される。そして、固定部材KBKの他方側端面で、固定ピン(圧入ピン)Pkbによって、回路基板KBNが、固定部材KBKに固定される、なお、回路基板KBNは、その面(プロセッサMPR、ブリッジ回路BRG等が実装される平面)が、電気モータMTRの回転軸線Jmtに対して垂直になるよう、固定されている。
【0078】
減速機GSKは、減速室Hgs内で、ケース部材CAS、及び、密閉部材CMPに対して、回転可能な状態で支持されている。具体的には、入力シャフトSFIは、回路基板KBN、及び、仕切部材CSKを貫通し、減速室Hgsにまで延ばされる。入力シャフトSFI(即ち、電気モータMTRの出力軸)は、ケース部材CASの取付壁Wmtに、ベアリングJBRを介して、回転可能に支持されるとともに、密閉部材CMPに、ブッシュJBSを介して、回転可能に支持される。同様に、中間シャフトSFC、及び、出力シャフトSFOは、図示しない、ベアリングJBR、又は、ブッシュJBSによって、ケース部材CAS、及び、密閉部材CMPに対して、回転可能な状態で支持される。そして、入力シャフトSFI、中間シャフトSFC、及び、出力シャフトSFOに固定された、歯車SK1、DK1、SK2、及び、DK2によって、減速機GSKが構成される。
【0079】
減速室Hgsの内部で、入力シャフトSFIには、入力シャフトSFIと一体となって回転する、第1小径歯車SK1が固定される。即ち、電気モータMTRの回転軸と減速機GSKの入力軸とは、軸線が同じ(同軸)である。第1小径歯車SK1は、第1大径歯車DK1が咬み合わされる。ここで、第1大径歯車DK1の歯数は、第1小径歯車SK1の歯数よりも多い。したがって、第1小径歯車SK1と第1大径歯車DK1との組み合わせによって、入力シャフトSFIの回転運動は減速され、入力シャフトSFIのトルクは増大される。
【0080】
第1大径歯車DK1は、中間シャフトSFCに固定される。また、中間シャフトSFCには、第2小径歯車SK2が固定されている。即ち、第1大径歯車DK1と第2小径歯車SK2とは、一体となって回転する。第2小径歯車SK2には、第2大径歯車DK2が咬み合わされている。ここで、第2大径歯車DK2の歯数は、第2小径歯車SK2の歯数よりも多い。したがって、第2小径歯車SK2と第2大径歯車DK2との組み合わせによって、中間シャフトSFCの回転運動は減速され、中間シャフトSFCのトルクは増大される。
【0081】
第2大径歯車DK2は、出力シャフトSFOに固定される。出力シャフトSFOは、第2大径歯車DK2と一体となって回転し、その回転動力を変換機構HNKに伝達する。したがって、減速機GSKの出力軸と、変換機構HNKの入力とは、軸線が同じ(同軸)である。減速機GSKが第1小径歯車SK1、第1大径歯車DK1、第2小径歯車SK2、及び、第2大径歯車DK2にて構成される。換言すれば、減速機GSKでは、2段での減速が行われる。減速機GSKによって、電気モータMTRの回転動力が減速されて(即ち、電気モータMTRの出力トルクである、入力シャフトSFIのトルクが増大されて)、出力シャフトSFOに伝達される。出力シャフトSFOは、仕切部材CSK、回路基板KBN(特に、円孔Enk)、及び、押圧力センサFBAを貫通して、変換機構HNKに接続される。出力シャフトSFOの回転動力は、動力変換機構HNK(例えば、ねじ機構)に伝達される。以上、電気モータMTRの回転動力が、減速機GSKを介して、変換機構HNKへ伝達される動力伝達経路について説明した。
【0082】
≪回転角センサMKA≫
回転角センサMKAは、回転部Rmk、検出部Kmk、及び、処理部Smkにて構成される。回転角センサMKAの回転部Rmkは、電気モータMTRのロータと一体となって回転する。回転部Rmkは、入力シャフトSFI(電気モータMTRの回転軸と同軸)に固定される。回転角センサMKAの検出部Kmkは、回転部Rmkの位置(回転角)を検出する。回転角センサMKAの処理部Smkは、検出された回転部Rmkを信号処理し、モータ回転角(検出値)Mkaを出力する。ここで、回転角センサMKAの検出部Kmk、及び、処理部Smkは、回路基板KBNの表面に実装される(即ち、回路基板KBNに面接触するように固定される)。即ち、回転角センサMKAは、その端面Mmkで、回路基板KBNに接するように固定されている。
【0083】
回転角センサMKAとして、ホール素子型のものが採用され得る。この場合、回転部Rmkは円盤形状の永久磁石が入力シャフトSFIに固定される。検出部Kmkとして、ホール素子が回路基板KBN上に実装される。ホール素子型回転角センサでは、磁界変化による起電圧が小さく、温度変動による素子特性変化が大きい。このため、処理部Smkでは、検出部Kmkでの検出結果に対して、信号増幅、AD変換、温度補償等の信号処理が行われ、回転角検出値Mkaが出力される。
【0084】
また、回転角センサMKAとして、可変リラクタンス型レゾルバが採用され得る。この場合、回転部Rmkとして、磁路内のギャップが変化するよう、高透磁率材料で形成された歯をもつ回転子(ロータ)が入力シャフトSFIに固定される。回転子を励磁する励磁コイル、及び、励磁コイルと同心で巻かれた検出コイルとが、回路基板KBN上に実装される。回転部Kmtとして、これらコイルが、回路基板KBN上に固定される。電気モータMTRが回転されると、検出コイルと回転子との間のギャップが変化し、磁路の長さが変化する。回転子の回転が、交流電圧の振幅の変化として検出される。処理部Smkにて、電圧振幅の変化が信号処理されて、回転角検出値Mkaが演算される。
【0085】
≪押圧力センサFBA≫
押圧力センサFBAは、検出部Kfb、及び、処理部Sfbとで構成される。押圧力センサFBAの検出部Kfbが、変換機構HNKがキャリパCRP(ケース部材CAS)に作用する力(押圧力検出値)Fbaを検出できるよう、押圧力センサFBAは、ケース部材CASと変換機構HNKとの間で、これらに挟まれる。即ち、押圧力センサFBAの押圧面Mhnが変換機構HNKに当接するととともに、押圧力センサFBAのキャリパ面Mcrがケース部材CASの押圧壁Wfbに当接するように設置される。押圧力センサFBAの中央部分には貫通孔が設けられ、ここを出力シャフトSFOが貫く。また、押圧力センサFBAは、ケース部材CASの押圧壁Wfbを貫通し、回路基板KBNに当接(面接触)するように固定される。換言すれば、押圧力センサFBAはケース部材CASの押圧壁Wfbに、変換機構HNKによって固定されるため、押圧力センサFBAの端面Mfbによって、回路基板KBNがキャリパCRPに固定される。
【0086】
検出部Kfbにて検出された信号は、処理部Sfbで信号処理される。回転角センサMKAの場合と同様に、処理部Sfbでは、検出部Kfbの検出結果に対して、信号増幅、AD変換、温度補償等の信号処理が行われ、押圧力検出値Fbaが出力される。押圧力センサFBAの処理部Sfbは、その端面Mfbで回路基板KBNに当接するように配置され、押圧力ピンPFBを介して、回路基板KBNに接合される。押圧力ピンPFBは、押圧力センサFBAに電力供給するとともに、押圧力センサFBAの検出信号(押圧力検出値)Fbaを回路基板KBN(最終的には、プロセッサMPR)に伝達する。押圧力ピンPFBはプレスフィット端子を有し、回路基板KBNに圧入され、接触通電が行われる。
【0087】
≪モータピンPMT≫
モータピンPMTは、電気モータMTRを回転駆動するため、回路基板KBN(特に、ブリッジ回路BRG)から電気モータMTRに電力を供給する。モータピンPMTは、プレスフィット端子をもち、回路基板KBNに圧入され、接触通電が行われる。ケース部材CASには、モータピンPMT用の貫通孔が設けられている。モータピンPMTは、この孔を貫通して、回路基板KBNに電気接続される。
【0088】
モータピンPMTは、保持部材HJBを介して、回路基板KBNに圧入される。保持部材HJBは、中央部に貫通孔をもった円筒形状(即ち、貫通円筒形状)の部材であり、回路基板KBNをケース部材CASに固定するためのものである。具体的には、モータピンPMTが保持部材HJBの貫通孔を貫き、ピンPMTの端子が回路基板KBNに圧入される。保持部材HJBの端面とピンPMTとによって、回路基板KBNはケース部材CASの取付壁Wmtに固定される。ここで、保持部材HJBは、導電しない、樹脂等の絶縁体(不導体)で形成され得る。
【0089】
以上で説明したように、電気モータMTRの回転軸線Jmtに対して垂直方向から視た場合(回転軸線Jmtの垂直方向視で)、電気モータMTR、回路基板KBN、及び、減速機GSKの配置において、回路基板KBNが電気モータMTRと減速機GSKとの間に設けられる。回路基板KBNが電気モータMTRに近接されるため、入力シャフトSFI(即ち、電気モータMTRの回転軸)に回転角センサMKAの回転部Rmkが固定され、回転角センサMKAの検出部Kmk、処理部Smkが基板に、端面Mmkで表面実装される。即ち、回転角センサMKAは、センサ端面Mmkで面接触するように、回路基板KBNに固定される。この構成配置によって、アクチュエータBRKは、回転軸線Jmt方向の寸法が短縮され、車両への搭載性が向上され得る。
【0090】
電気モータMTRは回路基板KBNに近接配置されるため、モータピンPMTは、保持部材HJBを貫通して回路基板KBNに圧入され、回路基板KBNの固定に利用され得る。ここで、モータピンPMTに、ストレートピン(長手方向の形状が直線であるピン)が採用される。固定部材KBKに加えて、保持部材HJB、及び、モータピンPMTによっても、回路基板KBNがケース部材CASに固定されるため、回路基板KBNの固定が、より堅固にされ得る。
【0091】
さらに、変換機構HNKの回転軸線Jps垂直方向視(回転軸線Jmtの垂直方向視と同一)で、変換機構HNK、回路基板KBN、及び、減速機GSKの配置において、回路基板KBNが変換機構HNKと減速機GSKとの間に設けられる。押圧力センサFBAは、ケース部材CASと変換機構HNKとの間に設けられるが、回路基板KBNと押圧力センサFBAとが近接されるため、押圧力センサFBAの端面Mfbが、回路基板KBNに面接触するように、押圧力ピンPFBによって固定される。上記と同様に、この構成配置によって、アクチュエータBRKは、回転軸線Jps方向の寸法が短縮され、車両への搭載性が向上され得る。さらに、固定部材KBKに加えて、押圧力センサFBAによっても、回路基板KBNがケース部材CASに固定されるため、回路基板KBNの固定が、より堅固にされ得る。
【0092】
<電気モータの回転軸線Jmtに対する平行方向視における、回転角センサMKA、及び、押圧力センサFBAの配置>
図6の配置図を参照して、駆動回路基板KBNにおける回転角センサMKA、及び、押圧力センサFBAの配置(電気モータの回転軸線Jmtに対する平行方向視)について説明する。具体的には、回路基板KBNに実装されるセンサ、電子部品等、及び、回路基板KBNの形状について説明する。ここで、回路基板KBNは1枚のプリント基板であり、その四隅が、固定部材KBKによって、キャリパCRP(特に、ケース部材CAS)に固定されている。
【0093】
先ず、1枚のプリント基板である回路基板KBNに実装される電子部品等について説明する。回路基板KBNには、コネクタCNCが固定される。コネクタCNCを介して、車体側のECUとの信号授受、及び、電力供給が行われる。また、回路基板KBNには、各種演算処理を実行するためのマイクロプロセッサMPR、電気モータMTRを駆動するためのブリッジ回路BRG(スイッチング素子の集合体)、電源電圧を安定化するためのノイズ低減回路LPF、及び、他の電子部品DENが実装されている(図2図4を参照)。
【0094】
一点鎖線の吹き出しY部で図示されるように、回路基板KBNには、スルーホール(貫通孔)Aknが設けられている。電気モータMTR用のモータピンPMTが、保持部材HJBを貫通して、スルーホールAknに圧入されている。モータピンPMTの端子形状として、プレスフィット接続用の端子が採用される。ここで、プレスフィット接続とは、回路基板KBNのスルーホール(貫通孔)よりも若干幅広な端子を圧入することによってピンと、スルーホールとの間で接触荷重を発生させ、両者の電気的接続を得るものである。したがって、モータピンPMTのプレスフィット端子(スルーホール挿入部)は弾性構造(例えば、切欠き部Krkを有する構造)を持っている。
【0095】
回路基板KBNには、回転角センサMKAの検出部Kmk、及び、処理部Smkが実装される。入力シャフトSFIに固定された回転角センサMKAの回転部Rmkが、検出部Kmkに近接するように配置される。図6では、回転部Rmkは、4つの歯をもつ、可変リラクタンス型レゾルバの例が示されている。回転角センサMKAでは、回転部Rmkの回転位置が、検出部Kmkによって検出され、検出信号が処理部Smkから、回転角検出値Mkaとして出力される。回転角センサMKAは、検出部Kmkの端面Mmkにおいて、回路基板KBNに面接触して固定される。
【0096】
押圧力センサFBAの端部の平面Mfbが、回路基板KBNの平面に当接するように配置される。押圧力センサFBAは、押圧力センサFBAの押圧力ピンPFBで回路基板KBNに固定される。電気モータMTR用のモータピンPMTと同様に、押圧力センサFBA用の押圧力ピンPFBは、プレスフィット接続用端子を有する。一点鎖線の吹き出しZ部で図示されるように、押圧力ピンPFBの端子は、切欠き部Krkを有する形状(弾性構造)をもち、スルーホールAknに圧入されている。
【0097】
回路基板KBNは、電気モータMTR、及び、動力変換機構HNKと減速機GSKとの間に配置されるため、電気モータMTRから減速機GSKへ動力伝達するための入力シャフトSFI、及び、減速機GSKから動力変換機構HNKへ動力伝達するための出力シャフトSFOが貫通し得る形状が採用される。具体的には、回路基板KBNには、円孔Enkが設けられ、入力シャフトSFI、及び、出力シャフトSFOが円孔Enkを貫通する。さらに、出力シャフトSFOが押圧力センサFBAを貫通し得るよう、押圧力センサFBAには、貫通孔が設けられた中空構造が採用される。
【0098】
<作用・効果>
上述したように、電気モータMTRの回転出力は、減速機GSKによって減速されて、動力変換機構HNKに出力される。したがって、電気モータMTRの出力トルクが、増加されて、動力変換機構HNKに伝達される。減速機GSKの入力軸(電気モータMTRの回転軸と一致)SFIの回転軸線Jmtと、減速機GSKの出力軸(動力変換機構HNKの入力軸と一致)SFOの回転軸線Jpsとは、平行、且つ、距離(所定距離djk)を置いて離れている(回転軸線が2つあるので、「2軸構成」という)。
【0099】
回転軸線Jmt、Jpsに対して垂直方向から視たときに、回路基板KBN(1枚のプリント基板)は、「電気モータMTR、回転角センサMKA」と、「減速機GSK」との中間に位置する。さらに、回転軸線Jmt、Jpsに対して垂直方向から視たときに、回路基板KBN(1枚のプリント基板)は、「動力変換機構HNK、押圧力センサFBA」と、「減速機GSK」との中間に位置する。また、回路基板KBNの実装面(プロセッサMPR、ブリッジ回路BRG、ノイズ低減回路LPF等が実装される平面)は、回転軸線Jmt、Jpsに対して平行にされる。この配置において、入力シャフトSFI、及び、出力シャフトSFOのうちの少なくとも1つは、回路基板KBNを貫通する。
【0100】
回路基板KBNと回転角センサMKAとは近接して配置され、回転角センサMKAの検出部Kmkが回路基板KBNに実装される。このとき、回転角センサMKAの回転部Rmkは、電気モータMTRと一体となって回転する入力シャフトSFIに固定される。即ち、回転角センサMKAは、その端面Mmkで、回路基板KBNに接するように固定されている。このような配置によって、電気モータMTRの回転軸線Jmt方向の寸法が短縮され、装置が小型化され得る。
【0101】
2軸構成が採用されるため、回路基板KBNと押圧力センサFBAとが近接して配置され、押圧力センサFBAの端面Mfbが回路基板KBNに接するように固定される。このような配置によって、変換機構HNKの回転軸線Jps方向(電気モータMTRの回転軸線Jmt方向と同一方向)の寸法が短縮され、装置が小型化され得る。さらに、キャリパCRPに対する回路基板KBNの固定が堅固になり、装置の耐振動性が向上され得る。
【0102】
回路基板KBNと電気モータMTRとが近接して配置され、電気モータMTRのモータピンPMTが、保持部材HJBを介して回路基板KBNの貫通孔に圧入される。モータピンPMTは、弾性変形し易いように先端部に隙間が設けられた、プレスフィット端子を有する。したがって、保持部材HJB、及び、モータピンPMTによっても、回路基板KBNがキャリパCRPに固定される。ここで、保持部材HJBは、電気的な絶縁体で形成され、貫通円筒形状を有する。上記の構成によって、キャリパCRPに対する回路基板KBNの固定が、より堅固になり、装置の耐振動性が向上され得る。
【符号の説明】
【0103】
BP…制動操作部材、BRK…ブレーキアクチュエータ、CRP…ブレーキキャリパ、MTR…電気モータ、MKA…回転角センサ、FBA…押圧力センサ、HNK…動力変換機構、GSK…減速機、KBN…駆動回路基板、MPR…マイクロプロセッサ、BRG…ブリッジ回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6