(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1などを用いて、本実施の形態に係る非接触充電システム1について説明する。
図1に示すように、非接触充電システム1は、受電装置10および蓄電装置15を含む車両2と、受電装置10に非接触で電力を送電する送電装置20とを備える。
【0015】
図2は、非接触充電システム1を模式的に示す電気回路図である。
図2に示すように、受電装置10は、コイルユニット12と、コイルユニット12に接続されたフィルタ28と、フィルタ28に接続された整流器11と、整流器11に接続された蓄電装置15とを含む。
【0016】
コイルユニット12は、受電コイル16と、受電コイル16に直列に接続されたコンデンサ17とを含む。フィルタ28は、コンデンサ17に接続されたフィルタコイル13と、受電コイル16に接続されたフィルタコイル14とを含む。
【0017】
送電装置20は、コイルユニット22と、コイルユニット22に接続されたフィルタ29と、フィルタ29に接続された変換器21とを含む。変換器21は、電源23に接続されている。コイルユニット22は、送電コイル26と、送電コイル26に直列に接続されたコンデンサ27とを含む。フィルタ29は、コンデンサ27に接続されたフィルタコイル24と、送電コイル26に接続されたフィルタコイル25とを含む。
【0018】
変換器21は、電源23から供給される交流電力の周波数および電圧を調整して、フィルタ29に供給する。フィルタ29は、変換器21から供給される交流電力のノイズを除去して、コイルユニット22に供給する。
【0019】
コイルユニット12は、コイルユニット22から非接触で電力を受電する。フィルタ28は、コイルユニット12から供給される電力からノイズを除去して、整流器11に供給する。整流器11は、供給された交流電力を直流電力に変換して、蓄電装置15に供給する。
【0020】
図3は、受電装置10を示す分解斜視図である。
図3においては、コンデンサ17や整流器11は図示されていない。
図3に示すように、受電装置10は、コイルユニット12と、コイルユニット12上に配置された金属板18と、フィルタ28と、筐体30とを含む。
【0021】
筐体30は、フィルタ28と、金属板18と、コイルユニット12と、図示しない整流器11およびコンデンサ17を内部に収容する。
【0022】
筐体30は、下方に向けて開口する開口部が形成された金属ケース31と、金属ケース31の開口部を閉塞するように設けられた樹脂蓋32とを含む。金属ケース31は、アルミニウムなどの金属によって形成されている。
【0023】
コイルユニット12は、板状に形成されたフェライト板33と、受電コイル16とを含む。受電コイル16は中空状の渦巻き型コイルである。受電コイル16は、上下方向に延びる巻回軸線O2の周囲を取り囲むように形成されている。
【0024】
フェライト板33は板状に形成されており、中央に中空部が形成されている。フェライト板33は、厚さ方向に配列する下面(第1主表面)35および上面(第2主表面)36を含む。下面35に受電コイル16が配置されており、上面36には、金属板18およびフィルタ28が配置されている。
【0025】
フェライト板33は、複数の分割フェライト34を含む。フェライト板33は、複数の角部37を含み、角部37間の辺部には、切欠部38が形成されている。分割フェライト34は、受電コイル16の径方向に延びるように形成されている。
【0026】
複数の分割フェライト34のうち、1つの分割フェライト34Aには、突出部40,41,42が形成されている。突出部40,41,42は、上面36に形成されており、突出部40,41,42は、上面36からフェライト板33の厚さ方向に突出するように形成されている。
【0027】
金属板18は、板状に形成されており、たとえば、アルミニウムなどの金属から形成されている。金属板18は、金属板18の厚さ方向に配列する下面(第3主表面)47と、上面(第4主表面)48とを含む。
【0028】
金属板18は、フェライト板33の上面36に配置されており、フェライト板33の上面36に金属板18の下面47が配置されている。
【0029】
金属板18は、フェライト板33よりも大きく、フェライト板33および金属板18よりも上方から金属板18およびフェライト板33を平面視すると、フェライト板33は、金属板18に隠れる。
【0030】
金属板18には、スリット44,45,46が形成されている。スリット44,45,46に突出部40,41,42が挿入される。
【0031】
フィルタ28は、コア50と、コア50に装着されたフィルタコイル13,14とを含む。コア50は、天板部51と、天板部51の外周縁部に接続されると共に互いに対向する側壁部52および側壁部54とを含む。側壁部52(第1壁部)および側壁部54は、受電コイル16の径方向に対して垂直な方向に配列する。
【0032】
図4は、
図3におけるIV−IV線における断面図である。
図4に示すように、コア50は、天板部51の下面から下方に向けて突出する中央壁部(第2壁部)53を含む。中央壁部53は、側壁部52および側壁部54の間に配置されている。
【0033】
突出部40は、スリット44を通り抜けて、金属板18の上面48よりも上方に突出している。同様に、突出部41,42は、スリット45,46を通り、上面48よりも上方に突出している。
【0034】
コア50の側壁部52は、突出部40の上面に配置されており、側壁部54は、突出部42の上面に配置されている。中央壁部53は、突出部41の上方に位置しており、中央壁部53の下面と、突出部41の上面との間にはギャップが形成されている。
【0035】
フィルタコイル13およびフィルタコイル14は、中央壁部53または突出部41の周囲を取り囲むように配置されている。フィルタコイル13,14は、渦巻き型コイルであり、フィルタコイル13,14は、上下方向に延びる巻回軸線O3の周囲を取り囲むように形成されている。
【0036】
金属ケース31は、天板部55と、天板部55の下面に形成された区画壁56,57とを含む。天板部55、区画壁56および区画壁57によって形成された空間内にフィルタ28が配置されている。
【0037】
金属板18は、上面36に配置されており、金属ケース31の区画壁56の下端部は、金属板18の上面48に接触しており、区画壁57の下端部も上面48に接触するように配置されている。
【0038】
送電装置20から受電装置10に非接触で電力を送電する際には、コイルユニット22に交流電力が供給され、送電コイル26の周囲に磁束が発生する。
【0039】
当該磁束が送電コイル26と鎖交することで、コイルユニット12が電力を受電する。コイルユニット12が受電した交流電力は、フィルタ28に供給され、フィルタコイル13,14に交流電流が流れる。このように、受電時には、受電コイル16およびフィルタコイル13,14に交流電流が流れる。
【0040】
図4において、受電コイル16に交流電流が流れると、分割フェライト34A内にも受電コイル16の周囲に形成される磁束MF1が流れる。また、フィルタコイル13,14に交流電流が流れると、フィルタコイル13,14の周囲にも磁束MF2が形成される。
【0041】
磁束MF1は、主に、受電コイル16の径方向に進み、この
図4においては、紙面の表裏面方向に進む。
【0042】
磁束MF2は、突出部41と、中央壁部53と、天板部51と、側壁部52と、突出部40と、突出部41とを通る磁気経路、または、突出部41と、中央壁部53と、天板部51と、側壁部54と、突出部42と、突出部41とを通る磁気経路の一方を通るように流れる。
【0043】
このように、分割フェライト34Aには、磁束MF1および磁束MF2が流れる。複数の分割フェライト34のうち、分割フェライト34A以外の分割フェライト34においては、磁束MF2は殆ど流れない。
【0044】
分割フェライト34A内を流れる磁束量が多いため、分割フェライト34A内で生じる鉄損は、他の分割フェライト34内で生じる鉄損よりも大きい。このため、分割フェライト34Aは、他の分割フェライト34よりも温度が高くなり易い。
【0045】
分割フェライト34Aの上面36には、金属板18が配置されている。金属板18には、スリット44,45,46が形成されている一方で、スリット44,45,46の開口面積は、フィルタ28の設置面積よりも小さい。
【0046】
そして、分割フェライト34Aの上面36のうち、突出部41および突出部40の間に位置する部分と、突出部41および突出部42の間に位置する部分にも、金属板18が配置されている。
【0047】
このため、分割フェライト34Aの上面36と、金属板18の下面47との接触面積は広く、分割フェライト34Aの熱は、金属板18に良好に伝達される。金属板18に伝達された熱は、区画壁56,57を通して、金属ケース31に伝達される。
【0048】
金属ケース31は外部に露出しており、金属ケース31に伝達された熱は外気に放熱される。金属ケース31が車両2のフロアパネルに配置されている場合には、フロアパネルにも放熱される。
【0049】
また、蓄電装置15がフロアパネルの下面に配置されており、この蓄電装置15の下面に受電装置10が配置されている場合には、蓄電装置15に金属ケース31の熱が放熱される。
【0050】
このように、本実施の形態に係る受電装置10によれば、分割フェライト34Aの熱を良好に放熱することができる。
【0051】
次に、本実施の形態に係る受電装置10と、比較例に係る受電装置10Aとの放熱性について比較する。
図5は、比較例の受電装置10Aを示す分解斜視図である。この
図5に示すように、受電装置10Aにおいては、分割フェライト34Bに突出部40〜42が設けられていない。また、金属板18Aには、スリット44,45,46に替えて、穴部60が形成されている。穴部60の開口面積は、スリット44,45,46の開口面積やフィルタ28の設置面積よりも広い。受電装置10Aにおいては、穴部60にフィルタ28Aが挿入されている。
【0052】
図6は、受電装置10Aにおいて、フィルタ28Aおよびその周囲の構成を示す断面図である。
図6に示すように、フィルタ28Aは、コア50Aと、コア50Aに装着されたフィルタコイル13,14とを含む。
【0053】
コア50Aは、天板部51Aと、天板部51Aの側辺部に接続された側壁部52A,54Aと、天板部51Aの下面に形成された中央壁部53Aとを含む。側壁部52A,54Aの下端部は、分割フェライト34Bの上面と接触している。
【0054】
分割フェライト34Bの上面にフィルタ28Aが配置されている一方で、分割フェライト34Bの上面には、金属板18Aの穴部60が位置している。このため、分割フェライト34Bの上面のうち、フィルタ28Aが配置されている部分においては、金属板18Aは配置されていない。
【0055】
このため、
図3および
図5に示すように、金属板18と分割フェライト34Aとの接触面積は、金属板18Aと、分割フェライト34Bとの接触面積よりも広い。
【0056】
この受電装置10Aにおいても、分割フェライト34Bには、磁束MF1および磁束MF2が流れる。分割フェライト34Bで生じた熱は、金属板18Aに伝達される一方で、分割フェライト34Bと金属板18Aとの接触面積は小さいため、分割フェライト34Bの放熱性は、受電装置10の分割フェライト34Aの放熱性よりも悪い。
【0057】
図7は、複数の位置で受電装置10のコイルユニット12と、受電装置10Aのコイルユニット12Aとの温度比較の結果を示すグラフである。
【0058】
図7に示すグラフの縦軸は温度を示し、横軸のP1〜P12は、温度測定位置を示す。「P3」は、フィルタの直下における分割フェライトの温度を示す。また、斜線のハッチングが入ったグラフが比較例に係るコイルユニット12Aの温度であり、ハッチングが入っていないグラフが実施の形態に係るコイルユニット12の温度である。
【0059】
この
図7からも明らかなように、殆どの観測位置においてコイルユニット12の方がコイルユニット12Aよりも温度が低く、また、コイルユニット12Aの方が温度が低い測定位置においても、コイルユニット12Aの温度とコイルユニット12の温度との差は殆どないことが分かる。
【0060】
すなわち、本実施の形態に係るコイルユニット12はコイルユニット12Aよりも放熱性が確保されていることが分かる。
【0061】
ここで、
図4において、フィルタコイル13は、突出部41の周囲を取り囲むように形成されており、フィルタコイル14は、中央壁部53の周囲を取り囲むように形成されている。そして、中央壁部53、側壁部52および側壁部54と、突出部41、突出部40および突出部42は、水平面に対して略対称となるように形成されている。このため、フィルタコイル13のインダクタンスと、フィルタコイル14のインダクタンスに差が生じ難い。
【0062】
その一方で、
図6においては、分割フェライト34Aと、コア50Aとの構成は水平面に対して対称形状になっておらず、フィルタコイル13およびフィルタコイル14のインダクタンスに差が生じやすくなっている。このように、本実施の形態に係るコイルユニット12においては、各フィルタコイル13,14のインダクタンスに差が生じることが抑制されている。
【0063】
図4において、突出部41は、スリット45から上方に突出しており、中央壁部53と突出部41との間のギャップは、積層されたフィルタコイル13,14の中央に位置している。
【0064】
たとえば、磁束MF2のベクトルは、突出部41の下端部から突出部41の上端部に向かう過程において、上方に向く。そして、突出部41の上端部から出射するときには、磁束MF2は、上方に向けて出射する。同様に、中央壁部53の下端部から磁束MF2が出射するときにも、磁束MF2は下方に向けて出射する。このように、本実施の形態に係るコイルユニット12においては、磁束MF2が周囲に漏れることが抑制されている。
【0065】
その一方で、
図6に示す例においては、中央壁部53Aの下端部から磁束MF2が出射するときには、分割フェライト34Bの上面に向かうにつれて広がるように出射しやすい。このため、中央壁部53Aの下端部から出射した磁束MF2は、フィルタコイル13に鎖交しやすい。
【0066】
上記のように、本実施の形態に係るコイルユニット12においては、分割フェライト34Aの放熱性を確保しやすく、さらに、フィルタコイル13,14のインダクタンスのばらつきの抑制、および漏れ磁束の発生の抑制を図ることができる。
【0067】
なお、上記の実施の形態においては、分割フェライト34Aの上面に突出部40および突出部42を一体的に形成した例について説明したが、突出部40および突出部42を別体としてもよい。
【0068】
図8は、実施の形態に係るコイルユニット12の変形例を示す断面図である。この
図8に示すように、変形例に係るコイルユニット12Bにおいては、突出部40A,42Aは、分割フェライト34Aとは別体であり、突出部40A,42Aは、フェライトから形成されている。なお、このコイルユニット12Bにおいても、コイルユニット12と同様の作用および効果を得ることができる。
【0069】
上記の実施の形態においては、受電装置10のコイルユニット12について主に説明したが、送電装置20のコイルユニット22にも適用することができる。
【0070】
なお、今回開示された実施の形態および変形例は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。