(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6443359
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】排ガス処理設備の再生塔
(51)【国際特許分類】
B01D 53/96 20060101AFI20181217BHJP
B01D 53/70 20060101ALI20181217BHJP
B01D 53/81 20060101ALI20181217BHJP
B01J 20/20 20060101ALI20181217BHJP
B01J 20/34 20060101ALI20181217BHJP
B01D 53/60 20060101ALI20181217BHJP
【FI】
B01D53/96ZAB
B01D53/70
B01D53/81
B01J20/20 B
B01J20/34 D
B01D53/60
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-30945(P2016-30945)
(22)【出願日】2016年2月22日
(65)【公開番号】特開2017-148688(P2017-148688A)
(43)【公開日】2017年8月31日
【審査請求日】2017年9月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001542
【氏名又は名称】特許業務法人銀座マロニエ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】牛久保 健太
(72)【発明者】
【氏名】深川 謙一
【審査官】
佐々木 典子
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭57−096929(JP,U)
【文献】
特開昭51−117171(JP,A)
【文献】
特開2012−030135(JP,A)
【文献】
実開昭57−058436(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/34−53/96
B01D 53/02−53/12
B01J 20/00−20/28
B01J 20/30−20/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸着塔の排出口につながる入側経路を通して送給された吸着媒体を加熱する加熱部と、該加熱部において加熱された吸着媒体につき、その加熱分解反応により放出される排ガスの有害物質を除去、回収する回収部と、該排ガスの有害物質が除去、回収された吸着媒体を冷却して出側経路を経て吸着塔へ返送する冷却部とを備えた排ガス処理設備の再生塔であって、
該冷却部は、該回収部へ向けて開放された入側開口と該出側経路へ向けて開放された出側開口とを有しその相互間につながる通路での熱交換によって該吸着媒体を冷却する複数本の伝熱管を備え、
該伝熱管に、伝熱管の通路につながる貫通経路を有し、該伝熱管の入側開口を通して該伝熱管の通路内に着脱自在に挿入される環状体を設けたことを特徴とする排ガス処理設備の再生塔。
【請求項2】
前記吸着媒体が、活性コークスであり、前記有害物質が硫黄酸化物、ダイオキシン、窒素酸化物であることを特徴とする請求項1に記載した排ガス処理設備の再生塔。
【請求項3】
前記環状体は、前記伝熱管の入側開口の端面に当接可能なフランジと、このフランジに一体連結し該伝熱管の通路内に侵入する本体部分からなることを特徴とする請求項1または2に記載した排ガス処理設備の再生塔。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製鉄所の焼結工場等において配置される排ガス処理設備、とくに、活性コークスを吸着媒体として排ガスの清浄化を行う乾式脱硫設備の再生塔に関するものである。
【0002】
焼結工場等から排出される排ガスには、硫黄酸化物、ダイオキシン(DXN)、窒素酸化物等の有害物質が含まれており、これらの有害物質を効率的に除去してガスの浄化を図る排ガス処理設備としては、例えば、特許文献1に開示されたものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−291765号公報
【0004】
かかる設備は、通常、吸着塔、再生塔を備えるものであり、吸着塔では、活性コークスの微細構造により排ガス中の硫黄酸化物の大部分を占める二酸化硫黄(SO
2)を硫酸(H
2SO
4)の形で吸着する一方、再生塔では、約220℃以上で生じる活性コークスの加熱分解反応により、活性コークスの内部に吸着した硫酸(H
2SO
4)を再度二酸化硫黄(SO
2)の形で捕集するとともにその捕集された二酸化硫黄(SO
2ガス)を硫酸回収設備に送って副生品として回収している。
【0005】
ところで、上記設備における再生塔は、複数本の伝熱管が配列された加熱部および冷却部と、該加熱部と冷却部との相互間に位置する回収部に区分されたシェルアンドチューブ式の熱交換器にて構成されており、吸着塔から送給された活性コークスを、該加熱部、回収部、冷却部を移動(循環移動)させて吸着塔へと返送するが、その内部では、二酸化硫黄や水蒸気を含む腐食性ガスが発生するため、とくに腐食性ガスが露点以下となる冷却部(冷却部の入側領域(入側端の角部から0.5〜1.5m)においては活性コークスとの接触による摩耗に加え、腐食によって伝熱管が破孔しやすい不具合を有しており、従来は水浸超音波厚み測定法等を用いて伝熱管の厚さを管理していた。また、原料付着等で伝熱管の熱伝導率の低下により伝熱管表面の局所的な低温箇所の発生を防止するために伝熱管の内部洗浄を実施していた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のこの種の再生塔では、以下に述べるような課題が残されていた。
【0007】
すなわち、伝熱管の破孔が懸念される場合、活性コークスの漏出および設備内部への空気の侵入を防止するとともに所定の伝熱面積を確保する観点から伝熱管の取替えを行う必要があるところ、設備の構造上十分なスペースが確保できないことから、伝熱管の入口、出口を閉止するといった補修しか行えないため伝熱面積を減らさざるを得ない。しかも、その補修は、焼結操業等の停止、活性コークスの抜き出し、塔内部の冷却、点検(孔開きの有無、場所の特定)、閉止処置、活性コークスの充填、焼結操業等の再開という工程を経るため、設備を長時間にわたって停止する必要がある。
【0008】
また、伝熱管の厚さの測定は、設備の停止可能な時間内で行わなければならない(時間的な制約がある)ため、代表点での測定しか実施できず、定期的な点検において伝熱管に破孔が確認されたならばその都度補修するといった事後保全となることが多く、伝熱管の破孔に伴う活性コークスの漏洩を確実に防止するまでには至っていない。
【0009】
さらに、耐食性の高いステンレス鋼(例えば、SUS316L等)や二相ステンレス鋼(例えば、SUS329J4L等)といった高価な鋼材を使用した径3m×長さ20mを超えるような大型の再生塔が用いられてきており、伝熱管の閉止数の増加による再生塔の一式交換には高額な設備投資が必要になるといった問題もある。
【0010】
本発明の課題は、予防保全により冷却部における伝熱管の破孔を長期間にわたって防止できる排ガス処理設備の再生塔を提案するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、吸着塔の排出口につながる入側経路を通して送給された吸着媒体を加熱する加熱部と、該加熱部において加熱された吸着媒体からそれに含まれる排ガスの有害物質を除去、回収する回収部と、該排ガスの有害物質が除去、回収された吸着媒体を冷却して出側経路を経て吸着塔へ返送する冷却部とを備えた排ガス処理設備の再生塔であって、該冷却部は、該回収部へ向けて開放された入側開口と該出側経路へ向けて開放された出側開口とを有しその相互間につながる通路での熱交換によって該吸着媒体を冷却する複数本の伝熱管を備え、該伝熱管に、伝熱管の通路につながる貫通経路を有し、該伝熱管の入側開口を通して該伝熱管の通路内に着脱自在に挿入される環状体を設けたことを特徴とする排ガス処理設備の再生塔である。
【0012】
上記の構成からなる排ガス処理設備の再生塔において、前記吸着媒体が、活性コークスであり、前記排ガスの有害物質が硫黄酸化物、ダイオキシン、窒素酸化物であること、また、前記環状体は、前記伝熱管の入側開口の端面に当接
可能なフランジと、このフランジに一体連結し
該伝熱管の前記通路内に侵入する本体部分からなるものとすること、が本発明の課題解決のための具体的手段として好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、冷却部の伝熱管に、該伝熱管の通路につながる貫通経路を有し、該伝熱管の入側開口を通して該通路内に着脱自在に挿入される環状体を設け、この環状体によって腐食や摩耗の激しい部位を保護する一方、定期修理の度にその環状体の劣化状態を確認、取替えを行うようにしたため予防保全が可能となり伝熱管の損傷を確実に回避することができる(伝熱管の長寿命化)。
【0014】
また、本発明によれば、設備の改造が不要であり、既存の設備に即適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明にしたがう再生塔を設置した排ガス処理設備を焼結工場に適用した例を模式的に示した図である。
【
図2】
図1に示した排ガス処理設備の再生塔の断面を模式的に示した図である。
【
図3】活性コークス(AC)の循環フローと排ガスの処理状況(ガスフロー)を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明をより具体的に説明する。
図1は、本発明にしたがう再生塔を設置した排ガス処理設備(乾式脱硫設備(活性コークス法))を焼結工場に適用した例を示した図であり、
図2は、その排ガス処理設備の再生塔の断面を模式的に示した図である。
【0017】
図1、2における符号1は、焼結機に向けて原料を搬送する原料搬送設備、2は、原料搬送設備1によって搬送された原料を焼結する焼結機、3は、焼結機2において発生した排ガス中のダスト等を捕集する電気集塵機である。
【0018】
また、4は、電気集塵機3を経た排ガスから有害物質を除去してクリーンな排ガスにして大気放出する排ガス処理設備である。この排ガス処理設備4は、排ガス送給用のメインブロアー4aと、メインブロアー4aによって送給された排ガスにつき、その中に含まれる有害物質を吸着媒体である活性コークス(AC)によって吸着、除去する吸着塔4bと、有害物質が吸着された活性コークスを処理、再生する再生塔4cと、有害物質の取り除かれた排ガスをブースタファン4dを介して大気放出する煙突4e等から構成されている。
【0019】
本発明にしたがう再生塔4cは、円筒状をなす縦長の胴体部分を有し、その内側に、吸着塔4bの排出口につながる入側経路fを通して送給された活性コークスを加熱する加熱部4c1と、該加熱部4c1において加熱された活性コークスからそれに含まれる排ガスの有害物質を除去、回収する回収部4c2と、該排ガスの有害物質が除去、回収された活性コークスを冷却して出側経路gを経て吸着塔4bへ返送する冷却部4c3とを備えたもので構成される。
【0020】
上記の加熱部4c1は、具体的には、入側経路fへ向けて開放された入側開口と回収部4c2へ向けて開放された出側開口とを有しその相互間につながる通路での熱交換によって活性コークスを400℃程度に加熱する複数本の伝熱管(内径83mm程度、厚さ3mm程度になるSUS316等の管体)4c11が備えられている。また、冷却部4c3は、該回収部4c2へ向けて開放された入側開口と該出側経路
gへ向けて開放された出側開口とを有しその相互間につながる通路での熱交換によって活性コークスを120℃以下に冷却する複数本の伝熱管(内径83mm程度、厚さ3mm程度になるSUS316等の管体)4c31が備えられており、伝熱管4c31には、該伝熱管4c31の通路
につながる貫通経路を有し、該伝熱管4c31の入側開口を通してその通路内に着脱自在に挿入される環状体5が設けられている。
【0021】
上記の構成からなる排ガス処理設備4においては、焼結機2から排出された排ガスが
図3に示す要領で処理(吸着塔4bでは、活性コークスの微細構造により排ガス中のSO
2をH
2SO
4の形で吸着、再生塔4cでは、活性コークスに吸着されたH
2SO
4が400℃程度で加熱分解、再びSO
4ガスとして回収することで活性コークスを再生)され、吸着塔4bから排出された排ガスはクリーン化が図られるものの、とくに再生塔4cの冷却部4c3の入側領域(入側端から0.5〜1.5m)では活性コークスとの接触による摩耗に加え、腐食が激しくなることから伝熱管4c3が破孔しやすい状況にあったが、本発明にしたがう再生塔4cでは、環状体5により、摩耗や腐食が激しい部分が保護され、該環状体5の劣化が認められた場合にはそれを簡単に取替えることが可能であり、再生塔の長寿命化が可能となる。
【0022】
環状体5としては、伝熱管4c31の入側開口の端面に当接して位置決めするフランジ5aと、このフランジ5aに一体連結して伝熱管4c31の通路内に侵入する本体部分5bからなるもの(侵入長さが0.5〜1.5m、厚さ3mm程度のSUS316等で構成されたもの)が適用される。
【0023】
環状体5の点検、取替えに際しては、冷却部4c3の上端部、下端部で再生塔4cの胴体部分をワイヤーソー等で切断し、該冷却部4c3のみを取り外して行うことができる。
【0024】
本発明にしたがう再生塔4cを備えた排ガス処理設備4では、従来、その耐用年数が10年程度であったのに対し30年程度に延長できることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明によれば、排ガス処理設備の再生塔で懸念される伝熱管の破孔、とくに冷却部における伝熱管の破孔の予防保全が可能となる。
【符号の説明】
【0026】
1 原料搬送設備
2 焼結機
3 電気集塵機
4 排ガス処理設備
4a メインブロアー
4b 吸着塔
4c 再生塔
4c1 加熱部
4c11 伝熱管
4c2 回収部
4c3 冷却部
4c31 伝熱管
4d ブースタファン
4e 煙突
5 環状体
5a フランジ
5b 本体部分
f 入側経路
g 出側経路