特許第6443362号(P6443362)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6443362
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3205 20060101AFI20181217BHJP
   H01L 21/768 20060101ALI20181217BHJP
   H01L 23/522 20060101ALI20181217BHJP
   H01L 29/84 20060101ALI20181217BHJP
   G01L 9/00 20060101ALI20181217BHJP
【FI】
   H01L21/88 J
   H01L29/84 B
   H01L29/84 A
   G01L9/00 303G
   G01L9/00 303M
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-41427(P2016-41427)
(22)【出願日】2016年3月3日
(65)【公開番号】特開2017-157751(P2017-157751A)
(43)【公開日】2017年9月7日
【審査請求日】2018年4月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】特許業務法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】角田 和之
(72)【発明者】
【氏名】与倉 久則
(72)【発明者】
【氏名】村田 稔
【審査官】 山本 一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−52588(JP,A)
【文献】 特開2012−253182(JP,A)
【文献】 特開2010−129577(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3205
G01L 9/00
H01L 21/768
H01L 23/522
H01L 29/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一面(10a)を有し、前記一面側に複数の接続部(19〜21)が形成された第1基板(10)と、
一面(30a)および当該一面と反対側の他面(30b)を有し、当該一面が前記第1基板の一面と接合されることで前記第1基板上に積層され、前記複数の接続部をそれぞれ露出させる複数の貫通孔(36)が前記第1基板との積層方向に沿って形成された第2基板(30)と、
前記複数の貫通孔のそれぞれに配置され、前記複数の接続部とそれぞれ電気的に接続される複数の貫通電極(38)と、
前記複数の貫通電極を一体的に覆う保護膜(41)と、を備え、
前記貫通電極および前記保護膜は、前記貫通孔の壁面に沿った形状で配置されており、
前記保護膜は、前記第1基板の一面に対する法線方向から視たとき、前記複数の貫通孔の開口部をそれぞれ囲む複数の枠状のスリット(41d)が形成され、前記スリットよりも内縁側の領域と前記スリットよりも外縁側の領域とが前記スリットによって分離されている半導体装置。
【請求項2】
前記第2基板の他面上には、前記貫通電極と電気的に接続される配線層(39)が形成されており、
前記スリットは、前記保護膜を貫通して前記配線層を枠状に露出させる状態で形成されている請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第2基板の他面上には、前記貫通電極と電気的に接続される配線層(39)が形成されており、
前記スリットは、前記貫通孔の開口部と共に、前記配線層を囲む状態で形成されている請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第2基板は、前記他面側に絶縁膜(33)を有し、
前記配線層は、前記絶縁膜上に形成されており、
前記保護膜は、前記貫通電極と共に前記配線層を覆い、かつ前記絶縁膜と当接する部分が当該絶縁膜と同じ材料で構成されており、
前記保護膜および前記絶縁膜は、前記スリットが前記保護膜および前記絶縁膜を貫通して形成されることにより、前記スリットよりも内縁側の領域と前記スリットよりも外縁側の領域とに分離されている請求項3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記貫通孔の底面と側面との間の境界部分上に配置された保護膜には、1240MPa以上の応力が印加される請求項1ないし4のいずれか1つに記載の半導体装置。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1基板と第2基板とが接合され、第1基板に形成された接続部と電気的に接続される貫通電極を第2基板に形成した半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば、特許文献1には、第1基板と第2基板とを備える半導体装置として圧力センサが提案されている。具体的には、この半導体装置では、第1基板は、一面にゲージ抵抗、およびゲージ抵抗と電気的に接続される複数の配線部等が形成されていると共に、他面側からゲージ抵抗が形成されている部分を薄膜化する凹部が形成されている。また、第2基板は、ゲージ抵抗が形成されている部分と対向する部分に窪み部が形成されている。そして、第2基板は、窪み部内にゲージ抵抗が封止されるように、第1基板と接合されている。
【0003】
また、第2基板には、第1基板と第2基板との積層方向に貫通し、第1基板に形成された複数の配線部のそれぞれ一部を露出させる複数の貫通孔が形成されている。そして、各貫通孔には、貫通孔から露出する配線部と電気的に接続される貫通電極がそれぞれ配置されている。さらに、第2基板には、各貫通電極を覆うように一体的に保護膜が配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−52588号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記半導体装置では、各貫通電極が外部回路と接続されることにより、貫通電極および第1基板に形成された配線部等を介してゲージ抵抗と外部回路との接続が図られる。しかしながら、本発明者らがこのような半導体装置について鋭意検討したところ、製造過程や使用環境等の要因により、保護膜のうちの貫通孔の底面と側面との境界部分上に位置する部分には応力が集中し、保護膜の当該部分からクラックが発生する可能性があることを新規に見出した。そして、本発明者らがさらに検討したところ、貫通孔に配置された保護膜にクラックが発生すると、当該クラックが保護膜のうちの隣接する貫通電極を覆う部分にまで伸展することがあることも見出した。この場合、共通のクラックによって隣接する貫通電極が露出した状態となり、このクラックに水分等の異物が導入されることによって隣接する貫通電極がショートしてしまうという問題が発生する。
【0006】
本発明は上記点に鑑みて、貫通電極同士がショートすることを抑制できる半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための請求項1では、一面(10a)を有し、一面側に複数の接続部(19〜21)が形成された第1基板(10)と、一面(30a)および当該一面と反対側の他面(30b)を有し、当該一面が第1基板の一面と接合されることで第1基板上に積層され、複数の接続部をそれぞれ露出させる複数の貫通孔が第1基板との積層方向に沿って形成された第2基板(30)と、複数の貫通孔(36)のそれぞれに配置され、複数の接続部とそれぞれ電気的に接続される複数の貫通電極(38)と、複数の貫通電極を一体的に覆う保護膜(41)とを備え、貫通電極および保護膜は、貫通孔の壁面に沿った形状で配置されており、保護膜は、第1基板の一面に対する法線方向から視たとき、複数の貫通孔の開口部をそれぞれ囲む複数の枠状のスリット(41d)が形成され、スリットよりも内縁側の領域とスリットよりも外縁側の領域とがスリットによって分離されている。
【0008】
これによれば、貫通孔の底面と側面との境界部分上に配置された保護膜にクラックが発生して当該クラックが伸展したとしても、クラックの伸展がスリットによって遮られる。したがって、隣接する貫通電極同士が共通のクラックによって露出することを抑制でき、隣接する貫通電極同士がショートすることを抑制できる。
【0009】
なお、上記および特許請求の範囲における括弧内の符号は、特許請求の範囲に記載された用語と後述の実施形態に記載される当該用語を例示する具体物等との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態における半導体装置の断面図である。
図2図1中の領域Aの拡大図である。
図3図2に示す貫通孔近傍の平面図である。
図4】保護膜に発生する応力と、貫通孔の底面上に形成された上層保護膜の膜厚との関係を示す図である。
図5】保護膜に発生する応力と、貫通孔の底面上に形成された貫通電極の膜厚との関係を示す図である。
図6】クラック発生率と、保護膜に発生する応力との関係を示す図である。
図7】第2実施形態における半導体装置の貫通孔近傍の断面図である。
図8図7に示す貫通孔近傍の平面図である。
図9】第3実施形態における半導体装置の貫通孔近傍の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0012】
(第1実施形態)
第1実施形態について図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、半導体装置を圧力センサに適用した例について説明する。なお、この半導体装置としての圧力センサは、例えば、自動車に搭載され、オイルポンプから排出されたオイルの圧力を検出する圧力センサとして適用されると好適である。
【0013】
図1に示されるように、半導体装置は、センサ部1と、センサ部1の一部を封止して支持するモールド樹脂2とを備えている。まず、本実施形態のセンサ部1の構成について説明する。
【0014】
センサ部1は、一面10aおよびこの一面10aと反対側の他面10bを有するセンサ基板10を備えている。本実施形態では、センサ基板10は、支持基板11、絶縁膜12、半導体層13が順に積層され、一方向を長手方向(すなわち、図1中紙面左右方向)とする平面矩形状のSOI(すなわち、Silicon on Insulator)基板で構成されている。そして、半導体層13のうちの絶縁膜12と反対側の一面がセンサ基板10の一面10aとされ、支持基板11のうちの絶縁膜12と反対側の一面がセンサ基板10の他面10bとされている。なお、本実施形態では、半導体層13はP型のシリコン基板等で構成されている。また、本実施形態では、センサ基板10が第1基板に相当している。
【0015】
センサ基板10には、半導体層13の表層部にN型層14が形成されている。また、センサ基板10には、当該センサ基板10における長手方向の一端部側(すなわち、図1中紙面右側の端部側)に、他面10bから凹部15が形成されることでダイヤフラム部16が形成されている。
【0016】
凹部15は、本実施形態では、センサ基板10の他面10bから絶縁膜12に達するように形成されている。つまり、凹部15は支持基板11に形成されている。そして、凹部15の底面とセンサ基板10の一面10aとの間に位置する絶縁膜12および半導体層13にてダイヤフラム部16が構成されている。
【0017】
ダイヤフラム部16には、ダイヤフラム部16の変形に応じて抵抗値が変化するゲージ抵抗17が形成されている。本実施形態では、ゲージ抵抗17は、4つ形成されており、ブリッジ回路を構成するように図示しない接続配線層によって適宜接続されている。これにより、ダイヤフラム部16の変形に応じたセンサ信号が出力される。なお、図1では、ゲージ抵抗17を2つのみ図示している。
【0018】
また、半導体層13には、ゲージ抵抗17と電気的に接続される引き出し配線層18が形成されている。この引き出し配線層18は、ゲージ抵抗17と接続される部分から半導体層13の長手方向における他端部側(すなわち、図1中紙面左側の端部側)まで引き出されている。本実施形態では、引き出し配線層18は、4本形成されており、それぞれ電源電圧を印加する1つの配線層、グランド電位と接続される1つの配線層、ブリッジ回路の中点電圧を出力する2つの配線層とされている。なお、図1では、引き出し配線層18を1つのみ図示している。
【0019】
そして、各引き出し配線層18のうちのゲージ抵抗17と接続される部分と反対側の端部は、後述する貫通電極38と電気的に接続される引き出し配線用接続部(以下では、第1接続部19という)とされている。
【0020】
なお、第1接続部19は、後述する貫通孔36と対応する平面円形状とされている。また、ゲージ抵抗17、接続配線層、引き出し配線層18、第1接続部19は、それぞれP型の不純物を拡散させた拡散層等で構成され、N型層14内に形成されている。
【0021】
さらに、半導体層13のうちのN型層14内には、第1接続部19よりも他端部側に、N型層14よりも高不純物濃度とされたN型のN型層用接続部(以下では、第2接続部20という)が形成されている。この第2接続部20は、N型層14を所定電位に維持するために後述する貫通電極38と電気的に接続される部分である。
【0022】
また、半導体層13には、第2接続部20よりも他端部側であってN型層14の外側に、半導体層13よりも高不純物濃度とされたP型の半導体層用接続部(以下では、第3接続部という)21が形成されている。この第3接続部21は、半導体層13を所定電位に維持するために後述する貫通電極38と電気的に接続される部分である。なお、第2、第3接続部20、21は、第1接続部19と同様に、後述する貫通孔36と対応する平面円形状とされている。
【0023】
そして、図1に示されるように、上記センサ基板10の一面10aに、キャップ基板30が積層されている。キャップ基板30は、シリコン等の基板31と、基板31のうちのセンサ基板10と対向する一面側に形成された絶縁膜32と、基板31のうちの絶縁膜32側の一面と反対側の他面に形成された絶縁膜33とを有している。なお、本実施形態では、キャップ基板30が第2基板に相当している。
【0024】
そして、キャップ基板30は、絶縁膜32がセンサ基板10における半導体層13と接合されている。本実施形態では、キャップ基板30とセンサ基板10とは、絶縁膜32および半導体層13のうちの接合面を活性化させて接合するいわゆる直接接合等で接合されている。
【0025】
なお、本実施形態では、絶縁膜32のうちの基板31と反対側の一面がキャップ基板30の一面30aとされ、絶縁膜33のうちの基板31と反対側の一面がキャップ基板30の他面30bとされている。
【0026】
そして、キャップ基板30の一面30a側には、ダイヤフラム部16と対向する部分に窪み部34が形成されている。これにより、センサ基板10とキャップ基板30との間に窪み部34によって基準圧力室35が構成され、ダイヤフラム部16のうちの一面10a側に基準圧力室35から基準圧力が印加される。なお、本実施形態では、基準圧力室35は、真空圧とされている。
【0027】
また、図1および図2に示されるように、キャップ基板30のうちの他端部側(すなわち、図1中紙面左側)には、当該キャップ基板30をセンサ基板10とキャップ基板30との積層方向に貫通する円筒状の6つの貫通孔36が形成されている。具体的には、キャップ基板30には、各第1接続部19を露出させる4つの貫通孔36と、第2接続部20を露出させる貫通孔36と、第3接続部21を露出させる貫通孔36とが形成されている。
【0028】
なお、図1中では、第1接続部19を露出させる貫通孔36を1つのみ図示している。また、各貫通孔36は、ドライエッチング等によって形成されるため、開口部から底部に向かって直径が短くなるテーパ状(すなわち、先細り形状)となる。
【0029】
そして、各貫通孔36の壁面には、TEOS(すなわち、Tetra ethyl ortho silicate)等で構成される絶縁膜37が配置されている。また、絶縁膜37上には、適宜第1接続部19、第2接続部20、または第3接続部21と電気的に接続されるように貫通電極38が形成されている。
【0030】
さらに、図3に示されるように、キャップ基板30の他面30b上には、貫通電極38と電気的に接続される配線層39が形成されている。本実施形態では、配線層39は、キャップ基板30の他面のうちの貫通孔36の開口部周辺に形成されたフランジ部39aと、フランジ部39aの一部から一方向に延設された引き出し部39bとを有している。
【0031】
なお、本実施形態では、図2に示されるように、貫通電極38および配線層39は、同じ金属材料で構成されている。つまり、配線層39は、貫通電極38が延設されることによって形成されている。そして、貫通電極38および配線層39は、それぞれAlSiCuで構成されるバリアメタルとしての下層金属膜40aと、Alで構成される上層金属膜40bとが積層された2層構造とされている。
【0032】
また、キャップ基板30には、各貫通電極38および各配線層39を一体的に覆うように保護膜41が形成されている。本実施形態では、保護膜41は、図2に示されるように、TEOS等で構成される下層保護膜41aと、SiN等で構成され、水分の透過性が下層保護膜41aよりも低い上層保護膜41bとが積層された2層構造とされている。
【0033】
なお、絶縁膜37、貫通電極38、および保護膜41は、それぞれ成膜されることによって形成されるため、成膜され難い貫通孔36の底部ほど膜厚が薄くなる。
【0034】
そして、保護膜41には、図3に示されるように、引き出し部39bの一部を露出させるコンタクトホール41cが形成されている。これにより、引き出し部39bのうちのコンタクトホール41cから露出する部分は、外部回路との電気的な接続を図るためのボンディングワイヤが接続されるパッド部として機能する。
【0035】
また、図2および図3に示されるように、保護膜41には、スリット41dが形成されている。具体的には、このスリット41dは、センサ基板10の一面10aに対する法線方向から視たときに貫通孔36の開口部を囲む環状となり、かつフランジ部39aに達するように形成されている。言い換えると、スリット41dは、フランジ部39aを環状に露出させるように形成されている。そして、保護膜41は、スリット41dにより、スリット41dの内縁側の領域と外縁側の領域とに分離されている。
【0036】
なお、図3では、第1接続部19を露出させる貫通孔36近傍の平面図を示しているが、第2接続部20を露出させる貫通孔36近傍の平面図、および第3接続部21を露出させる貫通孔36近傍の平面図も図3と同様の図となる。
【0037】
以上が本実施形態におけるセンサ部1の構成である。そして、図1に示されるように、センサ基板10の他面10bにおける他端部側には、センサ部1を搭載して支持する支持部材50が接着剤等の接合部材60を介して配置されている。この支持部材50は、銅や42アロイ等で構成されるリードフレームで構成されている。
【0038】
また、センサ部1のうちの他端部側および支持部材50等は、モールド樹脂2によって封止されて固定されている。つまり、センサ部1には、ダイヤフラム部16を露出させつつ貫通電極38等が封止されるように、モールド樹脂2が配置されている。
【0039】
以上が本実施形態における半導体装置としての圧力センサの構成である。このような半導体装置では、N型層14が、P型のゲージ抵抗17、接続配線層、引き出し配線層18、第1接続部19より高電位とされた状態で圧力の検出が行われる。つまり、N型層14と、P型のゲージ抵抗17、接続配線層、引き出し配線層18、第1接続部19とで構成されるダイオードに逆バイアスが印加される状態で圧力の検出が行われる。
【0040】
そして、ダイヤフラム部16のうちの他面10b側に測定媒体の圧力が印加されると、この圧力と一面10a側に印加される基準圧力との差圧に応じてダイヤフラム部16が変形し、当該変形に応じたセンサ信号が出力される。このため、このセンサ信号に基づいて測定媒体の圧力が検出される。
【0041】
以上のように、本実施形態では、保護膜41には、センサ基板10の一面10aに対する法線方向から視たときに貫通孔36の開口部を囲む環状となり、かつフランジ部39aに達するようにスリット41dが形成されている。このため、貫通孔36の底面と側面との境界部分上に配置された保護膜41にクラックが発生して当該クラックが伸展したとしても、クラックの伸展がスリット41dによって遮られる。つまり、スリット41dによって分離された内縁側の領域にクラックが発生したとしても、当該クラックが外縁側の領域まで伸展することが抑制される。したがって、隣接する貫通電極38同士が共通のクラックによって露出することを抑制でき、隣接する貫通電極38同士がショートすることを抑制できる。
【0042】
ここで、本発明者らは、クラックが発生する要因についてさらに詳細に検討した。そして、本発明者らは、保護膜41に発生する応力は、図4および図5に示されるように、保護膜41の厚さと貫通電極38の厚さに依存することを新規に見出した。
【0043】
なお、ここでの保護膜41に発生する応力とは、貫通孔36の底面と側面との境界部分上に配置される保護膜41に発生する応力のことである。言い換えると、ここでの保護膜41に発生する応力とは、保護膜41に発生する最大応力のことである。また、図4中の上層保護膜41bの膜厚とは、貫通孔36の底面上に形成された部分の膜厚のことである。そして、貫通孔36の底面上に形成される保護膜41の厚さは、貫通孔36の側面における底面との境界部分上に形成される保護膜41の厚さとほぼ等しくなる。同様に、図5中の貫通電極38の膜厚とは、貫通孔36の底面上に形成される貫通電極38の膜厚のことである。そして、貫通孔36の底面上に形成される貫通電極38の厚さは、貫通孔36の側面における底面との境界部分上に形成される貫通電極38の厚さとほぼ等しくなる。
【0044】
図4に示されるように、本発明者らは、保護膜41に発生する応力は、貫通孔36の底面に形成される保護膜41が厚くなるほど小さくなることを見出した。また、図5に示されるように、本発明者らは、保護膜41に発生する応力は、貫通孔36の底面に形成される貫通電極38が厚くなるほど大きくなることを見出した。なお、図5は、下層金属膜40aの膜厚を0.1μmとし、上層金属膜40bの膜厚を変更した例について示しているが、上層金属膜40bの膜厚を一定とし、下層金属膜40aの膜厚を変更した場合も同様の結果となる。
【0045】
そして、本発明者らは、図4および図5に示す保護膜41に発生する応力からさらにクラックが発生する確率についても検討を行い、図6に示される実感結果を得た。すなわち、図6に示されるように、保護膜41には、発生する応力が1240MPaになるとクラックが発生することを確認した。したがって、本実施形態は、保護膜41に発生する応力が1240MPa以上となる半導体装置に適用することが好ましい。
【0046】
次に、本実施形態の半導体装置の製造方法について簡単に説明する。
【0047】
まず、支持基板11、絶縁膜12、半導体層13が順に積層されたセンサ基板10を用意する。そして、図示しないマスクを用いてセンサ基板10の一面10a側に不純物をイオン注入すると共に加熱処理して不純物を熱拡散させることにより、N型層14、ゲージ抵抗17、引き出し配線層18、第1接続部19、第2接続部20、第3接続部21等を適宜形成する。
【0048】
次に、センサ基板10を用意する工程とは別工程において、基板31にCVD(すなわち、Chemical Vapor Deposition)法等で絶縁膜32を形成し、ドライエッチング等で窪み部34を形成する。
【0049】
続いて、センサ基板10と基板31とを接合する。この接合工程では、まず、センサ基板10の半導体層13および絶縁膜32にArイオンビーム等を照射し、各接合面を活性化させる。そして、センサ基板10および基板31に適宜設けられたアライメントマーク等を用いて赤外顕微鏡等によるアライメントを行い、室温〜550°の低温で接合するいわゆる直接接合により、センサ基板10と基板31とを接合する。これにより、センサ基板10と基板31の窪み部34との間の空間を含んで基準圧力室35が構成され、当該基準圧力室35にゲージ抵抗17等が封止される。
【0050】
続いて、第1接続部19、第2接続部20、および第3接続部21がそれぞれ露出するように、ドライエッチング等で基板31および絶縁膜32を貫通する貫通孔36を形成する。そして、各貫通孔36の壁面にTEOS等の絶縁膜37を成膜する。このとき、基板31のうちのセンサ基板10側と反対側の一面に形成された絶縁膜にて上記絶縁膜33が構成される。つまり、基板31、絶縁膜32、および絶縁膜33を有するキャップ基板30が構成される。
【0051】
次に、各貫通孔36の底部に形成された絶縁膜37を除去する。そして、スパッタ法や蒸着法等により、各貫通孔36に、第1接続部19、第2接続部20、第3接続部21と適宜電気的に接続される貫通電極38を形成すると共に、絶縁膜33上に金属膜を成膜する。本実施形態では、下層金属膜40aおよび上層金属膜40bを順に成膜する。その後、絶縁膜33上に形成された下層金属膜40aおよび上層金属膜40bをパターニングし、上記フランジ部39aおよび引き出し部39bを有する配線層39を形成する。
【0052】
続いて、貫通電極38および配線層39が覆われるように、保護膜41を成膜する。本実施形態では、下層保護膜41aを構成するTEOSを成膜した後、上層保護膜41bを構成するSiNを成膜する。
【0053】
次に、保護膜41a上にフォトレジストを配置し、当該フォトレジストをパターニングした後、フォトレジストをマスクとして保護膜41にコンタクトホール41cおよびスリット41dを形成する。これにより、上記センサ部1が製造される。なお、本実施形態では、コンタクトホール41cおよびスリット41dは、共に配線層39に達するように形成されるため、共通の工程にて形成される。
【0054】
その後、センサ部1に支持部材50を配置すると共に、モールド樹脂2によってセンサ部1および支持部材50等を封止することにより、上記半導体装置が製造される。
【0055】
なお、上記では、1つの半導体装置の製造方法について説明したが、ウェハ状のセンサ基板10と基板31とを用意し、ウェハ状のまま上記各工程を行った後にこのものをダイシングカットしてチップ単位に分割するようにしてもよい。
【0056】
以上説明したように、本実施形態では、保護膜41に、センサ基板10の一面10aに対する法線方向から視たときに貫通孔36の開口部を囲む環状となり、かつフランジ部39aに達するようにスリット41dが形成されている。このため、貫通孔36の底面と側面との境界部分上に配置された保護膜41にクラックが発生して当該クラックが伸展したとしても、クラックの伸展がスリット41dによって遮られる。したがって、隣接する貫通電極38同士が共通のクラックによって露出することを抑制でき、隣接する貫通電極38同士がショートすることを抑制できる。
【0057】
(第2実施形態)
第2実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対してスリット41dを形成する場所を変更したものであり、その他に関しては第1実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0058】
本実施形態では、図7および図8に示されるように、センサ基板10の一面10aに対する法線方向から視たとき、保護膜41には、配線層39を囲むようにスリット41dが形成されている。本実施形態では、下層保護膜41aと絶縁膜33とが同じ材料であるTEOSで構成されており、下層保護膜41aにクラックが発生した場合には、当該クラックが絶縁膜33まで伝播する可能性がある。このため、スリット41dは、下層保護膜41aおよび絶縁膜33を貫通して基板31に達するように形成されている。つまり、スリット41dは、基板31を枠状に露出させるように形成されている。なお、本実施形態では、下層保護膜41aが保護膜41のうちの絶縁膜33と当接する部分に相当する。また、図7は、図1中の領域Aの拡大図に相当していると共に、図8中のVII−VII断面に相当している。
【0059】
このように、配線層39を囲むようにスリット41dを形成した場合においても、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0060】
また、このような半導体装置では、配線層39を囲むようにスリット41dを形成しているため、エアアイソレーションにて隣接する配線層39が分離される。したがって、隣接する配線層39の間に生成される寄生容量を低減でき、当該寄生容量によって信頼性が低下することを抑制できる。
【0061】
さらに、貫通電極38の近傍にスリット41dを形成する場合には、フォトレジストの位置ずれや寸法ずれ等により、貫通孔36の開口部を囲むようにスリット41dが形成されないというスリット41dの形状不良が発生する可能性がある。しかしながら、本実施形態のように、配線部39も囲むようにスリット41dを形成することにより、フォトレジストの位置ずれや寸法ずれ等が発生したとしても、貫通孔36の開口部を囲むようにスリット41dが形成されないという不具合が発生することを抑制できる。
【0062】
(第3実施形態)
第3実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対して保護膜41の形状を変更したものであり、その他に関しては第1実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0063】
本実施形態では、図9に示されるように、貫通孔36の壁面上に保護膜41を配置しない構成としている。つまり、応力が集中する箇所、言い換えるとクラックが発生し易い箇所を含む部分に保護膜41を配置しない構成としている。なお、図9は、図1中の領域の拡大図に相当している。
【0064】
このように、応力が集中する箇所に保護膜41を配置しない構成とすることにより、保護膜にクラックが発生すること自体を低減できる。
【0065】
(他の実施形態)
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。
【0066】
例えば、上記各実施形態において、貫通電極38、配線層39を1層の金属膜のみで構成してもよいし、保護膜41を1層のみで構成してもよい。
【0067】
また、上記各実施形態において、下層保護膜41aと絶縁膜33とを異なる材料で形成してもよい。この場合、上記第2実施形態では、下層保護膜41aと絶縁膜33とを異なる材料で形成すると、下層保護膜41aにクラックが発生したとしても当該クラックが絶縁膜33には伝播し難いため、スリット41dを保護膜41のみに形成するようにしてもよい。
【0068】
さらに、上記各実施形態において、第1基板10に形成される接続部19〜21の数に応じて貫通孔36の数は適宜変更可能である。
【0069】
また、上記各実施形態において、凹部15を支持基板11から絶縁膜12に渡って形成し、ダイヤフラム部16を半導体層13のみで構成するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0070】
10 第1基板
10a 一面
19〜21 接続部
30 第2基板
30a 一面
30b 他面
36 貫通孔
38 貫通電極
41 保護膜
41d スリット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9