【実施例】
【0033】
この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。
図面は車両検査方法を示すが、まず、
図1を参照して当該車両検査方法に用いるオーディオシステムの構成について説明する。
【0034】
図1に示すように、この実施例のオーディオシステムは、車両用オーディオヘッドユニット10と、音声周波増幅器としてのオーディオアンプ11と、車両の左前に配置されたツイータ(tweeter)のような高音用スピーカ12と、車両の左前に配置されたウーファ(woofer)のような低音用スピーカ13と、車両の左後に配置されたフルレンジ(full range)タイプのスピーカ14と、車両の右前に配置されたツイータのような高音用スピーカ15と、車両の右前に配置されたウーファのような低音用スピーカ16と、車両の右後に配置されたフルレンジタイプのスピーカ17と、車両ルーフ部におけるルームランプ近傍に設けられた車両用集音マイク18と、を備えている。
【0035】
ここで、上述の高音用スピーカ12,15はインストルメントパネルに配置されており、また、上述の低音用スピーカ13,16はフロントドアに配置されており、さらに、上述のフルレンジタイプのスピーカ14,17はリヤドアまたはリヤパッケージトレイに配置されている。
【0036】
また、上述のオーディオヘッドユニット10は、プログラムを格納するROM19と、中央処理装置としてのCPU20と、予め設定した各スピーカ12〜17の周波数(設定周波数)データ、並びに、予め設定した各スピーカ12〜17の音圧(設定音圧)データなどの必要なデータを記憶するRAM21と、スピーカ検査後にスピーカ12〜17が正常である旨のOK表示、または、スピーカ検査後にスピーカが異常である旨のNG表示を可視表示する表示部22と、を備えている。
上述のスピーカ12〜17の異常は、スピーカ12〜17に対する結線状態の不良(断線、接触不良)、スピーカ12〜17に対してコネクタが差込まれていない状態、スピーカ12〜17それ自体の故障を含む。
【0037】
さらに、上述の車両用集音マイク18としては、ハンズフリーマイクやノイズキャンセラーを用いることができるが、ハンズフリーマイクを用いた場合には、既存のマイク(ハンズフリーマイク)を車両用集音マイク18として有効利用することができ、集音マイクを別途設ける必要がなくなる。
【0038】
そして、上述のオーディオヘッドユニット10とオーディオアンプ11とをラインL1(ラインとは電気信号線の略)で接続し、オーディオアンプ11と後部左右のスピーカ14,17とは、それぞれ独立したラインL2,L3で接続する一方、車両左前の2つのスピーカ12,13は、ラインL4,L5を用いてオーディオアンプ11に対して並列接続し、同様に、車両右前の2つのスピーカ15,16も、ラインL6,L7を用いてオーディオアンプ11に対して並列接続し、さらに、車両用集音マイク18はラインL8を介してオーディオヘッドユニット10に接続している。
【0039】
図1に示す高音用スピーカ12,15(ツイータ)は、
図2に示す高音域の周波数特性Aを有しており、
図1に示す低音用スピーカ13,16(ウーファ)は、
図2に示す低音域の周波数特性Bを有しており、
図1に示すフルレンジタイプのスピーカ14,17は、
図2に示す全帯域の周波数特性Cを有している。
【0040】
上述のオーディオヘッドユニット10は、当該オーディオヘッドユニット10がスピーカ検査モードに設定された時(
図3のステップS1参照)、各スピーカ12〜17から各スピーカ12〜17の特性A,B,C(
図2参照)に応じた周波数帯および音圧の音源を発生させるべくオーディオアンプ11に指令を出す指令機能(ステップS2参照)と、上記指令を受けてオーディオアンプ11から上記音源を発生させる検査音発生機能(ステップS3参照)と、車両用集音マイク18で集音された検査音の周波数および音圧と、予め設定された各スピーカ12〜17の周波数(設定周波数)および音圧(設定音圧)とを比較する比較機能(ステップS5参照)と、比較結果に基づいて各スピーカ12〜17の結線状態または/およびスピーカ12〜17の故障の有無などのスピーカの良否状態を判定する判定機能(ステップS6参照)と、を備えている。
【0041】
次に、
図3に示すフローチャートを参照して車両検査方法(スピーカ検査方法)について説明する。
この実施例では、当該車両検査方法は、
図1で示したオーディオシステムを備えた車両の組立てラインの完成検査時において、各スピーカ12〜17の結線状態や各スピーカ12〜17それ自体の故障の有無を検査するものである。
【0042】
図3に示すフローチャートのモード設定ステップS1で、オーディオヘッドユニット10をスピーカ検査モードに設定する。
次に、指令ステップS2で、オーディオヘッドユニット10からオーディオアンプ11に対して、各スピーカ12〜17から当該各スピーカ12〜17の特性A,B,Cに応じた周波数帯および音圧の音源を発生させるべく指令を出す。
【0043】
次に、検査音発生ステップS3で、オーディオアンプ11は上述の指令を受けて各スピーカ12〜17から各スピーカ12〜17の特性A,B,Cに応じた周波数帯および音圧の音源を発生する。この検査音発生ステップS3は、次のイ)、ロ)の2通りがある。
【0044】
イ)の方法
イ)の方法は、高音用スピーカ12を
図2の周波数c、例えば、1000〜2000Hzおよび所定音圧で駆動し、次に低音用スピーカ13を
図2の周波数a、例えば、50〜80Hzおよび所定音圧で駆動し、次にフルレンジタイプのスピーカ14を
図2の周波数b、例えば、100〜200Hz(但し、クロスオーバ周波数を除く)および所定音圧で駆動し、さらに、その後において、フルレンジタイプのスピーカ17を
図2の周波数b、例えば、100〜200Hz(但し、クロスオーバ周波数を除く)および所定音圧で駆動し、次に、低音用スピーカ16を
図2の周波数a、例えば、50〜80Hzおよび所定音圧で駆動し、次に高音用スピーカ15を
図2の周波数c、例えば、1000〜2000Hzおよび所定音圧で駆動する。なお、スピーカの駆動順序は上記12,13,14,17,16,15の順に限定されるものではない。
つまり、上記イ)の方法は、並列接続された各スピーカ12,13またはスピーカ15,16の発生音を順次発生させるものである。
【0045】
ロ)の方法
ロ)の方法は、左側の各スピーカ12,13,14を、それぞれのスピーカ12,13,14に対応する周波数c,a,bおよび音圧で同時駆動した後に、右側の各スピーカ15,16,17を、それぞれのスピーカ15,16,17に対応する周波数c,a,bおよび音圧で同時駆動するものである。
【0046】
ここで、高音用スピーカ12,15は、例えば、1000〜2000Hzの周波数で駆動し、低音用スピーカ13,16は、例えば、50〜80Hzの周波数で駆動し、フルレンジタイプのスピーカ14,17は、例えば、100〜200Hzの周波数(但し、クロスオーバ周波数を除く)で駆動し、周波数が互いに重ならない音源を同時に発生させる。
つまり、上記ロ)の方法は、並列接続された各スピーカ12,13またはスピーカ15,16の発生音を同時発生させるものである。
【0047】
次に、検査音集音ステップS4で、オーディオヘッドユニット10に接続された車両用集音マイク18により、検査音発生ステップS3の際の各スピーカ12〜17からの発生音を集音し、この集音マイク18で音響エネルギを電気エネルギに変換してオーディオヘッドユニット10に送る。
【0048】
次に、比較ステップS5で、オーディオヘッドユニット10は検査音集音ステップS4により集音された各スピーカ12〜17の検査音の周波数および音圧と、予め設定された各スピーカ12〜17の周波数(設定周波数)および音圧(設定音圧)とを比較する。
【0049】
上述の各スピーカ12〜17毎の設定周波数および設定音圧は、RAM21の所定エリアに読出し可能に記憶されている。上述のロ)の方法において、ステップS3で並列接続された各スピーカ12,13またはスピーカ15,16の発生音を同時発生させた場合においても、高音用スピーカ12,15と低音用スピーカ13,16とでは、その検査音が、例えば、1000〜2000Hzと50〜80Hzのように周波数が全く異なるので適確に比較することができる。
【0050】
次に、判定ステップS6で、オーディオヘッドユニット10は、比較ステップS5の結果に基づいて各スピーカ12〜17の結線状態やスピーカ12〜17それ自体の故障の有無などのスピーカの良否状態を自動判定し、全てのスピーカ12〜17が正常に検査音を適正に出していると判定したYES判定時には、次の正常表示ステップS7に移行する一方で、少なくとも何れかのスピーカに異常があると判定したNO判定時には、別の異常表示ステップS8に移行する。
上述の正常表示ステップS7で、オーディオヘッドユニット10は表示部22を駆動して、当該表示部22にオーディオシステムが正常である旨の表示を実行する。
【0051】
一方で、上述の異常表示ステップS8では、オーディオヘッドユニット10は表示部22を駆動して、当該表示部22に何れのスピーカが正常ではないかを示す表示を実行する。
【0052】
このように、上記実施例の車両検査方法は、車両用オーディオヘッドユニット10に対し並列接続された特性の異なる複数のスピーカ(高音用スピーカ12と低音用スピーカ13、または高音用スピーカ15と低音用スピーカ16参照)と、車両用集音マイク18とを備えた車両検査方法であって、上記車両用オーディオヘッドユニット10により各スピーカ12,13,15,16から各スピーカ12,13,15,16の特性A,Bに応じた周波数帯の音源を発生させる検査音発生ステップS3と、該検査音発生ステップS3の際の各スピーカ12,13,15,16からの発生音を上記車両用集音マイク18で集音する検査音集音ステップS4と、該検査音集音ステップS4により集音された検査音の周波数と、予め設定された各スピーカ12,13,15,16の周波数(設定周波数)とを比較する比較ステップS5と、該比較ステップS5の結果に基づいて各スピーカ12,13,15,16の良否状態を判定する判定ステップS6と、を備えたものである(
図1〜
図3参照)。
【0053】
この構成によれば、検査音発生ステップS3で、車両用オーディオヘッドユニット10により各スピーカ12,13,15,16から各スピーカ12,13,15,16の特性A,Bに応じた周波数帯の音源を発生させ、検査音集音ステップS4で、検査音発生ステップS3の際の各スピーカ12,13,15,16からの発生音を車両用集音マイク18で集音し、比較ステップS5で、検査音集音ステップS4により集音された検査音の周波数と、予め設定された各スピーカ12,13,15,16の周波数とを比較し、判定ステップS6で、上記比較ステップS5の結果に基づいて各スピーカ12,13,15,16の良否状態を判定する。
【0054】
ここで、スピーカ12,13,15,16の結線状態が不良の場合やスピーカ12,13,15,16が故障している場合、またはスピーカ12,13,15,16に対してコネクタが差込まれていない場合には、スピーカ12,13,15,16から検査音が発生することなく、集音マイク18で検査音を集音することが不可となる。
【0055】
また、並列接続された複数のスピーカに対しては、それぞれの特性に応じた周波数帯の音源を発生させるので、検査音の周波数帯が異なると共に、集音マイクで集音する検査音の周波数帯も異なり、比較ステップによる比較時には集音された検査音の周波数と、予め設定された各スピーカの周波数とを比較するので、周波数の差異により並列接続された複数のスピーカの何れのスピーカかを容易に判別することができる。
よって、並列接続された特性の異なる複数のスピーカ(高音用スピーカ12と低音用スピーカ13、または、高音用スピーカ15と低音用スピーカ16)の良否状態を確実に検査することができる。
【0056】
この発明の一実施形態においては、上記検査音発生ステップS3は、各スピーカ12,13,15,16の特性A,Bに応じた周波数帯および音圧の音源を発生させ、上記比較ステップS5は、検査音集音ステップS4により集音された検査音の周波数および音圧と、予め設定された各スピーカの周波数(設定周波数)および音圧(設定音圧)とを比較するものである(
図3参照)。
【0057】
この構成によれば、単に各スピーカ12,13,15,16の特性A,Bに応じた周波数帯のみならず音圧も用いて、音源発生、集音、比較、判定を実行するので、スピーカ検査精度の向上を図ることができると共に、特に、騒音環境下でも確実にスピーカ検査を行なうことができ、車両組立て工場のように周辺が静かでない工場内においてスピーカ検査を行なう際にも有効である。
【0058】
この発明の一実施形態においては、上記検査音発生ステップS3は、並列接続された各スピーカ(スピーカ12,13またはスピーカ15,16)の発生音を順次発生させるものである(
図3参照)。
【0059】
この構成によれば、並列接続された各スピーカ(スピーカ12と13、または、スピーカ15と16)の発生音を順次発生させるので、複数のスピーカ(スピーカ12と13、またはスピーカ15と16)が同時に発生音を発することなく、1台ずつ発生音が発することになるため、スピーカ検査をより一層確実に実行することができる。
【0060】
この発明の一実施形態においては、上記検査音発生ステップS3は、並列接続された各スピーカ12と13、またはスピーカ15と16の発生音を同時発生させるものである(
図3参照)。
【0061】
この構成によれば、並列接続された各スピーカ12,13,15,16の発生音を同時発生させるので、スピーカ検査時間の短縮を図ることができる。なお、並列接続された複数のスピーカ12と13、またはスピーカ15と16の発生音を同時発生させても、各スピーカ12,13,15,16の特性に応じた周波数帯の音源を発生するため、比較、判定には何等の支障もない。
【0062】
この発明の一実施形態においては、上記複数のスピーカ12,13,15,16の特性A,Bは、周波数帯域が互いに異なる特性に設定されており、上記検査音発生ステップS3は、異なる周波数帯域において周波数が互いに重ならない音源(例えば、高音用スピーカ12,15は1000〜2000Hz、低音用スピーカ13,16は50〜80Hzの音源)を同時に発生させるものである(
図2,
図3参照)。
【0063】
この構成によれば、異なる周波数帯域において周波数が互いに重ならない音源を同時に発生させても、比較ステップS5で、集音された検査音を帯域毎に分離して適確に比較することができる。これにより、スピーカ検査時間の短縮と、スピーカ検査の適正化との両立を図ることができる。
【0064】
なお、実施例で開示したように、車両用集音マイク18として、ハンズフリーマイクを用いると、既存のマイク(ハンズフリーマイク)を車両用集音マイク18として有効利用することができるので、集音マイクを別途設ける必要がなくなる。
【0065】
この発明の構成と、上述の実施例との対応において、
この発明の並列接続された特性の異なる複数のスピーカは、実施例の高音用スピーカ12と低音用スピーカ13、または、高音用スピーカ15と低音用スピーカ16に対応するも、
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではない。
【0066】
例えば、並列接続された特性の異なる複数のスピーカとしては、ツイータ(高音用スピーカ)とウーファ(低音用スピーカ)との組合せに代えて、ツイータ(高音用スピーカ)、ウーファ(低音用スピーカ)、スコーカ(中音用スピーカ)、フルレンジタイプのスピーカのうち、特性の異なる複数のスピーカがオーディオヘッドユニット10またはオーディオアンプ11に対して並列接続されたものであってもよい。
また、上記実施例で開示した周波数50〜80Hz、100〜200Hz、1000〜2000Hzは一例であって、これに限定されるものではない。