特許第6443371号(P6443371)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6443371
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】車両検査方法
(51)【国際特許分類】
   H04R 29/00 20060101AFI20181217BHJP
   B60R 11/02 20060101ALI20181217BHJP
【FI】
   H04R29/00 310
   B60R11/02 S
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-56426(P2016-56426)
(22)【出願日】2016年3月22日
(65)【公開番号】特開2017-175245(P2017-175245A)
(43)【公開日】2017年9月28日
【審査請求日】2017年3月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】中島 正典
(72)【発明者】
【氏名】若松 功二
(72)【発明者】
【氏名】西 康一
【審査官】 大野 弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭63−024800(JP,A)
【文献】 再公表特許第2013/190632(JP,A1)
【文献】 特開2009−292399(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 29/00
B60R 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用オーディオヘッドユニットに対し並列接続された特性の異なる複数のスピーカと、
車両用集音マイクとを備えた車両検査方法であって、
上記車両用オーディオヘッドユニットにより各スピーカから各スピーカの特性に応じた周波数帯の音源を発生させる検査音発生ステップと、
該検査音発生ステップの際の各スピーカからの発生音を上記車両用集音マイクで集音する検査音集音ステップと、
該検査音集音ステップにより集音された検査音の周波数と、予め設定された各スピーカの周波数とを比較する比較ステップと、
該比較ステップの結果に基づいて各スピーカの良否状態を判定する判定ステップと、を備え
上記複数のスピーカは、車両左前のインストルメントパネルおよびフロントドアと、車両右前のインストルメントパネルおよびフロントドアとに配置され、
上記車両用集音マイクは、車両ルーフ部に設けられたハンズフリーマイクに設定された
車両検査方法。
【請求項2】
上記検査音発生ステップは、各スピーカの特性に応じた周波数帯および音圧の音源を発生させ、
上記比較ステップは、検査音集音ステップにより集音された検査音の周波数および音圧と、予め設定された各スピーカの周波数および音圧とを比較する
請求項1に記載の車両検査方法。
【請求項3】
上記検査音発生ステップは、並列接続された各スピーカの発生音を順次発生させる
請求項1または2に記載の車両検査方法。
【請求項4】
上記検査音発生ステップは、並列接続された各スピーカの発生音を同時発生させる
請求項1または2に記載の車両検査方法。
【請求項5】
上記複数のスピーカの特性は、周波数帯域が互いに異なる特性に設定されており、
上記検査音発生ステップは、異なる周波数帯域において周波数が互いに重ならない音源を同時に発生させる
請求項4に記載の車両検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両用オーディオヘッドユニットに対し並列接続された特性の異なる複数のスピーカと、車両用集音マイクとを備えたような車両検査方法に関し、詳しくは、並列接続された複数のスピーカの結線状態や当該スピーカの故障の有無などのスピーカの良否状態を検査する車両検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のオーディオシステムのブロック図を図4に示す。
図4に示すように、従来のオーディオシステムは、オーディオヘッドユニット41と、オーディオアンプ42と、車両の左前に配置されたツイータ(tweeter)のような高音用スピーカ43と、車両の左前に配置されたウーファ(woofer)のような低音用スピーカ44と、車両の左後に配置されたフルレンジタイプのスピーカ45と、車両の右前に配置されたツイータのような高音用スピーカ46と、車両の右前に配置されたウーファのような低音用スピーカ47と、車両の右後に配置されたフルレンジタイプのスピーカ48と、を備えている。
【0003】
そして、オーディオヘッドユニット41とオーディオアンプ42とをラインL21で接続し、オーディオアンプ42と後部左右のスピーカ45,48とは、それぞれ独立したラインL22,L23で接続する一方、車両左前の2つのスピーカ43,44は、ラインL24,L25を用いて並列接続し、同様に、車両右前の2つのスピーカ46,47も、ラインL26,L27を用いて並列接続している。
【0004】
図5は、図4のオーディオシステムを備えた車両の組立てラインの完成検査時において、スピーカの結線状態やスピーカの故障の有無などのスピーカの良否状態を検査するフローチャートを示したものである。
【0005】
図5に示すフローチャートを参照して従来の車両検査方法について説明する。
ステップS51で、オーディオヘッドユニット41をスピーカ検査モードに設定し、次のステップS52で、オーディオヘッドユニット41からラインL21を介してオーディオアンプ42に対し、各スピーカ43〜48毎に検査音を発生するよう音源発生指令を行なう。
【0006】
次に、ステップS53で、上述の音源発生指令を受けてオーディオアンプ42は各スピーカ43〜48毎に順次100〜200Hzの範囲内の周波数の検査音を発生する。
【0007】
この場合、車両後部のスピーカ45,48はオーディオアンプ42に対してそれぞれ独立して接続されているので、検査音はタイムラグを有して発生されるものの、車両左前側の2つのスピーカ43と44とは並列接続されており、同様に車両右前側の2つのスピーカ46と47とも並列接続されているので、スピーカ43,44は同時に検査音を発生し、同様に、46,47も同時に検査音を発生する。
【0008】
次に、ステップS54で、検査員が各々の方向から音(検査音)が出ているか否かを、当該検査員の聴感にて確認する。
【0009】
次に、ステップS55で、検査員はその聴感に基づいて自己の聴感記憶と比較して、正常か否かを判定し、適確に検査音が発生しているOK時には、ステップS56で正常であると認識し、検査音が発生していないNG時には、ステップS57で、結線状態不良、コネクタの非差込み状態、スピーカそれ自体の故障などの異常であると認識する。
【0010】
このように、従来の車両検査方法(スピーカ検査方法)は、検査員の聴覚に基づく検査であって、並列に接続されたスピーカ(スピーカ43と44、スピーカ46と47)の場合には、何れか一方のスピーカに断線等の不良があっても、残りのスピーカから検査音が発生するため、スピーカ検査精度が低く、改善の余地があった。
【0011】
ところで、特許文献1には、車載スピーカの検査を行なうものにおいて、スピーカに対して出力し、スピーカが駆動されるか否かにより、スピーカのワイヤハーネスの断線や接触不良を検査する車載用検査装置が開示されている。
【0012】
しかしながら、該特許文献1には、並列接続された複数のスピーカを検査する際、何れか一方のスピーカに結線不良などの不具合があっても、並列接続された他方の正常なスピーカから検査音が発生するため、正確な検査を行なうことが困難になるという技術的課題の開示がない。
【0013】
また、上記特許文献1には、複数のスピーカの特性に対応した異なる周波数帯の音を用いて検査するという点についても開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平5−2045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
そこで、この発明は、並列接続された特性の異なる複数のスピーカの結線状態やスピーカの故障の有無などのスピーカの良否状態を確実に検査することができる車両検査方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この発明による車両検査方法は、車両用オーディオヘッドユニットに対し並列接続された特性の異なる複数のスピーカと、車両用集音マイクとを備えた車両検査方法であって、上記車両用オーディオヘッドユニットにより各スピーカから各スピーカの特性に応じた周波数帯の音源を発生させる検査音発生ステップと、該検査音発生ステップの際の各スピーカからの発生音を上記車両用集音マイクで集音する検査音集音ステップと、該検査音集音ステップにより集音された検査音の周波数と、予め設定された各スピーカの周波数とを比較する比較ステップと、該比較ステップの結果に基づいて各スピーカの良否状態を判定する判定ステップと、を備え、上記複数のスピーカは、車両左前のインストルメントパネルおよびフロントドアと、車両右前のインストルメントパネルおよびフロントドアとに配置され、上記車両用集音マイクは、車両ルーフ部に設けられたハンズフリーマイクに設定されたものである。
【0017】
上述の並列接続された特性の異なる複数のスピーカは、ツイータ(tweeter)のような高音用スピーカと、ウーファ(woofer)のような低音用スピーカとに設定してもよく、また、上述の車両用集音マイクとしては、ハンズフリーマイクやノイズキャンセラーを採用してもよい。
【0018】
また、上述のスピーカの良否状態とは、スピーカに対する結線状態の正常、不良(断線、接触不良)、スピーカに対するコネクタ差込みの有無、スピーカそれ自体の良、否(故障)を意味する。
【0019】
上記構成によれば、検査音発生ステップで、車両用オーディオヘッドユニットにより各スピーカから各スピーカの特性に応じた周波数帯の音源を発生させ、検査音集音ステップで、検査音発生ステップの際の各スピーカからの発生音を車両用集音マイクで集音し、比較ステップで、検査音集音ステップにより集音された検査音の周波数と、予め設定された各スピーカの周波数とを比較し、判定ステップで、上記比較ステップの結果に基づいて各スピーカの良否状態を判定する。
【0020】
ここで、スピーカの結線状態が不良の場合やスピーカが故障している場合、またはスピーカに対してコネクタが差込まれていない場合には、スピーカから検査音が発生することなく、集音マイクで検査音を集音することが不可となる。
【0021】
また、並列接続された複数のスピーカに対しては、それぞれの特性に応じた周波数帯の音源を発生させるので、検査音の周波数帯が異なると共に、集音マイクで集音する検査音の周波数帯も異なり、比較ステップによる比較時には集音された検査音の周波数と、予め設定された各スピーカの周波数とを比較するので、周波数の差異により並列接続された複数のスピーカの何れのスピーカかを容易に判別することができる。
よって、並列接続された特性の異なる複数のスピーカの良否状態を確実に検査することができる。
【0022】
この発明の一実施態様においては、上記検査音発生ステップは、各スピーカの特性に応じた周波数帯および音圧の音源を発生させ、上記比較ステップは、検査音集音ステップにより集音された検査音の周波数および音圧と、予め設定された各スピーカの周波数および音圧とを比較するものである。
【0023】
上記構成によれば、単に各スピーカの特性に応じた周波数帯のみならず音圧(音の強さ)も用いて、音源発生、集音、比較、判定を実行するので、スピーカ検査精度の向上を図ることができると共に、特に、騒音環境下でも確実にスピーカ検査を行なうことができ、車両組立て工場のように周辺が静かでない工場内においてスピーカ検査を行なう際にも有効である。
【0024】
この発明の一実施態様においては、上記検査音発生ステップは、並列接続された各スピーカの発生音を順次発生させるものである。
【0025】
上記構成によれば、並列接続された各スピーカの発生音を順次発生させるので、複数のスピーカが同時に発生音を発することなく、1台ずつ発生音が発することになるため、スピーカ検査をより一層確実に実行することができる。
【0026】
この発明の一実施態様においては、上記検査音発生ステップは、並列接続された各スピーカの発生音を同時発生させるものである。
【0027】
上記構成によれば、並列接続された各スピーカの発生音を同時発生させるので、スピーカ検査時間の短縮を図ることができる。なお、並列接続された複数のスピーカの発生音を同時発生させても、各スピーカの特性に応じた周波数帯の音源を発生するため、比較、判定には何等の支障もない。
【0028】
この発明の一実施態様においては、上記複数のスピーカの特性は、周波数帯域が互いに異なる特性に設定されており、上記検査音発生ステップは、異なる周波数帯域において周波数が互いに重ならない音源を同時に発生させるものである。
【0029】
上記構成によれば、異なる周波数帯域において周波数が互いに重ならない音源を同時に発生させても、比較ステップで、集音された検査音を帯域毎に分離して適確に比較することができる。
【発明の効果】
【0030】
この発明によれば、並列接続された特性の異なる複数のスピーカの良否状態を確実に検査することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の車両検査方法に用いるオーディオシステムのブロック図
図2】複数のスピーカの特性の差異を示す周波数特性図
図3】車両検査方法を示すフローチャート
図4】従来の車両検査方法に用いるオーディオシステムのブロック図
図5】従来の車両検査方法を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0032】
並列接続された特性の異なる複数のスピーカの良否状態を確実に検査するという目的を、車両用オーディオヘッドユニットに対し並列接続された特性の異なる複数のスピーカと、車両用集音マイクとを備えた車両検査方法であって、上記車両用オーディオヘッドユニットにより各スピーカから各スピーカの特性に応じた周波数帯の音源を発生させる検査音発生ステップと、該検査音発生ステップの際の各スピーカからの発生音を上記車両用集音マイクで集音する検査音集音ステップと、該検査音集音ステップにより集音された検査音の周波数と、予め設定された各スピーカの周波数とを比較する比較ステップと、該比較ステップの結果に基づいて各スピーカの良否状態を判定する判定ステップと、を備え、上記複数のスピーカは、車両左前のインストルメントパネルおよびフロントドアと、車両右前のインストルメントパネルおよびフロントドアとに配置され、上記車両用集音マイクは、車両ルーフ部に設けられたハンズフリーマイクに設定されるという方法にて実現した。
【実施例】
【0033】
この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。
図面は車両検査方法を示すが、まず、図1を参照して当該車両検査方法に用いるオーディオシステムの構成について説明する。
【0034】
図1に示すように、この実施例のオーディオシステムは、車両用オーディオヘッドユニット10と、音声周波増幅器としてのオーディオアンプ11と、車両の左前に配置されたツイータ(tweeter)のような高音用スピーカ12と、車両の左前に配置されたウーファ(woofer)のような低音用スピーカ13と、車両の左後に配置されたフルレンジ(full range)タイプのスピーカ14と、車両の右前に配置されたツイータのような高音用スピーカ15と、車両の右前に配置されたウーファのような低音用スピーカ16と、車両の右後に配置されたフルレンジタイプのスピーカ17と、車両ルーフ部におけるルームランプ近傍に設けられた車両用集音マイク18と、を備えている。
【0035】
ここで、上述の高音用スピーカ12,15はインストルメントパネルに配置されており、また、上述の低音用スピーカ13,16はフロントドアに配置されており、さらに、上述のフルレンジタイプのスピーカ14,17はリヤドアまたはリヤパッケージトレイに配置されている。
【0036】
また、上述のオーディオヘッドユニット10は、プログラムを格納するROM19と、中央処理装置としてのCPU20と、予め設定した各スピーカ12〜17の周波数(設定周波数)データ、並びに、予め設定した各スピーカ12〜17の音圧(設定音圧)データなどの必要なデータを記憶するRAM21と、スピーカ検査後にスピーカ12〜17が正常である旨のOK表示、または、スピーカ検査後にスピーカが異常である旨のNG表示を可視表示する表示部22と、を備えている。
上述のスピーカ12〜17の異常は、スピーカ12〜17に対する結線状態の不良(断線、接触不良)、スピーカ12〜17に対してコネクタが差込まれていない状態、スピーカ12〜17それ自体の故障を含む。
【0037】
さらに、上述の車両用集音マイク18としては、ハンズフリーマイクやノイズキャンセラーを用いることができるが、ハンズフリーマイクを用いた場合には、既存のマイク(ハンズフリーマイク)を車両用集音マイク18として有効利用することができ、集音マイクを別途設ける必要がなくなる。
【0038】
そして、上述のオーディオヘッドユニット10とオーディオアンプ11とをラインL1(ラインとは電気信号線の略)で接続し、オーディオアンプ11と後部左右のスピーカ14,17とは、それぞれ独立したラインL2,L3で接続する一方、車両左前の2つのスピーカ12,13は、ラインL4,L5を用いてオーディオアンプ11に対して並列接続し、同様に、車両右前の2つのスピーカ15,16も、ラインL6,L7を用いてオーディオアンプ11に対して並列接続し、さらに、車両用集音マイク18はラインL8を介してオーディオヘッドユニット10に接続している。
【0039】
図1に示す高音用スピーカ12,15(ツイータ)は、図2に示す高音域の周波数特性Aを有しており、図1に示す低音用スピーカ13,16(ウーファ)は、図2に示す低音域の周波数特性Bを有しており、図1に示すフルレンジタイプのスピーカ14,17は、図2に示す全帯域の周波数特性Cを有している。
【0040】
上述のオーディオヘッドユニット10は、当該オーディオヘッドユニット10がスピーカ検査モードに設定された時(図3のステップS1参照)、各スピーカ12〜17から各スピーカ12〜17の特性A,B,C(図2参照)に応じた周波数帯および音圧の音源を発生させるべくオーディオアンプ11に指令を出す指令機能(ステップS2参照)と、上記指令を受けてオーディオアンプ11から上記音源を発生させる検査音発生機能(ステップS3参照)と、車両用集音マイク18で集音された検査音の周波数および音圧と、予め設定された各スピーカ12〜17の周波数(設定周波数)および音圧(設定音圧)とを比較する比較機能(ステップS5参照)と、比較結果に基づいて各スピーカ12〜17の結線状態または/およびスピーカ12〜17の故障の有無などのスピーカの良否状態を判定する判定機能(ステップS6参照)と、を備えている。
【0041】
次に、図3に示すフローチャートを参照して車両検査方法(スピーカ検査方法)について説明する。
この実施例では、当該車両検査方法は、図1で示したオーディオシステムを備えた車両の組立てラインの完成検査時において、各スピーカ12〜17の結線状態や各スピーカ12〜17それ自体の故障の有無を検査するものである。
【0042】
図3に示すフローチャートのモード設定ステップS1で、オーディオヘッドユニット10をスピーカ検査モードに設定する。
次に、指令ステップS2で、オーディオヘッドユニット10からオーディオアンプ11に対して、各スピーカ12〜17から当該各スピーカ12〜17の特性A,B,Cに応じた周波数帯および音圧の音源を発生させるべく指令を出す。
【0043】
次に、検査音発生ステップS3で、オーディオアンプ11は上述の指令を受けて各スピーカ12〜17から各スピーカ12〜17の特性A,B,Cに応じた周波数帯および音圧の音源を発生する。この検査音発生ステップS3は、次のイ)、ロ)の2通りがある。
【0044】
イ)の方法
イ)の方法は、高音用スピーカ12を図2の周波数c、例えば、1000〜2000Hzおよび所定音圧で駆動し、次に低音用スピーカ13を図2の周波数a、例えば、50〜80Hzおよび所定音圧で駆動し、次にフルレンジタイプのスピーカ14を図2の周波数b、例えば、100〜200Hz(但し、クロスオーバ周波数を除く)および所定音圧で駆動し、さらに、その後において、フルレンジタイプのスピーカ17を図2の周波数b、例えば、100〜200Hz(但し、クロスオーバ周波数を除く)および所定音圧で駆動し、次に、低音用スピーカ16を図2の周波数a、例えば、50〜80Hzおよび所定音圧で駆動し、次に高音用スピーカ15を図2の周波数c、例えば、1000〜2000Hzおよび所定音圧で駆動する。なお、スピーカの駆動順序は上記12,13,14,17,16,15の順に限定されるものではない。
つまり、上記イ)の方法は、並列接続された各スピーカ12,13またはスピーカ15,16の発生音を順次発生させるものである。
【0045】
ロ)の方法
ロ)の方法は、左側の各スピーカ12,13,14を、それぞれのスピーカ12,13,14に対応する周波数c,a,bおよび音圧で同時駆動した後に、右側の各スピーカ15,16,17を、それぞれのスピーカ15,16,17に対応する周波数c,a,bおよび音圧で同時駆動するものである。
【0046】
ここで、高音用スピーカ12,15は、例えば、1000〜2000Hzの周波数で駆動し、低音用スピーカ13,16は、例えば、50〜80Hzの周波数で駆動し、フルレンジタイプのスピーカ14,17は、例えば、100〜200Hzの周波数(但し、クロスオーバ周波数を除く)で駆動し、周波数が互いに重ならない音源を同時に発生させる。
つまり、上記ロ)の方法は、並列接続された各スピーカ12,13またはスピーカ15,16の発生音を同時発生させるものである。
【0047】
次に、検査音集音ステップS4で、オーディオヘッドユニット10に接続された車両用集音マイク18により、検査音発生ステップS3の際の各スピーカ12〜17からの発生音を集音し、この集音マイク18で音響エネルギを電気エネルギに変換してオーディオヘッドユニット10に送る。
【0048】
次に、比較ステップS5で、オーディオヘッドユニット10は検査音集音ステップS4により集音された各スピーカ12〜17の検査音の周波数および音圧と、予め設定された各スピーカ12〜17の周波数(設定周波数)および音圧(設定音圧)とを比較する。
【0049】
上述の各スピーカ12〜17毎の設定周波数および設定音圧は、RAM21の所定エリアに読出し可能に記憶されている。上述のロ)の方法において、ステップS3で並列接続された各スピーカ12,13またはスピーカ15,16の発生音を同時発生させた場合においても、高音用スピーカ12,15と低音用スピーカ13,16とでは、その検査音が、例えば、1000〜2000Hzと50〜80Hzのように周波数が全く異なるので適確に比較することができる。
【0050】
次に、判定ステップS6で、オーディオヘッドユニット10は、比較ステップS5の結果に基づいて各スピーカ12〜17の結線状態やスピーカ12〜17それ自体の故障の有無などのスピーカの良否状態を自動判定し、全てのスピーカ12〜17が正常に検査音を適正に出していると判定したYES判定時には、次の正常表示ステップS7に移行する一方で、少なくとも何れかのスピーカに異常があると判定したNO判定時には、別の異常表示ステップS8に移行する。
上述の正常表示ステップS7で、オーディオヘッドユニット10は表示部22を駆動して、当該表示部22にオーディオシステムが正常である旨の表示を実行する。
【0051】
一方で、上述の異常表示ステップS8では、オーディオヘッドユニット10は表示部22を駆動して、当該表示部22に何れのスピーカが正常ではないかを示す表示を実行する。
【0052】
このように、上記実施例の車両検査方法は、車両用オーディオヘッドユニット10に対し並列接続された特性の異なる複数のスピーカ(高音用スピーカ12と低音用スピーカ13、または高音用スピーカ15と低音用スピーカ16参照)と、車両用集音マイク18とを備えた車両検査方法であって、上記車両用オーディオヘッドユニット10により各スピーカ12,13,15,16から各スピーカ12,13,15,16の特性A,Bに応じた周波数帯の音源を発生させる検査音発生ステップS3と、該検査音発生ステップS3の際の各スピーカ12,13,15,16からの発生音を上記車両用集音マイク18で集音する検査音集音ステップS4と、該検査音集音ステップS4により集音された検査音の周波数と、予め設定された各スピーカ12,13,15,16の周波数(設定周波数)とを比較する比較ステップS5と、該比較ステップS5の結果に基づいて各スピーカ12,13,15,16の良否状態を判定する判定ステップS6と、を備えたものである(図1図3参照)。
【0053】
この構成によれば、検査音発生ステップS3で、車両用オーディオヘッドユニット10により各スピーカ12,13,15,16から各スピーカ12,13,15,16の特性A,Bに応じた周波数帯の音源を発生させ、検査音集音ステップS4で、検査音発生ステップS3の際の各スピーカ12,13,15,16からの発生音を車両用集音マイク18で集音し、比較ステップS5で、検査音集音ステップS4により集音された検査音の周波数と、予め設定された各スピーカ12,13,15,16の周波数とを比較し、判定ステップS6で、上記比較ステップS5の結果に基づいて各スピーカ12,13,15,16の良否状態を判定する。
【0054】
ここで、スピーカ12,13,15,16の結線状態が不良の場合やスピーカ12,13,15,16が故障している場合、またはスピーカ12,13,15,16に対してコネクタが差込まれていない場合には、スピーカ12,13,15,16から検査音が発生することなく、集音マイク18で検査音を集音することが不可となる。
【0055】
また、並列接続された複数のスピーカに対しては、それぞれの特性に応じた周波数帯の音源を発生させるので、検査音の周波数帯が異なると共に、集音マイクで集音する検査音の周波数帯も異なり、比較ステップによる比較時には集音された検査音の周波数と、予め設定された各スピーカの周波数とを比較するので、周波数の差異により並列接続された複数のスピーカの何れのスピーカかを容易に判別することができる。
よって、並列接続された特性の異なる複数のスピーカ(高音用スピーカ12と低音用スピーカ13、または、高音用スピーカ15と低音用スピーカ16)の良否状態を確実に検査することができる。
【0056】
この発明の一実施形態においては、上記検査音発生ステップS3は、各スピーカ12,13,15,16の特性A,Bに応じた周波数帯および音圧の音源を発生させ、上記比較ステップS5は、検査音集音ステップS4により集音された検査音の周波数および音圧と、予め設定された各スピーカの周波数(設定周波数)および音圧(設定音圧)とを比較するものである(図3参照)。
【0057】
この構成によれば、単に各スピーカ12,13,15,16の特性A,Bに応じた周波数帯のみならず音圧も用いて、音源発生、集音、比較、判定を実行するので、スピーカ検査精度の向上を図ることができると共に、特に、騒音環境下でも確実にスピーカ検査を行なうことができ、車両組立て工場のように周辺が静かでない工場内においてスピーカ検査を行なう際にも有効である。
【0058】
この発明の一実施形態においては、上記検査音発生ステップS3は、並列接続された各スピーカ(スピーカ12,13またはスピーカ15,16)の発生音を順次発生させるものである(図3参照)。
【0059】
この構成によれば、並列接続された各スピーカ(スピーカ12と13、または、スピーカ15と16)の発生音を順次発生させるので、複数のスピーカ(スピーカ12と13、またはスピーカ15と16)が同時に発生音を発することなく、1台ずつ発生音が発することになるため、スピーカ検査をより一層確実に実行することができる。
【0060】
この発明の一実施形態においては、上記検査音発生ステップS3は、並列接続された各スピーカ12と13、またはスピーカ15と16の発生音を同時発生させるものである(図3参照)。
【0061】
この構成によれば、並列接続された各スピーカ12,13,15,16の発生音を同時発生させるので、スピーカ検査時間の短縮を図ることができる。なお、並列接続された複数のスピーカ12と13、またはスピーカ15と16の発生音を同時発生させても、各スピーカ12,13,15,16の特性に応じた周波数帯の音源を発生するため、比較、判定には何等の支障もない。
【0062】
この発明の一実施形態においては、上記複数のスピーカ12,13,15,16の特性A,Bは、周波数帯域が互いに異なる特性に設定されており、上記検査音発生ステップS3は、異なる周波数帯域において周波数が互いに重ならない音源(例えば、高音用スピーカ12,15は1000〜2000Hz、低音用スピーカ13,16は50〜80Hzの音源)を同時に発生させるものである(図2図3参照)。
【0063】
この構成によれば、異なる周波数帯域において周波数が互いに重ならない音源を同時に発生させても、比較ステップS5で、集音された検査音を帯域毎に分離して適確に比較することができる。これにより、スピーカ検査時間の短縮と、スピーカ検査の適正化との両立を図ることができる。
【0064】
なお、実施例で開示したように、車両用集音マイク18として、ハンズフリーマイクを用いると、既存のマイク(ハンズフリーマイク)を車両用集音マイク18として有効利用することができるので、集音マイクを別途設ける必要がなくなる。
【0065】
この発明の構成と、上述の実施例との対応において、
この発明の並列接続された特性の異なる複数のスピーカは、実施例の高音用スピーカ12と低音用スピーカ13、または、高音用スピーカ15と低音用スピーカ16に対応するも、
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではない。
【0066】
例えば、並列接続された特性の異なる複数のスピーカとしては、ツイータ(高音用スピーカ)とウーファ(低音用スピーカ)との組合せに代えて、ツイータ(高音用スピーカ)、ウーファ(低音用スピーカ)、スコーカ(中音用スピーカ)、フルレンジタイプのスピーカのうち、特性の異なる複数のスピーカがオーディオヘッドユニット10またはオーディオアンプ11に対して並列接続されたものであってもよい。
また、上記実施例で開示した周波数50〜80Hz、100〜200Hz、1000〜2000Hzは一例であって、これに限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0067】
以上説明したように、本発明は、車両用オーディオヘッドユニットに対し並列接続された特性の異なる複数のスピーカと、車両用集音マイクとを備えた車両検査方法について有用である。
【符号の説明】
【0068】
10…車両用オーディオヘッドユニット
12,15…高音用スピーカ(スピーカ)
13,16…低音用スピーカ(スピーカ)
18…車両用集音マイク
S3…検査音発生ステップ
S4…検査音集音ステップ
S5…比較ステップ
S6…判定ステップ
図1
図2
図3
図4
図5