(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
底部と前記底部の周縁から立ち上がる周壁部と、前記周壁部の端面から一段下がった位置に形成された段差底面と、前記段差底面から立ち上る段差側面とを備えるジャケット本体を形成するとともに、
第一金属で形成された板状の第一基板部と、前記第一基板部の表面側に前記第一基板部の周縁部が露出するように形成され第二金属で形成された板状の第二基板部と、前記第一基板部の裏面側に並設された複数のフィンとを備えた封止体を形成する準備工程と、
前記ジャケット本体に前記封止体を配置するとともに、前記段差側面と前記第一基板部の側面とを突き合わせて第一突合せ部を形成する封止体配置工程と、
回転ツールを前記第一突合せ部に挿入し、前記回転ツールの攪拌ピンを前記第一基板部及び前記周壁部の両方に接触させた状態で前記第一突合せ部に沿って相対移動させて摩擦攪拌接合を行う接合工程と、を含み、
前記準備工程では、前記第一金属からなる第一基体部と前記第二金属からなる第二基体部とがクラッドされたクラッド材を用意し、
前記第一基体部を切削して前記第一基板部及びブロック部を形成する第一切削工程と、
前記第二基体部を切削して前記第一基板部の周縁部を露出させるとともに前記第二基板部を形成する第二切削工程と、
円盤カッターが並設されたマルチカッターで前記ブロック部を切削して複数の前記フィンを形成するフィン形成工程と、をさらに含むことを特徴とする液冷ジャケットの製造方法。
底部と前記底部の周縁から立ち上がる周壁部と、前記周壁部の端面から一段下がった位置に形成された段差底面と、前記段差底面から立ち上る段差側面とを備えるジャケット本体を形成するとともに、
第一金属で形成された板状の第一基板部と、前記第一基板部の表面側に前記第一基板部の周縁部が露出するように形成され第二金属で形成された板状の第二基板部と、前記第一基板部の裏面側に並設された複数のフィンとを備えた封止体を形成する準備工程と、
前記ジャケット本体に前記封止体を配置するとともに、前記段差側面と前記第一基板部の側面とを突き合わせて第一突合せ部を形成する封止体配置工程と、
前記第一突合せ部に沿って補助部材を配置する補助部材配置工程と、
回転ツールを前記第一突合せ部に挿入し、前記周壁部、前記第一基板部及び前記補助部材に前記回転ツールの攪拌ピンのみを接触させた状態で前記第一突合せ部に沿って相対移動させて摩擦攪拌接合を行う接合工程と、を含み、
前記接合工程では、前記補助部材にバリが発生するように接合条件を設定し、
前記バリが形成された前記補助部材を切除する除去工程をさらに含むことを特徴とする液冷ジャケットの製造方法。
底部と前記底部の周縁から立ち上がる周壁部と、前記周壁部の端面から一段下がった位置に形成された段差底面と、前記段差底面から立ち上る段差側面とを備えるジャケット本体を形成するとともに、
第一金属で形成された板状の第一基板部と、前記第一基板部の表面側に前記第一基板部の周縁部が露出するように形成され第二金属で形成された板状の第二基板部と、前記第一基板部の裏面側に並設された複数のフィンとを備えた封止体を形成する準備工程と、
前記ジャケット本体に前記封止体を配置するとともに、前記段差側面と前記第一基板部の側面とを突き合わせて第一突合せ部を形成する封止体配置工程と、
前記第一突合せ部に沿って補助部材を配置する補助部材配置工程と、
回転ツールを前記第一突合せ部に挿入し、前記周壁部、前記第一基板部及び前記補助部材に前記回転ツールの攪拌ピンのみを接触させた状態で前記第一突合せ部に沿って相対移動させて摩擦攪拌接合を行う接合工程と、を含み、
前記接合工程では、前記回転ツールの回転中心軸を外側に傾斜させた状態で摩擦攪拌接合を行うことを特徴とする液冷ジャケットの製造方法。
底部と前記底部の周縁から立ち上がる周壁部と、前記周壁部の端面から一段下がった位置に形成された段差底面と、前記段差底面から立ち上る段差側面とを備えるジャケット本体を形成するとともに、
第一金属で形成された板状の第一基板部と、前記第一基板部の表面側に前記第一基板部の周縁部が露出するように形成され第二金属で形成された板状の第二基板部と、前記第一基板部の裏面側に並設された複数のフィンとを備えた封止体を形成する準備工程と、
前記ジャケット本体に前記封止体を配置するとともに、前記段差側面と前記第一基板部の側面とを突き合わせて第一突合せ部を形成する封止体配置工程と、
回転ツールを前記第一突合せ部に挿入し、前記回転ツールの攪拌ピンを前記第一基板部及び前記周壁部の両方に接触させた状態で前記第一突合せ部に沿って相対移動させて摩擦攪拌接合を行う接合工程と、を含み、
前記準備工程では、前記ジャケット本体の前記底部に、端面に突出部を備えた支持部を形成し、
前記第一基板部に孔部を形成するとともに前記第一基板部の表面のうち前記孔部の周囲が露出するように前記第二基板部を形成し、
前記封止体配置工程では、前記第一突合せ部を形成するとともに前記突出部に前記孔部を挿入し、
前記接合工程では、前記突出部の外周側面と前記孔部の孔壁とが突き合わされた第二突合せ部を摩擦攪拌接合することを特徴とする液冷ジャケットの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0028】
〔第一実施形態〕
本発明の第一実施形態に係る液冷ジャケット及び液冷ジャケットの製造方法について、図面を参照して詳細に説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る液冷ジャケット101は、ジャケット本体102と、封止体103とで構成されている。液冷ジャケット101は、内部に流体を流通させ、液冷ジャケット101に設置された発熱体(図示省略)と熱交換を行う器具である。なお、以下の説明における「表面」とは「裏面」の反対側の面という意味である。
【0029】
ジャケット本体102は、底部110と、周壁部111とを含んで構成されている。ジャケット本体102は、上方が開口した箱状体である。ジャケット本体102は、本実施形態ではアルミニウム合金で形成されている。ジャケット本体102の材料は、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、チタン、チタン合金、マグネシウム、マグネシウム合金等の摩擦攪拌可能な金属から適宜選択される。底部110は、平面視矩形の板状を呈する。周壁部111は、底部110の周縁に立設されており、平面視矩形枠状を呈する。底部110及び周壁部111の内部には凹部113が形成されている。
【0030】
周壁部111の内周縁には、段差部115が形成されている。段差部115は、段差底面115aと、段差底面115aから立ち上がる段差側面115bとで構成されている。段差底面115aは、周壁部111の端面111aから一段下がった位置に形成されている。
【0031】
封止体103は、ジャケット本体102の開口部を封止する板状部材である。封止体103は、第一基板部121と、第二基板部122と、フィン123とで構成されている。第一基板部121の平面形状は、ジャケット本体102の平面形状よりも一回り小さくなっている。
図2に示すように、第一基板部121は、ジャケット本体102の開口部を封止するとともに周壁部111に摩擦攪拌接合されている。つまり、段差側面115bと第一基板部121の側面121cとが突き合わされた第一突合せ部J11に対して塑性化領域W11が形成されている。
【0032】
第二基板部122は、第一基板部121の表面121aにおいて、第一基板部121の周縁部が露出するように積層されている。第二基板部122の板厚は、第一基板部121の板厚と略同等である。第二基板部122の平面形状は、第一基板部121の平面形状よりも一回り小さくなっている。
【0033】
フィン123は、第一基板部121の裏面121bに、裏面121bに対して垂直に並設されている。第一基板部121及びフィン123は一体形成されている。第一基板部121及びフィン123は本実施形態ではアルミニウム合金(第一金属)で形成されている。一方、第二基板部122は、本実施形態では銅合金(第二金属)で形成されている。
【0034】
第一基板部121及び第二基板部122は、異なる二種の金属で形成されており、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、チタン、チタン合金、マグネシウム、マグネシウム合金等の摩擦攪拌可能な金属から適宜選択される。第二基板部122の表面122aは、第一基板部121の表面121aよりも板厚分高くなっている。第二基板部122の表面122aを例えば発熱体(部品)の取り付け部位として利用することができる。
【0035】
次に、第一実施形態に係る液冷ジャケットの製造方法について説明する。液冷ジャケットの製造方法では、準備工程と、封止体配置工程と、補助部材配置工程と、接合工程と、除去工程と、を行う。
【0036】
準備工程は、ジャケット本体102及び封止体103を形成する工程である。ジャケット本体102は、例えば、ダイキャストによって底部110と周壁部111とからなる箱状態を形成するとともに、周壁部111の内周縁を切削して段差部115を形成する。
【0037】
また、準備工程では、封止体103を形成するために、クラッド材形成工程と、第一切削工程と、第二切削工程と、フィン形成工程と、を行う。クラッド材形成工程は、
図3に示すクラッド材130を形成する工程である。クラッド材130は、第一基体部131と第二基体部141とで構成されている。第一基体部131は、第一金属(本実施形態ではアルミニウム合金)で形成されており直方体を呈する。第二基体部141は、第二金属(本実施形態では銅合金)で形成されており板状を呈する。第二基体部141の平面形状は、第一基体部131の平面形状と同一になっている。クラッド材130は、第一金属で形成された素形材と第二金属で形成された素形材を積層させて圧延した後、所定の大きさに切断して形成される。
【0038】
第一切削工程は、
図4に示すように、第一基体部131(
図3参照)の一部を切削して、第一基板部121とブロック部143とを形成する工程である。第一切削工程では、切削装置等を用いて第一基体部131を切削する。この際、板状の第一基板部121を形成するとともに、第一基板部121の裏面121bの中央に直方体を呈するブロック部143を形成する。
【0039】
第二切削工程は、
図5に示すように、第二基体部141(
図4参照)の一部を切削して、第二基板部122を形成する工程である。第二切削工程では、切削装置等を用いて第一基板部121の周縁部が露出するように第二基体部141を切削して第二基板部122を形成する。これにより、第一基板部121の表面121aの中央に、第二基板部122が形成される。
【0040】
フィン形成工程は、
図6に示すように、マルチカッターMを用いてブロック部143を切削して、フィン123(
図2参照)を形成する工程である。マルチカッターMは、部材を切削する回転工具である。マルチカッターMは、軸部M1と、軸部M1に間をあけて並設された複数の円盤カッターM2とで構成されている。円盤カッターM2の外周縁には切削刃(図示省略)が形成されている。円盤カッターM2の板厚及び間隔を調節することにより、フィン123の間隔及び板厚を適宜設定することができる。
【0041】
フィン形成工程では、ブロック部143の辺部143aとマルチカッターMの軸部M1とが平行となるように配置して、回転させたマルチカッターMの円盤カッターM2をブロック部143に挿入する。円盤カッターM2が所定の深さに達したら、辺部143aと対向する他方の辺部143bまでマルチカッターMを平行移動させる。軸部M1が辺部143bに達したらマルチカッターMをブロック部143から離間する方向に相対移動させる。
【0042】
マルチカッターMの挿入深さは、適宜設定すればよいが、本実施形態では、円盤カッターM2が第一基板部121に達しないように、つまり、ブロック部143に未切削領域が形成されるように調節してもよい。なお、本実施形態では、前記した順番で行ったが、第一切削工程、第二切削工程及びフィン形成工程の順番を限定するものではない。
【0043】
封止体配置工程は、ジャケット本体102に封止体103を配置して第一突合せ部J11を形成する工程である。
図7に示すように、封止体配置工程では、段差部115に第一基板部121を配置する。これにより、段差部115の段差側面115bと第一基板部121の側面121cとが突き合わされた第一突合せ部J11が形成される。第一突合せ部J11は、周壁部111の内周縁に沿って形成される。
【0044】
補助部材配置工程は、
図8に示すように、第一突合せ部J11に沿って補助部材106を配置する工程である。補助部材106は、平面視矩形枠状を呈する板状部材である。補助部材106の材料は、摩擦攪拌可能な金属であればよいが、本実施形態では第一基板部121と同じ材料で形成されている。補助部材106は、補助部材106の内周面106d(
図10も参照)が第一突合せ部J11に重なる大きさになっている。補助部材106の板厚は、後記する接合工程の際に、塑性化領域W11が金属不足にならない程度に適宜設定すればよい。
【0045】
また、本実施形態では、補助部材106の内周面106dの位置と第一突合せ部J11の位置とが重なるように設定したが、当該内周面106dが第一突合せ部J11よりも内側に位置してもよいし、外側に位置してもよい。補助部材106の内周面106dの位置は、後記する接合工程の際に、塑性化領域W11が金属不足にならず、かつ、後記する除去工程を行った際に補助部材106が周壁部111に残存しない程度に設定することが好ましい。
【0046】
補助部材106には、幅方向に連続するスリット107が形成されている。また、ジャケット本体102、封止体103及び補助部材106をクランプ等の固定治具によってテーブルに移動不能に拘束する。
【0047】
接合工程は、
図9及び
図10に示すように、接合用回転ツールFを用いてジャケット本体102、封止体103及び補助部材106を摩擦攪拌接合する工程である。本実施形態の接合工程では、接合用回転ツールFを用いて第一突合せ部J11に対して摩擦攪拌接合を行う。
【0048】
接合用回転ツールFは、連結部F1と、攪拌ピンF2とで構成されている。接合用回転ツールFは、特許請求の範囲の「回転ツール」に相当する。接合用回転ツールFは、例えば工具鋼で形成されている。連結部F1は、摩擦攪拌装置の回転軸に連結される部位である。連結部F1は円柱状を呈する。
【0049】
攪拌ピンF2は、連結部F1から垂下しており、連結部F1と同軸になっている。攪拌ピンF2は連結部F1から離間するにつれて先細りになっている。攪拌ピンF2の長さは、第一基板部121の板厚よりも大きくなっている。攪拌ピンF2の外周面には螺旋溝が刻設されている。本実施形態では、接合用回転ツールFを右回転させるため、螺旋溝は、基端から先端に向かうにつれて左回りに形成されている。
【0050】
なお、接合用回転ツールFを左回転させる場合は、螺旋溝を基端から先端に向かうにつれて右回りに形成することが好ましい。螺旋溝をこのように設定することで、摩擦攪拌の際に塑性流動化した金属が螺旋溝によって攪拌ピンF2の先端側に導かれる。これにより、被接合金属部材(ジャケット本体102、封止体103及び補助部材106)の外部に溢れ出る金属の量を少なくすることができる。
【0051】
接合工程では、第一突合せ部J11上に設定した開始位置Spに、右回転する接合用回転ツールFの攪拌ピンF2を挿入し、第一突合せ部J11をなぞるようにして接合用回転ツールFを相対移動させる。本実施形態では、接合用回転ツールFを右回転させるため、攪拌ピンF2の螺旋溝は、基端から先端に向かうにつれて左回りに形成されている。接合用回転ツールFの移動軌跡には塑性化領域W11が形成される。接合工程では、塑性化領域W11が閉ループとなるように第二基板部122の周りに接合用回転ツールFを相対移動させる。接合用回転ツールFはどちら周りに移動させてもよいが、本実施形態では、第二基板部122に対して左回りとなるように設定する。この際、補助部材106の内周面106dと攪拌ピンF2とが接触するため、周壁部111、第一基板部121及び補助部材106が同時に摩擦攪拌接合される。
【0052】
接合工程では、
図10に示すように、連結部F1を第一基板部121及び補助部材106に接触させない状態で、つまり、攪拌ピンF2の基端側を露出させた状態で摩擦攪拌接合を行う。接合用回転ツールFの挿入深さは、適宜設定すればよいが、本実施形態では、攪拌ピンF2が段差底面115aに達するように摩擦攪拌接合を行う。これにより、第一突合せ部J11に加え、段差底面115aと第一基板部121の裏面121bとの重合部も摩擦攪拌接合される。
【0053】
本実施形態では、接合用回転ツールFのシアー側(advancing side:回転ツールの外周における接線速度に回転ツールの移動速度が加算される側)が第一基板部121の内側となるように接合用回転ツールFの移動方向と回転方向を設定している。接合用回転ツールFの回転方向及び進行方向は前記したものに限定されるものではなく適宜設定すればよい。
【0054】
例えば、接合用回転ツールFの回転速度が遅い場合では、塑性化領域W11のフロー側(retreating side:回転ツールの外周における接線速度から回転ツールの移動速度が減算される側)に比べてシアー側の方が塑性流動材の温度が上昇しやすくなるため、塑性化領域W11内のシアー側に凹溝が発生し、塑性化領域W11外のシアー側にバリVが多く発生する傾向にある。一方、例えば、接合用回転ツールFの回転速度が速い場合、シアー側の方が塑性流動材の温度が上昇するものの、回転速度が速い分、塑性化領域W11内のフロー側に凹溝が発生し、塑性化領域W11外のフロー側にバリVが多く発生する傾向にある。
【0055】
本実施形態では、接合用回転ツールFの回転速度を速く設定しているため、
図10に示すように、塑性化領域W11外のフロー側にバリVが多く発生する傾向にある。一方、本実施形態では、補助部材106も同時に摩擦攪拌接合されるため、塑性化領域W11に凹溝は発生せず塑性化領域W11の金属不足を防ぐことができる。また、接合用回転ツールFの回転速度を速く設定することにより、接合用回転ツールFの移動速度(送り速度)を高めることができる。これにより、接合サイクルを短くすることができる。
【0056】
接合工程の際に、接合用回転ツールFの進行方向のどちら側にバリVが発生するかは接合条件によって異なる。当該接合条件とは、接合用回転ツールFの回転速度、回転方向、移動速度(送り速度)、攪拌ピンF2の傾斜角度(テーパー角度)、ジャケット本体102及び第一基板部121の材質、第一基板部121の厚さ等の各要素とこれらの要素の組み合わせで決定される。接合条件に応じて、バリVが発生する側又はバリVが多く発生する側が補助部材106側となるように設定すれば、後記する除去工程を容易に行うことができるため好ましい。
【0057】
接合工程では、接合用回転ツールFを第一突合せ部J11に沿って一周させて、塑性化領域W11内で接合用回転ツールFを離脱させる。接合工程では、塑性化領域W11の始端と後端が重複するようにする。
【0058】
除去工程は、
図11に示すように、補助部材106を切除する工程である。除去工程では、スリット107(
図9参照)を起点として、補助部材106の端部をめくり上げつつ、折り曲げるようにして除去する。除去工程では、装置を用いて補助部材106を折り曲げてもよいが、本実施形態では、手作業で折り曲げて切除している。これにより、
図2に示す液冷ジャケット101が完成する。
【0059】
以上説明した液冷ジャケットの製造方法及び液冷ジャケット101によれば、ジャケット本体102と封止体103とを摩擦攪拌で接合するため、水密性及び気密性を高めることができる。また、第一基板部121の周縁部が露出するように封止体103を形成し、当該周縁部で摩擦攪拌接合を行うことにより摩擦攪拌接合の際に第一金属(アルミニウム合金)と第二金属(銅合金)が混ざることがない。つまり、接合工程の際に、第二金属の影響を排除することができるため、摩擦攪拌接合の接合条件を容易に設定することができる。
【0060】
また、封止体103は、どのような方法で形成してもよいが、第一切削工程、第二切削工程及びフィン形成工程によって封止体103を容易に製造することができる。また、本実施形態のように攪拌ピンF2のみを周壁部111及び第一基板部121に接触させた状態で摩擦攪拌を行うことで摩擦攪拌装置に大きな負荷がかからない状態で第一突合せ部J11の深い位置を摩擦攪拌接合することができる。
【0061】
ここで、従来のようにショルダ部を周壁部111及び第一基板部121に接触させる場合は、液冷ジャケット101の内部に塑性流動材が流入しないように、段差底面115aの幅も大きく設定しなければならない。しかし、本実施形態のように、攪拌ピンF2のみを周壁部111及び第一基板部121に接触させた状態で摩擦攪拌を行うことで塑性化領域W11の幅を小さくすることができる。これにより、段差底面115aの幅を小さくすることができるため、設計の自由度を高めることができる。
【0062】
また、本実施形態では、周壁部111と第一基板部121に加えて補助部材106も摩擦攪拌接合することにより、塑性化領域W11の金属不足を防ぐことができる。
【0063】
また、本実施形態に係る接合工程のように、補助部材106にバリVが発生するように接合条件を設定することにより、摩擦攪拌接合によって発生したバリVを補助部材106ごと容易に除去することができる。これにより、バリ除去作業を別途行わなくても接合部(塑性化領域W11)をきれいに仕上げることができる。
【0064】
また、第一基板部121と第二基板部122の材料は、特に制限されないが、本実施形態のように第一基板部121をアルミニウム合金(第一金属)とし、発熱体が設置される第二基板部122を銅合金(第二金属)とすることにより、熱伝導率を高めることができる。
【0065】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態に係る液冷ジャケットの製造方法及び液冷ジャケットについて説明する。
図12及び
図13に示すように、第二実施形態に係る液冷ジャケット101Aは、ジャケット本体102Aと、封止体103Aとで構成されている。液冷ジャケット101Aは、支持部112が形成されている点等で第一実施形態と相違する。第二実施形態では第一実施形態と相違する部分を中心に説明する。
【0066】
ジャケット本体102Aは、
図13及び
図14に示すように、底部110と、周壁部111と、支持部112とを含んで構成されている。周壁部111の内周縁には段差部115が形成されている。支持部112は、底部110に立設される板状部材である。支持部112は、周壁部111の一の壁部に連続して形成されており、当該壁部と対向する他の壁部とは離間している。支持部112の端面112aと、段差部115の段差底面115aとは面一になっている。支持部112の端面112aには、突出部114が形成されている。突出部114の高さ寸法は、第一基板部121の板厚寸法と略同等になっている。突出部114の形状は特に制限されないが、本実施形態では円柱状になっている。また、突出部114の個数は特に制限されないが、本実施形態では3つ形成されている。
【0067】
封止体103Aは、
図13及び
図14に示すように、第一基板部121と、第二基板部122,122と、複数のフィン123と、3つの孔部124とで構成されている。第二基板部122は、孔部124を挟んで両側に一対形成されている。フィン123は、第二基板部122に対応する位置に形成されている。つまり、孔部124が形成されている部分及びその周囲にはフィン123は形成されていない。孔部124は、第一基板部121の中央部において板厚方向に貫通する孔である。孔部124は、突出部114が隙間なく挿入される大きさで形成されている。
【0068】
次に、第二実施形態に係る液冷ジャケットの製造方法について説明する。液冷ジャケットの製造方法では、準備工程と、封止体配置工程と、補助部材配置工程と、接合工程と、除去工程と、を行う。
【0069】
準備工程は、ジャケット本体102A及び封止体103Aを形成する工程である。
図14に示すように、例えば、ダイキャストによってジャケット本体102Aを形成する。また、準備工程では、封止体103Aを形成するために、クラッド材形成工程と、第一切削工程と、第二切削工程と、フィン形成工程と、を行う。クラッド材形成工程は、第一実施形態と同様に
図3に示すクラッド材130を形成する工程である。
【0070】
第一切削工程は、
図15に示すように、第一基体部131(
図3参照)の一部を切削して、第一基板部121とブロック部143,143とを形成する工程である。第一切削工程では、切削装置等を用いて第一基体部131を切削する。この際、板状の第一基板部121を形成するとともに、第一基板部121の裏面121bにブロック部143,143を形成する。
【0071】
第二切削工程は、
図16に示すように、第二基体部141(
図15参照)の一部を切削して、第二基板部122,122を形成する工程である。第二切削工程では、切削装置等を用いて第一基板部121の周縁部及び中央部が露出するように第二基体部141の外周縁及び中央部を切削して第二基板部122,122を形成する。これにより、第一基板部121の表面121aの中央に、互いに離間した第二基板部122,122が形成される。また、第二切削工程では、第一基板部121の中央部に、貫通する3つの孔部124を形成する。
【0072】
フィン形成工程は、
図17に示すように、マルチカッターMを用いてブロック部143,143を切削して、フィン123(
図13参照)を形成する工程である。フィン形成工程では、第一実施形態と同じ要領でフィン123を形成する。
【0073】
封止体配置工程は、ジャケット本体102Aに封止体103Aを配置して第一突合せ部J11及び第二突合せ部J12を形成する工程である。
図18に示すように、封止体配置工程では、段差部115の段差底面115aに第一基板部121を配置する。これにより、段差側面115bと第一基板部121の側面121cとが突き合われて第一突合せ部J11が形成される。また、孔部124に突出部114が挿入されて、突出部114の外周面と孔部124の孔壁とが突き合わされた突合せ部J12が形成される。
【0074】
また、補助部材配置工程では、具体的な図示は省略するが、第一実施形態と同じ要領で第一突合せ部J11に沿って補助部材を配置する。ジャケット本体102A、封止体103A及び補助部材をクランプ等の固定治具によってテーブルに移動不能に拘束する。
【0075】
接合工程は、
図19に示すように、接合用回転ツールFを用いて第一接合工程と、第二接合工程を行う。第一接合工程は、第一実施形態の接合工程と同じ工程であるため説明を省略する。第二接合工程は、突合せ部J12に対して摩擦攪拌接合を行う工程である。第一接合工程と第二接合工程は、どちらを先に行ってもよいが、本実施形態では第二接合工程を先に行う。
【0076】
第二接合工程では、回転させた接合用回転ツールFを突合せ部J12に沿って一周させて、突合せ部J12を接合する。接合用回転ツールFの挿入深さは、支持部112の端面112aに達しない程度に設定してもよいが、本実施形態では、支持部112の端面112aに攪拌ピンF2を接触させて、端面112aと第一基板部121の裏面121bとの重合部も摩擦攪拌接合する。第二接合工程によって、塑性化領域W12が形成される。
【0077】
除去工程は、第一実施形態と同じであるため説明を省略する。これにより、
図12及び
図13に示す液冷ジャケット101Aが形成される。
【0078】
以上説明した液冷ジャケットの製造方法及び液冷ジャケット101Aによっても第一実施形態と同様の効果を得ることができる。また、支持部112の突出部114に封止体103Aの孔部124を挿入するため、封止体103Aの位置決めを容易に行うことができる。また、支持部112と封止体103Aとを接合することにより、液冷ジャケット101Aの強度を高めることができる。
【0079】
ここで、従来のようにショルダ部を突出部114及び第一基板部121に接触させる場合は、液冷ジャケット101Aの内部に塑性流動材が流入しないように、支持部112の幅も大きく設定しなければならない。しかし、本実施形態のように、攪拌ピンF2のみを突出部114及び第一基板部121に接触させた状態で摩擦攪拌を行うことで塑性化領域W12の幅を小さくすることができる。これにより、支持部112の幅を小さくすることができるため、設計の自由度を高めることができる。
【0080】
図20は、第一変形例を示す断面図である。
図20に示すように、補助部材配置工程において、補助部材106Aの内周面106dが、第一突合せ部J11よりも内側に位置するように突出させて配置してもよい。補助部材106をこのように配置することにより、塑性化領域W11の金属不足をより確実に防ぐことができる。また、接合用回転ツールFを補助部材106Aの表面から容易に挿入することができる。補助部材106Aの位置(内周面106dの位置)は、塑性化領域W11の全体に金属不足が発生せず、かつ、除去工程を行った後に周壁部111に補助部材106が残存しないように適宜調節することが好ましい。
【0081】
図21は、第二変形例を示す断面図である。
図21に示すように、接合工程において、接合用回転ツールFの回転中心軸を外側(第一基板部121に対して外側)に傾斜させた状態で摩擦攪拌接合を行ってもよい。これにより、周壁部111、第一基板部121及び補助部材106を容易に接合することができるとともに、接合部(塑性化領域W11)の金属不足をより確実に防ぐことができる。また、第二変形例においては、先端にスピンドルユニット等の駆動手段を設けたロボットアームに接合用回転ツールFを取り付けて接合工程を行ってもよい。これにより、接合用回転ツールFの回転中心軸を容易に傾斜させることができる。
【0082】
以上本発明の実施形態及び変形例について説明したが、本発明の趣旨に反しない範囲において、適宜設計変更が可能である。例えば、接合工程では、ショルダ部と攪拌ピンとからなる回転ツールを用いて第一基板部121にショルダ部を押し込みながら摩擦攪拌接合を行ってもよい。また、当該回転ツールを用いて攪拌ピンF2のみを被接合金属部材に接触させた状態で摩擦攪拌接合を行ってもよい。また、本実施形態では封止体103Aにフィン123を形成したが、フィン123を有していない液冷ジャケットとしてもよい。また、本実施形態では、補助部材106を用いて接合工程を行ったが、補助部材106を用いずに接合工程を行ってもよい。