特許第6443392号(P6443392)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6443392現像剤用キャリア、現像剤、画像形成装置及び画像形成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6443392
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】現像剤用キャリア、現像剤、画像形成装置及び画像形成方法
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/113 20060101AFI20181217BHJP
【FI】
   G03G9/113 351
【請求項の数】6
【全頁数】36
(21)【出願番号】特願2016-103303(P2016-103303)
(22)【出願日】2016年5月24日
(65)【公開番号】特開2017-211445(P2017-211445A)
(43)【公開日】2017年11月30日
【審査請求日】2018年2月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100168583
【弁理士】
【氏名又は名称】前井 宏之
(72)【発明者】
【氏名】小澤 範晃
【審査官】 福田 由紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−128142(JP,A)
【文献】 特開平03−163569(JP,A)
【文献】 特開2003−280284(JP,A)
【文献】 特開平06−236077(JP,A)
【文献】 特開2006−154539(JP,A)
【文献】 特開2009−109570(JP,A)
【文献】 特開平06−043696(JP,A)
【文献】 特開2015−004787(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/113
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一キャリアと第二キャリアとを含む、現像剤用キャリアであって、
前記第一キャリアの含有率は、前記第一キャリアと前記第二キャリアとの合計質量に対して、85質量%以上95質量%以下であり、
前記第一キャリアは、第一キャリア粒子を複数含み、
前記第一キャリア粒子は、第一キャリアコアと、前記第一キャリアコアの表面に備えられる第一コート層とを有し、
前記第一コート層の含有量は、100質量部の前記第一キャリアコアに対して、40質量部以上60質量部以下であり、
前記第一キャリアコアの体積中位径は、40μm以上60μm以下であり、
前記第二キャリアは、第二キャリア粒子を複数含み、
前記第二キャリア粒子は、第二キャリアコアと、前記第二キャリアコアの表面に備えられる第二コート層とを有し、
前記第二コート層の含有量は、100質量部の前記第二キャリアコアに対して、10質量部以上30質量部以下であり、
前記第二キャリアコアの体積中位径は、20μm以上30μm以下であり、
前記第二コート層の表面は凸部と凹部とを有し、前記凸部における前記第二コート層の厚さと、前記凹部における前記第二コート層の厚さとの差は、0.4μm以上1.0μm以下である、現像剤用キャリア。
【請求項2】
請求項1に記載の現像剤用キャリアとトナーとを含む、現像剤。
【請求項3】
請求項1に記載の現像剤用キャリアとトナーとを含む現像剤を用いる、画像形成装置であって、
表面に静電潜像が形成される像担持体と、
前記静電潜像に前記トナーを供給して、前記静電潜像をトナー像として現像する現像部と
を備える画像形成装置。
【請求項4】
前記現像部は、
前記現像剤を担持する現像剤担持体と、
前記現像剤担持体から前記現像剤に含まれる前記トナーを受け取って、前記トナーを担持するトナー担持体と
を備え、
前記トナー担持体は、前記像担持体の前記表面に形成された前記静電潜像に前記トナーを供給して、前記静電潜像をトナー像として現像する、請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
請求項1に記載の現像剤用キャリアとトナーとを含む現像剤を用いる、画像形成方法であって、
現像部が、像担持体の表面に形成された静電潜像に前記トナーを供給して、前記静電潜像をトナー像として現像する現像工程を含む、画像形成方法。
【請求項6】
前記現像部は、現像剤担持体とトナー担持体とを備え、
前記現像工程は、
前記現像剤担持体が、前記現像剤を担持することと、
前記トナー担持体が、前記現像剤担持体から前記現像剤に含まれる前記トナーを受け取って、前記トナーを担持することと、
前記トナー担持体が、前記像担持体の前記表面に形成された前記静電潜像に前記トナーを供給して、前記静電潜像をトナー像として現像することと
を含む、請求項5に記載の画像形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現像剤(特に二成分現像剤)用キャリア、現像剤、画像形成装置及び画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真法を用いる画像形成では、像担持体上に形成された静電潜像にトナーが供給されて、静電潜像がトナー像として現像される。現像には、例えば、トナーとキャリアとを含む二成分現像剤が使用される。特許文献1に記載の磁性現像剤は、トナーとキャリアとを含む。キャリアは、平均粒子径が10μm以上50μm以下の小粒径の磁性キャリアと、平均粒子径が50μm以上150μm以下の大粒径の磁性キャリアとの混合体である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平06−236077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の磁性現像剤は、キャリアに含まれるキャリア粒子がコート層で被覆されていない。そのため、一のキャリア粒子の表面にトナーの外添剤が付着した場合に、付着した外添剤を他のキャリア粒子が掻き取ることは難しい。そのため、このような磁性現像剤では、キャリアに含まれるキャリア粒子の表面に外添剤が付着する、いわゆるキャリア汚染が引き起こされることがある。また、このような磁性現像剤では、形成画像における画像濃度及び耐カブリ性の向上も不十分である。
【0005】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、キャリア汚染を抑制し、画像濃度及び耐カブリ性を向上させることができる現像剤用キャリアを提供する。また、本発明は、このような現像剤用キャリアを用いた現像剤、画像形成装置及び画像形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る現像剤用キャリアは、第一キャリアと第二キャリアとを含む。前記第一キャリアの含有率は、前記第一キャリアと前記第二キャリアとの合計質量に対して、85質量%以上95質量%以下である。前記第一キャリアは、第一キャリア粒子を複数含む。前記第一キャリア粒子は、第一キャリアコアと、前記第一キャリアコアの表面に備えられる第一コート層とを有する。前記第一コート層の含有量は、100質量部の前記第一キャリアコアに対して、40質量部以上60質量部以下である。前記第一キャリアコアの体積中位径は、40μm以上60μm以下である。前記第二キャリアは、第二キャリア粒子を複数含む。前記第二キャリア粒子は、第二キャリアコアと、前記第二キャリアコアの表面に備えられる第二コート層とを有する。前記第二コート層の含有量は、100質量部の前記第二キャリアコアに対して、10質量部以上30質量部以下である。前記第二キャリアコアの体積中位径は、20μm以上30μm以下である。前記第二コート層の表面は凸部と凹部とを有する。前記凸部における前記第二コート層の厚さと、前記凹部における前記第二コート層の厚さとの差は、0.4μm以上1.0μm以下である。
【0007】
本発明に係る現像剤は、上述した現像剤用キャリアとトナーとを含む。
【0008】
本発明に係る画像形成装置は、上述した現像剤用キャリアとトナーとを含む現像剤を用いる、画像形成装置である。画像形成装置は、表面に静電潜像が形成される像担持体と、前記静電潜像に前記トナーを供給して、前記静電潜像をトナー像として現像する現像部とを備える。
【0009】
本発明に係る画像形成方法は、上述した現像剤用キャリアとトナーとを含む現像剤を用いる、画像形成方法である。画像形成方法は、現像部が、像担持体の表面に形成された静電潜像に前記トナーを供給して、前記静電潜像をトナー像として現像する現像工程を含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明の現像剤用キャリア、現像剤、画像形成装置及び画像形成方法によれば、キャリア汚染を抑制し、画像濃度及び耐カブリ性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係る現像剤用キャリアにおける第二コート層の厚さの測定方法を説明するための図である。
図2】本発明に係る画像形成装置の構成の一例を示す図である。
図3】本発明に係る画像形成装置が備える現像部と像担持体とを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を説明する。しかし、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されない。本発明の目的の範囲内で適宜変更を加えて、本発明を実施することができる。なお、説明が重複する箇所については、適宜説明を省略する場合があるが、発明の要旨は限定されない。図面は、理解し易くするために、それぞれの構成要素を模式的に示している。図示された各構成要素の厚さ、長さ、個数、形状及び寸法等は一例であって、特に限定されない。
【0013】
以下、化合物名の後に「系」を付けて、化合物及びその誘導体を包括的に総称する場合がある。また、化合物名の後に「系」を付けて重合体名を表す場合には、重合体の繰返し単位が化合物又はその誘導体に由来することを意味する。
【0014】
以下、平均値は、何ら規定していなければ、数平均値を意味する。また、粉体(例えば後述する、トナー、外添剤、キャリア及び現像剤)に関する評価値(形状又は物性などを示す値)も、何ら規定していなければ、数平均値を意味する。数平均値は、相当数の測定対象について測定した値の和を、測定した個数で除算した値である。更に、粉体の粒子径は、何ら規定していなければ、電子顕微鏡を用いて測定された一次粒子の円相当径である。円相当径は、粒子の投影面積と同じ面積を有する円の直径である。体積中位径D50は、体積基準で算出されたメディアン径である。
【0015】
<1.現像剤用キャリア>
本実施形態は現像剤用キャリア(以下、キャリアと記載することがある)に関する。本実施形態のキャリアは、第一キャリアと第二キャリアとを含む。第一キャリアと第二キャリアとを含むことにより、トナーが有する外添剤が、キャリアに含まれるキャリア粒子の表面に付着すること(いわゆるキャリア汚染)を抑制することができる。その理由は、以下のように推測される。
【0016】
第二キャリア粒子の第二キャリアコアの体積中位径(ひいては第二キャリア粒子の体積中位径)は、第一キャリア粒子の第一キャリアコアの体積中位径(ひいては第一キャリア粒子の体積中位径)よりも小さい。そして、第二キャリア粒子において、第二コート層の含有量は所定の範囲内であり、第二コート層の表面は所定の凹凸を有している。そのため、第一キャリア粒子の表面にトナーが有する外添剤が付着した場合であっても、体積中位径が小さく凹凸を有する第二キャリア粒子が、第一キャリア粒子の表面に付着した外添剤を掻き取ることができると考えられる。その結果、キャリア汚染を抑制することができる。キャリア汚染が抑制されると、キャリアがトナーを所望の帯電量に帯電させる能力が低下し難い。これにより、トナーを所望の帯電量に帯電することができ、形成画像におけるカブリの発生を抑制することができる。
【0017】
次に、第一キャリアの含有率は、第一キャリアと第二キャリアとの合計質量に対して、85質量%以上95質量%以下である。第二キャリア粒子の体積中位径は、第一キャリア粒子の体積中位径よりも小さい。体積中位径が小さい第二キャリア粒子は、第一キャリア粒子よりもトナーを帯電させ易い。第一キャリアの含有率が第一キャリアと第二キャリアとの合計質量に対して85質量%未満であると、第二キャリアが多くなり、トナーが帯電され過ぎる傾向がある。その結果、形成画像における画像濃度が低下する。一方、第一キャリアの含有率が第一キャリアと第二キャリアとの合計質量に対して95質量%を超えると、第二キャリア粒子が少なくなり、第二キャリア粒子が第一キャリア粒子の表面に付着した外添剤を掻き取り難い。その結果、キャリア汚染が発生し、形成画像においてカブリが発生する。
【0018】
<1−1.第一キャリア粒子>
第一キャリアは、第一キャリア粒子を複数(多数)含む。第一キャリアは、多数の第一キャリア粒子の集合体(粉体)である。第一キャリア粒子は、第一キャリアコアと第一コート層とを有する。第一コート層は、第一キャリアコアの表面に備えられる。第一コート層は、第一キャリアコアを被覆するように備えられる。
【0019】
(第一キャリアコア)
第一キャリアコアの体積中位径は、40μm以上60μm以下である。第一キャリアコアの体積中位径が40μm未満であると、第一キャリアコア(ひいては第一キャリア粒子)の体積中位径が小さくなり、第一キャリア粒子の比表面積が大きくなる。そのため、トナーが帯電され過ぎ、形成画像において画像濃度が低下する。一方、第一キャリアコアの体積中位径が60μmを超えると、第一キャリア粒子同士の接触面積が大きくなり、第一キャリア粒子に第二キャリア粒子が接触する確率が低下する。そのため、第二キャリア粒子が第一キャリア粒子の表面に付着した外添剤を掻き取り難くなる。その結果、キャリア汚染が発生し、形成画像においてカブリが発生する。
【0020】
第一キャリアコアの体積中位径は、例えば第一キャリアコアを製造する際の粉砕時間を変更することにより調整される。粉砕時間が長い程、第一キャリアコアの体積中位径は小さくなる。第一キャリアコアの体積中位径は、例えばレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(株式会社堀場製作所製「LA−950V2」)を用いて測定される。
【0021】
(第一コート層)
第一コート層の含有量は、100質量部の第一キャリアコアに対して、40質量部以上60質量部以下である。第一コート層の含有量が100質量部の第一キャリアコアに対して40質量部未満であると、第一コート層が薄い部分又は備えられていない部分が多くなる。そのため、第一コート層内に外添剤が入り込み、キャリア汚染が発生する。一方、第一コート層の含有量が100質量部の第一キャリアコアに対して60質量部を超えると、形成画像の画像濃度が低下する。また、第一キャリア粒子を含む現像剤の流動性が低下すると考えられる。
【0022】
<1−2.第二キャリア粒子>
第二キャリアは、第二キャリア粒子を複数(多数)含む。第二キャリアは、多数の第二キャリア粒子の集合体(粉体)である。第二キャリア粒子は、第二キャリアコアと第二コート層とを有する。第二コート層は、第二キャリアコアの表面に備えられる。第二コート層は、第二キャリアコアを被覆するように備えられる。
【0023】
(第二キャリアコア)
第二キャリアコアの体積中位径は、20μm以上30μm以下である。第二キャリアコアの体積中位径が20μm未満であると、又は30μmを超えると、第二キャリア粒子が第一キャリア粒子の表面に付着した外添剤を掻き取り難くなる。その結果、キャリア汚染が発生し、形成画像においてカブリが発生する。第二キャリアコアの体積中位径は、20μm以上25μm以下であることが好ましい。
【0024】
第二キャリアコアの体積中位径は、例えば第二キャリアコアを製造する際の粉砕時間を変更することにより調整される。粉砕時間が長い程、第二キャリアコアの体積中位径は小さくなる。第二キャリアコアの体積中位径は、例えばレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(株式会社堀場製作所製「LA−950V2」)を用いて測定される。
【0025】
(第二コート層)
第二コート層の含有量は、100質量部の第二キャリアコアに対して、10質量部以上30質量部以下である。第二コート層の含有量が100質量部の第二キャリアコアに対して10質量部未満であると、トナーが帯電され過ぎる傾向がある。その結果、形成画像において画像濃度が低下する。一方、第二コート層の含有量が100質量部の第二キャリアコアに対して30質量部を超えると、第二キャリア粒子が第一キャリア粒子の表面に付着した外添剤を掻き取り難くなる。その結果、キャリア汚染が発生し、形成画像においてカブリが発生する。
【0026】
第二コート層の表面は凸部と凹部とを有する。凸部における第二コート層の厚さと凹部における第二コート層の厚さとの差(以下、表面高低差と記載することがある)は、0.4μm以上1.0μm以下である。第二コート層の表面高低差が0.4μm未満であると、第二キャリア粒子の表面の凹凸が小さいために、第二キャリア粒子が第一キャリア粒子の表面に付着した外添剤を掻き取り難い。その結果、キャリア汚染が発生し、形成画像においてカブリが発生する。一方、第二コート層の表面高低差が1.0μmを超えると、第二キャリア粒子の表面の凹凸が大き過ぎるために、第二キャリア粒子によって、第一キャリア粒子の第一コート層が傷付けられることがある。そのため、第一キャリア粒子が所望の帯電量にトナーを帯電できず、形成画像においてカブリが発生する。
【0027】
第二コート層の表面高低差は、例えば、以下の方法で調整される。流動層コーティング装置を用いて第二コート層を形成する場合には、流動層を硬化させる際の加熱温度及び加熱時間の一方又は両方を変更することにより、第二コート層の表面高低差を調整することができる。流動層を硬化させる際の加熱温度が低くなる程、第二コート層の表面高低差は大きくなる。
【0028】
以下、図1を参照して、第二コート層22の表面高低差の測定方法を説明する。第二キャリア粒子20は、第二キャリアコア21と、第二キャリアコア21の表面に備えられる第二コート層22を有する。第二キャリア粒子20の断面を、透過電子顕微鏡(TEM、例えば株式会社日立ハイテクノロジーズ製「H−7100FA」)を用いて倍率40000倍で観察する。これにより、第二キャリア粒子20の断面のTEM撮影像を得る。TEM撮影像中で、第二キャリア粒子20に含まれる第二キャリアコア21の中心点P1を設定する。断面の中心点P1は、第二キャリアコア21の最長径の線上であって、第二キャリアコア21の表面から最長径の1/2に位置する点に設定する。次に、中心点P1を通るように、直線を引く。次に、引かれた直線が第二キャリアコア21と第二コート層22との界面と交わる点P2から、直線が第二コート層22の表面と交わる点P3までの長さLを測定する。長さLを、第二コート層22の厚さとする。第二コート層22の厚さLの測定をn箇所で行う。これにより、n個の第二コート層22の厚さLを得る。n個の第二コート層22の厚さLを、大きい値から順にL1、L2、L3・・・Ln-2、Ln-1、Lnとする。
【0029】
n個の第二コート層22の厚さLのうち、大きい値からn/10個の厚さ(1番目〜n/10番目に大きい厚さ)L1、L2、L3・・・Ln/10を選択する。選択されたn/10個の厚さの和を、選択された個数(n/10個)で除算する。得られた値(数平均値)を、凸部における第二コート層の厚さLAとする。つまり、凸部における第二コート層の厚さLAは、式「LA=(L1+L2+L3・・・+Ln/10)/(n/10)」から算出される。
【0030】
n個の第二コート層22の厚さLのうち、小さい値からn/10個の厚さ(1番目〜n/10番目に小さい厚さ)Ln、Ln-1、Ln-2・・・Ln+1-(n/10)を選択する。選択されたn/10個の厚さの和を、選択された個数(n/10個)で除算する。得られた値(数平均値)を、凹部における第二コート層の厚さLBとする。つまり、凹部における第二コート層の厚さLBは、式「LB=(Ln+Ln-1+Ln-2・・・+Ln+1-(n/10))/(n/10)」から算出される。
【0031】
算出された凸部における第二コート層22の厚さ(数平均値)LAと、凹部における第二コート層22の厚さ(数平均値)LBとから、式「LA−LB」に従って、凸部における第二コート層22の厚さLAと、凹部における第二コート層22の厚さLBとの差(第二コート層22の表面高低差)を算出する。以上、図1を参照して、第二コート層22の表面高低差の測定方法を説明した。
【0032】
第二キャリア粒子が第一キャリア粒子の表面に付着した外添剤を掻き取り易くなることから、第一キャリア粒子の第一コート層の表面高低差は、第二キャリア粒子の第二コート層の表面高低差より小さいことが好ましい。第一キャリア粒子の第一コート層の表面高低差は、以下の点を変更する以外は第二キャリア粒子の第二コート層の表面高低差の測定と同様の方法で測定される。すなわち、第二キャリア粒子、第二キャリアコア及び第二コート層を、各々、第一キャリア粒子、第一キャリアコア及び第一コート層に変更して測定する。
【0033】
<1−3.キャリアコア及びコート層の材料>
次に、第一キャリアコア及び第二キャリアコアを構成するために好適な材料を説明する。また、第一コート層及び第二コート層を構成するために好適な樹脂を説明する。なお、第一キャリア粒子及び第二キャリア粒子を包括的に、キャリア粒子と記載することがある。第一キャリアコア及び第二キャリアコアを包括的に、キャリアコアと記載することがある。第一コート層及び第二コート層を包括的に、コート層と記載することがある。
【0034】
(キャリアコアの材料)
キャリアコアの材料の例としては、鉄、酸化鉄(例えばフェライト)、還元鉄、マグネタイト、銅、酸化銅、ケイ素鋼、ニッケル、コバルト、マンガン、マグネシウム、ストロンチウム、亜鉛、酸化亜鉛、アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化鉛、酸化ジルコニウム、炭化ケイ素、チタン酸マグネシウム、チタン酸バリウム、チタン酸リチウム、チタン酸鉛、ジルコン酸鉛又はニオブ酸リチウムが挙げられる。これらの材料は、セラミックス(焼結体)の状態で使用されてもよい。キャリアコアの材料の別の例としては、高誘電率物質が挙げられる。高誘電率物質の例としては、リン酸二水素アンモニウム、リン酸二水素カリウム又はロッシェル塩が挙げられる。これらのキャリアコアの材料は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0035】
キャリアコアの材料にキャリアコア用結着樹脂を添加して造粒することにより、キャリアコアを形成してもよい。キャリアコア用結着樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂が挙げられる。キャリアコア用結着樹脂として使用される熱可塑性樹脂の例は、後述するコート層に含有される熱可塑性樹脂の例と同様である。なかでも、キャリアコア用結着樹脂としては、ポリビニルアルコールが好ましい。
【0036】
(コート層の樹脂)
コート層に含有される樹脂としては、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂が挙げられる。
【0037】
コート層に含有される熱可塑性樹脂の例としては、スチレン系重合体、アクリル酸系重合体、スチレン−アクリル酸系共重合体等、スチレン−ブタジエン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリフッ化ビニリデン、フルオロカーボン樹脂、パーフロロカーボン樹脂(例えば、溶剤可溶性パーフロロカーボン樹脂)、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリビニルピロリドン、石油由来の樹脂、セルロース誘導体(例えば、セルロース、酢酸セルロース、硝酸セルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース又はヒドロキシプロピルセルロース)、ノボラック樹脂、低分子量ポリエチレン、飽和アルキルポリエステル樹脂、芳香族ポリエステル樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート又はポリアリレート)、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂又はポリエーテルケトン樹脂が挙げられる。
【0038】
熱硬化性樹脂の例としては、具体的には、例えば、フェノール樹脂、変性フェノール樹脂、マレイン樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル(無水マレイン酸とテレフタル酸と多価アルコールとの共重縮合体)、尿素樹脂、メラミン樹脂、尿素−メラミン樹脂、キシレン樹脂、トルエン樹脂、グアナミン樹脂、アセトグアナミン樹脂、グリプタール樹脂、フラン樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂又はポリウレタン樹脂が挙げられる。
【0039】
シリコーン樹脂の具体例としては、アルキル基を有するシリコーン樹脂(例えばメチルシリコーン樹脂)が挙げられる。アルキル基を有するシリコーン樹脂の例としては、下記一般式(1)で表される化合物(以下、化合物(1)と記載する)及び下記一般式(2)で表される化合物(以下、化合物(2)と記載する)の一方又は両方を含む樹脂が挙げられる。化合物(1)は、下記一般式(1a)で表される繰り返し単位(以下、繰り返し単位(1a)と記載する)から構成される。化合物(2)は、下記一般式(2a)で表される繰り返し単位(以下、繰り返し単位(2a)と記載する)から構成される。
【0040】
【化1】
【0041】
【化2】
【0042】
一般式(1)及び(1a)中、R1及びR2の各々は、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表す。一般式(1)中、R3及びR4の各々は、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表す。一般式(1)中、mは平均重合度を表す。mは、例えば、10以上1000以下の整数である。
【0043】
【化3】
【0044】
【化4】
【0045】
一般式(2)及び(2a)中、R11、R12、R15及びR16の各々は、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表す。一般式(2)中、R13、R14の各々は、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表す。一般式(2)中、nは平均重合度を表す。nは、例えば、10以上1000以下の整数である。
【0046】
アルキル基を有するシリコーン樹脂が化合物(1)及び化合物(2)の一方又は両方を含む樹脂である場合、繰り返し単位(1a)及び繰り返し単位(2a)の合計モル数は、アルキル基を有するシリコーン樹脂中の全繰り返し単位のモル数に対して、80mol%以上であることが好ましく、90mol%以上であることがより好ましく、100mol%であることが特に好ましい。アルキル基を有するシリコーン樹脂が化合物(1)及び化合物(2)の両方を含む樹脂である場合、繰り返し単位(2a)の含有量は、1モル当量の繰り返し単位(1a)に対して、1モル当量以上5モル当量以下であることが好ましい。
【0047】
シリコーン樹脂は、ハロゲン変性シリコーン樹脂(例えば、フッ素変性シリコーン樹脂)であってもよい。ハロゲン変性シリコーン樹脂の例としては、化合物(1)とハロゲン化アルキル基を有するケイ素化合物との脱メトキシ化物、及び化合物(2)とハロゲン化アルキル基を有するケイ素化合物との脱メトキシ化物の一方又は両方を含む樹脂が挙げられる。ハロゲン化アルキル基を有するケイ素化合物の例としては、下記一般式(3)で表される化合物が挙げられる。下記一般式(3)で表される化合物の好適な例は、CF3CH2CH2Si(OCH33である。
【0048】
【化5】
【0049】
一般式(3)中、R21、R22、R23及びR24は、各々独立して、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、又はハロゲン原子を少なくとも1個(好ましくは1個以上13個以下)有する炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表す。但し、R21、R22、R23及びR24のうちの少なくとも1つは、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基を表す。また、R21、R22、R23及びR24のうちの少なくとも1つは、ハロゲン原子を少なくとも1個有する炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表す。
【0050】
シリコーン樹脂は、アミノシランカップリング剤を含んでいてもよい。アミノシランカップリング剤を含むシリコーン樹脂は、化合物(1)とアミノシランカップリング剤との混合物、及び化合物(2)とアミノシランカップリング剤との混合物の一方又は両方を含む樹脂が挙げられる。化合物(1)及び(2)がアミノシランカップリング剤でコーティングされていてもよい。また、化合物(1)とアミノシランカップリング剤との間、及び化合物(2)とアミノシランカップリング剤との間に共有結合が形成されていてもよい。アミノシランカップリング剤の例は、γ−アミノブチルトリエトキシシラン又は下記化学式で表される化合物である。
【0051】
[H2N(CH22NH(CH23]Si(OCH33
[H2N(CH22NH(CH23]Si(CH3)(OCH32
[H2N(CH22NH(CH22]Si(OCH33
[H2N(CH22NH(CH22NH(CH22]Si(OCH33
[H2N(CH2)]Si(OCH33、及び
[C65NH(CH23]Si(OCH33
【0052】
上述した樹脂は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、熱可塑性樹脂に硬化剤を添加することにより得られる樹脂を使用してもよい。硬化剤の例としては、オクチル酸が挙げられる。
【0053】
コート層に含有される樹脂は、絶縁性を有していてもよい。また、コート層は、添加剤を更に含有してもよい。例えば、コート層に、樹脂の帯電極性と逆極性の添加剤を添加してもよい。キャリアがトナーを正極性に帯電させるための負帯電性キャリアである場合、負帯電性を有する樹脂(例えば、シリコーン樹脂)に加えて、アミノシランカップリング剤をコート層に含有させることにより、キャリアの負帯電性を抑えることができる。
【0054】
第一コート層に含有される樹脂は、第二コート層に含有される樹脂と同一であってもよい。しかし、第一コート層に含有される樹脂は、第二コート層に含有される樹脂と異なっていてもよい。
【0055】
コート層に含有される樹脂の質量平均分子量(Mw)は、5000以上50000以下であることが好ましい。コート層に含有される樹脂の質量平均分子量は、例えば、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)により測定される。GPCの測定条件の一例を以下に示す。
装置:HLC−8220(東ソー株式会社製)
溶離液:THF(テトラヒドロフラン)
カラム:TSKgel GMHXL(東ソー株式会社製)
カラム本数:2本
検出器:RI
溶出液流速:1mL/分
試料溶液濃度:3.0mg/mL
カラム温度:40℃
試料溶液量:100μL
検量線:標準ポリスチレンを用いて作製された検量線
【0056】
<1−4.キャリアの製造方法>
キャリアの製造では、まずキャリアコアを製造する。得られたキャリアコアをコート層形成用樹脂で被覆して、コート層を形成する。その結果、キャリア(多数のキャリア粒子)が得られる。
【0057】
(キャリアコアの製造方法)
キャリアコアの製造方法の一例を説明する。キャリアコアの原料を粉砕する。粉砕物を焼成し、焼成物を得る。焼成物を解砕し、分級する。その結果、所望の体積中位径を有するキャリアコアが得られる。
【0058】
キャリアコアの製造方法の別の例を説明する。キャリアコアの原料を粉砕する。得られた粉砕物にキャリアコア用結着樹脂(例えば、ポリビニルアルコール)を添加して、液を得る。スプレードライヤーを用いて得られた液を噴霧し、造粒物を得る。電気炉を用いて造粒物を焼成する。焼成物を解砕し、分級する。その結果、所望の体積中位径を有するキャリアコアが得られる。
【0059】
(コート層の製造方法)
次に、コート層形成用樹脂でキャリアコアを被覆して、キャリア粒子を形成する。被覆する方法の例としては、流動層コーティング装置を用いて、コート層形成用樹脂をキャリアコアに噴霧する。これにより、キャリアコアが、未硬化の有機層(流動層)で被覆される。続いて、乾燥機を用いて、未硬化の有機層(流動層)で被覆されたキャリアコアを加熱する。これにより、流動層が硬化する。その結果、キャリアコアと、キャリアコアを覆うコート層とを有するキャリア粒子が得られる。流動層の硬化を好適に進行させるために、コート層形成用樹脂に硬化剤を添加してもよい。
【0060】
<2.現像剤>
現像剤は、トナーと、上述した本実施形態に係るキャリアとを含む。現像剤は、静電潜像の現像に用いることができる。トナーの含有量は、現像剤の質量に対して、3質量%以上20質量%以下であることが好ましく、5質量%以上15質量%以下であることがより好ましい。以下、トナーについて説明する。
【0061】
<2−1.トナー>
トナーは、トナー粒子を複数含む。トナーは、多数のトナー粒子の集合体(粉体)である。トナー粒子の表面には、必要に応じて、外添剤が付着していてもよい。外添剤が付着する前のトナー粒子を、トナー母粒子と記載することがある。
【0062】
トナー母粒子は、例えば、結着樹脂、着色剤、離型剤及び電荷制御剤のうちの1種以上を含有してもよい。ただし、トナーの用途に応じて必要のない成分を割愛してもよい。なお、トナー母粒子は、カプセル化されていてもよい。カプセル化されたトナー母粒子は、例えば、以下に述べるトナー母粒子と同様の構造及び成分を有するトナーコアと、トナーコアの表面に形成されたシェル層(カプセル層)とを有する。
【0063】
(結着樹脂)
結着樹脂は、トナーの調製に用いられる結着樹脂である限り、特に限定されない。結着樹脂としては、トナーの定着性を向上させるという観点から、熱可塑性樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂の例としては、アクリル酸系樹脂、スチレンアクリル酸系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ウレタン樹脂又はビニルアルコール系樹脂が挙げられる。着色剤の分散性、トナーの帯電性及び記録媒体(例えば、紙)に対するトナーの定着性を向上させる点で、結着樹脂としてはポリエステル樹脂が特に好ましい。以下、ポリエステル樹脂について説明する。
【0064】
ポリエステル樹脂は、例えばアルコールとカルボン酸とを縮重合又は共縮重合させることで得られる。
【0065】
ポリエステル樹脂を合成する際に用いられるアルコールの例としては、2価アルコール又は3価以上のアルコールが挙げられる。
【0066】
2価アルコールの例としては、ジオール類又はビスフェノール類が挙げられる。ジオール類の例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、2−ブテン−1,4−ジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール又はポリテトラメチレングリコールが挙げられる。ビスフェノール類の例としては、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物(ポリオキシエチレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン)又はビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物が挙げられる。
【0067】
3価以上のアルコールの例としては、ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、ジグリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン又は1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼンが挙げられる。
【0068】
ポリエステル樹脂を合成する際に用いられるカルボン酸の例としては、2価カルボン酸又は3価以上のカルボン酸が挙げられる。
【0069】
2価カルボン酸の例としては、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、マロン酸、コハク酸、アルキルコハク酸又はアルケニルコハク酸が挙げられる。アルキルコハク酸の例としては、n−ブチルコハク酸、イソブチルコハク酸、n−オクチルコハク酸、n−ドデシルコハク酸又はイソドデシルコハク酸が挙げられる。アルケニルコハク酸の例としては、n−ブテニルコハク酸、イソブテニルコハク酸、n−オクテニルコハク酸、n−ドデセニルコハク酸又はイソドデセニルコハク酸が挙げられる。
【0070】
3価以上のカルボン酸の例としては、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸又はエンポール三量体酸が挙げられる。
【0071】
アルコール及びカルボン酸は、各々1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。更に、カルボン酸を、エステル形成性の誘導体に誘導体化して使用してもよい。エステル形成性の誘導体の例としては、酸ハライド、酸無水物(例えば、無水トリメリット酸)又は低級アルキルエステルが挙げられる。ここで、「低級アルキル」とは、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を意味する。
【0072】
結着樹脂としてポリエステル樹脂が使用される場合、結着樹脂中のポリエステル樹脂の含有量は、70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが特に好ましく、100質量%であることが最も好ましい。
【0073】
結着樹脂の軟化点(Tm)は、60℃以上150℃以下であることが好ましい。結着樹脂の軟化点がこのような範囲内になるように、異なる軟化点を有する複数種類の樹脂を組み合わせて用いることもできる。
【0074】
結着樹脂の酸価は、1mgKOH/g以上30mgKOH/g以下であることが好ましい。結着樹脂の酸価は、例えば、JIS(日本工業規格)K0070−1992に記載の方法で測定される。
【0075】
結着樹脂の融点(Mp)は、50℃以上100℃以下であることが好ましい。結着樹脂の融点がこのような範囲内であると、トナーの低温定着性、耐ホットオフセット性及び耐熱保存性を向上させ易くなる。結着樹脂の融点は、例えば、示差走査熱量計(セイコーインスツル株式会社製「DSC−6220」)を用いて測定される。詳しくは、アルミ皿に測定試料(結着樹脂)を入れる。示差走査熱量計の測定部にアルミ皿をセットする。リファレンスには空のアルミ皿を用いる。30℃を測定開始温度とし、10℃/分の速度で170℃まで昇温を行う。昇温の際に観測される融解熱の最大ピーク温度を、測定試料の融点とする。
【0076】
(着色剤)
着色剤には、トナーの色に合わせて、公知の顔料又は染料が用いられる。着色剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して、1質量部以上30質量部以下であることが好ましい。
【0077】
トナーがブラックトナーである場合、ブラック着色剤が使用される。ブラック着色剤の例としては、カーボンブラックが挙げられる。後述するイエロー着色剤、マゼンタ着色剤及びシアン着色剤を用いて黒色に調色されたブラック着色剤を使用してもよい。
【0078】
トナーがイエロートナーである場合、イエロー着色剤が使用される。イエロー着色剤の例としては、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アントラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物又はアリールアミド化合物が挙げられる。より具体的には、C.I.ピグメントイエロー(3、12、13、14、15、17、62、74、83、93、94、95、97、109、110、111、120、127、128、129、147、151、154、155、168、174、175、176、180、181、191又は194)、ナフトールイエローS、ハンザイエローG又はC.I.バットイエローが挙げられる。
【0079】
トナーがマゼンタトナーである場合、マゼンタ着色剤が使用される。マゼンタ着色剤の例としては、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン化合物、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物又はペリレン化合物が挙げられる。より具体的には、C.I.ピグメントレッド(2、3、5、6、7、19、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、122、144、146、150、166、169、177、184、185、202、206、220、221又は254)が挙げられる。
【0080】
トナーがシアントナーである場合、シアン着色剤が使用される。シアン着色剤の例としては、銅フタロシアニン、銅フタロシアニンの誘導体、アントラキノン化合物又は塩基染料レーキ化合物が挙げられる。より具体的には、C.I.ピグメントブルー(1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62又は66)、フタロシアニンブルー、C.I.バットブルー又はC.I.アシッドブルーが挙げられる。
【0081】
(離型剤)
離型剤は、例えばトナーの定着性及び耐オフセット性を向上させる目的で使用される。トナーの定着性及び耐オフセット性を向上させるためには、離型剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して、1質量部以上30質量部以下であることが好ましい。
【0082】
離型剤の例としては、脂肪族炭化水素ワックス、脂肪族炭化水素ワックスの酸化物、植物ワックス、動物ワックス、鉱物ワックス、脂肪酸エステルを主成分とするワックス又は脂肪酸エステルの一部もしくは全部が脱酸化されたワックスが挙げられる。脂肪族炭化水素ワックスの例としては、エステルワックス、ポリエチレワックス(例えば、低分子量ポリエチレン)、ポリプロピレンワックス(例えば、低分子量ポリプロピレン)、ポリオレフィン共重合物、ポリオレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス又はフィッシャートロプシュワックスが挙げられる。脂肪族炭化水素ワックスの酸化物の例としては、酸化ポリエチレンワックス又は酸化ポリエチレンのブロック共重合体が挙げられる。植物ワックスの例としては、キャンデリラワックス、カルナバワックス、木ろう、ホホバろう又はライスワックスが挙げられる。動物ワックスの例としては、みつろう、ラノリン又は鯨ろうが挙げられる。鉱物ワックスの例としては、オゾケライト、セレシン又はペトロラタムが挙げられる。脂肪酸エステルを主成分とするワックスの例としては、モンタン酸エステルワックス又はカスターワックスが挙げられる。脂肪酸エステルの一部もしくは全部が脱酸化されたワックスの例としては、脱酸カルナバワックスが挙げられる。離型剤は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0083】
離型剤の融点(溶融温度)は、50℃以上100℃以下であることが好ましい。離型剤の融点がこのような範囲内であると、離型剤を含有するトナーの低温定着性が向上し、トナーの高温でのオフセットの発生が抑制される傾向にある。離型剤の融点は、例えば、示差走査熱量計(セイコーインスツル株式会社製「DSC−6220」)を用いて測定することができる。
【0084】
(電荷制御剤)
電荷制御剤は、帯電レベル及び帯電立ち上がり特性を向上させる目的で使用される。また、耐久性及び安定性に優れたトナーを得る目的で使用される。帯電立ち上がり特性は、短時間で所定の帯電レベルに帯電可能か否かの指標である。
【0085】
正帯電させたトナーを用いて現像する場合には、正帯電性の電荷制御剤を使用することが好ましい。一方、負帯電させたトナーを用いて現像する場合には、負帯電性の電荷制御剤を使用することが好ましい。ただし、トナーにおいて十分な帯電性が確保される場合には、電荷制御剤を使用しなくてもよい。
【0086】
正帯電性の電荷制御剤の例としては、アジン化合物、アジン化合物からなる直接染料、ニグロシン化合物、ニグロシン化合物からなる酸性染料、ナフテン酸又は高級脂肪酸の金属塩類、アルコキシル化アミン、アルキルアミド又は4級アンモニウム塩が挙げられる。また、4級アンモニウム塩、カルボン酸塩又はカルボキシル基を有する樹脂も、正帯電性の電荷制御剤として使用できる。迅速な立ち上がり性を得るためには、電荷制御剤としては、4級アンモニウム塩又はニグロシン化合物が好ましい。1種の電荷制御剤を単独で使用してもよいし、複数種の電荷制御剤を併用してもよい。電荷制御剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して、0.05質量部以上5質量部以下であることが好ましい。
【0087】
(外添剤)
トナー母粒子の表面には、必要に応じて、外添剤が備えられてもよい。外添剤の例としては、シリカ又は金属酸化物が挙げられる。金属酸化物として具体的には、アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、チタン酸ストロンチウム又はチタン酸バリウムが挙げられる。外添剤の表面は疎水化処理されていてもよい。1種類の外添剤を単独で使用してもよいし、2種以上の外添剤を併用してもよい。
【0088】
外添剤の数平均粒子径は、1nm以上300nm以下であることが好ましく、1nm以上50nm以下であることがより好ましい。外添剤の使用量は、トナー母粒子100.0質量部に対して、0.5質量部以上10.0質量部以下であることが好ましい。
【0089】
<2−2.現像剤の製造方法>
以下、現像剤を製造する方法の一例について説明する。現像剤の製造では、トナーと第一キャリアと第二キャリアとを製造する。そして、トナーと第一キャリアと第二キャリアとを混合して、現像剤を得る。なお、第一キャリア及び第二キャリアの製造方法は既に述べたとおりである。
【0090】
(トナーの製造)
トナーの製造では、まず、トナー母粒子を製造する。トナー母粒子の製造方法の好適な例としては、粉砕法又は凝集法が挙げられる。これらの方法は、着色剤、電荷制御剤及び離型剤を結着樹脂中に良好に分散させ易い。
【0091】
粉砕法の一例では、まず、結着樹脂、着色剤、電荷制御剤及び離型剤を混合する。続けて、得られた混合物を、溶融混練装置(例えば、1軸又は2軸の押出機)を用いて溶融混練する。続けて、得られた溶融混練物を粉砕及び分級する。これにより、トナー母粒子が得られる。粉砕法を用いた場合には、凝集法を用いた場合よりも容易にトナー母粒子を製造できることが多い。
【0092】
凝集法の一例では、まず、結着樹脂、着色剤、電荷制御剤及び離型剤の各々の微粒子を含む水性媒体中で、これらの微粒子を所望の粒子径になるまで凝集させる。これにより、結着樹脂、着色剤、電荷制御剤及び離型剤を含有する凝集粒子が形成される。続けて、得られた凝集粒子を加熱して、凝集粒子に含有される成分を合一化させる。これにより、所望の粒子径を有するトナー母粒子が得られる。必要に応じて、得られたトナー母粒子を洗浄し、洗浄されたトナー母粒子を乾燥する。なお、乾燥工程でスプレードライヤーを用いる場合には、外添剤の分散液をトナー母粒子に噴霧することで、乾燥と外添とを同時に行うことができる。
【0093】
なお、トナー母粒子に相当するトナーコアの表面にシェル層を形成して、カプセル化されたトナー母粒子を製造してもよい。シェル層の形成方法は任意である。例えば、in−situ重合法、液中硬化被膜法及びコアセルベーション法のいずれの方法を用いて、シェル層を形成してもよい。
【0094】
次に、トナー母粒子と外添剤とを、混合機(例えば、日本コークス工業株式会社製のFMミキサー)を用いて混合する。混合条件は、外添剤がトナー母粒子に完全に埋没しない条件に設定されることが好ましい。混合により、トナー母粒子の表面に外添剤を付着させる。その結果、トナー粒子が得られる。
【0095】
(トナーと第一キャリアと第二キャリアとの混合)
混合機を用いてトナーと第一キャリアと第二キャリアとを混合する。その結果、現像剤が得られる。混合機としては、例えばロッキングミキサー(登録商標)又はボールミルが挙げられる。
【0096】
現像剤の製造方法において、必要のない工程は割愛してもよい。例えば、市販品をそのまま材料として用いることができる場合には、市販品を用いることで、その材料を調製する工程を割愛できる。効率的に現像剤を製造するためには、多数の粒子(例えばトナー粒子、第一キャリア粒子又は第二キャリア粒子)を同時に形成することが好ましい。
【0097】
<3.画像形成装置及び画像形成方法>
以下、図2を参照して、本実施形態に係るキャリアとトナーとを含む現像剤を用いる画像形成装置100及び画像形成方法を説明する。図2に画像形成装置100の構成の一例を示す。画像形成装置100は、像担持体11と、現像部14とを備える。画像形成装置100では、本実施形態のキャリアとトナーとを含む現像剤が用いられる。現像剤は、現像部14内に貯留される。画像形成装置100は、必要に応じて、帯電部12と、露光部13と、転写部(一次転写部15のみ、又は一次転写部15及び二次転写部18の両方)と、転写ベルト17と、定着部19とを更に備えていてもよい。但し、画像形成装置100の特性に応じて、必要のない構成(帯電部12、露光部13、転写部、転写ベルト及び定着部の1つ以上)は割愛してもよい。
【0098】
画像形成装置100を用いた画像形成方法では、現像工程が行われる。画像形成方法では、帯電工程、露光工程、転写工程及び定着工程の1つ以上が更に行われてもよい。
【0099】
帯電工程では、帯電部12が像担持体11の表面を帯電する。帯電部12の例としては、非接触方式の帯電部(例えばコロトロン帯電器又はスコロトロン帯電器)又は接触方式の帯電部(例えば帯電ローラー又は帯電ブラシ)が挙げられる。帯電部12の帯電極性は、特に限定されない。例えば、帯電部12が像担持体11の表面を正極性に帯電し、正極性に帯電させたトナーを現像部14が像担持体11の表面に供給して、静電潜像をトナー像として現像してもよい。
【0100】
露光工程では、露光部13が帯電された像担持体11の表面を露光する。これにより、像担持体11の表面に静電潜像が形成される。
【0101】
現像工程では、現像部14が、像担持体11の表面に形成された静電潜像に、現像剤に含まれるトナー(多数のトナー粒子)を供給する。これにより、静電潜像がトナー像として現像される。像担持体11は、トナー像を担持する。現像部14については後述する。
【0102】
転写工程では、例えば中間転写方式又は直接転写方式を採用することができる。中間転写方式では、一次転写部15が、像担持体11から転写ベルト17にトナー像を一次転写する。続いて、二次転写部18が、転写ベルト17から記録媒体Mにトナー像を二次転写する。直接転写方式では、一次転写部15が、像担持体11から、転写ベルト17によって搬送される記録媒体Mにトナー像を転写する。直接転写方式では、トナー像が記録媒体Mに転写されるときに、像担持体11が記録媒体Mと接触している。直接転写方式を採用する画像形成装置100では、二次転写部18は割愛される。転写工程後に像担持体11の表面に残ったトナーは、必要に応じて、クリーニング部(不図示)によってクリーニングされてもよい。
【0103】
定着工程では、定着部19が記録媒体Mに転写された未定着トナー像を、加熱及び/又は加圧により定着させる。これにより、記録媒体Mに画像が形成される。
【0104】
なお、画像形成装置100は、電子写真方式の画像形成装置である限り、特に限定されない。画像形成装置100は例えば、モノクロ画像形成装置であってもよいし、カラー画像形成装置であってもよい。異なる色のトナーによる各色のトナー像を形成するために、画像形成装置100は、タンデム方式のカラー画像形成装置であってもよい。画像形成装置100がモノクロ画像形成装置である場合、画像形成装置100は例えば、画像形成ユニット10aを備える。画像形成ユニット10aは、像担持体11と、帯電部12と、現像部14と、一次転写部15とを備える。画像形成ユニット10aの中央位置に、像担持体11が配置される。像担持体11は、矢符(反時計回り)方向に回転可能に設けられる。そして、像担持体11の周囲には、帯電部12、現像部14及び一次転写部15が、帯電部12を基準として像担持体11の回転方向の上流側から順に配置されている。画像形成装置100がタンデム方式のカラー画像形成装置である場合、画像形成装置100は例えば、画像形成ユニット10a、10b、10c及び10dを備える。画像形成ユニット10b、10c及び10dは、画像形成ユニット10aと同様の構成を有する。
【0105】
(現像部)
以下、図3を参照して、タッチダウン現像方式を採用する現像部14を例に挙げて説明する。タッチダウン現像方式を採用する現像部14を備える画像形成装置100では、他の現像方式を採用する場合と比較して、キャリア汚染が引き起こされ易い。しかし、本実施形態に係るキャリアは、既に述べたようにキャリア汚染を抑制することができる。そのため、本実施形態に係るキャリアを含む現像剤を使用することにより、画像形成装置100がタッチダウン現像方式を採用する現像部14を備える場合であっても、キャリア汚染を好適に抑制することができる。
【0106】
図3は、画像形成装置100が備える現像部14と像担持体11とを示す。現像部14は、例えば、現像剤担持体82と、トナー担持体83とを備える。現像部14は、筐体80と、現像剤搬送路81と、現像剤規制部材84と、現像剤攪拌搬送部材85とを更に備えていてもよい。現像剤担持体82、トナー担持体83及び現像剤規制部材84は各々、磁気ローラー、現像ローラー及び現像剤規制ブレードに相当する。現像剤搬送路81と、現像剤担持体82と、トナー担持体83と、現像剤規制部材84と、現像剤攪拌搬送部材85とは、筐体80内に配置される。現像剤搬送路81内には、本実施形態のキャリアとトナーとを含む現像剤が収容されている。
【0107】
筐体80は、仕切壁801を含む。現像剤搬送路81は、第一搬送路811及び第二搬送路812を含む。第一搬送路811及び第二搬送路812は互いに略平行に延びている。仕切壁801は、第一搬送路811と第二搬送路812との間に位置する。
【0108】
現像剤攪拌搬送部材85は、第一搬送スクリュー851と、第二搬送スクリュー852とを含む。第一搬送路811には第一搬送スクリュー851が配置されている。第二搬送路812には第二搬送スクリュー852が配置されている。第一搬送スクリュー851と第二搬送スクリュー852とは略平行に配置される。
【0109】
第一搬送スクリュー851は回転し、第一搬送路811内の現像剤を攪拌しながら搬送する。同様に、第二搬送スクリュー852は回転し、第二搬送路812内の現像剤を攪拌しながら搬送する。その結果、現像剤は、第一搬送路811と第二搬送路812との間を循環しながら搬送される。
【0110】
現像剤担持体82は、現像剤攪拌搬送部材85に対向し、筐体80に回転可能に支持される。現像剤担持体82の内部には、円柱状のマグネット(不図示)が回転不能に固定される。マグネットは複数の磁極を有している。マグネットは、例えば、汲上極821、規制極822及び主極823を有する。汲上極821は現像剤攪拌搬送部材85に対向している。規制極822は現像剤規制部材84に対向している。主極823はトナー担持体83に対向している。
【0111】
現像剤担持体82は、汲上極821の磁力によって現像剤搬送路81から現像剤担持体82の周面82s上に、現像剤を磁気的に汲み上げる(受け取る)。現像剤担持体82は、汲み上げられた現像剤を担持する。詳しくは、汲み上げられた現像剤は、現像剤担持体82の周面82s上に現像剤の層(磁気ブラシ層)として磁気的に担持される。担持された現像剤は、現像剤担持体82の回転に伴って現像剤規制部材84へ搬送される。
【0112】
現像剤規制部材84は、現像剤担持体82の回転方向において現像剤攪拌搬送部材85よりも下流側に設けられる。現像剤規制部材84は、現像剤担持体82の周面82sに磁気的に付着した現像剤の層厚を規制する。現像剤規制部材84は、現像剤担持体82の長手方向に沿って延びる。現像剤規制部材84は、例えば、磁性材料で構成される板状の部材である。現像剤規制部材84は、筐体80に固定された支持部材841によって支持されている。現像剤規制部材84は、規制面842を有する。規制面842は、現像剤規制部材84の先端面に相当する。規制面842と現像剤担持体82の周面82sとの間には、第一ギャップG1(いわゆる規制ギャップ)が設けられる。
【0113】
現像剤規制部材84は、現像剤担持体82の規制極822によって磁化される。これにより、現像剤規制部材84の規制面842と規制極822との間の第一ギャップG1に、磁路が形成される。汲上極821によって現像剤担持体82の周面82s上に付着した現像剤の層は、現像剤担持体82の回転に伴って第一ギャップG1内に搬送される。続いて、現像剤の層厚が第一ギャップG1において規制される。これにより、現像剤担持体82の周面82s上には所定の厚さの現像剤の層が形成される。
【0114】
トナー担持体83は、現像剤担持体82の回転方向において現像剤規制部材84よりも下流側に設けられる。トナー担持体83は、現像剤担持体82に対向し、筐体80に回転可能に支持される。トナー担持体83の周面83sと現像剤担持体82の周面82sとの間には、第二ギャップG2が設けられる。
【0115】
トナー担持体83は、現像剤担持体82の周面82s上に形成された現像剤の層に接触しながら回転する。そして、第二ギャップG2において、トナー担持体83及び現像剤担持体82に、それぞれ所定のバイアスが印加される。トナー担持体83に印加されるバイアスの絶対値V83は、現像剤担持体82に印加されるバイアスの絶対値V82より小さい。これにより、トナー担持体83の周面83sと現像剤担持体82の周面82sとの間には所定の電位差が生じる。トナーの帯電極性は、例えば、トナー担持体83及び現像剤担持体82に印加されるバイアスと同じ極性である。そのため、生じた電位差により、現像剤担持体82の周面82s上に形成された現像剤の層から、トナー(多数のトナー粒子)がトナー担持体83の周面83sに移動する。現像剤の層に含まれるキャリア(多数のキャリア粒子)は現像剤担持体82の周面82sに残る。これにより、トナー担持体83が、現像剤に含まれるトナーを現像剤担持体82から受け取る。そして、トナー担持体83は、受け取ったトナーを担持する。その結果、トナー担持体83の周面83s上に、トナー(多数のトナー粒子)の層が形成される。
【0116】
トナー担持体83は、筐体80に形成された開口を通して像担持体11と対向している。トナー担持体83の周面83sと像担持体11の周面との間には、第三ギャップG3が設けられる。
【0117】
トナー担持体83の周面83s上に形成されたトナー(多数のトナー粒子)の層は、トナー担持体83の回転に伴って像担持体11の周面11sに向けて搬送される。そして、第三ギャップG3において、トナー担持体83に所定のバイアスが印加される。トナー担持体83に印加されるバイアスの絶対値V83は、像担持体11の露光領域の表面電位の絶対値V11Eより大きい。トナー担持体83に印加されるバイアスの絶対値V83は、像担持体11の非露光領域の表面電位の絶対値V11UEより小さい。これにより、像担持体11の周面11sとトナー担持体83の周面83sとの間には所定の電位差が生じる。トナーの帯電極性は、例えば、トナー担持体83に印加されるバイアス及び像担持体11の帯電極性と同じである。そのため、生じた電位差により、トナー担持体83の周面83s上に形成されたトナー(多数のトナー粒子)の層からトナーが像担持体11の周面11sの露光領域に移動する。その結果、トナー担持体83によって、像担持体11の表面(周面11s)に形成された静電潜像にトナーが供給される。そして、像担持体11が周面11sに形成された静電潜像(露光領域に相当)がトナー像として現像される。
【0118】
以上、図3を参照して、タッチダウン現像方式を採用する現像部14を例に挙げて説明した。しかし、現像部14の現像方式は特に限定されず、二成分現像方式又はその他の現像方式を採用してもよい。二成分現像方式を採用する現像部14は、トナー担持体83を備えないこと以外は、上述したタッチダウン現像方式を採用する現像部14と同様の構成を有する。二成分現像方式では、所定のバイアスを現像剤担持体82に印加する。これにより、像担持体11の周面11sと現像剤担持体82の周面82sとの間に電位差が生じる。生じた電位差により、現像剤担持体82の周面82s上に形成された現像剤の層から、像担持体11の周面11sにトナー(多数のトナー粒子)が移動する。キャリア(多数のキャリア粒子)は、現像剤担持体82の周面82s上に残る。これにより、像担持体11の周面11sに形成された静電潜像がトナー像として現像される。
【0119】
以上説明したように、本実施形態に係るキャリアによれば、キャリア汚染を抑制し、画像濃度及び耐カブリ性を向上させることができる。また、本実施形態に係るキャリアを含む現像剤、このような現像剤を用いる画像形成装置100及び画像形成方法によれば、キャリア汚染を抑制し、画像濃度及び耐カブリ性を向上させることができる。
【実施例】
【0120】
本発明の実施例について説明する。しかし、本発明は以下の実施例に何ら限定されない。
【0121】
<1.キャリアの製造>
第一キャリア又は第二キャリアとして使用するためのキャリアC1〜C24を、以下の方法で製造した。
【0122】
(キャリアコアの製造)
酸化鉄(III)(Fe23)と酸化銅(II)(CuO)と酸化亜鉛(ZnO)との混合物(混合比60:30:10)を、湿式ボールミルを用いて6時間粉砕した。得られた粉砕物にポリビニルアルコールを添加して液を得た。スプレードライヤーを用いて得られた液を噴霧し、造粒物を得た。電気炉を用いて造粒物を1000℃で6時間焼成した。焼成物を解砕し、分級した。これにより、キャリアコアA1(体積中位径D50:36μm)を得た。次に、以下の点を変更した以外は、キャリアコアA1の製造と同様の方法で、キャリアコアA2〜A7の各々を製造した。すなわち、湿式ボールミルによる粉砕時間を変更することによりキャリアコアの体積中位径D50を36μmから表1に示す大きさに変更した。なお、粉砕時間が長い程、キャリアコアの体積中位径D50は小さくなる。
【0123】
【表1】
【0124】
(キャリアC1の製造)
100質量部のメチルシリコーン樹脂(ゲル透過クロマトグラフィーにより測定される質量平均分子量:1.5×104)に、硬化剤としての4質量部のオクチル酸を添加し、コート層形成用樹脂R1を得た。コート層形成用樹脂R1(35質量部)を加熱して液状にし、流動層コーティング装置(フロイント産業株式会社製「スパイラフロー(登録商標)SFC−5」)を用いて、40℃の熱風を送り込みながら、100質量部のキャリアコアA3に噴霧した。その結果、キャリアコアA3が、未硬化の有機層(流動層)で被覆された。未硬化の有機層(流動層)で被覆されたキャリアコアA3を、乾燥機を用いて、260℃で3時間加熱した。これにより、流動層を硬化させた。その結果、キャリアコアA3とコート層とを有するキャリアC1が得られた。
【0125】
(キャリアC2〜C23の製造)
以下の点を変更した以外は、キャリアC1の製造と同様の方法で、キャリアC2〜C23を得た。キャリアC1の製造において使用したキャリアコアA3を、表2及び表3に示す種類のキャリアコアに変更した。100質量部のキャリアコアに対するコート層形成用樹脂の添加量(コート層の含有量)を、キャリアC1の製造における35質量部から、表2及び表3に示す添加量(含有量)に変更した。乾燥機による加熱温度及び加熱時間を、キャリアC1の製造における260℃及び3時間から、表2及び表3に示す加熱温度及び加熱時間に変更した。これにより、コート層の表面高低差を、キャリアC1の0.2μmから、表2及び表3に示す値に変更した。なお、乾燥機による加熱温度が低くなる程、コート層の表面高低差は大きくなる。
【0126】
(キャリアC24の製造)
コート層形成用樹脂R1に代えて、コート層形成用樹脂R2を使用した以外は、キャリアC1の製造と同様の方法で、キャリアC24を得た。なお、コート層形成用樹脂R2は、次の方法で製造したフッ素変性シリコーン樹脂であった。下記化学式(1−1)で表される化合物及び下記化学式(2−1)で表される化合物を含むシリコーン樹脂(オルガノポリシロキサン)を準備した。このオルガノポリシロキサンにおいて、実施形態で述べた繰り返し単位(1a)に相当する「−O−Si(CH32−」単位は、20mol%であった。オルガノポリシロキサンにおいて、実施形態で述べた繰り返し単位(2a)に相当する「−O−Si(CH3)[OSi(CH3)(OCH32]−」単位は、40mol%(「CH3SiO3/2−」単位に換算すると80mol%)であった。オルガノポリシロキサン250gと、CF3CH2CH2Si(OCH3321gとを反応させた。この反応は脱メトキシ反応であった。これにより、パーフルオロアルキル基(具体的には、トリフルオロメチル基)を含む有機ケイ素化合物(CF3CH2CH2Si(OCH33)が、オルガノポリシロキサンに導入された。その結果、フッ素変性シリコーン樹脂であるコート層形成用樹脂R2が得られた。
【0127】
【化6】
【0128】
一般式(1−1)中、Meはメチル基を表す。100は平均重合度を表す。
【0129】
【化7】
【0130】
一般式(2−1)中、Meはメチル基を表す。80は平均重合度を表す。
【0131】
(キャリアC5の製造)
コート層形成用樹脂R1に代えて、コート層形成用樹脂R3を使用した以外は、キャリアC1の製造と同様の方法で、キャリアC5を得た。なお、コート層形成用樹脂R3は、次の方法で製造した樹脂であった。固形分換算で100gのコート層形成用樹脂R2(フッ素変性シリコーン樹脂)と、10gのアミノシランカップリング剤(具体的には、γ−アミノブチルトリエトキシシラン)と、溶媒としての300mLのトルエンとを容器に投入した。容器の内容物を溶解させた後、容器の内容物からトルエンを除去することにより、コート層形成用樹脂R3を得た。
【0132】
(体積中位径D50の測定)
試料(キャリアコア)の体積中位径D50は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(株式会社堀場製作所製「LA−950V2」)を用いて測定した。
【0133】
(表面高低差の測定)
キャリア粒子の断面を、透過電子顕微鏡(TEM、株式会社日立ハイテクノロジーズ製「H−7100FA」)を用いて倍率40000倍で観察し、TEM撮影像を得た。TEM撮影像中のキャリア粒子の断面の中心を通るように、直線を引いた。次に、引かれた直線がキャリアコアとコート層との界面と交わる点から、直線がコート層の表面と交わる点までの長さを測定した。測定された長さを、コート層の厚さとした。コート層の厚さの測定を50箇所で行った。これにより、50個のコート層の厚さを得た。50個のコート層の厚さを、大きい値から順にL1、L2、L3・・・L48、L49、L50とした。
【0134】
50個のコート層の厚さのうち、大きい値から5個の厚さ(1番目〜5番目に大きい厚さ)L1、L2、L3・・・L5を選択した。選択された5個の厚さの和を、選択された個数(5個)で除算した。得られた値(数平均値)を、凸部におけるコート層の厚さLA1とした。つまり、凸部における第二コート層の厚さLA1を、式「LA1=(L1+L2+L3+L4+L5)/5」から算出した。
【0135】
5個のコート層の厚さのうち、小さい値から5個の厚さ(1番目〜5番目に小さい厚さ)L50、L49、L48・・・L46を選択した。選択された5個の厚さの和を、選択された個数(5個)で除算した。得られた値(数平均値)を、凹部におけるコート層の厚さLB1とした。つまり、凹部におけるコート層の厚さLB1は、式「LB1=(L50+L49+L48+L47+L46)/5」から算出した。
【0136】
算出された凸部におけるコート層の厚さ(数平均値)LA1と、凹部におけるコート層の厚さ(数平均値)LB1とから、式「LA1−LB1」に従って、コート層の表面高低差を算出した。算出された表面高低差を、表2及び表3に示す。
【0137】
なお、表2及び表3、並びに後述する表4及び表6中、コート層の含有量は、100質量部のキャリアコアに対する含有量を示す。
【0138】
【表2】
【0139】
【表3】
【0140】
<2.トナーの製造>
トナー母粒子の原料として、以下の結着樹脂、着色剤、電荷制御剤及び離型剤を使用した。
結着樹脂 :ポリエステル樹脂(酸価5.6、融点100℃)
着色剤 :銅フタロシアニン顔料(C.I.ピグメントブルー15:3)
電荷制御剤:4級アンモニウム塩(オリヱント化学工業株式会社製「BONTRON(登録商標)P−51」)
離型剤 :カルナウバワックス
【0141】
100質量部の結着樹脂、5質量部の離型剤、4質量部の着色剤、1質量部の電荷制御剤を、FMミキサー(日本コークス工業株式会社製「FM−10B」)を用いて混合し、混合物を得た。混合物を、2軸押出機(株式会社池貝製「PCM−30」)を用いて溶融しながら混練した。得られた溶融混錬物を、粉砕機(フロイント・ターボ株式会社製「ターボミル RS型」)で粉砕した。得られた粉砕物を、分級機(日鉄鉱業株式会社製「エルボージェットEJ−LABO型」)を用いて分級した。これにより、トナー母粒子が得た。得られたトナー母粒子の体積中位径D50は、6.8μmであった。得られたトナー母粒子の体積中位径D50は、精密粒度分布測定装置(ベックマン・コールター株式会社製「コールターカウンターマルチサイザー3」)を用いて測定した。100質量部のトナー母粒子と、外添剤としての1質量部の疎水性シリカ粒子(日本アエロジル株式会社製「AEROSIL(登録商標)RA−200H」)とを、FMミキサー(日本コークス工業株式会社製「FM−10B」)を用いて、回転数3500rpmで5分間混合した。その結果、トナー(多数のトナー粒子)が得られた。
【0142】
<3.現像剤の製造>
以下の方法で、トナーとキャリアとを混合して、実施例及び比較例に係る現像剤D1〜D29を製造した。
【0143】
(現像剤D2の製造)
実施例1に係る現像剤D2の製造では、第一キャリアとしてキャリアC2を使用した。第二キャリアとしてキャリアC5を使用した。8質量部のトナーと、90質量部の第一キャリアと、10質量部の第二キャリアとを、粉体混合機(愛知電機株式会社製「ロッキングミキサー(登録商標)」、混合方式:容器回転揺動方式)を用いて30分間混合した。その結果、現像剤D2が得られた。現像剤D2において、第一キャリアと第二キャリアとの合計質量(100質量部)に対する第一キャリアの含有率は、90質量%であった。現像剤D2において、第一キャリアと第二キャリアとの合計質量(100質量部)に対する第二キャリアの含有率は、10質量%であった。
【0144】
(現像剤D1及びD3〜D29の製造)
以下の点を変更した以外は、現像剤D2の製造と同様の方法で、現像剤D1及びD3〜D29の各々を製造した。第一キャリアを、現像剤D2の製造におけるキャリアC2から表4〜表10に示す種類のキャリアに変更した。第二キャリアを、現像剤D2の製造におけるキャリアC5から表4〜表10に示す種類のキャリアに変更した。第一キャリアと第二キャリアとの合計質量に対する第一キャリアの含有率を、現像剤D2の製造における90質量%から表4〜表10に示す含有率に変更した。第一キャリアと第二キャリアとの合計質量に対する第二キャリアの含有率を、現像剤D2の製造における10質量%から表4〜表10に示す含有率に変更した。なお、第一キャリアと第二キャリアとの合計添加量が100質量部になるように、第一キャリアの含有率及び第二キャリアの含有率を変更した。
【0145】
<4.評価方法>
現像剤D1〜D29の各々と評価機とを用いて、画像評価、帯電量評価及びキャリア汚染度の評価を行った。評価機として、カラー複合機(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製「TASKalfa5550ci」、像担持体:アモルファスシリコン感光体、現像方式:非磁性二成分乾式タッチダウン現像方式)を使用した。用紙として、カラー/モノクロ兼用紙(富士ゼロックス株式会社製「C2」)を使用した。現像剤をシアン用の現像装置に投入した。また、補充用のトナーをシアン用のトナーコンテナに投入した。画像形成を行った環境は、温度23℃且つ相対湿度50%RHであった。
【0146】
(初期の画像評価)
現像剤と評価機とを用いて、1枚の用紙に画像Iを形成した。画像Iは、印字率5%の画像部と、白紙画像部と、ソリッド画像部とを含んでいた。形成された画像Iのソリッド画像部の画像濃度(初期の画像濃度)を、反射濃度計(X−rite社製「RD914」)を用いて測定した。測定された初期の画像濃度(ID)を、表4〜表10に示す。1.30以上の画像濃度の画像が形成された現像剤を合格とした。1.30未満の画像濃度の画像が形成された現像剤を不合格とした。
【0147】
(初期の帯電量評価)
1枚の用紙に画像Iを形成した後の現像剤に含まれるトナーの帯電量(初期の帯電量)を、Q/mメーター(トレック社製「MODEL 210HS−1」)を用いて測定した。詳しくは、1枚の用紙に画像Iを形成した後に、現像装置から現像剤を取り出した。取り出された現像剤の0.10gを、測定装置の測定セルに投入した。投入された現像剤のうちのトナーのみを、篩を介して10秒間吸引した。吸引されたトナーの総電気量及び質量を、測定装置を用いて測定した。そして、式「吸引されたトナーの総電気量(μC)/吸引されたトナーの質量(g)」から、現像剤中のトナーの帯電量(μC/g)を算出した。算出されたトナーの初期の帯電量(μC/g)を表4〜表10に示す。
【0148】
(印字率5%の画像を1万枚印刷後の画像評価)
現像剤と評価機とを用いて、1万枚の用紙に画像Iを形成した。その後、評価機を12時間放置した。続いて、1枚の用紙に画像Iを形成した。形成された画像Iの白紙画像部の画像濃度を、反射濃度計(X−rite社製「RD914」)を用いて測定した。白紙部の画像濃度からベースペーパーの画像濃度を引いた値を、カブリ濃度とした。算出された1万枚印刷後のカブリ濃度(FD)を、表4〜表10に示す。0.006以下のカブリ濃度の画像が形成された現像剤を合格とした。0.006を超えるカブリ濃度の画像が形成された現像剤を不合格とした。
【0149】
(印字率5%の画像を1万枚印刷後の帯電量評価)
1万枚の用紙に画像Iを形成し、続けて評価機を12時間放置し、続けて1枚の用紙に画像Iを形成した後の現像剤に含まれるトナーの帯電量(1万枚印刷後の帯電量)を、初期の帯電量の測定と同様の方法で測定した。算出されたトナーの1万枚印刷後の帯電量(μC/g)を表4〜表10に示す。
【0150】
(キャリア汚染度の測定)
画像形成に使用していないキャリア(初期キャリア)のケイ素原子(Si)の蛍光X線強度を、蛍光X線分析装置(株式会社リガク製「RIX200」)を用いて測定した。測定条件を、電圧60kV及び電流30mAに設定した。測定された初期キャリアのケイ素原子の蛍光X線強度をI0とした。次に、1万枚の用紙に画像Iを形成し、続けて評価機を12時間放置し、続けて1枚の用紙に画像Iを形成した後の現像剤を、現像装置から取り出した。取り出された現像剤を篩にかけ、キャリアとトナーとを分離した。そして、篩上に残ったキャリア(1万枚印刷後のキャリア)を得た。1万枚印刷後のキャリアのケイ素原子(Si)の蛍光X線強度を、初期キャリアの測定と同様の方法で測定した。測定された1万枚印刷後のキャリアのケイ素原子の蛍光X線強度をIpとした。I0とIpとから、式「キャリア汚染度=Ip/I0」に従って、キャリア汚染度を算出した。算出されたキャリア汚染度を、表4〜表10に示す。キャリア汚染度が1.5以下である現像剤を合格とした。キャリア汚染度が1.5を超える現像剤を不合格とした。
【0151】
なお、初期キャリアのケイ素原子の蛍光X線強度I0は、コート層に含有される樹脂(メチルシリコーン等)のケイ素原子に由来する。また、キャリア汚染度が大きい程、キャリアの表面に付着している外添剤(例えばシリカ)が多いことを示す。
【0152】
【表4】
【0153】
【表5】
【0154】
【表6】
【0155】
【表7】
【0156】
【表8】
【0157】
【表9】
【0158】
【表10】
【0159】
表4〜表10に示すように、現像剤D2、D3、D6、D7、D10、D11、D12、D15、D16、D19、D20、D21、D24、D25、D28及びD29は、キャリア汚染度が低く、キャリア汚染が抑制されていた。また、これらの現像剤では初期の画像濃度が高かった。また、これらの現像剤は1万枚印刷後のカブリ濃度が低く、耐カブリ性が優れていた。また、これらの現像剤では、トナーの初期の帯電量及びトナーの1万枚印刷が30μC/g以上36μC/g以下であり、トナーの帯電量が安定していた。
【0160】
現像剤D1では、第一コート層の含有量が100質量部の第一キャリアコアに対して40質量部未満であった。そのため、表4に示すように、現像剤D1では、キャリア汚染度が高く、キャリア汚染が発生していた。現像剤D4では、第一コート層の含有量が100質量部の第一キャリアコアに対して60質量部を超えていた。そのため、表4に示すように、現像剤D4では、初期の画像濃度が低かった。
【0161】
現像剤D5では、第一キャリアコアの体積中位径が40μm未満であった。そのため、表5に示すように、現像剤D5では、トナーの帯電量が大きくなり、初期の画像濃度が低くなった。現像剤D8では、第一キャリアコアの体積中位径が60μmを超えていた。そのため、表5に示すように、現像剤D8では、カブリ濃度が高くカブリが発生していた。また現像剤D8では、キャリア汚染度が高く、キャリア汚染が発生していた。これは、第一キャリア粒子に付着した外添剤が、第二キャリア粒子によって掻き取られ難かったためと推測される。
【0162】
現像剤D9では、第二コート層の含有量が100質量部の第二キャリアコアに対して10質量部未満であった。そのため、表6に示すように、現像剤D9では、トナーの帯電量が大きくなり、初期の画像濃度が低くなった。現像剤D13では、第二コート層の含有量が100質量部の第二キャリアコアに対して30質量部を超えていた。そのため、表6に示すように、現像剤D13では、カブリ濃度が高くカブリが発生していた。また現像剤D13では、キャリア汚染度が高く、キャリア汚染が発生していた。これは、第一キャリア粒子に付着した外添剤が、第二キャリア粒子によって掻き取られ難かったためと推測される。
【0163】
現像剤D14では、第二キャリアコアの体積中位径は、20μm未満であった。現像剤D17では、第二キャリアコアの体積中位径が30μmを超えていた。そのため、表7に示すように、現像剤D14及びD17では、カブリ濃度が高くカブリが発生していた。また現像剤D14及びD17では、キャリア汚染度が高く、キャリア汚染が発生していた。現像剤D14及びD17では、第一キャリア粒子に付着した外添剤が、第二キャリア粒子によって掻き取られ難かったためと推測される。
【0164】
現像剤D18では、凸部における第二コート層の厚さと凹部における第二コート層の厚さとの差(表面高低差)が0.4μm未満であった。そのため、表8に示すように、現像剤D18では、カブリ濃度が高くカブリが発生していた。また現像剤D18では、キャリア汚染度が高く、キャリア汚染が発生していた。これは、第一キャリア粒子に付着した外添剤が、第二キャリア粒子によって掻き取られ難かったためと推測される。現像剤D22では、凸部における第二コート層の厚さと凹部における第二コート層の厚さとの差(表面高低差)が1.0μmを超えていた。そのため、表8に示すように、現像剤D22では、カブリ濃度が高くカブリが発生していた。これは、第二キャリア粒子の表面高低差が大きいために、第二キャリア粒子によって第一キャリア粒子の第一コート層が傷付けられ、第一キャリア粒子がトナーを所望の帯電量に帯電させる能力が低下したためと推測される。
【0165】
現像剤D23では、第一キャリアの含有率が第一キャリアと第二キャリアとの合計質量に対して85質量%未満であった。そのため、表9に示すように、現像剤D23では、初期の画像濃度が低かった。これは、第二キャリアの含有率が高いために、トナーの帯電量が大きくなったためと推測される。現像剤D26では、第一キャリアの含有率が第一キャリアと第二キャリアとの合計質量に対して95質量%を超えていた。現像剤D27では、第二キャリアが含有されていなかった。そのため、表9に示すように、現像剤D26及びD27では、カブリ濃度が高くカブリが発生していた。また現像剤D26及びD27では、キャリア汚染度が高く、キャリア汚染が発生していた。これは、第一キャリア粒子に付着した外添剤が、第二キャリア粒子によって掻き取られ難かった又は掻き取られなかったためと推測される。
【0166】
以上のことから、本発明に係るキャリア、現像剤、画像形成装置及び画像形成方法によれば、キャリア汚染を抑制し、画像濃度及び耐カブリ性を向上できることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0167】
本発明に係るキャリア及び現像剤は、例えば、電子写真法又は静電記録法を採用する画像形成装置により画像を形成するために利用できる。本発明に係る画像形成装置及び画像形成方法は、画像を形成するために利用できる。
【符号の説明】
【0168】
11 像担持体
14 現像部
20 第二キャリア粒子
21 第二キャリアコア
22 第二コート層
82 現像剤担持体
83 トナー担持体
100 画像形成装置
図1
図2
図3