(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
排気通路に配置されると共に排気ガス中の特定の成分を検出する排気センサと、吸気通路内又は燃焼室内に水を噴射する水噴射装置とを備えた内燃機関を制御する、内燃機関の制御装置であって、
前記排気センサは、電気化学セルが設けられた素子本体と、該素子本体の外面上に形成されると共に多孔質セラミックから構成された保護層と、前記素子本体及び前記保護層を加熱するヒータとを備え、
当該制御装置は、前記電気化学セルの目標温度を設定すると共に前記電気化学セルの温度が前記目標温度になるように前記ヒータを制御するヒータ制御部を備え、
前記ヒータ制御部は、前記内燃機関の始動から所定時間が経過した後、前記水噴射装置による水噴射が要求されていないときには前記目標温度を第一温度に設定し、前記内燃機関の運転状態が、前記水噴射装置によって噴射された水が前記燃焼室において混合気の燃焼を経ることなく前記排気通路に到達する水流出状態にあるときには、前記目標温度を第二温度に設定し、該第二温度は前記第一温度よりも高い、内燃機関の制御装置。
前記ヒータ制御部は、前記水噴射装置によって水が噴射されているときには、前記目標温度を前記第二温度に設定する、請求項1から4のいずれか1項に記載の内燃機関の制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明では、同様な構成要素には同一の参照番号を付す。
【0019】
<第一実施形態>
最初に
図1〜
図8を参照して、本発明の第一実施形態について説明する。
【0020】
<内燃機関全体の説明>
図1は、本発明の第一実施形態に係る内燃機関の制御装置が適用される内燃機関の概略図である。本実施形態では、内燃機関1は火花点火式内燃機関である。内燃機関1は例えば車両に搭載される。
【0021】
内燃機関1は、シリンダブロック2とシリンダヘッド4とを含む機関本体100を備える。シリンダブロック2の内部には、シリンダブロック2の内部で往復運動するピストン3が配置されている。燃焼室5がピストン3とシリンダヘッド4との間に形成されている。シリンダヘッド4には、吸気ポート7及び排気ポート9が形成されている。吸気ポート7及び排気ポート9は燃焼室5に接続されている。吸気弁6が、吸気ポート7の端部に配置され、吸気ポート7を開閉可能に形成されている。排気弁8が、排気ポート9の端部に配置され、排気ポート9を開閉可能に形成されている。また、内燃機関1は、吸気弁6の開弁時期及び閉弁時期を制御可能な可変バルブタイミング機構Bと、排気弁8の開弁時期及び閉弁時期を制御可能な可変バルブタイミング機構Cとを備える。
【0022】
内燃機関1は、燃焼室5に燃料を供給するための燃料噴射弁31と、燃焼室5において混合気を点火するための点火プラグ30とを備える。点火プラグ30はシリンダヘッド4に固定されている。燃料噴射弁31は、燃焼室5内に燃料を直接噴射するようにシリンダヘッド4の内壁面周辺部に配置されている。すなわち、内燃機関1は筒内噴射式内燃機関である。また、内燃機関1は、燃料として理論空燃比が14.6であるガソリンを用いる。しかしながら、内燃機関1では、他の燃料を用いてもよい。
【0023】
内燃機関1は、過給機であるターボチャージャ101を備える。ターボチャージャ101は、排気通路に配置されたタービン102と、吸気通路に配置されたコンプレッサ103と、タービン102とコンプレッサ103とを接続する軸とを含む。排気の流れによってタービン102が回転すると、コンプレッサ103も回転して吸入空気の圧力を高める。したがって、ターボチャージャ101は、排気ガスのエネルギーを用いて、吸入空気を圧縮して吸入空気量を増大させることができる。
【0024】
吸気ポート7は、それぞれ、対応する吸気枝管33を介してサージタンク34に連結されている。サージタンク34は、吸気管35を介してターボチャージャ101のコンプレッサ103の出口部に連結されている。サージタンク34とコンプレッサ103とを接続する吸気管35の内部には、スロットル弁駆動アクチュエータ37によって駆動されるスロットル弁38が配置されている。スロットル弁38は、スロットル弁駆動アクチュエータ37によって回動せしめられることで、吸気通路の開口面積を変更することができる。また、コンプレッサ103とスロットル弁38との間の吸気管35には、ターボチャージャ101によって圧縮された吸入空気を冷却する冷却器(インタークーラ)106が配置されている。
【0025】
コンプレッサ103の入口部は、吸気管35を介してエアクリーナ48に連結されている。エアクリーナ48とコンプレッサ103との間の吸気管35の内部には、吸入空気量を検出するエアフロメータ36が配置されている。吸気ポート7、吸気枝管33、サージタンク34、吸気管35等は、空気を燃焼室5に導く吸気通路を形成する。
【0026】
一方、各気筒の排気ポート9は、排気マニホルド39に連結されている。排気マニホルド39は、各排気ポート9に連結される複数の枝部と、これら枝部が集合した集合部とを有する。排気マニホルド39の集合部は及びターボチャージャ101のタービン102の入口部に連結されている。タービン102の出口部は排気管22を介してケーシング21に連結されている。ケーシング21は排気浄化触媒20を内蔵する。ケーシング21は排気管23に連結されている。排気ポート9、排気マニホルド39、排気管22、23等は、混合気の燃焼によって生じた排気ガスを燃焼室5から排出する排気通路を形成する。
【0027】
タービン102の上流の排気マニホルド39とタービン102の下流の排気管22との間には、タービン102をバイパスするバイパス通路104が配置されている。バイパス通路104には、バイパス通路104を開閉するバイパス弁であるウエストゲートバルブ105が配置されている。ウエストゲートバルブ105の開度を調整することによって、タービン102を通過する排気ガスの量を調整することができる。したがって、ウエストゲートバルブ105を制御することによって吸入空気の圧力(過給圧)を制御することができる。
【0028】
また、内燃機関1は、吸気通路内に水を噴射する水噴射装置25を更に備える。本実施形態では、水噴射装置25は、吸気通路内のサージタンク34に配置され、サージタンク34内に水を噴射する。なお、水噴射装置25は吸気通路の他の位置に配置されてもよい。
【0029】
内燃機関1は、デジタルコンピュータから成る電子制御ユニット(ECU)80を備える。ECU80は、双方向性バス81を介して相互に接続されたRAM(ランダムアクセスメモリ)83、ROM(リードオンリメモリ)82、CPU(マイクロプロセッサ)84、入力ポート85及び出力ポート86を含む。
【0030】
エアフロメータ36の出力信号は、対応するAD変換器87を介して入力ポート85に入力される。内燃機関1はアクセルペダル120を備え、アクセルペダル120には、負荷センサ107が接続されている。負荷センサ107は、アクセルペダル120の踏込量に比例した出力電圧を発生する。負荷センサ107の出力電圧は、対応するAD変換器87を介して入力ポート85に入力される。
【0031】
内燃機関1はクランク角センサ108を備える。クランク角センサ108は、クランクシャフトが例えば所定の角度回転する毎に出力パルスを発生し、この出力パルスは入力ポート85に入力される。CPU84ではこのクランク角センサ108の出力パルスから機関回転速度が計算される。また、クランク角センサ108の出力により、クランク角度を検出することができる。
【0032】
ECU80の出力ポート86は、対応する駆動回路88を介して点火プラグ30、燃料噴射弁31、スロットル弁駆動アクチュエータ37、ウエストゲートバルブ105、水噴射装置25及び可変バルブタイミング機構B、Cに接続されている。ECU80は、点火プラグ30の点火時期、燃料噴射弁31の燃料噴射時期及び燃料噴射量、スロットル弁38の開度、ウエストゲートバルブ105の開度、水噴射装置25の水噴射時期及び水噴射量、吸気弁6の開弁時期及び閉弁時期、並びに排気弁8の開弁時期及び閉弁時期を制御することができる。
【0033】
なお、気筒配列、吸排気系の構成及び過給機の有無のような内燃機関1の具体的な構成は、
図1に示した構成と異なっていてもよい。例えば、内燃機関はポート噴射式内燃機関であってもよい。この場合、燃料噴射弁31は、吸気ポート7内に燃料を噴射するように配置される。また、内燃機関1は圧縮着火式内燃機関(ディーゼルエンジン)であってもよい。
【0034】
<空燃比センサの説明>
本実施形態では、排気ガス中の特定の成分を検出する排気センサとして、内燃機関1の排気通路に空燃比センサ10が配置されている。空燃比センサ10は、排気ガス中の酸素濃度を検出することで、排気ガスの空燃比をリニアに検出する。
【0035】
本実施形態では、空燃比センサ10は排気通路において排気浄化触媒20の排気流れ方向上流側に配置されている。なお、空燃比センサ10は、排気通路の他の位置、例えば排気浄化触媒20の排気流れ方向下流側に配置されてもよい。
【0036】
以下、
図2及び
図3を参照して、空燃比センサ10の構成について説明する。
図2は、空燃比センサ10の拡大図である。
図2では、空燃比センサ10の先端側が断面図で示されている。空燃比センサ10は、先端部11が排気管22に挿入された状態で排気管22に固定される。空燃比センサ10は、その内部に、板状の形状を有するセンサ素子12を備えている。
【0037】
図3は、
図2のA−A線に沿った空燃比センサ10のセンサ素子12の断面図である。
図3に示されるように、空燃比センサ10のセンサ素子12は、センサセル51が設けられた素子本体50と、素子本体50の外面上に形成された保護層60とを備える。
【0038】
素子本体50は被測ガス室90及び基準ガス室91を備えている。空燃比センサ10が内燃機関1の排気通路に配置されたとき、被測ガス室90には、排気通路を流れる排気ガスが被測ガスとして導入される。基準ガス室91には基準ガスが導入される。基準ガスは例えば大気である。この場合、基準ガス室91は大気に開放されている。
【0039】
空燃比センサ10は、複数の層を積層して構成された積層型空燃比センサである。素子本体50は、固体電解質層40、拡散律速層16、第一不透過層13、第二不透過層14及び第三不透過層15を備える。固体電解質層40は、酸化物イオン伝導性を有する薄板体である。固体電解質層40は、例えば、ZrO
2(ジルコニア)、HfO
2、ThO
2、Bi
2O
3等にCaO、MgO、Y
2O
3、Yb
2O
3等を安定剤として添加した焼結体である。拡散律速層16は、ガス透過性を有する薄板体である。拡散律速層16は、例えば、アルミナ、マグネシア、けい石質、スピネル、ムライト等の多孔質セラミックから構成されている。不透過層13〜15は、ガス不透過性の薄板体であり、例えばアルミナを含む。
【0040】
素子本体50の各層は、
図3の下方から、第一不透過層13、第二不透過層14、固体電解質層40、拡散律速層16、第三不透過層15の順に積層されている。被測ガス室90は、固体電解質層40、拡散律速層16及び第三不透過層15によって区画形成されている。排気ガスは保護層60及び拡散律速層16を通って被測ガス室90内に導入される。拡散律速層16は被測ガスの拡散律速を行う。なお、被測ガス室90は、固体電解質層40に隣接し且つ被測ガスが導入されるように構成されていれば、如何なる態様で構成されてもよい。
【0041】
基準ガス室91は固体電解質層40及び第二不透過層14によって区画形成されている。なお、基準ガス室91は、固体電解質層40に隣接し且つ基準ガスが流入するように構成されていれば、如何なる態様で構成されてもよい。
【0042】
センサセル51は、固体電解質層40、第一電極41及び第二電極42を有する電気化学セルである。第一電極41は、被測ガス室90内の被測ガスに曝されるように固体電解質層40の被測ガス室90側の表面上に配置されている。一方、第二電極42は、基準ガス室91内の基準ガスに曝されるように固体電解質層40の基準ガス室91側の表面上に配置されている。第一電極41と第二電極42とは、固体電解質層40を挟んで互いに対向するように配置されている。第一電極41及び第二電極42は、白金(Pt)等の触媒活性の高い貴金属から構成されている。例えば、第一電極41及び第二電極42は、Ptを主成分として含む多孔質サーメット電極である。
【0043】
保護層60は、素子本体50の外面全体を覆うように、素子本体50の外面上に形成されている。保護層60は、ガス透過性を有し、アルミナ、チタニア、ジルコニア、炭化ケイ素、窒化ケイ素、酸化亜鉛等の多孔質セラミックから構成されている。
【0044】
センサ素子12はヒータ55を更に備える。本実施形態では、ヒータ55は、
図3に示されるように、第一不透過層13と第二不透過層14との間に配置される。ヒータ55は、例えば、白金(Pt)とセラミック(例えば、アルミナ等)とを含むサーメットの薄板体であり、通電によって発熱する発熱体である。ヒータ55は素子本体50及び保護層60を加熱する。
【0045】
センサセル51の第一電極41及び第二電極42には、電気回路70が接続されている。電気回路70は電源71及び電流検出器72を備える。電源71は、第二電極42の電位が第一電極41の電位よりも高くなるように電極間に電圧を印加する。ECU80の出力ポート86は、対応する駆動回路88を介して電源71に接続されている。したがって、ECU80は、電源71を制御して、センサセル51に印加される電圧を制御することができる。また、電流検出器72は、センサセル51に流れる電流をセンサセル51の出力として検出する。電流検出器72の出力は、対応するAD変換器87を介してECU80の入力ポート85に入力される。したがって、ECU80は、電流検出器72によって検出されたセンサセル51の出力を電流検出器72から取得することができる。
【0046】
空燃比センサ10は、センサセル51に所定の電圧を印加したときにセンサセル51に流れる限界電流を検出することによって排気ガスの空燃比を検出する。したがって、本実施形態における空燃比センサ10は、いわゆる限界電流式空燃比センサである。
【0047】
<ライデンフロスト現象>
ところで、排気管22の温度が水の露点温度以下である場合、排気ガス中の水蒸気が凝縮し、凝縮水が発生する。排気通路に凝縮水が存在していると、凝縮水の水滴が排気ガスと共に空燃比センサ10の保護層60に衝突する。保護層60が撥水性を有しない場合、保護層60に衝突した水滴は保護層60内に浸透する。ヒータ55による加熱によって保護層60の温度が高温である場合には、保護層60内に浸透した水滴は保護層60内で蒸発する。この結果、保護層60及び素子本体50に熱衝撃が加えられ、センサ素子12の素子割れが発生する場合がある。
【0048】
保護層60は、その温度が高温であるときに撥水性を有する。この特性は、ライデンフロスト現象を発生させることによって得られる。ライデンフロスト現象とは、水滴が高温の保護層に衝突したときに、保護層と水滴との間に蒸気膜が形成されることで保護層と水滴との間の熱伝導が抑制される現象である。ライデンフロスト現象が発生すると、水滴が保護層60からはじかれるため、保護層60内に水が浸透することが抑制される。
【0049】
ライデンフロスト現象が発生する温度は、一般的には、物体に衝突する液体の種類によって決定されると言われている。しかしながら、本願の発明者は、空燃比センサ10の保護層60のように熱容量が小さい物体では、ライデンフロスト現象が発生する温度が液体の量に応じて変化することを新たに見出した。
【0050】
図4は、保護層60に衝突する水滴の量と保護層60の温度とを変化させたときのライデンフロスト現象の発生の有無を示すグラフである。図中のバツ印は、ライデンフロスト現象が発生しなかったことを示す。一方、図中の丸印は、ライデンフロスト現象が発生したことを示す。
図4から分かるように、ライデンフロスト現象が発生する温度は水滴量に応じて変化している。具体的には、ライデンフロスト現象が発生する温度は、水滴量が多いほど高くなる。この理由は、熱容量が小さい保護層60では、蒸気膜の形成時に保護層60の温度が低下し、保護層60の温度の低下量が水滴量に比例するからであると考えられている。
【0051】
<内燃機関の制御装置の説明>
以下、本実施形態に係る内燃機関1の制御装置について説明する。
図5は、本発明の第一実施形態に係る内燃機関1の制御装置等の構成を概略的に示すブロック図である。内燃機関1の制御装置はヒータ制御部80aを備える。本実施形態では、ヒータ制御部80aはECU80の一部である。
【0052】
ヒータ制御部80aは、センサセル51の目標温度を設定し、センサセル51の温度が目標温度になるようにヒータ55を制御する。ヒータ制御部80aはヒータ制御回路56を介してヒータ55を制御する。具体的には、ヒータ制御部80aは、センサセル51の温度をセンサセル51のインピーダンスに基づいて算出し、算出した温度が目標温度になるように、ヒータ制御回路56を介してヒータ55に供給する電力をフィードバック制御する。なお、センサセル51のインピーダンスは、電源71からセンサセル51に高周波の電圧が印加されたときに電流検出器72によって検出されるセンサセル51の出力から算出される。
【0053】
ヒータ55によってセンサセル51が加熱されるとき、保護層60も同様にヒータ55によって加熱される。このため、保護層60の温度はセンサセル51の温度と相関する。したがって、上述したフィードバック制御によって、ヒータ制御部80aはセンサセル51の温度だけでなく保護層60の温度も制御することができる。
【0054】
ヒータ制御部80aは、内燃機関1の始動から所定時間が経過した後、以下のようにセンサセル51の目標温度を設定する。所定時間は、例えば、内燃機関1の始動後の暖機によって排気管22の温度が水の露点温度に達するのに要する時間である。
【0055】
本実施形態では、例えば、内燃機関1の機関負荷が所定値以上になったときに、水噴射装置25による水噴射が要求される。水噴射が要求されると、水噴射装置25によって吸気通路内に水が噴射される。言い換えれば、水噴射が要求されていないときには、水噴射装置25は水を噴射しない。このため、水噴射が要求されていないときには、水噴射装置25から噴射される水が空燃比センサ10の保護層60に衝突することはない。また、排気管22の温度が水の露点温度に達した後には、排気通路内に新たな凝縮水が生成されないため、保護層60に多量の水滴が衝突する可能性は小さい。
【0056】
このため、ヒータ制御部80aは、内燃機関1の始動から所定時間が経過した後、水噴射装置25による水噴射が要求されていないときにはセンサセル51の目標温度を第一温度に設定する。所定時間は、例えば、内燃機関1の始動後の暖機によって排気管22の温度が水の露点温度に達するのに要する時間である。排気管22の温度が水の沸点に達すると、排気管22内の凝縮水のほとんどが蒸発する。このため、所定時間は、内燃機関1の始動後の暖機によって排気管22の温度が水の沸点に達するのに要する時間であってもよい。
【0057】
第一温度は、センサセル51の作動温度であり、例えばセンサセル51の活性温度以上の600℃〜650℃である。このような制御によって、センサセル51の目標温度を過度に高く設定することによるヒータ55の消費電力の増加を抑制することができる。
【0058】
一方、水噴射装置25による水噴射が要求され、水噴射装置25から水が噴射されると、噴射された水が燃焼室5において混合気の燃焼を経ることなく排気通路に到達する場合がある。この場合、水噴射装置25から噴射された水の一部が空燃比センサ10の保護層60に衝突し、空燃比センサ10の素子割れが発生するおそれがある。
【0059】
図4に示されるように、保護層60に衝突する水滴の量が多い場合には、保護層60においてライデンフロスト現象を発生させるために保護層60の温度を高くする必要がある。このため、ヒータ制御部80aは、内燃機関1の始動から上記所定時間が経過した後、内燃機関1の運転状態が、水噴射装置25によって噴射された水が燃焼室5において混合気の燃焼を経ることなく排気通路に到達する水流出状態にあるときには、センサセル51の目標温度を第二温度に設定する。第二温度は、第一温度、すなわちセンサセル51の作動温度よりも高い温度であり、例えば750℃〜850℃である。このような制御によって、水噴射装置25から噴射された水による空燃比センサ10の素子割れを防止することができる。
【0060】
吸気弁6と排気弁8とのバルブオーバーラップが発生しているときに水噴射装置25から吸気通路内に水が噴射されると、噴射された水は燃焼室5において混合気の燃焼を経ることなく排気通路に到達する。このため、内燃機関1の運転状態が水流出状態にあるときとは、水噴射装置25によって水が噴射され且つバルブオーバーラップの量がゼロ以上の所定値よりも大きいときである。所定値は例えばゼロである。また、バルブオーバーラップの量が小さいときには、排気通路に到達する水の量が少ないため、被水による空燃比センサ10の素子割れが発生する可能性は低い。このため、所定値は、ゼロよりも大きな値にされてもよい。
【0061】
なお、吸気弁6と排気弁8とのバルブオーバーラップとは、吸気弁6の開弁期間と排気弁8の開弁期間とが部分的に重なっていることを意味する。可変バルブタイミング機構B及び可変バルブタイミング機構Cの少なくともいずれか一方によってバルブオーバーラップを発生させると共にバルブオーバーラップの量(すなわち、吸気弁6と排気弁8とが共に開弁されている期間)を変更することができる。具体的には、バルブオーバーラップの量は、可変バルブタイミング機構Bによって吸気弁6の開弁時期を変更すること及び可変バルブタイミング機構Cによって排気弁8の閉弁時期を変更することの少なくともいずれか一方によって変更される。
【0062】
図6は、排気弁8及び吸気弁6の開弁期間の例を概略的に示す図である。
図6(A)に示した例では、排気弁8の閉弁時期と吸気弁6の開弁時期とが排気上死点において一致しており、バルブオーバーラップが発生していない。
図6(B)に示した例では、排気弁8の開弁期間と吸気弁6の開弁期間とが重なっており、バルブオーバーラップが発生している。
【0063】
なお、ヒータ制御部80aは、内燃機関1の始動から上記所定時間が経過するまで、センサセル51の目標温度を第三温度に設定してもよい。第三温度は、第一温度、すなわちセンサセル51の作動温度よりも高い温度であり、例えば750℃〜850℃である。第三温度は第二温度と同じ温度であってもよい。このような制御によって、内燃機関1の始動直後に排気通路内で生成される凝縮水による空燃比センサ10の素子割れを防止することができる。
【0064】
<タイムチャートを用いた制御の説明>
以下、
図7のタイムチャートを参照して、内燃機関1の制御について具体的に説明する。
図7は、内燃機関1の始動後の機関負荷、内燃機関1の水温、バルブオーバーラップの有無、水噴射の要求の有無、水噴射量及びセンサセル51の目標温度の概略的なタイムチャートである。なお、内燃機関1の水温は、内燃機関1の冷却水路に配置された水温センサによって検出される。
【0065】
図示した例では、時刻t0において内燃機関1が始動される。内燃機関1が始動されると、センサセル51の目標温度が第三温度T3に設定される。第三温度T3は、センサセル51の作動温度よりも高い温度であり、この例では800℃である。
【0066】
内燃機関1の始動から所定時間が経過した時刻t1において、センサセル51の目標温度が第三温度T3から第一温度T1に切り替えられる。第一温度T1は、センサセル51の作動温度であり、この例では600℃である。なお、時刻t1において、水噴射装置25による水噴射は要求されていない。
【0067】
時刻t1の後、時刻t2において、水噴射装置25による水噴射が要求される。この結果、水噴射装置25による水噴射が開始され、水の噴射量が所定値まで増加する。時刻t2において、バルブオーバーラップはゼロに設定されている。このため、センサセル51の目標温度は第一温度T1に維持される。
【0068】
時刻t2の後、時刻t3において、バルブオーバーラップが発生せしめられる。このとき、水噴射の要求は保持されている。このため、噴射された水による空燃比センサ10の素子割れを防止すべく、時刻t3において、センサセル51の目標温度が第一温度T1から第二温度T2に切り替えられる。第二温度T2は、センサセル51の作動温度よりも高い温度であり、この例では800℃である。この例では、第二温度T2は第三温度T3と等しい。
【0069】
時刻t3の後、時刻t4において、水噴射の要求が停止される。この結果、水噴射装置25による水噴射が停止され、水の噴射量がゼロになる。このため、時刻t4にいて、センサセル51の目標温度が、第二温度T2から第一温度T1に切り替えられる。
【0070】
<目標温度設定処理>
以下、
図8のフローチャートを参照して、センサセル51の目標温度を設定するための制御について説明する。
図8は、本発明の第一実施形態における目標温度設定処理の制御ルーチンを示すフローチャートである。本制御ルーチンは、内燃機関1の始動後、ECU80によって所定の時間間隔で繰り返し実行される。
【0071】
最初に、ステップS101において、ヒータ制御部80aが、内燃機関1が始動してからの経過時間ETが所定時間Tref未満であるか否かを判定する。所定時間Trefは、例えば、内燃機関1の始動後の暖機によって排気管22の温度が水の露点温度に達するのに要する時間である。
【0072】
ステップS101において経過時間ETが所定時間Tref未満であると判定された場合、本制御ルーチンはステップS102に進む。ステップS102では、ヒータ制御部80aがセンサセル51の目標温度TTを第三温度T3に設定する。第三温度T3は、センサセル51の作動温度よりも高い温度であり、例えば750℃〜850℃である。ステップS102の後、本制御ルーチンは終了する。
【0073】
一方、ステップS101において経過時間ETが所定時間Tref以上であると判定された場合、本制御ルーチンはステップS103に進む。ステップS103では、ヒータ制御部80aが、水噴射装置25による水噴射が要求されているか否かを判定する。
【0074】
ステップS103において水噴射装置25による水噴射が要求されていないと判定された場合、本制御ルーチンはステップS104に進む。ステップS104では、ヒータ制御部80aが目標温度TTを第一温度T1に設定する。第一温度T1は、センサセル51の作動温度であり、例えば600℃〜650℃である。ステップS104の後、本制御ルーチンは終了する。
【0075】
一方、ステップS103において水噴射装置25による水噴射が要求されていると判定された場合、本制御ルーチンはステップS105に進む。ステップS105では、ヒータ制御部80aが、吸気弁6と排気弁8とのバルブオーバーラップの量VOAが所定値Arefよりも大きいか否かを判定する。所定値Arefは、ゼロ以上の値であり、例えばゼロである。バルブオーバーラップの量VOAは可変バルブタイミング機構B及び可変バルブタイミング機構Cの少なくともいずれか一方によって変更される。
【0076】
ステップS105においてバルブオーバーラップの量VOAが所定値Aref以下であると判定された場合、本制御ルーチンはステップS104に進む。ステップS104では、ヒータ制御部80aが目標温度TTを第一温度T1に設定する。ステップS104の後、本制御ルーチンは終了する。
【0077】
一方、ステップS105においてバルブオーバーラップの量VOAが所定値Arefよりも大きいと判定された場合、本制御ルーチンはステップS106に進む。ステップS106では、ヒータ制御部80aが目標温度TTを第二温度T2に設定する。第二温度T2は、第一温度T1よりも高い温度であり、例えば750℃〜850℃である。ステップS106の後、本制御ルーチンは終了する。
【0078】
ところで、保護層60の温度が低温である場合には、保護層60の温度が高温である場合に比べて、保護層60内で水が蒸発したときに保護層60及び素子本体50に加えられる熱衝撃は小さくなる。このため、ステップS102における第三温度T3は、保護層60の外面においてライデンフロスト現象が発生する最低温度未満の温度であってもよい。保護層60の外面においてライデンフロスト現象が発生する最低温度は例えば400℃であり、第三温度T3は例えば300℃に設定される。また、ヒータ制御部80aは、ステップS102において、ヒータ55をオフにしてもよい。このような制御によっても内燃機関1の始動直後に排気通路内で生成される凝縮水による空燃比センサ10の素子割れを防止することができる。
【0079】
<第二実施形態>
第二実施形態に係る内燃機関の制御装置の構成及び制御は、以下に説明する点を除いて、基本的に第一実施形態に係る内燃機関の制御装置の構成及び制御と同様である。このため、以下、本発明の第二実施形態について、第一実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0080】
図9は、本発明の第二実施形態に係る内燃機関の制御装置等の構成を概略的に示すブロック図である。内燃機関1の制御装置は水量推定部80bを更に備える。水量推定部80bは、水噴射装置25によって噴射され且つ燃焼室5において混合気の燃焼を経ることなく排気通路に到達する水の量(以下、「流出水量」とする)を推定する。本実施形態では、水量推定部80bはECU80の一部である。
【0081】
水量推定部80bは、例えば、水噴射装置25から単位時間当たり噴射される水の量に基づいて流出水量を推定する。この場合、水噴射装置25から単位時間当たり噴射される水の量が多いほど、水量推定部80bによって推定される流出水量が多くされる。また、水量推定部80bはバルブオーバーラップの量に基づいて流出水量を推定してもよい。この場合、バルブオーバーラップの量が大きいほど、水量推定部80bによって推定される流出水量が多くされる。
【0082】
また、水量推定部80bは、水噴射装置25から単位時間当たり噴射される水の量及びバルブオーバーラップの量に基づいて流出水量を推定してもよい。この場合、水量推定部80bは、例えば、
図10に示したようなマップを用いて流出水量を推定する。このマップでは、流出水量WAが水噴射装置25から単位時間当たり噴射される水の量JWA及びバルブオーバーラップの量VOAの関数として示される。
【0083】
流出水量が多いほど、保護層60に衝突する水滴の量は多くなる。
図4から分かるように、保護層60に衝突する水滴の量が多いほど、ライデンフロスト現象を発生させるために必要な保護層60の温度が高くなる。このため、第二実施形態では、ヒータ制御部80aは、内燃機関1の運転状態が水流出状態にあるときには目標温度を第二温度に設定し、水量推定部80bによって推定された流出水量が相対的に多い場合に、水量推定部80bによって推定された流出水量が相対的に少ない場合に比べて第二温度を高く設定する。言い換えれば、ヒータ制御部80aは、推定された流出水量が多くなるにつれてセンサセル51の目標温度を段階的に(ステップ状に)又はリニアに高くする。このような制御によって、第二実施形態では、より効果的に、ヒータ55の消費電力の増加を抑制しつつ、被水による空燃比センサ10の素子割れを防止することができる。
【0084】
<目標温度設定処理>
図11は、本発明の第二実施形態における目標温度設定処理の制御ルーチンを示すフローチャートである。本制御ルーチンは、内燃機関1の始動後、ECU80によって所定の時間間隔で繰り返し実行される。
図11におけるステップS201〜ステップS205は、
図8におけるステップS101〜ステップS105と同様であることから説明を省略する。
【0085】
本制御ルーチンは、ステップS205においてバルブオーバーラップの量VOAが所定値Arefよりも大きいと判定された場合、ステップS206に進む。ステップS206では、ヒータ制御部80aが、水量推定部80bによって推定された流出水量を水量推定部80bから所得する。
【0086】
次いで、ステップS207では、ヒータ制御部80aが、ステップS206において取得した流出水量に基づいて第二温度T2を算出する。ヒータ制御部80aは、流出水量が相対的に多い場合に、流出水量が相対的に少ない場合に比べて第二温度T2を高くする。例えば、ヒータ制御部80aは、
図12に示したようなマップを用いて第二温度T2を算出する。このマップでは、第二温度T2が流出水量WAの関数として示される。第二温度T2の下限値は第一温度T1よりも高い温度に設定される。なお、第二温度T2は、
図12に破線で示したように、流出水量WAが多くなるにつれて段階的(ステップ状)に高くされてもよい。
【0087】
次いで、ステップS208では、ヒータ制御部80aが、ステップS207において算出された第二温度T2に目標温度TTを設定する。ステップS208の後、本制御ルーチンは終了する。
【0088】
<第三実施形態>
第三実施形態に係る内燃機関の制御装置の構成及び制御は、以下に説明する点を除いて、基本的に第一実施形態に係る内燃機関の制御装置の構成及び制御と同様である。このため、以下、本発明の第三実施形態について、第一実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0089】
センサセル51の目標温度を第一温度から第二温度に切り替えてからセンサセル51の実際の温度が第二温度に達するまでには、或る程度の時間がかかる。このため、第一実施形態のように内燃機関1の運転状態が水流出状態にあるときにセンサセル51の目標温度を第二温度に設定したとしても、センサセル51の実際の温度が第二温度に達する前に、水噴射装置25から噴射された水が保護層60に衝突するおそれがある。
【0090】
このため、第三実施形態では、ヒータ制御部80aは、水噴射装置25によって水が噴射されているときには、センサセル51の目標温度を第二温度に設定する。このことによって、被水による空燃比センサ10の素子割れをより確実に防止することができる。
【0091】
<タイムチャートを用いた制御の説明>
以下、
図13のタイムチャートを参照して、第三実施形態における内燃機関1の制御について具体的に説明する。
図13は、内燃機関1の始動後の機関負荷、内燃機関1の水温、バルブオーバーラップの有無、水噴射の要求の有無、水噴射量及びセンサセル51の目標温度の概略的なタイムチャートである。
【0092】
図示した例では、時刻t0において内燃機関1が始動される。内燃機関1が始動されると、センサセル51の目標温度が第三温度T3に設定される。第三温度T3は、センサセル51の作動温度よりも高い温度であり、この例では800℃である。
【0093】
内燃機関1の始動から所定時間が経過した時刻t1において、センサセル51の目標温度が第三温度T3から第一温度T1に切り替えられる。第一温度T1は、センサセル51の作動温度であり、この例では600℃である。なお、時刻t1において、水噴射装置25による水噴射は要求されていない。
【0094】
時刻t1の後、時刻t2において、水噴射装置25による水噴射が要求される。この結果、水噴射装置25による水噴射が開始され、水の噴射量が所定値まで増加する。また、時刻t2において、センサセル51の目標温度が第一温度T1から第二温度T2に切り替えられる。第二温度T2は、センサセル51の作動温度よりも高い温度であり、この例では800℃である。なお、時刻t2において、バルブオーバーラップの量はゼロに設定されている。このため、内燃機関1の運転状態が水流出状態になる前に予めセンサセル51の温度を第二温度T2に上昇させることができる。
【0095】
時刻t2の後、時刻t3において、水噴射の要求が停止される。この結果、水噴射装置25による水の噴射が停止され、水の噴射量がゼロになる。このため、時刻t3にいて、センサセル51の目標温度が、第二温度T2から第一温度T1に切り替えられる。
【0096】
<目標温度設定処理>
図14は、本発明の第三実施形態における目標温度設定処理の制御ルーチンを示すフローチャートである。本制御ルーチンは、内燃機関1の始動後、ECU80によって所定の時間間隔で繰り返し実行される。
図14におけるステップS301及びステップS302は、
図8におけるステップS101及びステップS102と同様であることから説明を省略する。
【0097】
本制御ルーチンは、ステップS301において経過時間ETが所定時間Tref以上であると判定された場合、ステップS303に進む。ステップS303では、ヒータ制御部80aが、水噴射装置25から水が噴射されているか否かを判定する。
【0098】
ステップS303において、水噴射装置25から水が噴射されていないと判定された場合、本制御ルーチンはステップS304に進む。ステップS304では、ヒータ制御部80aが目標温度TTを第一温度T1に設定する。第一温度T1は、センサセル51の作動温度であり、例えば600℃〜650℃である。ステップS304の後、本制御ルーチンは終了する。
【0099】
一方、ステップS303において水噴射装置25から水が噴射されていると判定された場合、本制御ルーチンはステップS305に進む。ステップS305では、ヒータ制御部80aが目標温度TTを第二温度T2に設定する。第二温度T2は、第一温度T1よりも高い温度であり、例えば750℃〜850℃である。ステップS305の後、本制御ルーチンは終了する。
【0100】
<第四実施形態>
第四実施形態に係る内燃機関の制御装置の構成及び制御は、以下に説明する点を除いて、基本的に第一実施形態に係る内燃機関の制御装置の構成及び制御と同様である。このため、以下、本発明の第四実施形態について、第一実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0101】
図15は、本発明の第四実施形態に係る内燃機関の制御装置等の構成を概略的に示すブロック図である。内燃機関1の制御装置は水噴射装置制御部80cを更に備える。水噴射装置制御部80cは水噴射装置25を制御する。本実施形態では、水噴射装置制御部80cはECU80の一部である。
【0102】
水噴射装置25による水噴射が要求されたときに、バルブオーバーラップの量が所定値以上の値に設定されている場合がある。このため、第三実施形態のように水噴射装置25によって水が噴射されているときにセンサセル51の目標温度を第二温度に設定したとしても、センサセル51の実際の温度が第二温度に達する前に、水噴射装置25から噴射された水が保護層60に衝突するおそれがある。
【0103】
このため、第四実施形態では、ヒータ制御部80aは、水噴射装置25による水の噴射が要求されたときにセンサセル51の目標温度を第二温度に設定する。また、水噴射装置制御部80cは、センサセル51の推定温度が第二温度に達した後、水噴射装置25による水の噴射を開始する。このことによって、被水による空燃比センサ10の素子割れを最も確実に防止することができる。
【0104】
<タイムチャートを用いた制御の説明>
以下、
図16のタイムチャートを参照して、第四実施形態における内燃機関1の制御について具体的に説明する。
図16は、内燃機関1の始動後の機関負荷、内燃機関1の水温、バルブオーバーラップの有無、水噴射の要求の有無、水噴射量、センサセル51の温度及びセンサセル51の目標温度の概略的なタイムチャートである。なお、センサセル51の温度はセンサセル51のインピーダンスから算出される。
【0105】
図示した例では、時刻t0において内燃機関1が始動される。内燃機関1が始動されると、センサセル51の目標温度が第三温度T3に設定される。第三温度T3は、センサセル51の作動温度よりも高い温度であり、この例では800℃である。
【0106】
内燃機関1の始動から所定時間が経過した時刻t1において、センサセル51の目標温度が第三温度T3から第一温度T1に切り替えられる。第一温度T1は、センサセル51の作動温度であり、この例では600℃である。なお、時刻t1において、水噴射装置25による水噴射は要求されていない。
【0107】
時刻t1の後、時刻t2において、水噴射装置25による水の噴射が要求される。このため、時刻t2において、センサセル51の目標温度が第一温度T1から第二温度T2に切り替えられる。第二温度T2は、センサセル51の作動温度よりも高い温度であり、この例では800℃である。
【0108】
図示した例では、時刻t1と時刻t2との間にバルブオーバーラップが発生せしめられている。この場合、時刻t2において水噴射装置25による水噴射を開始すると、センサセル51の温度が第二温度T2に達する前に、噴射された水が保護層60に衝突するおそれがある。このため、時刻t3においてセンサセル51の温度が第二温度T2に達した後、水噴射装置25による水噴射を開始する。
【0109】
時刻t3の後、時刻t4において、水噴射の要求が停止される。この結果、水噴射装置25による水の噴射が停止され、水の噴射量がゼロになる。このため、時刻t4にいて、センサセル51の目標温度が、第二温度T2から第一温度T1に切り替えられる。
【0110】
<目標温度設定処理>
図17は、本発明の第四実施形態における目標温度設定処理の制御ルーチンを示すフローチャートである。本制御ルーチンは、内燃機関1の始動後、ECU80によって所定の時間間隔で繰り返し実行される。
図17におけるステップS401〜ステップS404は、
図8におけるステップS101〜ステップS104と同様であることから説明を省略する。
【0111】
本制御ルーチンは、ステップS403において水噴射装置25による水噴射が要求されていると判定された場合、ステップS405に進む。ステップS405では、ヒータ制御部80aが目標温度TTを第二温度T2に設定する。第二温度T2は、第一温度T1よりも高い温度であり、例えば750℃〜850℃である。ステップS405の後、本制御ルーチンは終了する。
【0112】
<水噴射処理>
以下、
図18のフローチャートを参照して、水噴射装置25による水噴射の制御について説明する。
図18は、本発明の第四実施形態における水噴射処理の制御ルーチンを示すフローチャートである。本制御ルーチンは、内燃機関1の始動後、ECU80によって所定の時間間隔で繰り返し実行される。
【0113】
最初に、ステップS501において、水噴射装置制御部80cが、水噴射装置25による水噴射が要求されているか否かを判定する。水噴射装置25による水噴射は、例えば、内燃機関1の機関負荷が所定値以上になったときに要求される。
【0114】
ステップS501において水噴射装置25による水噴射が要求されていないと判定された場合、本制御ルーチンはステップS502に進む。ステップS502では、水噴射装置制御部80cが水噴射装置25による水噴射を実行しない。ステップS502の後、本制御ルーチンは終了する。
【0115】
一方、ステップS501において水噴射装置25による水噴射が要求されていると判定された場合、本制御ルーチンはステップS503に進む。ステップS503では、水噴射装置制御部80cが、センサセル51の温度Tcellが第二温度T2以上であるか否かを判定する。センサセル51の温度Tcellは例えばセンサセル51のインピーダンスから算出される。第二温度T2は、
図17のステップS405において設定されるセンサセル51の目標温度である。
【0116】
ステップS503においてセンサセル51の温度Tcellが第二温度T2未満であると判定された場合、本制御ルーチンはステップS502に進む。この場合、
図17のステップS405においてセンサセル51の目標温度TTが第二温度T2に設定された後、センサセル51の温度Tcellがまだ第二温度T2に達していない。このため、ステップS502では、水噴射装置制御部80cが水噴射装置25による水噴射を実行しない。ステップS502の後、本制御ルーチンは終了する。
【0117】
一方、ステップS503においてセンサセル51の温度Tcellが第二温度T2以上であると判定された場合、本制御ルーチンはステップS504に進む。ステップS504では、水噴射装置制御部80cが水噴射装置25による水噴射を実行する。ステップS504の後、本制御ルーチンは終了する。
【0118】
<その他の態様>
以上、本発明に係る好適な実施形態を説明したが、本発明はこれら実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載内で様々な修正及び変更を施すことができる。
【0119】
例えば、水噴射装置25は、燃焼室5の温度を低下させるべく、燃焼室5内に水を噴射してもよい。この場合、水噴射装置25は例えばシリンダヘッド4に固定される。また、排気弁8の開弁中に水噴射装置25から燃焼室5内に水が噴射されると、噴射された水は燃焼室5において混合気の燃焼を経ることなく排気通路に到達する。このため、水噴射装置25が燃焼室5内に水を噴射する場合、内燃機関の運転状態が水流出状態にあるときとは、排気弁8の開弁中に水噴射装置25によって水が噴射されているときである。
【0120】
また、内燃機関が備える排気センサは、排気ガスの空燃比がリッチ又はリーンであることを検出する酸素センサであってもよい。また、排気センサは、排気ガス中の窒素酸化物(NOx)濃度を検出する窒素酸化物センサ(NOxセンサ)、排気ガス中の硫黄酸化物(SOx)濃度を検出する硫黄酸化物センサ(SOxセンサ)等であってもよい。
【0121】
また、排気センサの素子本体には、センサセルに加えて、他の電気化学セルが設けられていてもよい。他の電気化学セルは、例えば、被測ガス中の酸素を被測ガス室から排出するポンプセル、被測ガス中の特定の成分の濃度を検出するモニタセル等である。この場合、ヒータ制御部は、ポンプセル又はモニタセルの目標温度を設定すると共にポンプセル又はモニタセルの温度が目標温度になるようにヒータを制御してもよい。ポンプセル又はモニタセルの温度は例えばそのインピーダンスから算出される。