(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態による高圧ポンプを
図1〜
図4に示す。高圧ポンプ10は、例えばディーゼルエンジンやガソリンエンジンのインジェクタに燃料を供給する燃料ポンプである。
【0008】
図2に示すように、高圧ポンプ10は、ハウジング本体11、カバー12、プランジャ13、弁ボディ30、弁部材40、ストッパ50、第1スプリング21、ニードル60、第2スプリング22および電磁駆動部70などを備えている。
本実施形態の第1スプリング21が、特許請求の範囲に記載の「付勢部材」の一例に相当する。
ハウジング本体11およびカバー12は、特許請求の範囲の「ハウジング」を構成している。ハウジング本体11は、例えばマルテンサイト系のステンレスなどで形成されている。ハウジング本体11は、円筒状のシリンダ14を形成している。ハウジング本体11のシリンダ14には、プランジャ13が軸方向へ往復摺動可能に支持されている。
【0009】
ハウジング本体11は、導入通路111、吸入通路112、加圧室113および吐出通路114などを形成している。ハウジング本体11は、筒部15を形成している。筒部15は、内部に導入通路111と吸入通路112とを連通する通路151を有している。筒部15は、シリンダ14の中心軸と概ね垂直に形成されており、内径が途中で変化している。ハウジング本体11は、筒部15において内径が変化する部分に段差面152を形成している。筒部15に形成されている通路151には、弁ボディ30が設けられている。
【0010】
ハウジング本体11とカバー12との間には、燃料室16が形成されている。ハウジング本体11には、燃料室16に連通する図示しない燃料入口が形成されている。燃料室16には、当該燃料入口を通じて、図示しない低圧燃料ポンプによって燃料タンクから燃料が供給される。導入通路111は、燃料室16と筒部15の内周側に形成されている通路151とを連通している。吸入通路112は、一方の端部が加圧室113に連通している。吸入通路112の他方の端部は、段差面152の内周側に開口している。導入通路111と吸入通路112とは、弁ボディ30の内周側を経由して接続している。加圧室113は、吸入通路112とは反対側において吐出通路114と連通している。ここで、導入通路111、通路151および吸入通路112は、特許請求の範囲の「燃料通路」を構成している。本実施形態では、当該「燃料通路」を燃料通路100で示している。
【0011】
プランジャ13は、ハウジング本体11のシリンダ14に軸方向へ往復摺動可能に支持されている。加圧室113は、プランジャ13の往復移動方向の一端側に形成されている。プランジャ13の他端側に設けられたヘッド17は、スプリングストッパ18と結合している。スプリングストッパ18とハウジング本体11との間には、プランジャスプリング19が設けられている。スプリングストッパ18は、プランジャスプリング19の付勢力により、図示しないカムの方向へ付勢されている。プランジャ13は、図示しないタペットを介してカムと接することにより、往復駆動する。
【0012】
プランジャスプリング19は、一方の端部がハウジング本体11に接し、他方の端部がスプリングストッパ18に接している。プランジャスプリング19は、軸方向へ伸びる力を有している。これにより、プランジャスプリング19は、スプリングストッパ18を経由して図示しないタペットをカム側へ付勢する。プランジャ13のヘッド17側の外周面と、プランジャ13を収容するシリンダ14を形成しているハウジング本体11の内周面との間は、オイルシール23により液密にシールされている。オイルシール23は、エンジン内から加圧室113へのオイルの浸入を防止するとともに、加圧室113からエンジンへの燃料の流出を防止する。
【0013】
燃料出口91を形成する吐出弁部90は、ハウジング本体11の吐出通路114側に設けられている。吐出弁部90は、加圧室113において加圧された燃料の排出を断続する。吐出弁部90は、逆止弁92、規制部材93およびスプリング94を有している。逆止弁92は、底部921、および底部921から反加圧室113側へ筒状に延びる筒部922からなる有底筒状に形成され、吐出通路114において往復移動可能に設けられている。規制部材93は、筒状に形成され、吐出通路114を形成するハウジング本体11に固定されている。スプリング94は、一方の端部が規制部材93に接し、他方の端部が逆止弁92の筒部922に接している。逆止弁92は、スプリング94の付勢力により、ハウジング本体11が形成する弁座95側へ付勢されている。逆止弁92は、底部921側の端部が弁座95に着座することにより吐出通路114を閉塞し、弁座95から離座することにより吐出通路114を開放する。逆止弁92は、弁座95とは反対側へ移動したとき、筒部922の反底部921側端部が規制部材93と接することにより移動が規制される。
【0014】
加圧室113の燃料の圧力が上昇すると、加圧室113側の燃料から逆止弁92が受ける力は増大する。そして、加圧室113側の燃料から逆止弁92が受ける力がスプリング94の付勢力と弁座95の下流側の燃料、すなわち図示しないデリバリパイプ内の燃料から受ける力との和よりも大きくなると、逆止弁92は弁座95から離座する。これにより、加圧室113内の燃料は、吐出通路114、すなわち逆止弁92の筒部922に形成された通孔923、および筒部922の内側を経由して燃料出口91から高圧ポンプ10の外部へ吐出される。
【0015】
一方、加圧室113の燃料の圧力が低下すると、加圧室113側の燃料から逆止弁92が受ける力は減少する。そして、加圧室113側の燃料から逆止弁92が受ける力がスプリング94の付勢力と弁座95の下流側の燃料から受ける力との和よりも小さくなると、逆止弁92は弁座95に着座する。これにより、図示しないデリバリパイプ内の燃料は、加圧室113への流入が規制される。
【0016】
弁ボディ30は、
図3に示すように、ハウジング本体11に固定されている。弁ボディ30は、例えば圧入、および係止部材20などによりハウジング本体11の通路151の内側に固定されている。すなわち、弁ボディ30は、燃料通路100を構成する通路151の途中に設けられている。弁ボディ30は、底部31、および底部31から加圧室113側へ筒状に延びる筒部32からなる有底筒状に形成されている。
【0017】
弁ボディ30は、底部31の加圧室113側に、反加圧室113側へ凹む凹陥部33を有している。底部31の加圧室113側の壁面には、凹陥部33の外縁に弁座34が形成されている。すなわち、弁ボディ30は、加圧室113側壁面に弁座34を有している。弁座34は、弁ボディ30の軸に対し所定の角度をなすテーパ状に形成されている。
【0018】
弁ボディ30は、底部31の中央部に第1ガイド部35を有している。第1ガイド部35は、底部31の中央部から反凹陥部33側へ筒状に突出するように形成されている。弁ボディ30は、第1ガイド部35の凹陥部33を形成する壁面と反凹陥部33側の壁面とを接続する第1挿通孔351を有している。また、底部31の第1挿通孔351の外周側には、凹陥部33を形成する壁面と反凹陥部33側の壁面とを接続する第1通路121が形成されている。第1通路121は、弁ボディ30の軸に対し周方向に複数形成されている。
【0019】
弁部材40は、略円柱状の軸部41、および軸部41の加圧室113側端部に接続する略円盤状の傘部42とからなる。弁部材40は、軸部41が第1ガイド部35の第1挿通孔351に挿通され、弁ボディ30の内側において軸部41の軸方向へ往復移動可能に設けられている。傘部42の弁座34側の壁面は、弁座34の形状に対応し、軸部41の軸に対し所定の角度をなすテーパ状に形成されている。弁部材40は、往復移動することにより傘部42が弁座34に着座することで燃料通路100を流通する燃料流れを遮断し、または弁座34から離座することで燃料通路100を流通する燃料の流れを許容する。また、弁部材40は、傘部42が弁座34から離座しているとき、弁座34との間に環状の第2通路122を形成する。
【0020】
第1ガイド部35の第1挿通孔351の径は、弁部材40の軸部41の径とほぼ同一、または軸部41の径よりもわずかに大きく形成されている。これにより、弁部材40は、軸部41の外壁が、第1挿通孔351を形成する第1ガイド部35の壁面に摺動しながら、弁ボディ30の内側で往復移動する。そのため、弁部材40は、往復移動するとき、第1ガイド部35によって、その往復移動が案内される。
【0021】
軸部41は、軸方向の途中に、外周壁から径内方向へ向けて凹む小径部411を有している。これにより、軸部41と第1ガイド部35との接触面積は、軸部41が小径部411を有しない場合に比べて小さくなる。そのため、弁部材40が往復移動するとき、軸部41と第1ガイド部35との摺動による抵抗を低減することができる。それとともに、軸部41の摺動部を潤滑する役割も合わせ持つ。
【0022】
ストッパ50は、弁部材40の加圧室113側に設けられている。ストッパ50は、筒部51、筒部51の反弁部材40側の端部を塞ぐ底部52、および底部52の径外側に形成される環状の拡張部53からなる。ストッパ50は、弁ボディ30の筒部32の内周壁に拡張部53の外周壁が溶接されて弁ボディ30に固定されている。
【0023】
ストッパ50の拡張部53には、拡張部53の加圧室113側の壁面と反加圧室113側の壁面とを接続する第3通路123が形成されている。第3通路123は、ストッパ50の軸に対し周方向に複数形成されている。
第2通路122と第3通路123との間には、弁ボディ30の筒部32の内周壁とストッパ50の筒部51の外周壁とに囲まれた略環状の中間通路124が形成されている。
本実施形態の「略環状の中間通路124」は、特許請求の範囲に記載の「略環状の空間」の一例に相当する。
ストッパ50は、弁部材40の、加圧室113側すなわち開弁方向への移動を規制する。ストッパ50は、弁部材40がストッパ50に当接したとき、弁部材40と筒部51の内壁と底部52とに囲まれた容積室54を形成する。ストッパ50の筒部51には、容積室54と中間通路124とを連通する管路55が形成されている。
【0024】
上述した第1通路121、第2通路122、第3通路123および中間通路124は、それぞれハウジング本体11に形成された通路151に含まれている。すなわち、燃料通路100は、第1通路121、第2通路122、第3通路123および中間通路124を含んでいる。これにより、燃料が燃料室16側から加圧室113側へ向かうとき、燃料は、第1通路121、第2通路122、中間通路124および第3通路123を、この順で流通する。一方、燃料が加圧室113側から燃料室16側へ向かうとき、燃料は、第3通路123、中間通路124、第2通路122および第1通路121を、この順で流通する。
【0025】
図1に示すように、第1スプリング21は、容積室54に収容されている。第1スプリング21は、一方の端部が弁部材40の傘部42に形成された第1スプリング座46に当接し、他方の端部がストッパ50の底部52に形成された第2スプリング座56に当接している。第1、第2スプリング座46、56は、それぞれ第1スプリング21の両端部において径方向の移動を規制している。第1スプリング21は、軸方向に伸びる力を有し、弁部材40を、反ストッパ50側すなわち閉弁方向へ付勢している。
【0026】
弁部材40においてストッパ50側の端部には弁座34側へ凹む第1凹部47が設けられている。弁部材40は、第1凹部47の径外側にストッパ50側へ突出する筒状の突出部43を有している。突出部43のストッパ50側の端部と、ストッパ50の筒部51の弁部材40側の端部とは当接可能である。第1凹部47の外縁は、傘部42の外縁よりも径内側、且つ、ストッパ50の第2スプリング座56の外縁よりも径外側に設けられている。第1スプリング21は、第1スプリング座46と第2スプリング座56との間で圧縮され、収縮するとき、径方向へ歪むことがある。第2スプリング座56の外縁と、第1凹部47の外縁との距離は、第1スプリング21が径方向へ歪む大きさよりも大きく設定されている。このため、第1スプリング21が弁部材40のストッパ50側の端面と当接することが防止される。また、第1凹部47の外縁の位置を設定することで、弁部材40の突出部43とストッパ50の筒部51との当接する面積を設定し、弁部材40とストッパ50とのリンギングを抑制することができる。これにより、弁部材40を開弁方向へ付勢する第1プリング21の荷重を小さく設定することができる。
【0027】
突出部43のストッパ50側の端部の外径D1は、ストッパ50の筒部51の弁部材40側の端部の外径D2よりも小さい。このため、弁部材40がストッパ50に当接しているとき、ストッパ50は、調量行程にて加圧室113から排出され中間通路124を流れる燃料流の動圧が弁部材40にかかることを抑制する。
ストッパ50の筒部51の弁部材40側の端面と径外方向の外壁面との境界域には、例えば、片側0.2mmの面取り部58が形成されている。突出部43のストッパ50側の端部の外径D1は、ストッパ50の筒部51の弁部材40側の端部の外径D2よりも、例えば、0.4mm小さく形成されている。このように、外径D1を外径D2よりも僅かに小さく形成することで、ストッパ50と弁部材40とが当接するとき、ストッパ50の径外側の中間通路124を流れる燃料流に乱れが生じることを抑制できる。また、弁部材40が弁座34に着座するとき、弁部材40の傘部42は弁座34のD1−D3間に安定して着座するので、凹陥部33の径D3を小さくする必要はない。さらに、ストッパ50は、弁部材40に対して僅かに大きいので、中間通路124のD2−D4間の通路断面積の大きさも確保できる。
【0028】
図4に示すように、突出部43のストッパ50側の端面401と径外側の外壁面402との境界域には面取り部48が形成されている。この面取り部48の弁部材40の開弁方向および閉弁方向の長さはL1である。ここで、仮に、面取り部48の弁部材40の移動方向の長さを破線に示すL2のように大きく形成すると、第3通路123から中間通路124を流れる燃料流によって弁部材40にかかる動圧が大きくなる。本実施形態では、弁部材40の移動方向の長さL1をL2と比較して小さく形成することで、第3通路123から中間通路124を流れる燃料流によって弁部材40にかかる動圧を小さくしている。
なお、
図4において、一点鎖線mは、弁部材40およびストッパ50の中心軸を示している。
【0029】
図2、
図3に示すように、電磁駆動部70は、コイル71、固定コア72、可動コア73、フランジ75などを有している。コイル71は、樹脂製のスプール78に巻かれており、通電することにより磁界を発生する。固定コア72は、磁性材料から形成されている。固定コア72は、コイル71の内周側に収容されている。可動コア73は、磁性材料から形成されている。可動コア73は、固定コア72と対向して配置されている。可動コア73は、非磁性材料から形成されている筒部材79およびフランジ75の内周側に軸方向へ往復移動可能に収容されている。筒部材79は、固定コア72とフランジ75との間の磁気的な短絡を防止する。
【0030】
フランジ75は、磁性材料から形成され、ハウジング本体11の筒部15に取り付けられている。これにより、フランジ75は、電磁駆動部70をハウジング本体11に保持するとともに、筒部15の端部を塞いでいる。フランジ75は、中央部に、筒状に形成された第2ガイド部76を有している。第2ガイド部76は、フランジ75の弁ボディ30側と反弁ボディ30側とを連通する第2挿通孔761を有している。
【0031】
ニードル60は、略円柱状に形成され、フランジ75の第2ガイド部76に形成された第2挿通孔761に挿通されている。ニードル60は、第2挿通孔761の内側において軸方向へ往復移動可能に設けられている。第2挿通孔761の径は、ニードル60の径とほぼ同一、またはニードル60の径よりもわずかに大きく形成されている。これにより、ニードル60は、外壁が、第2挿通孔761を形成する第2ガイド部76の壁面に摺動しながら往復移動する。そのため、ニードル60は、往復移動するとき、第2ガイド部76によって、その往復移動が案内される。
【0032】
ニードル60は、外周壁の一部が面取りされることにより形成される略平面状の壁面61を有している。このように、ニードル60の外周壁の一部を面取りすることにより、ニードル60と第2ガイド部76との接触面積は小さくなる。これにより、ニードル60と第2ガイド部76との摺動による抵抗を低減することができる。
【0033】
ニードル60の壁面61と第2挿通孔761を形成する第2ガイド部76の内周壁との間には、隙間62が形成されている。そのため、フランジ75の弁ボディ30側の燃料は、隙間62を経由してフランジ75の反弁ボディ30側へ流通可能である。これにより、フランジ75の弁ボディ30側と反弁ボディ30側との圧力はほぼ同一となる。また、隙間62は、可動コア73まわりの部位に溜まったエアのエア抜き通路としても機能する。
【0034】
ニードル60は、一方の端部が可動コア73に圧入または溶接されることで可動コア73と一体に組み付けられている。また、ニードル60は、他方の端部に形成された端面63が、弁部材40の軸部41の反傘部42側端部に形成された端面45と当接可能である。なお、ニードル60は、弁部材40の開弁または閉弁時の移動方向と同一の方向へ移動可能である。
【0035】
固定コア72と可動コア73との間に、第2スプリング22が設けられている。第2スプリング22は、可動コア73を弁部材40側へ付勢している。第2スプリング22が可動コア73を付勢する力は、第1スプリング21が弁部材40を付勢する力よりも大きい。すなわち、第2スプリング22は、可動コア73およびニードル60を第1スプリング21の付勢力に抗して弁部材40側、すなわち弁部材40の開弁方向へ付勢している。これにより、コイル71に通電していないとき、固定コア72と可動コア73とは互いに離れている。そのため、コイル71に通電していないとき、可動コア73と一体のニードル60は第2スプリング22の付勢力により弁部材40側へ移動するとともに、弁部材40は弁ボディ30の弁座34から離座している。
【0036】
次に、上記構成の高圧ポンプ10の作動について説明する。
(1)吸入行程
プランジャ13が
図2の下方へ移動するとき、コイル71への通電は停止されている。このため、弁部材40は、可動コア73と一体のニードル60を経由して第2スプリング22の付勢力を受け、弁座34から離座する。また、プランジャ13が
図2の下方へ移動するとき、加圧室113の圧力は低下する。そのため、弁部材40が凹陥部33側の燃料から受ける力は、加圧室113側の燃料から受ける力よりも大きくなる。これにより、弁部材40には弁座34から離座する方向へ力が加わり、弁部材40は弁座34から離座する。弁部材40は、突出部43がストッパ50の筒部51に当接するまで移動する。弁部材40が開弁することにより、燃料室16は、導入通路111、通路151および吸入通路112を経由して加圧室113と連通する。したがって、燃料室16の燃料は、第1通路121、第2通路122、中間通路124および第3通路123をこの順で経由して加圧室113に吸入される。また、このとき、弁部材40は、ストッパ50と当接することにより、突出部43の加圧室113側の開口がストッパ50で塞がれている。このとき、中間通路124の燃料は、管路55を通じて容積室54へ流入可能である。そのため、容積室54の圧力は、中間通路124の圧力と同等になる。
【0037】
(2)調量行程
プランジャ13が下死点から上死点に向かって上昇するとき、加圧室113の燃料は排出され、その動圧を受けて、弁部材40には加圧室113側の燃料から弁座34に着座する方向へ力が加わる。しかし、コイル71に通電していないとき、ニードル60は、第2スプリング22の付勢力により弁部材40側へ付勢されている。そのため、弁部材40は、ニードル60によって弁座34側への移動が規制される。また、弁部材40の加圧室113側の端部は、ストッパ50の弁部材40側の端部によって完全に塞がれている。このため、加圧室113で加圧され、中間通路124を流れる燃料流の動圧が弁部材にかかることが非常に小さく軽減される。これにより、コイル71への通電が停止されている間、弁部材40は弁座34から離座した状態を維持する。この結果、プランジャ13の上昇によって加圧室113で排出された燃料は、燃料室16から加圧室113へ吸入される場合と逆に、第3通路123、中間通路124、第2通路122および第1通路121をこの順で経由して燃料室16へ戻される。
【0038】
調量行程の途中でコイル71へ通電すると、コイル71に発生した磁界により、固定コア72、フランジ75および可動コア73に磁気回路が形成される。これにより、互いに離間している固定コア72と可動コア73との間には磁気吸引力が発生する。固定コア72と可動コア73との間に発生する磁気吸引力が第2スプリング22と第1スプリング21の付勢力の差よりも大きくなると、可動コア73は固定コア72側へ移動する。そのため、可動コア73と一体のニードル60も、固定コア72側へ移動する。ニードル60が固定コア72側へ移動すると、弁部材40とニードル60とは離間し、弁部材40はニードル60から力を受けない。このとき、弁部材40には第1凹部47が設けられているので、弁部材40とストッパ50とのリンギングが抑制されている。その結果、弁部材40は、第1スプリング21の付勢力によってストッパ50から離間するとともに、加圧室113から排出された燃料の動圧を受けて、瞬時に弁座34側へ移動する。
【0039】
弁部材40が弁座34側へ移動し、弁部材40が弁座34に着座、すなわち閉弁することにより、第2通路122が閉塞され、燃料通路100を流通する燃料の流れが遮断される。これにより、加圧室113から燃料室16への燃料の調量行程は終了する。プランジャ13が上昇するとき、第2通路122を閉塞し、加圧室113と燃料室16との間の燃料流れを遮断することにより、加圧室113から燃料室16へ戻される燃料の量が調整される。
【0040】
(3)加圧行程
加圧室113と燃料室16との間が閉塞された状態でプランジャ13がさらに上死点に向けて上昇すると、加圧室113の燃料の圧力は上昇する。加圧室113の燃料の圧力が所定の圧力以上になると、吐出弁部90のスプリング94の付勢力と弁座95の下流側の燃料から逆止弁92が受ける力とに抗して、逆止弁92は弁座95から離座する。これにより、吐出弁部90が開弁し、加圧室113で加圧された燃料は吐出通路114を通り高圧ポンプ10から吐出される。高圧ポンプ10から吐出された燃料は、図示しないデリバリパイプに供給されて蓄圧され、インジェクタに供給される。このとき、ニードル60は、弁部材40から離れている。そのため、弁部材40が加圧室113側の燃料から力を受けても、その力はニードル60には伝わらない。
【0041】
プランジャ13が上死点まで移動すると、プランジャ13は再び
図2の下方へ移動する。これにより、加圧室113の燃料の圧力は低下する。そのため、弁部材40は再び弁座34から離れ、加圧室113には燃料室16から燃料が吸入される。
【0042】
なお、加圧室113の燃料の圧力が所定値まで上昇したとき、コイル71への通電は停止してもよい。加圧室113の燃料の圧力が上昇すると、弁部材40が弁座34から離座する方向へ受ける力よりも、加圧室113側の燃料によって弁座34へ着座する方向へ受ける力が大きくなる。そのため、コイル71への通電を停止しても、弁部材40は加圧室113側の燃料から受ける力によって弁座34への着座状態を維持する。このように、所定の時期にコイル71への通電を停止することにより、電磁駆動部70の消費電力を低減することができる。
上記の(1)から(3)の行程を繰り返すことにより、高圧ポンプ10は吸入した燃料を加圧して吐出する。燃料の吐出量は、電磁駆動部70のコイル71への通電タイミングを制御することにより調節される。
【0043】
本実施形態では、弁部材40の加圧室113側の端部の外径D1は、ストッパ50の弁部材40側の端部の外径D2より小さく形成されている。また、突出部43のストッパ50側の端部の径外側に形成される面取り部48は、弁部材40の開弁方向および閉弁方向の長さL1が比較的小さく形成されている。このため、調量行程において、加圧室113から排出され、中間通路124流れる燃料流の動圧が弁部材にかかることを抑制することができる。これにより、弁部材40が燃料流の動圧によって閉弁することが抑制され、弁部材40をニードル60を介して開弁方向に付勢する第2スプリング22の荷重を小さく設定することができる。この結果、第2スプリング22の付勢力に抗してニードル60を閉弁方向に吸引する電磁駆動部70の作動に必要な電流値を低減し、また、電磁駆動部70の体格を小型化することができる。さらに、第2スプリング22の荷重を小さく設定することで、弁部材40の傘部42と弁座34、および、弁部材40の突出部43とストッパ50との衝突する作動音を小さくすることができる。
【0044】
本実施形態では、弁部材40の突出部43の内側には、弁座34側に凹む第1凹部47が設けられている。弁部材40の突出部43のストッパ側の端部と、ストッパ50の弁部材40側の端部とが当接する面積を小さくすることで、弁部材40とストッパ50とのリンギングを抑制することができる。これにより、弁部材40を開弁方向に付勢する第1スプリング21の荷重を小さく設定することができる。
また、第1凹部47の外縁は、第2スプリング座56の外縁より径外側に位置している。このため、第1スプリング21が第1スプリング座46と第2スプリング座との間で収縮し、径方向へ歪んだとき、弁部材40の第1凹部47の内壁と第1スプリング21との接触を防止することができる。さらに、第1スプリング21の組付け時において、弁部材40の第1凹部47の内壁と第1スプリング21との接触が抑制され、第1スプリング21の摩耗、破損を防止することができる。
【0045】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態の高圧ポンプを
図5に示す。本実施形態では、ストッパ50の弁部材40側の端部に、弁部材40とは反対側に凹む第2凹部57が設けられている。第2凹部57の外縁は、ストッパ50の筒部51の外縁よりも径内側、且つ、弁部材40の第1スプリング座46の外縁よりも径外側に設けられている。第1スプリング座46の外縁と第2凹部57の外縁との距離は、第1スプリング21が収縮して径方向へ歪む距離よりも大きく設定されている。
【0046】
本実施形態の第1スプリング21が特許請求の範囲に記載の「付勢部材」の一例に相当する。
【0047】
このため、本実施形態では、第1スプリング21が第1スプリング座46と第2スプリング座56との間で収縮して径方向へ歪んだとき、ストッパ50の第2凹部57の内壁と第1スプリング21との接触を防止することができる。さらに、第1スプリング21の組付け時において、ストッパ50の第2凹部57の内壁と第1スプリング21との接触が抑制され、第1スプリング21の摩耗、破損を防止することができる。
さらに、第2凹部57の外縁の位置の設定により、弁部材40とストッパ50とが当接する面積を設定し、弁部材40とストッパ50とのリンギングを抑制することができる。この結果、弁部材40を閉弁方向へ付勢する第1スプリング21の荷重を小さくすることができる。これにより、第1スプリング21の付勢力に抗して弁部材40を開弁方向へ付勢する第2スプリング22の荷重を小さく設定することができる。この結果、第2スプリング22の付勢力に抗してニードル60を閉弁方向に吸引する電磁駆動部0の作動に必要な電流値を低減することができる。また、電磁駆動部70の体格を小型化することができる。さらに、弁部材40と弁座34、および、弁部材40とストッパ50との衝突する作動音を小さくすることができる。
【0048】
(他の実施形態)
上述の複数の実施形態では、電磁駆動部のコイル部に通電していないときに弁部材が開弁し、コイル部に通電したときに弁部材が閉弁する常開型の弁構造を示した。これに対し、本発明の他の実施形態では、コイル部に通電したとき弁部材が開弁する常閉型の弁構造としてもよい。
このように、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、上記第1、第2実施形態を組み合わせることに加え、その要旨を逸脱しない範囲で種々の実施形態に適用可能である。