特許第6443413号(P6443413)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6443413
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】車両の後部車体構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 21/15 20060101AFI20181217BHJP
   B62D 25/20 20060101ALI20181217BHJP
【FI】
   B62D21/15 C
   B62D25/20 K
【請求項の数】1
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-173450(P2016-173450)
(22)【出願日】2016年9月6日
(65)【公開番号】特開2018-39313(P2018-39313A)
(43)【公開日】2018年3月15日
【審査請求日】2017年3月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100083013
【弁理士】
【氏名又は名称】福岡 正明
(72)【発明者】
【氏名】嘉村 浩二
(72)【発明者】
【氏名】山田 健
【審査官】 中野 裕之
(56)【参考文献】
【文献】 実公平07−007265(JP,Y2)
【文献】 実開昭61−016976(JP,U)
【文献】 特開2010−241337(JP,A)
【文献】 特開2015−105024(JP,A)
【文献】 特開2004−148955(JP,A)
【文献】 実開昭59−176275(JP,U)
【文献】 実開昭56−113073(JP,U)
【文献】 特開2002−054672(JP,A)
【文献】 実開昭58−086941(JP,U)
【文献】 特開2015−068475(JP,A)
【文献】 特開平10−007032(JP,A)
【文献】 特開2005−178710(JP,A)
【文献】 特開2000−247256(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 17/00−25/08
B62D 25/14−29/04
B60R 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体後部において車体前後方向に延びる左右一対のリヤサイドフレームを備えた車両の後部車体構造であって、
前記リヤサイドフレームは、下面部と両側の側面部とを備えて断面コ字状に形成されると共に、前記両側の側面部に設けられた両側のフランジ部が前記左右一対のリヤサイドフレームに架設されたリヤフロアパネルの下面側に取り付けられて前記リヤフロアパネルと共に閉断面を構成し、
前記両側の側面部にそれぞれ前記リヤサイドフレームの内方側への変形を促進する第1変形促進部が設けられ、
前記下面部にのみ前記リヤサイドフレームの外方側への変形を促進する第2変形促進部が設けられ、
前記第1変形促進部と前記第2変形促進部とは、前記リヤサイドフレームの軸方向に互い違いに配置され、
前記第1変形促進部と前記第2変形促進部とはそれぞれ、前記リヤサイドフレームの軸方向に略一定間隔で配置され、
前記リヤサイドフレームの両側の側面部にそれぞれ設けられる前記第1変形促進部は、前記リヤサイドフレームの軸方向に同位置に配置され、
前記第1変形促進部は、前記リヤサイドフレームの側面部に沿って前記リヤサイドフレームの下面部側から反下面部側に向かって延びると共に前記リヤサイドフレームの内方側に窪む凹部によって構成され、
前記凹部は、前記リヤサイドフレームの側面部における下面部側から反下面部側に前記凹部の深さよりも長く形成されると共に前記リヤサイドフレームの側面部における下面部側から反下面部側に向かうにつれて先細り状に形成され、
前記第2変形促進部は、前記リヤサイドフレームの下面部に設けられた開口部によって構成され、
前記開口部は、前記リヤサイドフレームの軸方向において前記凹部が形成されていない前記リヤサイドフレームの軸方向に隣接する2つの前記凹部の略中間位置に設けられている
ことを特徴とする車両の後部車体構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の後部車体構造に関し、特にリヤサイドフレームを備えた車両の後部車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両では、車体後部において車幅方向に延びるリヤバンパレインと車体前後方向に延びるリヤサイドフレームとの間にクラッシュカンを介装させ、後面衝突(後突)時に車体後方から衝撃荷重が作用するときに、クラッシュカンを折り畳むように潰れ変形させてエネルギを吸収させるようにしたものが知られている。
【0003】
また、リヤサイドフレームを用いて後突時におけるエネルギ吸収性能を向上させるものが知られており、例えば特許文献1には、リヤサイドフレームにも適用し得る金属製中空柱状部材の稜線に稜線方向とのなす角度が20度〜70度の範囲となるように線分状の凹部を形成し、柱状部材の軸方向に衝撃荷重が作用するときに蛇腹状に座屈させてエネルギ吸収性能を向上させるものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−056997号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、自動車等の車両では、後突時における車室内の乗員の安全性を向上させるために、後突時におけるエネルギ吸収性能をさらに向上させることが求められており、後突時に車体後方から衝撃荷重が作用するときにエネルギ吸収量をさらに高めることが求められている。
【0006】
そこで、本発明は、リヤサイドフレームを備えた車両において、後突時におけるエネルギ吸収量を高めて車室内の乗員の安全性を向上させることができる車両の後部車体構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明は、次のように構成したことを特徴とする。
【0008】
まず、本願の請求項1に記載の発明は、車体後部において車体前後方向に延びる左右一対のリヤサイドフレームを備えた車両の後部車体構造であって、前記リヤサイドフレームは、下面部と両側の側面部とを備えて断面コ字状に形成されると共に、前記両側の側面部に設けられた両側のフランジ部が前記左右一対のリヤサイドフレームに架設されたリヤフロアパネルの下面側に取り付けられて前記リヤフロアパネルと共に閉断面を構成し、前記両側の側面部にそれぞれ前記リヤサイドフレームの内方側への変形を促進する第1変形促進部が設けられ、前記下面部にのみ前記リヤサイドフレームの外方側への変形を促進する第2変形促進部が設けられ、前記第1変形促進部と前記第2変形促進部とは、前記リヤサイドフレームの軸方向に互い違いに配置され、前記第1変形促進部と前記第2変形促進部とはそれぞれ、前記リヤサイドフレームの軸方向に略一定間隔で配置され、前記リヤサイドフレームの両側の側面部にそれぞれ設けられる前記第1変形促進部は、前記リヤサイドフレームの軸方向に同位置に配置され、前記第1変形促進部は、前記リヤサイドフレームの側面部に沿って前記リヤサイドフレームの下面部側から反下面部側に向かって延びると共に前記リヤサイドフレームの内方側に窪む凹部によって構成され、前記凹部は、前記リヤサイドフレームの側面部における下面部側から反下面部側に前記凹部の深さよりも長く形成されると共に前記リヤサイドフレームの側面部における下面部側から反下面部側に向かうにつれて先細り状に形成され、前記第2変形促進部は、前記リヤサイドフレームの下面部に設けられた開口部によって構成され、前記開口部は、前記リヤサイドフレームの軸方向において前記凹部が形成されていない前記リヤサイドフレームの軸方向に隣接する2つの前記凹部の略中間位置に設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本願の請求項1に記載の発明によれば、リヤサイドフレームは、下面部と両側の側面部とを備えて断面コ字状に形成されると共に、両側の側面部に設けられた両側のフランジ部がリヤフロアパネルの下面側に取り付けられてリヤフロアパネルと共に閉断面を構成し、両側の側面部にそれぞれリヤサイドフレームの内方側への変形を促進する第1変形促進部が設けられ、下面部にのみリヤサイドフレームの外方側への変形を促進する第2変形促進部が設けられ、第1変形促進部と第2変形促進部とは、リヤサイドフレームの軸方向に互い違いに配置される。
【0015】
これにより、リヤサイドフレームの内方側への変形を促進する第1変形促進部とリヤサイドフレームの外方側への変形を促進する第2変形促進部とがリヤサイドフレームの軸方向に交互に配置されるので、後突時にリヤサイドフレームを軸方向に順次蛇腹状に折り畳むように潰れ変形させることができ、後突時におけるエネルギ吸収量を高めて車室内の乗員の安全性を高めることができる。
【0016】
また、第1変形促進部と第2変形促進部とはそれぞれ、リヤサイドフレームの軸方向に略一定間隔で配置されることにより、リヤサイドフレームを軸方向に規則的に蛇腹状に潰れ変形させることができ、後突時におけるエネルギ吸収量をより有効に高めることができる。
【0017】
また、リヤサイドフレームの両側の側面部にそれぞれ設けられる第1変形促進部は、リヤサイドフレームの軸方向に同位置に配置されることにより、リヤサイドフレームの両側の側面部にそれぞれ設けられる第1変形促進部がリヤサイドフレームの軸方向に異なる位置に配置される場合に比して、リヤサイドフレームの内方側への変形をより有効に促進させることができ、前記効果をより有効に奏することができる。
【0018】
また、第1変形促進部は、リヤサイドフレームの側面部に沿ってリヤサイドフレームの下面部側から反下面部側に向かって延びると共にリヤサイドフレームの内方側に窪む凹部によって構成されることにより、リヤサイドフレームの側面部に設けられた凹部によってリヤサイドフレームの内方側への変形を促進させることができ、前記効果を有効に得ることができる。
【0019】
また、凹部は、リヤサイドフレームの側面部における下面部側から反下面部側に凹部の深さよりも長く形成されると共にリヤサイドフレームの側面部における下面部側から反下面部側に向かうにつれて先細り状に形成されることにより、凹部の下面部側を起点として凹部によってリヤサイドフレームの内方側への変形を安定して促進させることができ、前記効果を有効に得ることができる。
【0020】
また、第2変形促進部は、リヤサイドフレームの下面部に設けられた開口部によって構成され、開口部は、リヤサイドフレームの軸方向において凹部が形成されていないリヤサイドフレームの軸方向に隣接する2つの凹部の略中間位置に設けられることにより、リヤサイドフレームの下面部に設けられた開口部によってリヤサイドフレームの外方側への変形を促進させることができ、前記効果を有効に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施形態に係る車両の後部車体構造を適用した車体の底面図である。
図2】本発明の実施形態に係る車両の後部車体構造を適用した車体の側面図である。
図3図1に示す車体の要部を示す斜視図である。
図4図3におけるY4−Y4線に沿った車体の断面図である。
図5】リヤサイドフレームの下面図及び側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
【0023】
図1は、本発明の実施形態に係る車両の後部車体構造を適用した車体の底面図、図2は、本発明の実施形態に係る車両の後部車体構造を適用した車体の側面図、図3は、図1に示す車体の要部を示す斜視図、図4は、図3におけるY4−Y4線に沿った車体の断面図である。
【0024】
図1から図4に示すように、本発明の実施形態に係る車両の後部車体構造を適用した車体1は、車体後部に、車体前後方向に延びる左右一対のリヤサイドフレーム2と、左右一対のリヤサイドフレーム2に架設されたリヤフロアパネル3と、リヤフロアパネル3の下面側において車幅方向に延びると共に車体前後方向に離間して左右一対のリヤサイドフレーム2間にそれぞれ架設されたNo.4クロスメンバ4及びNo.5クロスメンバ5とが配設されている。
【0025】
No.4クロスメンバ4は、左右のリヤサイドフレーム2の車体前方側どうしを連結するように設けられている。No.5クロスメンバ5は、左右のリヤサイドフレーム2の車体前後方向中央側どうしを連結するように設けられ、リヤフロアパネル3に設けられた下方に窪むスペアタイヤ収納部3aの下面側に配置されている。
【0026】
リヤサイドフレーム2は、断面略コ字状に形成されてリヤフロアパネル3の下面側に取り付けられ、リヤフロアパネル3と協働して車体前後方向に延びる閉断面を構成している。No.4クロスメンバ4及びNo.5クロスメンバ5はそれぞれ、断面略ハット状に形成されてリヤフロアパネル3の下面側に取り付けられ、リヤフロアパネル3と協働して車幅方向に延びる閉断面を構成している。
【0027】
左右のリヤサイドフレーム2の後端部はそれぞれ、車体後部において車幅方向に延びるリヤバンパ(不図示)内に設けられたリヤバンパレイン6の両端部にそれぞれ装着されたクラッシュカン7に取り付けられ、クラッシュカン7は、後突時に車体後方から衝撃荷重が作用するときに折り畳むように潰れ変形してエネルギを吸収するようになっている。
【0028】
クラッシュカン7の前端部には車体前後方向と略直交する方向に延びる第1プレート部材8が溶接等によって固着され、リヤサイドフレーム2の後端部には車体前後方向と略直交する方向に延びる第2プレート部材9が溶接等によって固着されている。
【0029】
第1及び第2プレート部材8,9はそれぞれ、略矩形状に形成されると共にその周縁部に4つのボルト挿通穴が形成されている。第1及び第2プレート部材8,9は、ボルト挿通穴に挿通されるボルトとナットとを用いて締結され、これにより、クラッシュカン7とリヤサイドフレーム2とが結合され、リヤバンパレイン6とリヤサイドフレーム2との間にクラッシュカン7が介装されている。
【0030】
リヤサイドフレーム2の前端部は、車体後方側から車体前方側に向かうにつれて車幅方向外方側且つ車体下方側に傾斜するキックアップフレーム10の後端部に重ね合わせて接続され、キックアップフレーム10の前端部は、車体前後方向に延びるフロントフロアフレーム11の後端部に重ね合わせて接続されている。
【0031】
左右のキックアップフレーム10には、リヤフロアパネル3より車体前方側に設けられて車体後方側から車体前方側に向かうにつれて車体下方側に傾斜するセンタフロアパネル13が架設され、左右のフロントフロアフレーム11には、センタフロアパネル13より車体前方側に設けられたフロントフロアパネル14が架設されている。車体1では、フロントフロアパネル14上に車室が設けられている。
【0032】
キックアップフレーム10は、断面略ハット状に形成されてセンタフロアパネル13の下面側に結合されて取り付けられ、センタフロアパネル13と協働して車体前後方向に延びる閉断面を構成している。フロントフロアフレーム11は、断面略ハット状に形成されてフロントフロアパネル14の下面側に結合されて取り付けられ、フロントフロアパネル14と協働して車体前後方向に延びる閉断面を構成している。
【0033】
フロントフロアパネル14の下面側にはまた、車幅方向に延びる共に車体前後方向に離間して左右のフロントフロアフレーム11間にそれぞれ架設された複数のクロスメンバ15が取り付けられている。
【0034】
図1に示すように、No.4クロスメンバ4の車体前方側に左右のフロントフロアフレーム11間にNo.3クロスメンバ15が架設されている。No.3クロスメンバ15は、断面略ハット状に形成されてフロントフロアパネル14の下面側に取り付けられ、フロントフロアパネル14と協働して車幅方向に延びる閉断面を構成している。左右のフロントフロアフレーム11間に架設された他のクロスメンバについても、No.3クロスメンバ15と同様に形成されている。
【0035】
次に、本実施形態に係る車体1のリヤサイドフレーム2について説明する。
図3及び図4に示すように、リヤサイドフレーム2は、下面部2aと、下面部2aの両側において下面部2aから略直交する方向に延びる両側の側面部2bとを備えて断面略コ字状に形成されている。リヤサイドフレーム2はまた、両側の側面部2bにそれぞれリヤサイドフレーム2の外側に延びる両側のフランジ部2cが設けられ、両側のフランジ部2cがリヤフロアパネル3に取り付けられている。
【0036】
車体1では、リヤサイドフレーム2は、車体前方側に配置される前側フレーム20と、前側フレーム20の車体後方側に配置される後側フレーム30とによって車体前後方向に分割して構成され、前側フレーム20の後端部と後側フレーム30の前端部とが重ね合わせて接合されて形成されている。
【0037】
前側フレーム20と後側フレーム30とはそれぞれ、下面部21,31と、下面部21,31の両側において下面部21,31から略直交する方向に延びる両側の側面部22,32とを備えて断面略コ字状に形成されている。また、前側フレーム20と後側フレーム30とには、両側の側面部22,32にそれぞれリヤサイドフレーム2の外側に延びる両側のフランジ部23,33が設けられ、両側のフランジ部23,33がリヤフロアパネル3に取り付けられている。
【0038】
前側フレーム20の後端部と後側フレーム30の前端部とは、図4に示すように、前側フレーム20の後端部の内部に後側フレーム30の前端部が挿入された状態で重ね合わせられ、前側フレーム20の後端部と後側フレーム30の前端部との重ね合わせ部41が溶接等によって結合されて取り付けられている。
【0039】
また、後側フレーム30は、例えば後側フレーム30を板厚1.4mmの鋼板を用いてプレス成形すると共に前側フレーム20を板厚1.6mmの鋼板を用いてプレス成形するなど、前側フレーム20より板厚が薄い鋼板を用いて形成され、前側フレーム20より軸方向の圧縮に対する強度が低く設定されている。これにより、リヤサイドフレーム2では、重ね合わせ部41を除く後側フレーム30、重ね合わせ部41を除く前側フレーム20、重ね合わせ部41の順に軸方向の圧縮に対する強度が高く設定されている。
【0040】
本実施形態では、リヤサイドフレーム2には、図3に示すように、両側の側面部2bにそれぞれ、リヤサイドフレーム2の内方側への変形を促進する第1変形促進部としての凹部43が設けられ、凹部43は、リヤサイドフレーム2の側面部2bに沿ってリヤサイドフレーム2の軸方向に略直交する方向にリヤサイドフレーム2の下面部側から反下面部側に向かって延びると共にリヤサイドフレーム2の内方側に窪むように設けられている。
【0041】
図5は、リヤサイドフレームの下面図及び側面図であり、図5(a)及び図5(b)はそれぞれ、リヤサイドフレームの下面図及び側面図である。図5(a)に示すように、リヤサイドフレーム2の両側の側面部2bにそれぞれ設けられる凹部43は、リヤサイドフレーム2の軸方向に同位置に配置され、リヤサイドフレーム2の軸方向に略一定間隔で複数設けられている。
【0042】
凹部43は、図5(b)に示すように、リヤサイドフレーム2の側面部2bにおける下面部側から反下面部側である車体上方側に向かうにつれて先細り状に形成されている。凹部43は、断面略半円状に形成され、凹部43の深さ及び開口幅がリヤサイドフレーム2の下面部側から反下面部側に向かうにつれて小さく形成されている。なお、凹部43は、断面略矩形状などの他の形状に形成することも可能である。
【0043】
リヤサイドフレーム2にはまた、下面部2aに、リヤサイドフレーム2の外方側への変形を促進する第2変形促進部としての開口部45が設けられている。開口部45は、円形状に形成され、リヤサイドフレーム2の下面部2aにおける車幅方向中央側にリヤサイドフレーム2の軸方向に略一定間隔で複数設けられている。なお、開口部45は、長穴形状などの他の形状に形成することも可能である。
【0044】
図5(a)に示すように、凹部43と開口部45とは、リヤサイドフレーム2の軸方向に互い違いに配置され、リヤサイドフレーム2の軸方向においてリヤサイドフレーム2の側面部2bに設けられた隣接する2つの凹部43の略中間位置にリヤサイドフレーム2の下面部2aに設けられた開口部45が配置されている。
【0045】
車体1では、リヤサイドフレーム2は、前側フレーム20と後側フレーム30とによって分割して構成されており、凹部43は、前側フレーム20及び後側フレーム30の側面部22,32に設けられ、開口部45は、前側フレーム20及び後側フレーム30の下面部21,31に設けられている。
【0046】
前述したように、リヤサイドフレーム2間には、No.5クロスメンバ5が架設されており、No.5クロスメンバ5は、図3及び図4に示すように、リヤサイドフレーム2における前側フレーム20の後端部と後側フレーム30の前端部との重ね合わせ部41に接続されている。左右のリヤサイドフレーム2は同様に形成され、No.5クロスメンバ5は、一方のリヤサイドフレーム2の重ね合わせ部41と他方のリヤサイドフレーム2の重ね合わせ部41とに両端部がそれぞれ接続されている。
【0047】
No.5クロスメンバ5は、図3に示すように、下面部5aと、下面部5aの両側において下面部5aから略直交する方向に延びる両側の側面部5bと、両側の側面部5bからそれぞれ外側に延びる両側のフランジ部5cとを備えて断面略ハット状に形成され、両側のフランジ部5cがリヤフロアパネル3の下面側に取り付けられている。
【0048】
No.5クロスメンバ5はまた、軸方向の両端部にそれぞれ、下面部5aから軸方向に延びるフランジ部5dと、両側の側面部5bからそれぞれ略直交する方向に延びる外側に延びる両側のフランジ部5eとを備えている。
【0049】
No.5クロスメンバ5のフランジ部5dは、リヤサイドフレーム2の重ね合わせ部41においてリヤサイドフレーム2の下面部2aに溶接等によって結合されて取り付けられ、No.5クロスメンバ5の両側のフランジ部5eはそれぞれ、リヤサイドフレーム2の重ね合わせ部41においてリヤサイドフレーム2の車幅方向内方側の側面部2bに溶接等によって結合されて取り付けられている。
【0050】
このようにして構成される車体1に、車体後方から衝撃荷重が作用する場合、クラッシュカン7の潰れ変形後にリヤサイドフレーム2に荷重が入力されると、リヤサイドフレーム2は、No.5クロスメンバ5が接続された前側フレーム20と後側フレーム30との重ね合わせ部41が潰れ変形する前に、重ね合わせ部41を除く後側フレーム30と重ね合わせ部41を除く前側フレーム20とが順に潰れ変形してエネルギを吸収する。
【0051】
また、リヤサイドフレーム2が潰れ変形する際には、リヤサイドフレーム2の内方側への変形を促進する第1変形促進部としての凹部43とリヤサイドフレーム2の外方側への変形を促進する第2変形促進部としての開口部45とがリヤサイドフレーム2の軸方向に交互に配置されているので、後突時にリヤサイドフレーム2、特にリヤサイドフレーム2の側面部2bを軸方向に順次蛇腹状に折り畳むように潰れ変形させてエネルギを吸収する。
【0052】
本実施形態では、後側フレーム30は、前側フレーム20より板厚が薄い鋼板を用いて形成することで軸方向の圧縮に対する強度が低く設定されているが、例えば後側フレーム30を引張強度590MPa以上の590MPa級高張力鋼板を用いて形成すると共に前側フレーム20を引張強度780MPa以上の780MPa級高張力鋼板を用いてプレス成形するなど、軸方向の圧縮に対する強度と相関を有する引張強度の異なる鋼板を用い、前側フレーム20より引張強度が低い鋼板を用いて形成して前側フレーム20より軸方向の圧縮に対する強度を低く設定するようにしてもよく、また前側フレーム20より板厚が薄く引張強度が低い鋼板を用いて形成して前側フレーム20より軸方向の圧縮に対する強度を低く設定するようにしてもよい。
【0053】
また、本実施形態では、リヤサイドフレーム2が前側フレーム20と後側フレーム30とによって分割して構成されているが、リヤサイドフレーム2を1つのフレームによって構成することも可能である。かかる場合についても、リヤサイドフレーム2の両側の側面部2bにそれぞれリヤサイドフレーム2の内方側への変形を促進する第1変形促進部としての凹部43が設けられ、リヤサイドフレーム2の下面部2aにリヤサイドフレーム2の外方側への変形を促進する第2変形促進部としての開口部45が設けられ、第1変形促進部43と第2変形促進部45とは、リヤサイドフレーム2の軸方向に互い違いに配置される。
【0054】
このように、本実施形態に係る車両の後部車体構造では、リヤサイドフレーム2は、下面部2aと両側の側面部2bとを備え、両側の側面部2bにそれぞれリヤサイドフレーム2の内方側への変形を促進する第1変形促進部43が設けられ、下面部2aにリヤサイドフレーム2の外方側への変形を促進する第2変形促進部45が設けられ、第1変形促進部43と第2変形促進部45とは、リヤサイドフレーム2の軸方向に互い違いに配置される。
【0055】
これにより、リヤサイドフレーム2の内方側への変形を促進する第1変形促進部43とリヤサイドフレーム2の外方側への変形を促進する第2変形促進部45とがリヤサイドフレーム2の軸方向に交互に配置されるので、後突時にリヤサイドフレーム2、特にリヤサイドフレーム2の側面部2bを軸方向に順次蛇腹状に折り畳むように潰れ変形させることができ、後突時におけるエネルギ吸収量を高めて車室内の乗員の安全性を高めることができる。
【0056】
また、第1変形促進部43と第2変形促進部45とはそれぞれ、リヤサイドフレーム2の軸方向に略一定間隔で配置されることにより、リヤサイドフレーム2を軸方向に規則的に蛇腹状に潰れ変形させることができ、後突時におけるエネルギ吸収量をより有効に高めることができる。
【0057】
また、リヤサイドフレーム2の両側の側面部2bにそれぞれ設けられる第1変形促進部43は、リヤサイドフレーム2の軸方向に同位置に配置されることにより、リヤサイドフレーム2の両側の側面部2bにそれぞれ設けられる第1変形促進部43がリヤサイドフレーム2の軸方向に異なる位置に配置される場合に比して、リヤサイドフレーム2の内方側への変形をより有効に促進させることができる。
【0058】
また、第1変形促進部43は、リヤサイドフレーム2の側面部2bに沿ってリヤサイドフレーム2の下面部側から反下面部側に向かって延びると共にリヤサイドフレーム2の内方側に窪む凹部43によって構成され、凹部43は、リヤサイドフレーム2の側面部2bにおける下面部側から反下面部側に向かうにつれて先細り状に形成されることにより、凹部43の下面部側を起点として凹部43によってリヤサイドフレーム2の内方側への変形を安定して促進させることができる。
【0059】
本発明は、例示された実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計上の変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0060】
以上のように、本発明によれば、リヤサイドフレームを備えた車両の後部車体構造において、後突時におけるエネルギ吸収量を高めて車室内の乗員の安全性を向上させることが可能となるから、この種の車両の製造産業分野において好適に利用される可能性がある。
【符号の説明】
【0061】
1 車体
2 リヤサイドフレーム
2a リヤサイドフレームの下面部
2b リヤサイドフレームの側面部
43 凹部(第1変形促進部)
45 開口部(第2変形促進部)
図1
図2
図3
図4
図5