(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1及び第2のピッカーは、前記巾木部に形成された第1及び第2の孔部に前記第1及び第2の把持部を挿入して膨張させることで、前記巾木部を把持する、請求項1に記載の中子把持装置。
前記回転抑制部は、前記第1及び第2の把持部の各々と前記巾木部とが当接する部分を結ぶ直線と離間した位置において前記巾木部に当接し、前記中子の前記回転モーメントを抑制する力を前記巾木部に印加する当接部材を用いて構成されている、請求項1または2に記載の中子把持装置。
前記回転抑制部は、前記第1のピッカーの前記第1の把持部の形状を、前記第1の孔部に沿って伸びる形状とすることで構成されている、請求項2に記載の中子把持装置。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<実施の形態1>
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1は、実施の形態1にかかる中子把持装置を示す正面図である。
図1に示すように、中子把持装置1は、支持部10、ピッカー12_1、12_2、制御部15、及び配管16を備える。各々のピッカー12_1、12_2は、支持部10の下面から下方向(z軸マイナス方向)に伸びるように、支持部10に固定されている。支持部10およびピッカー12_1、12_2は、中子を把持して支持する必要があるため、ある程度の強度が必要である。例えば、支持部10およびピッカー12_1、12_2は、金属材料を用いて構成することができる。
【0022】
ピッカー12_1の先端には把持部14_1、14_2が設けられている。把持部14_1及び把持部14_2は、z軸方向において互いに直列に並ぶように設けられている。同様に、ピッカー12_2の先端には把持部14_3、14_4が設けられている。把持部14_3及び把持部14_4は、z軸方向において互いに直列に並ぶように設けられている。把持部14_1〜14_4は、気体や液体などの流体(以下では気体を用いた場合を例として説明する)を用いて膨張および収縮可能に構成されており、例えばゴムなどの弾性部材を用いて構成することができる。例えば、把持部14_1〜14_4はゴム風船を用いて構成することができる。各々の把持部14_1〜14_4には配管16を介して気体(圧縮ガス)が供給される。なお、支持部10、及びピッカー12_1、12_2を通過する配管は破線で示している。
【0023】
制御部15は、各々のピッカー12_1、12_2が備える把持部14_1〜14_4の膨張および収縮を制御する。例えば、制御部15は、制御部15に供給された圧縮ガス(1次側)を配管16に供給する場合と、配管16と排気口(ベント)とを接続する場合とを切り替える電磁弁(不図示)を備えており、この電磁弁を切り替えることで各々のピッカー12_1、12_2が備える把持部14_1〜14_4の膨張および収縮を制御する。
【0024】
具体的には、制御部15は、制御部15に供給された圧縮ガス(1次側)を配管16に供給することで、把持部14_1〜14_4を膨張させることができる。また、制御部15は、配管16を排気口(ベント)に接続することで、把持部14_1〜14_4を収縮させることができる。なお、各々の把持部14_1〜14_4は同じタイミングで膨張・収縮するように構成されていてもよく、また各々独立したタイミングで膨張・収縮するように構成されていてもよい。
【0025】
例えば、各々の把持部14_1〜14_4が同じタイミングで膨張・収縮するように構成する場合は、各々の把持部14_1〜14_4に接続される配管16を同一系統とする。一方、各々の把持部14_1〜14_4が独立したタイミングで膨張・収縮するように構成する場合は、各々の把持部14_1〜14_4に接続される配管16を各々別系統とする。また、ピッカー12_1の把持部14_1、14_2の配管を同一系統とし、ピッカー12_2の把持部14_3、14_4の配管を同一系統としてもよい。
【0026】
図2は、中子の一例を示す斜視図である。
図2に示すように、中子20は、中子本体部21および巾木部22を有する。中子本体部21には、鋳物に中空部を形成するための型24_1〜24_4が形成されている。各々の型24_1〜24_4は同一形状を有しており、各々の鋳物の金型に各々の型24_1〜24_4を納めて鋳造することで、鋳物に各々の型24_1〜24_4に対応する中空部を形成することができる。
【0027】
巾木部22は、中子20を金型に納めた際に中子20が安定するように設けた部分であり、中子本体部21の片側端部を延長して形成している。例えば、中子20を金型に納めた際、巾木部22が金型で支持される。また、巾木部22には、中子20を把持するための孔部25、26が形成されている。孔部25、26はz軸方向に伸びるように形成されている。例えば、中子20は砂を用いて形成されている。
【0028】
図3、
図4はそれぞれ、中子把持装置1が中子20を把持している状態を示す断面図及び側面図である。なお、
図3の中子20の断面図は、
図2に示す中子20を孔部25、26を通るxz平面で切断した断面を示している。中子把持装置1を用いて中子20を把持する際は、各々のピッカー12_1、12_2が備える把持部14_1〜14_4を各々膨張させて、把持部14_1〜14_4を巾木部22に当接させて巾木部22を把持する。
【0029】
具体的には、中子把持装置1を用いて中子20を把持する際、中子把持装置1の支持部10を移動手段(不図示)を用いて下方向(z軸マイナス方向)に移動させる。これにより、ピッカー12_1、12_2が降下して、中子20の巾木部22に形成されている孔部25、26の内部にピッカー12_1の把持部14_1、14_2、及びピッカー12_1の把持部14_3、14_4がそれぞれ挿入される。その後、把持部14_1〜14_4を膨張させることで、膨張した把持部14_1〜14_4が孔部25、26の内壁と当接して中子20が把持される。
図3、
図4はこのような状態で、中子把持装置1が中子20を把持している状態を示している。
【0030】
図3、
図4に示すように、本実施の形態にかかる中子把持装置1では、z軸方向において互いに直列に並ぶように設けられた把持部14_1、14_2を孔部25に挿入して中子20の巾木部22を把持している。同様に、z軸方向において互いに直列に並ぶように設けられた把持部14_3、14_4を孔部26に挿入して中子20の巾木部22を把持している。よって、中子20に働く回転モーメントによって中子20が傾くことを抑制することができる。
【0031】
図5、
図6はそれぞれ、比較例にかかる中子把持装置201が中子20を把持している状態を示す断面図及び側面図である。
図5、
図6に示すように、比較例にかかる中子把持装置201では、ピッカー212_1が1つの把持部214_1を備え、ピッカー212_2が1つの把持部214_2を備えている。中子把持装置201を用いて中子20を把持する際は、各々のピッカー212_1、212_2が備える把持部214_1、214_2を巾木部22の孔部25、26に挿入する。そして、把持部214_1、214_2を各々膨張させて把持部214_1、214_2を巾木部22の孔部25、26の内壁に当接させて巾木部22を把持する。
【0032】
図5、
図6に示す比較例にかかる中子把持装置201では、各々の把持部214_1、214_2が直線218上に並んでいる。換言すると、把持部214_1、214_2の各々と巾木部22とが当接する部分が直線218上に並んでいる。例えば、把持部214_1、214_2の各々は巾木部22と面接触しており、直線218はこの面接触している部分を通過する。
【0033】
また、
図6に示すように、巾木部22は、中子本体部21の片側端部に形成されている。このため、比較例にかかる中子把持装置201が巾木部22を把持すると、中子20の重心位置Gと中子把持装置201の把持位置(把持部214_1、214_2に対応)との距離D1が長くなり、中子20には直線218(
図6では軸で示している)を中心軸とした回転モーメントMが働く。このような回転モーメントMが中子20に働くと、中子を把持した際に中子20が傾くという問題があった。
【0034】
そこで本実施の形態にかかる中子把持装置1では、ピッカー12_1、12_2を用いて巾木部22を把持する際に、中子20が回転することを抑制する回転抑制部を設けている。
図3、
図4に示した本実施の形態にかかる中子把持装置1では、回転抑制部は、z軸方向において互いに直列に並ぶように設けられた把持部14_1及び把持部14_2、並びにz軸方向において互いに直列に並ぶように設けられた把持部14_3及び把持部14_4を用いて構成している。つまり、把持部14_1〜14_4が把持機能と回転抑止機能(回転抑止部)とを併せ持つ。
【0035】
すなわち、
図4に示すように、z軸方向において把持部14_3、14_4を互いに直列に並べて配置することで、把持部14_3から巾木部22に、中子20の回転モーメントMを抑制する力F1を印加することができる。また、把持部14_4から巾木部22に、中子20の回転モーメントMを抑制する力F2を印加することができる。把持部14_1、14_2についても同様に、中子20の回転モーメントMを抑制する力を巾木部22に印加することができる。したがって、本実施の形態にかかる中子把持装置1では、中子20に働く回転モーメントMによって中子20が傾くことを抑制することができる。
例えば、把持部14_1、14_3に注目すると、把持部14_1、14_3を結ぶ直線18_1を軸とした回転モーメントMが発生する。これに対して、把持部14_2、14_4が回転モーメントMを抑制する力F2(
図4参照)を巾木部22に印加している。また、把持部14_2、14_4に注目すると、把持部14_2、14_4を結ぶ直線18_2を軸とした回転モーメントMが発生する。これに対して、把持部14_1、14_3が回転モーメントMを抑制する力F1(
図4参照)を巾木部22に印加している。
また、本実施の形態では、ピッカー12_1に把持部14_1、14_2をそれぞれ直列に設け、ピッカー12_2に把持部14_3、14_4をそれぞれ直列に設けているので、ピッカーの数を増加させることなく、回転抑止部(把持部)を設けることができる。
【0036】
図7は、本実施の形態にかかる中子把持装置が中子を把持している状態の他の例を示す断面図である。本実施の形態では、ピッカー12_1およびピッカー12_2のうちのいずれか一方のみに2つの把持部を設けた構成としてもよい。例えば、
図7に示すように、ピッカー12_1に2つの把持部14_1、14_2を設け、ピッカー12_1に1つの把持部14_3を設けた構成としてもよい。この場合は、孔部25の内部において把持部14_2が巾木部22に当接することで、
図4と同様に、直線18_1を軸とした中子20の回転モーメントMを抑制する力F2を与えることができる。
図7に示す構成では、把持部14_2が回転抑制部として機能する。
【0037】
なお、
図3では、ピッカー12_1およびピッカー12_2の先端に2つの把持部をそれぞれ直列に並べた構成を示し、
図7では、ピッカー12_1の先端に2つの把持部をそれぞれ直列に並べた構成を示した。しかし本実施の形態では、ピッカーの先端に設ける把持部の数は2つに限定されることはなく、3つ以上としてもよい。
【0038】
図8は、本実施の形態にかかる中子把持装置が中子を把持している状態の他の例を示す断面図である。本実施の形態では、ピッカー32_1、32_2に設ける把持部34_1、34_2の形状をそれぞれ、孔部25、26に沿って伸びる形状としてもよい。つまり、把持部34_1、34_2の形状を孔部25、26に沿って伸びる形状とすることで、膨張した把持部34_1、34_2の側壁を孔部25、26の内壁に面で当接させることができる。よって、中子20に働く回転モーメントによって中子20が傾くことを抑制することができる。
図8に示す構成では、把持部34_1、34_2が把持機能と回転抑止機能(回転抑制部)とを併せ持つ。
例えば、把持部34_1、34_2それぞれの上端を結ぶ直線18_1を軸とした回転モーメントMに対しては、把持部34_1、34_2それぞれの上端から下の部分は、回転モーメントMを抑制する力を、
図4でいう力F2と同様の向きに印加することができる。
図8に示す場合は、把持部34_1、34_2の形状をそれぞれ、孔部25、26に沿って伸びる形状としているので、ピッカーの数を増加させることなく、回転モーメントMを抑制する力を巾木部22に印加することができる。
【0039】
なお、
図8では、2つの把持部34_1、34_2の形状を、孔部25、26に沿って伸びる形状とした場合を示した。しかし、本実施の形態では、ピッカー32_1およびピッカー32_2の一方の把持部の形状を孔部に沿って伸びる形状とし、他方の把持部の形状を
図7の把持部14_3のような略球形状としてもよい。
【0040】
また、本実施の形態にかかる中子把持装置では、
図3等で説明したように、各々のピッカー12_1、12_2の先端に膨張および収縮可能な把持部14_1〜14_4を設け、これらの把持部14_1〜14_4を膨張させることで中子20を把持している。ここで、中子20は砂を固めて形成しているため大きい力が印加されると破損するという問題があるが、本実施の形態にかかる中子把持装置1のように、膨張および収縮可能な把持部14_1〜14_4を用いて中子20を把持することで、中子20が破損することを抑制することができる。
【0041】
すなわち、膨張および収縮可能な把持部14_1〜14_4を用いて中子20を把持することで、中子20に対して把持部14_1〜14_4を面接触させることができるので、中子20の特定の箇所に印加される圧力(面圧)を低減させることができる。よって、中子20が破損することを抑制することができる。また、把持部14_1〜14_4を膨張させる際の圧力を調整することで、中子20と把持部14_1〜14_4との接触面積を調整することができ、中子把持装置のロバスト性を向上させることができる。
【0042】
また、例えば、中子を製造する際の寸法公差は±0.1〜0.2mm程度である。これに対して把持部14_1〜14_4にゴム風船を用いた場合はゴム風船が1mm以上膨張する。このため、中子を製造する際の寸法公差を把持部14_1〜14_4の膨張で吸収することができる。つまり、
図9に示すように、中子20の孔部25の中心位置29が所定の位置19(把持部14_1の中心に対応)からΔx(±0.1〜0.2mm程度)ずれていた場合でも、把持部14_1が膨張した際に、把持部14_1が中子20の孔部25の側壁に接触して確実に中子20を把持することができる。なお、
図9の把持部14_1は膨張している途中の状態を示している。
【0043】
また、把持部14_1〜14_4を構成しているゴムが柔らかすぎると、ゴムに中子の砂が付着して次に中子を把持する際に砂をこぼすという問題がある。また、中子を持ち上げた際に中子の重量に引かれて把持部14_1〜14_4がz軸方向に伸びるという問題がある。逆に、把持部14_1〜14_4を構成しているゴムが硬すぎると、中子に対しての面圧が高くなり中子を破損させる恐れがある。よって、把持部14_1〜14_4を構成する際のゴムの硬さはこれらの点を考慮して、適度な硬さとすることが好ましい。
【0044】
<実施の形態2>
次に、本発明の実施の形態2について説明する。
図10、
図11はそれぞれ、実施の形態2にかかる中子把持装置が中子を把持している状態を示す断面図および側面図である。なお、実施の形態2にかかる中子把持装置では、当接部材43を用いて回転抑制部を構成している点、つまり、中子20の回転モーメントを抑制する力を当接部材43を用いて中子20に印加している点が実施の形態1で説明した中子把持装置と異なる。これ以外の構成は、実施の形態1で説明した場合と同様であるので、同一の構成要素には同一の符号を付し重複した説明は適宜、省略する。
【0045】
図10、
図11に示すように、本実施の形態にかかる中子把持装置1では、各々のピッカー42_1、42_2が把持部44_1、44_2をそれぞれ備える。そして、各々のピッカー42_1、42_2の把持部44_1、44_2をそれぞれ孔部25、26に挿入して膨張させることで、把持部44_1、44_2を巾木部22の孔部25、26の内壁に当接させて中子20の巾木部22を把持している。
【0046】
このとき、各々の把持部44_1、44_2は一直線上に並んでいる、換言すると、把持部44_1、44_2の各々と巾木部22とが当接する部分が一直線上に並んでいるので、実施の形態1で説明した理由により、中子20には把持部44_1、44_2の把持位置を結ぶ直線18_3を軸とした回転モーメントMが働く。そこで本実施の形態にかかる中子把持装置1では、
図11に示すように、中子20の回転モーメントMを抑制する力F3を当接部材43を用いて巾木部22に印加している。つまり、本実施の形態において、当接部材43は回転抑制部として機能し、当接部材43は各々の把持部44_1、44_2を結ぶ直線18_3と離間した位置において巾木部22に当接して中子20の回転モーメントMを抑制する力F3を印加する。
【0047】
図10に示すように、当接部材43は棒状の部材であり、ピッカー42_1とピッカー42_2との間において、支持部10の下面から下方向(z軸マイナス方向)に伸びるように設けられている。また、
図11に示すように、当接部材43はピッカー42_1、42_2に対してy軸方向マイナス側に配置されている。当接部材43は、巾木部22の上面に当接して、回転モーメントMを抑制する力F3を巾木部22に印加する。
【0048】
このような構成により、本実施の形態においても、中子を把持した際に中子が傾くことを抑制することが可能な中子把持装置を提供することができる。
【0049】
<実施の形態3>
次に、本発明の実施の形態3について説明する。
図12は、中子60の中子本体部61及び巾木部62の上面図である。実施の形態3にかかる中子把持装置では、
図12に示すように、中子60の巾木部62に3つの孔部65、66、67を設けている点が実施の形態1、2で説明した構成と異なる。これ以外の構成は、実施の形態1、2で説明した場合と同様であるので、同一の構成要素には同一の符号を付し重複した説明は適宜、省略する。
【0050】
図12に示すように、本実施の形態では、中子60の巾木部62に3つの孔部65、66、67を設けている。ここで、孔部65、66はx軸と平行な直線69上において並ぶように形成されている。また、孔部67は、孔部65と孔部66とを結ぶ直線69から離間した位置に形成されている。
【0051】
図13、
図14はそれぞれ、中子把持装置1が中子60を把持している状態を示す断面図および側面図である。なお、
図13の中子60の断面図は、
図12に示す中子60を直線69を含むxz平面で切断した断面を示している。
図13において、孔部67及び把持部54_3は破線で示している。
【0052】
図13に示すように、本実施の形態にかかる中子把持装置1では、各々のピッカー52_1、52_2が把持部54_1、54_2をそれぞれ備える。そして、各々のピッカー52_1、52_2の把持部54_1、54_2をそれぞれ孔部65、66に挿入して膨張させることで、把持部54_1、54_2を巾木部62の孔部65、66の内壁に当接させて中子60の巾木部62を把持している。
【0053】
このとき、各々の把持部54_1、54_2は一直線上に並んでいるので、実施の形態1で説明した理由により、中子60には把持部54_1、54_2の把持位置を結ぶ直線18_4を軸とした回転モーメントが働く。そこで本実施の形態にかかる中子把持装置1では、
図12に示すように、孔部65と孔部66とを結ぶ直線69から離間した位置に孔部67を形成している。そして、
図13、
図14に示すように、ピッカー52_3の把持部54_3を孔部67に挿入して膨張させて、把持部54_3を巾木部62の孔部67の内壁に当接させることで、把持部54_3を巾木部62の孔部67に固定させている。これにより、把持部54_3は、把持部54_1、54_2を結ぶ直線18_4と離間した位置において巾木部62に当接して
図14に示すF4の方向の力を印加するので、中子60の回転モーメントMを抑制する摩擦力f4(
図14参照)を巾木部62に印加することができる。つまり、本実施の形態において、把持部54_3は回転抑制部として機能する。
【0054】
なお、本実施の形態における把持部54_1、54_2、54_3は同一の高さである必要はなく、適宜変更してもよい。例えば
図13、
図14の把持部54_3を、把持部54_1、54_2より高い位置に設定すれば、摩擦力f4だけでなく力F4も中子60の回転モーメントを抑制する力として働き、中子60が傾くことを抑制することができる。
【0055】
このような構成により、本実施の形態においても、中子を把持した際に中子が傾くことを抑制することが可能な中子把持装置を提供することができる。
【0056】
<実施の形態4>
次に、本発明の実施の形態4について説明する。
図15は、中子80の中子本体部81及び巾木部82の上面図である。
図16は、中子把持装置1が中子80を把持している状態を示す断面図である。実施の形態4にかかる中子把持装置では、
図15に示すように中子80の巾木部82に3つの孔部85、86、87を設け、
図16に示すように把持部74_3のz軸方向における位置を把持部74_1、74_2のz軸方向における位置からずらしている点が実施の形態1〜3で説明した構成と異なる。これ以外の構成は、他の実施の形態で説明した場合と同様であるので、同一の構成要素には同一の符号を付し重複した説明は適宜、省略する。
【0057】
図15に示すように、本実施の形態では、中子80の巾木部82に3つの孔部85、86、87を設けている。3つの孔部85、86、87はx軸と平行な直線89上において並ぶように形成されている。
【0058】
また、
図16に示すように、本実施の形態にかかる中子把持装置1では、各々のピッカー72_1、72_2が把持部74_1、74_2をそれぞれ備える。そして、各々のピッカー72_1、72_2の把持部74_1、74_2をそれぞれ孔部85、86に挿入して膨張させることで、把持部74_1、74_2を巾木部82の孔部85、86の内壁に当接させて中子80の巾木部82を把持している。
【0059】
このとき、各々の把持部74_1、74_2は直線78上に並んでいるので、実施の形態1で説明した理由により、中子80には把持部74_1、74_2の把持位置を結ぶ直線78を軸とした回転モーメントが働く。そこで本実施の形態にかかる中子把持装置1では、
図16に示すように、ピッカー72_3の把持部74_3を孔部87に挿入する際に、把持部74_1と把持部74_2とを結ぶ直線78からz軸方向において離間した位置79に把持部74_3を配置している。そして、把持部74_3を膨張させて、把持部74_3を巾木部82の孔部87の内壁に当接させることで、把持部74_3を巾木部82の孔部87に固定させている。
【0060】
これにより、把持部74_3は、把持部74_1、74_2を結ぶ直線78と離間した位置において巾木部82に当接して中子80の回転モーメントを抑制する力(
図4に示すF1の方向の力)を巾木部82に印加することができる。つまり、本実施の形態において、把持部74_3は回転抑制部として機能する。
【0061】
このような構成により、本実施の形態においても、中子を把持した際に中子が傾くことを抑制することが可能な中子把持装置を提供することができる。
【0062】
なお、本実施の形態では、
図17に示すように、各々のピッカー92_1〜92_3が備える把持部94_1〜94_3のz軸方向における位置をそれぞれ異なるようにしてもよい。すなわち、把持部94_1のz軸方向における位置96、把持部94_2のz軸方向における位置97、把持部94_3のz軸方向における位置98をそれぞれ異なるようにすることで、各々の把持部94_1〜94_3が一直線上に並ばないように配置することができるので、中子80に働く回転モーメントによって中子80が傾くことを抑制することができる。
図17に示す構成では、把持部94_1〜94_3が把持機能と回転抑止機能(回転抑制部)とを併せ持つ。
例えば、把持部94_1、94_2に注目すると、把持部94_1、94_2を結ぶ直線18_5を軸とした回転モーメントが発生する。これに対して、把持部94_3が回転モーメントを抑制する力を、
図4でいうF1の方向に印加している。この場合は把持部94_3が回転抑制部として機能する。
【0063】
<実施の形態5>
次に、本発明の実施の形態5について説明する。上記で説明した実施の形態1〜4では、孔部に把持部を挿入して巾木部を把持する構成について説明した。本実施の形態では、中子把持装置のピッカーが中子の巾木部を挟持して中子を把持している点が他の実施の形態と異なる。これ以外の構成は、他の実施の形態で説明した場合と同様であるので、重複した説明は適宜、省略する。
【0064】
図18、
図20はそれぞれ、本実施の形態にかかる中子把持装置が中子を把持している状態を示す上面図および側面図である。
図19は、本実施の形態にかかる中子把持装置が中子を把持する動作を説明するための正面図である。
図18、
図20に示すように、本実施の形態では、中子120の巾木部122は、中子本体部121から突出するように形成されており、ピッカー112_1、112_2の把持部114_1、114_2で巾木部122を挟持することで中子120を把持している。
【0065】
具体的には、
図18、
図20に示すように、巾木部122は中子本体部121からy軸マイナス方向に伸びるように形成されている。また、ピッカー112_1、112_2は、z軸方向に伸びるように形成されており(
図19参照)、ピッカー112_1、112_2の先端には把持部114_1、114_2が設けられている。そして、巾木部122のx軸方向の両側側面に把持部114_1及び把持部114_2をそれぞれ配置して、把持部114_1及び把持部114_2を膨張させることで、巾木部122を挟持している。
【0066】
このとき、各々の把持部114_1、114_2は一直線上に並んでいるので(
図18、
図19参照)、実施の形態1で説明した理由により、中子120には把持部114_1、114_2の把持位置を結ぶ直線18_6を軸とした回転モーメントが働く。そこで本実施の形態にかかる中子把持装置では、
図18、
図20に示すように、巾木部122のy軸方向マイナス側の側面にピッカー112_3を設け、ピッカー112_3の先端に設けた把持部114_3が巾木部122の側面と当接するようにしている。ここで、把持部114_3と巾木部122の側面とが当接する位置は、把持部114_1と把持部114_2とを結ぶ直線18_6から離間した位置である。よって、把持部114_3が巾木部122の側面と当接して力F5を巾木部122に印加するので、中子120の回転モーメントを抑制する摩擦力f5(
図20参照)を巾木部122に印加することができる。つまり、本実施の形態において、把持部114_3は回転抑制部として機能する。
【0067】
なお、本実施の形態における把持部114_1、114_2、114_3は同一の高さである必要はなく、適宜変更してもよい。例えば
図19、
図20の把持部114_3を、把持部114_2、114_3より低い位置に設定すれば、摩擦力f5だけでなく力F5も中子120の回転モーメントを抑制する力として働き、中子120が傾くことを抑制することができる。
【0068】
このような構成により、本実施の形態においても、中子を把持した際に中子が傾くことを抑制することが可能な中子把持装置を提供することができる。
【0069】
図21は、中子と把持部との間のクリアランスと最大把持荷重との関係を示すグラフである。
図19に示したように、各々の把持部114_1、114_2が巾木部122を把持して持ち上げる際の最大把持荷重(つまり、中子全体の荷重)は、収縮している状態の把持部114_1、114_2と巾木部122との間のクリアランスc(
図19の左図参照)に応じて変化する。
【0070】
すなわち、
図21のグラフの膨張時の圧力が「a(MPa)」のデータに示すように、収縮している状態の把持部114_1、114_2と巾木部122との間のクリアランスcが大きくなるにつれて、最大把持荷重は小さくなる。よって、
図19に示す把持部114_1、114_2と巾木部122との間のクリアランスcを小さくすることで、最大把持荷重を大きくすることができる。
【0071】
一方、
図19に示す把持部114_1、114_2と巾木部122との間のクリアランスcを小さくし過ぎると、巾木部122の両端に把持部114_1、114_2を配置する際の位置精度が必要になる。つまり、把持部114_1、114_2と巾木部122との間のクリアランスcが小さいため、把持部114_1、114_2を配置する際に、把持部114_1、114_2が巾木部122に衝突しないように、把持部114_1、114_2の位置を高精度に制御する必要がある。
【0072】
よって、本実施の形態では、把持部114_1、114_2の位置を制御する際の精度と、最大把持荷重(つまり、中子全体の荷重)とを考慮して、把持部114_1、114_2と巾木部122との間のクリアランスcを決定する必要がある。なお、
図21のグラフに示すように、把持部114_1、114_2の膨張時の圧力が「b(MPa)」の場合は、把持部114_1、114_2の膨張時の圧力が「a(MPa)」の場合(b>aである)よりも最大把持荷重が大きくなる。よって、把持部114_1、114_2の膨張時の圧力を高くすることで、中子の最大把持荷重を大きくすることができる。
【0073】
以上、本発明を上記実施の形態に即して説明したが、本発明は上記実施の形態の構成にのみ限定されるものではなく、本願特許請求の範囲の請求項の発明の範囲内で当業者であればなし得る各種変形、修正、組み合わせを含むことは勿論である。