(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記TFT基板上に設けられ且つ前記TFTと接続された第1電極と、前記隔壁により区画された領域において且つ第1電極上に形成された有機発光層と、有機発光層上に設けられた第2電極とを含む有機EL素子を有する請求項12に記載の表示又は照明装置。
前記絶縁膜が、前記半導体層の上方に少なくとも配置されるように、TFT基板上に形成されており、TFT基板の上方から投影的に見た場合に、半導体層の面積の50%以上が前記絶縁膜と重複している請求項1〜15のいずれか1項に記載の表示又は照明装置。
請求項1に記載の感放射線性材料を用いてTFT基板上に塗膜を形成する工程1、前記塗膜の少なくとも一部に放射線を照射する工程2、前記放射線が照射された塗膜を現像する工程3、および前記現像された塗膜を加熱して、全光線透過率が波長300〜400nmにおいて0〜15%の範囲にある絶縁膜を形成する工程4を有する請求項1に記載の表示又は照明装置が有する絶縁膜の形成方法。
請求項2に記載の感放射線性材料を用いてTFT基板上に塗膜を形成する工程1、前記塗膜の少なくとも一部に放射線を照射する工程2、前記放射線が照射された塗膜を現像する工程3、および前記現像された塗膜を加熱して、全光線透過率が波長300〜400nmにおいて0〜15%の範囲にある絶縁膜を形成する工程4を有する請求項2に記載の表示又は照明装置が有する絶縁膜の形成方法。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の表示又は照明装置は、TFTを構成する半導体層が、In、Ga、Sn、Ti、Nb、SbおよびZnから選択される1種以上の元素を含む酸化物半導体を含有する層であるTFT基板と、TFT基板上に設けられ、且つ前記TFTと接続された第1電極と、第1電極を部分的に露出させるように第1電極上に形成された絶縁膜と、第1電極に対向して設けられた第2電極とを有する。ここで、前記絶縁膜の全光線透過率は、波長300〜400nmにおいて0〜15%である。
【0033】
以下、表示又は照明装置を総称して単に「装置」ともいう。
【0034】
本発明の表示装置としては、例えば、液晶ディスプレイ(LCD)、エレクトロクロミックディスプレイ(ECD)、電界発光ディスプレイ(ELD)、特に有機ELディスプレイが挙げられる。本発明の照明装置としては、例えば、有機EL照明が挙げられる。
【0035】
本発明の装置において、TFT基板、第1電極および第2電極としては、例えば、後述する〔有機EL表示装置および有機EL照明装置〕の欄に記載した具体例(支持基板およびTFT、陽極、陰極)を各々例示することができる。
【0036】
本発明の装置において、絶縁膜は、少なくとも第1電極の一部を覆い、第1電極を部分的に露出させるように形成される。絶縁膜は、特に第1電極のエッジ部を覆うように形成されることが好ましい。
【0037】
絶縁膜の形状の例を
図1に示す。TFT基板100上にストライプ状に形成された第1電極110が形成されており、絶縁膜120が、第1電極110を部分的に露出させるようにTFT基板100上および第1電極110上に形成されており、この第1電極110の露出部を「開口部111」ともいう。ここで、絶縁膜120は第1電極110のエッジ部112を覆うように形成されている。開口部111は、例えば有機EL装置では、1つの発光領域、すなわち画素に対応させることができる。
【0038】
絶縁膜の断面形状は、第1電極を露出させる境界部分において順テーパー状であることが好ましい。ここで「順テーパー状」とは、絶縁膜120において第1電極110を露出させる境界部分の斜面121と第1電極面113とがなす角度θ、例えば
図2中の角度θが、90°未満であることに対応する。以下、角度θを「テーパー角度θ」ともいう。テーパー角度θは、好ましくは80°以下、さらに好ましくは5〜60°、より好ましくは10〜45°である。
【0039】
例えば有機EL装置の場合、上記境界部分における絶縁膜の断面形状が順テーパー状であると、絶縁膜形成後に有機発光層および第2電極を成膜する場合でも、境界部分においてこれらの膜が滑らかに形成され、段差に起因する膜厚ムラなどを低減させることができ、安定な特性を有する発光装置を得ることができる。
【0040】
絶縁膜の膜厚は特に限定されるものではないが、遮光性、および成膜やパターニングの容易性を考えると、好ましくは0.3〜15.0μm、より好ましくは0.5〜10.0μm、さらに好ましくは1.0〜5.0μmである。
【0041】
絶縁膜は、例えば隣り合う第1電極をまたがるよう形成される。このため、絶縁膜には良好な電気絶縁性が要求される。絶縁膜の体積抵抗率は、好ましくは10
10μΩ・cm以上、より好ましくは10
12μΩ・cm以上である。
【0042】
絶縁膜は、波長300〜400nmにおける全光線透過率が0〜15%であり、好ましくは0〜10%であり、特に好ましくは0〜6%である。すなわち、波長300〜400nmにおける全光線透過率の最大値が15%以下であり、好ましくは10%以下であり、特に好ましくは6%以下である。全光線透過率は、例えば分光光度計(日立製作所(株)製の「150−20型ダブルビーム」)を用いて測定することができる。
【0043】
絶縁膜は、例えば、TFT基板の面上を複数の領域に区画する隔壁であり、前記複数の領域に画素が形成される。前記絶縁膜(隔壁)は、TFTに含まれる半導体層に対する遮光性の観点から、前記半導体層の上方に少なくとも配置されるように、TFT基板上に形成されていることが好ましい。ここで「上方」とは、TFT基板から第2電極へ向かう方向である。一例として、TFT基板の上方から投影的に見た場合に、半導体層の面積の50%以上が絶縁膜(隔壁)と重複している態様が挙げられ、特に半導体層の面積の80%以上、さらに90%以上、特に100%が絶縁膜(隔壁)と重複している態様が挙げられる。
【0044】
このように、本発明の装置において、第1電極を露出させる絶縁膜は、前記波長において遮光性を有する。このような絶縁膜を設けることで、例えばIGZO等の光劣化の大きい物質からなる半導体層を含む薄膜トランジスタを駆動用素子として有する装置であっても、前記絶縁膜が遮光膜として働き、当該装置の使用等に伴う前記半導体層の光劣化を抑制することができる。
【0045】
例えば、TFTを構成する半導体層が、In、Ga、Sn、Ti、Nb、SbおよびZnから選択される1種以上の元素を含む酸化物半導体を含有する層である。この場合の酸化物としては、例えば、単結晶酸化物、多結晶酸化物、アモルファス酸化物、これらの混合物が挙げられる。
【0046】
In、Ga、Sn、Ti、Nb、SbおよびZnから選択される1種以上の元素を含む酸化物半導体としては、例えば、In−Sn−Ga−Zn−O系酸化物半導体等の4元系金属酸化物;In−Ga−Zn−O系酸化物半導体、In−Sn−Zn−O系酸化物半導体、In−Al−Zn−O系酸化物半導体、Sn−Ga−Zn−O系酸化物半導体、Al−Ga−Zn−O系酸化物半導体、Sn−Al−Zn−O系酸化物半導体等の3元系金属酸化物;In−Zn−O系酸化物半導体、Sn−Zn−O系酸化物半導体、Al−Zn−O系酸化物半導体、Zn−Mg−O系酸化物半導体、Sn−Mg−O系酸化物半導体、In−Mg−O系酸化物半導体や、In−Ga−O系の材料等の2元系金属酸化物;In−O系酸化物半導体、Sn−O系酸化物半導体、Zn−O系酸化物半導体等の1元系金属酸化物が挙げられる。
【0047】
本発明では、TFTを構成する半導体層が、上記酸化物半導体層である場合、特にIn−Ga−Zn−O系酸化物半導体(IGZO半導体)からなる酸化物半導体層である場合にも、その光劣化を防止することができる。
【0048】
本発明の装置は、前記TFT基板上に設けられ且つ前記TFTと接続された第1電極と、前記隔壁により区画された領域において且つ第1電極上に形成された有機発光層と、有機発光層上に設けられた第2電極とを含む有機EL素子を有する、有機EL装置であることが好ましい。
【0049】
前記TFT基板は、例えば、支持基板と、前記支持基板上において前記有機EL素子に対応して設けられたTFTと、前記TFTを被覆する平坦化層とを有する。例えば、第1電極は、前記平坦化層上に形成されており、前記平坦化層を貫通するスルーホールに形成された配線を介して、前記TFTと接続される。また、遮光性を有する絶縁膜(隔壁)は、第1電極を部分的に露出させるように、第1電極および平坦化層上に形成されることが好ましい。
【0050】
第1電極を露出させる絶縁膜は、例えば、感放射線性材料を用いて形成することができる。感放射線性材料には、露光することで現像液に対する溶解性が増大し、露光部分が除去されるポジ型と、露光することで硬化し、非露光部分が除去されるネガ型がある。感放射線性材料から形成された塗膜を露光した場合には、通常、塗膜の表面部分で光が強く吸収され、塗膜の内部に向かうに従って吸収量は少なくなる傾向にある。このため、ポジ型では塗膜の表面部分の溶解性の方が内部の溶解性よりも大きくなり、ネガ型ではその反対の傾向にある。本発明では、絶縁膜の境界部分の断面形状を順テーパー状にすることが好ましいため、ポジ型感放射線性材料を用いてパターン形成することが好ましい。
【0051】
〔感放射線性材料〕
感放射線性材料は、本発明の表示又は照明装置における上記絶縁膜の形成に用いることができる。前記感放射線性材料は、好ましくは、重合体(A)と、感光剤(B)と、ノボラック樹脂、レゾール樹脂、およびレゾール樹脂の縮合物から選択される少なくとも1種の樹脂(C)とを含有する。
【0052】
上記感放射線性材料は、好適成分として、架橋剤(D)を含有してもよく、また溶剤(E)を含有してもよい。また、上記感放射線性材料は、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の任意成分を含有してもよい。
【0053】
上記感放射線性剤材料は、放射線感度が高く、前記材料を用いることでパターン形状に優れた絶縁膜を形成することができ、パターンの狭ピッチ化に要望に対応することができる。さらに、前記材料を用いることで低吸水性を有する絶縁膜を形成することもできる。
【0055】
[重合体(A)]
重合体(A)は、樹脂(C)以外の、アルカリ可溶性重合体であることが好ましい。重合体(A)においてアルカリ可溶性とは、アルカリ溶液、例えば、2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液に溶解可能であることを意味する。
【0056】
重合体(A)としては、例えば、ポリイミド(A1)、前記ポリイミドの前駆体(A2)、アクリル樹脂(A3)、ポリシロキサン(A4)、ポリベンゾオキサゾール(A5−1)、前記ポリベンゾオキサゾールの前駆体(A5−2)、ポリオレフィン(A6)、およびカルド樹脂(A7)から選択される少なくとも1種の重合体が挙げられる。
【0057】
重合体(A)のポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定した値において、2,000〜500,000が好ましく、3,000〜100,000がより好ましく、4,000〜50,000がさらに好ましい。Mwが前記範囲の下限値以上であると、充分な機械的特性を有する絶縁膜が得られる傾向にある。Mwが前記範囲の上限値以下であると、溶剤や現像液に対する重合体(A)の溶解性が優れる傾向にある。
【0058】
重合体(A)の含有量は、感放射線性材料中の全固形分100質量%に対して、10〜80質量%が好ましく、20〜70質量%がより好ましく、30〜60質量%がさらに好ましい。
【0059】
《ポリイミド(A1)》
ポリイミド(A1)は、式(A1)で表される構造単位を有することが好ましい。
【0060】
【化5】
式(A1)中、R
1は水酸基を有する2価の基であり、Xは4価の有機基である。
【0061】
R
1としては、例えば、式(a1)で表される2価の基が挙げられる。
【0062】
【化6】
式(a1)中、R
2は、単結合、酸素原子、硫黄原子、スルホニル基、カルボニル基、メチレン基、ジメチルメチレン基またはビス(トリフルオロメチル)メチレン基であり;R
3は、それぞれ独立に水素原子、ホルミル基、アシル基またはアルキル基である。ただし、R
3の少なくとも1つは水素原子である。n1およびn2は、それぞれ独立に0〜2の整数である。ただし、n1およびn2の少なくとも一方は1または2である。n1とn2との合計が2以上の場合、複数のR
3は同一でも異なっていてもよい。
【0063】
R
3において、アシル基としては、例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基等の炭素数2〜20の基が挙げられ;アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ドデシル基等の炭素数1〜20の基が挙げられる。
【0064】
式(a1)で表される2価の基としては、1つ〜4つの水酸基を有する2価の基が好ましく、2つの水酸基を有する2価の基がさらに好ましい。式(a1)で表される、1つ〜4つの水酸基を有する2価の基としては、例えば、下記式で表される2価の基が挙げられる。なお、下記式において、芳香環より伸びる2本の「−」は、結合手を示す。
【0068】
【化10】
Xで表される4価の有機基としては、例えば、4価の脂肪族炭化水素基、4価の芳香族炭化水素基、下記式(1)で表される基が挙げられる。Xは、テトラカルボン酸二無水物に由来する4価の有機基であることが好ましい。これらの中でも下記式(1)で表される基が好ましい。
【0069】
【化11】
上記式(1)中、Arはそれぞれ独立に3価の芳香族炭化水素基であり、Aは直接結合または2価の基である。前記2価の基としては、例えば、酸素原子、硫黄原子、スルホニル基、カルボニル基、メチレン基、ジメチルメチレン基、ビス(トリフルオロメチル)メチレン基が挙げられる。
【0070】
4価の脂肪族炭化水素基の炭素数は、通常4〜30であり、好ましくは8〜24である。4価の芳香族炭化水素基および上記式(1)中の3価の芳香族炭化水素基の炭素数は、通常6〜30であり、好ましくは6〜24である。
【0071】
4価の脂肪族炭化水素基としては、例えば、鎖状炭化水素基、脂環式炭化水素基、分子構造中の少なくとも一部に芳香族環を含む脂肪族炭化水素基が挙げられる。
【0072】
4価の鎖状炭化水素基としては、例えば、n−ブタン、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−オクタン、n−デカン、n−ドデカン等の鎖状炭化水素に由来する4価の基が挙げられる。
【0073】
4価の脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロブタン、シクロペンタン、シクロペンテン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘキセン、シクロオクタン等の単環式炭化水素;ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、ビシクロ[3.1.1]ヘプタン、ビシクロ[3.1.1]ヘプト−2−エン、ビシクロ[2.2.2]オクタン、ビシクロ[2.2.2]オクタ−5−エン等の二環式炭化水素;トリシクロ[5.2.1.0
2,6]デカン、トリシクロ[5.2.1.0
2,6]デカ−4−エン、アダマンタン、テトラシクロ[6.2.1.1
3,6.0
2,7]ドデカン等の三環式以上の炭化水素などに由来する4価の基が挙げられる。
【0074】
分子構造中の少なくとも一部に芳香族環を含む脂肪族炭化水素基としては、例えば、当該基中に含まれるベンゼン核の数が、3以下であるものが好ましく、1つのものが特に好ましい。より具体的には、1−エチル−6−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン、1−エチル−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン等に由来する4価の基が挙げられる。
【0075】
上記説明において、上述の炭化水素に由来する4価の基は、上述の炭化水素から4つの水素原子を除いて形成された4価の基である。4つの水素原子の除外箇所は、当該4つの水素原子を4つのカルボキシル基に置換した場合に、テトラカルボン酸二無水物構造を形成することができる箇所である。
【0076】
4価の脂肪族炭化水素基としては、下記式で表される4価の基が好ましい。なお、下記式において、鎖状炭化水素基および脂環より伸びる4本の「−」は、結合手を示す。
【0077】
【化12】
4価の芳香族炭化水素基および上記式(1)で表される基としては、例えば、下記式で表される4価の基が挙げられる。下記式において、芳香環より伸びる4本の「−」は、結合手を示す。
【0078】
【化13】
ポリイミド(A1)は、以下に説明するポリイミド前駆体(A2)のイミド化によって得ることができる。ここでのイミド化は完全に進めてもよく、部分的に進めてもよい。すなわちイミド化率は100%でなくともよい。このため、ポリイミド(A1)は、以下に説明する、式(A2−1)で表される構造単位および式(A2−2)で表される構造単位から選択される少なくとも1種をさらに有してもよい。
【0079】
ポリイミド(A1)において、イミド化率は、好ましくは5%以上、より好ましくは7.5%以上、さらに好ましくは10%以上である。イミド化率の上限値は、好ましくは50%、より好ましくは30%である。イミド化率が前記範囲にあると、耐熱性および露光部分の現像液に対する溶解性の点で好ましい。
【0080】
イミド化率は、例えば、以下のようにして測定することができる。まず、ポリイミドの赤外吸収スペクトルを測定し、ポリイミドに起因するイミド構造の吸収ピーク(1780cm
-1付近、1377cm
-1付近)の存在を確認する。次に、そのポリイミドについて、350℃で1時間熱処理した後、再度、赤外吸収スペクトルを測定する。熱処理前と熱処理後の1377cm
-1付近のピーク強度を比較する。熱処理後のポリイミドのイミド化率を100%として、熱処理前のポリイミドのイミド化率={熱処理前の1377cm
-1付近のピーク強度/熱処理後の1377cm
-1付近のピーク強度}×100(%)を求める。赤外吸収スペクトルの測定には、例えば、「NICOLET6700FT−IR」(サーモエレクトロン社製)を用いる。
【0081】
ポリイミド(A1)において、式(A1)、式(A2−1)、式(A2−2)で表される構造単位の合計含有量は、通常50質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、特に好ましくは80質量%以上である。
【0082】
《ポリイミド前駆体(A2)》
ポリイミド前駆体(A2)は、脱水・環化(イミド化)によって、ポリイミド(A1)、好ましくは式(A1)で表される構造単位を有するポリイミド(A1)を生成することができる化合物である。ポリイミド前駆体(A2)としては、例えば、ポリアミック酸およびポリアミック酸誘導体が挙げられる。
【0083】
(ポリアミック酸)
ポリアミック酸は、式(A2−1)で表される構造単位を有する。
【0084】
【化14】
式(A2−1)中、R
1は水酸基を有する2価の基であり、Xは4価の有機基である。R
1で表される水酸基を有する2価の基およびXで表される4価の有機基としては、各々式(A1)中のR
1およびXとして例示した基と同様なものが挙げられる。
【0085】
ポリアミック酸において、式(A2−1)で表される構造単位の含有量は、通常50質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、特に好ましくは80質量%以上である。
【0086】
(ポリアミック酸誘導体)
ポリアミック酸誘導体は、ポリアミック酸のエステル化等により合成される誘導体である。ポリアミック酸誘導体としては、例えば、ポリアミック酸が有する式(A2−1)で表される構造単位中のカルボキシル基の水素原子を他の基に置換した重合体が挙げられ、ポリアミック酸エステルが好ましい。
【0087】
ポリアミック酸エステルは、ポリアミック酸が有するカルボキシル基の少なくとも一部がエステル化された重合体である。ポリアミック酸エステルとしては、式(A1)で表される構造単位を有するポリイミド(A1)を生成することができる、式(A2−2)で表される構造単位を有する重合体が挙げられる。
【0088】
【化15】
式(A2−2)中、R
1は水酸基を有する2価の基であり、Xは4価の有機基であり、R
4はそれぞれ独立に炭素数1〜5のアルキル基である。R
1で表される水酸基を有する2価の基およびXで表される4価の有機基としては、各々式(A1)中のR
1およびXとして例示した基と同様なものが挙げられる。R
4で表される炭素数1〜5のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基が挙げられる。
【0089】
ポリアミック酸エステルにおいて、式(A2−2)で表される構造単位の含有量は、通常50質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、特に好ましくは80質量%以上である。
【0090】
《ポリイミド(A1)およびポリイミド前駆体(A2)の合成方法》
ポリイミド前駆体(A2)であるポリアミック酸は、例えば、テトラカルボン酸二無水物と、水酸基を有するジアミン及び必要に応じて他のジアミンを含むジアミンとを重合させることにより、得ることができる。これらの使用割合は、例えば前記テトラカルボン酸二無水物1モルに対して前記の全ジアミンを0.3〜4モル、好ましくは略等モルである。前記重合において、前記テトラカルボン酸二無水物および前記の全ジアミンの混合溶液を50℃〜200℃、1時間〜24時間加熱することが好ましい。
【0091】
以下、前記テトラカルボン酸二無水物および前記水酸基を有するジアミンを、それぞれ「酸二無水物(A1−1)および「ジアミン(A1−2)」ともいい、前記他のジアミンを「ジアミン(A1−2’)」ともいう。
【0092】
ポリアミック酸の合成は、ジアミン(A1−2)を重合溶剤に溶解させた後、ジアミン(A1−2)と酸二無水物(A1−1)とを反応させることで行ってもよく、酸二無水物(A1−1)を重合溶剤に溶解させた後、酸二無水物(A1−1)とジアミン(A1−2)とを反応させることで行ってもよい。
【0093】
ポリイミド前駆体(A2)であるポリアミック酸誘導体は、上記ポリアミック酸のカルボキシル基をエステル化するなどして合成することができる。エステル化の方法としては、特に限定はなく、公知の方法を適用することができる。
【0094】
ポリイミド(A1)は、例えば、上記方法でポリアミック酸を合成した後、このポリアミック酸を脱水・環化(イミド化)することで合成することができ;また、上記方法でポリアミック酸誘導体を合成した後、このポリアミック酸誘導体をイミド化することで合成することもできる。
【0095】
ポリアミック酸およびポリアミック酸誘導体のイミド化反応としては、加熱イミド化反応や化学イミド化反応等の公知の方法の適用が可能である。加熱イミド化反応の場合、ポリアミック酸及び/又はポリアミック酸誘導体を含む溶液を120℃〜210℃、1時間〜16時間加熱することが好ましい。イミド化反応は、必要に応じて、トルエン、キシレン、メシチレン等の共沸溶剤を使用して系内の水を除去しながら行ってもよい。
【0096】
また、テトラカルボン酸二無水物に対してジアミンを過剰に用いた場合は、ポリイミド、ポリアミック酸およびポリアミック酸誘導体の末端基を封止する末端封止剤として、例えば、無水マレイン酸等のジカルボン酸無水物を用いてもよい。
【0097】
酸二無水物(A1−1)は、例えば式(a2)で表される酸二無水物である。
【0098】
【化16】
式(a2)中、Xは4価の有機基である。Xで表される4価の有機基としては、式(A1)中のXとして例示した基と同様なものが挙げられる。
【0099】
ジアミン(A1−2)は、例えば式(a3)で表されるジアミンである。
【0100】
【化17】
式(a3)中、R
1は水酸基を有する2価の基である。R
1で表される水酸基を有する2価の基としては、式(A1)中のR
1として例示した基と同様なものが挙げられる。
【0101】
ジアミン(A1−2)とともに、当該(A1−2)以外の他のジアミン(A1−2’)を用いてもよい。他のジアミン(A1−2’)としては、例えば、水酸基を有さない、芳香族ジアミンおよび脂肪族ジアミンから選択される少なくとも1種のジアミンが挙げられる。
【0102】
ポリイミド(A1)は、式(A1)、(A2−1)および(A2−2)中のR
1を、前記他のジアミン(A1−2’)の残基にかえた構造単位をさらに有していてもよい。同様に、ポリイミド前駆体(A2)は、式(A2−1)および(A2−2)中のR
1を、前記他のジアミン(A1−2’)の残基にかえた構造単位をさらに有していてもよい。
【0103】
ポリイミド(A1)およびポリイミド前駆体(A2)の合成に用いる重合溶剤としては、これらの合成用の原料や、前記(A1)および(A2)を溶解させることができ、低吸水性の溶剤が好ましい。重合溶剤としては、後述する溶剤(E)として例示した溶剤と同様の溶剤を使用することができる。
【0104】
重合溶剤として溶剤(E)と同様の溶剤を使用することで、ポリイミド(A1)またはポリイミド前駆体(A2)を合成した後にこれらの重合体を単離する工程、単離後に別の溶剤に再溶解させる工程を不要とすることができる。これにより、本発明の装置の生産性を向上させることができる。
【0105】
ポリイミド(A1)およびポリイミド前駆体(A2)は、水酸基を有する上記特定構造を有することが好ましく、これにより、後述する溶剤(E)への優れた溶解性を有する。このため、これらの重合体は、N−メチルピロリドン(NMP)以外の低吸水性の溶剤、例えば後述する溶剤(E)にも溶解する。その結果、例えば、重合体(A)を得るための重合溶剤としてNMP以外の溶剤を使用することで、感放射線性材料から形成される絶縁膜をより低吸水化することができる。
【0106】
《アクリル樹脂(A3)》
アクリル樹脂(A3)を構成するモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸の脂環式基含有エステル、および(メタ)アクリル酸のアリール基含有エステルから選ばれる少なくとも1種のモノマーAが挙げられる。
【0107】
また、上記(A3)を構成するモノマーとしては、不飽和モノカルボン酸、不飽和ジカルボン酸、および不飽和ジカルボン酸無水物から選ばれる少なくとも1種の酸基含有モノマーBも挙げられる。
【0108】
また、上記(A3)を構成するモノマーとしては、(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸のエポキシ基含有エステル、および(メタ)アクリル酸のオキセタニル基含有エステルから選ばれる少なくとも1種の官能基含有モノマーCも挙げられる。
【0109】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレートが挙げられ;(メタ)アクリル酸の脂環式基含有エステルとしては、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート等の単環式炭化水素基含有エステル、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート等の多環式基含有エステルが挙げられ;(メタ)アクリル酸のアリール基含有エステルとしては、例えば、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0110】
不飽和モノカルボン酸としては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸が挙げられ;不飽和ジカルボン酸としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸が挙げられ;不飽和ジカルボン酸無水物としては、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸が挙げられる。
【0111】
(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステルとしては、例えば、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレートが挙げられ;(メタ)アクリル酸のエポキシ基含有エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジル、α−エチルアクリル酸グリシジル、α−n−プロピルアクリル酸グリシジル、α−n−ブチルアクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸−3,4−エポキシブチル、(メタ)アクリル酸−6,7−エポキシヘプチル、α−エチルアクリル酸−6,7−エポキシヘプチル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレートが挙げられ;(メタ)アクリル酸のオキセタニル基含有エステルとしては、例えば、3−メチル−3−(メタ)アクリロイルオキシメチルオキセタン、3−エチル−3−(メタ)アクリロイルオキシメチルオキセタン、3−メチル−3−(メタ)アクリロイルオキシエチルオキセタン、3−エチル−3−(メタ)アクリロイルオキシエチルオキセタンが挙げられる。
【0112】
アクリル樹脂(A3)において、上記モノマーAに由来する構造単位の含有量は、通常5質量%以上、好ましくは10〜85質量%、更に好ましくは15〜75質量%であり、上記酸基含有モノマーBに由来する構造単位の含有量は、通常5〜70質量%、好ましくは10〜60質量%、更に好ましくは15〜50質量%であり、上記官能基含有モノマーCに由来する構造単位の含有量は、通常90質量%以下、好ましくは5〜80質量%、更に好ましくは10〜70質量%である。
【0113】
特に、アクリル樹脂(A3)において、(メタ)アクリル酸のエポキシ基含有エステルおよび(メタ)アクリル酸のオキセタニル基含有エステルに由来する構造単位の含有量の合計は、10〜70質量%であることが好ましく、より好ましくは20〜50質量%である。この構造単位が前記範囲にあると、感放射線性材料から形成された塗膜の加熱時に硬化反応が充分に進行し、得られるパターンの耐熱性および表面硬度が充分になる傾向にあると共に、感放射線性材料の保存安定性も優れる傾向にある。
【0114】
その他、アクリル樹脂(A3)を構成するモノマーとしては、マレイン酸ジエチル、フマル酸ジエチル、イタコン酸ジエチル等の不飽和ジカルボン酸のジエステル;スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−メトキシスチレン等のスチレン系モノマーを用いることもできる。
【0115】
アクリル樹脂(A3)を合成する際に用いられる溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール等のアルコール類;テトラヒドロフラン等のエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のグリコールエーテルアセテート類;その他に芳香族炭化水素類、ケトン類、エステル類が挙げられる。
【0116】
アクリル樹脂(A3)は、例えば上記モノマーのラジカル重合で合成することができる。ラジカル重合における重合触媒としては通常のラジカル重合開始剤が使用でき、例えば2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス−(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物;ベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、t−ブチルペルオキシピバレート、1,1−ビス−(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン等の有機過酸化物、および過酸化水素が挙げられる。過酸化物をラジカル重合開始剤に使用する場合、過酸化物と還元剤とを組み合せてレドックス型の開始剤としてもよい。
【0117】
《ポリシロキサン(A4)》
ポリシロキサン(A4)としては、例えば、式(a4)で表されるオルガノシランを反応させて得られるポリシロキサンが挙げられる。
【0118】
【化18】
式(a4)中、R
1は水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数6〜15のアリール基含有基、炭素数2〜15のエポキシ環含有基、または前記アルキル基に含まれる1または2以上の水素原子を置換基に置き換えてなる基(置換体)であり、R
1が複数ある場合はそれぞれ同一でも異なっていてもよく;R
2は水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアシル基、または炭素数6〜15のアリール基であり、R
2が複数ある場合はそれぞれ同一でも異なっていてもよく;nは0〜3の整数である。
【0119】
上記置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アミノ基、水酸基、メルカプト基、イソシアネート基、(メタ)アクリロイルオキシ基から選ばれる少なくとも1種である。
【0120】
アルキル基及びその置換体としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、n−デシル基、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、3−アミノプロピル基、3−メルカプトプロピル基、3−イソシアネートプロピル基、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル基が挙げられる。
【0121】
アルケニル基としては、例えば、ビニル基が挙げられる。
【0122】
アリール基含有基としては、例えば、フェニル基、トリル基、ナフチル基等のアリール基;p−ヒドロキシフェニル基等のヒドロキシアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;1−(p−ヒドロキシフェニル)エチル基、2−(p−ヒドロキシフェニル)エチル基等のヒドロキシアラルキル基;4−ヒドロキシ−5−(p−ヒドロキシフェニルカルボニルオキシ)ペンチル基が挙げられる。
【0123】
エポキシ環含有基としては、例えば、3−グリシドキシプロピル基、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基が挙げられる。
【0124】
アシル基としては、例えば、アセチル基が挙げられる。
【0125】
アリール基としては、例えば、フェニル基が挙げられる。
【0126】
式(a4)中のnは、0〜3の整数である。n=0の場合は4官能性シラン、n=1の場合は3官能性シラン、n=2の場合は2官能性シラン、n=3の場合は1官能性シランである。
【0127】
オルガノシランとしては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラアセトキシシラン、テトラフェノキシシラン等の4官能性シラン;メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、メチルトリn−ブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリn−ブトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、p−ヒドロキシフェニルトリメトキシシラン、1−(p−ヒドロキシフェニル)エチルトリメトキシシラン、2−(p−ヒドロキシフェニル)エチルトリメトキシシラン、4−ヒドロキシ−5−(p−ヒドロキシフェニルカルボニルオキシ)ペンチルトリメトキシシラン、トリフルオロメチルトリメトキシシラン、トリフルオロメチルトリエトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等の3官能性シラン;ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジアセトキシシラン、ジn−ブチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン等の2官能性シラン;トリメチルメトキシシラン、トリn−ブチルエトキシシラン等の1官能性シランが挙げられる。これらのオルガノシランの中でも、絶縁膜の耐クラック性と硬度の点から、3官能性シランが好ましい。
【0128】
オルガノシランは1種単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0129】
絶縁膜の耐クラック性と硬度を両立させる点から、ポリシロキサン(A4)中に含まれるフェニル基の含有量は、Si原子100モルに対して、20〜70モルが好ましく、さらに好ましくは35〜55モルである。フェニル基の含有量が前記上限値以下であると、硬度の高い絶縁膜が得られる傾向にあり、フェニル基の含有量が前記下限値以上であると耐クラック性の高い絶縁膜が得られる傾向にある。フェニル基の含有量は、例えば、ポリシロキサン(A4)の
29Si−核磁気共鳴スペクトルを測定し、そのフェニル基が結合したSiのピーク面積とフェニル基が結合していないSiのピーク面積との比から求めることができる。
【0130】
ポリシロキサン(A4)は、例えば、上述のオルガノシランを加水分解および部分縮合させることにより得られる。加水分解および部分縮合には一般的な方法を用いることができる。例えば、オルガノシランに溶媒、水、必要に応じて触媒を添加し、加熱攪拌する。攪拌中、必要に応じて蒸留によって、アルコール等の加水分解副生物や水等の縮合副生物を留去してもよい。反応温度は特に限定されないが、通常0℃〜150℃の範囲である。反応時間も特に限定されないが、通常1〜10時間の範囲である。
【0131】
溶媒としては、例えば、アセトール、3−ヒドロキシ−3−メチル−2−ブタノン、4−ヒドロキシ−3−メチル−2−ブタノン、5−ヒドロキシ−2−ペンタノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン(ジアセトンアルコール)等のヒドロキシ基含有ケトン;乳酸エチル、乳酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノn−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノn−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノt−ブチルエーテル、3−メトキシ−1−ブタノール、3−メチル−3−メトキシ−1−ブタノールが挙げられる。これらの中でも、特にジアセトンアルコールが好ましく用いられる。溶媒は1種単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0132】
溶媒の添加量は、オルガノシラン100質量部に対して10〜1000質量部が好ましい。また、加水分解反応に用いる水の添加量は、加水分解性基1モルに対して0.5〜2モルが好ましい。
【0133】
触媒としては、例えば、酸触媒、塩基触媒が挙げられる。酸触媒としては、塩酸、硝酸、硫酸、フッ酸、リン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、ギ酸、多価カルボン酸またはその無水物、イオン交換樹脂等が挙げられる。塩基触媒としては、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミン、ジエチルアミン、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アミノ基を有するアルコキシシラン、イオン交換樹脂等が挙げられる。触媒の添加量は、オルガノシラン100質量部に対して0.01〜10質量部が好ましい。
【0134】
《ポリベンゾオキサゾール(A5−1)》
ポリベンゾオキサゾール(A5−1)は、式(a5−1)で表される構造単位を有することが好ましい。以下、式(a5−1)で表される構造単位を「構造単位(a5−1)」ともいう。
【0135】
【化19】
式(a5−1)中、X
1は芳香族環を有する4価の有機基であり、Y
1は2価の有機基である。
【0136】
式(a5−1)中、X
1は、好ましくは芳香族環を少なくとも1つ含む4価の基であり、直線構造を有している基がより好ましく、1〜4つの芳香族環を有している基がさらに好ましく、2つの芳香族環を有している基が特に好ましい。このような構造を有するポリベンゾオキサゾール(A5−1)は剛直性に優れる。
【0137】
なお、X
1に含まれる芳香族環は、置換または無置換のいずれの環であってもよい。置換基としては、例えば、−OH、−COOH、アルキル基、アルコキシ基、脂環式炭化水素基が挙げられる。X
1に結合するNとOは、例えば、X
1中の芳香族環上の隣り合った炭素原子に結合し、ベンゾオキサゾール環を形成している。
【0138】
X
1に芳香族環が2つ以上含まれる場合、複数の芳香族環は、連結多環系および縮合多環系のいずれの構造を形成していてもよいが、連結多環系構造を形成していることが好ましい。このような構造を有するポリベンゾオキサゾール(A5−1)は、遮光性および剛直性の双方に優れる。
【0139】
X
1の総炭素数は、6〜24であることが好ましく、6〜20であることがより好ましく、6〜18であることがさらに好ましい。これにより、前記効果をより顕著に発揮させることができる。
【0140】
X
1の構造としては、例えば、ベンゼン環等の単環系構造、ナフタレン環等の縮合多環系構造、式(g1)で表される基等の連結多環系構造が挙げられる。これらの中でも、式(g1)で表される基が好ましい。
【0141】
【化20】
式(g1)中、Ar
1はそれぞれ独立に3価の芳香族炭化水素基であり、R
1は直接結合または2価の基である。前記3価の芳香族炭化水素基としては、例えば、ベンゼン環が挙げられ、アルキル基、アルコキシ基、脂環式炭化水素基等の置換基を有してもよく、2つのAr
1中の置換基が相互に結合して、2つのAr
1を架橋する、カルボニル基等の2価の基を形成してもよい。前記2価の基としては、例えば、酸素原子、硫黄原子、スルホニル基、カルボニル基、メチレン基、ジメチルメチレン基、ビス(トリフルオロメチル)メチレン基、フェニレン基が挙げられる。
【0142】
X
1の構造の具体例としては、例えば、下記式で表される4価の基が挙げられる。なお、下記式において、芳香環より伸びる4本の「−」は、結合手を示す。
【0143】
【化21】
式(a5−1)中、Y
1は、好ましくは脂環式環および芳香族環から選ばれる環を少なくとも1つ含む2価の基であり、1〜4つの芳香族環を有している基がより好ましく、2つの芳香族環を有している基が特に好ましい。このような構造を有するポリベンゾオキサゾール(A5−1)は、剛直性および耐光性に優れる。
【0144】
なお、Y
1に含まれる脂環式環および芳香族環は、置換または無置換のいずれの環であってもよい。置換基としては、例えば、−OH、−COOH、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、脂環式炭化水素基が挙げられる。
【0145】
Y
1に上記環が2つ以上含まれる場合、複数の上記環は、連結多環系および縮合多環系のいずれの構造を形成していてもよいが、連結多環系構造を形成していることが好ましい。このような構造を有するポリベンゾオキサゾール(A5−1)は、遮光性および剛直性の双方に優れる。
【0146】
Y
1の総炭素数は、4〜24であることが好ましく、4〜15であることがより好ましく、6〜12であることがさらに好ましい。これにより、前記効果をより顕著に発揮させることができる。
【0147】
Y
1の構造としては、例えば、ベンゼン環等の単環系構造、ナフタレン環等の縮合多環系構造、式(g2)で表される基等の連結多環系構造などの芳香族系構造;後記例示の脂環式系構造が挙げられる。これらの中でも、式(g2)で表される基が好ましい。
【0148】
【化22】
式(g2)中、Ar
2はそれぞれ独立に2価の芳香族炭化水素基であり、R
2は直接結合または2価の基である。前記2価の芳香族炭化水素基としては、例えば、ベンゼン環が挙げられ、アルキル基、アルコキシ基、脂環式炭化水素基等の置換基を有してもよく、2つのAr
2中の置換基が相互に結合して、2つのAr
2を架橋する、カルボニル基等の2価の基を形成してもよい。前記2価の基としては、例えば、酸素原子、硫黄原子、スルホニル基、カルボニル基、メチレン基、ジメチルメチレン基、ビス(トリフルオロメチル)メチレン基、フェニレン基が挙げられる。
【0149】
Y
1の構造の具体例としては、例えば、下記式で表される2価の基が挙げられる。なお、下記式において、芳香環および脂環より伸びる2本の「−」は、結合手を示す。
【0151】
【化24】
ポリベンゾオキサゾール(A5−1)は、以下に説明するポリベンゾオキサゾール前駆体(A5−2)の環化反応によって得ることができる。ここでの環化反応は完全に進めてもよく、部分的に進めてもよい。すなわち環化率は100%でなくともよい。このため、ポリベンゾオキサゾール(A5−1)は、以下に説明する、式(a5−2)で表される構造単位をさらに有してもよい。以下、式(a5−2)で表される構造単位を「構造単位(a5−2)」ともいう。
【0152】
ポリベンゾオキサゾール(A5−1)において、環化率は、好ましくは5%以上、より好ましくは7.5%以上、さらに好ましくは10%以上である。環化率の上限値は、好ましくは50%、より好ましくは30%である。環化率が前記範囲にあると、耐熱性および露光部分の現像液に対する溶解性の点で好ましい。
【0153】
環化率は、例えば、以下のようにして測定することができる。まず、ポリベンゾオキサゾールの赤外吸収スペクトルを測定し、ベンゾオキサゾール環の吸収ピーク(1557cm
-1付近、1574cm
-1)の存在を確認する。次に、そのポリベンゾオキサゾールについて、350℃で1時間熱処理した後、再度、赤外吸収スペクトルを測定する。熱処理前と熱処理後の1554cm
-1付近のピーク強度を比較する。熱処理後のポリベンゾオキサゾールの環化率を100%として、熱処理前のポリベンゾオキサゾールの環化率={熱処理前の1554cm
-1付近のピーク強度/熱処理後の1554cm
-1付近のピーク強度}×100(%)を求める。赤外吸収スペクトルの測定には、例えば、「NICOLET6700FT−IR」(サーモエレクトロン社製)を用いる。
【0154】
ポリベンゾオキサゾール(A5−1)において、構造単位(a5−1)および(a5−2)の合計含有量は、通常50質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、特に好ましくは80質量%以上である。
【0155】
《ポリベンゾオキサゾール前駆体(A5−2)》
ポリベンゾオキサゾール前駆体(A5−2)は、脱水・環化によって、ポリベンゾオキサゾール(A5−1)、好ましくは構造単位(a5−1)を有するポリベンゾオキサゾール(A5−1)を生成することができる化合物である。前駆体(A5−2)は、例えば、式(a5−2)で表される構造単位を有する。
【0156】
【化25】
式(a5−2)中、X
1は芳香族環を有する4価の有機基であり、好ましくは芳香族環を少なくとも1つ含む4価の基である。X
1に結合するNとOHは、同一芳香族環上の隣り合った炭素原子に結合している。
【0157】
式(a5−2)中、Y
1は2価の有機基であり、好ましくは脂環式環および芳香族環から選ばれる環を少なくとも1つ含む2価の基である。
【0158】
X
1で表される4価の有機基およびY
1で表される2価の有機基としては、各々式(a5−1)中のX
1およびY
1として例示した基と同様の基が挙げられる。
【0159】
ポリベンゾオキサゾール前駆体(A5−2)において、構造単位(a5−2)の含有量は、通常50質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、特に好ましくは80質量%以上である。
【0160】
《ポリベンゾオキサゾール(A5−1)およびその前駆体(A5−2)の合成方法》
ポリベンゾオキサゾール前駆体(A5−1)は、例えば、ジカルボン酸、そのジエステル体およびそのジハライド体から選ばれる少なくとも1種と、水酸基を2つ有するジアミンとを重合させることにより、得ることができる。なお、反応収率を高めるため、ジエステルとして、ジカルボン酸と1−ヒドロキシベンゾトリアゾール等とを予め反応させた活性エステル型のジカルボン酸誘導体を用いてもよい。
【0161】
上記使用割合は、例えば前記ジカルボン酸とジエステル体とジハライド体との合計1モルに対して前記ジアミンを0.5〜4モル、好ましくは1〜2モルである。前記重合において、前記混合溶液を50℃〜200℃、1時間〜72時間加熱することが好ましい。
【0162】
ポリベンゾオキサゾール(A5−1)は、例えば、上記方法でポリベンゾオキサゾール前駆体(A5−2)を合成した後、このポリベンゾオキサゾール前駆体(A5−2)を脱水・環化することで合成することができる。
【0163】
ポリベンゾオキサゾール前駆体(A5−2)の環化反応としては、公知の方法の適用が可能である。加熱環化反応の場合、ポリベンゾオキサゾール前駆体(A5−2)を含む溶液を150℃〜400℃、1時間〜16時間加熱することが好ましい。必要に応じて、トルエン、キシレン、メシチレン等の共沸溶剤を使用して系内の水を除去しながら行ってもよい。
【0164】
また、保存安定性の観点から、ポリベンゾオキサゾールおよびその前駆体の末端基を封止することが好ましい。末端封止剤としては、例えば、無水マレイン酸、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物等のジカルボン酸無水物が挙げられる。例えば、式(a5−2)で表される構造単位を有するポリベンゾオキサゾール前駆体を合成した後、前記前駆体中に含まれる末端アミノ基を、末端封止剤を用いてアミドとして封止することが好ましい。
【0165】
《ポリオレフィン(A6)》
ポリオレフィン(A6)としては、例えば、プロトン性極性基を有する環状オレフィン重合体が挙げられる。プロトン性極性基とは、周期律表第15族または第16族に属する原子に水素原子が直接結合している原子団をいう。周期律表第15族または第16族に属する原子は、好ましくは周期律表第15族または第16族の第2または第3周期に属する原子であり、より好ましくは酸素原子、窒素原子または硫黄原子であり、特に好ましくは酸素原子である。
【0166】
プロトン性極性基としては、例えば、水酸基、カルボキシル基(ヒドロキシカルボニル基)、スルホン酸基、リン酸基等の酸素原子を有する極性基;第1級アミノ基、第2級アミノ基、第1級アミド基、第2級アミド基(イミド基)等の窒素原子を有する極性基;チオール基等の硫黄原子を有する極性基が挙げられる。これらの中でも、酸素原子を有する極性基が好ましく、より好ましくは水酸基、カルボキシル基であり、さらに好ましくはフェノール性水酸基、カルボキシル基であり、特に好ましくはカルボキシル基である。
【0167】
また、以下の説明において、プロトン性極性基以外の極性基としては、例えば、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、ハロゲン原子、シアノ基、アルコキシ基、第3級アミノ基、(メタ)アクリロイル基、カルボニル基、スルホニル基、N−置換イミド基、エポキシ基、カルボニルオキシカルボニル基(ジカルボン酸酸無水物構造)が挙げられる。これらの中でも、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、N−置換イミド基、ハロゲン原子およびシアノ基が好ましく、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基およびN−置換イミド基がより好ましく、N−置換イミド基が特に好ましい。
【0168】
環状オレフィン重合体とは、脂環、芳香環等の環状構造と炭素−炭素二重結合とを有する環状オレフィンの、単独重合体または共重合体である。環状オレフィン重合体は、環状オレフィン以外の単量体から誘導される構造単位を有していてもよい。
【0169】
以下、単量体Aから誘導される構造単位を「単量体A単位」ともいう。
【0170】
環状オレフィン重合体の全構造単位中、環状オレフィン単位の含有割合は、通常30〜100質量%、好ましくは50〜100質量%、より好ましくは70〜100質量%である。
【0171】
プロトン性極性基を有する環状オレフィン重合体において、プロトン性極性基を有する単量体単位とこれ以外の単量体単位との比率(プロトン性極性基を有する単量体単位/これ以外の単量体単位)は、質量比で、通常100/0〜10/90、好ましくは90/10〜20/80、より好ましくは80/20〜30/70である。
【0172】
プロトン性極性基を有する環状オレフィン重合体において、プロトン性極性基は、環状オレフィン単位に結合していてもよく、環状オレフィン以外の単量体単位に結合していてもよいが、環状オレフィン単位に結合していることが好ましい。
【0173】
プロトン性極性基を有する環状オレフィン重合体を形成する単量体としては、例えば、プロトン性極性基を有する環状オレフィン(a)、プロトン性極性基以外の極性基を有する環状オレフィン(b)、極性基を有さない環状オレフィン(c)、環状オレフィン以外の単量体(d)が挙げられる。単量体(d)は、プロトン性極性基またはこれ以外の極性基を有していてもよく、極性基を全く有していなくてもよい。前記環状オレフィン(a)〜(c)を、それぞれ「単量体(a)〜(c)」ともいう。
【0174】
プロトン性極性基を有する環状オレフィン重合体は、単量体(a)と、単量体(b)および単量体(c)から選択される少なくとも1種と、必要に応じて単量体(d)とから構成されることが好ましく、単量体(a)と単量体(b)と必要に応じて単量体(d)とから構成されることが更に好ましい。
【0175】
単量体(a)としては、例えば、下記式で表される環状オレフィンが挙げられる。
【0176】
【化26】
式(a6−1)中、R
a1〜R
a4は、それぞれ独立に水素原子または−X
n−R
a5である。Xは2価の有機基である。nは0または1である。R
a5は、アルキル基、芳香族基または上述したプロトン性極性基であり、アルキル基および芳香族基は、それぞれ置換基を有してもよい。R
a1〜R
a4のうち少なくとも1つは、R
a5がプロトン性極性基である−X
n−R
a5基である。mは0〜2の整数であり、好ましくは0または1である。Xにおける2価の有機基としては、例えば、メチレン基、エチレン基等の炭素数1〜18のアルキレン基、フェニレン基等の炭素数6〜24のアリーレン基が挙げられる。
【0177】
R
a5におけるアルキル基としては、例えば、直鎖状または分岐状の炭素数1〜18のアルキル基であり、その具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基が挙げられる。R
5における芳香族基としては、例えば、炭素数6〜24の芳香族基であり、その具体例としては、フェニル基等のアリール基、ベンジル基等のアラルキル基が挙げられる。
【0178】
R
a1は、カルボキシル基、またはヒドロキシフェニル基等の炭素数6〜24のヒドロキシアリール基であることが好ましく、カルボキシル基であることがより好ましい。R
a2は、水素原子、メチル基等の炭素数1〜18のアルキル基、またはカルボキシメチル基等の炭素数2〜18のカルボキシアルキル基であることが好ましい。R
a3およびR
a4は、水素原子であることが好ましい。
【0179】
単量体(a)としては、例えば、8−カルボキシテトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]ドデカ−3−エンが挙げられる。
【0180】
単量体(a)は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0181】
単量体(b)としては、例えば、下記式で表される環状オレフィンが挙げられる。
【0182】
【化27】
式(b6−1)中、R
b1は、上述したプロトン性極性基以外の極性基であり、好ましくはアセトキシ基等の炭素数2〜12のアシルオキシ基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、2,2,2−トリフルオロエトキシカルボニル基等の炭素数2〜12のアルコキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基等の炭素数7〜24のアリーロキシカルボニル基、シアノ基、または塩素原子等のハロゲン原子である。R
b2は、水素原子、またはメチル基等の炭素数1〜18のアルキル基である。R
b3およびR
b4は、水素原子である。mは0〜2の整数であり、好ましくは0または1である。
【0183】
また、R
b1〜R
b4は、任意の組み合わせで、それらが結合している2つの炭素原子と共に、環構成原子として酸素原子または窒素原子を含む、3〜5員の複素環構造を形成してもよい。
【0184】
3員複素環構造としては、エポキシ構造等が挙げられる。5員複素環構造としては、ジカルボン酸無水物構造〔−C(=O)−O−C(=O)−〕、ジカルボキシイミド構造〔−C(=O)−NR
b5−C(=O)−〕等が挙げられる。R
b5は、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基等等の炭素数6〜24のアリール基である。これらの中でも、ジカルボキシイミド構造が好ましい。
【0185】
単量体(b)としては、例えば、N−フェニル−(5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド)が挙げられる。
【0186】
単量体(b)は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0187】
単量体(c)としては、例えば、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(慣用名:ノルボルネン)、5−エチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−ブチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−エチリデン−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メチリデン−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−ビニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、トリシクロ[4.3.0.1
2,5]デカ−3,7−ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン)、テトラシクロ[8.4.0.1
11,14.0
3,7]ペンタデカ−3,5,7,12,11−ペンタエン、テトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]デカ−3−エン(慣用名:テトラシクロドデセン)、8−メチル−テトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]ドデカ−3−エン、8−エチル−テトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]ドデカ−3−エン、8−メチリデン−テトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]ドデカ−3−エン、8−エチリデン−テトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]ドデカ−3−エン、8−ビニル−テトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]ドデカ−3−エン、8−プロペニル−テトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]ドデカ−3−エン、ペンタシクロ[6.5.1.1
3,6.0
2,7.0
9,13]ペンタデカ−3,10−ジエン、シクロペンテン、シクロペンタジエン、1,4−メタノ−1,4,4a,5,10,10a−ヘキサヒドロアントラセン、8−フェニル−テトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]ドデカ−3−エン、テトラシクロ[9.2.1.0
2,10.0
3,8]テトラデカ−3,5,7,12−テトラエン(1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロ−9H−フルオレンともいう)、ペンタシクロ[7.4.0.1
3,6.1
10,13.0
2,7]ペンタデカ−4,11−ジエン、ペンタシクロ[9.2.1.1
4,7.0
2,10.0
3,8]ペンタデカ−5,12−ジエンが挙げられる。
【0188】
単量体(c)は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0189】
環状オレフィン以外の単量体(d)としては、例えば、鎖状オレフィンが挙げられる。鎖状オレフィンとしては、例えば、エチレン;プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン等の炭素数2〜20のα−オレフィン;1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン等の非共役ジエンが挙げられる。
【0190】
単量体(d)は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0191】
プロトン性極性基を有する環状オレフィン重合体は、単量体(a)を、所望により単量体(b)〜(d)から選ばれる少なくとも1種の単量体と共に重合することにより得ることができる。重合により得られた重合体を更に水素化してもよい。水素添加された重合体も、プロトン性極性基を有する環状オレフィン重合体に包含される。
【0192】
単量体(a)を、所望により単量体(b)〜(d)から選択される少なくとも1種の単量体と共に重合するための重合方法は、常法に従えばよく、例えば、開環重合法および付加重合法が挙げられる。
【0193】
重合触媒としては、例えば、モリブデン、ルテニウム、オスミウム等の金属錯体が好適に用いられる。これらの重合触媒は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0194】
重合触媒の量は、重合触媒中の金属化合物:環状オレフィンのモル比で、通常、1:100〜1:2,000,000、好ましくは1:500〜1:1,000,000、より好ましくは1:1,000〜1:500,000の範囲である。
【0195】
上記単量体を重合して得られた重合体の水素添加は、通常、水素添加触媒を用いて行われる。水素添加触媒としては、例えば、オレフィン化合物の水素添加に際して一般的に使用されているものを用いることができる。具体的には、チーグラータイプの均一系触媒、貴金属錯体触媒、担持型貴金属系触媒が挙げられる。
【0196】
これらの水素添加触媒のうち、官能基が変性する等の副反応が起きず、重合体中の炭素−炭素不飽和結合を選択的に水素添加できる点から、ロジウム、ルテニウム等の貴金属錯体触媒が好ましく、電子供与性の高い含窒素複素環式カルベン化合物またはホスフィン類が配位したルテニウム触媒が特に好ましい。
【0197】
プロトン性極性基を有する環状オレフィン重合体は、プロトン性極性基を有しない環状オレフィン重合体に、公知の変性剤を利用してプロトン性極性基を導入し、所望により水素添加を行なう方法によっても得ることができる。水素添加は、プロトン性極性基導入前の重合体について行なってもよい。また、プロトン性極性基を有する環状オレフィン重合体を更に変性して、プロトン性極性基を導入してもよい。
【0198】
プロトン性極性基を有しない環状オレフィン重合体は、例えば、単量体(b)〜(c)から選ばれる少なくとも1種の単量体と、必要に応じて単量体(d)とを重合することにより得ることができる。
【0199】
プロトン性極性基を導入するための変性剤としては、通常、1分子内にプロトン性極性基と反応性の炭素−炭素不飽和結合とを有する化合物が用いられる。このような化合物としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、アンゲリカ酸、チグリン酸、オレイン酸、エライジン酸、エルカ酸、ブラシジン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸、アトロパ酸、ケイ皮酸等の不飽和カルボン酸;アリルアルコール、メチルビニルメタノール、クロチルアルコール、メタリルアルコール、1−フェニルエテン−1−オール、2−プロペン−1−オール、3−ブテン−1−オール、3−ブテン−2−オール、3−メチル−3−ブテン−1−オール、3−メチル−2−ブテン−1−オール、2−メチル−3−ブテン−2−オール、2−メチル−3−ブテン−1−オール、4−ペンテン−1−オール、4−メチル−4−ぺンテン−1−オール、2−ヘキセン−1−オール等の不飽和アルコールが挙げられる。
【0200】
上記変性剤を用いた環状オレフィン重合体の変性反応は、常法に従えばよく、通常、ラジカル発生剤の存在下で行われる。
【0201】
プロトン性極性基を有する環状オレフィン重合体としては、例えば、式(A6−1)で表される構造単位を有する重合体が好ましく、式(A6−1)で表される構造単位と式(A6−2)で表される構造単位とを有する重合体がより好ましい。
【0202】
【化28】
式(A6−1)中、R
a1〜R
a4およびmは、式(a6−1)中の同一記号と同義である。式(A6−2)中、R
b1〜R
b4およびmは、式(b6−1)中の同一記号と同義である。
【0203】
《カルド樹脂(A7)》
カルド樹脂(A7)とは、カルド構造を有する樹脂である。カルド構造とは、環状構造を構成している環炭素原子に2つの環状構造が結合した骨格構造をいう。カルド構造の一般的な構造としては、フルオレン環の9位の炭素原子に2つの芳香環(例:ベンゼン環)が結合した構造が挙げられる。
【0204】
カルド樹脂としては、アルカリ可溶性の観点から、カルボキシル基およびフェノール性水酸基から選ばれる少なくとも1種の基を有するカルド樹脂を用いることが好ましい。
【0205】
環状構造を構成している環炭素原子に2つの環状構造が結合した骨格構造の具体例としては、9,9−ビス(フェニル)フルオレン骨格、9,9−ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン骨格、9,9−ビス(シアノフェニルまたはアミノアルキルフェニル)フルオレン骨格、エポキシ基を有する9,9−ビス(フェニル)フルオレン骨格、(メタ)アクリル基を有する9,9−ビス(フェニル)フルオレン骨格が挙げられる。
【0206】
カルド樹脂は、このカルド構造を有する骨格がそれに結合している官能基間の反応等により重合して形成される。カルド樹脂は、例えば、主鎖と嵩高い側鎖である環状構造とが1つの元素で繋がれた構造(カルド構造)をもち、主鎖に対してほぼ垂直方向に環状構造を有している。
【0207】
カルド樹脂は、例えば、カルド構造を有する単量体を重合して得られる重合体であるが、その他の共重合可能な単量体との共重合体であってもよい。上記単量体の重合方法は、常法に従えばよく、例えば、開環重合法や付加重合法等が採用される。
【0208】
カルド樹脂としては、例えば、カルド構造を有する単量体の重合体が挙げられる。
【0209】
カルド構造を有する単量体としては、例えば、9,9−ビス(4−グリシジロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス[4−(2−グリシジロキシエトキシ)フェニル]フルオレン等のカルド構造含有エポキシ化合物;下記式で表される化合物等のカルド構造含有(メタ)アクリル化合物;9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン等のカルド構造含有ビスフェノール類;が挙げられる。
【0210】
【化29】
式中、Aはエチレン基、プロピレン基等の炭素数2〜6のアルキレン基であり、前記アルキレン基はヒドロキシ基を有してもよく、2−ヒドロキシ−1,3−プロパンジイル基等が挙げられ、Rは水素原子またはメチル基であり、p,qは1〜30の整数である。
【0211】
以上例示のカルド構造を有する単量体は、アルカリ可溶性の観点から、フルオレン環上またはフルオレン環の9位の炭素原子に結合した芳香環上に、カルボキシル基およびフェノール性水酸基から選ばれる少なくとも1種の基を有していてもよい。
【0212】
カルド樹脂としては、市販品を用いることもできる。例えば、大阪ガスケミカル(株)製のオグゾールCR−TR1、オグゾールCR−TR2、オグゾールCR−TR3、オグゾールCR−TR4、オグゾールCR−TR5、オグゾールCR−TR6等の、カルド構造を有するポリエステル化合物が挙げられる。
【0213】
[感光剤(B)]
感光剤(B)としては、例えば、光酸発生剤、光ラジカル重合開始剤が挙げられる。感放射線性材料は、感光剤(B)を含有することで、感放射線特性を発揮することができ、かつ良好な放射線感度を有することができる。
【0214】
感光剤(B)は、1種単独で使用しても2種類以上を併用してもよい。
【0215】
感放射線性材料における感光剤(B)の含有量は、重合体(A)100質量部に対して、通常5〜100質量部であり、好ましくは10〜65質量部、より好ましくは15〜60質量部である。感光剤(B)の含有量を前記範囲とすることで、現像液となるアルカリ水溶液等に対する放射線の照射部分と未照射部分との溶解度の差を大きくし、パターニング性能を向上させることができる。
【0216】
《光酸発生剤》
光酸発生剤は、放射線の照射を含む処理によって酸を発生する化合物である。放射線としては、例えば、可視光線、紫外線、遠紫外線、X線、荷電粒子線が挙げられる。
【0217】
光酸発生剤としては、例えば、キノンジアジド化合物、オキシムスルホネート化合物、オニウム塩、N−スルホニルオキシイミド化合物、ハロゲン含有化合物、ジアゾメタン化合物、スルホン化合物、スルホン酸エステル化合物、カルボン酸エステル化合物が挙げられる。これらの化合物を用いることで、ポジ型の感放射線特性を発揮する材料を得ることができる。
【0218】
光酸発生剤としては、キノンジアジド化合物、オキシムスルホネート化合物、オニウム塩、スルホン酸エステル化合物が好ましく、キノンジアジド化合物、オキシムスルホネート化合物がより好ましく、キノンジアジド化合物が特に好ましい。
【0219】
〈キノンジアジド化合物〉
キノンジアジド化合物は、放射線の照射およびアルカリ水溶液を用いた現像を含む処理によってカルボン酸を発生する。キノンジアジド化合物としては、例えば、フェノール性化合物またはアルコール性化合物(以下「母核」ともいう)と、1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸ハライドとの縮合物が挙げられる。
【0220】
母核としては、例えば、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、ペンタヒドロキシベンゾフェノン、ヘキサヒドロキシベンゾフェノン、ポリ(ヒドロキシフェニル)アルカン、その他の母核が挙げられる。
【0221】
トリヒドロキシベンゾフェノンとしては、例えば、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,4,6−トリヒドロキシベンゾフェノンが挙げられる。
【0222】
テトラヒドロキシベンゾフェノンとしては、例えば、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,3’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,2’−テトラヒドロキシ−4’−メチルベンゾフェノン、2,3,4,4’−テトラヒドロキシ−3’−メトキシベンゾフェノンが挙げられる。
【0223】
ペンタヒドロキシベンゾフェノンとしては、例えば、2,3,4,2’,6’−ペンタヒドロキシベンゾフェノンが挙げられる。
【0224】
ヘキサヒドロキシベンゾフェノンとしては、例えば、2,4,6,3’,4’,5’−ヘキサヒドロキシベンゾフェノン、3,4,5,3’,4’,5’−ヘキサヒドロキシベンゾフェノンが挙げられる。
【0225】
ポリ(ヒドロキシフェニル)アルカンとしては、例えば、ビス(2,4−ジヒドロキシフェニル)メタン、ビス(p−ヒドロキシフェニル)メタン、トリス(p−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,1−トリス(p−ヒドロキシフェニル)エタン、ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)プロパン、1,1,3−トリス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−3−フェニルプロパン、4,4’−〔1−{4−(1−[4−ヒドロキシフェニル]−1−メチルエチル)フェニル}エチリデン〕ビスフェノール、ビス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン、3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインデン−5,6,7,5’,6’,7’−ヘキサノール、2,2,4−トリメチル−7,2’,4’−トリヒドロキシフラバンが挙げられる。
【0226】
その他の母核としては、例えば、2−メチル−2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−4−(4−ヒドロキシフェニル)−7−ヒドロキシクロマン、1−[1−{3−(1−[4−ヒドロキシフェニル]−1−メチルエチル)−4,6−ジヒドロキシフェニル}−1−メチルエチル]−3−〔1−{3−(1−[4−ヒドロキシフェニル]−1−メチルエチル)−4,6−ジヒドロキシフェニル}−1−メチルエチル〕ベンゼン、4,6−ビス{1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル}−1,3−ジヒドロキシベンゼンが挙げられる。
【0227】
これらの母核のうち、2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、1,1,1−トリス(p−ヒドロキシフェニル)エタン、4,4’−〔1−{4−(1−[4−ヒドロキシフェニル]−1−メチルエチル)フェニル}エチリデン〕ビスフェノールが好ましい。
【0228】
1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸ハライドとしては、1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸クロリドが好ましい。1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸クロリドとしては、例えば、1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸クロリド、1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸クロリドが挙げられ、1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸クロリドが好ましい。
【0229】
フェノール性化合物またはアルコール性化合物(母核)と、1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸ハライドとの縮合反応においては、フェノール性化合物またはアルコール性化合物中のOH基数に対して、好ましくは30〜85モル%、より好ましくは50〜70モル%に相当する1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸ハライドを用いることができる。縮合反応は、公知の方法によって実施することができる。
【0230】
キノンジアジド化合物としては、例示した母核のエステル結合をアミド結合に変更した1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸アミド類、例えば、2,3,4−トリアミノベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸アミド等も好適に使用される。
【0231】
〈その他の例〉
オキシムスルホネート化合物の具体例としては、例えば、特開2011−227106、特開2012−234148、特開2013−054125等の公報に記載された化合物が挙げられる。オニウム塩の具体例としては、例えば、特許第5208573号、特許第5397152号、特許第5413124号、特開2004−2110525号、特開2008−129423号、特開2010−215616号および特開2013−228526号等の公報に記載された化合物が挙げられる。
【0232】
その他の酸発生剤の具体例としては、例えば、特許第49242256号、特開2011−064770号、特開2011−232648号、特開2012−185430号、特開2013−242540号等の公報に記載された化合物が挙げられる。
【0233】
《光ラジカル重合開始剤》
感光剤(B)として光ラジカル重合開始剤を用い、後述する、重合性炭素−炭素二重結合含有化合物等の架橋剤(D)を用いることで、ネガ型の感放射線特性を発揮する材料を得ることができる。
【0234】
光ラジカル重合開始剤としては、例えば、2,2'−ビス(2,4−ジクロロフェニル)−4,5,4',5'−テトラフェニル−1,2'−ビイミダゾール、2,2'−ビス(2−クロロフェニル)−4,5,4',5'−テトラフェニル−1,2'−ビイミダゾール、2,2'−ビス(2,4−ジクロロフェニル)−4,5,4',5'−テトラフェニル−1,2'−ビイミダゾール、2,2'−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−4,5,4',5'−テトラフェニル−1,2'−ビイミダゾール、2,2'−ビス(2−メチルフェニル)−4,5,4',5'−テトラフェニル−1,2'−ビイミダゾール、2,2'−ジフェニル−4,5,4',5'−テトラフェニル−1,2'−ビイミダゾール等のビイミダゾール化合物;ジエトキシアセトフェノン、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン等のアルキルフェノン化合物;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド化合物;2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(4−メトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(4−メトキシナフチル)−1,3,5−トリアジン等のトリアジン化合物;並びにベンゾイン等のベンゾイン化合物;ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン等のベンゾフェノン化合物が挙げられる。
【0235】
[樹脂(C)]
樹脂(C)は、ノボラック樹脂、レゾール樹脂、およびレゾール樹脂の縮合物から選択される少なくとも1種である。これらの中でも、良好なアルカリ可溶性(現像性)を有することから、ノボラック樹脂が好ましい。
【0236】
樹脂(C)は、熱を加えることにより発色する物質である。後述する絶縁膜の形成方法において、露光前は樹脂(C)を含む感放射線性材料から形成された塗膜自体は波長300〜400nmにおいて遮光性を有さないが、露光および現像後の加熱により樹脂(C)がケト化して、得られた絶縁膜は前記波長において遮光性を有するものと推定される。このような樹脂(C)を用いることで、感放射線性材料において、遮光性付与とアルカリ現像性とを両立することができる。
【0237】
例えば、プレベーク時の加熱温度である60〜130℃程度では上記遮光性を付与せず、ポストベーク時の加熱温度である130℃を超えて300℃以下程度で上記遮光性を付与することができる。
【0238】
ノボラック樹脂としては、例えば、式(C1)で表される構造単位を有するノボラック樹脂が挙げられる。
【0239】
【化30】
式(C1)中、Aはフェノール性水酸基を有する2価の芳香族基であり、R
1は、メチレン基、炭素数2〜30のアルキレン基、炭素数4〜30の2価の脂環式炭化水素基、炭素数7〜30のアラルキレン基または−R
2−Ar−R
2−で表される基(Arは2価の芳香族基であり、R
2はそれぞれ独立にメチレン基または炭素数2〜20のアルキレン基である)である。また、前記メチレン基が有する1つの水素原子は、シクロペンタジエニル基、芳香族環、芳香族環を含む基、または窒素原子、硫黄原子、酸素原子等を有するヘテロ環で置換されていてもよい。
【0240】
R
1において炭素数2〜30のアルキレン基としては、例えば、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、テトラデシレン基、ヘキサデシレン基、オクタデシレン基、ノナデシレン基、イコシレン基、ヘンイコシレン基、ドコシレン基、トリコシレン基、テトラコシレン基、ペンタコシレン基、ヘキサコシレン基、ヘプタコシレン基、オクタコシレン基、ノナコシレン基、トリアコンチレン基が挙げられる。
【0241】
R
1において炭素数4〜30の2価の脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロブタンジイル基、シクロペンタンジイル基、シクロヘキサンジイル基、シクロオクタンジイル基が挙げられる。
【0242】
R
1において炭素数7〜30のアラルキレン基としては、例えば、ベンジレン基、フェネチレン基、ベンジルプロピレン基、ナフチレンメチレン基が挙げられる。
【0243】
R
1において−R
2−Ar−R
2−で表される基としては、例えば、−CH
2−Ph−CH
2−で表される基(Phはフェニレン基である)が挙げられる。
【0244】
Aにおいてフェノール性水酸基を有する2価の芳香族基としては、例えば、フェノール性水酸基を有するベンゼン環、フェノール性水酸基を有する縮合多環式芳香族基が挙げられる。フェノール性水酸基を有する縮合多環式芳香族基は、例えば、縮合多環式芳香族炭化水素基に含まれる、芳香環炭素に結合した水素原子の一部または全部を、水酸基に置換した基である。縮合多環式芳香族炭化水素基としては、例えば、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環が挙げられる。
【0245】
フェノール性水酸基を有する2価の芳香族基としては、具体的には、式(c1−1)、式(c1−2)、式(c1−3)または式(c1−4)で表される2価の基であることが好ましい。
【0246】
【化31】
式(c1−1)〜(c1−4)中の各記号の意味は、以下のとおりである。
【0247】
a1は1〜4の整数である。b1は0〜3の整数である。a2〜a5およびb2〜b5はそれぞれ独立に0〜4の整数である。a6およびb6は0〜2の整数である。
【0248】
ただし、a2+a3は1以上6以下の整数であり、b2+b3は0以上5以下の整数であり、a2+a3+b2+b3は1以上6以下の整数であり;a4+a5+a6は1以上8以下の整数であり、b4+b5+b6は0以上7以下の整数であり、a4+a5+a6+b4+b5+b6は1以上8以下の整数である。また、1≦a1+b1≦4であり、a2+b2≦4であり、a3+b3≦4であり、a4+b4≦4であり、a5+b5≦4であり、a6+b6≦2である。
【0249】
a1、a2+a3、a4+a5+a6は、各々、好ましくは1〜3の整数である。
【0250】
Rは、炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10の炭化水素基、または炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10のアルコキシ基であり、Rが複数ある場合はそれぞれ同一でも異なってもよい。炭化水素基としては、例えば、メチル基、プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基等のアルキル基が挙げられる。アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基が挙げられる。
【0251】
式(c1−1)〜式(c1−4)において、−OHおよび−Rの結合位置は特に限定されず、2つの−R
1−の結合位置も特に限定されない。例えば、2つの−R
1−が、異なるベンゼン核に結合していてもよく(例えば下記式(1))、同一のベンゼン核に結合していてもよい(例えば下記式(2))。式中、*は結合手である。下記式(1),(2)は式(c1−2)についての具体例であるが、式(c1−3)、式(c1−4)においても同様である。なお、便宜上、ベンゼン核上の置換基は省略した。
【0252】
【化32】
上記Aにおいて、−R
1−との結合位置は、例えば、上記Aに含まれる水酸基に対してo−位および/またはp−位であることが好ましい。
【0253】
上記Aとしては、遮光性や耐熱性の付与およびアルカリ現像性の観点から、式(c1−2)、式(c1−3)または式(c1−4)で表される基が好ましく、式(c1−2)または式(c1−3)で表される基がより好ましい。
【0254】
樹脂(C)としては、良好なアルカリ可溶性(現像性)を有することから、ノボラック樹脂が好ましい。感放射線性材料にアルカリ可溶性のノボラック樹脂を含有させることで、解像性が良好な感放射線性材料を得ることができる。
【0255】
ノボラック樹脂は、例えばフェノール類とアルデヒド類とを、酸触媒の存在下で縮合させ、必要により未反応の成分を留去することにより得ることができる。反応条件としては、溶剤中、フェノール類とアルデヒド類とを通常60〜200℃で1〜20時間程度反応させる。例えば、特公昭47−15111号公報、特開昭63−238129号公報等に記載の方法により合成することができる。
【0256】
レゾール樹脂は、例えばフェノール類とアルデヒド類とを、塩基触媒の存在下で縮合させ、必要により未反応の成分を留去することにより得ることができる。反応条件としては、溶剤中、フェノール類とアルデヒド類とを通常40〜120℃で1〜20時間程度反応させる。このようにして、例えば、フェノール類に含まれる芳香環に、アルデヒド類由来の基(例:−R
1−OH、R
1は式(C1)中のR
1と同義である)が結合したレゾール樹脂を得ることができる。レゾール樹脂の縮合物は、レゾール樹脂に対して熱または酸を加えることによって脱水縮合反応を進めることにより得ることができる。この反応は、レゾール樹脂に含まれるアルデヒド類由来の基が脱水縮合することによって進む。加熱により前記反応を進める場合、レゾール樹脂またはその溶液を通常60〜200℃で1〜20時間程度反応させる。レゾール樹脂およびその縮合物は、例えば、特許第3889274号公報、特許第4013111号公報、特開2010−111013号公報等に記載の方法により合成することができる。
【0257】
フェノール類としては、例えば、
水酸基数が1〜4であり、好ましくは1〜3であり、かつベンゼン核数が1の化合物、具体的にはフェノール、オルトクレゾール、メタクレゾール、パラクレゾール、2,3−ジメチルフェノール、2,5−ジメチルフェノール、3,4−ジメチルフェノール、3,5−ジメチルフェノール、2,4−ジメチルフェノール、2,6−ジメチルフェノール、2,3,5−トリメチルフェノール、2,3,6−トリメチルフェノール、2−t−ブチルフェノール、3−t−ブチルフェノール、4−t−ブチルフェノール、2−メチルレゾルシノール、4−メチルレゾルシノール、5−メチルレゾルシノール、4−t−ブチルカテコール、2−メトキシフェノール、3−メトキシフェノール、2−プロピルフェノール、3−プロピルフェノール、4−プロピルフェノール、2−イソプロピルフェノール、2−メトキシ−5−メチルフェノール、2−t−ブチル−5−メチルフェノール、2−イソプロピル−5−メチルフェノール、5−イソプロピル−2−メチルフェノール;
水酸基数が1〜6であり、好ましくは1〜3であり、かつベンゼン核数が2の化合物(ナフタレン型化合物)、具体的には1−ナフトール、2−ナフトール等のモノヒドロキシナフタレン、1,2−ジヒドロキシナフタレン、1,3−ジヒドロキシナフタレン、1,4−ジヒドロキシナフタレン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、1,7−ジヒドロキシナフタレン、1,8−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン等のジヒドロキシナフタレン;
水酸基数が1〜8であり、好ましくは1〜3であり、かつベンゼン核数が3の化合物(アントラセン型化合物またはフェナントレン型化合物)、具体的には1−ヒドロキシアントラセン、2−ヒドロキシアントラセン、9−ヒドロキシアントラセン等のモノヒドロキシアントラセン、1,4−ジヒドロキシアントラセン、9,10−ジヒドロキシアントラセン等のジヒドロキシアントラセン、1,2,10−トリヒドロキシアントラセン、1,8,9−トリヒドロキシアントラセン、1,2,7−トリヒドロキシアントラセン等のトリヒドロキシアントラセン、1−ヒドロキシフェナントレン等のヒドロキシフェナントレン;
が挙げられる。
【0258】
アルデヒド類としては、例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、テレフタルアルデヒドが挙げられる。
【0259】
樹脂(C)の合成において、アルデヒド類の使用量は、フェノール類1モルに対して、通常0.3モル以上であり、好ましくは0.4〜3モル、より好ましくは0.5〜2モルである。
【0260】
ノボラック樹脂の合成における酸触媒としては、例えば、塩酸、パラトルエンスルホン酸、トリフロロメタンスルホン酸が挙げられる。レゾール樹脂の合成における塩基触媒としては、例えば、アンモニア水、第3級アミンが挙げられる。
【0261】
樹脂(C)のポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定した値において、通常100〜50,000であり、好ましくは150〜10,000、より好ましくは500〜6,000である。Mwが前記範囲にある樹脂(C)は、遮光性および解像性の点で好ましい。例えばノボラック樹脂の上記Mwは、好ましくは500〜50,000であり、より好ましくは700〜5,000であり、さらに好ましくは800〜3,000である。
【0262】
樹脂(C)は、1種単独で使用しても2種類以上を併用してもよい。
【0263】
感放射線性材料において、樹脂(C)の含有量は、重合体(A)100質量部に対して、通常2〜200質量部であり、好ましくは3〜160質量部、より好ましくは4〜140質量部であり、特に好ましくは10〜100質量部である。樹脂(C)の含有量が前記範囲の下限値以上であると、樹脂(C)に基づく遮光性および現像性付与の効果が発揮されやすい。樹脂(C)の含有量が前記範囲の上限値以下であると、絶縁膜の低吸水性の悪化および耐熱性の低下が起こるおそれが小さい。
【0264】
[架橋剤(D)]
架橋剤(D)は、架橋性官能基を有する化合物である。架橋剤(D)としては、例えば、1分子中に2個以上の架橋性官能基を有する化合物が挙げられる。
【0265】
感放射線性材料からなる絶縁膜を有機EL素子の構成要素として用いる場合、有機EL素子では、有機発光層が水分と接触すると劣化することから、架橋剤(D)を用いて絶縁膜の吸水性を小さくすることが好ましい。また、感光剤(B)として光ラジカル重合開始剤を用い、架橋剤(D)として重合性炭素−炭素二重結合含有化合物を用いることで、ネガ型の感放射線性材料を得ることができる。
【0266】
架橋性官能基としては、例えば、イソシアネート基およびブロックイソシアネート基、オキセタニル基、グリシジルエーテル基、グリシジルエステル基、グリシジルアミノ基、メトキシメチル基、エトキシメチル基、ベンジルオキシメチル基、アセトキシメチル基、ベンゾイロキシメチル基、ホルミル基、アセチル基、ジメチルアミノメチル基、ジエチルアミノメチル基、ジメチロールアミノメチル基、ジエチロールアミノメチル基、モルホリノメチル基;ビニル基、ビニリデン基、(メタ)アクリロイル基等の重合性炭素−炭素二重結合を有する基が挙げられる。
【0267】
架橋剤(D)としては、例えば、オキセタニル基含有化合物、ビスフェノールA系エポキシ化合物、ビスフェノールF系エポキシ化合物、ビスフェノールS系エポキシ化合物、ノボラック樹脂系エポキシ化合物、レゾール樹脂系エポキシ化合物、ポリ(ヒドロキシスチレン)系エポキシ化合物、メトキシメチル基含有フェノール化合物、メチロール基含有メラミン化合物、メチロール基含有ベンゾグアナミン化合物、メチロール基含有尿素化合物、メチロール基含有フェノール化合物、アルコキシアルキル基含有メラミン化合物、アルコキシアルキル基含有ベンゾグアナミン化合物、アルコキシアルキル基含有尿素化合物、アルコキシアルキル基含有フェノール化合物、カルボキシメチル基含有メラミン樹脂、カルボキシメチル基含有ベンゾグアナミン樹脂、カルボキシメチル基含有尿素樹脂、カルボキシメチル基含有フェノール樹脂、カルボキシメチル基含有メラミン化合物、カルボキシメチル基含有ベンゾグアナミン化合物、カルボキシメチル基含有尿素化合物、カルボキシメチル基含有フェノール化合物、重合性炭素−炭素二重結合含有化合物が挙げられる。
【0268】
オキセタニル基含有化合物としては、例えば、4,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)メチル]ビフェニル、3,7−ビス(3−オキセタニル)−5−オキサノナン、3,3’−〔1,3−(2−メチレニル)プロパンジイルビス(オキシメチレン)〕ビス(3−エチルオキセタン)、1,4−ビス〔(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシメチル〕ベンゼン、1,2−ビス〔(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシメチル〕エタン、1,3−ビス〔(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシメチル〕プロパン、エチレングリコールビス〔(3−エチル−3−オキセタニル)メチル〕エーテル、ジシクロペンテニルビス〔(3−エチル−3−オキセタニル)メチル〕エーテル、トリエチレングリコールビス〔(3−エチル−3−オキセタニル)メチル〕エーテル、テトラエチレングリコールビス〔(3−エチル−3−オキセタニル)メチル〕エーテル、トリシクロデカンジイルジメチレンビス〔(3−エチル−3−オキセタニル)メチル〕エーテル、トリメチロールプロパントリス〔(3−エチル−3−オキセタニル)メチル〕エーテル、1,4−ビス〔(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ〕ブタン、1,6−ビス〔(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ〕ヘキサン、ペンタエリスリトールトリス〔(3−エチル−3−オキセタニル)メチル〕エーテル、ペンタエリスリトールテトラキス〔(3−エチル−3−オキセタニル)メチル〕エーテル、ポリエチレングリコールビス〔(3−エチル−3−オキセタニル)メチル〕エーテル、ジペンタエリスリトールヘキサキス〔(3−エチル−3−オキセタニル)メチル〕エーテル、ジペンタエリスリトールペンタキス〔(3−エチル−3−オキセタニル)メチル〕エーテル、ジペンタエリスリトールテトラキス〔(3−エチル−3−オキセタニル)メチル〕エーテルが挙げられる。
【0269】
オキセタニル基含有化合物としては、さらに、ジペンタエリスリトールヘキサキス〔(3−エチル−3−オキセタニル)メチル〕エーテルとカプロラクトンとの反応生成物、ジペンタエリスリトールペンタキス〔(3−エチル−3−オキセタニル)メチル〕エーテルとカプロラクトンとの反応生成物、ジトリメチロールプロパンテトラキス〔(3−エチル−3−オキセタニル)メチル〕エーテル、ビスフェノールAビス〔(3−エチル−3−オキセタニル)メチル〕エーテルとエチレンオキサイドとの反応生成物、ビスフェノールAビス〔(3−エチル−3−オキセタニル)メチル〕エーテルとプロピレンオキサイドとの反応生成物、水添ビスフェノールAビス〔(3−エチル−3−オキセタニル)メチル〕エーテルとエチレンオキサイドとの反応生成物、水添ビスフェノールAビス〔(3−エチル−3−オキセタニル)メチル〕エーテルとプロピレンオキサイドとの反応生成物、ビスフェノールFビス〔(3−エチル−3−オキセタニル)メチル〕エーテルとエチレンオキサイドとの反応生成物が挙げられる。
【0270】
架橋剤(D)としては、例えば、イソシアネート基が保護基によりブロックされた基を有する化合物を挙げることもできる。前記化合物を「ブロックイソシアネート化合物」ともいう。イソシアネート基が保護基によりブロックされた基を「ブロックイソシアネート基」ともいう。
【0271】
ブロックイソシアネート化合物としては、例えば、特開2013−225031号公報、特許第5132096号公報、特許第5071686号公報、特開2013−223859号公報、特許第5199752号公報、特開2003−41185号公報、特許第4879557号公報、特開2006−119441号公報に記載された化合物が挙げられる。
【0272】
重合性炭素−炭素二重結合含有化合物としては、例えば、多官能(メタ)アクリル酸エステルが挙げられ、具体的には、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAアルキレンオキシドジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFアルキレンオキシドジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ε−カプロラクトン付加トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ε−カプロラクトン付加ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ε−カプロラクトン付加ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ε−カプロラクトン付加ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0273】
架橋剤(D)は、1種単独で使用しても2種類以上を併用してもよい。
【0274】
感放射線性材料において、架橋剤(D)の含有量は、重合体(A)100質量部に対して、通常1〜210質量部であり、好ましくは4〜160質量部、より好ましくは10〜150質量部、より好ましくは15〜100質量部である。架橋剤(D)の含有量が前記範囲の下限値以上であると、絶縁膜の低吸水性が向上する傾向にある。架橋剤(D)の含有量が前記範囲の上限値以下であると、絶縁膜の耐熱性が向上する傾向にある。
【0275】
[溶剤(E)]
溶剤(E)は、感放射線性材料を液状とするために使用することができる。
【0276】
溶剤(E)としては、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、エチレングリコールモノアルキルエーテル、エチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテルプロピオネート、トリエチレングリコールジアルキルエーテル、ヒドロキシ基含有ケトン、環状エーテル又は環状エステルが好ましい。
【0277】
ジエチレングリコールモノアルキルエーテルとしては、例えば、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルが挙げられる。
【0278】
ジエチレングリコールジアルキルエーテルとしては、例えば、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテルが挙げられる。
【0279】
エチレングリコールモノアルキルエーテルとしては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルが挙げられる。
【0280】
エチレングリコールモノアルキルエーテルアセテートとしては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテートが挙げられる。
【0281】
ジエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテートとしては、例えば、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートが挙げられる。
【0282】
プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテートとしては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテートが挙げられる。
【0283】
プロピレングリコールモノアルキルエーテルとしては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテルが挙げられる。
【0284】
プロピレングリコールモノアルキルエーテルプロピオネートとしては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールモノエチルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールモノブチルエーテルプロピオネートが挙げられる。
【0285】
トリエチレングリコールジアルキルエーテルとしては、例えば、トリエチレングリコールジメチルエーテルが挙げられる。
【0286】
ヒドロキシ基含有ケトンとして、例えば、アセトール、3−ヒドロキシ−3−メチル−2−ブタノン、4−ヒドロキシ−3−メチル−2−ブタノン、5−ヒドロキシ−2−ペンタノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン(ジアセトンアルコール)が挙げられる。
【0287】
環状エーテル又は環状エステルとしては、例えば、γ−ブチロラクトン、テトラヒドロフラン、ジオキサンが挙げられる。
【0288】
溶剤(E)としては、さらに、アミド系溶剤、例えばN,N,2−トリメチルプロピオンアミド、3−ブトキシ−N,N−ジメチルプロパンアミド、3−メトキシ−N,N−ジメチルプロパンアミド、3−ヘキシルオキシ−N,N−ジメチルプロパンアミド、イソプロポキシ−N−イソプロピル−プロピオンアミド、n−ブトキシ−N−イソプロピル−プロピオンアミド等も挙げられる。
【0289】
溶剤(E)としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下「PGMEA」ともいう)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(以下「PGME」ともいう)、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル(以下「EDM」ともいう)、ジアセトンアルコール(以下「DAA」ともいう)、γ−ブチロラクトン(以下「BL」ともいう)が特に好ましい。
【0290】
また、一実施態様では、溶剤(E)としては、γ−ブチロラクトンを用いることが好ましく、BLを含む混合溶剤が好ましい。BLの含有量としては、溶剤(E)の合計量100質量%において、70質量%以下が好ましく、20〜60質量%がより好ましい。BLは、PGMEA、PGME、EDMおよびDAAから選択される少なくとも1種と併用することが好ましい。BLの含有量を前記範囲とすることで、感放射線性材料における重合体(A)の溶解状態を好適に維持できる傾向にある。
【0291】
溶剤(E)としては、上記例示した溶剤以外に、必要に応じて、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール溶剤;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶剤などを併用することもできる。
【0292】
溶剤(E)として上記例示した溶剤は、NMPに比べて低吸水性である。したがって、上記材料は、吸水性の高いNMPを用いることなく、低吸水性の溶剤を用いた調製が可能となる。その結果、上記材料は、低吸水性を示すことができる。溶剤(E)として例示した上記溶剤は、安全性が高いため、上記材料の安全性を高めることができる。
【0293】
溶剤(E)として上記例示した溶剤を使用する場合、上記材料から形成される絶縁膜を低吸水性とすることができる。そのため、上記材料は、有機EL素子が有する絶縁膜の形成に好適に使用することができる。
【0294】
溶剤(E)は、1種単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0295】
感放射線性材料において、溶剤(E)の含有量は、当該材料の固形分濃度が通常5〜60質量%、好ましくは10〜50質量%、より好ましくは15〜40質量%となる量である。ここで固形分とは、溶剤(E)以外の全成分をいう。溶剤(E)の含有量を前記範囲とすることで、現像性を損なうことなく、上記材料から形成される絶縁膜の低吸水性が向上する傾向にある。
【0296】
[その他の任意成分]
感放射線性材料は、上記必須成分および好適成分に加え、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて密着助剤(F)、界面活性剤(G)等のその他の任意成分を含有してもよい。その他の任意成分は、単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0297】
<密着助剤(F)>
密着助剤(F)は、基板等の膜形成対象物と絶縁膜との接着性を向上させる成分である。密着助剤(F)は、特に無機物の基板と絶縁膜との接着性を向上させるために有用である。無機物としては、例えば、シリコン、酸化シリコン、窒化シリコン等のシリコン化合物;金、銅、アルミニウム等の金属が挙げられる。
【0298】
密着助剤(F)としては、官能性シランカップリング剤が好ましい。官能性シランカップリング剤としては、例えば、カルボキシル基、ハロゲン原子、ビニル基、メタクリロイル基、イソシアネート基、エポキシ基、オキセタニル基、アミノ基、チオール基等の反応性置換基を有するシランカップリング剤が挙げられる。
【0299】
官能性シランカップリング剤としては、例えば、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、トリメトキシシリル安息香酸、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルアルキルジアルコキシシラン、γ−クロロプロピルトリアルコキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリアルコキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランが挙げられる。これらの中でも、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルアルキルジアルコキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランが好ましい。
【0300】
感放射線性材料における密着助剤(F)の含有量は、重合体(A)100質量部に対して、好ましくは20質量部以下、より好ましくは0.01〜20質量部である。密着助剤(F)の含有量を前記範囲とすることで、形成される絶縁膜と基板との密着性がより改善される。
【0301】
<界面活性剤(G)>
界面活性剤(G)は、感放射線性材料の塗膜形成性を高める成分である。感放射線性材料は、界面活性剤(G)を含有することで、塗膜の表面平滑性を向上でき、その結果、絶縁膜の膜厚均一性をより向上できる。界面活性剤(G)としては、例えば、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤が挙げられる。
【0302】
界面活性剤(G)としては、例えば、特開2003−015278号公報、および特開2013−231869号公報に記載された具体例を挙げることができる。
【0303】
感放射線性材料における界面活性剤(G)の含有量は、重合体(A)100質量部に対して、好ましくは20質量部以下、より好ましくは0.01〜15質量部、さらに好ましくは0.05〜10質量部である。界面活性剤(G)の含有量を前記範囲とすることで、形成される塗膜の膜厚均一性をより向上することができる。
【0304】
[感放射線性材料の調製方法]
感放射線性材料は、例えば溶剤(E)に、重合体(A)、感光剤(B)、樹脂(C)等の必須成分、その他の任意成分を混合することによって調製することができる。また、ゴミを取り除くために、各成分を均一に混合した後、得られた混合物をフィルター等で濾過してもよい。
【0305】
〔感放射線性材料を用いた絶縁膜の形成方法〕
本発明の表示又は照明装置が有する絶縁膜の形成方法は、上述した感放射線性材料を用いて基板上に塗膜を形成する工程1、前記塗膜の少なくとも一部に放射線を照射する工程2、前記放射線が照射された塗膜を現像する工程3、および前記現像された塗膜を加熱する工程4を有する。
【0306】
上記絶縁膜の形成方法によれば、遮光性に優れ、境界部分が順テーパー状である絶縁膜を、TFT基板上に形成することができる。また、上記材料は感放射線性に優れることから、当該特性を利用した露光、現像、加熱によりパターンを形成することによって、容易に微細かつ精巧なパターンを有する絶縁膜を形成することができる。
【0307】
《工程1》
工程1では、感放射線性材料を基板表面に塗布し、好ましくはプレベークを行うことにより溶剤(E)を除去することで、塗膜を形成する。前記塗膜の膜厚としては、プレベーク後の値として、好ましくは0.3〜15.0μm、より好ましくは0.5〜10.0μm、さらに好ましくは1.0〜5.0μmとすることができる。
【0308】
基板としては、例えば、樹脂基板、ガラス基板、シリコンウエハが挙げられる。基板としてはさらに、製造途中の有機EL素子において、例えばTFTやその配線が形成されたTFT基板が挙げられる。本発明の装置を製造する場合、特にTFT基板上に上記塗膜を形成する。
【0309】
感放射線性材料の塗布方法としては、例えば、スプレー法、ロールコート法、スピンコート法、スリットダイ塗布法、バー塗布法、インクジェット法が挙げられる。これらの塗布方法の中でも、スピンコート法およびスリットダイ塗布法が好ましい。
【0310】
プレベークの条件としては、感放射線性材料の組成等によっても異なるが、例えば、加熱温度が60〜130℃、加熱時間が30秒間〜15分間程度とされる。プレベークは、樹脂(C)に基づく遮光性が塗膜に付与されない温度で行うことが好ましい。
【0311】
《工程2》
工程2では、工程1で形成された塗膜に、所定のパターンを有するマスクを介して、放射線を照射する。このときに用いられる放射線としては、例えば、可視光線、紫外線、遠紫外線、X線、荷電粒子線が挙げられる。可視光線としては、例えば、g線(波長436nm)、h線(波長405nm)が挙げられる。紫外線としては、例えば、i線(波長365nm)が挙げられる。遠紫外線としては、例えば、KrFエキシマレーザによるレーザ光が挙げられる。X線としては、例えば、シンクロトロン放射線が挙げられる。荷電粒子線としては、例えば、電子線が挙げられる。
【0312】
これらの放射線の中でも、可視光線および紫外線が好ましく、可視光線および紫外線の中でもg線及び/又はi線を含む放射線が特に好ましい。i線を含む放射線を用いる場合、露光量としては、6000mJ/cm
2以下が好ましく、20〜2000mJ/cm
2が好ましい。
【0313】
《工程3》
工程3では、工程2で放射線を照射した塗膜の現像を行う。これにより、例えば、ポジ型の感放射線性材料を用いた場合は放射線の照射部分を除去し、ネガ型の感放射線性材料を用いた場合は放射線の非照射部分を除去し、所望のパターンを形成することができる。現像処理に用いられる現像液としては、アルカリ水溶液が好ましい。
【0314】
アルカリ水溶液に含まれるアルカリ性化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア、エチルアミン、n−プロピルアミン、ジエチルアミン、ジエチルアミノエタノール、ジ−n−プロピルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、ピロール、ピペリジン、1,8−ジアザビシクロ〔5,4,0〕−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ〔4,3,0〕−5−ノナンが挙げられる。アルカリ水溶液におけるアルカリ性化合物の濃度としては、適当な現像性を得る観点から、0.1質量%以上5質量%以下が好ましい。
【0315】
現像液としては、アルカリ水溶液にメタノール、エタノール等の水溶性有機溶剤や界面活性剤を適当量添加した水溶液、またはアルカリ水溶液に感放射線性材料を溶解する各種有機溶剤を少量添加した水溶液を使用することもできる。後者の水溶液における有機溶剤としては、重合体(A)や感放射線性材料を得るための溶剤(E)と同様の溶剤を使用できる。
【0316】
現像方法としては、例えば、液盛り法、ディッピング法、揺動浸漬法、シャワー法が挙げられる。現像時間は、感放射線性材料の組成によって異なるが、通常10秒〜180秒間程度である。このような現像処理に続いて、例えば流水洗浄を30秒〜90秒間行った後、例えば圧縮空気や圧縮窒素で風乾させることによって、所望のパターンを形成することができる。
【0317】
《工程4》
工程4では、工程3の後に、ホットプレート、オーブン等の加熱装置を用いて、塗膜に対する加熱処理(ポストベーク処理)を行うことで絶縁膜を得る。この加熱処理における加熱温度は、例えば、130℃を超えて300℃以下であり、加熱時間は、加熱機器の種類により異なるが、例えば、5分間〜90分間である。この際に、2回以上の加熱工程を行うステップベーク法等を用いることもできる。加熱処理には、例えば、ホットプレート、オーブンを使用することができる。
【0318】
前記温度範囲の加熱処理により、波長300〜400nmにおける全光線透過率が15%以下、好ましくは10%以下、特に好ましくは6%以下という遮光性が、絶縁膜に付与される。このようにして、目的とするパターンの絶縁膜を基板上に形成することができる。
【0319】
工程4において、塗膜の加熱前に、パターニングされた塗膜に対してリンス処理や分解処理を行ってもよい。リンス処理では、溶剤(E)として挙げた低吸水性の溶剤を用い、塗膜を洗浄することが好ましい。分解処理では、高圧水銀灯等による放射線を全面に照射(後露光)することで、塗膜中に残存した感光剤(B)を分解することができる。この後露光における露光量は、好ましくは1000〜5000mJ/cm
2程度である。
【0320】
このようにして得られた絶縁膜は、波長300〜400nmの光に対して遮光性を有するとともに、構成材料が低吸水構造を備えることから低吸水性であり、製造工程においても、低吸水性の化合物を用いた処理が可能である。前記絶縁膜は、加えて、耐熱性、パターニング性、放射線感度、解像度等の点において、良好な特性を示する。このため、前記絶縁膜は、例えば有機EL素子等が有する隔壁としての絶縁膜の他に、保護膜や平坦化膜としての絶縁膜として、好適に用いることができる。
【0321】
〔有機EL表示装置および有機EL照明装置〕
以下、本発明の表示又は照明装置として、有機EL表示又は照明装置を具体例にとって、
図3を参照しつつ説明する。
図3は、本発明に係る有機EL表示又は照明装置(以下、単に「有機EL装置」ともいう)の主要部の構造を模式的に示す断面図である。
【0322】
図3の有機EL装置1は、マトリクス状に形成される複数の画素を有するアクティブマトリクス型の有機EL装置である。この有機EL装置1は、トップエミッション型、ボトムエミッション型のいずれでもよい。各部材を構成する材料の性質、例えば透明性は、トップエミッション型、ボトムエミッション型に応じて適宜選択される。
【0323】
有機EL装置1は、支持基板2、薄膜トランジスタ(以下「TFT」ともいう)3、第1の絶縁膜4、第1電極としての陽極5、スルーホール6、第2の絶縁膜7、有機発光層8、第2電極としての陰極9、パッシベーション膜10および封止基板11を備える。第2の絶縁膜7として、上述した絶縁膜が使用される。
【0324】
支持基板2は、絶縁材料より形成されている。有機EL装置1がボトムエミッション型である場合、支持基板2には高い透明性が求められる。そのため、絶縁材料としては、例えば、透明性の高いポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリイミド等の透明樹脂、無アルカリガラス等のガラス材料が好ましい。一方、有機EL装置1がトップエミッション型の場合、絶縁材料としては、任意の絶縁体を用いることができ、前述の透明樹脂、ガラス材料を用いることが可能である。
【0325】
TFT3は、各画素部分のアクティブ素子であり、支持基板2上に形成されている。このTFT3は、ゲート電極、ゲート絶縁膜、半導体層、ソース電極およびドレイン電極を備えている。本発明では、ゲート電極上にゲート絶縁膜および半導体層を順に備えるボトムゲート型に限らず、半導体層上にゲート絶縁膜およびゲート電極を順に備えるトップゲート型であってもよい。
【0326】
半導体層は、上述した、In、Ga、Sn、Ti、Nb、SbおよびZnから選択される1種以上の元素を含む酸化物半導体を用いて形成することができる。有機EL装置1では、第2の絶縁膜7(隔壁)が遮光性を有することから、有機発光層8から発生した光が半導体層に到達することを防止または低減することができる。したがって、光劣化しやすいIGZO等からなる半導体層を用いることができる。
【0327】
第1の絶縁膜4は、TFT3による表面凹凸を平坦化する役割を果たす平坦化膜である。第1の絶縁膜4は、TFT3の全体を被覆するように形成されている。第1の絶縁膜4は、上述した感放射線性材料を用いて形成してもよく、従来公知の感放射線性材料を用いて形成してもよい。第1の絶縁膜4の膜厚は、平坦化膜として優れた機能を奏するように大きくすることが好ましい。第1の絶縁膜4の膜厚としては、1μm〜5μmが好ましい。第1の絶縁膜4は、上述した絶縁膜の形成方法において説明した方法等により形成することができる。
【0328】
陽極5は、画素電極をなす。陽極5は、導電性材料によって第1の絶縁膜4上に形成されている。有機EL装置1がボトムエミッション型の場合、陽極5には透明であることが求められる。そのため、陽極5の材料としては、透明性の高いITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)、酸化スズが好ましい。有機EL装置1がトップエミッション型の場合、陽極5には光反射性が求められる。そのため、陽極5の材料としては、光反射性が高いAPC合金(銀、パラジウム、銅の合金)、ARA(銀、ルビジウム、金の合金)、MoCr(モリブデンとクロムの合金)、NiCr(ニッケルとクロムの合金)が好ましい。
【0329】
スルーホール6は、陽極5とTFT3のドレイン電極とを接続するために形成される。スルーホール6に形成された配線により、陽極5とTFT3のドレイン電極とが接続される。
【0330】
第2の絶縁膜7は、有機発光層8の配置領域を規定する凹部70を有する隔壁(バンク)としての役割を果たす。第2の絶縁膜7は、陽極5の一部を覆う一方で陽極5の一部を露出させるように形成されている。また、第2の絶縁膜7は、陽極5を露出させる境界部分における断面形状が順テーパー状である。第2の絶縁膜7は、上述した感放射線性材料を用いて、絶縁膜の形成方法において説明した方法等により形成することができる。
【0331】
第2の絶縁膜7は、塗膜の露光・現像によりパターニングすることで、平面視において、有機発光層8が形成される複数の凹部70がマトリクス状に配置されたものとして形成することができる。
【0332】
また、第2の絶縁膜7は、スルーホール6を充填するように形成されていることが好ましい。このような構成を採用することによって、第1の絶縁膜4上に形成された絶縁膜およびスルーホール6内に形成された絶縁膜が、有機発光層8から発生した光がTFT3の半導体層に到達することを防止または低減する防御壁となる。また、一つのTFT3に対応してスルーホール6が2個以上あると、有機発光層8から発生した光がTFT3の半導体層に到達することをさらに防止または低減できる。
【0333】
第2の絶縁膜7は、TFT3が有する半導体層の上方に少なくとも配置されるように、第1の絶縁膜4上に形成されていることが好ましい。ここで「上方」とは、支持基板2から封止基板11へ向かう方向である。第2の絶縁膜7は遮光性を有することから、有機発光層8から発生した光が半導体層に到達することを防止または低減することができる。
【0334】
第2の絶縁膜7の膜厚(第2の絶縁膜7の最上面と有機発光層8の最下面との距離)としては、0.3〜15.0μmが好ましく、0.5〜10.0μmがより好ましく、1.0〜5.0μmがさらに好ましい。
【0335】
有機発光層8は、電界を印加されて発光する。有機発光層8は、電界発光する有機発光材料を含む層である。有機発光層8は、第2の絶縁膜7によって規定される領域、すなわち凹部70で陽極5上に形成されている。このように、凹部70に有機発光層8を形成することで有機発光層8の周囲が第2の絶縁膜7によって包囲され、隣接する複数画素同士を区画することができる。
【0336】
有機発光層8は、第2の絶縁膜7の凹部70で陽極5と接触して形成されている。有機発光層8の厚さとしては、50nm〜100nmが好ましい。ここで有機発光層8の厚さとは、陽極5上の有機発光層8の底面から、陽極5上の有機発光層8の上面までの距離を意味する。
【0337】
さらに、陽極5と有機発光層8との間に正孔注入層及び/又は正孔輸送層が配置されていてもよく、有機発光層8と陰極9との間に電子輸送層及び/又は電子注入層が配置されていてもよい。
【0338】
陰極9は、複数の画素を共通に覆って形成され、有機EL装置1の共通電極をなす。陰極9は、導電性部材からなる。有機EL装置1がトップエミッション型の場合には、陰極9は可視光透過性の電極であることが好ましく、ITO電極やIZO電極が挙げられる。有機EL装置1がボトムエミッション型の場合には、陰極9は可視光透過性の電極である必要はない。その場合、陰極9の構成材料は、例えば、バリウム(Ba)、酸化バリウム(BaO)、アルミニウム(Al)およびAlを含む合金が挙げられる。
【0339】
パッシベーション膜10は、有機EL素子内への水分や酸素の浸入を抑制する。このパッシベーション膜10は、陰極9上に設けられている。
【0340】
封止基板11は、有機発光層8が配置された主面(TFT基板において支持基板2とは反対側の面)を封止する。封止基板11としては、無アルカリガラス基板等のガラス基板が挙げられる。有機発光層8が配置された主面は、TFT基板の外周端部付近に塗布されたシール剤を用い、封止層12を介して、封止基板11により封止することが好ましい。封止層12は、例えば、乾燥された窒素ガス等の不活性なガスの層、または接着剤等の充填材料の層とすることができる。
【0341】
本実施形態の有機EL装置1は、第2の絶縁膜7が波長300〜400nmの光に対して遮光性を有することから、当該装置の使用等に伴う半導体層の光劣化を抑制することができる。また、第1の絶縁膜4および第2の絶縁膜7を、低吸水性である感放射線性材料を用いて形成することができ、またこれらの絶縁膜4,7の形成工程において、低吸水性の材料を用いた洗浄等の処理が可能である。そのため、吸着水等の形態で絶縁膜形成材料に含まれる微量の水分が徐々に有機発光層8に浸入することを低減し、有機発光層8の劣化および発光状態の悪化を低減することができる。
【実施例】
【0342】
以下、本発明を実施例に基づいて更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。以下の実施例等の記載において、特に言及しない限り、「部」は「質量部」を示す。
【0343】
[GPC分析]
重合体(A)および樹脂(C)の重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、以下の条件で測定した。
・標準物質:ポリスチレン換算
・装置 :東ソー(株)製、商品名:HLC−8020
・カラム :東ソー(株)製ガードカラムH
XL−H、TSK gel G7000H
XL、TSK gel GMH
XL 2本、TSK gel G2000H
XLを順次連結したもの
・溶媒 :テトラヒドロフラン
・サンプル濃度:0.7質量%
・注入量 :70μL
・流速 :1mL/min
[NMR分析]
ポリシロキサン(A1)中のフェニル基の含有量は、「JNM−ECS400」(日本電子(株)製)を用いて
29Si−核磁気共鳴スペクトルを測定し、そのフェニル基が結合したSiのピーク面積とフェニル基が結合していないSiのピーク面積との比から求めた。
【0344】
<重合体(A)の合成>
[合成例A1]重合体(A−1)の合成(ポリイミド)
3口フラスコに重合溶剤としてのγ−ブチロラクトン390gを加えた後、ジアミン化合物としての2,2’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン120gを重合溶剤中に加えた。ジアミン化合物を重合溶剤に溶解させた後、酸二無水物としての4,4’−オキシジフタル酸二無水物71gを加えた。その後、60℃で1時間反応させた後、末端封止剤としての無水マレイン酸19gを加え、60℃で更に1時間反応させた後、昇温して180℃で4時間反応させた。重合体(A−1)を含む固形分濃度が約35質量%のポリイミド溶液を約600g得た。得られた重合体(A−1)のMwは8000であった。
【0345】
[合成例A2]重合体(A−2)の合成(アクリルポリマー)
フラスコ内を窒素置換した後、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル5.0gを溶解したプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液250.0gを仕込んだ。引き続きメタクリル酸20.0g、ジシクロペンタニルメタクリレート45.0gおよび3−エチル−3−メタクリロイルオキシメチルオキセタン30.0gを仕込んだ後、ゆるやかに攪拌を始めた。溶液の温度を80℃に上昇させ、この温度を5時間保持した後、100℃で1時間加熱させて重合を終結させた。その後、反応生成溶液を多量のメタノールに滴下し反応物を凝固させた。この凝固物を水洗後、テトラヒドロフラン200gに再溶解し、多量のメタノールで再度、凝固させた。
【0346】
この再溶解−凝固操作を計3回行った後、得られた凝固物を60℃で48時間真空乾燥し、目的とする共重合体を得た。その後固形分濃度が約35質量%になるようにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを用いて共重合体溶液とした。得られた重合体(A−2)の重量平均分子量(Mw)は10000であった。
【0347】
[合成例A3]重合体(A−3)の合成(アクリルポリマー)
モノマーとして2−メタクリロイロキシエチルコハク酸20.0g、ジシクロペンタニルメタクリレート45.0gおよび3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート30.0gを用いたこと以外は合成例A2と同様に行った。得られた重合体(A−3)の重量平均分子量(Mw)は20000であった。
【0348】
[合成例A4]重合体(A−4)の合成(ポリベンゾオキサゾール前駆体)
ジフェニルエーテル−4,4’−ジカルボン酸1モルと1−ヒドロキシベンゾトリアゾール2モルとを反応させて得られたジカルボン酸誘導体443.2g(0.90モル)と、ヘキサフルオロ−2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン366.3部(1.00モル)とを温度計、攪拌機、原料投入口、乾燥窒素ガス導入管を備えた4つ口のセパラブルフラスコに入れ、N−メチル−2−ピロリドン3000部を加えて溶解させた。その後オイルバスを用いて75℃にて16時間反応させた。
【0349】
次にN−メチル−2−ピロリドン100部に溶解させた5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物32.8部(0.20モル)を加え、更に3時間攪拌し反応を終了した。反応混合物をろ過した後、反応混合物を水/イソプロパノール=3/1(質量比)の溶液に投入、沈殿物を濾集し水で充分洗浄した後、真空下で乾燥し、ポリベンゾオキサゾール前駆体(A−4)を得た。重合体(A−4)濃度が35質量%となるようにγ―ブチロラクトンを加えて、重合体(A−4)のγ―ブチロラクトン溶液を得た。得られた重合体(A−4)の重量平均分子量(Mw)は15000であった。
【0350】
[合成例A5]重合体(A−5)の合成(ポリシロキサン)
500mLの三口フラスコに、メチルトリメトキシシランを63.39部(0.55mol)、フェニルトリメトキシシランを69.41部(0.35mol)、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランを24.64部(0.1mol)、ジアセトンアルコールを150.36部仕込み、室温で攪拌しながら、水55.8部にリン酸0.338部(仕込みモノマーに対して0.2質量%)を溶かしたリン酸水溶液を10分かけて添加した。その後、フラスコを70℃のオイルバスに浸けて1時間攪拌した後、オイルバスを30分かけて115℃まで昇温した。昇温開始1時間後に溶液の内温が100℃に到達し、そこから2時間加熱攪拌した(内温は100〜110℃)。反応中に副生成物であるメタノールおよび水が合計115部留出した。得られた重合体(A−5)のジアセトンアルコール溶液に、重合体(A−5)濃度が35質量%となるようにジアセトンアルコールを加えて、重合体(A−5)のジアセトンアルコール溶液を得た。得られた重合体(A−5)の重量平均分子量(Mw)は5000であり、Si原子100モルに対するフェニル基含有量は35モルであった。
【0351】
[合成例A6]重合体(A−6)の合成(ポリオレフィン)
窒素置換した1000mLオートクレーブに、8−カルボキシテトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]ドデカ−3−エン60部、N−フェニル−(5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド)40部、1,5−ヘキサジエン2.8部、(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド0.05部およびジエチレングリコールエチルメチルエーテル400部を仕込み、撹拌下に80℃で2時間重合反応を行って、重合体(A−6’)を含有する重合体溶液を得た。この重合体溶液に、水素添加触媒としてビス(トリシクロヘキシルホスフィン)エトキシメチレンルテニウムジクロリド0.1部を加え、水素を4MPaの圧力で5時間溶存させて、水素添加反応を進行させたのち、活性炭粉末1部を添加し、撹拌しつつ150℃で水素を4MPaの圧力で3時間溶存させた。次いで、溶液を取り出して、孔径0.2μmのフッ素樹脂製フィルターでろ過して活性炭を分離して、重合体(A−6’)の水素化物である重合体(A−6)を含有する水素添加反応溶液490部を得た。ここで得られた重合体(A−6)を含有する水素添加反応溶液の固形分濃度は21質量%であり、重合体(A−6)の収量は102部であった。得られた重合体(A−6)の水素添加反応溶液をロータリーエバポレーターで濃縮し、固形分濃度を35質量%に調整して、重合体(A−6)の溶液を得た。得られた重合体(A−6)の重量平均分子量(Mw)は4000であった。
【0352】
[調製例A7]重合体(A−7)(カルド樹脂)
カルド樹脂のプロピレングリコールモノメチルエーテル溶液であるCR−TR5(大阪ガスケミカル(株)製)は、固形分52.7質量%、固形分酸価135KOHmg/gの製品である。CR−TR5を100部計量し、プロピレングリコールモノメチルエーテルを50.57部添加攪拌した。このようにして固形分濃度が35質量%のカルド樹脂溶液(A−7)を得た。
【0353】
<樹脂(C)の合成>
[合成例C1]ノボラック樹脂(C−1)の合成
温度計、冷却管、分留管、撹拌器を取り付けたフラスコに、1−ナフトール144.2g(1.0モル)、メチルイソブチルケトン400g、水96gおよび92質量%パラホルムアルデヒド32.6g(ホルムアルデヒド換算で1.0モル)を仕込んだ。続いて攪拌しながらパラトルエンスルホン酸3.4gを加えた。その後、100℃で8時間反応させた。反応終了後に純水200gを加え、系内の溶液を分液ロートに移して水層を有機層から分離除去した。次いで洗浄水が中性を示すまで水洗後、有機層から溶媒を加熱減圧下に除去し、下記式で表される構造単位からなるノボラック樹脂(C−1)を140g得た。得られたノボラック樹脂(C−1)の重量平均分子量(Mw)は2000であった。
【0354】
【化33】
フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)による測定チャートから、原料と比較してメチレン結合による伸縮由来の吸収(2800〜3000cm
-1)が確認でき、更に、芳香族エーテル由来の吸収(1000〜1200cm
-1)は発見できなかった。これらの結果により、本合成例では水酸基同士の脱水エーテル化反応(水酸基が消失)は生じず、メチレン結合を有するノボラック樹脂が得られたと同定した。これらの同定は、以下の合成例C2〜C5においても同様である。
【0355】
[合成例C2]ノボラック樹脂(C−2)の合成
温度計、冷却管、分留管、撹拌器を取り付けたフラスコに、1−ナフトール144.2g(1.0モル)、テレフタルアルデヒド134.1g(1.0モル)、トリフロロメタンスルホン酸3.0gを装入し、攪拌を行いながら150〜160℃で4時間反応を行った。反応終了後に純水200gを加え、系内の溶液を分液ロートに移して水層を有機層から分離除去した。次いで洗浄水が中性を示すまで水洗後、有機層から溶媒を加熱減圧下に除去し、下記式で表される構造単位からなるノボラック樹脂(C−2)を220g得た。得られたノボラック樹脂(C−2)の重量平均分子量(Mw)は1500であった。
【0356】
【化34】
[合成例C3]ノボラック樹脂(C−3)の合成
原料成分および酸触媒としてテレフタルアルデヒド134.1g(1.0モル)と1,6−ジヒドロキシナフタレン160.2g(1.0モル)、トリフロロメタンスルホン酸3.0gを用いたこと以外は合成例C2と同様に行った。下記式で表される構造単位からなるノボラック樹脂(C−3)を230g得た。得られたノボラック樹脂(C−3)の重量平均分子量(Mw)は1000であった。
【0357】
【化35】
[合成例C4]ノボラック樹脂(C−4)の合成
原料成分として1−ヒドロキシアントラセン194.2g(1.0モル)、メチルイソブチルケトン400g、水96gおよび92質量%パラホルムアルデヒド32.6g(ホルムアルデヒド換算で1.0モル)を用いたこと以外は合成例C1と同様に行った。下記式で表される構造単位からなるノボラック樹脂(C−4)を180g得た。得られたノボラック樹脂(C−4)の重量平均分子量(Mw)は2000であった。
【0358】
【化36】
[合成例C5]ノボラック樹脂(C−5)の合成
原料成分として1,4−ジヒドロキシアントラセン210.2g(1.0モル)、メチルイソブチルケトン400g、水96gおよび92質量%パラホルムアルデヒド32.6g(ホルムアルデヒド換算で1.0モル)を用いたこと以外は合成例C1と同様に行った。下記式で表される構造単位からなるノボラック樹脂(C−5)を190g得た。得られたノボラック樹脂(C−5)の重量平均分子量(Mw)は3000であった。
【0359】
【化37】
<感放射線性材料の調製>
感放射線性材料の調製に用いた重合体(A)は合成例A1〜A6、調製例A7の重合体(A−1)〜(A−7)であり、樹脂(C)は合成例C1〜C5のノボラック樹脂(C−1)〜(C−5)であり、感光剤(B)、架橋剤(D)、溶剤(E)、密着助剤(F)および界面活性剤(G)は、下記の通りである。
【0360】
感光剤(B)
B−1:4,4’−[1−[4−[1−[4−ヒドロキシフェニル]−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール(1.0モル)と1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸クロリド(2.0モル)との縮合物(東洋合成工業(株))
B−2:2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン(BASF製の「IRG−379EG」)
架橋剤(D)
D−1:4,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)メチル]ビフェニル(宇部興産社の「OXBP」)
D−2:群栄化学工業社の「C−357」
D−3:東亞合成社の「M−405」
溶剤(E)
E−1:γ−ブチロラクトン(BL)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)およびプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)の質量比で30:20:50の混合溶剤
DAA:ジアセトンアルコール
EDM:ジエチレングリコールエチルメチルエーテル
密着助剤(F)
F−1:N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン
(信越化学工業(株)製の「KBM−573」)
界面活性剤(G)
G−1:シリコーン系界面活性剤
(東レダウコーニング社製の「SH8400」)
[調製例1]
合成例A1の重合体(A−1)を含む重合体溶液(重合体(A−1)25部(固形分)に相当する量)に、(B−1)10部、(C−1)40部、(D−1)15部、(D−2)5部、(F−1)4部、(G−1)1部、および(E−1)を混合し、固形分濃度が25質量%となるようにするとともに、口径0.2μmのメンブランフィルタで濾過して、ポジ型材料1を調製した。
【0361】
[調製例2〜33]
表1に示す種類および配合量の各成分を用いたこと以外は調製例1と同様にして、ポジ材料2〜23および30〜31、ネガ型材料24〜29および32〜33を調製した。
【0362】
【表1】
[実施例および比較例]
調製例1〜33の感放射線性材料1〜33を用いて、以下に説明する方法により絶縁膜および有機EL素子を作製した。得られた絶縁膜のパターニング性、LWR(Line Width Roughtness)、遮光性、テーパー角度、吸水性および耐熱性を、また得られた有機EL素子の素子特性を、それぞれ下記方法で評価した。
【0363】
<パターニング性>
クリーントラック(東京エレクトロン社製:Mark VZ)を用いて、シリコン基板上に調製例1〜23および30〜31で得られたポジ型材料を塗布した後、ホットプレート上で120℃にて2分間プレベークして、塗膜を形成した。この塗膜に対して、露光機(Nikon社のi線ステッパー「NSR−2005i10D」)を用い、所定のパターンを有するパターンマスクを介して波長365nmにおける露光量100mJ/cm
2で露光した。その後、2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を用いて25℃にて80秒間液盛り法で現像し、超純水で1分間流水洗浄を行い、乾燥させて、シリコン基板上に5μmスクエアの複数のスルーホールが列状に並ぶパターンを有する塗膜を形成した。この塗膜をホットプレート上で250℃にて60分間ポストベークして、前記パターンおよび表2に記載の膜厚を有する絶縁膜を形成した。
【0364】
また、クリーントラック(東京エレクトロン社製:Mark VZ)を用いて、シリコン基板上に調製例24〜29および32〜33で得られたネガ型材料を塗布した後、ホットプレート上で120℃にて2分間プレベークして、塗膜を形成した。この塗膜に対して、露光機(Nikon社のi線ステッパー「NSR−2005i10D」)を用い、所定のパターンを有するパターンマスクを介して波長365nmにおける露光量300mJ/cm
2で露光した。その後、2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を用いて25℃にて120秒間液盛り法で現像し、超純水で1分間流水洗浄を行い、乾燥させて、シリコン基板上に5μmスクエアの複数のスルーホールが列状に並ぶパターンを有する塗膜を形成した。この塗膜をホットプレート上で250℃にて60分間ポストベークして、前記パターンおよび表2に記載の膜厚を有する絶縁膜を形成した。
【0365】
このとき、上記塗膜において、ポジ型材料の場合は現像後の露光部が完全に溶解するか、ネガ型材料の場合は現像後の非露光部が完全に溶解するか、確認した。5μmスクエアのパターンを形成し、かつ絶縁膜剥がれまたは現像残渣なく絶縁膜が形成された場合を「優良」、5μmスクエアのパターンを形成し、かつ絶縁膜剥がれはないものの、やや現像残渣がある場合を「良好」、5μmスクエアのパターンを形成できない、または絶縁膜剥がれが発生してしまう場合を「不良」とした。
【0366】
<LWR>
上記<パターニング性>にて形成された、ポストベーク前の塗膜の線幅5μmスクエアパターンを、走査型電子顕微鏡(SEM;日立ハイテクノロジー社の「SU3500」)を用い、パターン上部から観察し、任意の10点において線幅を測定した。線幅の測定値の3シグマ値(ばらつき)をLWR(μm)とした。このLWRの値が0.4μm以下の場合には「優良」とし、0.4μmを超えて0.8μm以下の場合には「良好」とし、0.8μmを超える場合には「不良」とした。
【0367】
<遮光性>
クリーントラック(東京エレクトロン社製:Mark VZ)を用いて、ガラス基板(コーニング社の「コーニング7059」)上に上記調製例で得られた感放射線性材料を塗布した後、ホットプレート上で120℃にて2分間プレベーク後、ホットプレート上で250℃にて60分間ポストベークして、表2に記載の膜厚を有する絶縁膜を形成した。
【0368】
この絶縁膜を有するガラス基板について、分光光度計(日立製作所(株)製の「150−20型ダブルビーム」)を用いて全光線透過率を300nm〜780nmの波長範囲で測定し、波長300〜400nmでの全光線透過率を求めた。遮光性は、波長300〜400nmにおいて最大の全光線透過率が6%以下の場合に「優良」とし、6%を超えて10%以下の場合に「良好」とし、10%を超えて15%以下の場合に「やや良好」とし、15%を超える場合に「不良」とした。
【0369】
<テーパー角度および膜厚>
上記<パターニング性>の絶縁膜において、複数のスルーホールのラインと直交する方向の垂直断面形状をSEM(日立ハイテクノロジー社の「SU3500」)で観察した。このSEM画像から、絶縁膜のテーパー角度を決定した。各評価において、同様にSEM画像から、絶縁膜の膜厚を決定した。
【0370】
<吸水性>
クリーントラック(東京エレクトロン社製:Mark VZ)を用いて、シリコン基板上に上記調製例で得られた感放射線性材料を塗布した後、ホットプレート上で120℃にて2分間プレベーク後、ホットプレート上で250℃にて60分間ポストベークして、膜厚3.0μmを有する絶縁膜を形成した。
【0371】
この絶縁膜を、Thermal Desorption Spectroscopy(ESCO社の「TDS1200」)を用いて真空度1.0×10
-9Paにて、常温から昇温速度30℃/分で200℃に昇温した。その際の試料表面および試料から脱離するガスを、質量分析計(アジレントテクノロジー社の「5973N」)で水のピーク(M/z=18)の検出値として測定した。60℃〜200℃のトータルのピーク強度の積分値[A・sec]を取り、吸水性を評価した。吸水性は、60℃〜200℃のトータルのピーク強度の積分値[A・sec]が3.0×10
-8以下の場合に「優良」、3.0×10
-8を超えて5.0×10
-8以下の場合に「良好」、5.0×10
-8を超えた場合に「不良」とした。
【0372】
<耐熱性>
<吸水性>の評価と同様にして感放射線性材料を用いて絶縁膜を形成し、この絶縁膜について、熱重量測定装置(TAインスツルメント社の「TGA2950」)を用いて、100℃から500℃においてTGA測定(空気下、昇温速度10℃/分)を行うことで5%重量減少温度を求めた。耐熱性は、5%重量減少温度が350℃を超える場合に「優良」、350〜330℃の場合に「良好」、330℃以下の場合に「不良」とした。
【0373】
《素子特性評価》
ガラス基板(コーニング社の「コーニング7059」)を用い、このガラス基板上にTFTを形成したTFT基板を作製した後に、このTFT基板上に絶縁膜を形成して評価用素子を作製した。この評価用素子について、素子特性の評価を行った。
【0374】
TFT基板は、以下の手順で形成した。まず、ガラス基板上にスパッタリングによりモリブデン膜を形成し、レジストを用いたフォトリソグラフィおよびエッチングによりゲート電極を形成した。次いで、ガラス基板全面およびゲート電極の上層に、スパッタリングにより酸化ケイ素膜を形成してゲート絶縁膜とした。このゲート絶縁膜上にスパッタリングによりInGaZnO系アモルファス酸化物膜(InGaZnO
4)を形成し、レジストを用いたフォトリソグラフィおよびエッチングにより半導体層を形成した。半導体層の上層にスパッタリングによりモリブデン膜を形成し、レジストを用いたフォトリソグラフィおよびエッチングによりソース電極およびドレイン電極を形成した。最後に、基板全面、ソース電極およびドレイン電極の上層に、スパッタリングにより酸化ケイ素膜を形成してパッシベーション膜とし、TFT基板を得た。
【0375】
クリーントラック(東京エレクトロン社製:Mark VZ)を用いて、TFT基板上に上記調製例で得られた感放射線性材料を塗布した後、ホットプレート上で120℃にて2分間プレベーク後、ホットプレート上で250℃にて60分間ポストベークして、表2に記載の膜厚を有する絶縁膜を形成した。
【0376】
<スイッチング応答特性>
素子特性はスイッチング応答特性として評価した。スイッチング応答特性は、ON/OFF比を測定することで評価した。ON/OFF比は、プローバおよび半導体パラメーターアナライザーを用いて、ゲート電極に電圧を印可した状態でソース電極−ドレイン電極間に流れる電流を測定することで算出した。具体的には、半導体層に対して上記感放射線性材料から形成された絶縁膜の上方から波長450nmまたは500nmを中心とした照度30000ルックスの白色光を照射した条件下において、ドレイン電極をプラス10V、ソース電極を0Vとした場合にゲート電極に印可された電圧がプラス10Vとマイナス10Vの時の電流値の比をON/OFF比とした。スイッチング応答特性、すなわち素子特性は、ON/OFF比が1.0×10
5以上の場合に「良好」、1.0×10
5未満の場合に「不良」とした。
【0377】
<TFT信頼性>
TFT信頼性は、ゲート電極−ソース電極間に電気的なストレスを印可した際のId−Vg特性の変化(閾値電圧Vthの変化量)を、評価用素子に対する光照射時と光非照射時とで比較することによって評価した。
【0378】
(Id−Vg特性および閾値電圧Vthの測定)
電気的なストレスの印可は、評価用素子のソース電極の電位を0V、ドレイン電極の電位を+10Vに保ち、ソース電極−ドレイン電極間に電圧を印可した状態で、ゲート電極の電位Vgを−20Vから+20Vまで変化させることで行った。このようにゲート電極の電位Vgを変化させた際、ドレイン電極−ソース電極間に流れる電流Idをプロットすることで、Id−Vg特性を得た。このId−Vg特性においては、電流値がONとなる電圧を閾値電圧Vthに設定した。
【0379】
(閾値電圧Vthの変化量の測定)
電気的なストレスは、ゲート電極−ソース電極間に、+20Vの正電圧及び−20Vの負電圧をそれぞれ12時間ずつ印加することで与えた。このような電気的なストレスは、評価用素子の半導体層に対して上記感放射線性材料から形成された絶縁膜の上方から波長450nmまたは500nmを中心とした照度30000ルックスの白色光を照射した条件下、および半導体層に対して光を照射しない条件下のそれぞれについて行った。閾値電圧Vthの変化量は、光照射条件および光非照射条件のそれぞれについて、Id−Vg特性から算出した。そして、光照射時の閾値電圧Vthの変化量が、光非照射時の閾値電圧Vthの変化量の1.3倍未満に抑えられている場合にTFT信頼性が「優良」であるとし、1.3倍以上1.6倍未満に抑えられている場合にTFT信頼性が「良好」であるとし、1.6倍以上2倍未満に抑えられている場合にTFT信頼性が「やや良好」であるとし、2倍以上の場合にTFT信頼性が「不良」であるとした。
【0380】
【表2】
表2に示すように、調製例1〜29の感放射線性材料は、パターニング性、パターン形状、低吸水性および耐熱性に優れていた。また、実施例1〜37で形成した絶縁膜は、遮光性に優れ順テーパー状であり、この絶縁膜および光劣化しやすい半導体層を使用した素子は、光照射環境下においても、素子特性(スイッチング応答特性、TFT信頼性)に優れていた。これに対して、比較例1で形成した絶縁膜は遮光性に劣り、比較例2および4で形成した絶縁膜はパターニング性、パターン形状、遮光性、低吸水性および耐熱性に劣り、比較例3および5で形成した絶縁膜はパターニング性、パターン形状、低吸水性に劣り、これらの絶縁膜および光劣化しやすい半導体層を使用した素子は、光照射環境下において、素子特性(スイッチング応答特性、TFT信頼性)に劣っていた。