特許第6443448号(P6443448)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6443448光情報記録媒体および光情報記録媒体再生装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6443448
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】光情報記録媒体および光情報記録媒体再生装置
(51)【国際特許分類】
   G11B 7/007 20060101AFI20181217BHJP
   G11B 7/24082 20130101ALI20181217BHJP
   G11B 7/005 20060101ALI20181217BHJP
   G11B 20/14 20060101ALI20181217BHJP
【FI】
   G11B7/007
   G11B7/24082
   G11B7/005 Z
   G11B20/14 341A
   G11B20/14 351A
【請求項の数】13
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-544909(P2016-544909)
(86)(22)【出願日】2015年6月9日
(86)【国際出願番号】JP2015002882
(87)【国際公開番号】WO2016031106
(87)【国際公開日】20160303
【審査請求日】2018年4月24日
(31)【優先権主張番号】特願2014-174964(P2014-174964)
(32)【優先日】2014年8月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002185
【氏名又は名称】ソニー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082762
【弁理士】
【氏名又は名称】杉浦 正知
(72)【発明者】
【氏名】堀籠 俊宏
(72)【発明者】
【氏名】東野 哲
【審査官】 川中 龍太
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−032711(JP,A)
【文献】 特開2014−149892(JP,A)
【文献】 特開2006−197375(JP,A)
【文献】 特開2004−310958(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11B 7/00 − 7/013
G11B 7/24 − 7/2595
G11B 20/10 − 20/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
CAVまたはゾーンCAVによって連続的にウォブルするグルーブが予め形成される光情報記録媒体であって、
前記グルーブおよび前記グルーブに隣接するランドに情報を記録するようになされ、
前記ウォブルを変調することによって、アドレス情報が記録され、
前記アドレス情報は、アドレス情報の位置を示すシンクパターンと、アドレスデータとを含み、
前記シンクパターンが複数の第1のウォブルパターンと、前記第1のウォブルパターンの間の第2のウォブルパターンとを有し、
前記第1のウォブルパターンの間隔が一定の数を加算または減算することによって段階的に変化するようになされた光情報記録媒体。
【請求項2】
前記第2のウォブルパターンが前記第1のウォブルパターンを位相変調したものである請求項1に記載の光情報記録媒体。
【請求項3】
前記第1のウォブルパターンがMSKマークであり、前記第2のウォブルパターンがモノトーンである請求項1に記載の光情報記録媒体。
【請求項4】
前記第1のウォブルパターンの間隔が前記アドレスデータに近くなるほど小とされる請求項に記載の光情報記録媒体。
【請求項5】
先頭の前記第1のウォブルパターンと2番目の前記第1のウォブルパターンとの間隔が35NWLとされ、前記間隔が1NWLずつ減少するように、前記間隔が設定される請求項に記載の光情報記録媒体。
【請求項6】
アドレス情報の先頭の位置と先頭の前記第1のウォブルパターンの位置との間に所定数の前記第2のウォブルパターンが介在され、
アドレス情報の最後の位置と最後の前記第1のウォブルパターンの位置との間に所定数の前記第2のウォブルパターンが介在される請求項1に記載の光情報記録媒体。
【請求項7】
CAVまたはゾーンCAVによって連続的にウォブルするグルーブが予め形成される光情報記録媒体であって、
前記グルーブおよび前記グルーブに隣接するランドに情報を記録するようになされ、
前記ウォブルを変調することによって、アドレス情報が記録され、
前記アドレス情報は、アドレス情報の位置を示すシンクパターンと、アドレスデータとを含み、
前記シンクパターンが複数の第1のウォブルパターンと、前記第1のウォブルパターンの間の第2のウォブルパターンとを有し、
前記第1のウォブルパターンの間隔が一定の数を加算または減算することによって段階的に変化するようになされた光情報記録媒体を光学的に再生し、
前記第1のウォブルパターンを検出することによって、前記シンクパターンを検出し、
前記シンクパターンの検出によって前記アドレスデータを復号する光情報記録媒体再生装置。
【請求項8】
前記第1のウォブルパターンと参照波との検波出力を生成する検波回路と、
前記検波回路の出力を積算する積算回路と、
前記積算回路の出力が供給され、前記シンクパターンに含まれる複数の前記第1のウォブルパターンを同時に検出するように、それぞれの遅延量が設定される複数の遅延回路の直列接続と、
前記遅延回路の直列接続から取り出される複数の積算出力を加算する加算器と、
前記加算器の出力を閾値判定する閾値判定回路とを備える請求項に記載の光情報記録媒体再生装置。
【請求項9】
前記第2のウォブルパターンが前記第1のウォブルパターンを位相変調したものである請求項に記載の光情報記録媒体再生装置。
【請求項10】
前記第1のウォブルパターンがMSKマークであり、前記第2のウォブルパターンがモノトーンである請求項に記載の光情報記録媒体再生装置。
【請求項11】
前記第1のウォブルパターンの間隔が前記アドレスデータに近くなるほど小とされる請求項に記載の光情報記録媒体再生装置。
【請求項12】
先頭の前記第1のウォブルパターンと2番目の前記第1のウォブルパターンとの間隔が35NWLとされ、前記間隔が1NWLずつ減少するように、前記間隔が設定される請求項11に記載の光情報記録媒体再生装置。
【請求項13】
アドレス情報の先頭の位置と先頭の前記第1のウォブルパターンの位置との間に所定数の前記第2のウォブルパターンが介在され、
アドレス情報の最後の位置と最後の前記第1のウォブルパターンの位置との間に所定数の前記第2のウォブルパターンが介在される請求項に記載の光情報記録媒体再生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えば記録可能な光ディスクに適用される光情報記録媒体および光情報記録媒体再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レ−ザ光を用いて情報を記録或いは記録情報を再生する光ディスクが実用化されている。光ディスクの種類としては、再生専用型、追記型および書き替え型がある。追記型および書き換え型では、情報の記録のために、予め光ディスクの位置を示すアドレス情報が記録されている必要がある。
【0003】
アドレス情報を記録する方法して、ウォブルと称される溝を形成する信号をアドレス情報によって変調する方式が知られている。なお、溝のことをグルーブと称し、グルーブにより形成されるトラックをグルーブトラックと称する。グルーブは、光ディスクを製造する時に、レーザ光によって照射される部分と定義され、隣接するグルーブ間に挟まれるエリアをランドと称し、ランドにより形成されるトラックをランドトラックと称する。
【0004】
通常、アドレス情報を記録する場合、同期部分(以下、シンクパターンと適宜称する)とデータ部分(以下、アドレスデータと適宜称する)とを記録するようになされる。シンクパターンによってアドレス情報の記録位置を見つけ、アドレスデータを再生するようになされる。シンクパターンは、アドレスデータと明確に区別できることが望ましい。
【0005】
例えばBD(Blu-ray Disc(登録商標))においては、ウォブルグルーブによってアドレス情報を記録し、グルーブにデータを記録するようになされている(特許文献1参照)。アドレスを変調する方式として、BDでは、MSK(Minimum Shift Keying)とSTW(Saw Tooth Wobble)との両方が使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4121265号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ランドLおよびグルーブGにデータが記録されるランド/グルーブ記録方式によって記録容量を増大させることができる。しかしながら、グルーブおよびランドのそれぞれにおいて、アドレス情報を再生することが必要とされる。グルーブトラックを走査する場合、隣接のランドトラックのRF信号が漏れ込むので、ウォブルグルーブの再生信号のSNRが劣化する。一方ランドトラックを走査する場合、グルーブトラックからのRF信号の漏れ込みによるSNRの劣化に加え、ランドトラックの幅が変動するのでさらにSNRが劣化する。したがって、SNRが劣化した状態でもシンクパターンの検出を確実に行うことが望ましい。
【0008】
従来の提案されているシンクパターン検出回路は、このようにSNRが劣化した状態で、シンクパターンを正確に検出する能力が十分でなかった。
【0009】
したがって、本開示は、アドレス情報をウォブルによって記録する場合に、シンクパターンをSNRが悪い環境でも確実に検出することができる光情報記録媒体および光情報記録媒体再生装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示は、CAVまたはゾーンCAVによって連続的にウォブルするグルーブが予め形成される光情報記録媒体であって、
グルーブおよびグルーブに隣接するランドに情報を記録するようになされ、
ウォブルを変調することによって、アドレス情報が記録され、
アドレス情報は、アドレス情報の位置を示すシンクパターンと、アドレスデータとを含み、
シンクパターンが複数の第1のウォブルパターンと、第1のウォブルパターンの間の第2のウォブルパターンとを有し、
第1のウォブルパターンの間隔が一定の数を加算または減算することによって段階的に変化するようになされた光情報記録媒体である。
【0011】
本開示は、CAVまたはゾーンCAVによって連続的にウォブルするグルーブが予め形 CAVまたはゾーンCAVによって連続的にウォブルするグルーブが予め形成される光情報記録媒体であって、
グルーブおよびグルーブに隣接するランドに情報を記録するようになされ、
ウォブルを変調することによって、アドレス情報が記録され、
アドレス情報は、アドレス情報の位置を示すシンクパターンと、アドレスデータとを含み、
シンクパターンが複数の第1のウォブルパターンと、第1のウォブルパターンの間の第2のウォブルパターンとを有し、
第1のウォブルパターンの間隔が一定の数を加算または減算することによって段階的に変化するようになされた光情報記録媒体を光学的に再生し、
第1のウォブルパターンを検出することによって、シンクパターンを検出し、
シンクパターンの検出によってアドレスデータを復号する光情報記録媒体再生装置である。
【発明の効果】
【0012】
少なくとも一つの実施形態によれば、ランド/グルーブ記録方式において、RF信号の漏れ込みによってSNRが悪い状況でも、確実にシンクパターンを検出することが可能となり、アドレス情報を正しく再生できる。なお、ここに記載された効果は必ずしも限定されるものではなく、本開示中に記載されたいずれかの効果であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】光ディスクの一例および光ディスクのトラックの説明のための略線図である。
図2】ランド/グルーブ記録方式の光ディスクの一部を拡大して示す略線図である。
図3】変調方式の一例であるMSKの説明のための略線図である。
図4】本開示の一実施の形態のADIPワードの説明のための略線図である。
図5】本開示の一実施の形態のアドレス情報の説明のための略線図である。
図6】シンクパターンのMSKマークを不等間隔で記録する場合の説明に使用する略線図である。
図7】シンクパターンにおけるMSKマークの間隔の一例を示す略線図である。
図8】本開示の一実施の形態の利点を説明するための略線図である。
図9】MSKマークの検出回路の一例のブロック図である。
図10】本開示の一実施の形態の利点を説明するための略線図である。
図11】本開示の一実施の形態のシンクパターン検出装置のブロック図である。
図12】本開示の一実施の形態の再生装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に説明する実施の形態は、本開示の好適な具体例であり、技術的に好ましい種々の限定が付されている。しかしながら、本開示の範囲は、以下の説明において、特に本開示を限定する旨の記載がない限り、これらの実施の形態に限定されないものとする。
以下の説明は、下記の順序にしたがってなされる。
<1.一実施の形態>
<2.変形例>
【0015】
<1.一実施の形態>
「光ディスクの一例」
本開示の一実施の形態による光情報記録媒体について説明する。図1Aおよび図1Bは、一実施の形態による光情報記録媒体の構成例を示す。光情報記録媒体は、例えばディスク状の高密度記録光ディスクである。図1Aは光ディスクの概略であり、図1Bは、図1Aの光ディスクの一部を拡大した図である。
【0016】
図1Aおよび図1Bに示すように、光ディスク10には、内周から外周の方向または外周から内周の方向にスパイラル状に連続した溝状のグルーブGと隣接するグルーブG間に挟まれたエリアであるランドLが形成されている。グルーブGは、光ディスク10の製造時に形成される。グルーブGは、例えばホトレジストが塗布された原盤に対して、レーザ光を照射して形成される。
【0017】
ランドLおよびグルーブGにデータが記録されるランド/グルーブ記録方式で、データが記録される。光ディスク10のグルーブGは、ウォブルグルーブである。ウォブルを形成する信号をアドレス情報によって変調する方式で、アドレス情報が記録されている。本明細書において、グルーブは、光ディスクを製造する時に、レーザ光によって照射される部分と定義され、グルーブにより形成されるトラックをグルーブトラックと称し、隣接するグルーブ間に挟まれるエリアをランドと称し、ランドにより形成されるトラックをランドトラックと称する。
【0018】
本開示の一実施の形態では、グルーブを形成する記録時では、角速度一定(以下、CAV(Constant Angular Velocity: 角速度一定)と称する)でディスクを回転させる。ディスクの半径方向を分割して複数のゾーンを形成し、ゾーン内では、CAV制御を行うゾーンCAVを採用しても良い。CAVまたはゾーンCAVによって渦巻き状のウォブルトラックにおいて、ディスクの半径方向でウォブルの基本波の位相が互いに同期したものとできる。
【0019】
図2は、光ディスク10の一部を拡大して示す。ビームスポットSPが例えばグルーブ上を走査する状態が示されている。グルーブトラックを走査する場合、隣接のランドトラックのRF信号が漏れ込むことによって、ウォブルグルーブの再生信号のSNRが劣化する問題がある。一方ランドトラックでは、隣接のグルーブトラックのRFが漏れ込むことに加え、ランドトラックの幅が変動するので、RF信号のSNRが劣化する。これらの点を考慮してシンクパターンの検出を確実に行うことが望ましい。
【0020】
「変調方式」
本開示の一実施の形態では、シンクパターンとして第1のウォブルパターンと第2のウォブルパターンとを使用する。第1のウォブルパターンとして例えばMSKを使用している。MSKの方式によって形成されるパターンをMSKマークと呼ぶことにする。第2のウォブルパターンは、モノトーン(無変調)ウォブルである。
【0021】
MSKマークは、連続する3個のウォブルによって構成されている。前後のウォブルの周波数が基本波の1.5倍とされているので、中心のウォブルの波形がMSKでない部分に対して極性が反転されている。グルーブがMSKにより変調されている場合には、基本波との相違が大きいものとなる。したがって、短い区間において、確度良くMSKマークを検出できる利点がある。しかしながら、ランド幅の変動が大きくなり、ランドトラックに記録されているRF信号(記録データ)の再生に影響が与えられる問題がある。さらに、ウォブルグルーブの再生信号からPLL(Phase Locked Loop )によって再生信号と同期したクロックを形成している場合、MSKマークの区間では、PLLの同期が外れるので、MSKマークを多く記録することはクロック再生の面で好ましくない。
【0022】
「アドレス情報」
アドレス情報は、ADIP(Address In Pregroove)ワード単位で記録されている。一例として、図4に示すように、光ディスク10が放射方向に7等分され、各分割領域に一つのADIPワードが記録される。したがって、光ディスク10の1周には、7つのADIPワードが記録される。
【0023】
図5は、ADIPワードの構成を示す。ADIPワードは、64個のADIPユニットが含まれている。一つのADIPユニットには、80個のNWLが含まれている。NWLは、ウォブルの基本波の1周期である。光ディスク10には、ADIPユニット番号0のADIPユニットからADIPユニット番号63のADIPユニットまでが順に記録されるようになされる。
【0024】
先頭の8個のADIPユニット(番号0〜7)がADIPワードのシンクパターンとされている。残りの56個のADIPユニット(番号8〜63)がアドレスデータとされている。アドレスデータの場合、各ADIPユニットがデータの1ビットを表している。シンクパターンは、MSKを使用しているのに対して、アドレスデータは、他の変調方式が採用されている。但し、同一の変調方式を採用することも可能である。
【0025】
他の変調方式の一例は、MSKを修正した変調方式である。この変調方式をMSK改(+)、MSK改(−)と呼ぶことにする。それぞれは、ウォブルの基本波の周波数をfとすると、下記のように8個のNWLの区間に下記の波形が連続するものである。前側の区間の波形が+cos(f)としている。
MSK改(+):+cos(0.75f)、+sin(f)×6、+sin(1.25f)
MSK改(−):+cos(1.25f)、- sin(f)×6、- sin(0.75f)
【0026】
アドレスデータは、56個のADIPユニットのそれぞれが1ビットのデータを表すので、アドレスデータが56ビットから構成される。一実施の形態では、シーケンシャルナンバー(20ビット)、層番号(A/B面識別を含む3ビット)、リザーブビット(1ビット)が規定され、これらのアドレスデータに対してエラー訂正符号化がなされ、その結果、冗長コード(パリティと適宜称する)32ビットが生成される。
【0027】
ADIPワードの先頭に位置するシンクパターンについて図6を参照して説明する。図6A図6Dは、図5のシンクパターンの領域(ADIPユニット番号の0〜7)を水平方向で4等分して示すものである。すなわち、図6Aは、NWLの0〜19の領域を示し、図6Bは、NWLの20〜39の領域を示し、図6Cは、NWLの40〜59の領域を示し、図6Dは、NWLの60〜79の領域を示す。
【0028】
図6に示すように、シンクパターンとして20個のMSKマーク(MSK1〜MSK20と表す)が記録される。記録(再生)時では、MSK20、MSK19、MSK18、−−−−、MSK1の順序となる。各MSKマークの間隔が不等間隔とされている。図7は、MSKマークの間隔を表している。なお、間隔とは、二つのMSKマークの間に存在するモノトーンの周期の数のことである。但し、間隔を二つのMSKマークの先頭の間の間隔と定義しても良い。なお、20個のMSKマークの間隔が全て不等であることは必要でなく、少なくとも一部が不等であれば良い。
【0029】
ADIPワードの先頭のMSK20は、先頭位置から30NWL後の位置に記録される。次のMSK19は、MSK20に対して35NWL後の位置に検出される。以下、MSKマークの間隔が1ずつ減少される。最後の二つのMSK2とMSK1との間隔が17とされる。そして、MSK1の後側からADIPワードのシンクパターンの最後の位置までに56NWLの区間が位置している。このように間隔がアドレスデータに近くなるほど短くされている。
【0030】
「シンクパターンのSNRの改善」
本開示の一実施の形態におけるシンクパターンは、短いMSKマークを複数箇所に記録し、複数のMSKマークを同時検出するので、MSKマークの中心部の区間を繰り返すようなシンクパターンに比して同期位置の検出精度を高くすることができる。例えば図8Aは、MSKマークの基本形を示しており、図8Bは、MSKマークの中心の部分を4波に増加させ、マーク全体で6NWLの長さとしたものである。図8では、シンクパターンの挿入区間の長さを例えば40NWLとしている。
【0031】
従来のMSK復調回路は、図9に示す構成とされている。入力端子1に対して、ディスクから再生されたウォブル信号が供給される。乗算器2によって、ウォブル信号と入力端子3からのキャリア信号とが乗算される。キャリア信号は、再生信号と同期した信号であり、MSKの復調時には、同じ周波数のキャリアが乗算される。
【0032】
乗算器2の出力信号が積分器4に供給される。積分器4に対して端子5からリセット信号が入力され、リセット信号によって、積分器4がリセットされ、積分器4が蓄積していた値が初期値例えば0に戻る。積分器4の出力信号がサンプルおよびホールド回路6に供給される。
【0033】
サンプルおよびホールド回路6に対して端子7からサンプリングパルスが供給される。サンプリングパルスは、積分器4の出力をサンプルおよびホールドする。サンプルおよびホールド回路6の出力信号が比較回路8に供給される。
【0034】
比較回路8に対して端子9から基準レベルが供給される。基準レベルは、サンプルおよびホールド回路6から出力されるウォブル信号の中心の値である。比較回路8は、基準レベルに対して入力信号が大きい場合に(+1)の値の出力を発生し、逆に、比較回路8は、基準レベルに対して入力信号が小さい場合に(−1)の値の出力を発生する。比較回路8からMSKの復調出力が得られる。MSKマークの場合、3個のNWLの中で、前側の区間と後側の区間で(+1)となり、中央の区間で(−1)となる検出出力が得られる。但し、以下の説明では、極性を反転して、中央の区間で(+1)の検出出力が得られ、他の区間で(−1)の検出出力が得られるものとしている。
【0035】
このような積分検出回路を用いている場合、図8Bに示すように、1〜4のNWL番号が検出すべき区間の場合、4個の(+1)の検出出力が得られるので、合計した値が(+4)となる。これに対して、1NWLずれた区間(例えば2〜5のNWL番号の区間)を検出した場合、(+2)の合計値が得られる。このように、図8Bのように、MSKマークの中央の区間を長くするパターンは、正しい検出出力と誤った検出出力との差が小さい問題がある。したがって、SNRが悪い場合に、誤った検出を行うおそれがある。
【0036】
これに対して、本開示の一実施の形態では、図8Cに示すように、MSKマークを分散して記録している。そして、正しいMSKマークの記録位置(NWL番号の1,7,15,25)において、MSKマークを検出し、検出結果を加算したものを検出出力とする。この方法は、1NWLずれた場合には、検出出力の合計値が(+4)から(−4)となる。このように、検出出力の差が大きいので、1NWLずれた区間の位置をシンクパターンと誤って検出するおそれを小さくできる利点がある。
【0037】
次に、本開示の一実施の形態では、複数のMSKマークを不等間隔で配置している。一例としてアドレスデータに近くなるほど間隔が狭くなる不等間隔で配置している。MSKマークの出現頻度は、PLLによるウォブルクロックの再生に影響を与えない程度に設定される。比較のために、図10Aに示すように、MSKマークを等間隔(例えば3NWLの間隔)で配置したシンクパターンについて検討する。図10Aの例は、シンクパターンの挿入区間の長さを例えば40NWLとし、互いの間隔が3NWLで先頭から4個のMSKマークを配置した例である。
【0038】
4個のMSKマークを正しく検出した場合には、+4の検出出力が得られる。検出位置が6NWLずれた場合(図10A)では、3個のMSKマークの中央位置を検出するので、検出出力の合計値が(+2)となる。このように、MSKマークの配置の間隔に対応する周期で、正しい検出出力と差が小さい検出出力が発生する問題がある。
【0039】
本開示の一実施の形態では、上述したように、不等間隔でMSKマークを配置している。例えば図10Bに示すように、間隔を(3,5,7,13)と設定する。図10Aの例と同様に、検出位置が6NWLずれた場合、検出出力(+1)が得られるのは、1個の積分検出回路のみであるので、検出出力の合計値が(−2)となる。正しい検出位置の場合に得られる値(+4)との差が大きく、誤った検出を行うおそれを小さくすることができる。なお、複数の間隔の全てが不等である必要はなく、全体の中の少ない割合が等しい間隔であっても良い。
【0040】
MSKマークを配置する場合、不等間隔ではなく、疑似乱数系列例えばM系列(Maximum-length linear shift-register sequence)の"1"の値の位置にMSKマークを配置する方法が考えられる。具体例として、(25 −1=31)の周期を持つM系列は、下記のものとなる。系列中の"1"に対応してMSKマークが配置される。
【0041】
(1010111011000111110011010010000)
【0042】
この方法は、誤った検出をするおそれが低く、MSKマークの数が多いので、正しい同期位置での検出信号の合計値が大きな値となる利点がある。しかしながら、"1"が連続する部分において、ウォブルPLLに長く外乱が生じ、クロック再生が不安定となる問題がある。"1"の連続する部分は、周期(2n −1)の場合にn個連続する。したがって、疑似乱数系列を使用することは、好ましい方法とは言えない。
【0043】
「シンクパターン検出装置」
図11を参照して本開示によるシンクパターン検出装置の一実施の形態について説明する。破線で囲んで示すMSKマーク検出部11の乗算器12に対して、光ディスクから再生されたウォブル波形が供給される。このウォブル波形は、ウォブルPLLの処理後の信号である。乗算器12は、第1のウォブルパターンと参照波との検波出力を生成する検波回路の機能を有する。
【0044】
乗算器12に対しては、ディスクから再生されたウォブル信号および参照波形13が供給される。参照波形13は、再生信号と同期したウォブル波形である。参照波形は従来のMSK復調回路と同様にキャリア信号とすることができ、またはMSKマークと同様の3つのウォブル波形とすることもできる。乗算器12の出力が積算回路14に供給され、乗算器12の出力信号が所定の期間積算される。積算回路14の出力は、アナログ値を有する信号である。アナログ値は、MSKマークの相関度に応じたレベルを有する。
従来のMSK復調回路は、図9に示す構成とされている。入力端子1に対して、ディスクから再生されたウォブル信号が供給される。乗算器2によって、ウォブル信号と入力端子3からのキャリア信号とが乗算される。キャリア信号は、再生信号と同期した信号であり、MSKの復調時には、同じ周波数のキャリアが乗算される。
【0045】
積算回路14の出力信号が遅延および加算部15に供給される。遅延および加算部15は、積算回路14の積算出力が供給され、シンクパターンに含まれる複数のMSKマークを同時に検出するように、それぞれの遅延量が設定される複数の遅延回路の直列接続と、遅延回路の直列接続から取り出される複数の積算出力を加算する加算器とを有する。具体的には、遅延および加算部15は、上述したMSKマークの間隔に対応する遅延量を有する遅延回路DL1〜DL19を有する。正しい同期検出タイミングにおいては、遅延回路DL1の入力側にMSKマークMSK1に対応するアナログ値が発生し、遅延回路DL2〜DL19のそれぞれの段間に、MSK2〜MSK19にそれぞれ対応するアナログ値が発生し、最終段の遅延回路DL20の出力側にMSK20に対応するアナログ値が発生する。
【0046】
これらの20個のアナログ値が加算器16によって加算され、加算器16からシンク検出信号が得られる。シンク検出信号が閾値判定回路17に供給され、所定の閾値と比較される。正しい同期検出タイミングにおいては、例えばシンク検出信号が閾値より低くなり、ハイレベルの検出出力が発生する。この検出出力がシンクパターン検出出力となる。若し、検出位置がずれていると、閾値判定回路17において、シンク検出信号が閾値以上の値となり、ローレベルの検出出力が発生する。
【0047】
図11に示すシンクパターン検出回路は、20個の検出位置で閾値判定を行わずに、アナログ値のままで加算を行ってから閾値判定回路17において、閾値と比較判定される。したがって、1カ所毎の検出位置において閾値判定を行った場合に、誤った判定結果が生じる場合でも、全ての検出位置で得られるアナログ値を加算してから閾値判定する方が誤った判定結果を生じるおそれを低くすることができる。
【0048】
上述した本開示の一実施の形態は、正しい同期位置とその他の位置との間で、検出信号のレベルの差が大きくなるので、確実に同期をとることができる。さらに、MSKマークの頻度を適切に選ぶことによって、ウォブルPLLに対しての影響を少なくできる。
【0049】
モノトーン部分においてはウォブル変調によるPLLへの影響がないためPLLが引き込みやすい。本開示の一実施の形態ではシンクパターンの手前にモノトーン部分を設置しておりPLLの引込みが期待できる。さらに、仮に同期パターンの手前でPLLの引込みが不完全な場合でも、同期パターンの先頭に近いほどMSKマークの間隔が広いためPLLの引込みに有効に作用し、またPLLが不安定なことによるMSKの検出損失数も低く抑えることができるので、PLLの引込みから直ちにシンクパターンを検出できる確率を高めることができる。
【0050】
将来的に、例えばディスクの材料や製造方法、信号の記録方法の改善等によりシンク検出信号のSNRが改善した場合には、シンクパターン全体を検出することなく、その一部のみを検出するように回路を構成することにより、シンク検出回路の規模を削減できる。その際、シンク検出信号のSNRは検出に利用するMSKマーク数に比例するのに対し、検出回路の規模はMSK数の他に遅延回路での遅延量にも依存する。このため検出に利用するMSK数を削減する場合には、MSK間隔が広いものから順に不使用とすると効率が良い。本開示の一実施の形態では、MSKマークの間隔がアドレスデータに近づくほど短くされているので、この場合にはアドレスデータに遠いMSKから順に不使用とするのが望ましい。この場合、検出に利用する最後のMSKマークからアドレスデータまでの距離は、不使用MSK数に依らず一定なので、検出回路の設計が容易となる。
【0051】
「ディスク再生装置」
本開示の一実施の形態によるディスク再生装置について、アドレスの再生を主に説明する。図12に示すように、光ディスク21に対してデータが記録され、光ディスク21からデータが再生される。
【0052】
光ディスク21がスピンドルモータ22によって回転される。光学ヘッド23に対してレーザ駆動部24からの駆動信号が供給され、記録データ25に応じて強度が変調されたレーザビームが光学ヘッド23から光ディスク21に対して照射され、再生されたアドレス情報に基づいて決定された光ディスク21の所定の位置にデータが記録される。
【0053】
光ディスク21に対して光学ヘッド23からの読み取りレーザビームが照射され、その反射光が光学ヘッド23内のフォトディテクタによって検出され、信号検出部26によって再生信号が検出される。信号検出部26からは、再生信号27、フォーカスエラー信号、トラッキングエラー信号等のサーボエラー信号28、並びにウォブル信号29が取り出される。ウォブル信号29は、トラック方向で光検出素子が2分割された検出器の出力信号である。例えば二つの検出器の和の信号がウォブル信号29として取り出される。ウォブル信号29は、ウォブル波形に応じたものとなる。
【0054】
サーボエラー信号28がサーボ回路30に供給される。サーボ回路30によってスピンドルモータ22の回転が角速度一定に制御され、光学ヘッド23のフォーカスおよびトラッキングが制御される。
【0055】
信号検出部26により検出されたウォブル信号29がPLL31に供給される。PLL31の出力信号がシンクパターン検出回路32に供給される。PLL31から再生信号と同期したクロックが出力される。クロックが再生時の処理のタイミングの基準とされる。シンクパターン検出回路32に対してPLL31からクロックが供給される。
【0056】
シンクパターン検出回路32は、図11を参照して説明したように、各ADIPワードの先頭のシンクパターンを検出する。シンクパターンの検出信号およびデータがADIPデコーダ33に供給される。ADIPデコーダ33は、ADIPワード毎に記録されているアドレスデータ等を復号し、エラー訂正を行う。
【0057】
<2.変形例>
以上、本開示の実施の形態について具体的に説明したが、上述の各実施の形態に限定されるものではなく、本開示の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。例えば、上述の実施の形態において挙げた構成、方法、工程、形状、材料および数値などはあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれと異なる構成、方法、工程、形状、材料および数値などを用いても良い。
【符号の説明】
【0059】
10 光ディスク
11 MSKマーク検出部
15 遅延および加算部
22 スピンドルモータ
23 光学ヘッド
31 PLL
32 シンクパターン検出回路
33 ADIPデコーダ
図1
図2
図3
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図5
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図12