(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記薄肉部に前記第1軸周りに回転可能に支持され、一端が前記第1軸可動部に連結され、他端が前記薄肉部の外側面を押さえるように構成されたフレーム押さえ部材をさらに有する
ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載のロボットアーム。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能を有する構成要素については、原則として同一の符号で表し、これらの構成要素についての重複説明は、適宜省略する。
【0011】
<1.第1実施形態>
以下、第1実施形態について説明する。
【0012】
(1−1.ロボットシステムの概略構成の例)
まず、
図1を参照しつつ、本実施形態のロボットシステムの概略構成の一例について説明する。
【0013】
図1に示すように、ロボットシステムSは、ロボット1と、コントローラCTとを有する。
【0014】
ロボット1は、6軸垂直多関節型の単腕ロボットであり、基台2と、6つの可動部を備えたアーム部3とを有する。
【0015】
基台2は、例えば床等の設置面に、例えばアンカーボルトにより固定されている。
【0016】
アーム部3は、基台2に連結されている。なお、本明細書では、アーム部3の各可動部における基台2側の端を当該可動部の「基端」、基台2とは反対側の端を当該可動部の「先端」と定義する。アーム部3は、旋回部4と、下腕部6と、上腕部8と、3つの可動部を備えた手首部10(「ロボットアーム」の一例に相当)とを有する。
【0017】
旋回部4は、基台2に、上記設置面に直交する回転軸であるS軸AxS周りに回転可能に支持されている。旋回部4は、例えば基台2に配置されたモータ(図示せず)の駆動により、基台2に対しS軸AxS周りに回転可能である。
【0018】
下腕部6は、旋回部4の先端部に、S軸AxSに直交する回転軸であるL軸AxL周りに回転可能に支持されている。下腕部6は、旋回部4との間の関節部近傍に設けられたモータ部20のモータ(図示せず)の駆動により、旋回部4の先端部に対しL軸AxL周りに回転可能である。
【0019】
上腕部8は、下腕部6の先端部に、L軸AxLに平行な回転軸であるU軸AxU周りに回転可能に支持されている。上腕部8は、下腕部6との間の関節部近傍に設けられたモータ部22のモータ(図示せず)の駆動により、下腕部6の先端部に対しU軸AxU周りに回転可能である。
【0020】
手首部10は、上腕部8の先端部に連結されている。手首部10は、第1手首可動部12と、第2手首可動部14(「第1軸可動部」の一例に相当)と、第3手首可動部16(「第2軸可動部」の一例に相当)とを有する。
【0021】
第1手首可動部12は、上腕部8の先端部に、U軸AxUに直交する回転軸であるR軸AxR周りに回転可能に支持されている。第1手首可動部12は、上腕部8との間の関節部近傍に配置されたモータ(図示せず)の駆動により、上腕部8の先端部に対しR軸AxR周りに回転可能である。
【0022】
第2手首可動部14は、第1手首可動部12の先端部に、R軸AxRに直交する回転軸であるB軸AxB(「第1軸」の一例に相当)周りに回転可能に支持されている。第2手首可動部14は、第1手首可動部12に配置された2つのモータM,M(後述の
図3及び
図4参照)の駆動により、第1手首可動部12の先端部に対しB軸AxB周りに回転可能である。
【0023】
第3手首可動部16は、第2手首可動部14の先端部に、B軸AxBに直交する回転軸であるT軸AxT(「第2軸」の一例に相当)周りに回転可能に支持されている。第3手首可動部16は、上記モータM,Mの駆動により、第2手首可動部14の先端部に対しT軸AxT周りに回転可能である。第3手首可動部16の先端には、エンドエフェクタ(図示せず)が取り付けられる。
【0024】
なお、上記で説明したロボット1の構成は、あくまで一例であり、上記以外の構成であってもよい。例えば、アーム部3の各可動部の回転軸方向は、上記方向に限定されるものではなく、他の方向であってもよい。また、手首部10及びアーム部3の可動部の数は、それぞれ3つ及び6つに限定されるものではなく、他の数であってもよい。また、ロボット1は、アーム部3を1つのみ有する単腕ロボットに限定されるものではなく、アーム部3を複数有する複腕ロボットであってもよい。また、ロボット1は、垂直多関節型のロボットである限定されるものではなく、水平多関節型等の他のタイプのロボットであってもよい。
【0025】
コントローラCTは、ロボット1と相互通信可能に接続され、ロボット1の各モータを適宜駆動してアーム部3の各可動部を適宜動作させる等、ロボット1を制御する。
【0026】
(1−2.手首部の構成の例)
次に、
図2〜
図10を参照しつつ、手首部10の構成の一例について説明する。
【0027】
図2〜
図5に示すように、手首部10は、上記第1手首可動部12と、中空構造である上記第2手首可動部14と、中空構造である上記第3手首可動部16と、上記モータM,Mと、動力伝達機構PSとを有する。
【0028】
(1−2−1.第1〜第3手首可動部の例)
第1手首可動部12は、フレーム30(「アームフレーム」の一例に相当)を有する。
【0029】
フレーム30は、B軸AxBに直交し、且つR軸AxRを通る面を対称面とする面対称構造である2つのフレーム300a,300bが連結されて構成されている。フレーム30は、上記上腕部8の先端部に連結されるフランジ部31と、R軸AxR方向に延設された延設部32とを備える。
【0030】
延設部32のB軸AxB方向両側の断面形状は、凹状である。延設部32のB軸AxB方向両端部には、フレームカバーFC,FCが取り付けられている。延設部32は、B軸AxB方向に空隙を介して対向配置された一対の挟持部33,33を備える。
【0031】
挟持部33,33は、例えば延設部32の延設方向中央部よりも少し基端側から先端側に向けて二股状に分岐して形成されている。挟持部33,33の先端部の間には、第2手首可動部14がB軸AxB周りに回転可能に支持されている。各挟持部33の第2手首可動部14を支持する領域、具体的には各挟持部33における第2手首可動部14の可動範囲に対応する領域は、B軸AxB方向の厚みが当該挟持部33の他の領域よりも薄い薄肉部34となっている。
【0032】
各薄肉部34には、B軸AxB方向に中空状の軸部35がB軸AxB方向内側に突出して設けられている。
【0033】
第2手首可動部14は、フレーム40を有する。
【0034】
フレーム40は、上記薄肉部34,34の間においてB軸AxB方向に空隙を介して対向配置された一対の被支持部42,42と、T軸AxT方向に延設された延設部41とを備える。
【0035】
各被支持部42のB軸AxB方向外側は、凹状である。各被支持部42には、軸受Be6及びハウジングHoを介して上記軸部35が挿入されている。各被支持部42のB軸AxB方向外側の端部には、内周部に軸受Be6が設けられたハウジングHoが取り付けられている。各軸受Be6の内輪は、上記軸部35の外周部に固定されている。
【0036】
また、各被支持部42の底部には、外周部に軸受Be7,Be8が設けられ上記軸部35内に挿入されたシャフト44が固定されている。
【0037】
各シャフト44には、キャップ45を介して、上記薄肉部34にB軸AxB周りに回転可能に支持されたスラスト軸受Be12(例えばスラストニードル軸受)の一端が連結されている。
【0038】
延設部41は、T軸AxT方向に中空状である。延設部41の内周部には、軸受Be10,Be11が設けられている。
【0039】
このような第2手首可動部14は、上記軸受Be6〜Be8によりB軸AxB周りに回転可能に支持されている。
【0040】
第3手首可動部16は、T軸AxT方向に中空状であり、上記延設部41に設けられた後述の第2傘歯車BG2の軸部に連結され、第2傘歯車BG2の回転と共にT軸AxT周りに回転可能である。
【0041】
なお、上記で説明した第1〜第3手首可動部12,14,16の構成は、あくまで一例であり、上記以外の構成であってもよい。
【0042】
(1−2−2.モータの例)
モータM、Mは、上記延設部32の延設方向において第2手首可動部14とは反対側、つまり延設部32の基端側におけるB軸AxB方向両側に形成されたモータ収容部36,36にそれぞれ収容されている。なお、以下では、フレーム300a側のモータ収容部36に収容されたモータMを「一方のモータM」ともいう。また、フレーム300b側のモータ収容部36に収容されたモータMを「他方のモータM」ともいう。
【0043】
各モータMは、R軸AxR方向に延設されたシャフトを備え、当該シャフトをR軸AxRに沿った回転軸Ax1周りに回転して動力を出力する。
【0044】
なお、モータ収容部36は、延設部32の基端側に形成される場合に限定されるものではなく、延設部32の延設方向中央部近傍や延設部32の先端側に形成されてもよい。
【0045】
(1−2−3.動力伝達機構の例)
動力伝達機構PSは、複数のギヤを備え、上記モータM,Mの動力を第2及び第3手首可動部14,16の少なくとも一方に伝達するように構成されている。動力伝達機構PSは、2つの平歯車SG1,SG1と、2つの平歯車SG2,SG2と、2つのハイポイドピニオンHP,HPと、2つのハイポイドギヤHG,HGと、2つの平歯車SG3,SG3と、2つの平歯車SG4,SG4と、2つの平歯車SG5,SG5と、干渉駆動機構ISとを有する。なお、平歯車SG1、平歯車SG2、ハイポイドピニオンHP、ハイポイドギヤHG、平歯車SG3、平歯車SG4、及び平歯車SG5は、上記フレーム300a,300bに1つずつ設けられている。
【0046】
平歯車SG1は、モータMのシャフトと連結され、回転軸Ax1周りに回転可能に支持されている。
【0047】
平歯車SG2は、平歯車SG1と噛合し、回転軸Ax1に沿った回転軸Ax2周りに回転可能に支持されている。
【0048】
ハイポイドピニオンHPは、例えば軸部に平歯車SG2の貫通孔が嵌合されることで、平歯車SG2と連結され、軸受Be1,Be2により回転軸Ax2周りに回転可能に支持されている。
【0049】
ハイポイドギヤHGは、例えば平歯車SG3とボルト締結されて一体となり、軸受Be4及びスラスト軸受Be3(例えばスラストニードル軸受)によりB軸AxBに沿った回転軸Ax3周りに回転可能に支持され、ハイポイドピニオンHPと噛合する。
【0050】
スラスト軸受Be3は、ハイポイドギヤHGのB軸AxB方向内側に設けられ、ハイポイドギヤHGの回転軸Ax3方向に働く力を受け止める。スラスト軸受Be3のB軸AxB方向内側には、ハイポイドギヤHGの回転軸Ax3方向の位置を調整するシムsm(「ハイポイドピニオンとハイポイドギヤとのバックラッシュを調整する手段」の一例に相当)が設けられている。
【0051】
平歯車SG3は、例えば軸部が各ハイポイドギヤHGの内周部に嵌合されることで、ハイポイドギヤHGと連結され、軸受Be4により回転軸Ax3周りに回転可能に支持されている。
【0052】
ここで、本実施形態では、上記フレーム300a,300bの各々に設けられた、上記平歯車SG2、ハイポイドピニオンHP、ハイポイドギヤHG、スラスト軸受Be3、シムsm、及び平歯車SG3等の部品は、ギヤユニットGUとしてユニット化されている。
【0053】
(1−2−3−1.ギヤユニットの例)
ギヤユニットGU,GUは、上記延設部32のモータ収容部36,36よりも先端側で、且つ上記薄肉部34よりも基端側におけるB軸AxB方向両側に形成されたユニット取り付け部37,37にそれぞれ取り付けられている。
【0054】
図3〜
図9に示すように、ギヤユニットGUは、平板状の2つのフレーム50,51(ギヤフレームの一例に相当)、フレーム52と、上記平歯車SG2、上記ハイポイドピニオンHP、上記ハイポイドギヤHG、上記シムsm、上記平歯車SG3等の部品がユニット化されて構成されている。
【0055】
フレーム50,51は、例えば鉄等の強度の高い材料で構成され、B軸AxB方向に空隙を介して対向配置されている。
【0056】
フレーム52は、例えばアムミニウム等で構成され、フレーム50,51の間に挟持されるように固定されている。
【0057】
ハイポイドピニオンHPは、大部分がフレーム50,51,52の内側に配置され、フレーム50,51の間の一方側、つまり基端側に設けられた上記軸受Be1,Be2により回転軸Ax2周りに回転可能に支持されている。
【0058】
平歯車SG2は、フレーム50,51,52の外側においてハイポイドピニオンHPの軸部に嵌合され、回転軸Ax2周りに回転可能に支持されている。
【0059】
ハイポイドギヤHGは、フレーム50,51の間の他方側、つまり先端側に設けられた上記スラスト軸受Be3により、回転軸Ax3周りに回転可能に支持されている。
【0060】
シムsmは、フレーム51とスラスト軸受Be3との間に設けられている。シムsmによりハイポイドギヤHGの回転軸Ax3方向の位置を調整することで、ハイポイドピニオンHPとハイポイドギヤHGとの噛合部におけるバックラッシュを調整することができる。
【0061】
平歯車SG3は、フレーム50,51の間の先端側においてハイポイドギヤHGの内周部に嵌合され、上記軸受Be4により回転軸Ax3周りに回転可能に支持されている。
【0062】
なお、上記で説明したギヤユニットGUの構成は、あくまで一例であり、上記以外の構成であってもよい。例えば、ギヤユニットGUでは、平歯車SG2,SG3についてもユニット化されていたが、これらの少なくとも一方についてはユニット化されなくてもよい。
【0063】
図3〜
図5に示すように、平歯車SG4は、上記薄肉部34に配置されている。平歯車SG4は、平歯車SG3と噛合し、軸受Be5によりB軸AxB方向に沿った回転軸Ax4周りに回転可能に支持されている。
【0064】
平歯車SG5は、上記薄肉部34の軸部35近傍に配置され、内周部に上記軸受Be7の外輪が固定されている。平歯車SG5は、平歯車SG4と噛合し、軸受Be7によりB軸AxB周りに回転可能に支持されている。また、平歯車SG5は、干渉駆動機構ISに備えられた後述の第1傘歯車BG1と連結されている。
【0065】
なお、上記平歯車SG3〜SG5は、「互いに噛合した複数の歯車」の一例に相当する。また、平歯車SG5は、「第1傘歯車と連結された歯車」の一例に相当する。
【0066】
ここで、本実施形態では、互いに噛合した平歯車SG3〜SG5の噛合部におけるバックラッシュは、例えば以下のようにして調整される。
【0067】
(1−2−3−2.複数の歯車の噛合部におけるバックラッシュ調整の例)
図10に示すように、平歯車SG4は、回転中心(回転軸Ax4)が平歯車SG3の回転中心(回転軸Ax3)及び平歯車SG5の回転中心(B軸AxB)に対し回転軸Ax4に垂直な方向の一方側(
図10中上側)にずれて配置されている。平歯車SG4の軸部近傍には、当該平歯車SG4を回転軸Ax4に垂直な面方向(例えば
図10中のブロック矢印の方向)に付勢するばねSp2(「第2付勢部材」の一例に相当)が設けられている。
【0068】
ばねSp2により平歯車SG4を回転軸Ax4に垂直な面方向に付勢することで、平歯車SG4の歯部を予圧により平歯車SG3,SG5の歯部に押し付けて、平歯車SG3,SG4の噛合部におけるバックラッシュ及び平歯車SG4,SG5の噛合部におけるバックラッシュを調整することができる。
【0069】
なお、上記で説明した平歯車SG3〜SG5の噛合部におけるバックラッシュを調整する手法は、あくまで一例であり、上記以外の手法であってもよい。例えば、平歯車SG4にばねSp2を設けるのに代えて又は加えて、平歯車SG3〜SG5の周辺構造を適宜変更して、平歯車SG3及び平歯車SG5の少なくとも一方にばねを設けてもよい。
【0070】
(1−2−3−3.干渉駆動機構の例)
図3〜
図5に示すように、干渉駆動機構ISは、2つの第1傘歯車BG1,BG1と、第2傘歯車BG2とを備える。
【0071】
第1傘歯車BG1は、例えば軸部が上記平歯車SG5の軸部と固定されることで、平歯車SG5と連結されている。なお、以下では、上記フレーム300a側の平歯車SG5と連結された、つまり上記一方のモータMから動力が伝達される第1傘歯車BG1を「一方の第1傘歯車BG1」ともいう。また、上記フレーム300b側の平歯車SG5と連結された、つまり上記他方のモータMから動力が伝達される第1傘歯車BG1を「他方の第1傘歯車BG1」ともいう。
【0072】
具体的には、第1傘歯車BG1は、内周部に上記軸受Be7,Be8の外輪が固定されている。第1傘歯車BG1は、軸受Be7,Be8によりB軸AxB周りに回転可能に支持されている。なお、第1傘歯車BG1のB軸AxB方向に働く力は、上記スラスト軸受Be12により受け止めることが可能である。
【0073】
第2傘歯車BG2は、上記延設部41に配置され、軸部の外周部に上記軸受Be10,Be11の内輪が固定されている。第2傘歯車BG2は、第2傘歯車BG1,BG1の両方と噛合し、軸受Be10,Be11によりT軸AxT周りに回転可能に支持されている。
【0074】
また、第1傘歯車BG1、上記平歯車SG5、及び上記スラスト軸受Be12の間には、第1傘歯車BG1及び平歯車SG5をB軸AxB方向に付勢するばねSp1(「第1傘歯車を第1軸方向に付勢する第1付勢部材」の一例に相当)が、例えばB軸AxB周りに等間隔で複数設けられている。ばねSp1により第1傘歯車BG1をB軸AxB方向に付勢することで、第1傘歯車BG1の歯部を予圧により第2傘歯車BG2の歯部に押し付けて、第1及び第2傘歯車BG1,BG2の噛合部におけるバックラッシュを調整することができる。
【0075】
なお、第1傘歯車BG1をB軸AxB方向に付勢するばねSp1に代えて又は加えて、第2傘歯車BG2をT軸AxT方向に付勢するばね等の付勢部材(「第2傘歯車を第2軸方向に付勢する第1付勢部材」の一例に相当することとなる)を設けてもよい。
【0076】
上記シムsm及びばねSp1,Sp2は、「動力伝達機構のバックラッシュを調整する手段」の一例に相当する。
【0077】
ここで、一方のモータMの動力に基づく一方の第1傘歯車BG1の回転量を「θ」、他方のモータMの動力に基づく他方の第1傘歯車BG1の回転量を「φ」、第2手首可動部14の回転量を「r2」、第3手首可動部16の回転量を「r3」とすると、傘歯車のギヤ比が1:1のときは、r2,r3は、例えば次式のようになる。
r2=1/2×(θ+φ)
r3=1/2×(θ−φ)
【0078】
なお、上記で説明した干渉駆動機構IS及び動力伝達機構PSの構成は、あくまで一例であり、上記以外の構成であってもよい。
【0079】
(1−3.手首部の製造方法の例)
次に、上記構造の手首部10の製造方法の一例について説明する。
【0080】
手首部10の製造工程(組み付け工程)では、シムsmを用いてハイポイドピニオンHPとハイポイドギヤHGとの噛合部におけるバックラッシュが調整されたギヤユニットGU,GUを、上記フレーム30におけるユニット取り付け部37,37に取り付ける。
【0081】
なお、ここでは特に説明しないが、上記以外の部品も各部に適宜取り付ける。そして、全ての部品を取り付けることで、手首部10が完成する。
【0082】
(1−4.本実施形態による効果の例)
以上説明したように、本実施形態の手首部10は、動力伝達機構PSのバックラッシュを調整する手段(上記の例ではシムsm及びばねSp1,Sp2)を有するので、動力伝達機構PSにバックラッシュが少ない波動歯車を使用することなく、平歯車や傘歯車等の複数のギヤを連結して必要な減速比を得ることが可能となる。これにより、波動歯車による速度制限が無くなるので、第2手首可動部14や第3手首可動部16を高速化できる。また、動力伝達機構PSのバックラッシュを調整する手段(上記の例ではシムsm及びばねSp1,Sp2)により動力伝達機構PSのギヤのバックラッシュを低減できるので、動作精度を向上できる。
【0083】
また、手首部10では、干渉駆動機構ISにより、第2及び第3手首可動部14,16の単独動作を2つのモータM,Mで行うこととなるので、1つのモータで駆動する場合に比べて、片方のモータMに必要なトルクを大幅に低減できるという特性がある。そこで、高速動作を実現するために、減速比を小さくした場合でも、小容量のモータMで高速動作が可能となる。その結果、手首部10が小型でありながら高速動作を実現できる。
【0084】
また、本実施形態では特に、第1付勢部材(上記の例ではばねSp1)により、第1傘歯車BG1をB軸AxB方向に付勢することにより、第1傘歯車BG1と第2傘歯車BG2とを与圧により相互に押し付けて、バックラッシュを低減することができる。
【0085】
また、本実施形態では特に、平歯車SG5、第1傘歯車BG1、及びスラスト軸受Be12の間に設けられたばねSp1により、平歯車SG5及び第1傘歯車BG1をB軸AxB方向に付勢する。平歯車SG5及び第1傘歯車BG1を付勢するばねSp1をスラスト軸受Be12と第1傘歯車BG1のザグリ穴底部との間の空間に設けることにより、ばねSp1の長さを確保することができる。その結果、変位に対するばね力の変動が小さくなり、安定した与圧が得られるので、安定したバックラッシュの低減効果を得ることができる。また、第2傘歯車BG2の両側に2つの第1傘歯車BG1、BG1が噛合する構成では、両側の第1傘歯車BG1、BG1についてばねSp1を設置することで、個別にばねSp1の調整をすることができるので、両側のばね与圧力の誤差を小さくすることができる。その結果、両側の第1傘歯車BG1,BG1の噛合部における動力伝達ロスのばらつきを低減でき、モータトルクのばらつきも低減できるので、モータトルクを有効に活用でき、動作性能を向上できる。
【0086】
また、本実施形態では特に、第2付勢部材(上記の例ではばねSp2)により、平歯車SG4をB軸AxBに沿った回転軸Ax4に垂直な面方向に付勢する。これにより、平歯車SG3〜SG5の噛合部におけるバックラッシュを低減することができる。
【0087】
また、本実施形態では特に、動力伝達機構PSがハイポイドピニオンHP及びハイポイドギヤHGを有し、シムsmによりハイポイドギヤHGのB軸AxBに沿った回転軸Ax3方向の位置を調整する。動力伝達機構PSにハイポイドギヤHGを用いることにより、大きな減速比を得ることができる。また、ハイポイドギヤHGは減速比が大きくなるのに伴い効率が低下するが、動力伝達機構PSが傘歯車や平歯車等を有することで、各々の歯車の減速比を最適化して、動力伝達機構PS全体のギヤ効率を高めることができる。その結果、モータMの小容量化が可能となり、手首部10を小型化できる。また、シムsmによりハイポイドギヤHGのB軸AxBに沿った回転軸Ax3方向の位置を調整することにより、ハイポイドピニオンHPとハイポイドギヤHGとの噛合部におけるバックラッシュを低減することができる。
【0088】
また、本実施形態では特に、動力伝達機構PSが、フレーム50,51、ハイポイドピニオンHP、ハイポイドギヤHG、及びシムsmがユニット化されたギヤユニットGUを有する。ハイポイドギヤHGをユニット化することにより、動力伝達機構PSのフレーム30への取り付けの自動化が容易となり、手首部10の生産性を向上できる。また、ギヤユニットGUを手首部10に組み付ける前に、シムsmを用いて、ギヤユニットGU単体でのバックラッシュ調整が可能となる。これにより、調整の精度や作業性を向上できる。また、動力伝達機構PSにバックラッシュが少ない波動歯車を使用することなく、平歯車や傘歯車等の複数のギヤを連結して必要な減速比を得ることが可能となる。したがって、第2手首可動部14や第3手首可動部16を高速化できる。また、高精度なバックラッシュ調整が行われたギヤユニットGUを動力伝達機構PSに用いることにより、動作精度を向上できる。また、ハイポイドピニオンHPとハイポイドギヤHGとのラジアル・スラスト荷重によりフレーム50,51に内部応力が発生するが、フレーム50,51に強度の高い(例えば鉄製の)材料を用いることで、薄型化が可能となる。これにより、ギヤユニットGUのB軸AxBに沿った回転軸Ax3方向の寸法を低減することが可能となり、手首部10を薄型化できる。
【0089】
また、本実施形態では特に、フレーム30が、対向配置された一対の挟持部33,33を有し、第2手首可動部14が挟持部33,33の先端部の間に支持される。これにより、フレーム30の挟持部33,33の間に空間を形成して、中空構造の手首部12を実現できる。その結果、手首部12の内部に各種ケーブルを配線することができる。
【0090】
また、本実施形態では、フレーム30が備える一対の挟持部33,33の先端部の間に第2手首可動部14を支持する構造とするので、挟持部33,33の間に空間を形成した中空構造の手首部10とすることができる。このとき、挟持部33の第2手首可動部14を支持する領域に薄肉部34を形成するので、挟持部33が一定の厚みである場合に比べ、手首部10のB軸AxB方向の外形寸法(関節幅)を低減できる。
【0091】
一方で、動力伝達機構PSの複数のギヤによりモータMと第2手首可動部14との間で必要な減速比を得ることができるので、挟持部33と第2手首可動部14との間に減速機を用いる必要が無い。したがって、第2手首可動部14のB軸AxB方向の寸法を確保でき、中空径を確保できる。
【0092】
したがって、中空径を確保しつつ手首部10を薄型化できる。
【0093】
また、本実施形態では特に、薄肉部34が挟持部33における第2手首可動部14の可動範囲に対応する領域に形成される。これにより、第2手首可動部14の可動空間を確保できる。
【0094】
また、本実施形態では特に、第2及び第3手首可動部14,16が中空構造である。これにより、エンドエフェクタに使用される各種ケーブルを手首部10の内部に配線することができる。
【0095】
また、本実施形態では特に、フレーム30が、当該フレーム30の延設方向において第2手首可動部14とは反対側に位置し、モータMが収容されるモータ収容部36を有する。これにより、比較的重量物であるモータMを第2手首可動部14側から遠ざけて配置することができるので、手首部10より根元側の軸においては、手首部10の負荷(慣性モーメント)を軽減できる。その結果、必要なトルクが軽減され、基本軸部のモータの小容量化やフレーム小形化、薄型化が可能となり、手首部10より根元側の軸部を小型化できる。
【0096】
また、本実施形態では特に、平歯車SG4,SG5が薄肉部34に配置される。動力伝達機構PSのうち、歯幅の小さな平歯車SG4,SG5を薄肉部34に配置することで、薄肉構造を実現できる。
【0097】
なお、上記で説明した第2手首可動部14や第3手首可動部16を高速化する効果等を得るためには、手首部10は、必ずしも、挟持部33,33の先端部の間に第2手首可動部14を支持する構造で、挟持部33の第2手首可動部14を支持する領域に薄肉部34が形成されなくてもよい。また、上記で説明した中空径を確保しつつ手首部10を薄型化する効果等を得るためには、手首部10は、必ずしも動力伝達機構PSのバックラッシュを調整する手段(上記の例ではシムsm及びばねSp1,Sp2)を備えなくてもよい。
【0098】
(1−5.変形例等)
なお、第1実施形態は、上記内容に限定されるものではなく、その趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。以下、そのような変形例を順次説明する。
【0099】
(1−5−1.第1変形例)
上記第1実施形態は、ばねSp2により平歯車SG4を回転軸Ax4に垂直な面方向に付勢することで、互いに噛合した平歯車SG3〜SG5の噛合部におけるバックラッシュを調整可能とした構成であった。
【0100】
これに対し、本変形例では、
図11に示すように、前述の平歯車SG3に代えてテーパギヤTG1、前述の平歯車HG4に代えてテーパギヤTG2、前述の平歯車HG5に代えてテーパギヤTG3が設けられている。なお、テーパギヤTG1〜TG3は、「互いに噛合した複数の歯車」の一例に相当する。
【0101】
テーパギヤTG2の軸部には、当該テーパギヤTG2を回転軸Ax4方向(例えば
図11中のブロック矢印の方向)に付勢するばねSp3(「第2付勢部材」の一例に相当)が設けられている。例えば、ばねSp3の一端は、テーパギヤTG2のB軸AxB方向内側に固定され、ばねSp3の他端は、上記薄肉部34の外周面に固定されている。
【0102】
ばねSp3によりテーパギヤTG2を回転軸Ax4方向に付勢することで、テーパギヤTG2の歯部を予圧によりテーパギヤTG1,TG3の歯部に押し付けて、テーパギヤTG1,TG2の噛合部におけるバックラッシュ及びテーパギヤTG2,TG3の噛合部におけるバックラッシュを調整することができる。なお、ばねSp3は、「動力伝達機構のバックラッシュを調整する手段」の一例に相当する。
【0103】
なお、上記で説明したテーパギヤTG1〜TG3の噛合部におけるバックラッシュを調整する手法は、あくまで一例であり、上記以外の手法であってもよい。例えば、テーパギヤTG2にばねSp2を設けるのに代えて又は加えて、テーパギヤTG1及びテーパギヤTG3の少なくとも一方にばねを設けてもよい。
【0104】
以上説明した本変形例においても、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。すなわち、本変形例によれば、テーパギヤTG1〜TG3の噛合部におけるバックラッシュを低減することができる。
【0105】
(1−5−2.第2変形例)
本変形例では、
図12に示すように、前述の平歯車SG3に代えてヘリカルギヤHG1、前述の平歯車HG4に代えて一対のヘリカルギヤHG2a,HG2b(以下適宜「ヘリカルギヤHG2」と総称)、前述の平歯車HG5に代えてヘリカルギヤHG3が設けられている。なお、ヘリカルギヤHG1,HG2a,HG2b,HG3は、「互いに噛合した複数の歯車」の一例に相当する。
【0106】
ヘリカルギヤHG2a,HG2bの間には、当該ヘリカルギヤHG2a,HG2bを回転軸Ax4方向外側(例えば
図12中のブロック矢印の方向)に付勢するばねSp4(「第2付勢部材」の一例に相当)が設けられている。
【0107】
ばねSp4によりヘリカルギヤHG2a,HG2bを回転軸Ax4方向外側に付勢することで、ヘリカルギヤHG2a,HG2bのいずれかの歯部を予圧によりヘリカルギヤHG1に押し付けると共に、ヘリカルギヤHG2a,HG2bのいずれかの歯部を予圧によりヘリカルギヤHG3に押し付けて、ヘリカルギヤHG1,HG2におけるバックラッシュ及びヘリカルギヤHG2,HG3におけるバックラッシュを調整することができる。なお、ばねSp4は、「動力伝達機構のバックラッシュを調整する手段」の一例に相当する。
【0108】
なお、上記で説明したヘリカルギヤHG1〜HG3の噛合部におけるバックラッシュを調整する手法は、あくまで一例であり、上記以外の手法であってもよい。
【0109】
以上説明した本変形例においても、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。すなわち、本変形例によれば、ヘリカルギヤHG1〜HG3の噛合部におけるバックラッシュを低減することができる。
【0110】
<2.第2実施形態>
次に、第2実施形態について説明する。なお、以下では、主として上記第1実施形態の構成と異なる点について説明する。
【0111】
本実施形態において、上記第1実施形態と異なる点は、手首部の構成等である。以下、
図13〜
図15を参照しつつ、本変形例の手首部の構成の一例について説明する。
【0112】
(2−1.手首部の構成の例)
図13〜
図15に示すように、本変形例の手首部10A(「ロボットアーム」の一例に相当)は、第1手首可動部12Aと、中空構造である第2手首可動部14A(「第1軸可動部」の一例に相当)と、中空構造である第3手首可動部16A(「第2軸可動部」の一例に相当)と、2つのモータMA,MAと、動力伝達機構PSAとを有する。
【0113】
(2−1−1.第1〜第3手首可動部の例)
第1手首可動部12Aは、フレーム60(「アームフレーム」の一例に相当)を有する。
【0114】
フレーム60は、B軸AxBに直交し、且つR軸AxRを通る面を対称面とする面対称構造である2つのフレーム600a,600bが連結されて構成されている。フレーム60は、R軸AxR方向に延設された延設部62を備える。
【0115】
延設部62のB軸AxB方向両側の断面形状は、凹状である。延設部62のB軸AxB方向両端部には、フレームカバー(図示せず)が取り付けられる。延設部62は、B軸AxB方向に空隙を介して対向配置された一対の挟持部63,63を備える。
【0116】
挟持部63,63の先端部の間には、第2手首可動部14AがB軸AxB周りに回転可能に支持されている。各挟持部63の第2手首可動部14Aを支持する領域、具体的には各挟持部63における第2手首可動部14Aの可動範囲に対応する領域は、B軸AxB方向の厚みが当該挟持部63の他の領域よりも薄い薄肉部64となっている。
【0117】
各薄肉部64には、B軸AxB方向に中空状の軸部65がB軸AxB方向内側に突出して設けられている。
【0118】
第2手首可動部14Aは、フレーム80を有する。
【0119】
フレーム80は、上記薄肉部64,64の間においてB軸AxB方向に空隙を介して対向配置された一対の被支持部82,82と、T軸AxT方向に延設された延設部81とを備える。
【0120】
各被支持部82のB軸AxB方向外側は、凹状である。各被支持部82には、上記軸部65が挿入されている。各被支持部82のB軸AxB方向外側の端部には、内周部に軸受Be16が設けられたハウジングHoAが取り付けられている。各軸受Be16の内輪は、上記軸部65の外周部に固定されている。
【0121】
また、各被支持部82の底部には、外周部に軸受Be17,Be18が設けられ上記軸部65内に挿入されたシャフト84が固定されている。
【0122】
各シャフト84には、キャップ85を介して、上記薄肉部64にB軸AxB周りに回転可能に支持された例えばスラストニードル軸受等のスラスト軸受Be22(「フレーム押さえ部材」の一例に相当)の一端が連結されている。各スラスト軸受Be22の他端は、支持部材90を介して上記薄肉部34の外側面に固定されている。各スラスト軸受Be22は、B軸AxB方向に働く力を受け止めることで、上記薄肉部34の外側面を押さえるように構成されている。
【0123】
延設部81は、T軸AxT方向に中空状である。延設部81の内周部には、軸受Be20,Be21が設けられている。
【0124】
このような第2手首可動部14Aは、上記軸受Be16〜Be18によりB軸AxB周りに回転可能に支持されている。
【0125】
第3手首可動部16Aは、T軸AxT方向に中空状であり、上記延設部81に設けられた後述の第2傘歯車BGBの軸部に連結され、第2傘歯車BGBの回転と共にT軸AxT周りに回転可能である。
【0126】
なお、上記で説明した第1〜第3手首可動部12A,14A,16Aの構成は、あくまで一例であり、上記以外の構成であってもよい。
【0127】
(2−1−2.モータの例)
モータMA、MAは、上記延設部62の延設方向において第2手首可動部14Aとは反対側、つまり延設部62の基端側におけるB軸AxB方向両側に形成されたモータ収容部66,66にそれぞれ収容されている。なお、以下では、フレーム600a側のモータ収容部66に収容されたモータMAを「一方のモータMA」ともいう。また、フレーム600b側のモータ収容部66に収容されたモータMAを「他方のモータMA」ともいう。
【0128】
各モータMAは、R軸AxR方向に延設されたシャフトSHを備え、当該シャフトSHをR軸AxRに沿った回転軸Ax10周りに回転して動力を出力する。
【0129】
なお、モータ収容部66は、延設部62の基端側に形成される場合に限定されるものではなく、延設部62の延設方向中央部近傍や延設部62の先端側に形成されてもよい。
【0130】
(2−1−3.動力伝達機構の例)
動力伝達機構PSAは、複数のギヤを備え、上記モータMA,MAの動力を第2及び第3手首可動部14A,16Aの少なくとも一方に伝達するように構成されている。動力伝達機構PSAは、2つの平歯車SG10,SG10と、2つの平歯車SG12,SG12と、2つのハイポイドピニオンHPA,HPAと、2つのハイポイドギヤHGA,HGAと、干渉駆動機構ISAとを有する。なお、平歯車SG10、平歯車SG12、ハイポイドピニオンHPA、及びハイポイドギヤHGAは、上記フレーム600a,600bに1つずつ設けられている。
【0131】
平歯車SG10は、例えば軸部にモータMAのシャフトSHが嵌合されることで、シャフトSHと連結され、回転軸Ax10周りに回転可能に支持されている。
【0132】
平歯車SG12は、平歯車SG10と噛合し、回転軸Ax10に沿った回転軸Ax12周りに回転可能に支持されている。
【0133】
ハイポイドピニオンHPAは、例えば軸部に平歯車SG12の貫通孔が嵌合されることで、平歯車SG12と連結され、先端側が上記薄肉部64に配置されている。ハイポイドピニオンHPAは、軸受BeA(例えばアンギュラ軸受)及び軸受BeB(例えばニードル軸受)により回転軸Ax12周りに回転可能に支持されている。
【0134】
軸受BeAは、上記挟持部63における上記薄肉部64よりも基端側に配置され、ハイポイドピニオンHPAの軸部の基端側を支持する。軸受BeBは、上記薄肉部64に配置され、ハイポイドピニオンHPAの軸部の先端側を支持する。
【0135】
ハイポイドギヤHGAは、ハイポイドピニオンHPAと噛合し、B軸AxB周りに回転可能に支持されている。ハイポイドギヤHGAは、干渉駆動機構ISAに備えられた後述の第1傘歯車BGAと連結されている。
【0136】
(2−1−3−1.干渉駆動機構の例)
干渉駆動機構ISAは、2つの第1傘歯車BGA,BGAと、第2傘歯車BGBとを備える。
【0137】
第1傘歯車BGAは、例えば軸部が上記ハイポイドギヤHGAの貫通孔に嵌合することで、ハイポイドギヤHGAと連結されている。なお、以下では、上記フレーム600a側のハイポイドギヤHGAと連結された、つまり上記一方のモータMAから動力が伝達される第1傘歯車BGAを「一方の第1傘歯車BGA」ともいう。また、上記フレーム600b側のハイポイドギヤHGAと連結された、つまり上記他方のモータMAから動力が伝達される第1傘歯車BGAを「他方の第1傘歯車BGA」ともいう。
【0138】
具体的には、第1傘歯車BGAは、内周部に上記軸受Be17,Be18の外輪が固定されている。第1傘歯車BGAは、軸受Be17,Be18によりB軸AxB周りに回転可能に支持されている。
【0139】
第2傘歯車BGBは、上記延設部81に配置され、軸部の外周部に上記軸受Be20,Be21の内輪が固定されている。第2傘歯車BGBは、第1傘歯車BGA,BGAの両方と噛合し、軸受Be20,Be21によりT軸AxT周りに回転可能に支持されている。
【0140】
第2傘歯車BGBの軸部の外周部には、当該第2傘歯車BGBをT軸AxT方向に付勢するばねSp5(「第2傘歯車を第2軸方向に付勢する第1付勢部材」の一例に相当)が設けられている。ばねSp5により第2傘歯車BGBをT軸AxT方向に付勢することで、第2傘歯車BGBの歯部を予圧により第1傘歯車BGAの歯部に押し付けて、第1及び第2傘歯車BGA,BGBの噛合部におけるバックラッシュを調整することができる。
【0141】
なお、第2傘歯車BGBをT軸AxT方向に付勢するばねSp5に代えて又は加えて、第1傘歯車BGAをB軸AxB方向に付勢するばね等の付勢部材(「第1傘歯車を第1軸方向に付勢する第1付勢部材」の一例に相当することとなる)を設けてもよい。
【0142】
上記ばねSp5は、「動力伝達機構のバックラッシュを調整する手段」の一例に相当する。
【0143】
ここで、一方のモータMAの動力に基づく一方の第1傘歯車BGAの回転量を「θA」、他方のモータMAの動力に基づく他方の第1傘歯車BGAの回転量を「φA」、第2手首可動部14Aの回転量を「r2A」、第3手首可動部16Aの回転量を「r3A」とすると、傘歯車のギヤ比が1:1のときは、r2A,r3Aは、例えば次式のようになる。
r2A=1/2×(θA+φA)
r3A=1/2×(θA−φA)
【0144】
なお、上記で説明した干渉駆動機構ISA及び動力伝達機構PSAの構成は、あくまで一例であり、上記以外の構成であってもよい。
【0145】
(2−2.本実施形態による効果の例)
以上説明した本実施形態においても、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。例えば、手首部10Aが動力伝達機構PSAのバックラッシュを調整する手段(上記の例ではばねSp5)を有するので、第2手首可動部14Aや第3手首可動部16Aを高速化できる。また、フレーム60が備える一対の挟持部63,63の先端部の間に第2手首可動部14Aを支持する構造としつつ、挟持部63の第2手首可動部14Aを支持する領域に薄肉部64を形成するので、中空径を確保しつつ手首部10Aを薄型化できる。
【0146】
また、本実施形態では特に、ばねSp5により、第2傘歯車BGBをT軸AxT方向に付勢することにより、第1傘歯車BGAと第2傘歯車BGBとを与圧により相互に押し付けて、バックラッシュを低減することができる。
【0147】
また、本実施形態では特に、動力伝達機構PSAのうち、シャフト状のハイポイドピニオンHPAの一部を薄肉部64に配置することで、薄肉構造を実現できる。また、動力伝達機構PSAにハイポイドギヤHGAを用いることにより、大きな減速比を得ることができる。また、ハイポイドギヤHGAは減速比が大きくなるのに伴い効率が低下するが、動力伝達機構PSAが平歯車等を有することで、各々の歯車の減速比を最適化して、動力伝達機構PSA全体のギヤ効率を高めることができる。その結果、モータMAの小容量化が可能となり、手首部10Aを小型化できる。
【0148】
また、本実施形態では特に、ハイポイドピニオンHPAを支持する軸受BeAが薄肉部64に配置される。これにより、ハイポイドピニオンHPAをハイポイドギヤHGAの近傍で支持することができるので、ハイポイドピニオンHPAに作用するラジアル荷重等に対する剛性を高めることができる。
【0149】
また、本実施形態では特に、次のような効果を得ることができる。すなわち、挟持部63の薄肉部64は比較的剛性が弱いので、例えば、ハイポイドギヤHGAで発生するラジアル荷重や、第3手首可動部16AがT軸AxT周りに回転した際の負荷による遠心力等により、開く方向に変形を生じる可能性がある。この場合、ハイポイドピニオンHPAとハイポイドギヤHGAとの間で歯飛びが発生する可能性がある。本実施形態では、スラスト軸受Be22により上記薄肉部64の変形を防止できる。その結果、上記歯飛びの発生も防止できる。
【0150】
なお、上記で説明した第2手首可動部14Aや第3手首可動部16Aを高速化する効果等を得るためには、手首部10Aは、必ずしも、挟持部63,63の先端部の間に第2手首可動部14Aを支持する構造で、挟持部63の第2手首可動部14Aを支持する領域に薄肉部64が形成されなくてもよい。また、上記で説明した中空径を確保しつつ手首部10Aを薄型化する効果等を得るためには、手首部10Aは、必ずしも動力伝達機構PSAのバックラッシュを調整する手段(上記の例ではばねSp5)を備えなくてもよい。
【0151】
なお、第2実施形態は、上記内容に限られるものではなく、その趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。
【0152】
<3.その他>
また、実施形態は、上記第1及び第2実施形態に限定されるものではなく、その趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。例えば、上記第1実施形態において、上記スラスト軸受Be12と同様のスラスト軸受をさらに設けることで、当該スラスト軸受をフレーム押さえ部材として機能させることも可能である。
【0153】
なお、以上の説明において、「垂直」「平行」「平面」等の記載がある場合には、当該記載は厳密な意味ではない。すなわち、それら「垂直」「平行」「平面」等とは、設計上、製造上の公差、誤差が許容され、「実質的に垂直」「実質的に平行」「実質的に平面」等という意味である。
【0154】
また、以上の説明において、外観上の寸法や大きさが「同一」「等しい」「異なる」等の記載がある場合は、当該記載は厳密な意味ではない。すなわち、それら「同一」「等しい」「異なる」等とは、設計上、製造上の公差、誤差が許容され、「実質的に同一」「実質的に等しい」「実質的に異なる」等という意味である。
【0155】
また、以上既に述べた以外にも、上記各実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用してもよい。
【0156】
その他、一々例示はしないが、上記各実施形態や各変形例は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。