特許第6443460号(P6443460)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6443460
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】圧延ラインの表示システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/04 20120101AFI20181217BHJP
   G06T 19/00 20110101ALI20181217BHJP
【FI】
   G06Q50/04
   G06T19/00 A
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-574578(P2016-574578)
(86)(22)【出願日】2015年2月12日
(86)【国際出願番号】JP2015053810
(87)【国際公開番号】WO2016129081
(87)【国際公開日】20160818
【審査請求日】2017年5月26日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082175
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 守
(74)【代理人】
【識別番号】100106150
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 英樹
(72)【発明者】
【氏名】今成 宏幸
(72)【発明者】
【氏名】北郷 和寿
【審査官】 加舎 理紅子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−075702(JP,A)
【文献】 特開2000−132214(JP,A)
【文献】 特開2010−042466(JP,A)
【文献】 特開2009−266221(JP,A)
【文献】 特表2013−515313(JP,A)
【文献】 特開2006−107043(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 − 99/00
G06T 19/00
G05B 19/18
G05B 19/4069
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧延スタンドに関する第1情報と前記圧延スタンドを通過する圧延材に関する第2情報とに基づいて、前記圧延スタンドの状態を表示器に表示するために必要な演算を行う第1演算手段と、
前記第1情報及び前記第2情報に基づいて、前記圧延スタンドを通過する圧延材の状態を前記表示器に表示するために必要な演算を行う第2演算手段と、
前記第1演算手段による演算結果と前記第2演算手段による演算結果とに基づいて前記表示器の表示を制御する表示制御手段と、
前記圧延スタンド及び前記圧延スタンドを通過する圧延材から一方を選択するための選択手段と、
を備え、
前記選択手段は、圧延材が前記圧延スタンドを通過している間は圧延材を選択し、圧延材が前記圧延スタンドを通過していない間は前記圧延スタンドを選択し、
前記表示制御手段は、
前記選択手段によって前記圧延スタンドが選択された場合は、前記圧延スタンドを通過する圧延材より前記圧延スタンドの方が視認性が高くなるように前記圧延スタンドの状態と前記圧延スタンドを通過する圧延材の状態とを前記表示器に同時に表示させ、
前記選択手段によって圧延材が選択された場合は、前記圧延スタンドより前記圧延スタンドを通過する圧延材の方が視認性が高くなるように前記圧延スタンドの状態と前記圧延スタンドを通過する圧延材の状態とを前記表示器に同時に表示させる圧延ラインの表示システム。
【請求項2】
前記表示制御手段は、
前記選択手段によって前記圧延スタンドが選択された場合は、前記圧延スタンドのうち前記圧延スタンドを通過する圧延材の陰になっている部分が視認できるように前記圧延スタンドの状態を前記表示器に3次元的に表示させ、
前記選択手段によって圧延材が選択された場合は、前記圧延スタンドを通過する圧延材のうち前記圧延スタンドの陰になっている部分が視認できるように圧延材の状態を前記表示器に3次元的に表示させる請求項1に記載の圧延ラインの表示システム。
【請求項3】
前記表示制御手段は、
前記選択手段によって前記圧延スタンドが選択された場合は、少なくとも前記圧延スタンドを通過する圧延材の一部の外形が視認できるように圧延材の状態を前記表示器に表示させ、
前記選択手段によって圧延材が選択された場合は、前記圧延スタンドを構成する機器のうち少なくとも圧延材に接触している機器の一部の外形が視認できるように前記圧延スタンドの状態を前記表示器に表示させる請求項2に記載の圧延ラインの表示システム。
【請求項4】
前記圧延スタンドに関する特定の情報を検出するための第1検出装置と、
前記圧延スタンドを通過する圧延材に関する特定の情報を検出するための第2検出装置と、
を更に備え、
前記第1情報は、前記第1検出装置によって検出された情報を含み、
前記第2情報は、前記第2検出装置によって検出された情報を含む請求項1から請求項3の何れか一項に記載の圧延ラインの表示システム。
【請求項5】
前記圧延スタンドを通過する圧延材を撮影するための第1カメラと、
を更に備え、
前記表示制御手段は、前記選択手段によって圧延材が選択された場合は、前記第1カメラによって撮影された映像を一部に用いて圧延材の状態を前記表示器に表示させる請求項1から請求項4の何れか一項に記載の圧延ラインの表示システム。
【請求項6】
前記圧延スタンドを撮影するための第2カメラと、
を更に備え、
前記表示制御手段は、前記選択手段によって前記圧延スタンドが選択された場合は、前記第2カメラによって撮影された映像を一部に用いて前記圧延スタンドの状態を前記表示器に表示させる請求項1から請求項4の何れか一項に記載の圧延ラインの表示システム。
【請求項7】
前記選択手段は、選択を手動で行うための機器である請求項1から請求項6の何れか一項に記載の圧延ラインの表示システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、圧延ラインの表示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば製造プラントでは、製造装置の状態と製造装置によって製造される被製造物の状態とを表示器に表示させ、安定な操業と被製造物の高品質化に役立てている。従来では、表示器に定型の2次元的な製造装置の図と被製造物の図とを表示し、更にそれらに関する種々の数値データを表示していた。運転員或いはエンジニアは、表示されている数値データから必要な情報を取捨選択し、操業のために使用していた。
【0003】
これに対し、表示器に3次元的な表示を行い、利便性を向上させる技術も提案されている。例えば、特許文献1に、設備を保守するためのシステムが記載されている。特許文献1に記載されたシステムでは、機器のCADデータと機器に収容されている内容物のCG画像等を合成し、視覚的に対応付けて表示器に表示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】日本特開2013−149042号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されたシステムは、設備を保守するためのものである。このため、このシステムでは、設備の状態等を稼働状況に合わせて表示器に見易く表示させることができなかった。
【0006】
例えば製造プラントに携わる部門に品質管理部門と設備管理部門とがある。品質管理部門は、製造装置によって製造される被製造物の品質を管理する部門である。設備管理部門は、製造装置を管理する部門である。これらの部門では、それぞれ監視したい対象が異なる。例えば、品質管理部門の人は、被製造物の品質を維持するために、製造装置の内部において被製造物がどのように加工されているのかを監視したい。設備管理部門の人は、製造装置を良好な状態に維持するために、製造装置の稼働状況を監視したい。特許文献1に記載されたシステムでは、これらの要求に応えることができなかった。
【0007】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされた。この発明の目的は、圧延スタンドの状態及び圧延スタンドを通過する圧延材の状態を要求或いは状況等に合わせて表示器に見易く表示することができる圧延ラインの表示システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る圧延ラインの表示システムは、圧延スタンドに関する第1情報と圧延スタンドを通過する圧延材に関する第2情報とに基づいて、圧延スタンドの状態を表示器に表示するために必要な演算を行う第1演算手段と、第1情報及び第2情報に基づいて、圧延スタンドを通過する圧延材の状態を表示器に表示するために必要な演算を行う第2演算手段と、第1演算手段による演算結果と第2演算手段による演算結果とに基づいて表示器の表示を制御する表示制御手段と、圧延スタンド及び圧延スタンドを通過する圧延材から一方を選択するための選択手段と、を備える。選択手段は、圧延材が圧延スタンドを通過している間は圧延材を選択し、圧延材が圧延スタンドを通過していない間は圧延スタンドを選択する。表示制御手段は、選択手段によって圧延スタンドが選択された場合は、圧延スタンドを通過する圧延材より圧延スタンドの方が視認性が高くなるように圧延スタンドの状態と圧延スタンドを通過する圧延材の状態とを表示器に同時に表示させる。表示制御手段は、選択手段によって圧延材が選択された場合は、圧延スタンドより圧延スタンドを通過する圧延材の方が視認性が高くなるように圧延スタンドの状態と圧延スタンドを通過する圧延材の状態とを表示器に同時に表示させる。

【発明の効果】
【0009】
この発明に係る圧延ラインの表示システムであれば、圧延スタンドの状態及び圧延スタンドを通過する圧延材の状態を要求或いは状況等に合わせて表示器に見易く表示することができる。


【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】この発明の実施の形態1における表示システムの構成を示す図である。
図2図1に示す表示システムを圧延ラインに適用した時の表示器の表示例を示す。
図3図1に示す表示システムの動作例を示すフローチャートである。
図4】製造装置と製造装置によって製造される被製造物との外観を示す一般的な図である。
図5】圧延材の表示を優先した場合の表示器の表示例を示す図である。
図6】圧延スタンドの表示を優先した場合の表示器の表示例を示す図である。
図7】圧延ロールの出側の圧延材を強調表示した例を示す図である。
図8】圧延ロールの断面を強調表示した例を示す図である。
図9】カメラによって撮影された映像を用いた場合の表示器の表示例を示す図である。
図10】この発明の実施の形態1における表示システムの他の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
添付の図面を参照し、本発明を説明する。重複する説明は、適宜簡略化或いは省略する。各図において、同一の符号は同一の部分又は相当する部分を示す。
【0012】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1における表示システムの構成を示す図である。
図1に示す表示システムは、例えば、製造装置を備えた製造プラントに適用される。本表示システムを利用することにより、製造装置の状態と製造装置によって製造される被製造物の状態との双方を監視することができる。被製造物は製品でも良いし、中間生成品でも良い。例えば、品質管理部門の人は、この表示システムを利用して製造装置の内部において被製造物がどのように処理されているのかを監視する。設備管理部門の人は、この表示システムを利用して製造装置の稼働状況を監視する。
【0013】
品質管理部門による監視と設備管理部門による監視とを正確且つ効率的に行うことができるように、本表示システムに表示装置1が備えられる。表示装置1は、例えば演算部2、演算部3、記憶部4、表示制御部5、選択部6及び表示器7を備える。
【0014】
演算部2は、製造装置の状態を表示器7に表示するために必要な種々の演算を行う。演算部2は、例えば第1情報と第2情報とに基づいて演算を行う。第1情報は、製造装置に関する情報である。第2情報は、製造装置によって製造される被製造物に関する情報である。第1情報及び第2情報は、例えば記憶部4に記憶されている。
【0015】
演算部3は、製造装置によって製造される被製造物の状態を表示器7に表示するために必要な種々の演算を行う。演算部3は、例えば第1情報と第2情報とに基づいて演算を行う。例えば、演算部3は、記憶部4に記憶されている第1情報のうち演算部2が演算に使用する情報と同じ情報を一部に用いて演算を行う。同様に、演算部3は、記憶部4に記憶されている第2情報のうち演算部2が演算に使用する情報と同じ情報を一部に用いて演算を行う。
【0016】
検出装置8は、製造装置に関する特定の情報を検出する。例えば、製造装置がモータを備える場合、検出装置8はモータの速度を検出する。検出装置8が検出する情報はこれに限定されない。また、複数の検出装置8を備えても良い。検出装置8は、検出した情報を表示装置1に出力する。上記第1情報に検出装置8によって検出された情報を含めても良い。
【0017】
検出装置9は、製造装置によって製造される被製造物に関する特定の情報を検出する。例えば、製造装置が金属板を圧延する圧延装置を備える場合、検出装置9は金属板の厚みを検出する。検出装置9が検出する情報はこれに限定されない。また、複数の検出装置9を備えても良い。検出装置9は、検出した情報を表示装置1に出力する。上記第2情報に検出装置9によって検出された情報を含めても良い。
【0018】
表示制御部5は、表示器7の表示を制御する。表示制御部5は、演算部2による演算結果と演算部3による演算結果とに基づいて表示の制御を行う。例えば、表示制御部5は、製造装置の状態と製造装置によって製造される被製造物の状態とを表示器7に同時に表示させる。表示制御部5は、条件に応じて、製造装置によって製造される被製造物より製造装置の方が視認性が高くなるように表示器7に表示させる情報量を調節する。また、表示制御部5は、条件に応じて、製造装置より製造装置によって製造される被製造物の方が視認性が高くなるように表示器7に表示させる情報量を調節する。
【0019】
選択部6は、製造装置と製造装置によって製造される被製造物とから一方を選択するためのものである。選択部6は、例えば押しボタン或いは切換スイッチ等の上記選択を手動で行うための機器からなる。かかる場合、選択部6による選択は、本表示システムの使用者によって手動で行われる。選択部6による選択を自動で行っても良い。かかる場合、選択部6は、例えば製造装置によって被製造物が製造されている間は被製造物を選択する。選択部6は、製造装置によって被製造物が製造されていない間は製造装置を選択する。
【0020】
選択部6による選択を自動及び手動の双方で行っても良い。かかる場合、選択部6は、手動による選択が行われていなければ条件に応じた自動選択を行う。選択部6は、手動による選択が行われると自動選択された結果より手動選択された結果を優先する。
選択部6による選択は、これらの方法に限定されない。
【0021】
選択部6による選択は、表示器7に強調して表示するものを選ぶために行われる。表示制御部5は、選択部6によって製造装置が選択されると、被製造物より製造装置の方が視認性が高くなるように表示器7の表示を制御する。これにより、表示器7には製造装置の状態が詳細に表示され、被製造物に関する表示は簡略化される。表示制御部5は、選択部6によって被製造物が選択されると、製造装置より被製造物の方が視認性が高くなるように表示器7の表示を制御する。これにより、表示器7には被製造物の状態が詳細に表示され、製造装置に関する表示は簡略化される。
【0022】
次に、本表示システムを圧延ラインに適用した例について説明する。図2は、図1に示す表示システムを圧延ラインに適用した時の表示器7の表示例を示す。圧延ラインは、例えばシャー10、FSB11、エッジャ21、圧延スタンド12、ランアウトテーブル13及びダウンコイラ14といった複数の製造装置を備える。図2は、7台の圧延スタンド12を備える圧延ラインに本表示システムを適用した時の表示例を示している。圧延ラインの製造装置によって製造される被製造物は金属板(圧延材15)である。
【0023】
本表示システムの使用者は、図2に示す表示器7の表示を見て、拡大表示したい製造装置を入力部16を使用して入力する。入力部16の機能は、必要に応じて表示装置1に備えられる機能である。入力部16として、例えばキーボード或いはマウスを備えても良い。以下に、一例として、拡大表示したい製造装置として1つの圧延スタンド12が選択された時の本表示システムの動作について、図3を参照して説明する。図3は、図1に示す表示システムの動作例を示すフローチャートである。
【0024】
拡大表示したい製造装置として1つの圧延スタンド12が選択されると、演算部2及び3は、記憶部4と検出装置8及び9とから演算に必要な情報を取得する(S101)。S101で演算部2及び3が取得する情報には、例えば以下の情報が含まれる。
I)圧延材15が元来有する情報:第2情報
圧延材15の化学成分、原料(スラブ)の厚み・幅・長さ、製品目標値としての厚み・幅等
II)上流の圧延スタンド12から引き継いだ情報:第2情報
圧延ロールの入り側の圧延材15の厚み・幅・温度・幅方向の厚みプロファイル(板厚分布)・平坦度等
III)圧延機の情報:第1情報
圧延ロールの回転速度の実績値、ロールギャップの実績値、ロールの幅方向のプロファイル(熱膨張量及び摩耗量を考慮したロール直径の分布)、各構成要素の寸法(圧延機を詳細表示及びスケルトン表示するために必要な情報)等
なお、ロールの幅方向のプロファイルは、モデルを用いて計算できる。
【0025】
演算部2は、取得した各種情報に基づいて、当該圧延スタンドの状態を表示器7に表示するために必要な演算を行う(S102)。演算部3は、取得した各種情報に基づいて、当該圧延スタンドを通過する圧延材15の状態を表示器7に表示するために必要な演算を行う(S102)。演算部2及び3は、S102において、記憶部4に記憶されている圧延モデルを用いて、例えば以下の情報を演算する。
IV)圧延ロールバイト内の各種情報
変形抵抗、圧延荷重、先進率及び後進率、中立角、噛み込み角度等
V)圧延ロール出側の各種情報
圧延材15の厚み・幅・温度・幅方向の厚みプロファイル(板厚分布)・平坦度・位置等
【0026】
表示制御部5は、S101で取得された情報とS102で演算された情報とに基づいて、当該圧延スタンド12の状態と圧延材15の状態とを表示器7に同時に表示させる(S103)。この時、表示制御部5は、選択部6による選択結果に応じて、圧延スタンド12又は圧延材15の一方の状態を詳細に表示し、他方の状態を簡易に表示する。以下に、図4から図8も参照し、表示制御部5の機能について具体的に説明する。
【0027】
図4は、製造装置と製造装置によって製造される被製造物との外観を示す一般的な図である。製造装置は、被製造物に対して加工或いは塗装等の処理を行う。処理前の被製造物が製造装置に進入すると、製造装置によって被製造物に対して処理が施される。処理が施された被製造物は、製造装置から搬出される。一般に、製造装置は、外側がケースによって覆われている。このため、ケースの内側に存在する機器及び被製造物を外側から見ることはできない。また、製造装置がケースによって覆われていない場合でも、機器が干渉する部分を外側から見ることはできない。
【0028】
そこで、表示制御部5は、選択部6によって被製造物が選択された場合は、製造装置の表示より被製造物の表示を優先し、被製造物の状態を表示器7に詳細に表示する。上記例であれば、表示制御部5は、圧延スタンド12の状態より圧延スタンド12を通過する圧延材15の状態をより詳細に表示する。
【0029】
図5は、圧延材15の表示を優先した場合の表示器7の表示例を示す図である。表示制御部5は、例えば、圧延スタンド12の状態と圧延材15の状態とを3次元的に表示器7に表示させる。この時、表示制御部5は、図5に示すように、圧延材15のうち圧延スタンド12の陰になっている部分が視認できるように圧延材15の状態を表示器7に3次元的に表示させる。圧延スタンド12の表示に関しては、表示制御部5は、圧延スタンド12を構成する機器のうち圧延材15に接触している機器の一部又は全部の外形が視認できるように圧延スタンド12の状態を表示器7に表示させる。図5は、圧延材15を薄く延ばすための圧延ロール17を表示器7にスケルトン表示する例を示している。なお、圧延材15の表示を優先する表示方法はこれに限定されない。
【0030】
表示制御部5は、選択部6によって製造装置が選択された場合は、被製造物の表示より製造装置の表示を優先し、製造装置の状態を表示器7に詳細に表示する。上記例であれば、表示制御部5は、圧延スタンド12を通過する圧延材15の状態より圧延スタンド12の状態をより詳細に表示する。
【0031】
図6は、圧延スタンド12の表示を優先した場合の表示器7の表示例を示す図である。例えば、表示制御部5は、図6に示すように、圧延スタンド12のうち圧延材15の陰になっている部分が視認できるように圧延スタンド12の状態を表示器7に3次元的に表示させる。圧延材15の表示に関しては、表示制御部5は、圧延材15の一部又は全部の外形が視認できるように圧延材15の状態を表示器7に表示させる。図6は、圧延材15の厚みを無視し、圧延材15を2次元的に表示器7にスケルトン表示する例を示している。なお、圧延スタンド12の表示を優先する表示方法はこれに限定されない。
【0032】
このように、圧延スタンド12又は圧延材15の一方の情報を他方の情報より多く表示することにより、使用者の要求或いはその時の状況に応じた適切な表示が可能となる。また、一方を陰になっている部分まで詳細に表示し且つ他方の表示を簡略化することにより、メリハリをつけた表示が可能となり、視認性を向上させることができる。一方の視認性を更に高めるためには、上記例のように他方を透明性のある表示にすることが良い。上記例であれば、圧延材15が圧延ロール17によって圧延される状態を表示器7に詳しく表示することができる。また、一方を透明性のある表示にした場合は、圧延スタンド12の電動機18が回転している様子を表示器7に詳しく表示しても良い。
【0033】
また、表示制御部5は、出力項目が指定された場合(S104)は、指定された項目に関する情報を表示器7に表示させても良い(S105)。出力項目の指定は、例えば入力部16を用いて行われる。また、指定できる項目は、予め設定される。
【0034】
選択部6によって被製造物が選択されている場合は、被製造物に関する項目のみを指定できるようにしても良い。図5は、圧延ロール17の入り側の圧延材15の厚みと幅とが出力項目として指定された例を示している。表示制御部5は、圧延モデル等を使用してシミュレーション表示した圧延材15の入り側の部分の近傍に、指定された項目の数値データを追加表示させる。
【0035】
表示制御部5は、指定された項目に関する情報を表示器7に表示させる際に、圧延材15の一部又は全部を強調表示させても良い。図7は、圧延ロール17の出側の圧延材15を強調表示した例を示す図である。例えば、図5に示す内容が表示器7に表示されている時に圧延ロール17の出側の圧延材15をポインタでクリックすると、圧延材15の中央部の厚みが端部の厚みより大きいことを強調した表示に変わる。
【0036】
圧延材15には、板クラウンという品質指標がある。圧延材15を幅方向に渡って完全に平坦に形成することは難しい。圧延材15は、一般に幅方向の中央部が厚く、端部は薄い。圧延材15の幅方向の中央部の厚みと端部から数十mm内側の部分の厚みとの差を板クラウンと呼ぶ。板クラウンは、0.1mmのオーダであることが多い。このため、板クラウンが出力項目として指定された際に圧延材15を実際の尺度で表示器7に表示すると、圧延材15の厚みの違いを表示器7の表示から見分けることは困難になる。
【0037】
そこで、図7に示すように、圧延材15の厚みの違いを強調して表示器7に表示する。これにより、圧延材15の厚みの違いを表示器7の表示から容易に把握することができる。なお、選択部6によって圧延材15が選択されている場合は、圧延スタンド12の表示は簡略化されている。このため、圧延材15を強調表示しても圧延材15と圧延スタンド12との境界部分が見難くなることはない。板クラウンの他にも、圧延材15の板幅、厚み及び平坦度等のデータを追加表示する際に、対象部分の強調表示を行っても良い。
【0038】
指定項目に関する情報の表示方法は上記に限定されない。例えば、多次元表示による図、グラフ及び映像等を用いて指定項目に関する情報を分かり易く表示器7に追加表示させても良い。
【0039】
一方、選択部6によって製造装置が選択されている場合は、製造装置に関する項目のみを指定できるようにしても良い。図6は、電動機18の回転数・トルク・電流と圧下装置19の荷重と圧延ロール17の速度とが出力項目として指定された例を示している。表示制御部5は、電動機18、圧下装置19及び圧延ロール17の各近傍に、指定された項目の数値データを追加表示させる。
【0040】
表示制御部5は、指定された項目に関する情報を表示器7に表示させる際に、圧延スタンド12の一部又は全部を強調表示させても良い。図8は、圧延ロール17の断面を強調表示した例を示す図である。例えば、図6に示す内容が表示器7に表示されている時に圧延ロール17の断面を指定するように圧延ロール17をポインタでクリックすると、圧延ロール17の径の違いを強調した断面表示に変わる。
【0041】
圧延材15が高温である場合、圧延ロール17は、圧延材15から受ける熱及び圧延材15との摩擦による熱等によって熱膨張する。また、圧延ロール17は、圧延材15との接触及び摩擦により摩耗する。圧延ロール17を幅方向に切った時の断面は、熱膨張及び摩耗によって複雑な形状になる。しかし、圧延ロール17の径の変化量はその径と比較して小さな量である。このため、圧延ロール17の断面を実際の尺度で表示器7に表示すると、圧延ロール17の径の違いを表示器7の表示から見分けることは困難になる。
【0042】
そこで、図8に示すように、圧延ロール17の径の違いを強調して表示器7に表示する。これにより、圧延ロール17の径の違いを表示器7の表示から容易に把握することができる。圧延ロール17の断面形状を検出する検出装置8が圧延スタンド12の内部に設けられていれば、この検出装置8による検出結果を表示に利用しても良い。このような検出装置8が設けられていない場合は、例えば、圧延ロール17の形状モデルを用いたシミュレーションによる計算結果から圧延ロール17の断面形状を求めることができる。圧延ロール17の断面形状の他にも、種々の情報を表示する際に、対称部分の強調表示を行っても良い。
【0043】
指定項目に関する情報の表示方法は上記に限定されない。例えば、多次元表示による図、グラフ及び映像等を用いて指定項目に関する情報を分かり易く表示器7に追加表示させても良い。
【0044】
上記説明では、演算部2及び3が各種表示に必要な全ての演算を行った上で、表示制御部5が選択部6による選択結果に応じて必要な情報を選択し、表示器7に表示させた。これは一例である。演算部2及び3が選択部6による選択結果に応じてその時点で表示に必要な演算のみを行っても良い。
【0045】
次に、本表示システムが採用可能な他の例について説明する。以下において詳しく説明しない構成、機能及び動作については、上述した構成、機能及び動作と同じである。
【0046】
図1に示すように本表示システムがカメラ20を備える場合、表示制御部5は、カメラ20によって撮影された映像を表示器7に表示させても良い。例えば、製造装置によって製造される被製造物をカメラ20(第1カメラ)が撮影する場合、表示制御部5は、選択部6によって被製造物が選択されていれば、カメラ20によって撮影された映像を一部に用いて被製造物の状態を表示器7に表示させる。
【0047】
図9は、カメラ20によって撮影された映像を用いた場合の表示器7の表示例を示す図である。圧延材15のうち圧延スタンド12の内部に配置された部分はカメラ20によって撮影することができない。しかし、圧延材15のうち圧延スタンド12から出てきた部分はカメラ20によって撮影することができる。図9は、圧延材15のうちケースから出てきた部分をシミュレーションによる表示からカメラ20による実像に置き換える例を示している。
【0048】
一方、カメラ20(第2カメラ)が製造装置を撮影する場合、表示制御部5は、選択部6によって製造装置が選択されていれば、カメラ20によって撮影された映像を一部に用いて製造装置の状態を表示器7に表示させる。カメラ20がケースの内側に存在する機器を撮影する場合は特に有効な手段となる。
【0049】
図10はこの発明の実施の形態1における表示システムの他の構成を示す図である。図10に示す表示システムは、表示器7a及び7bを備える。表示制御部5aは、表示器7aの表示を制御する。選択部6aによる選択は、表示器7aに強調して表示する対象を選ぶために行われる。入力部16aは、表示器7aを見る人が情報を入力するためのものである。
【0050】
同様に、表示制御部5bは、表示器7bの表示を制御する。選択部6bによる選択は、表示器7bに強調して表示する対象を選ぶために行われる。入力部16bは、表示器7bを見る人が情報を入力するためのものである。
【0051】
上記構成であれば、表示器7aに製造装置を詳細に表示し、表示器7bに被製造物を詳細に表示することもできる。本表示システムに3台以上の表示器7を備えても良い。かかる場合は、表示器7の一部を遠隔に設置しても良い。このような構成を採用することにより、本表示システムを利用したい人が複数いる場合でも、各人の要求に応えることができる。
【0052】
本実施の形態において、符号2、3及び5(自動選択の場合は更に符号6)に示す各部は、表示装置1が有する機能を示す。表示装置1は、ハードウェア資源として、例えば入出力インターフェースとCPUとメモリとを含む回路を備える。表示装置1は、メモリに記憶されたプログラムをCPUによって実行することにより、各部2、3及び5(6)が有する各機能を実現する。各部2、3及び5(6)が有する機能の一部又は全部をハードウェアによって実現しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0053】
この発明に係る表示システムは、製造装置を備えた製造プラント等に対して適用できる。
【符号の説明】
【0054】
1 表示装置
2 演算部(第1演算部)
3 演算部(第2演算部)
4 記憶部
5 表示制御部
6 選択部
7 表示器
8 検出装置(第1検出装置)
9 検出装置(第2検出装置)
10 シャー
11 FSB
12 圧延スタンド
13 ランアウトテーブル
14 ダウンコイラ
15 圧延材
16 入力部
17 圧延ロール
18 電動機
19 圧下装置
20 カメラ
21 エッジャ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10