特許第6443478号(P6443478)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6443478煉瓦表面へのコーティング装置及びコーティング方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6443478
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】煉瓦表面へのコーティング装置及びコーティング方法
(51)【国際特許分類】
   B22D 41/02 20060101AFI20181217BHJP
   C04B 41/81 20060101ALI20181217BHJP
【FI】
   B22D41/02 Z
   C04B41/81 A
   B22D41/02 D
【請求項の数】9
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-58901(P2017-58901)
(22)【出願日】2017年3月24日
(65)【公開番号】特開2018-161656(P2018-161656A)
(43)【公開日】2018年10月18日
【審査請求日】2017年9月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001971
【氏名又は名称】品川リフラクトリーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083172
【弁理士】
【氏名又は名称】福井 豊明
(72)【発明者】
【氏名】伏見 省吾
(72)【発明者】
【氏名】藤谷 信吾
(72)【発明者】
【氏名】久本 祐作
(72)【発明者】
【氏名】磯本 康平
【審査官】 荒木 英則
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭64−001774(JP,U)
【文献】 特開2010−058408(JP,A)
【文献】 実開平07−015794(JP,U)
【文献】 実開平05−018671(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C 1/00−3/20
B22D 41/02
C04B 41/81
F27D 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
煉瓦表面へのコーティング層形成に使用されるコーティング装置であって、
水平面に対して傾斜した状態で複数の前記煉瓦を搭載する載置面を備えた浸漬籠と、
前記コーティング層を形成するためのコーティング液を収容する浸漬槽と、
前記浸漬籠が前記浸漬槽内のコーティング液に浸漬された状態において、前記浸漬籠に搭載された複数の煉瓦の下方側から、前記浸漬籠に搭載された複数の煉瓦の下方に存在するコーティング液へガスを供給する複数個のガス吹き込み口と、
を有する煉瓦表面へのコーティング装置。
【請求項2】
前記複数の煉瓦がパレットに積載されるとともに、前記浸漬籠が前記浸漬槽内のコーティング液に浸漬された状態において、前記パレットが水平面に対して5度以上かつ20度以下の角度で傾斜して配置される請求項記載の煉瓦表面へのコーティング装置。
【請求項3】
前記ガス吹き込み口の数が4個以上かつ10個以下である請求項1から請求項のいずれか1項に記載の煉瓦表面へのコーティング装置。
【請求項4】
前記ガス吹き込み口が前記浸漬籠を構成する梁に設けられるとともに、水平面に対して下方側に向けて15度以上かつ45度以下の角度でガスを噴射する請求項1から請求項のいずれか1項に記載の煉瓦表面へのコーティング装置。
【請求項5】
複数の煉瓦をコーティング液に浸漬することにより各煉瓦の表面にコーティング層を形成するコーティング方法であって、
面状に並べた煉瓦を上下方向に複数層重ねた状態で浸漬籠に搭載するステップと、
前記コーティング液が収容された浸漬槽内に前記浸漬籠を浸漬するステップと、
前記浸漬籠が前記浸漬槽内のコーティング液に浸漬された状態において、前記浸漬籠に搭載された複数の煉瓦の下方側から、前記浸漬籠に搭載された複数の煉瓦の下方に存在するコーティング液へ、ガスを10秒以上60秒以下の間供給した後、前記浸漬籠を前記浸漬槽内に静置するステップと、
前記浸漬籠を前記浸漬槽外に取り出すステップと、
を有する煉瓦表面へのコーティング方法。
【請求項6】
面状に並べた煉瓦を上下方向に複数層重ねた状態で浸漬籠に搭載するステップが、
パレット上に煉瓦を配置するステップと、
前記パレットを前記浸漬籠に搭載するステップと、
を含む請求項記載の煉瓦表面へのコーティング方法。
【請求項7】
前記配置面内において隣接する煉瓦の間隔が少なくとも5mm以上であり、上下方向において隣接する煉瓦の間隔が3mm以上である請求項又は請求項記載の煉瓦表面へのコーティング方法。
【請求項8】
前記静置時間が0.5分以上かつ10分以下である請求項から請求項のいずれか1項に記載の煉瓦表面へのコーティング方法。
【請求項9】
前記浸漬籠を前記浸漬槽外に取りだすステップの後に、
取り出し後、1分以上放置するステップと、
乾燥によりコーティング液に含まれる溶媒を除去するステップと、
を有する請求項から請求項のいずれか1項に記載の煉瓦表面へのコーティング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐火煉瓦等の煉瓦表面へのコーティング層形成に用いられる浸漬法に関し、一度に大量の煉瓦を処理できるとともに、特殊な技能を必要とせず簡易に均一なコーティング層を形成することができる浸漬法に関する。
【背景技術】
【0002】
高炉鍋は高炉底部から放出される溶銑を受け、不純物を除去するための予備処理を行いながら溶銑を次工程へと運搬する設備である。高炉鍋は、例えば、直径約4.5m、深さ約5mの円筒状の鍋のような形状を有する。高炉鍋では、耐火煉瓦が内張りと外張りの2層以上で配置され、高炉鍋の外周部は鉄皮で覆われている。
【0003】
高炉鍋の内張りに使用される煉瓦は、高炉鍋における配置部位(フリーボード部、スラグライン部、メタルライン部等)に応じて要求される特性が異なる。そのため、配置部位ごとに適した特性を有する耐火煉瓦が選定される。例えば、溶銑表面に層を成して浮いているスラグが常に接触するスラグライン部は、特に損傷が激しいため耐食性に優れたマグネシア−カーボン質煉瓦が用いられる。
【0004】
耐火煉瓦は数百チャージごとに補修されるが、配置部位により損傷速度が異なるため損傷速度に応じた補修がなされる。例えば、軽度の損傷に対しては吹き付け補修がなされ、局所的な損傷はその部分のみ煉瓦が交換される。また、最も損傷速度の遅いメタルライン部が規定残厚に達した場合は全煉瓦が交換される。
【0005】
煉瓦を交換する作業は高炉鍋底部の中心から煉瓦を円周状に並べていき、側壁部は補修部の高さに合わせ足場を組み、積み上げながら煉瓦の交換を行う。高炉鍋は常に溶銑の運搬と補修を繰り返しており、限られた期間内に確実に補修を行わなければならない。
【0006】
スラグライン部に用いられるマグネシア−カーボン質煉瓦やメタルライン部に用いられるアルミナ−カーボン質煉瓦は鱗状黒鉛を主成分に含んでいる。鱗状黒鉛は固体潤滑剤として使用されるほど非常に滑り易く、鱗状黒鉛を主成分に含んでいるカーボン質含有煉瓦も滑り易い。そのため、作業者は安全性に作業を行うために慎重に作業を行う必要があり、作業効率の低下、労働負荷の増加等の問題が生じている。
【0007】
このような問題はノンカーボン質煉瓦の使用により解消可能であるが、煉瓦の耐用面からノンカーボン質煉瓦への変更は難しい。また、煉瓦の形状を変更することで、煉瓦の保持性を向上させることも考えられるが、煉瓦の形状を容易に変更することはできず、形状因子による問題解決は望めない。そのため、限られた補修期間の中で効率的かつ安全な作業を可能にする確実な対策が求められてきた。
【0008】
このような対策の1つとして、鱗状黒鉛を含む煉瓦を滑りにくくして作業性・安全性を向上させるために煉瓦の表面に滑り止めをコーティングする手法が採用されている。このようなコーティングを実現する場合、刷毛やローラー等を用いて煉瓦表面にコーティング液を手塗りする方法、煉瓦をコーティング液中に浸漬する浸漬法、静電塗装により煉瓦表面にコーティング層を形成する方法等が使用されている(例えば、特許文献1から特許文献3)。
【0009】
特許文献1は、樹脂液を基本成分とし、有機顆粒物(又は有機繊維)と炭酸塩とを含有するコーティング材を煉瓦表面に被覆する処方として、刷毛、ローラー、へら等による塗布、吹き付け、浸漬を開示している。特許文献2は、各種樹脂類と粉末ピッチやコークス粉を含むコーティング材を静電塗装によりコーティングする構成を開示している。また、特許文献3は、合成樹脂と、金属炭酸塩及び金属水酸化物の少なくとも1種の粉末を混合したコーティング材を静電塗装によりコーティングする構成を開示している。この構成では、適度に予熱された煉瓦に粉体を塗装・熱溶着させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平5−330953号公報
【特許文献2】特開平5−246787号公報
【特許文献3】特開平8−060034号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、コーティング層を形成するための上述の手塗り法、静電塗装法、浸漬法のそれぞれには次のような問題がある。
【0012】
すなわち、手塗り法は、塗りムラが生じやすく均一なコーティング層を形成することが難しい。作業者の熟練により均一なコーティング層の形成も可能かもしれないが、高い技能を有しない作業者による実施は不可能である。さらには、煉瓦一つ一つにコーティングを手作業で施すため非効率的である。
【0013】
静電塗装法は、加熱した煉瓦の表面に静電気を用いてコーティング材を付着させて溶融し、コーティング層を形成するため、比較的容易に均一なコーティング層を形成することができる。また、煉瓦の予熱(乾燥を含む)から静電塗装までを連続的に行うことで作業の効率化を図ることができる。しかしながら、予め煉瓦を予熱する必要があるため、バッチ式の乾燥炉しかない場合や予熱設備がない場合は煉瓦の表面温度をコーティングに適した温度に管理するのが難しい。また、小ロットの生産には適していない。
【0014】
浸漬法は、煉瓦一つ一つをコーティング液中に浸漬させることコーティング層を形成するため、比較的容易に均一なコーティング層を形成することができる。しかしながら、煉瓦一つ一つを個別に処理するため非効率的である。多量の煉瓦を一度にコーティング液中に浸漬させることも考えられるが、このような手法を採用した場合、例えば、上下に重ねた煉瓦間に気泡を含み易く、当該気泡が不均一の原因となって各煉瓦に均一なコーティング層を形成することができなくなる(煉瓦間の煉瓦表面の比較的大きな領域でコーティング層が形成されない)という問題点がある。
【0015】
本発明は、上記従来の事情に鑑みて提案されたものであって、一度に大量の煉瓦を処理できるとともに、特殊な技能を必要とせず簡易に均一なコーティング層を安定して形成することができるコーティング装置及びコーティング方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するために、本発明は、以下の技術的手段を採用している。まず、本発明は、煉瓦表面へのコーティング層形成に使用されるコーティング装置を前提としている。そして、本発明に係るコーティング装置は、浸漬籠、浸漬槽、及び複数個のガス吹き込み口を備える。浸漬籠は複数の煉瓦を搭載する。浸漬槽はコーティング層を形成するためのコーティング液を収容する。ガス吹き込み口は、浸漬籠が浸漬槽内のコーティング液に浸漬された状態において、浸漬籠に搭載された複数の煉瓦の下方側から、浸漬籠に搭載された複数の煉瓦の下方に存在するコーティング液へガスを供給する。
【0017】
このコーティング装置において、浸漬籠が浸漬槽内のコーティング液に浸漬された状態において、浸漬籠における複数の煉瓦の載置面が水平面に対して傾斜して配置される構成を採用することができる。この場合、複数の煉瓦がパレットに積載されるとともに、浸漬籠が浸漬槽内のコーティング液に浸漬された状態において、パレットが水平面に対して5度以上かつ20度以下の角度で傾斜して配置される構成を採用することができる。
【0018】
以上のコーティング装置において、ガス吹き込み口の数は4個以上かつ10個以下とすることができる。また、ガス吹き込み口は、浸漬籠を構成する梁に設けられるとともに、水平面に対して下方側に向けて15度以上かつ45度以下の角度でガスを噴射する構成を採用することもできる。
【0019】
また、他の観点では、本発明は、複数の煉瓦をコーティング液に浸漬することにより各煉瓦の表面にコーティング層を形成するコーティング方法を提供することもできる。すなわち、本発明に係るコーティング方法では、まず、面状に並べた煉瓦を上下方向に複数層重ねた状態で浸漬籠に煉瓦が搭載される。次いで、コーティング液が収容された浸漬槽内に浸漬籠が浸漬される。続いて、浸漬籠が浸漬槽内のコーティング液に浸漬された状態において、浸漬籠に搭載された複数の煉瓦の下方側から、浸漬籠に搭載された複数の煉瓦の下方に存在するコーティング液へ、ガスが10秒以上60秒以下の間供給された後、浸漬籠が浸漬槽内に静置される。そして、浸漬籠が浸漬槽外に取り出される。
【0020】
このコーティング方法において、面状に並べた煉瓦を上下方向に複数層重ねた状態で浸漬籠に搭載する際に、パレット上に煉瓦が配置され、当該パレットが浸漬籠に搭載される構成を採用することができる。また、配置面内において隣接する煉瓦の間隔が少なくとも5mm以上であり、上下方向において隣接する煉瓦の間隔が3mm以上である構成を採用することもできる。さらに、静置時間が0.5分以上かつ10分以下である構成を採用することもできる。
【0021】
以上のコーティング方法において、浸漬籠を浸漬槽外に取り出した後に、取り出し後、1分以上放置され、その後、乾燥によりコーティング液に含まれる溶媒が除去される構成を採用することもできる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、一度に大量の煉瓦を処理できるとともに、特殊な技能を必要とせず簡易に均一なコーティング層を安定して形成することができる。その結果、煉瓦表面に低コストでコーティング層を形成することができる。本発明は、マグネシア-カーボン質煉瓦のような鱗状黒鉛含有煉瓦等の表面に滑り止めコーティング層を形成する場合に特に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施形態におけるコーティング装置の浸漬籠の一例を示す正面図
図2】本発明の一実施形態におけるコーティング装置の浸漬籠の一例を示す側面図
図3】本発明の一実施形態におけるコーティング装置の浸漬籠の一例を示す上面図
図4】本発明の一実施形態におけるコーティング装置のガス供給系の一例を模式的に示す正面図
図5】本発明の一実施形態におけるコーティング装置のガス供給系の一例を模式的に示す側面図
図6】本発明の一実施形態におけるコーティング装置のガス吹き込み口の一例を示す上面図
図7】本発明の一実施形態におけるコーティング装置のガス吹き込み口の一例を示す断面図
図8】本発明の一実施形態におけるコーティング装置の浸漬籠に搭載されるパレットに煉瓦を積載した状態の一例を示す正面図
図9】本発明の一実施形態におけるコーティング装置の浸漬籠に搭載されるパレットに煉瓦を積載した状態の一例を示す側面図
図10】本発明の一実施形態におけるコーティング装置の浸漬籠に煉瓦を積載した状態の一例を示す正面図
図11】本発明の一実施形態におけるコーティング装置の浸漬籠に煉瓦を積載した状態の一例を示す側面図
図12】本発明の一実施形態におけるコーティング装置の浸漬籠に煉瓦を積載したパレットを搭載する状態の一例を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながらより詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態の構成に限定されるものではない。
【0025】
本発明に係るコーティング装置は、浸漬籠、浸漬槽、及びガス吹き込み口を備える。浸漬籠はコーティング対象の複数の煉瓦を搭載する。浸漬籠は、コーティング層を形成するためのコーティング液を収容する。ガス吹き込み口は、浸漬籠が浸漬槽内のコーティング液に浸漬された状態において、浸漬籠に搭載された複数の煉瓦の下方側から、浸漬籠に搭載された複数の煉瓦の下方に存在するコーティング液へガスを供給する。
【0026】
まず、浸漬籠について説明する。本実施形態では、浸漬籠は、複数の煉瓦を積載したパレットを搭載し、煉瓦をパレットごとコーティング液に浸漬する構成を有している。図1図3は、本実施形態におけるコーティング装置100が備える浸漬籠1の一例を示す図である。ここで、図1は浸漬籠1の正面図であり、図2は浸漬籠1の側面図であり、図3は浸漬籠1の上面図である。
【0027】
図1図3に示すように浸漬籠1は、平面視において略正方形状に形成された上部梁11、平面視において略正方形状に形成された下部梁13、下部梁13の各角より下部梁13を含む面と垂直な方向に立設するとともに、上部梁11の各角に接続される4本の支柱12を備える。特に限定されないが、本実施形態では、上部梁11、支柱12、下部梁13は、それぞれステンレス等の金属からなる角パイプにより構成している。
【0028】
また、本実施形態では、煉瓦が搭載されるパレットは、パレットの煉瓦載置面(パレット上面)が下部梁13を含む面に対して所定角度だけ傾斜した状態で浸漬籠1に搭載される構成になっている。そのため、下部梁13が水平となる状態で浸漬籠1を浸漬槽に浸漬した場合、各煉瓦は、各煉瓦の底面が水平面に対して傾斜した状態でコーティング液に浸漬されることになる。
【0029】
特に限定されないが、本実施形態では、正面視において右側面及び左側面に位置する下部梁13の上方に、奥側の支柱12と手前側の支柱12とに固定支持されたパレット支持部固定用梁14が設けられている。ここでは、パレット支持部固定用梁14は、正面視において奥側から手前側に向かって徐々に高さが低くなる状態で設けられている。なお、パレット支持部固定用梁14は、金属製の角パイプにより構成することができる。
【0030】
パレット支持部固定用梁14の上面(上部梁11側の面)には、正面視において左右方向に延びる複数条のパレット支持部15が所定の間隔をおいて設けられている。特に限定されないが、本実施形態では、パレット支持部15は、図2に示すように、金属製の断面V字状の棒状体により構成されており、屈曲部を上方へ向けた状態で、両端部がパレット支持部固定用梁14にそれぞれ固定されている。
【0031】
続いて、ガス吹き込み口について説明する。上述のように、ガス吹き込み口は、浸漬籠1が浸漬槽内のコーティング液に浸漬された状態において、浸漬籠1に搭載された複数の煉瓦の下方側から、浸漬籠1に搭載された複数の煉瓦の下方に存在するコーティング液へガスを供給する。すなわち、ガス吹き込み口は、浸漬籠1の下方側から下部梁13により構成される矩形内にガスを供給する。このようなガス吹き込み口は、例えば、浸漬槽の底面等任意の位置に設けることができる。特に限定されないが、本実施形態では、下部梁13にガス吹き込み口を設けている。このようにガス吹き込み口を浸漬籠1に設けることで、ガス吹き込み口にガスを供給する配管にコーティング液が入り込んだ際に、コーティング液を比較的容易に排出することができる。
【0032】
図4図7は、本実施形態におけるコーティング装置100が備えるガス供給系の一例を示す図である。ここで、図4は本発明に係るコーティング装置のガス供給系の一例を模式的に示す正面図であり、図5は本発明に係るコーティング装置のガス供給系の一例を模式的示す側面図である。また、図6はガス吹き込み口の一例を示す上面図であり、図7はガス吹き込み口の一例を示す断面図である。なお、図4及び図5では、ガス供給系を破線で示している。
【0033】
図4及び図5に示すように、本実施形態では、正面視において右側面側の上部梁11の中央部にガス導入口30を備える。ガス導入口30には、正面視において手前側に位置する下部梁13に設けられた3つのガス吹き込み口31、32、33、及び正面視において奥側に位置する下部梁13に設けられた3つのガス吹き込み口34、35、36にガスを供給するガス供給管が接続されている(図3参照)。特に限定されないが、本実施形態では、ガス導入口30には、4つのガス供給管51、52、53、54が接続されている。ここでは、ガス供給管51〜54は円パイプにより構成している。なお、以下では、説明のため、図4の正面図を基準として、手前側、奥側、右、左の表現を適宜使用する。
【0034】
ガス供給管51は、ガス導入口30から上部梁11の内部を手前側に進行した後、手前側の上部梁11の内部を左方向に進行し、左手前側の支柱12の内部、及び手前側の下部梁13の内部を通過して、手前側の下部梁13において左側に配置されているガス吹き込み口31に至る。また、ガス供給管51は、ガス吹き込み口31と手前側の下部梁13において中央に配置されているガス吹き込み口32とを接続している。なお、図4では、ガス吹き込み口31〜33を後述のT字管として表示している。ガス供給管52は、ガス導入口30から上部梁11の内部を手前側に進行し、右手前側の支柱12の内部、及び下部梁13の内部を通過して、手前側の下部梁13において右側に配置されているガス吹き込み口33に至る。また、ガス供給管52は、ガス吹き込み口33とガス吹き込み口32とを接続している。
【0035】
ガス供給管53は、ガス導入口30から上部梁11の内部を奥側に進行した後、奥側の上部梁11の内部を左方向に進行し、左奥側の支柱12の内部、及び奥側の下部梁13の内部を通過して、奥側の下部梁13において左側に配置されているガス吹き込み口34に至る。また、ガス供給管53は、ガス吹き込み口34と奥側の下部梁13において中央に配置されているガス吹き込み口35とを接続している。ガス供給管54は、ガス導入口30から上部梁11の内部を奥側に進行し、右奥側の支柱12の内部、及び下部梁13の内部を通過して、奥側の下部梁13において右側に配置されているガス吹き込み口36に至る。また、ガス供給管54は、ガス吹き込み口36とガス吹き込み口35とを接続している。
【0036】
図6及び図7に示すように、各ガス吹き込み口31〜36はT字管60により構成されている。ここでは、ガス吹き込み口32を例示してその構造を説明する。T字管60の直進部61は各ガス供給管51〜54と接続され、下部梁13により構成される矩形内に向けて配置された分岐部62の先端がガス吹き込み口32を構成している。また、特に限定されないが、T字管60の分岐部62は、水平面に対して下方側に向けて所定の角度βで配置されている。
【0037】
なお、図示を省略しているが、各ガス吹き込み口31〜36は、下部梁13の外側に突出していることは勿論である(図3参照)。また、各ガス吹き込み口31〜36の先端が下部梁13の下面より下方に突出することがないように各ガス吹き込み口31〜36の配置が設計されている。
【0038】
次に、パレットへの煉瓦の積載について説明する。図8はパレットに煉瓦を積載した状態の一例を示す正面図である。また、図9はパレットに煉瓦を積載した状態の一例を示す側面図である。
【0039】
図8及び図9に示すように、本実施形態では、所定の間隔をおいて面状に配置された煉瓦42を上下方向に複数層重ねた状態でパレット41上に煉瓦42が積載される。ここでは、上下方向において隣接する煉瓦42も間隔をおいて配置される。この場合、メッシュ状の網状体43を煉瓦42の間に介在させることが好ましい。網状体43は、所定の厚みを有する網目状の板状体又は膜状体である。このような網状体43を使用することで、煉瓦42との接触面積を小さくすることができ、煉瓦42間の煉瓦表面のコーティングが可能になる。また、網状体43に載せられた煉瓦42が横滑りすることも抑制することができるため、上下方向に煉瓦42を複数段重ねて積載することや当該状態でのコーティング液への浸漬を安定して実施することができる。
【0040】
特に限定されないが、このような網状体43として、例えば、エキスパンドメタルやパンチングメタル、金属製網等を使用することができる。また、材質は金属に限られず、プラスチック製の網状体を使用してもよい。なお、後述のように、コーティング液への浸漬後に乾燥を実施するのであれば、網状体43は耐熱性を有する材質であることが必要である。なお、特に限定されないが、本実施形態では、網状体43は、面状に配置された煉瓦42の全体を覆うことができるサイズを有している。
【0041】
以上のようにして、煉瓦42が積載されたパレット41が浸漬籠1に搭載され、図10の正面図及び図11の側面図に示すように、浸漬槽2に収容されたコーティング液21中に浸漬籠1が浸漬される。なお、図1図3図10図11に示すように、浸漬籠1において上部梁11が構成する矩形の四隅には、吊り金具16が固定されている。この吊り金具16を使用してクレーン等で浸漬籠1を持ち上げて移動させ、浸漬槽2内に搬入することができる。
【0042】
浸漬槽2の構造や大きさは、煉瓦42を搭載した浸漬籠1を収容し、かつコーティング液21に浸漬可能であれば特に限定されない。しかしながら、浸漬槽2が浸漬籠1をギリギリ収容可能な大きさであると、浸漬籠1をコーティング液21に浸漬させる際、浸漬槽2と浸漬籠1とが干渉する等の問題が生じ得る。一方、浸漬槽2が浸漬籠1に比べて大きすぎると、コーティング液21を多量に使用する必要があるため経済的でない。そのため、浸漬槽2と浸漬籠1との間に50〜150mm程度の隙間を設けることが可能な大きさの浸漬槽2を使用することが好ましい。浸漬槽の材質も特に限定されないが、例えば、金属製の容器とすることができる。
【0043】
なお、特に限定されないが、正面視において浸漬籠1の左右に位置する下部梁13の前端及び後端には、前後方向に突出する衝突防止部17が設けられている。衝突防止部17は浸漬籠1に搭載した煉瓦42と浸漬槽2との接触を防止する機能を有している。例えば、浸漬籠1に搭載した長尺の煉瓦が浸漬籠1からはみ出した場合や、浸漬籠1に搭載した煉瓦がパレットの傾斜のために浸漬籠1からはみ出した場合でも、煉瓦と浸漬槽2との接触に起因する煉瓦の破損を防止することができる。
【0044】
また、コーティング液21も任意の組成のものを使用することができる。例えば、溶媒に滑り止めのための粒子を懸濁させたコーティング液21を使用することができる。溶媒は水でも良く、有機溶媒でも良い。また、浸漬槽2に入れるコーティング液21の量は、浸漬籠1に搭載した煉瓦42を十分に浸漬することができ、かつ、浸漬時に浸漬籠1の上方に50〜150mm程度の深さが確保できる液量とすることが好ましい。
【0045】
以上の構成を有するコーティング装置では、上述のように、浸漬籠1が浸漬槽2内のコーティング液21に浸漬された状態において、浸漬籠1に搭載された複数の煉瓦42の下方側から、浸漬籠1に搭載された複数の煉瓦42の下方に存在するコーティング液21へガス吹き込み口31〜36からガスが供給される。
【0046】
上述のように、本実施形態では、下部梁13が水平となる状態で浸漬籠1を浸漬槽2に浸漬した場合、各煉瓦42は、各煉瓦42の底面が水平面に対して傾斜した状態でコーティング液21に浸漬されることになる。このような構成を採用することで、コーティング液21への浸漬時及びコーティング液21からの引き上げ時に煉瓦間にコーティング液21の非対称な流れを生じさせることができ、煉瓦底面と網状体43との間の気泡残留を抑止することができる。また、煉瓦42が傾斜した状態で配置されているため、引き上げ後に煉瓦上面と下面のコーティング液切れを促進することもできる。なお、煉瓦42を積載したパレット41を浸漬籠1に搬入出する場合、フォークリフト等のリフト装置を使用することになる。そのため、浸漬籠1において、下部梁13を含む面とパレット支持部固定用梁14とのなす角(傾斜角α)は、5〜20度(5度以上かつ20度以下)であることが好ましい。傾斜角αが当該範囲内であれば、パレット41を浸漬籠1に搬入出する際、パレット41が備えるリフト装置のツメ部を挿入する挿入孔内で、リフト装置のツメ部とパレット41とが干渉することがなく、パレット41の搬入出作業における作業性・安全性を確保することができる。傾斜角αが5度未満であると、上述の気泡残留抑止効果や液切れ促進効果が低下することになり、傾斜角が20度を超えると、リフト装置のツメ部とパレット41とが干渉する可能性が高くなる。より好ましい傾斜角αの範囲は、10〜15度(10度以上かつ15度以下)である。
【0047】
また、ガス吹き込み口31〜36から供給されたガスは、泡となってコーティング液21中を上昇して上下方向の対流を発生させるとともに、水平方向への流れも発生させる。この水平方向への流れによって、従来の浸漬法で問題となっていた煉瓦を重ねた際の上下の煉瓦間へのコーティング液の導入が可能になるとともに、煉瓦間に残留しやすい気泡を外に押し出すことも可能となり、煉瓦表面に均一なコーティング層を形成することが可能になる。なお、パレット41は簀の子状の台であり、パレット41には、穴等のガス吹き込み口31〜36から供給されたガスが煉瓦搭載面の裏面側から煉瓦搭載面側に通過する通路が適宜設けられている。
【0048】
本実施形態では、6個のガス吹き込み口31〜36を3個ずつのガス吹き込み口が互いに対向する状態で配置した構成を採用しているが、ガス吹き込み口に起因して生じる泡により、上述の上下方向の対流を発生させるとともに、水平方向への流れを発生させることが可能であれば、ガス吹き込み口の数、及び配置位置は特に限定されない。本実施形態のように、ガス吹き込み口を対向して配置する場合は、ガス吹き込み口の数は、例えば、4〜10個とすることができる。ガス吹き込み口の数が4個未満(2個:1個ずつが対向配置)であると泡の発生が局所的になり、10個を超える(12個以上:6以上が対向配置)と水平方向の対流が起こりにくくなる。
【0049】
また、本実施形態では、ガス吹き込み口31〜36が水平面に対して下方側に向けて配置されているため、上述の対流の発生及びコーティング液21の攪拌をより効率的に行うことができる。なお、水平面に対して下方側に向けられる角度βは15〜45度(15度以上かつ45度以下)であることが好ましい。角度βが15度より小さいとコーティング液21を攪拌する能力が低下する。角度βが45度を超えると水平方向の対流が起こり難くなる。より好ましい角度βは、20〜40度(20度以上かつ40度以下)である。
【0050】
なお、本実施形態では、各ガス吹き込み口31〜36からより均一にガスを噴き出すために各ガス吹き込み口31〜36に対して2つのガス供給管を接続する構成を採用している。しかしながら、各ガス吹き込み口31〜36に接続されるガス供給管は1つであってもよい。また、本実施形態では、浸漬籠1の最下部にガス吹き込み口31〜36を配置する構成としたが、ガス吹き込み口は浸漬槽2に配置してもよい。しかしながら、浸漬籠1に配置する方がメンテナンスやガス吹き込み口の角度の細かい調整が容易である。さらに、ガス吹き込み口31〜36から供給されるガス種は特に限定されず、任意のガスを使用することができる。例えば、コストの観点では、圧縮空気を使用することが優位であるが、窒素等の不活性ガスを用いてもよい。
【0051】
以上で説明したコーティング装置を用いたコーティング方法について以下で説明する。なお、本発明では、熱処理を含む予備処理は不要である。
【0052】
まず、パレット41上に上述のようにして煉瓦42が積載され、当該パレット41が浸漬籠1に搭載される。この場合、上下方向において隣接する煉瓦42の間隔は3mm以上であることが好ましい。当該間隔は例えば、網状体43の厚さを変えることで調整可能である。上下方向において隣接する煉瓦42の間隔は3mm未満であると、コーティング液21が煉瓦42間に残留し、かつ上述の水平方向の対流が生じ難くなる。上下方向において隣接する煉瓦42の間隔は、より好ましくは、5mm以上である。上下方向において隣接する煉瓦42の間隔の上限は特に限定されないが、間隔が大きくなるにつれてパレット41に搭載可能な煉瓦42の数が少なくなるため経済的でなくなることになる。
【0053】
また、配置面内において隣接する煉瓦42の間隔は、僅かな隙間であっても煉瓦表面にコーティング層を形成可能であるため、煉瓦42の形状やパレット41の形状に応じて任意に選択可能である。しかしながら、当該間隔が1mm以下であると、コーティング液21が隣接する煉瓦42の間に残留し易くなり、また、当該間隔が2〜4mmであると、上述のガス供給による水平方向の対流が生じ難くなる。そのため、配置面内において隣接する煉瓦42の間隔は、5mm以上が好ましく、より好ましくは10mm以上である。
【0054】
上下方向に積層する煉瓦42の段数は任意である。しかしながら、積層数が、例えば、2段以下のように少ない場合、一度にコーティングできる煉瓦42の数が少なくなり経済的でない。また、積層数が、例えば、5段以上のように多い場合、最下段の煉瓦42が上段の煉瓦42の重量により加圧され、煉瓦42の欠けや変形による品質欠陥が生じる可能性がある。この観点では、煉瓦42の積層数は例えば、3〜4段であることがより好ましい。
【0055】
なお、上述のように、本実施形態の構成によれば、パレット41が備えるリフト装置81のツメ部82を挿入する挿入孔45内で、リフト装置のツメ部82とパレット41とが干渉することがない(図12参照)。そのため、パレット41の搬入出作業における作業性・安全性を確保することができる。
【0056】
煉瓦42が搭載された浸漬籠1は、コーティング液21が収容された浸漬槽2内に浸漬される。図10図12に示すように煉瓦42を積載したパレット41がリフト装置を用いて浸漬籠1に搭載された後、吊り金具16にワイヤーを引っ掛けた状態で、浸漬籠1はホイストクレーン等により吊り上げられて、浸漬槽2の上方に移動される。当該位置において、浸漬籠1を降下させることで浸漬籠1をコーティング液21に浸漬させる。なお、ここではホイストクレーンとワイヤーによる浸漬籠1の吊り上げを例示しているが、煉瓦42と浸漬籠1とを吊り上げるのに十分な強度と安全性を確保できるのであれば、任意の手法により浸漬籠1の吊り上げ、及び浸漬籠1のコーティング液21への浸漬を行ってもよい。例えば、油圧あるいは電動のシリンダーを用いたリフト方式を採用して浸漬籠1を浸漬槽2に浸漬させる方法を採用してもよい。
【0057】
上述のように、浸漬籠1が浸漬槽2内のコーティング液21に浸漬された状態において、浸漬籠1に搭載された複数の煉瓦42の下方側から、浸漬籠1に搭載された複数の煉瓦42の下方に存在するコーティング液21へ、ガスが供給される。当該ガス供給(バブリング)は、浸漬籠1が浸漬槽2内のコーティング液21に浸漬された状態において、少なくとも10〜60秒実施されることが好ましい。これにより、コーティング液21の攪拌並びに水平方向の対流による煉瓦全面への均一なコーティング層の形成が可能になる。バブリングの時間が10秒未満であると、コーティング液21の攪拌、対流の発生が不十分になる。また、バブリングの時間が60秒を超えると、煉瓦表面にコーティング層が十分に形成されているため、それ以上バブリングを継続することは経済的でない。
【0058】
なお、コーティング液21の液量は、浸漬籠1の浸漬時に煉瓦最上面がコーティング液21に完全に浸かることがより好ましい。しかしながら、煉瓦最上面が、液面より3〜4cm出ている場合でも、バブリングに起因してコーティング液21の表面が波打つためコーティング層の形成は可能である。
【0059】
バブリングが完了すると、浸漬籠1は、浸漬槽2内に静置される。静置時間は、0.5〜10分(0.5分以上かつ10分以下)である。静置時間が0.5分未満であるとコーティング層が十分に形成されない。また、静置時間は10分を超えてもコーティング層の形成に影響はないため経済的でない。このように浸漬槽2内で浸漬籠1の静置を行うことですることで、コーティング液21が煉瓦表層部に僅かに浸透しコーティング層が形成される。このとき、網状体43と接触している部分の煉瓦表面にも、周囲からコーティング液21が浸透するためコーティング層が形成される。なお、網状体43と接触していない煉瓦表面(煉瓦表面の大部分)に均一なコーティング層が形成されるのであれば、仮に、網状体43と接触している部分の煉瓦表面にコーティング層が形成されない場合であっても特に問題は生じない。
【0060】
また、コーティング層の厚さはコーティング液21の濃度・粘度、浸漬回数、及びコーティング液21の残留(液切れ不十分)により決定される。コーティング液21の濃度・粘度は上述のバブリングにより均一になり、これにより厚みへの影響は無視できるほど小さくなるため、煉瓦表面のコーティング液の液切れを十分に行うことで煉瓦表面に形成されるコーティング層の厚さを一定に保つことができる。
【0061】
静置後に浸漬籠1を浸漬槽2から引き上げて浸漬槽2の外部に取り出す。煉瓦表面のコーティング液が十分に流れ落ちるまで少なくとも1分以上、より好ましくは2分以上放置する。
【0062】
その後、必要に応じてコーティング液の溶媒を除去(留去)するために乾燥を行う。乾燥温度と乾燥時間は特に限定されないが、例えば100〜300℃の雰囲気温度、1〜24時間の処理時間とすることができる。また、マグネシア−カーボン質煉瓦を含む不焼成煉瓦は成形後に、例えば、180〜230℃雰囲気温度、6〜10時間の処理時間で乾燥・硬化させて製造するため、コーティング液の乾燥を当該工程において同時に行うことも可能である。
【0063】
以上説明したように、コーティング装置によれば、一度に大量の煉瓦を処理できるとともに、特殊な技能を必要とせず簡易に均一なコーティング層を安定して形成することができる。その結果、マグネシア−カーボン質煉瓦のような鱗状黒鉛含有煉瓦等の表面に滑り止めコーティング層を形成する場合に、煉瓦表面に低コストでコーティング層を形成することができる。
【0064】
なお、上述した実施形態は本発明の技術的範囲を制限するものではなく、既に記載したもの以外でも、本発明の範囲内で種々の変形や応用が可能である。例えば、上記実施形態では、特に好ましい形態として、煉瓦を積載したパレットを浸漬籠に搭載する構成について説明したが、浸漬籠に煉瓦を直接搭載する構成であってもよい。また、特に好ましい形態として、煉瓦の載置面が水平面に対して傾斜した構成について説明したが、煉瓦の載置面が水平であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明によれば、一度に大量の煉瓦を処理できるとともに、特殊な技能を必要とせず簡易に均一なコーティング層を安定して形成することができ、煉瓦表面へのコーティング装置及び煉瓦表面へのコーティング方法として有用である。
【符号の説明】
【0066】
1 浸漬籠
11 上部梁
12 支柱
13 下部梁
14 パレット支持部固定用梁
15 パレット支持部
16 吊り金具
17 衝突防止部
2 浸漬槽
21 コーティング液
31〜36 ガス吹き込み口
41 パレット
42 煉瓦
43 網状体
100 コーティング装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12