(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6443490
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】梁化粧構造及び折上天井構造
(51)【国際特許分類】
E04C 3/292 20060101AFI20181217BHJP
E04F 13/08 20060101ALI20181217BHJP
E04F 13/073 20060101ALI20181217BHJP
E04B 9/00 20060101ALI20181217BHJP
【FI】
E04C3/292
E04F13/08 101R
E04F13/073
E04B9/00 G
E04B9/00 L
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-91394(P2017-91394)
(22)【出願日】2017年5月1日
(65)【公開番号】特開2018-188852(P2018-188852A)
(43)【公開日】2018年11月29日
【審査請求日】2017年5月12日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 [掲載者] 積水ハウス株式会社 [掲載日] 平成29年3月31日 [掲載アドレス] http://www.sekisuihouse.co.jp/company/topics/datail/_icsFiles/afieldfile/2017/03/31/20170331_1.pdf [刊行物等] [展示者] 積水ハウス株式会社 [展示日] 平成29年4月1日 [展示場所] 積水ハウス株式会社 山口工場 [刊行物等] [発行者] 積水ハウス株式会社 [刊行物名] こだわり技術通信 [公開日] 平成29年4月1日 [刊行物等] [発行者] 積水ハウス株式会社 [刊行物] 折込みチラシ [公開日] 平成29年4月1日 [刊行物等] [発行者] 積水ハウス株式会社 [刊行物名] IS IDEA [公開日] 平成29年4月1日 [刊行物等] [発行者] 積水ハウス株式会社 [刊行物名] IS ROY+E [公開日] 平成29年4月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080182
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 三彦
(72)【発明者】
【氏名】安田 理恵
(72)【発明者】
【氏名】古村 嘉浩
(72)【発明者】
【氏名】木村 充伸
(72)【発明者】
【氏名】川岸 和紀
(72)【発明者】
【氏名】野田 康一
【審査官】
萩田 裕介
(56)【参考文献】
【文献】
特公平05−083695(JP,B2)
【文献】
特開2002−173998(JP,A)
【文献】
実公昭55−030171(JP,Y2)
【文献】
特開2005−030072(JP,A)
【文献】
実用新案登録第2571773(JP,Y2)
【文献】
特公昭58−000545(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04C 3/00 − 3/46
E04B 9/00
E04F 13/073
E04F 13/08
E04F 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物内に設置され室内に露出する鉄骨梁を梁化粧材で被覆する梁化粧構造であって、
型鋼で形成される長尺な前記鉄骨梁と、
前記鉄骨梁に設置され、前記梁化粧材を固定する固定下地材と、
室内に露出する前記鉄骨梁の両側面及び下面を前記鉄骨梁の長手方向に沿って被覆する木製板状の前記梁化粧材と、を備え、
前記梁化粧材は、前記鉄骨梁の一方の側面側から前記固定下地材に固定される第1梁化粧材と、前記鉄骨梁の他方の側面側から前記固定下地材に固定される第2梁化粧材と、を有し、
前記第1梁化粧材は、前記鉄骨梁の室内に露出する一方の側面を被覆する第1側面部と、該第1側面部の下端から前記鉄骨梁の下面の方向へ突出して前記鉄骨梁の下面を覆う第1下面部と、を形成し、
前記第2梁化粧材は、前記鉄骨梁の室内に露出する他方の側面を被覆する第2側面部と、該第2側面部の下端から前記鉄骨梁の下面の方向へ突出して前記鉄骨梁の下面を覆う第2下面部と、を形成し、
平面視において、前記第1下面部と前記第2下面部は、互いに離間して前記鉄骨梁の長手方向へ延びる隙間を形成し、
前記第1側面部及び前記第2側面部は、それぞれ板厚方向へ貫通するスリットを形成し、
前記第1側面部及び前記第2側面部の前記固定下地材に面する側面である内側面は、前記固定下地材の前記第1側面部及び前記第2側面部に面する側面である外側面と離間して該外側面との間に第2空間を形成し、
前記第2空間に照明器具を設置することを特徴とする梁化粧構造。
【請求項2】
建物内に設置され室内に露出する鉄骨梁を梁化粧材で被覆する梁化粧構造であって、
型鋼で形成される長尺な前記鉄骨梁と、
前記鉄骨梁の下面よりも上方で前記鉄骨梁に設置され、前記梁化粧材を固定する固定下地材と、
室内に露出する前記鉄骨梁の両側面及び下面を前記鉄骨梁の長手方向に沿って被覆する木製板状の前記梁化粧材と、を備え、
前記梁化粧材は、該梁化粧材の前記鉄骨梁の下面を被覆する部分に前記梁化粧材の板厚方向へ貫通する隙間を形成し、
前記隙間部分において、前記鉄骨梁の下面から前記梁化粧材の下面までの間は、空隙であることを特徴とする梁化粧構造。
【請求項3】
前記梁化粧材は、前記鉄骨梁の一方の側面側から前記固定下地材に固定される第1梁化粧材と、前記鉄骨梁の他方の側面側から前記固定下地材に固定される第2梁化粧材と、を有し、
前記第1梁化粧材は、前記鉄骨梁の室内に露出する一方の側面を被覆する第1側面部と、該第1側面部の下端から前記鉄骨梁の下面の方向へ突出して前記鉄骨梁の下面を覆う第1下面部と、を形成し、
前記第2梁化粧材は、前記鉄骨梁の室内に露出する他方の側面を被覆する第2側面部と、該第2側面部の下端から前記鉄骨梁の下面の方向へ突出して前記鉄骨梁の下面を覆う第2下面部と、を形成し、
平面視において、前記第1下面部と前記第2下面部は、互いに離間して前記鉄骨梁の長手方向へ延びる前記隙間を形成することを特徴とする請求項2に記載の梁化粧構造。
【請求項4】
前記第1下面部及び前記第2下面部の上面は、それぞれ前記鉄骨梁の下面と離間して該鉄骨梁の下面との間に第1空間を形成することを特徴とする請求項3に記載の梁化粧構造。
【請求項5】
前記第1空間に照明器具を設置することを特徴とする請求項4に記載の梁化粧構造。
【請求項6】
前記梁化粧材は、前記第1側面部及び前記第2側面部を前記固定下地材に接着固定することを特徴とする請求項3から請求項5のいずれかに記載の梁化粧構造。
【請求項7】
建物内に設けられた天井面を凹溝形状に折上げた折上天井構造であって、
前記凹溝形状の底面を形成する折上天井面から室内方向へ突出し、且つ、請求項1から請求項6のいずれかに記載の前記梁化粧構造を備えた複数の化粧梁と、
前記化粧梁に直交する前記凹溝形状の側面を形成する見切縁と、を有していることを特徴とする折上天井構造。
【請求項8】
前記折上天井面から室内方向へ突出し、且つ、前記折上天井面から露出する梁材の両側面及び下面を木製の被覆材で被覆された被覆梁をさらに有し、
前記化粧梁は、互いに離間して平行に形成され、
前記被覆梁は、互いに離間する前記化粧梁の間に前記化粧梁に直交して設置され、且つ、前記化粧梁の高さよりも低い高さで形成されることを特徴とする請求項7に記載の折上天井構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物に設置される鉄骨梁を梁化粧材で被覆する梁化粧構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、階高が低い建物の梁や梁せいが高い梁は、天井内に納めることができず室内に露出することがあった。これらの梁はそのまま露出させることもあるが、鉄骨梁の周囲を温かみのある木質の化粧材で被覆して室内空間の意匠性を向上させることがある。
【0003】
特許文献1に記載の発明は、鉄骨梁の化粧構造について開示しており、I形鋼で形成された鉄骨梁のウェブとフランジに複数のスペーサを設置して、木質の化粧材である被覆材を各スペーサに接着固定している。また、梁材の下面を被覆する下被覆材の底板に照明用の配線を収納するための配線用溝材を設けている。
【0004】
特許文献2に記載の発明では、室内に露出する鉄骨梁の周囲を木材で形成された耐火被覆材で被覆する点が記載されている。この発明では、内部デザインが木質系の建物に好適である旨が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−199783
【特許文献2】特開2013−11063
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に記載の発明では、露出する鉄骨梁の周囲を全て木質の化粧材で被覆してしまうため、意匠上の変化が乏しく画一的な外観とならざるを得ない。また、鉄骨梁が木質梁にしか見えず、鉄骨材の意匠上の良さを隠蔽してしまうという問題が挙げられる。
【0007】
そこで、本発明は、上述した課題を鑑みてなされたものであって、建物内に露出する鉄骨梁を梁化粧材で被覆するとともに、意匠性に富んだ鉄骨梁の化粧構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の梁化粧構造は、建物内に設置され室内に露出する鉄骨梁を梁化粧材で被覆する梁化粧構造であって、型鋼で形成される長尺な前記鉄骨梁と、前記鉄骨梁に設置され、前記梁化粧材を固定する固定下地材と、室内に露出する前記鉄骨梁の両側面及び下面を前記鉄骨梁の長手方向に沿って被覆する木製板状の
前記梁化粧材と、を備え、
前記梁化粧材は、前記鉄骨梁の一方の側面側から前記固定下地材に固定される第1梁化粧材と、前記鉄骨梁の他方の側面側から前記固定下地材に固定される第2梁化粧材と、を有し、前記第1梁化粧材は、前記鉄骨梁の室内に露出する一方の側面を被覆する第1側面部と、該第1側面部の下端から前記鉄骨梁の下面の方向へ突出して前記鉄骨梁の下面を覆う第1下面部と、を形成し、前記第2梁化粧材は、前記鉄骨梁の室内に露出する他方の側面を被覆する第2側面部と、該第2側面部の下端から前記鉄骨梁の下面の方向へ突出して前記鉄骨梁の下面を覆う第2下面部と、を形成し、平面視において、前記第1下面部と前記第2下面部は、互いに離間して前記鉄骨梁の長手方向へ延びる隙間を形成し、前記第1側面部及び前記第2側面部は、それぞれ板厚方向へ貫通するスリットを形成し、前記第1側面部及び前記第2側面部の前記固定下地材に面する側面である内側面は、前記固定下地材の前記第1側面部及び前記第2側面部に面する側面である外側面と離間して該外側面との間に第2空間を形成し、前記第2空間に照明器具を設置することを特徴としている。
【0009】
本発明の第2の梁化粧構造は、
建物内に設置され室内に露出する鉄骨梁を梁化粧材で被覆する梁化粧構造であって、型鋼で形成される長尺な前記鉄骨梁と、前記鉄骨梁の下面よりも上方で前記鉄骨梁に設置され、前記梁化粧材を固定する固定下地材と、室内に露出する前記鉄骨梁の両側面及び下面を前記鉄骨梁の長手方向に沿って被覆する木製板状の前記梁化粧材と、を備え、前記梁化粧材は、該梁化粧材の前記鉄骨梁の下面を被覆する部分に前記梁化粧材の板厚方向へ貫通する隙間を形成し、前記隙間部分において、前記鉄骨梁の下面から前記梁化粧材の下面までの間は、空隙であることを特徴としている。
【0010】
本発明の第3の梁化粧構造は、
前記梁化粧材は、前記鉄骨梁の一方の側面側から前記固定下地材に固定される第1梁化粧材と、前記鉄骨梁の他方の側面側から前記固定下地材に固定される第2梁化粧材と、を有し、前記第1梁化粧材は、前記鉄骨梁の室内に露出する一方の側面を被覆する第1側面部と、該第1側面部の下端から前記鉄骨梁の下面の方向へ突出して前記鉄骨梁の下面を覆う第1下面部と、を形成し、前記第2梁化粧材は、前記鉄骨梁の室内に露出する他方の側面を被覆する第2側面部と、該第2側面部の下端から前記鉄骨梁の下面の方向へ突出して前記鉄骨梁の下面を覆う第2下面部と、を形成し、平面視において、前記第1下面部と前記第2下面部は、互いに離間して前記鉄骨梁の長手方向へ延びる前記隙間を形成することを特徴としている。
【0011】
本発明の第4の梁化粧構造は、
前記第1下面部及び前記第2下面部の上面は、それぞれ前記鉄骨梁の下面と離間して該鉄骨梁の下面との間に第1空間を形成することを特徴としている。
【0012】
本発明の第5の梁化粧構造は、
前記第1空間に照明器具を設置することを特徴としている。
【0013】
本発明の第6の梁化粧構造は、前記第一側面部及び前記第二側面部を前記固定下地材に接着固定されることを特徴としている。
【0014】
本発明の折上天井構造は、建物内に設けられた天井面を凹溝形状に折上げた折上天井構造であって、前記凹溝形状の底面を形成する折上天井面から室内方向へ突出し、且つ、
第1から
第6のいずれかに記載の前記梁化粧構造を備えた複数の化粧梁と、前記化粧梁に直交する前記凹溝形状の側面を形成する見切縁と、を有している
ことを特徴としている。
【0015】
本発明の折上天井構造は、前記折上天井面から室内方向へ突出し、且つ、前記折上天井面から露出する梁材の両側面及び下面を木製の被覆材で被覆された被覆梁をさらに有し、前記化粧梁は、互いに離間して平行に形成され、前記被覆梁は、互いに離間する前記化粧梁の間に前記化粧梁に直交して設置され、且つ、前記化粧梁の高さよりも低い高さで形成されることを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
本発明の
梁化粧構造によると、梁化粧材は、梁化粧材の鉄骨梁の下面を被覆する部分に、梁化粧材の板厚方向へ貫通する隙間を形成しているので、室内から見上げた際に隙間から鉄骨梁の下面を視認することができる。したがって、木製の梁化粧材の柔らかな印象と鉄骨梁の硬質な印象を組み合わせて変化に富んだ意匠の室内空間を構築することができる。
また、第1側面部及び第2側面部は、それぞれ板厚方向へ貫通するスリットを形成し、第1側面部及び第2側面部の内側面は、外側面とそれぞれ離間して外側面との間に第2空間を形成し、第2空間に照明器具を設置するので、スリットから照明光が照射されて、室内を照らすことができる。また、スリットが鉄骨梁の長手方向に延びる場合は、スリットから照射される照明光が鉄骨材の長手方向を強調することができ、変化に富んだ意匠の室内空間を構築することができる。
【0017】
本発明の
梁化粧構造によると、梁化粧材は、鉄骨梁の第1化粧材と第2化粧材を有しており、平面視において、第1化粧材の第1下面部と第2化粧材の第2下面部は、互いに離間して鉄骨梁の長手方向へ延びる隙間を形成しているので、室内から見上げた際に、隙間が鉄骨梁の長手方向を強調することができる。したがって、鉄骨梁が天井内に隠蔽できない大スパンの梁である場合は、迫力のある室内空間を構築することができる。また、梁化粧材は第1化粧材と第2化粧材とに分割されているため、鉄骨梁を挟んで天井高さが相違する場合は、天井高さに合わせて第1化粧材及び第2化粧材の形状を変更することができ、様々な天井高さに柔軟に対応することができる。
【0018】
本発明の
梁化粧構造によると、第1下面部及び第2下面部の上面は、鉄骨梁の下面と離間して鉄骨梁の下面との間に第1空間を形成するので、室内から見上げた際に、隙間の陰影をより高めることができ、変化に富んだ意匠の室内空間を構築することができる。
【0019】
本発明の
梁化粧構造によると、第1空間に照明器具を設置するので、隙間から照明光が照射されて、室内を照らすことができる。また、隙間が鉄骨梁の長手方向に延びる場合は、隙間から照射される照明光が鉄骨材の長手方向を強調することができ、変化に富んだ意匠の室内空間を構築することができる。
【0021】
本発明の
梁化粧構造によると、第1側面部及び第2側面部を固定下地材に接着固定するので、室内から見上げた時に、ビスや釘などの雑多な固定具が目視されず意匠性に優れた梁化粧構造を構築することができる。
【0022】
本発明の折上天井構造によると、凹溝形状の底面を形成する折上天井面から室内側へ突出し、且つ、第1から第6のいずれかに記載の梁化粧構造を備えた複数の化粧梁を有しているので、折上天井を変化に富んだ意匠とすることができる。また、化粧梁に直交する凹溝形状の側面を形成する見切縁を有しているので、凹部形状の折上げをより強調することができ、迫力のある室内空間を構築することができる。
【0023】
本発明の折上天井構造によると、折上天井面から室内方向へ突出し、且つ、折上天井面から露出する梁材の両側面及び下面を木製の被覆材で被覆された被覆梁が、互いに離間する化粧梁の間に化粧梁に直交して設置され、且つ、化粧梁の高さよりも低い高さで形成されるので、より化粧梁の長手方向を強調することができ、変化に富んだ意匠とすることができるとともに迫力のある室内空間を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図4】固定下地材の鉄骨梁への設置状況を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、梁化粧構造1の最良の実施形態について各図を参照しつつ説明する。なお、本願の梁化粧構造は、主に鉄骨造の建築物に使用される。
【0026】
梁化粧構造1は、
図1及び
図2に示すように、建物内に設置され室内に露出する鉄骨梁2を梁化粧材3で被覆する構造であって、型鋼で形成される長尺な鉄骨梁2と、鉄骨梁2に設置され、梁化粧材3を固定する固定下地材4と、室内に露出する鉄骨梁2の両側面及び下面を鉄骨梁2の長手方向に沿って被覆する木製板状の梁化粧材3と、を備え、梁化粧材3は、梁化粧材3の鉄骨梁2の下面を被覆する部分に梁化粧材3の板厚方向へ貫通する隙間30を形成している。
【0027】
鉄骨梁2は、
図1に示すように、上階の床版5を支持するとともに天井材6の室内側の天井面61から室内方向へ突出する梁である。鉄骨梁2の形状は型鋼であれば特に限定されないが、ここでは、
図3に表れているように、H形鋼に逆T形鋼を溶接固定して形成される梁せいの高い鉄骨梁2について説明を行う。鉄骨梁2は、H型鋼のウェブである上ウェブ2aと、上ウェブ2aの幅方向の一端から上ウェブ2aに直交する方向へ突出して上階の床版5を支持する上フランジ2bと、上ウェブ2aの幅方向の他端から上ウェブ2aに直交する方向へ突出する中フランジ2cと、中フランジ2cに溶接される逆T形鋼のウェブである下ウェブ2dと、下ウェブ2dを挟んで中フランジ2cと対向するとともに下ウェブ2dの幅方向の一端から下ウェブ2dに直交する方向へ突出する下フランジ2eと、を備えている。また、
図1に示すように、鉄骨梁2は、天井材6を所定の位置に設置した際に、上ウェブ2aの幅方向略中央から下フランジ2eの下面21までが天井面61から室内方向へ突出する。
【0028】
図3に示すように、中フランジ2cには、固定下地材4を中フランジ2cに固定するためのボルト7を挿通する挿通孔22が、上ウェブ2aを挟んで両側に設けられており、この挿入孔22は、
図4に示すように、中フランジ2cの長手方向に所定間隔を空けて設けられている。また、下フランジ2eに照明用の配線を通すための配線用孔23を下フランジ2eの長手方向に所定間隔を空けて設けておいてもよい。この配線用孔23は、後述する照明器具12を設置する際に使用することができる。
【0029】
梁化粧材3は、
図3に示すように、鉄骨梁2の一方の側面側から固定下地材4に固定される第1梁化粧材3aと、鉄骨梁2の他方の側面側から固定下地材4に固定される第2梁化粧材3bと、を有している。
図1及び
図3に示すように、第1梁化粧材3aは、鉄骨梁2の天井面61から室内方向へ突出する一方の側面を被覆する第1側面部31と、第1側面部31の下端から下フランジ2eの方向へ突出して下フランジ2eの下面21を覆う第1下面部32を形成し、第2梁化粧材3bは、鉄骨梁2の天井面61から室内方向へ突出する他方の側面を被覆する第2側面部33と、第2側面部33の下端から下フランジ2eの方向へ突出して下面21を覆う第2下面部34を形成している。
【0030】
また、第1側面部31と第2側面部33は、
図2及び
図3に示すように、それぞれ固定下地材4に面する内側面35に梁化粧材3の長手方向へ延びる複数の溝部36を設けている。この複数の溝部36は、梁化粧材3を後述する固定下地材4に固定する際の係合部となる。
【0031】
さらに、
図3に示すように、第1下面部32の上面37の幅L1と、第2下面部34の上面37の幅L1との和は、下面21の幅L2未満となるように形成されており、また、
図1に示すように、第1側面部31と第2側面部33のそれぞれの側面35の幅L3は、天井面61から下面21までの距離L4よりも長くなるように形成されている。
【0032】
梁化粧材3は木製で形成されており、その木材の種類や表面の仕上げは限定されることはない。したがって無垢材は勿論、無垢材にウレタン系塗料やオイル系塗料を塗布したり、合板や中密度繊維板に木材を薄く削いだ突板を仕上げ材として貼着してもよい。また、梁化粧材3の表面に壁クロスを貼着することもできる。さらに、上述したように、梁化粧材3は、第1化粧材3aと第2化粧材3bとに分割されているため、各化粧材ごとに仕上げや樹種を変えて意匠に変化をつけてもよい。
【0033】
固定下地材4は、
図4に示すように、鉄骨梁2に設置される細長の部材で、木材で形成される。固定下地材4は、中フランジ2cの上部に設置される直方体の上部固定材4aと、中フランジ2cの下部に設置される直方体の下部固定材4bを有する。
図3に示すように、上部固定材4aには、上フランジ2b側の第1上面41から上部固定材4aの厚さ方向の略中央まで掘られた凹部42と、凹部42の底面から中フランジ2cと当接する面である第1下面43までを貫通する第1貫通孔4cとが設けられている。また、下部固定材4bには、中フランジ2cと当接する面である第2上面44から下フランジ2eに面する第2下面45までを貫通する第2貫通孔4dが設けられている。
【0034】
このようにして形成される第1貫通孔4cと第2貫通孔4dは、固定下地材4を中フランジ2cに設置した際に、挿通孔22の位置と整合するように設けられており、ボルト7を挿通することができる。また、下部固定材4bの幅方向の長さは、中フランジ2cの下面から下フランジ2eの上面までの距離よりも短く形成されている。なお、上部固定材4a及び下部固定材4bの大きさは、鉄骨梁2の設置位置や形状に対応させた大きさとすることができる。
【0035】
次に、梁化粧構造1の施工方法について説明する。鉄骨梁2は、建物内に設置されており、
図1に示すように、上フランジ2bに上階の床版5を載置している。まず、
図3及び
図4に示すように、固定下地材4を鉄骨梁2の長手方向に沿うように配置して鉄骨梁2に設置する。固定下地材4は、上ウェブ2a及び下ウェブ2dを挟んでそれぞれ中フランジ2cの両側に設置される。具体的には、上部固定材4aの第1下面43を中フランジ2cの上面に当接させ、下部固定材4bの第2上面44を中フランジ2cの下面に当接させて中フランジ2cの挿通孔21と第1貫通孔4c及び第2貫通孔4dの位置を整合させる。そして、ボルト7を凹部42側から挿入して各孔に連通させ、第2下面45から突出したボルト7にナット8を螺合させて、固定下地材4を鉄骨梁2に設置する。
【0036】
このとき、先述したように、下部固定材4bの幅方向の長さは、中フランジ2cの下面から下フランジ2eの上面までの距離よりも短く形成されているので、第2下面45と下フランジ2eとの間に空間が生じる。したがって、ナット8をボルト7に螺合する際に、容易に施工を行うことができる。
【0037】
続いて、
図1及び
図4に示すように、天井材6及び天井材6を固定する天井下地材62の小口を当接させる長尺な当接材9を、鉄骨梁2の長手方向へ沿うように上部下地材4aの第1上面41に載置する。このとき、当接材9は、上部固定材4aと当接する面に接着剤を塗布されて上部固定材4aに接着されるとともに当接材9の上ウェブ2aと面する側面と反対側の側面から第1上面41の方向へ釘10を斜めに打ち込まれて上部固定材4aに固定される。そして、天井下地材62及び天井材6を当接材9に当接させながら所定の位置に設置して天井を形成する。
【0038】
次に、梁化粧材3を固定下地材4に固定する。まず、
図3に示すように、厚手の両面テープ11を、固定下地材4の上ウェブ2a及び下ウェブ2dに面する側面と反対側の側面である外側面46に貼着する。このとき、両面テープ11は、内側面35の溝部36と合致する位置に設置される。そして、両面テープ11に溝部36を嵌め合せて梁化粧材3を固定下地材4に接着固定させる。なお、梁化粧材3の固定下地材4への固定は両面テープ11と接着剤を併用して行ってもよい。このように、梁化粧材3は、固定下地材4の外側面46に接着固定されるので、室内から見上げた時に釘やビスなどの雑多な固定具が目視されず、意匠性に優れた外観とすることができる。
【0039】
またこのとき、上述したように、第1下面部32の上面37の幅L1と、第2下面部34の上面37の幅L1との和は、下面21の幅L2未満であるため、
図1及び
図7に示すように、第1化粧材3aと第2化粧材3bは互いに離間して隙間30を形成する。隙間30の幅は特に限定されることはなく、状況に応じてその幅を調整することができる。さらに、幅L3は距離L4よりも長く形成されているので、
図5に示すように、梁化粧材3の上面37は、下フランジ2eの下面21と離間して下面21との間に空間S1を形成することができる。
【0040】
上面37から下面21までの距離L5は特に限定されることはない。したがって、距離L5を広げるように梁化粧材3の大きさを調整し、隙間30の陰影を深めて鉄骨梁2の長手方向を強調したり、逆に距離L5を狭めるように梁化粧材3の大きさを調整して鉄骨梁2の硬質な素材感を強調するなど、状況に応じて意匠に変化をつけることができる。なお、下面21は、塗料仕上げや素地仕上げとすることができる。
【0041】
また第1空間S1には、
図6に示すように、薄型のLEDで形成された照明器具12を設置することができる。このとき、下フランジ2eに配線用孔23を設けておけば、第2下面45と下フランジ2eの上面との間の空間に配線を通すことができ、効率的に照明器具12を設置することができる。さらに、第1側面部31及び第2側面部33にそれぞれ板厚方向へ貫通するスリット38を形成しておき、梁化粧材3と固定下地材4との間にスリット38を避けてスペーサ4eを設置し、内側面35と外側面46とを離間させて、スリット38と合致する位置に第2空間S2を形成し、この第2空間S2に照明器具12を設置してもよい。このように、第1空間S1及び第2空間S2に照明器具12を設置することにより、単に照明としての機能を備えるだけでなく鉄骨梁2の長手方向を強調することができ、変化に富んだ意匠の室内空間を構築することができる。
【0042】
なお、
図7では、隙間30の平面視形状を直線としているが、隙間30の平面視形状はこれに限定されることはなく、例えば平面視曲線であってもよい。また、
図1等では、下面21の幅方向略中央を露出させているが、必ずしも下面21の幅方向略中央を視認させる必要はなく、第1下面部32と第2下面部34を部分的に離間させて隙間30の平面視形状に変化をもたせてもよい。これはスリット38の側面視形状についても同様とすることができる。さらに、照明器具12は、隙間30やスリット38の全長に渡って配置してもよいし、部分的に配置してもよい。
【0043】
以上のように構成される梁化粧構造1は、室内から見上げた際に隙間30から鉄骨梁2の下面を視認することができるので、木製の梁化粧材3の柔らかな印象と鉄骨梁2の硬質な印象を組み合わせて変化に富んだ意匠とすることができる。さらに、鉄骨梁2の長手方向へ延びる隙間30が鉄骨材の長手方向の直線を強調することができるので、鉄骨梁2が大スパンの梁である場合は、迫力のある室内空間を構築することができる。そして、梁化粧材3が第1化粧材3aと第2化粧材3bとに分割されているため、鉄骨梁2を挟んで異なる天井高を有する場合、第1側面部31と第2側面部33の幅方向の寸法を調整して天井高の段差を吸収することができる。したがって、梁化粧構造1は、様々な意匠の天井に使用することができる。
【0044】
次に、折上天井構造13について説明する。
図8から
図10は、天井面を凹溝形状に折上げた折上天井構造13の一例を示すものであって、折上天井構造13は、凹溝形状の底面を形成する折上天井面14から室内方向へ突出し、且つ、梁化粧構造1を備えた複数の化粧梁15と、凹溝形状の化粧梁15に直交する側面を形成する見切縁16と、折上天井面14から室内方向へ突出し、且つ、折上天井面14から露出する梁材24の側面及び下面を木製の被覆材17aで被覆された被覆梁17と、を有している。
【0045】
梁化粧構造1を備えた複数の化粧梁15は、
図8及び
図9に示すように、折上天井面14から室内方向へ突出し、互いに間隔を空けて平行に設けられている。複数の化粧梁15のうち端に設置される化粧梁15aは、凹溝形状の化粧梁15に平行な側面を形成し、異なる天井高さの境界に設けられる見切材の役割を担っている。また、
図9に示すように、化粧梁15の下面は天井面61よりも低い高さに位置しており、この化粧梁15の下面と天井面61との段差Hを吸収するために、天井面61側に設置される化粧梁15aの第2側面部33は、その幅を第1側面部31の幅よりも小さくなるように形成されている。なお、梁化粧構造1については、先述した内容と重複するため具体的な説明を省略する。
【0046】
見切縁16は、
図8及び
図10に示すように、化粧梁15の長手方向の両端部に直交して設けられており、天井裏の梁材24に設置される下地材に支持されている。見切縁16は、化粧梁15aと同様に異なる天井高さの境界に設けらる見切材の役割を担う部材で、
図11に示すように、凹溝形状の側面を形成する凹溝側面材16aと、天井面61に当接して段差Hを吸収する段差吸収材16bを備えている。凹溝側面材16aは、凹溝の側面である凹溝側面部16cと、凹溝側面部16cの下端から天井材6側に突出する下面部16dを有し、凹溝側面部16cの幅は、化粧梁15に設置される梁化粧材3の第1側面部3a及び第2側面部3bの幅と等しく形成されている。また、下面部16dと段差吸収材16bとは、互いに切欠きを設けて嵌め合せる所謂相欠き継手で継がれている。
【0047】
被覆梁17は、
図8及び
図10に示すように、化粧梁15の高さよりも低い高さで形成され、化粧梁15に直交するとともに互いに離間する化粧梁15の間に複数設けられている。被覆梁17は、
図11に示すように、折上天井面14から露出する梁材24の側面及び下面を木製の被覆材17aで被覆して形成されている。被覆材17aは、梁材24の両側面部を被覆し板状に形成される一対の側面材17bと、梁材24の下面を被覆する板状の下面材17cを備え、一対の側面材17bと下面材17cとは、相欠き継手で継がれている。なお、被覆材17aは、梁材24に設置される下地材に接着固定される。その固定方法は、梁化粧材3の固定下地材4への固定方法と同様であるため省略する。
【0048】
このように形成される折上天井構造13は、
図12に示すように、折上天井を変化に富んだ意匠とすることができる。また、被覆梁17は隙間やスリットを有さず、化粧梁15よりも高さが低いので、化粧梁15の意匠性をより強調することができる。さらに、化粧梁15と被覆梁17は、化粧梁15勝ちで設置されているので、化粧梁15の長手方向のラインをより強調することができ、迫力のある空間を形成することができる。
【0049】
また、本発明の実施の形態は上述の形態に限ることなく、本発明の思想の範囲を逸脱しない範囲で適宜変更することができることは云うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明に係る梁化粧構造と折上天井構造は、室内に露出する鉄骨梁を有する建物に好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0051】
1 梁化粧構造
2 鉄骨梁
3 梁化粧材
30 隙間
3a 第1梁化粧材
31 第1側面部
32 第1下面部
33 第2側面部
34 第2下面部
3b 第2梁化粧材
4 固定下地材
46 外側面
61 天井面
12 照明器具
13 折上天井構造
14 折上天井面
15 化粧梁
16 見切縁
17 被覆梁
17a 被覆材
S1 第1空間
S2 第2空間