特許第6443500号(P6443500)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

<>
  • 6443500-光硬化型樹脂組成物 図000005
  • 6443500-光硬化型樹脂組成物 図000006
  • 6443500-光硬化型樹脂組成物 図000007
  • 6443500-光硬化型樹脂組成物 図000008
  • 6443500-光硬化型樹脂組成物 図000009
  • 6443500-光硬化型樹脂組成物 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6443500
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】光硬化型樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/44 20060101AFI20181217BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20181217BHJP
   G02F 1/1333 20060101ALI20181217BHJP
   C08F 2/50 20060101ALI20181217BHJP
【FI】
   C08F2/44 C
   G09F9/00 302
   G09F9/00 342
   G02F1/1333
   C08F2/50
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-121431(P2017-121431)
(22)【出願日】2017年6月21日
(62)【分割の表示】特願2015-161711(P2015-161711)の分割
【原出願日】2008年4月8日
(65)【公開番号】特開2017-186569(P2017-186569A)
(43)【公開日】2017年10月12日
【審査請求日】2017年7月10日
(31)【優先権主張番号】特願2007-102239(P2007-102239)
(32)【優先日】2007年4月9日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2007-186360(P2007-186360)
(32)【優先日】2007年7月17日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2008-5027(P2008-5027)
(32)【優先日】2008年1月11日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000224
【氏名又は名称】特許業務法人田治米国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】豊田 倫由紀
(72)【発明者】
【氏名】新家 由久
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 勇介
【審査官】 村川 雄一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−088963(JP,A)
【文献】 特開2006−189715(JP,A)
【文献】 特開2006−342222(JP,A)
【文献】 特開2007−077321(JP,A)
【文献】 特開2006−276105(JP,A)
【文献】 特開2002−309199(JP,A)
【文献】 特開平11−142818(JP,A)
【文献】 米国特許第6498672(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F 9/00−9/46
G02F 1/13−1/141
H01L 27/32、51/50
H05B 33/00−33/28
C08F 2/00−2/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像表示部と該画像表示部を取り囲む枠体とを有する表示側パネルに対し、光硬化型樹脂組成物を、該画像表示部と該枠体に亘るように塗布して、光硬化型樹脂組成物層を形成し、該光硬化型樹脂組成物層の表面に透明な保護部を密着させた後に、光硬化させて樹脂硬化物層を形成する工程を有する画像表示装置の製造方法において、
前記表示側パネルとして、画像表示部と枠体との間に隙間が存在するものを使用し、該枠体には、塗布された光硬化型樹脂組成物が当該枠体の周囲に流れ出ないように凸部が周設されており、
光硬化型樹脂組成物が前記隙間に入り込まないように、該光硬化型樹脂組成物として、粘度(25℃、コーンプレート型回転粘度計、コーンプレートのテーパ角度(C35/2°、10rpm))が3000mPa・s以上12000mPa・s以下であり、ポリマーとアクリレート系モノマーと光重合開始剤とを含有し、該ポリマーが、ポリウレタンアクリレート、又はポリイソプレン系アクリレート又はそのエステル化物を含有する光硬化型樹脂組成物を使用する製造方法。
【請求項2】
光硬化型樹脂組成物として、硬化収縮率が5%以下、硬化物の25℃における貯蔵弾性率が1.0×107Pa以下、樹脂硬化物層の可視光領域の光透過率を90%以上とする樹脂組成物を使用する請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
光硬化型樹脂組成物の硬化物の25℃における貯蔵弾性率が1×103〜1×106Paである請求項2記載の製造方法。
【請求項4】
光硬化型樹脂組成物の硬化収縮率が4.0%以下である請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
樹脂硬化物層の厚みが50〜200μmである請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
アクリレート系モノマーが、イソボルニルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート及び2−ヒドロキシブチルメタクリレートから選ばれる1種以上のアクリレート系モノマーである請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば携帯電話等に用いられる液晶表示装置(LCD)等の画像表示装置に関し、特に、画像表示部上に透明な保護部を設けた画像表示装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の表示装置としては、例えば図6に示す液晶表示装置101が知られている。この液晶表示装置101は、液晶表示パネル102上に、例えば、ガラスやプラスチックスからなる透明な保護部103を有している。
【0003】
この場合、液晶表示パネル102表面及び偏光板(図示せず)を保護するため、保護部103との間にスペーサ104を介在させることによって液晶表示パネル102と保護部103との間に空隙105が設けられるようになっている。
【0004】
しかし、液晶表示パネル102と保護部103との間の空隙105の存在により、光の散乱がおき、それに起因してコントラストや輝度が低下し、また空隙105の存在はパネルの薄型化の妨げとなっている。
【0005】
このような間題に鑑み、液晶表示パネルと保護部との間の空隙に樹脂を充填することも提案されているが(例えば特許文献1)、樹脂硬化物の硬化収縮の際の応力によって液晶表示パネルの液晶を挟持する光学ガラス板に変形が生じ、液晶材料の配向乱れ等の表示不良の原因となっている。
【0006】
また、液晶表示パネルと保護部との間の空隙に樹脂組成物を充填すると、製造条件等により、樹脂組成物がバックライト側に付着する不具合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−55641号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような従来の技術の課題を考慮してなされたもので、その目的とするところは、画像表示部の変形に起因する表示不良を生じさせず、高輝度及び高コントラストの画像表示が可能であり、加えてバックライト側に不要な樹脂が付着していない薄型の画像表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明は、画像表示部と該画像表示部を取り囲む枠体とを有する表示側パネルと、保護部との間に、光硬化型樹脂組成物を、画像表示部と枠体に亘るように介在させ、光硬化させて樹脂硬化物層を形成する工程を有する画像表示装置の製造方法であって、
光硬化型樹脂組成物として、粘度(25℃、コーンプレート型回転粘度計、コーンプレートのテーパ角度C35/2°、10rpm)が3000mPa・s以上12000mPa・s以下の樹脂組成物を使用する画像表示装置の製造方法を提供する。
【0010】
また、本発明は、画像表示部と該画像表示部を取り囲む枠体とを有する表示側パネルと、表示側パネル上に配置された保護部と、表示側パネルと保護部との間に介在する樹脂硬化物層を有する画像表示装置であって、
画像表示部と枠体との間に形成された隙間を閉塞する密閉フィルムが画像表示部と枠体との間に亘って配置され、密閉フィルム上に樹脂硬化物層が設けられている画像表示装置を提供する。
【0011】
さらに、本発明は、上述の画像表示装置の製造方法として、画像表示部と該画像表示部を取り囲む枠体とを有する表示側パネルと、保護部との間に、光硬化型樹脂組成物を、画像表示部と枠体に亘るように介在させ、光硬化させて樹脂硬化物層を形成する工程を有する画像表示装置の製造方法であって、
画像表示部と枠体との間に形成されている隙間を密閉フィルムで閉塞し、その上に光硬化型樹脂組成物を配置する画像表示装置の製造方法を提供する。
【0012】
ここで、上記の画像表示装置、および画像表示装置の製造方法において、樹脂硬化物層を、可視光領域の光透過率が90%以上、25℃における貯蔵弾性率が1.0×107Pa以下であり、硬化収縮率が5%以下の光硬化型樹脂組成物の硬化物とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
一般に、画像表示装置では、組み立ての関係上、画像表示部と該画像表示部を取り囲む枠体との間に一定の隙間が生じており、その底面にはバックライトが露出している。本発明の画像表示装置およびその製造方法によれば、画像表示部と保護部を組み込んだ表示側パネルと保護部との間に光硬化型樹脂組成物を介在させ、それを光硬化させるに際し、光硬化型樹脂組成物を特定粘度とするか、あるいは画像表示部と枠体の隙間を密閉フィルムで閉塞するので、画像表示部と枠体の隙間に光硬化型樹脂組成物が入り込み、バックライト側へ回り込むことを防止することができる。
【0014】
ここで、光硬化型樹脂組成物として、硬化収縮率が5%以下、それを光硬化させた樹脂硬化物層の可視光領域の透過率が90%以上、25℃における貯蔵弾性率が1.0×107Pa以下のものを使用すると、画像表示部および保護部に対し、樹脂の硬化収縮時の応力の影響を極力抑えることができる。したがって、画像表示部及び保護部において歪みが殆ど生じない。また、画像表示部と枠体の隙間の大きさも変化しない。
【0015】
したがって、本発明によれば、上記の相乗効果によって、表示不良のない、高輝度および高コントラスト表示が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】保護部の断面図である。
図2】本発明の第1例の画像表示装置の製造方法の説明図である。
図3】隙間内に光り硬化型樹脂組成物が浸入した状態を示す断面図である。
図4】本発明の第2例の画像表示装置の製造方法の説明図である。
図5】本発明の第3例の画像表示装置の製造方法の説明図である。
図6】従来の画像表示装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図中、同一符号は同一又は同等の構成要素を表している。
【0018】
<第1例>
図2は、本発明の第1例の画像表示装置11(同図(d))の製造方法の要部を示す断面図である。この画像表示装置11では、表示側パネル21上に、保護部22が、樹脂硬化物層44によって貼付されている。
【0019】
画像表示装置11の製造工程を説明すると、樹脂硬化物層44で貼付する前の表示側パネル21は、図2(a)に示すように、板状のベース31上に、画像表示部を取り囲む枠体30を配置し、枠体30の内側のベース31上にバックライト32と該バックライト32よりも小さな液晶パネルから成る画像表示部33とをこの順序で配置した構成となっている。枠体30はベース31と一体であってもよい。
【0020】
この状態では、画像表示部33と枠体30の間には最大幅数mmの隙間37が形成されており、隙間37の底面には、バックライト32の表面が露出している。
【0021】
一方、図1(a)に示すように、保護部22は、光学ガラス又はアクリル樹脂等のプラスチックから成る透明板41の表面の縁付近に、黒色不透明の遮光膜42が印刷により形成されたものとなっている。遮光膜42は、外光反射を防止して画像表示装置11の見やすさを高めるため、またバックライト32の光が周囲に漏れないようにするために設けられている。なお、保護部22としては、シート状又はフィルム状の部材を使用してもよい。
【0022】
第1例の画像表示装置11の製造方法では、まず、上述の状態の表示側パネル21の画像表示部33と枠体30に亘るように、隙間37の上から高粘度の光硬化型樹脂組成物34を塗布する。ここで、光硬化型樹脂組成物34の粘度は、隙間37内に浸入しない程度の高粘性とし、具体的には、25℃でコーンプレート型回転粘度計(コーンプレートのテーパ角度C35/2°、10rpm)で3000mPa・s以上とし、12000mPa・s以下とする。
【0023】
これにより、図2(b)に示すように、表示側パネル21上に、空隙37を残したまま光硬化型樹脂組成物層34を形成することができる。
【0024】
また、光硬化型樹脂組成物34の塗布量は、光硬化型樹脂組成物層34を硬化させた樹脂硬化物層44の厚みが50〜200μmとなるようにすることが好ましい。
【0025】
次に、保護部22の遮光膜42側の面を表示側パネル21に向け、透明板41を光硬化型樹脂組成物層34の表面に接触させ、透明板41と光硬化型樹脂組成物層34の間に気泡が混入しないように押圧し、図2(c)に示すように、透明板41と光硬化型樹脂樹脂組成物層34を密着させる。
【0026】
その後、保護部22上で紫外線ランプを点灯し、透明板41を通して紫外線を硬化型樹脂組成物層34に照射することにより、それを硬化させ、図2(d)に示すように、樹脂硬化物層44を形成する。こうして、保護部22と表示側パネル21とが樹脂硬化物層44で接着された画像表示装置11を得る。
【0027】
なお、遮光膜42の幅が広く、保護部22上のランプの紫外線が、遮光膜42と表示側パネル21の間の光硬化型樹脂組成物層34に十分に到達しない場合には、表示側パネル21及び保護部22の側方から紫外線を照射してもよい。
【0028】
得られた画像表示装置11では、保護部22側から画像表示部11を見ると、バックライトパネル32による照明光により、画像表示部33に形成される文字、図形等が観察される。
【0029】
この第1例では、光硬化型樹脂組成物層34を表示側パネル21上に形成したが、光硬化型樹脂組成物34を保護部22の遮光膜42側の面に塗布することにより、図1(b)に示すように、保護部22上に光硬化型樹脂組成物層34を形成しておき、それを図2(a)に示した表示側パネル21と重ね合わせ、上述と同様に紫外線を照射し、図2(d)に示す画像表示装置11を形成してもよい。
【0030】
<第2例>
図4は、第2例の画像表示装置12の製造方法の要部を示す断面図である。
【0031】
この第2例の製造方法では、光硬化型樹脂組成物として粘度が低く(3000mPa・s未満)、第1例のように表示側パネル21上に光硬化型樹脂組成物を塗布した場合には、図3に示すように、光硬化型樹脂組成物134が隙間37内に流入する樹脂組成物を使用する。図3に示すように、光硬化型樹脂組成物134が隙間37内に流入すると、その光硬化型樹脂組成物134は、バックライト32と画像表示部33の間に浸透し、表示不良が発生するおそれがある。
【0032】
そこで、第2例では、表示側パネル21上に光硬化型樹脂組成物を塗布する前に、図2(a)の状態の表示側パネル21の隙間37上に、図4(a)に示すように、画像表示部33と枠体30に亘って、接着性を有する密閉フィルム51を配置し、隙間37を閉塞する。密閉フィルム51の幅方向の一端は画像表示部33に密着し、他端は枠体30に密着するので、隙間37が密閉される。
【0033】
このような密閉フィルム51としては、ポリエチレンテレフタレート等をフィルム基材とし、アクリレート系等の粘着剤層あるいは接着層を有する粘着フィルムが好ましい。
【0034】
なお、密閉フィルム51は、表示側パネル21への配置時に必ずしも粘着剤層あるいは接着剤層は固体である必要はなく、隙間37に入り込んだり、画像表示部33とバックライト32との間に浸入しない程度に高粘度であればよい。より具体的には粘度65000mPa・s程度の硬化型樹脂組成物を使用することができる。また、隙間37に入り込まない程度に基材フィルム上で形状を保持させる点から、チキソ比3程度の接着剤を使用してもよい。
【0035】
次に、図4(b)に示すように、画像表示部33と密閉フィルム51と枠体30に掛かるように表示側パネル21上に光硬化型樹脂組成物35を塗布する。そして、前述と同様に、図1(a)の保護部を、図4(c)に示すように、表示側パネル21上に重ね合わせ、その状態で、光硬化型樹脂組成物層35に紫外線を照射し、硬化させて図4(d)に示すように、樹脂硬化物層45を形成する。こうして、隙間37が密閉フィルム51で密閉された状態で、表示側パネル21と保護部22とが樹脂硬化物層45で接着されている第2例の画像表示装置12が得られる。
【0036】
この例でも、光硬化型樹脂組成物層35を保護部22に形成し、図4(a)の状態の表示側パネル21と図4(c)に示すように密着させ、光を照射して、図4(d)の画像表示装置12を得ることができる。
【0037】
<第3例>
図5は、第3例の画像表示装置13の製造方法の要部を示す断面図である。
【0038】
この第3例の製造方法では、上記の第2例に対して、図5(a)に示すように、側縁部に突部62が周設された枠体61を有する表示側パネル24を使用する点が異なっている。
【0039】
この表示側パネル24でも、枠体61と画像表示部33の間には、底面にバックライト32が露出する隙間57が形成されている。
【0040】
そこで、先ず、同図(b)に示すように、隙間57上に、画像表示部33と枠体61に亘って密閉フィルム51を貼付し、隙間57を密閉する。
【0041】
次いで、同図(c)に示すように、画像表示部33と密閉フィルム51と枠体61に掛かるように表示側パネル24上に光硬化型樹脂組成物36を滴下し、それを画像表示部33上に広げ光硬化型樹脂組成物層36を形成する。その後、同図(d)に示すように、前述と同様の保護部22を光硬化型樹脂組成物層36上に重ね合わせる。ここで、この表示側パネル24では枠体61に突部62が周設されているため、光硬化型樹脂組成物36を表示側パネル24上に滴下しても、その光硬化型樹脂組成物36が枠体61の周囲に流れ出さないという効果がある。このため、第3例では、光硬化型樹脂組成物36として、第2例よりもさらに低粘度のものを使用することができ、光硬化型樹脂組成物36の粘度に関する自由度が高くなる。
【0042】
保護部22を光硬化型樹脂組成物層36上に重ね合わせた後は、紫外線を照射して光硬化型樹脂組成物層36を硬化させ、同図(e)に示すように、樹脂硬化物層46とする。こうして、保護部22と表示側パネル24とが樹脂硬化物層46によって密着された第3例の画像表示装置13が得られる。
【0043】
なお、この第3例でも、光硬化型樹脂組成物層36を保護部22に形成し、図5(b)の状態の表示側パネル21と図5(d)に示すように密着させ、光照射して、図5(e)の画像表示装置13を得ることができる。
【0044】
以上の第1例〜第3例のいずれにおいても、光硬化型樹脂組成物34〜36としては、その樹脂硬化物の貯蔵弾性率(25℃)を好ましくは1×107Pa以下、より好ましくは1×103〜1×106Paとし、樹脂硬化物の屈折率を好ましくは1.45以上1.55以下、より好ましくは1.51以上1.52以下とし、さらに、樹脂硬化物の厚さが100μmの場合の可視光領域の透過率を好ましくは90%以上とするように調製したものを用いる。
【0045】
一般に、硬化型樹脂組成物を構成する主要な樹脂成分としては共通でも、共に配合する樹脂成分あるいはモノマー成分等が異なると、それを硬化させた樹脂硬化物の貯蔵弾性率(25℃)が1×107Paを超える場合があるが、そのような樹脂硬化物となる樹脂組成物は、光硬化型樹脂組成物としては好ましくない。
【0046】
貯蔵弾性率が上述の範囲を超えると、表示色ムラが発生する場合がある。
【0047】
また、この光硬化型樹脂組成物34〜36は、硬化収縮率が、好ましくは5.0%以下、より好ましくは4.5%以下、特に好ましくは4.0%以下、さらに好ましくは0〜2%となるように調製したものとする。これにより、光硬化型樹脂組成物34〜36が硬化する際に樹脂硬化物に蓄積される内部応力を低減させることができ、樹脂硬化物層44、45、46と表示側パネル21、24又は保護部22との界面に歪みができることを防止できる。したがって、光硬化型樹脂組成物34〜36を表示パネル21、24と保護部22との間に介在させ、光硬化型樹脂組成物34〜36、134を硬化させた場合に、樹脂硬化物層44、45、46と表示側パネル22、24又は保護部22との界面で生じる光の散乱を低減させることができ、表示画像の輝度を高めると共に、視認性を向上させることができる。
【0048】
これに対し、硬化収縮率が上述の範囲外であると、表示色ムラが発生する場合がある。
【0049】
なお、樹脂組成物が硬化する際に樹脂硬化物に蓄積される内部応力の程度は、樹脂組成物を平板上に滴下し、それを硬化させて得られる樹脂硬化物の平均表面粗度によって評価することができる。例えば、樹脂組成物2mgをガラス板上又はアクリル板上に滴下し、それをUV照射により90%以上の硬化率で硬化させて得られる樹脂硬化物の平均表面粗度が6.0nm以下であれば、表示側パネルと保護部との間に光硬化型樹脂組成物を介在させ、それを硬化させた場合にそれらの界面に生じる歪みが実用上無視できる。これに関し、本発明で好ましく使用する光硬化型樹脂組成物34〜36によれば、この平均表面粗度を6.0nm以下、好ましくは5.0nm以下、より好ましくは1〜3nmにすることができる。したがって、樹脂硬化物の界面に生じる歪みを実用上無視することができる。
【0050】
ここで、ガラス板としては、液晶セルの液晶を挟持するガラス板や液晶セルの保護板として使用されているものを好ましく使用できる。また、アクリル板としては、液晶セルの保護板として使用されているものを好ましく使用できる。これらのガラス板やアクリル板の平均表面粗度は、通常、1.0nm以下である。
【0051】
このような光硬化型樹脂組成物としては、例えば、ポリウレタンアクリレート、ポリイソプレン系アクリレート又はそのエステル化物、テルペン系水素添加樹脂、ブタジエン重合体等の1種以上のポリマーと、イソボルニルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシブチルメタクリレート等の1種以上のアクリレート系モノマーと、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン等の光重合開始剤とを含有する樹脂組成物を好適に用いることができる。
【0052】
また、光硬化型樹脂組成物には、その他の添加剤、例えば増感剤、可塑剤、透明粒子等を本発明の目的の範囲で添加することができる。
【0053】
なお、保護部22の透明板41には、画像表示部33に対する紫外線保護の観点から紫外線領域をカットする機能が付与されていることが多い。そのため、光重合開始剤としては、可視光領域でも硬化できる光重合開始剤(例えば、商品名 SpeedCure TPO、日本シイベルヘグナー(株)製等)を用い、照射光として、可視光を用いることが好ましい。
【0054】
本発明の画像表示装置は、携帯電話の他、携帯ゲーム機器、電子手帳、形態測定器等の電子機器の表示部分の他、有機ELパネル、プラズマディスプレイ等の種々のパネルディスプレイに適用することが可能である。
【実施例】
【0055】
<第1例に相当する実施例1>
(1)樹脂組成物1の調製
ポリウレタンアクリレート(商品名 UV-3000B、日本合成化学工業(株)製)70重量部、イソボルニルアクリレート(商品名 IBXA、大阪有機化学工業(株)製)20重量部、光重合開始剤(商品名 イルガキュア184、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製)4重量部、光重合開始剤(商品名 SpeedCure TPO、日本シイベルヘグナー(株)製)1重量部を、ガラス容器に投入して撹拌し、目的の光硬化型樹脂組成物を得た。
【0056】
(2)樹脂組成物1の評価
(2-1)粘度
(1)で得た樹脂組成物1の粘度(25℃)をコーンプレート型回転粘度計(HAAKE社製)、コーンプレートのテーパ角度C35/2°、10rpm)で測定したところ、10000mPa・sであった。
【0057】
(2-2)光透過率
(1)で得た樹脂組成物1を、厚さ100μmの白色のガラス板上に、所定の膜厚となるように滴下してUVコンベアにて搬送し、樹脂硬化物を得た。
こうして得た樹脂硬化物(厚さ100μm)について、紫外可視分光光度計(日本分光(株)製 V-560)を用いて可視光領域の透過率を測定した。その結果、樹脂硬化物の透過率は95%以上であった。
【0058】
(2-3)貯蔵弾性率
(2-2)と同様にして得た樹脂硬化物について、粘弾性測定装置(セイコーインスツルメンツ(株)製 DMS6100)を用い、測定周波数1Hzで貯蔵弾性率(Pa)(25℃)を測定したところ、1×106Paであった。
【0059】
(2-4)硬化圧縮率
硬化前の樹脂液と硬化後の固体の比重を電子比重計(MIRAGE社製SD−120L)を用いて測定し、両者の比重差から次式により算出した。
【0060】
【数1】
【0061】
その結果、硬化収縮率は3.5%であった。
【0062】
(2-5)表面粗度
(1)で得た樹脂組成物2mgを液晶セル用ガラス板に滴下し、UV硬化の際に生ずる内部応力により発生するガラス板表面の所定領域(2.93mm×2.20mm)の歪み(Ra:平均表面粗度)を、Zygo社製3次元非接触表面粗度測定計にて測定した。
その結果、表面粗度Raは、4.5nmであった。
【0063】
(3)表示側パネルと保護部の貼り合わせ試験
図2の製造方法にしたがい、遮光膜42を有する保護部22に(1)で得た樹脂組成物1を滴下して保護部全体に硬化型樹脂組成物層を形成するとともに、該保護部22を反転させて、図2(a)で示す表示側パネル21の画像表示部33である液晶セルに密着するように配置した。液晶セルと枠体30の間には、0.5mmの隙間37があり、その底部にはバックライト32が露出しているが、樹脂組成物1は、隙間37にしみ込まなかった。
【0064】
次いで、紫外線を照射することにより、樹脂組成物1を紫外線硬化させて樹脂硬化物層44とし、画像表示装置11を完成させた。
【0065】
<比較例1>
実施例1と同様に、ポリウレタンアクリレート(商品名 UV−3000B、日本合成化学工業(株)製、イソボルニルアクリレート(商品名 IBXA、大阪有機化学工業(株)製)、光重合開始剤(商品名 イルガキュア184、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製)、および光重合開始剤(商品名 SpeedCure TPO、日本シイベルヘグナー(株)製)を使用するとともに、その配合量のみ相違させた樹脂組成物2を調製し、実施例1と同様に、粘度、透過率、硬化圧縮率、表面粗度を測定し、貼り合わせ試験を行った。これらの結果を表1、表2に示すとともに、実施例1と対比する。
【0066】
【表1】
【0067】
【表2】
【0068】
表1および表2から明らかなように、粘度がm3000Pa・s以下であると、透過率等の特性に関わらず、樹脂組成物のしみ込みがあり、画像不良の可能性がある。
【0069】
<第2例に相当する実施例2>
(1)密閉フィルムの作製
基材フィルムである100μm厚ポリエチレンテレフタレートに、粘着剤としてアクリレート系樹脂の粘着剤を100μm厚塗布し、幅5mmに切断して目的の密閉フィルムを得た。
【0070】
(2)表示側パネルと保護部の貼り合わせ試験
図4の製造方法にしたがい、図4(a)の画像表示部33となる液晶セルと枠体30との間の隙間37(0.5mm)に、上述の(1)で作製した密閉フィルム51を、液晶セルと枠体30とを架設するように貼り付けた。
【0071】
次に、遮光膜42を有する保護部22に前述の樹脂組成物2を滴下して保護部全体に光硬化型樹脂組成物層を形成するとともに、該保護部22を反転させて、表示側パネル21の画像表示部33である液晶セルに密着するように配置した。液晶セルと枠体30の間には、0.5mmの隙間37があり、その底部にはバックライト32が露出しているが、樹脂組成物2は、密閉フィルム51の作用により隙間37には入り込まなかった。次いで、紫外線を照射することにより、樹脂樹脂組成物2を紫外線硬化させて樹脂硬化物層45を形成し、画像表示装置12を完成させた。
【0072】
上記の通り、第2例に相当する実施例2によれば、樹脂組成物の粘度が3000mPa・s以下であっても密閉フィルム51の作用により、隙間37へのしみ込みを防止することができる。
【0073】
<第2例に相当する実施例3>
(1)密閉フィルムの作製
剥離処理がされた100μm厚ポリエチレンテレフタレートに、粘着剤として実施例1の樹脂組成物1を50μm厚塗布し、幅5mmに切断して目的の密閉フィルムを得た。なお、この時点で密閉フィルムは光硬化していない。
【0074】
(2)表示側パネルと保護部の貼り合わせ試験
図4の製造方法にしたがい、図4(a)の画像表示部33となる液晶セルと枠体30との間の隙間37(0.5mm)に、上述の実施例3(1)で作製した密閉フィルム51を、液晶セルと枠体33に架設するように貼り付けた後、剥離フィルムを剥がした。
【0075】
次に、遮光膜42を有する保護部22に前述の樹脂組成物2を滴下して保護部全体に光硬化型樹脂組成物層を形成するとともに、当該保護部22を反転させて、表示側パネル21の画像表示部33である液晶セルに密着するように配置した。液晶セルと枠体30の間には、0.5mmの隙間37があり、その底部にはバックライト32が露出しているが、樹脂組成物2は、密閉フィルム51の作用により隙間37には入り込まなかった。次いで、紫外線を照射することにより、樹脂組成物2を紫外線硬化させて樹脂硬化物層45を形成し、画像表示装置12を完成させた。なお、この密閉フィルム51で粘着剤として塗布した樹脂組成物1は、樹脂硬化物層45の形成時の紫外線硬化で硬化した。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、液晶表示装置などの画像表示装置等に有用である。
【符号の説明】
【0077】
11〜13……画像表示装置
21、24……表示側パネル
22 ……保護部
30、61……枠体
31 ……ベース
32 ……バックライト
33 ……画像表示部
34〜36、134……光硬化型樹脂組成物又は光硬化型樹脂組成物層
37、57……隙間
41 ……透明板
42 ……遮光膜
44、45、46……樹脂硬化物層
51 ……密閉フィルム
図1
図2
図3
図4
図5
図6