(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1では、同色の着色層が列方向に配置され、異なる色の着色層が列方向に直交する行方向に配列している。したがって、行方向に隣り合う画素間において異なる色の着色層が重なっており、有機EL素子から発せられ、着色層が重なった部分を透過する光も視認可能となっている。ゆえに、行方向における視角特性において、着色層を透過したR光、G光、B光の色相のバランスが低下して、視角特性上の対称性が悪化するという課題があった。また、このような課題は画素が微細になるほど顕著となる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0008】
[適用例1]本適用例に係る有機EL装置は、基板と、前記基板上に配置された複数の有機EL素子と、前記複数の有機EL素子を覆って封止する封止層と、前記複数の有機EL素子に対応して、前記封止層上に形成された少なくとも赤、緑、青の着色層と、前記封止層上において異なる色の前記着色層をそれぞれ区分して形成され、前記封止層上における高さが前記着色層よりも低い凸部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
本適用例によれば、異なる色の着色層の間の有機EL素子側に凸部が形成されているので、凸部が形成されていない場合と比べて、着色層の境界において有機EL素子からの発光が本来透過すべき着色層以外の他の色の着色層を透過する割合を減少させることができる。したがって、視角特性上の対称性の低下が抑制され、優れた表示特性を有する有機EL装置を提供することができる。
また、異なる色の着色層の間に凸部が形成されていない場合と比べて、着色層は封止層に接するだけでなく、凸部にも接した状態で形成されるので、着色層が接する部分の面積が増えて、着色層の密着性が向上する。
【0010】
[適用例2]上記適用例に係る有機EL装置において、前記凸部は、光透過性を有し、前記凸部の頭頂部は、少なくとも1色の前記着色層によって覆われていることを特徴とする。
この構成によれば、有機EL素子からの発光が凸部を透過することができるので、凸部が遮光性の部材で形成される場合に比べて、有機EL素子からの発光が有効に利用され、高い輝度特性を有する有機EL装置を提供できる。また、凸部の頭頂部が少なくとも1色の着色層で覆われているので、頭頂部から光漏れが生ずることを防止できる。
【0011】
[適用例3]上記適用例に係る有機EL装置において、前記凸部は、前記着色層を構成するところの感光性樹脂材料からなることが好ましい。
この構成によれば、凸部と着色層とおける主たる構成材料が同じ感光性樹脂材料であるため、凸部と着色層との密着性を向上させることができる。また、凸部をフォトリソグラフィー法により形成できるので、画素が高精細になっても、それに対応して有効な凸部を形成できる。
【0012】
[適用例4]上記適用例に係る有機EL装置において、前記凸部は、金属材料または誘電体材料からなるとしてもよい。
この構成によれば、金属材料を用いることによって遮光性の凸部を構成することができ、視角特性において優れた対称性を実現できる。また、封止層が無機材料で構成されていた場合には、誘電体材料を用いることによって、封止層に対してより優れた密着性を有する凸部を構成することができる。
【0013】
[適用例5]上記適用例に係る有機EL装置において、前記凸部の前記封止層に接する底面の面積は、前記凸部の頭頂部の面積よりも大きいことが好ましい。
この構成によれば、封止層に対する凸部の密着性を高めることができる。
【0014】
[適用例6]上記適用例に係る有機EL装置において、前記有機EL素子と前記着色層とは、サブ画素ごとに設けられ、前記凸部は前記サブ画素を区画するように形成されていることが好ましい。
この構成によれば、例えば着色層を区分するように凸部をストライプ状(スジ状)に形成する場合に比べて、着色層と凸部との接触面積が増えるので、着色層の凸部に対する密着性を向上させることができる。
【0015】
[適用例7]上記適用例に係る有機EL装置において、前記封止層は、前記複数の有機EL素子側から順に積層された、無機材料からなる第1封止層と、平坦化層と、無機材料からなる第2封止層とを含むことが好ましい。
この構成によれば、第1封止層の表面は、下層に形成された複数の有機EL素子の影響を受けて凹凸が生ずるおそれがある。第1封止層に対し平坦化層を介して第2封止層を配置することにより、封止層上に形成される着色層が該凹凸の影響を受け難くなり、厚みが均一な着色層を構成し易い。また、第1封止層と第2封止層との間に平坦化層が存在するので、熱膨張や収縮により第2封止層に第1封止層の該凹凸に起因したクラックなどが生ずることを低減できる。したがって、より高い封止性能を有する封止層を実現できる。すなわち、発光寿命において高い信頼性を有する有機EL装置を提供できる。
【0016】
[適用例8]本適用例に係る有機EL装置の製造方法は、基板上に配置された複数の有機EL素子を覆って封止する封止層を形成する工程と、少なくとも赤、緑、青のサブ画素のうち隣り合う異なる色のサブ画素間の前記封止層上に凸部を形成する凸部形成工程と、前記凸部が形成された前記基板に、着色材料を含む感光性樹脂材料をスピンコート法を用いて塗布して、少なくとも赤、緑、青の着色層のそれぞれを前記サブ画素に対応して形成するカラーフィルター形成工程とを備え、前記凸部形成工程は、前記封止層上における前記凸部の高さが前記着色層よりも低くなるように前記凸部を形成することを特徴とする。
【0017】
本適用例によれば、隣り合う異なる色のサブ画素における着色層の間の有機EL素子側に凸部が形成されるので、凸部が形成されない場合と比べて、隣り合う異なる色のサブ画素の境界において有機EL素子からの発光が本来透過すべき着色層以外の他の色の着色層を透過する割合を減少させることができる。したがって、視角特性上の対称性の低下が抑制され、優れた表示特性を有する有機EL装置を製造することができる。
また、異なる色のサブ画素における着色層の間に凸部が形成されない場合と比べて、着色層は封止層に接するだけでなく、凸部にも接した状態で形成されるので、着色層が接する部分の面積が増えて、着色層の密着性が向上した有機EL装置を製造できる。
さらに、着色材料を含む感光性樹脂材料を凸部が形成された基板に対してスピンコート法で塗布して着色層を形成するので、凸部が形成されない場合と比べて、凸部間に感光性樹脂材料が容易に充填され、着色層を厚膜化し易い。スピンコート法は、感光性樹脂材料の実際の使用効率が低い点が課題だが、本発明を用いれば感光性樹脂材料を効率的に使用して所望の膜厚の着色層を形成することができる。
【0018】
[適用例9]上記適用例に係る有機EL装置の製造方法において、前記凸部形成工程は、前記着色材料を含まない前記感光性樹脂材料を用いて前記凸部を形成することが好ましい。
この方法によれば、凸部と着色層とを構成する主材料が同一であるため、凸部に対する着色層の密着性が向上する。また、着色材料を含まない感光性樹脂材料を用いて凸部を形成するので、光透過性の凸部が形成される。したがって、形成された凸部によって有機EL素子からの発光が阻害されないので、高い輝度特性を有する有機EL装置を製造することができる。
【0019】
[適用例10]上記適用例に係る有機EL装置の製造方法において、前記凸部形成工程は、金属材料または誘電体材料を用いて前記凸部を形成するとしてもよい。
この方法によれば、金属材料を用いることによって遮光性の凸部を構成することができ、視角特性において優れた対称性を有する有機EL装置を製造できる。また、封止層が無機材料を用いて形成された場合には、誘電体材料を用いることによって、封止層に対してより優れた密着性を有する凸部を形成することができる。
【0020】
[適用例11]上記適用例に係る有機EL装置の製造方法において、前記凸部形成工程は、前記サブ画素を平面的に区画するように前記凸部を形成することが好ましい。
この方法によれば、例えば着色層を区分するように凸部をストライプ状(スジ状)に形成する場合に比べて、着色層と凸部との接触面積が増えるので、着色層の凸部に対する密着性が向上した有機EL装置を製造することができる。
【0021】
[適用例12]上記適用例に係る有機EL装置の製造方法において、前記カラーフィルター形成工程は、ねらいの膜厚が薄い順に、赤、緑、青の前記着色層を形成することが好ましい。
この方法によれば、赤、緑、青の着色層はスピンコート法を用いて形成される。したがって、膜厚が薄い順に着色層を形成することによって、薄い膜厚の着色層を覆って、感光性樹脂材料が塗布されるので、先に形成された着色層に対して厚い膜厚の着色層をねらい通りに形成し易い。
【0022】
[適用例13]本適用例に係る電子機器は、上記適用例に記載の有機EL装置を備えたことを特徴とする。
本適用例によれば、優れた表示品質を有する電子機器を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を具体化した実施形態について図面に従って説明する。なお、使用する図面は、説明する部分が認識可能な状態となるように、適宜拡大または縮小して表示している。
【0025】
なお、以下の形態において、例えば「基板上に」と記載され、特別な記載がなければ、基板の上に接するように配置される場合、または基板の上に他の構成物を介して配置される場合、または基板の上に一部が接するように配置され、一部が他の構成物を介して配置される場合を含んでいるものとする。
【0026】
(第1実施形態)
<有機EL装置>
まず、本実施形態の有機EL装置について、
図1〜
図4を参照して説明する。
図1は第1実施形態の有機EL装置の電気的な構成を示す等価回路図、
図2は第1実施形態の有機EL装置の構成を示す概略平面図、
図3はサブ画素の配置を示す概略平面図、
図4は
図3のA−A’線に沿ったサブ画素の構造を示す概略断面図である。
【0027】
図1に示すように、本実施形態の有機EL装置100は、互いに交差する複数の走査線12及び複数のデータ線13と、複数のデータ線13のそれぞれに対して並列する複数の電源線14とを有している。複数の走査線12が接続される走査線駆動回路16と、複数のデータ線13が接続されるデータ線駆動回路15とを有している。また、複数の走査線12と複数のデータ線13との各交差部に対応してマトリックス状に配置された発光画素である複数のサブ画素18を有している。
【0028】
サブ画素18は、発光素子としての有機EL素子30と、有機EL素子30の駆動を制御する画素回路20とを有している。
【0029】
有機EL素子30は、陽極としての画素電極31と、陰極としての対向電極33と、画素電極31と対向電極33との間に設けられた機能層32とを有している。このような有機EL素子30は電気的にダイオードとして表記することができる。なお、詳しくは後述するが、対向電極33は複数のサブ画素18に亘る共通陰極として形成されている。
【0030】
画素回路20は、スイッチング用トランジスター21と、蓄積容量22と、駆動用トランジスター23とを含んでいる。2つのトランジスター21,23は、例えばnチャネル型もしくはpチャネル型の薄膜トランジスター(TFT;Thin Film Transistor)やMOSトランジスターを用いて構成することができる。
【0031】
スイッチング用トランジスター21のゲートは走査線12に接続され、ソースまたはドレインのうち一方がデータ線13に接続され、ソースまたはドレインのうち他方が駆動用トランジスター23のゲートに接続されている。
駆動用トランジスター23のソースまたはドレインのうち一方が有機EL素子30の画素電極31に接続され、ソースまたはドレインのうち他方が電源線14に接続されている。駆動用トランジスター23のゲートと電源線14との間に蓄積容量22が接続されている。
【0032】
走査線12が駆動されてスイッチング用トランジスター21がオン状態になると、そのときにデータ線13から供給される画像信号に基づく電位がスイッチング用トランジスター21を介して蓄積容量22に保持される。該蓄積容量22の電位すなわち駆動用トランジスター23のゲート電位に応じて、駆動用トランジスター23のオン・オフ状態が決まる。そして、駆動用トランジスター23がオン状態になると、電源線14から駆動用トランジスター23を介して画素電極31と対向電極33とに挟まれた機能層32にゲート電位に応じた量の電流が流れる。有機EL素子30は、機能層32を流れる電流量に応じて発光する。
【0033】
図2に示すように、有機EL装置100は、素子基板10を有している。素子基板10には、表示領域E0(図中、一点鎖線で表示)と、表示領域E0の外側に非表示領域E3とが設けられている。表示領域E0は、実表示領域E1(図中、二点鎖線で表示)と、実表示領域E1を囲むダミー領域E2とを有している。
【0034】
実表示領域E1には、発光画素としてのサブ画素18がマトリックス状に配置されている。サブ画素18は、前述したように発光素子としての有機EL素子30を備えており、スイッチング用トランジスター21及び駆動用トランジスター23の動作に伴って、青(B)、緑(G)、赤(R)のうちいずれかの色の発光が得られる構成となっている。
【0035】
本実施形態では、同色の発光が得られるサブ画素18が第1の方向に配列し、異なる色の発光が得られるサブ画素18が第1の方向に対して交差(直交)する第2の方向に配列した、所謂ストライプ方式のサブ画素18の配置となっている。以降、上記第1の方向をY方向とし、上記第2の方向をX方向として説明する。なお、素子基板10におけるサブ画素18の配置はストライプ方式に限定されず、モザイク方式、デルタ方式であってもよい。
【0036】
ダミー領域E2には、主として各サブ画素18の有機EL素子30を発光させるための周辺回路が設けられている。例えば、
図2に示すように、X方向において実表示領域E1を挟んだ位置にY方向に延在して一対の走査線駆動回路16が設けられている。一対の走査線駆動回路16の間で実表示領域E1に沿った位置に検査回路17が設けられている。
【0037】
素子基板10のX方向に平行な一辺部(図中の下方の辺部)に、外部駆動回路との電気的な接続を図るためのフレキシブル回路基板(FPC)43が接続されている。FPC43には、FPC43の配線を介して素子基板10側の周辺回路と接続される駆動用IC44が実装されている。駆動用IC44は前述したデータ線駆動回路15を含むものであり、素子基板10側のデータ線13や電源線14は、フレキシブル回路基板43を介して駆動用IC44に電気的に接続されている。
【0038】
表示領域E0と素子基板10の外縁との間、つまり非表示領域E3には、例えば各サブ画素18の有機EL素子30の対向電極33に電位を与えるための配線29などが形成されている。配線29は、FPC43が接続される素子基板10の辺部を除いて、表示領域E0を囲むように素子基板10に設けられている。
【0039】
次に、
図3を参照してサブ画素18の平面的な配置、とりわけ画素電極31の平面的な配置について説明する。
図3に示すように、青(B)の発光が得られるサブ画素18B、緑(G)の発光が得られるサブ画素18G、赤(R)の発光が得られるサブ画素18RがX方向に順に配列している。同色の発光が得られるサブ画素18はY方向に隣り合って配列している。X方向に配列した3つのサブ画素18B,18G,18Rを1つの画素19として表示がなされる構成になっている。X方向におけるサブ画素18B,18G,18Rの配置ピッチは5μm未満である。X方向に0.5μm〜1.0μmの間隔を置いてサブ画素18B,18G,18Rが配置されている。Y方向におけるサブ画素18B,18G,18Rの配置ピッチはおよそ10μm未満である。
【0040】
サブ画素18における画素電極31は略矩形状であって、長手方向がY方向に沿って配置されている。画素電極31を発光色に対応させて画素電極31B,31G,31Rと呼ぶこともある。各画素電極31B,31G,31Rの外縁を覆って絶縁膜27が形成されている。これによって、各画素電極31B,31G,31R上に開口部27aが形成され、開口部27a内において画素電極31B,31G,31Rのそれぞれが露出している。開口部27aの平面形状もまた略矩形状となっている。
なお、
図3では、異なる色のサブ画素18B,18G,18Rの配置は、X方向において左側から青(B)、緑(G)、赤(R)の順になっているが、これに限定されるものではない。例えば、X方向において、左側から赤(R)、緑(G)、青(B)の順であってもよい。
【0041】
次に、
図4を参照してサブ画素18B,18G,18Rの構造について説明する。
図4に示すように、有機EL装置100は、本発明における基板としての基材11と、基材11上に順に形成された反射層25、透明層26、画素電極31B,31G,31R、機能層32、共通陰極である対向電極33を有する。また、対向電極33を覆う封止層34と、封止層34上に形成されたカラーフィルター36とを有する。さらに、カラーフィルター36を保護するために、透明樹脂層42を介して配置された対向基板41を有する。素子基板10は基材11からカラーフィルター36までを含むものである。なお、
図4では、素子基板10における画素回路20の駆動用トランジスター23などの構成について、図示を省略した。
【0042】
有機EL装置100は、機能層32から発した光がカラーフィルター36を透過して対向基板41側から取り出されるトップエミッション方式が採用されている。したがって、基材11は透明な例えばガラスなどの基板だけでなく、不透明な例えばシリコンやセラミックスなどの基板を用いることができる。対向基板41は透明な例えばガラスなどの基板である。
【0043】
基材11上に形成される反射層25は、Al(アルミニウム)やAg(銀)、あるいはこれらの光反射性を有する金属の合金を用いることができる。
【0044】
透明層26は、後に形成される画素電極31と反射層25との電気的な絶縁を図るものであって、例えばSiOx(酸化シリコン)などの無機絶縁膜を用いることができる。
【0045】
サブ画素18B,18G,18Rに対応して、透明層26上に設けられた画素電極31B,31G,31Rは、例えばITO(Indium Tin Oxide)やIZO(Indium Zinc Oxide)などの透明導電膜からなり、互いに膜厚が異なっている。具体的には、青(B)、緑(G)、赤(R)の順に膜厚が厚くなっている。
【0046】
機能層32は白色光が得られる有機発光層を含み、サブ画素18B,18G,18Rに跨って共通に形成されている。なお、白色光は、青(B)、緑(G)、赤(R)の発光が得られる有機発光層を組み合わせることにより実現できる。また、青(B)と黄(Y)の発光が得られる有機発光層を組み合わせても擬似白色光を得ることができる。
【0047】
機能層32を覆う対向電極33は、例えばMgAg(マグネシウム銀)合金からなり、光透過性と光反射性とを兼ね備えるように膜厚が制御されている。
【0048】
封止層34は、対向電極33側から第1封止層34a、平坦化層34b、第2封止層34cが順に積層された構造となっている。
第1封止層34aと第2封止層34cとは、無機材料を用いて形成されている。無機材料としては、水分や酸素などを通し難い、例えばSiOx(酸化シリコン)、SiNx(窒化シリコン)、SiOxNy(酸窒化シリコン)、AlxOy(酸化アルミニウム)などが挙げられる。第1封止層34a及び第2封止層34cを形成する方法としては真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッター法、CVD法などが挙げられる。有機EL素子30に熱などのダメージを与え難い点で、真空蒸着法やイオンプレーティング法を採用することが望ましい。第1封止層34a及び第2封止層34cの膜厚は、成膜時にクラックなどが生じ難く、且つ透明性が得られるように、50nm〜1000nm、好ましくは200nm〜400nmとなっている。
【0049】
平坦化層34bは、透明性を有し、例えば、熱または紫外線硬化型のエポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂のいずれかの樹脂材料を用いて形成することができる。また、塗布型の無機材料(酸化シリコンなど)を用いて形成してもよい。平坦化層34bは、複数の有機EL素子30を覆った第1封止層34aに積層して形成されている。第1封止層34aの表面は、厚みが異なる画素電極31B,31G,31Rの影響を受けて凹凸が生ずるので、該凹凸を緩和するため、1μm〜5μmの膜厚で平坦化層34bを形成することが好ましい。これによって、封止層34上に形成されるカラーフィルター36が該凹凸の影響を受け難くなる。
【0050】
平坦化層34bを覆う第2封止層34cは、前述した無機材料を用いて形成されている。
【0051】
カラーフィルター36は、封止層34の上に、フォトリソグラフィー法で形成された青(B)、緑(G)、赤(R)の着色層36B,36G,36Rを含んで構成されている。着色層36B,36G,36Rは、サブ画素18B,18G,18Rに対応して形成される。
また、封止層34上において、異なる色のサブ画素18B,18G,18Rの着色層36B,36G,36Rの間に光透過性の凸部35が設けられている。封止層34上における凸部35の高さは、着色層36B,36G,36Rの膜厚よりも低い(小さい)。凸部35の構成について、詳しくは後述するが、封止層34上において凸部35間に各着色層36B,36G,36Rが形成されると共に、凸部35は着色層36B,36G,36Rのいずれかにより覆われた状態となっている。
【0052】
本実施形態の有機EL装置100は、反射層25と対向電極33との間で光共振器が構成されている。サブ画素18B,18G,18Rごとの画素電極31B,31G,31Rの膜厚が異なることにより、それぞれの光共振器における光学的な距離が異なっている。これにより、サブ画素18B,18G,18Rのそれぞれにおいて各色に対応した共振波長の光が得られる構成となっている。
なお、光共振器における光学的な距離の調整方法は、これに限定されず、例えばサブ画素18B,18G,18Rごとに、基材11上における透明層26の膜厚や透明層26を構成する材料を異ならせてもよい。
【0053】
各サブ画素18B,18G,18Rの光共振器から発せられた共振光は、各着色層36B,36G,36Rを透過して透明な対向基板41側から射出される。カラーフィルター36が封止層34上に形成されているため、カラーフィルター36が対向基板41側に形成される場合に比べて、サブ画素18B,18G,18R間での光漏れによる混色が低減される。このようなサブ画素18B,18G,18Rの構造は、サブ画素18B,18G,18Rの平面的な大きさが小さくなる、つまり高精細になるほど混色を効果的に低減できる。
【0054】
次に、封止層34上における凸部35と着色層36B,36G,36Rとの関係について、
図5及び
図6を参照して説明する。
図5(a)はサブ画素における凸部と着色層の配置を示す概略平面図、
図5(b)は
図5(a)のA−A’線に沿ったカラーフィルターの要部断面図、
図5(c)は
図5(b)の要部拡大断面図である。
図6(a)は変形例の凸部と着色層の配置を示す概略平面図、
図6(b)は
図6(a)のA−A’線に沿ったカラーフィルターの要部断面図、
図6(c)は
図6(a)のC−C’線に沿った要部拡大断面図である。
【0055】
図5(a)及び(b)に示すように、本実施形態の有機EL装置100のカラーフィルター36は、Y方向に同色の着色層が延在して配置されている。つまり、青(B)の着色層36Bは、Y方向に配列する複数のサブ画素18B(画素電極31B)に跨ってストライプ状に配置されている。同様に、緑(G)の着色層36Gは、Y方向に配列する複数のサブ画素18G(画素電極31G)に跨ってストライプ状に配置されている。赤(R)の着色層36Rは、Y方向に配列する複数のサブ画素18R(画素電極31R)に跨ってストライプ状に配置されている。各着色層36B,36G,36Rの境は、X方向に配列する隣り合うサブ画素18の画素電極31の間のほぼ中央に位置している。
【0056】
図5(b)に示すように、封止層34側において、異なる色の着色層36B,36G,36Rの間には、これらの着色層36B,36G,36Rをそれぞれ区分するように、封止層34上に凸部35が配置されている。したがって、封止層34上において凸部35もY方向に延在するようにストライプ状(スジ状)に配置されている。
【0057】
図5(a)のA−A’線に沿って切った凸部35の断面形状は、台形であって、凸部35の底面は、
図5(a)に示すように、隣り合うサブ画素18の画素電極31間に位置している。
なお、各画素電極31の外縁は、絶縁膜27により被覆され、絶縁膜27に設けられた開口部27aにおいて画素電極31は機能層32と接している。サブ画素18において開口部27aが実質的に発光に寄与する領域であるため、凸部35の底面が開口部27a以外の画素電極31と重なるように凸部35を形成してもよい。
【0058】
本実施形態において、光透過性の凸部35は、着色材料を含まない感光性樹脂材料を用いてフォトリソグラフィー法で形成されている。すなわち、凸部35と着色層36B,36G,36Rの主材料は同じである。封止層34上における凸部35の幅はおよそ0.5μm〜1.0μm(好ましくは底面の幅が0.7μm、頭頂部35aの幅が0.5μm)、高さはおよそ1.1μmである。凸部35の高さは、着色層36B,36G,36Rの平均膜厚tよりも低く(小さく)、平均膜厚tの1/2以上であることが好ましい。
【0059】
図5(c)に示すように、本実施形態の着色層36B,36G,36Rの膜厚は、緑(G)、青(B)、赤(R)の順に厚くなっている。具体的には、着色層36Gの平均膜厚tgはおよそ1.6μm、着色層36Bの平均膜厚tbはおよそ1.9μm、着色層36Rの平均膜厚trはおよそ2.0μmである。これは、各色の視感度と、ホワイトバランスとを考慮して設定されたものである。
【0060】
着色層36B,36G,36Rの形成方法について、詳しくは後述するが、サブ画素18Gでは、X方向において向かい合う凸部35間を埋めると共に、凸部35の頭頂部35aの少なくとも一部を覆うように着色層36Gが形成されている。着色層36Gに隣り合う着色層36Bは、凸部35の側壁35bに接すると共に、着色層36Bの一方の縁部は凸部35の頭頂部35aを覆った着色層36Gの縁部と重なっている。同様に、着色層36Gに隣り合う着色層36Rは、凸部35の側壁35bに接すると共に、着色層36Rの一方の縁部は凸部35の頭頂部35aを覆った着色層36Gの縁部と重なっている。つまり、平均膜厚tgが最も薄い(小さい)着色層36Gは、封止層34と、凸部35の頭頂部35a及び側壁35bと、着色層36Bの縁部及び着色層36Rの縁部と接するように形成されている。
【0061】
(凸部の変形例)
凸部35は、
図5(a)に示すようにY方向に延在したストライプ状に配置されることに限定されない。例えば、
図6(a)に示すように、各サブ画素18の画素電極31における開口部27aを囲むように、X方向とY方向とに延在して格子状に配置されていてもよい。したがって、
図6(b)に示すように、X方向では、頭頂部35aを覆うようにして凸部35間に着色層36B,36G,36Rがそれぞれ充填される。また、
図6(c)に示すように、Y方向において同色のサブ画素18R間に位置する凸部35は、頭頂部35aを含めて、サブ画素18Rに対応する着色層36Rによって覆われる。このようにすれば、前述したストライプ状の凸部35間に形成された着色層36Rに対して、変形例の着色層36Rの方が凸部35に対する接触面積が増えるので、着色層36Rの密着性が向上する。他の着色層36B,36Gにおいても同様に密着性が向上する。
【0062】
<有機EL装置の製造方法>
次に、本実施形態の有機EL装置の製造方法について、
図7及び
図8を参照して説明する。
図7は第1実施形態の有機EL装置の製造方法を示すフローチャート、
図8(a)〜(f)は第1実施形態の有機EL装置の製造方法を示す概略断面図である。
【0063】
図7に示すように、本実施形態の有機EL装置100の製造方法は、封止層形成工程(ステップS1)と、凸部形成工程(ステップS2)と、カラーフィルター形成工程(ステップS3)と、基板貼り合わせ工程(ステップS4)とを備えている。なお、基材11上に画素回路20や有機EL素子30などを形成する方法は、公知の方法を採用することができる。したがって、
図8(a)〜(f)では、基材11上における画素回路20の駆動用トランジスター23など構成や反射層25、透明層26の表示を省略している。以降、本発明の特徴部分である、ステップS1〜ステップS3を重点的に説明する。
【0064】
図7の封止層形成工程(ステップS1)では、
図8(a)に示すように、まず、対向電極33を覆う第1封止層34aを形成する。第1封止層34aを形成する方法としては、例えばシリコンの酸化物を真空蒸着する方法が挙げられる。第1封止層34aの膜厚はおよそ200nm〜400nmである。次に、第1封止層34aを覆う平坦化層34bを形成する。平坦化層34bの形成方法としては、例えば、透明性を有するエポキシ樹脂と、エポキシ樹脂の溶媒とを含む溶液を用い、印刷法やスピンコート法で該溶液を塗布して乾燥することにより、エポキシ樹脂からなる平坦化層34bを形成する。平坦化層34bの膜厚は1μm〜5μmが好ましく、この場合、3μmとした。
なお、平坦化層34bは、エポキシ樹脂などの有機材料を用いて形成することに限定されず、前述したように、塗布型の無機材料を印刷法により塗布し、これを乾燥・焼成することによって、平坦化層34bとして膜厚がおよそ3μmの酸化シリコン膜を形成してもよい。
続いて、平坦化層34bを覆う第2封止層34cを形成する。第2封止層34cの形成方法は、第1封止層34aと同じであって、例えばシリコンの酸化物を真空蒸着する方法が挙げられる。第2封止層34cの膜厚もおよそ200nm〜400nmである。そして、ステップS2へ進む。
【0065】
図7の凸部形成工程(ステップS2)では、封止層34上に凸部35を形成する。凸部35の形成方法としては、着色材料を含まない感光性樹脂材料をスピンコート法を用いて塗布してプレベークすることにより、膜厚がおよそ1μm程度の感光性樹脂層を形成する。感光性樹脂材料はポジタイプでもネガタイプでもよい。フォトリソグラフィー法を用いて、感光性樹脂層を露光・現像することにより、
図8(b)に示すように、封止層34上に凸部35を形成する。露光及び現像条件を調整して、底面の幅がおよそ0.7μmとなるように台形状の凸部35を形成する。基材11上における凸部35の形成位置は、隣り合う異なる色のサブ画素18B,18G,18Rに対応する画素電極31B,31G,31Rの間である。そして、ステップS3へ進む。
【0066】
図7のカラーフィルター形成工程(ステップS3)では、まず、
図8(c)に示すように、凸部35が形成された封止層34の表面に、緑色の着色材料を含む感光性樹脂材料をスピンコート法により塗布して、感光性樹脂層50gを形成する。感光性樹脂層50gを露光・現像することにより、
図8(d)に示すように、画素電極31Gの上方に位置する凸部35間を埋めると共に、凸部35の頭頂部を覆うように、ねらいの膜厚が最も薄い(小さい)着色層36Gを形成する。着色層36Gの平均膜厚はおよそ1.6μmである。
次に、着色層36Gが形成された封止層34の表面に、青色の着色材料を含む感光性樹脂材料をスピンコート法により塗布して、感光性樹脂層50bを形成する。感光性樹脂層50bを露光・現像することにより、着色層36Bを形成する。着色層36Bの平均膜厚はおよそ1.9μmである。
次に、着色層36Bと着色層36Gとが形成された封止層34の表面に、赤色の着色材料を含む感光性樹脂材料をスピンコート法により塗布して、感光性樹脂層50rを形成する。感光性樹脂層50rを露光・現像することにより、着色層36Rを形成する。着色層36Rの平均膜厚はおよそ2.0μmである。
つまり、カラーフィルター形成工程では、ねらいの膜厚が薄い(小さい)順に、着色層36G,36B,36Rを形成している。
これにより、
図8(e)に示すように、画素電極31Bの上方に位置する凸部35間に着色層36Bが形成され、画素電極31Gの上方に位置する凸部35間に着色層36Gが形成され、画素電極31Rの上方に位置する凸部35間に着色層36Rが形成される。
【0067】
着色層36GのX方向における縁部の一方(
図8(e)では左側)は、凸部35の頭頂部を覆うと共に、着色層36Bの縁部によって覆われる。着色層36GのX方向における縁部の他方(
図8(e)では右側)は、凸部35の頭頂部を覆うと共に、着色層36Rの縁部によって覆われる。着色層36BのX方向における縁部の一方(
図8(e)では左側)は、凸部35の頭頂部を覆うと共に、着色層36Rの縁部によって覆われる。着色層36BのX方向における縁部の他方(
図8(e)では右側)は、着色層36Gの縁部の一方を覆う。着色層36RのX方向における縁部の一方(
図8(e)では左側)は、着色層36Gの縁部を覆う。着色層36RのX方向における縁部の他方(
図8(e)では右側)は、着色層36Bの縁部を覆う。そして、ステップS4へ進む。
【0068】
図7の基板貼り合わせ工程(ステップS4)では、
図8(f)に示すように、カラーフィルター36を覆うように接着性を有する透明樹脂材料を塗布する。そして、透明樹脂材料が塗布された基材11に対して対向基板41を所定の位置に対向配置して、例えば対向基板41を基材11側に押圧する。これにより、透明樹脂材料からなる透明樹脂層42を介して素子基板10と対向基板41とを貼り合わせる。透明樹脂材料は、例えば熱硬化型のエポキシ樹脂である。透明樹脂層42の厚みはおよそ10μm〜100μmである。
【0069】
この後に、
図2に示すように、素子基板10の端子部にFPC43を実装して、有機EL装置100が完成する。
【0070】
次に、本実施形態の有機EL装置100における視角特性について、比較例を挙げて説明する。
図9は比較例の有機EL装置と本実施形態の有機EL装置との視角特性を説明する図であり、
図9(a)は比較例の有機EL装置を示す模式断面図、
図9(b)は第1実施形態の有機EL装置を示す模式断面図、
図9(c)は相対輝度に係る視角特性を示すグラフ、
図9(d)は色度変化に係る視角特性を示すグラフである。
【0071】
図9(a)に示すように、比較例の有機EL装置300は、有機EL素子30を備えたサブ画素の境界において異なる色の着色層が重なった、所謂、重ねCFと呼ばれる構成を有するものである。
図9(b)に示した本実施形態の有機EL装置100との視角特性を比較するため、着色層36B,36G,36Rの配置と平均膜厚の傾向は、有機EL装置100と同じとした。比較例の有機EL装置300では、着色層36G(平均膜厚が1.1μm)、着色層36B(平均膜厚が1.4μm)、着色層36R(平均膜厚が1.5μm)の順に平均膜厚が厚くなっている。着色層36Gの平均膜厚が最も薄く(小さく)、着色層36Gの一方の縁部(
図9(a)の左側)は着色層36Bの縁部で覆われ、着色層36Gの他方の縁部(
図9(a)の右側)は着色層36Rの縁部で覆われている。着色層36Bの一方の縁部(
図9(a)の左側)は着色層36Rの縁部で覆われている。
【0072】
本実施形態の有機EL装置100と比較例の有機EL装置300との視角特性は、青色のサブ画素における
図9(c)に示した相対輝度と、
図9(d)に示した色度変化(Δu’v’)とにおいて、代表して比較されている。基材11上において青色のサブ画素を法線方向(0°)から見たときを基準として、法線に対してX方向に±20°の範囲で、相対輝度、色度変化(Δu’v’)を光学シミュレーターを用いて数値化してグラフ化した。なお、色度変化(Δu’v’)は、均等色度図であるu’v’色度図(CIE 1976 UCS色度図)における色度変化を示すものである。
青色のサブ画素を比較対象としたのは、有機EL素子30からの発光が本来透過すべき着色層と異なる色の着色層を透過したときの相対輝度変化や色度変化(Δu’v’)の程度が、緑色や赤色のサブ画素に比べて顕著となるおそれがあることから選定されたものである。
また、視角特性の範囲を基材11の法線に対してX方向に±20°としたのは、後述する電子機器としてのヘッドマウントディスプレイ1000(
図12参照)に有機EL装置100を搭載したときに、求められる条件であることに起因している。本実施形態の有機EL装置100のようなマイクロディスプレイは、一般的にレンズなどの光学系を介して使用者が画像(表示光)を視認する。したがって、光学系に飲み込まれる表示光の光学系の光軸に対する角度範囲が規定されている。
【0073】
比較例の有機EL装置300では、X方向に+20°の角度で有機EL素子30から発した光はサブ画素の境界において、緑の着色層36Gと青の着色層36Bの縁部とを透過する。X方向に−20°の角度で有機EL素子30から発した光は青の着色層36Bと赤の着色層36Rの縁部とを透過する。
【0074】
本実施形態の有機EL装置100では、X方向に+20°の角度で有機EL素子30から発した光は、サブ画素の境界において、凸部35と、凸部35の頭頂部を覆う緑の着色層36Gと、青の着色層36Bの縁部とを透過する。X方向に−20°の角度で有機EL素子30から発した光は、サブ画素の境界において、凸部35と、凸部35の頭頂部を覆う青の着色層36Bと、赤の着色層36Rの縁部とを透過する。
【0075】
図9(c)に示すように、有機EL装置100(透明凸部付きCF)と有機EL装置300(重ねCF)とでは、有機EL装置300(重ねCF)のほうがサブ画素の境界において異なる色の着色層が重なり合った部分を光が透過する割合が有機EL装置100よりも増えることから、視野角を0°±20°に振ったときの相対輝度の変化は、有機EL装置100(透明凸部付きCF)のほうが小さくなる。また、有機EL装置300では、光の透過率が緑の着色層36Gよりも低い赤の着色層36Rを透過する割合が−20°側で増えるため、+20°よりも−20°側の相対輝度が低下し、視角特性上の相対輝度変化の対称性も有機EL装置100に比べて劣っている。
【0076】
色度変化についても、同じ理由から、
図9(d)に示すように、有機EL装置100(透明凸部付きCF)と有機EL装置300(重ねCF)とでは、視野角が0°±10°の範囲ではそれほど差が生じないが、視野角を10°から20°へ、あるいは−10°から−20°へさらに振ったときの色度変化は、有機EL装置300(重ねCF)のほうが有機EL装置100(透明凸部付きCF)よりも大きくなる。
【0077】
視角特性において相対輝度変化と色度変化とは、視野角が変化しても影響を受け難いことが理想的だが、視野角の変化に対する相対輝度変化及び色度変化における対称性が保たれていることも重要な要素である。本実施形態の有機EL装置100(透明凸部付きCF)によれば、比較例の有機EL装置300(重ねCF)に比べて、±20°の視野角範囲で、相対輝度変化と色度変化とにおける視角特性の対称性が実現されている。
【0078】
上記第1実施形態の有機EL装置100及びその製造方法によれば、以下の効果が得られる。
(1)X方向における異なる色のサブ画素18間に相当する封止層34上に、着色層36B,36G,36Rよりも高さが低く、光透過性を有する凸部35が形成されている。したがって、サブ画素18間において、異なる色の着色層を互いに重ねる場合に比べて、有機EL素子30から発した光が本来透過すべき着色層に対して異なる色の着色層を透過する割合が減少するので、相対輝度変化と色度変化とにおける視角特性の対称性が実現された有機EL装置100を提供及び製造することができる。
(2)凸部35は着色材料を含まない感光性樹脂材料を用いて形成されており、凸部35とカラーフィルター36の着色層36B,36G,36Rとは主材料が同じである。また、膜厚が薄い順に着色層36B,36G,36Rが形成され、着色層36B,36Gのうちいずれか1色の着色層により凸部35の頭頂部35aが覆われ、頭頂部35aを覆った着色層を他の色の着色層の縁部が覆っている。したがって、凸部35に対する着色層36B,36G,36Rの密着性が凸部35がない場合に比べて向上する。すなわち、封止層34に対する着色層36B,36G,36Rの密着性が向上し、着色層36B,36G,36Rが熱などの環境変化に対して剥がれ難い、高い信頼性を有する有機EL装置100を提供及び製造することができる。
(3)着色層36B,36G,36Rは、凸部35が形成された封止層34の表面を覆うようにスピンコート法で塗布されて形成された着色材料を含む感光性樹脂層を露光・現像して形成されている。したがって、凸部35が形成されていない場合に比べて、凸部35間に感光性樹脂材料が充填されて保持されるので、着色層36B,36G,36Rを厚膜化し易い。言い換えれば、感光性樹脂材料を効率的に使用して、ねらいの膜厚を有する着色層36B,36G,36Rを形成することができる。
(4)封止層34上における凸部35のX方向に沿った断面形状は台形であって、封止層34に接する底面の面積は頭頂部35aの面積よりも大きい。したがって、視角特性における対称性を確保しつつ、封止層34に対する凸部35の密着性を確保できる。
【0079】
(第2実施形態)
<他の有機EL装置及びその製造方法>
次に、第2実施形態の有機EL装置について、
図10を参照して説明する。
図10は第2実施形態の有機EL装置のサブ画素の構造を示す要部概略断面図である。第2実施形態の有機EL装置は、第1実施形態の有機EL装置100に対して凸部35の構成を異ならせたものである。したがって、第1実施形態と同じ構成には同じ符号を付して詳細な説明は省略する。また、
図10は、
図4に相当するものであって、
図4と同様に基材11上における画素回路20を構成する駆動用トランジスター23などや反射層25、透明層26の表示を省略している。
【0080】
図10に示すように、本実施形態の有機EL装置200は、基材11と、基材11上においてサブ画素18B,18G,18Rごとに形成された複数の有機EL素子30と、複数の有機EL素子30を覆って封止する封止層34と、封止層34上に形成されたカラーフィルター36とを備えた素子基板10を有する。素子基板10のカラーフィルター36側に透明樹脂層42を介して対向配置された対向基板41を有する。有機EL装置200は、各有機EL素子30からの発光が、カラーフィルター36の着色層36B,36G,36Rを透過して対向基板41から取り出されるトップエミッション型である。なお、サブ画素18B,18G,18Rの配置は、これに限定されず、例えば、
図10において左側からサブ画素18R、サブ画素18G、サブ画素18Bの順であってもよい。
【0081】
有機EL素子30は、陽極としての画素電極31と、陰極としての対向電極33と、画素電極31と対向電極33との間に形成された白色発光が得られる機能層32とを有する。画素電極31はサブ画素18B,18G,18Rごとに独立して設けられ、サブ画素18の色に対応させて画素電極31B,31G,31Rと呼ぶこともある。対向電極33は、複数の有機EL素子30に共通する共通陰極として形成されている。機能層32もまた、各画素電極31B,31G,31Rに跨って共通に形成されている。
【0082】
基材11上において複数の有機EL素子30を覆う封止層34は、対向電極33側から第1封止層34a、平坦化層34b、第2封止層34cが順に積層されたものである。
【0083】
サブ画素18間に相当する封止層34上に凸部37が形成されている。上記第1実施形態の有機EL装置100では、凸部35は光透過性を有していたが、本実施形態の凸部37は遮光性を有している。具体的には、凸部37はAl(アルミニウム)などの金属材料を用いて形成されている。封止層34上における平面的な凸部37の配置は、上記第1実施形態の凸部35と同じようにY方向に延在するストライプ状であってもよいが、
図6(a)に示したように、サブ画素18B,18G,18Rを区画するように格子状に配置されることが好ましい。すなわち、凸部37はBM(ブラックマトリックス)と呼ばれるものに相当する。しかしながら、一般的なBMと違って、単にサブ画素18を囲んで遮光するだけでなく、凸部37は、封止層34上において着色層36B,36G,36Rの平均膜厚よりも低く(小さく)、該平均膜厚の1/2以上の高さを有するものである。また、X方向における凸部37の断面形状は台形である。以降、凸部37をBM37と呼ぶ。
【0084】
有機EL装置200の製造方法は、上記第1実施形態の有機EL装置100の製造方法における凸部形成工程(ステップS2)において、例えば、封止層34の表面にAl膜を膜厚がおよそ1μm程度となるように成膜し、フォトリソグラフィー法によりパターニングして格子状のBM(凸部)37を形成する。断面形状が台形となるようにBM(凸部)37を形成する。BM(凸部)37の底面のX方向における幅は、0.5μm〜1.0μm、好ましくは0.7μmである。ステップS2以外の工程は、第1実施形態と同じである。
【0085】
図11は、重ねCFと、透明凸部付きCFと、BM付きCFとの視角特性を示す、(a)が相対輝度の視角特性のグラフ、(b)が色度変化の視角特性を示すグラフである。
なお、
図11(a)及び(b)は、先に示した
図9(c)及び(d)のグラフに有機EL装置200(BM付きCF)のグラフを加えたものである。
図11(a)に示すように、BM付きCFを含む本実施形態の有機EL装置200は、第1実施形態の有機EL装置100(透明凸部付きCF)よりも、光の利用効率の観点で劣るので、視野角の変化に対する相対輝度の変化が大きい。その一方で±20°の視野角範囲では、相対輝度変化の対称性は、比較例の有機EL装置300(重ねCF)よりも優れている。
【0086】
また、
図11(b)に示すように、本実施形態の有機EL装置200(BM付きCF)は、BM37を備えることによって、有機EL装置100(透明凸部付きCF)や比較例の有機EL装置300(重ねCF)よりも色度変化(Δu’v’)が小さい、すなわち色度変化(Δu’v’)の視角依存性が改善されている。
【0087】
本実施形態の有機EL装置200(BM付きCF)によれば、優れた対称性を有する視角特性を実現することができる。言い換えれば、視角範囲における色度変化を極力抑えたい場合には、有機EL装置200が有効である。その一方で、視角範囲における色度変化の対称性と、相対輝度変化の抑制とが要求される場合には、第1実施形態の有機EL装置100のほうが有効である。
【0088】
また、封止層34上に透明凸部付きCFやBM付きCFを形成して、視角特性上の優れた対称性を実現する構成は、サブ画素18が高精細になるほど有効である。したがって、本発明が適用された有機EL装置100及び有機EL装置200は、X方向における配置ピッチがおよそ5μm未満の高精細なサブ画素18を備えたマイクロディスプレイである。
【0089】
(第3実施形態)
<電子機器>
次に、本実施形態の電子機器について、
図12を参照して説明する。
図12は、電子機器としてのヘッドマウントディスプレイを示す概略図である。
図12に示すように、本実施形態の電子機器としてのヘッドマウントディスプレイ(HMD)1000は、左右の目に対応して設けられた2つの表示部1001を有している。観察者Mはヘッドマウントディスプレイ1000を眼鏡のように頭部に装着することにより、表示部1001に表示された文字や画像などを見ることができる。例えば、左右の表示部1001に視差を考慮した画像を表示すれば、立体的な映像を見て楽しむこともできる。
【0090】
表示部1001には、上記第1実施形態の有機EL装置100(あるいは上記第2実施形態の有機EL装置200)が搭載されている。したがって、優れた表示品質を有すると共に、コストパフォーマンスに優れ小型で軽量なヘッドマウントディスプレイ1000を提供することができる。
【0091】
ヘッドマウントディスプレイ1000は、2つの表示部1001を有することに限定されず、左右のいずれかに対応させた1つの表示部1001を備える構成としてもよい。
【0092】
なお、上記有機EL装置100または上記有機EL装置200が搭載される電子機器は、ヘッドマウントディスプレイ1000に限定されない。例えば、パーソナルコンピューターや携帯型情報端末、ナビゲーター、ビューワー、ヘッドアップディスプレイなどの表示部を有する電子機器が挙げられる。
【0093】
本発明は、上記した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨あるいは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う有機EL装置及び該有機EL装置の製造方法ならびに該有機EL装置を適用する電子機器もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。上記実施形態以外にも様々な変形例が考えられる。以下、変形例を挙げて説明する。
【0094】
(変形例1)上記第1実施形態において、凸部35の頭頂部35aを覆う着色層の構成は、これに限定されない。凸部35が光透過性を有する場合、有機EL素子30の発光が凸部35を透過して、そのまま対向基板41側から射出されると、カラー表示において光漏れが生じてコントラストの低下に結びついてしまう。したがって、凸部35の高さは着色層36B,36G,36Rの平均膜厚よりも低く(小さく)なることが望ましく、且つ頭頂部35aは着色層36B,36G,36Rで覆われることが好ましい。よって、着色層36B,36G,36Rのいずれかで覆われることに限定されず、例えば、異なる2色の着色層が互いに凸部35の頭頂部35aと接する構成であってもよい。
【0095】
(変形例2)上記第1実施形態において、光透過性を有する凸部35は、感光性樹脂材料で形成されることに限定されない。例えば、CrOx(酸化クロム)、SiOxNy(酸化窒化シリコン)、AlOx(酸化アルミニウム)、TaOx(酸化タンタル)、TiOx(酸化チタン)などの誘電体材料を用いて凸部35を形成すれば、封止層34の最上層である無機材料からなる第2封止層34cに対して高い密着性を有する凸部35を形成することができる。
【0096】
(変形例3)上記第1実施形態の凸部35のX方向に沿った断面形状は、台形であることに限定されない。例えば、断面形状が基材11の法線方向に長い矩形状であってもよい。法線に対してX方向に±20°の視野角において、有機EL素子30から発せられた光が矩形状の凸部35を透過したとしても、凸部35は着色層によって覆われているので、視角特性における対称性を確保することができる。光透過性を有する矩形状の凸部35の形成方法としては、上記変形例2で挙げた誘電体材料を用いて形成された誘電体層を、例えばドライエッチングによって異方性エッチングして矩形状の凸部35を形成する方法が挙げられる。
【0097】
(変形例4)上記第1実施形態の有機EL装置100及び上記第2実施形態の有機EL装置200において、実表示領域E1に設けられる発光画素は、青(B)、緑(G)、赤(R)の発光に対応したサブ画素18B,18G,18Rに限定されない。例えば、上記3色以外の黄(Y)の発光が得られるサブ画素18Yを備えてもよい。これにより、色再現性をさらに高めることが可能となる。