(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記補償流量計算部は、前記吸引行程中は前記プランジャポンプ内の流体の発熱がないとして前記現在の上昇温度を計算する請求項2から4のいずれか一項に記載の送液装置。
前記補償流量計算部は、前記予圧行程中の前記プランジャポンプ内の流体の圧力を測定する圧力センサの出力から前記圧力上昇を計算する請求項2から5のいずれか一項に記載の送液装置。
前記補償流量計算部は、前記圧力上昇が、前記予圧行程中の前記プランジャポンプのプランジャ速度と前記吐出流路内の流体圧力の両方に比例するとして、計算から前記圧力上昇を求める請求項2から5のいずれか一項に記載の送液装置。
前記補償流量計算部は、前記吐出行程中の前記プランジャポンプ内の流体の単位時間あたりの熱膨張体積の減少量を前記補償流量とする請求項2から8のいずれか一項に記載の送液装置。
前記制御部は、前記補償流量を、前記1次側吐出行程中の前記1次側プランジャの速さを増やすと同時に前記2次側吸引行程中の前記2次側プランジャの速さを増やし、かつ、前記1次側プランジャの速さの増分の大きさを前記2次側プランジャの速さの増分の大きさよりも大きくすることで与える請求項10に記載の送液装置。
複数の前記プランジャポンプは、前記吸引流路と前記吐出流路の間に、前記吸引流路とは入口チェック弁をそれぞれ介し、前記吐出流路とは出口チェック弁をそれぞれ介して、並列に流体接続されており、
前記プランジャポンプは、ポンプヘッドと、前記ポンプヘッド内を軸方向に往復運動するプランジャと、前記ポンプヘッドと前記プランジャの間を封止するシール部材と、前記ポンプヘッドに設けられた入口流路及び出口流路と、前記プランジャを往復運動させる駆動機構をそれぞれ備え、
前記周期のうちに、
前記プランジャを前記ポンプヘッドから遠ざかる方向に動かして前記入口流路から前記ポンプヘッドに流体を吸引する前記吸引行程と、
前記プランジャを前記ポンプヘッドに近づける方向に動かして前記ポンプヘッド内の流体圧力を前記出口流路の流体圧力まで昇圧する前記予圧行程と、
前記予圧行程の後にさらに前記プランジャを前記ポンプヘッドに近づける方向に動かして前記ポンプヘッド内の流体を前記出口流路へ吐出する前記吐出行程と、が含まれており、
前記制御部は、前記補償流量を得るために、少なくとも1つの前記プランジャポンプのプランジャ速度を修正する請求項1から9のいずれか一項に記載の送液装置。
前記現在温度計算ステップは、前記吐出行程中の前記プランジャポンプ内の流体について、前記冷却後の上昇温度を前記現在の上昇温度とする請求項17又は18に記載の送液装置の送液制御方法。
前記現在温度計算ステップは、前記吸引行程中は前記プランジャポンプ内の流体の発熱がないとして前記現在の上昇温度を計算する請求項17から19のいずれか一項に記載の送液装置の送液制御方法。
前記圧力上昇計算ステップは、前記予圧行程中の前記プランジャポンプ内の流体の圧力を測定する圧力センサの出力から前記圧力上昇を計算する請求項17から20のいずれか一項に記載の送液装置の送液制御方法。
前記圧力上昇計算ステップは、前記圧力上昇が、前記予圧行程中の前記プランジャポンプのプランジャ速度と前記吐出流路内の流体圧力の両方に比例するとして、計算から前記圧力上昇を求める請求項17から20のいずれか一項に記載の送液装置の送液制御方法。
前記圧力上昇計算ステップは、前記予圧行程を行う前記プランジャポンプ内の流体温度を測定する温度計の出力を用い、前記測定された上昇温度に基づいて前記補償流量を計算するステップであって、
計算周期ごとに、
前記プランジャポンプ内の流体の上昇温度と残容量から流体の熱膨張体積を計算する熱膨張体積計算ステップと、
単位時間あたりの前記熱膨張体積の変化から前記補償流量を計算する補償流量計算ステップと、を含む請求項16に記載の送液装置の送液制御方法。
前記補償流量計算ステップは、前記吐出行程中の前記プランジャポンプ内の流体の単位時間あたりの熱膨張体積の減少量を補償流量とする請求項17から23のいずれか一項に記載の送液装置の送液制御方法。
前記修正ステップは、前記補償流量を、前記吐出行程中の前記プランジャポンプのプランジャ速さを増やすことで与える請求項16から24のいずれか一項に記載の送液装置の送液制御方法。
前記修正ステップは、前記補償流量を、前記吸引行程中の前記プランジャポンプのプランジャ速さを減らすことで与える請求項16から24のいずれか一項に記載の送液装置の送液制御方法。
前記修正ステップは、前記補償流量を、前記吐出行程中の前記プランジャポンプのプランジャ速さを増やすと同時に前記吸引行程中の前記プランジャポンプのプランジャ速さを増やし、かつ、前記吐出行程中の前記プランジャポンプのプランジャ速さの増分の大きさを前記吸引行程中の前記プランジャポンプのプランジャ速さの増分の大きさよりも大きくすることで与える請求項16から24のいずれか一項に記載の送液装置の送液制御方法。
【背景技術】
【0002】
図15に液体クロマトグラフの模式図を示す。
移動相びん101には水や有機溶媒などの移動相が貯留されている。移動相は流路配管102を通って送液ポンプ103によって後段へ高圧送液される。分析対象となるサンプルは、サンプルインジェクタ104によって移動相へ導入及び混合され、カラム105へと運ばれる。カラム105では、サンプル中の各成分物質がカラム及び移動相との親和性に依存して異なる時間だけ保持されたのち、カラム出口から溶出される。
【0003】
このようにして順次溶出された各成分物質は検出器106で検出される。検出器106を通り過ぎた移動相及び各成分物質は廃液びん107に排出される。検出器106で得られた信号は信号線108によってデータ処理装置109に転送され、各成分物質の定性処理や定量処理が実施される。
【0004】
図15では移動相びん101と送液ポンプ103が1つずつ描かれている。これはいわゆるアイソクラティック方式と呼ばれる構成である。他にも、複数(通常は最大で4種類)の移動相びんを設け、比例電磁弁を介して1台の送液ポンプに順次吸引させることで所望の移動相組成を実現する方法がある。これは低圧グラジエント方式と呼ばれる。
【0005】
また、複数(通常は最大で2種類)の移動相びんにそれぞれ1台の送液ポンプを対応させ、各送液ポンプの出口(かつサンプルインジェクタの前)で移動相を合流して所望の移動相組成を実現する方法もある。これは高圧グラジエント方式と呼ばれる。
【0006】
先述した液体クロマトグラフの原理からもわかるように、移動相を所望の組成に制御することは、分析結果の信頼性を担保するうえで必須の要求である。特に高圧グラジエント方式では、送液ポンプの流量安定性は移動相組成の再現性に直接的に影響を与える。また、検出器の種類によっては移動相の組成や圧力などの脈動がノイズとなって感知されてしまう場合もある。
【0007】
これらの理由から、液体クロマトグラフの送液ポンプには高い流量安定性(低脈動性能)が求められてきた。まず、液体クロマトグラフで利用される低流量(例えば数mL/min以下)を高圧(例えば数十MPa)で送液するために、一般にプランジャポンプ方式が用いられてきた。さらに、プランジャポンプでは送液が間欠的になってしまうため、2つのプランジャ流路を直列又は並列に接続し、間欠的な送液を交互に補うダブルプランジャ方式が登場した。最近では、プランジャの駆動をより精密に行えるように、プランジャごとに個別のアクチュエータを備える独立駆動方式が採用されることも多い。
【0008】
図16に、直列かつ独立駆動方式のダブルプランジャポンプの構成の一例を示す。
ポンプは大きく分けて1次側サブユニット200と2次側サブユニット210から構成される。
【0009】
1次側サブユニット200において、1次側ポンプヘッド201の内部を1次側プランジャ202が往復する。1次側ポンプヘッド201と1次側プランジャ202の間は1次側シール部材203によって封止されている。1次側プランジャ202は1次側直動機構204を介して1次側モータ205によって往復駆動される。
【0010】
1次側ポンプヘッド201の入口と吸引流路207の間に1次側チェック弁206が設けられている。1次側チェック弁206は吸引流路207から1次側ポンプヘッド201への方向のみ移動相が通過することを許可する。1次側ポンプヘッド201の出口は1次2次接続流路209を介して2次側サブユニット210へ接続されている。1次2次接続流路209に1次側圧力センサ208が設けられている。
【0011】
1次側サブユニット200と2次側サブユニット210は機械的にはほぼ同等である。すなわち、2次側サブユニット210は、2次側ポンプヘッド211、2次側プランジャ212、2次側シール部材213、2次側直動機構214、2次側モータ215、2次側チェック弁216から構成される。
【0012】
2次側サブユニット210を通過した移動相は、吐出流路217を通って、液体クロマトグラフの後段へと送液される。吐出流路217に2次側圧力センサ218が設けられている。
【0013】
1次側モータ205及び2次側モータ215の動作はポンプ制御コントローラ219によって制御される。ポンプ制御コントローラ219には1次側圧力センサ208及び2次側圧力センサ218の出力が入力される。ポンプ制御コントローラ219は例えばパーソナルコンピュータ(PC)や専用のコンピュータによって実現される。
【0014】
図17に直列型送液ポンプの速度プロファイルの一例を示す。横軸は時間軸を、縦軸は1次側及び2次側のプランジャ速度を示す。
図17におけるプランジャ速度は、
図16で示す矢印aの方向の時を正、矢印bの方向の時を負としている。
【0015】
まず、1次側プランジャ202に負の速度が与えられ、1次側チェック弁206が開き、移動相が1次側ポンプヘッド201に吸引される。この間、2次側チェック弁216は閉まり、2次側プランジャ212に正の速度が与えられることで、所望の合成流量が得られる。
【0016】
1次側ポンプヘッド201への移動相の吸引が終わると、今度は1次側プランジャ202に正の速度が、2次側プランジャ212に負の速度が与えられる。1次側チェック弁206は閉まり、2次側チェック弁216が開く。1次側プランジャ202が移動相を吐出する一方で、2次側プランジャ212は移動相を吸引する。これによって1次側サブユニット200の吐出量から2次側サブユニット210の吸引量を差し引いた分が合成流量として得られる。このとき吐出量と吸引量の割合を適切に制御することで、プランジャの運動方向が切り替わっても一定した合成流量が得られる。
【0017】
図18は高圧下での直列型送液ポンプの速度プロファイルの一例である。
この速度プロファイルでは、1次側ポンプヘッド201に吸引された移動相をシステム圧力まで昇圧するための予圧行程が挿入されている。予圧行程は、1次側プランジャ202が吐出行程に入るときに、1次側ポンプヘッド201の内部の移動相がシステム圧力まで既に昇圧されている状態にする。これによって、2次側プランジャ212が吸引行程に入るのに合わせて1次側ポンプヘッド201が即座に吐出を開始できるようになっている。
【0018】
この予圧行程の完了タイミングは、1次側ポンプヘッド201の内部圧力を測定する1次側圧力センサ208と、システム圧力を測定する2次側圧力センサ218の出力同士を比較することで得られる。このようにして高圧下でも安定した合成流量が得られる。なおこの方法は例えば特許文献1に開示されている。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の実施形態の送液装置において、例えば、上記補償流量計算部は、上記予圧行程中の上記プランジャポンプ内の流体の単位時間あたりの圧力上昇が大きいほど上記補償流量を大きくする上記相関に基づいて上記補償流量を計算するものであって、計算周期ごとに、上記予圧行程中の上記プランジャポンプ内の流体の単位時間あたりの圧力上昇を計算し、上記圧力上昇に比例した単位時間あたりの発熱量を計算し、前回の計算周期で計算した上昇温度から時間経過による冷却後の上昇温度を計算し、上記冷却後の上昇温度と上記発熱量から現在の上昇温度を計算し、上記現在の上昇温度と上記プランジャポンプ内の残容量から流体の熱膨張体積を計算し、単位時間あたりの上記熱膨張体積の変化から上記補償流量を計算する。
【0029】
さらに、上記補償流量計算部は、例えば、単位時間あたりの上記圧力上昇と上記発熱量との比例係数を、流体の熱膨張率β、温度T、定圧比熱C
p、密度ρとしたとき、βT/C
pρとして上記発熱量を計算する。
【0030】
また、上記補償流量計算部は、例えば、上記吐出行程中の上記プランジャポンプ内の流体について、上記冷却後の上昇温度を上記現在の上昇温度とする。
【0031】
また、上記補償流量計算部は、例えば、上記吸引行程中は上記プランジャポンプ内の流体の発熱がないとして上記現在の上昇温度を計算する。
【0032】
また、上記補償流量計算部は、例えば、上記予圧行程中の上記プランジャポンプ内の流体の圧力を測定する圧力センサの出力から上記圧力上昇を計算する。
【0033】
また、上記補償流量計算部は、上記圧力上昇が、上記予圧行程中の上記プランジャポンプのプランジャ速度と上記吐出流路内の流体圧力の両方に比例するとして、計算から上記圧力上昇を求めるようにしてもよい。
【0034】
また、本発明の実施形態の送液装置において、例えば、該送液装置は、上記予圧行程を行う上記プランジャポンプ内の流体温度を測定するための温度計を備え、上記補償流量計算部は、上記温度計の出力を用いて、上記測定された上昇温度に基づいて上記補償流量を計算するものであって、計算周期ごとに、上記プランジャポンプ内の流体の上昇温度と残容量から流体の熱膨張体積を計算し、単位時間あたりの上記熱膨張体積の変化から上記補償流量を計算するようにしてもよい。
【0035】
また、上記補償流量計算部は、例えば、上記吐出行程中の上記プランジャポンプ内の流体の単位時間あたりの熱膨張体積の減少量を上記補償流量とする。
【0036】
本発明の実施形態の送液装置は、例えば、上記プランジャポンプとして1次側プランジャポンプと2次側プランジャポンプを備え、上記吸引流路と上記吐出流路の間に、1次側チェック弁と、上記1次側プランジャポンプと、2次側チェック弁と、上記2次側プランジャポンプが上記吸引流路側からその順に直列に流体接続されており、上記1次側プランジャポンプは、1次側ポンプヘッドと、上記1次側ポンプヘッド内を軸方向に往復運動する1次側プランジャと、上記1次側ポンプヘッドと上記1次側プランジャの間を封止する1次側シール部材と、上記1次側ポンプヘッドに設けられた1次側入口流路及び1次側出口流路と、上記1次側プランジャを往復運動させる1次側駆動機構を備え、上記2次側プランジャポンプは、2次側ポンプヘッドと、上記2次側ポンプヘッド内を軸方向に往復運動する2次側プランジャと、上記2次側ポンプヘッドと上記2次側プランジャの間を封止する2次側シール部材と、上記2次側ポンプヘッドに設けられた2次側入口流路及び2次側出口流路と、上記2次側プランジャを往復運動させる2次側駆動機構を備え、上記周期のうちに、上記吸引行程であって、上記1次側プランジャを上記1次側ポンプヘッドから遠ざかる方向に動かして上記1次側プランジャポンプに流体を吸引する1次側吸引行程、及び上記2次側プランジャを上記2次側ポンプヘッドに近づける方向に動かして上記2次側ポンプヘッド内の流体を上記吐出流路へ吐出する2次側吐出行程と、上記予圧行程であって上記1次側プランジャを上記1次側ポンプヘッドに近づける方向に動かして上記1次側ポンプヘッド内の流体圧力を上記吐出流路の流体圧力まで昇圧する1次側予圧行程と、上記吐出行程であって、上記1次側予圧行程の後にさらに上記1次側プランジャを上記1次側ポンプヘッドに近づける方向に動かして上記1次側ポンプヘッド内の流体を上記2次側ポンプヘッドを経由しながら上記吐出流路へ吐出する1次側吐出行程、及び上記2次側プランジャを上記2次側ポンプヘッドから遠ざかる方向に動かして上記1次側ポンプヘッドから上記2次側ポンプヘッドに流体を吸引する2次側吸引行程と、が含まれており、上記1次側吐出行程はおよそ上記2次側吸引行程の期間に行われ、上記2次側吐出行程はおよそ上記1次側吸引行程の期間と上記1次側予圧行程の期間に行われ、上記制御部は、上記補償流量を得るために、上記1次側吐出行程中の上記1次側プランジャの速度及び上記2次側吸引行程中の上記2次側プランジャの速度の少なくとも一方を修正する。
【0037】
ここで、「1次側吐出行程はおよそ2次側吸引行程の期間に行われる」、「2次側吐出行程はおよそ1次側吸引行程の期間と1次側予圧行程の期間に行われる」とは、1次側吐出行程の期間の一部と2次側吐出行程の期間の一部が重なる場合があることを意味する。例えば、吐出行程中の一方のプランジャポンプのプランジャ速さを吐出行程の終了間際で徐々に減少させると同時に、他方のプランジャポンプを予圧行程又は吸引行程から吐出行程に切り替えてプランジャ速さを徐々に増加させる、いわゆる引き渡し区間が設けられることがある。
【0038】
この態様において、上記制御部は、例えば、上記補償流量を、上記1次側吐出行程中の上記1次側プランジャの速さを増やすことで与える。
【0039】
また、この態様において、上記制御部は、上記補償流量を、上記2次側吸引行程中の上記2次側プランジャの速さを減らすことで与えるようにしてもよい。
【0040】
また、この態様において、上記制御部は、上記補償流量を、上記1次側吐出行程中の上記1次側プランジャの速さを増やすと同時に上記2次側吸引行程中の上記2次側プランジャの速さを増やし、かつ、上記1次側プランジャの速さの増分の大きさを上記2次側プランジャの速さの増分の大きさよりも大きくすることで与えるようにしてもよい。
【0041】
本発明の実施形態の送液装置において、例えば、複数の上記プランジャポンプは、上記吸引流路と上記吐出流路の間に、上記吸引流路とは入口チェック弁をそれぞれ介し、上記吐出流路とは出口チェック弁をそれぞれ介して、並列に流体接続されており、上記プランジャポンプは、ポンプヘッドと、上記ポンプヘッド内を軸方向に往復運動するプランジャと、上記ポンプヘッドと上記プランジャの間を封止するシール部材と、上記ポンプヘッドに設けられた入口流路及び出口流路と、上記プランジャを往復運動させる駆動機構をそれぞれ備え、上記周期のうちに、上記プランジャを上記ポンプヘッドから遠ざかる方向に動かして上記入口流路から上記ポンプヘッドに流体を吸引する上記吸引行程と、上記プランジャを上記ポンプヘッドに近づける方向に動かして上記ポンプヘッド内の流体圧力を上記出口流路の流体圧力まで昇圧する上記予圧行程と、上記予圧行程の後にさらに上記プランジャを上記ポンプヘッドに近づける方向に動かして上記ポンプヘッド内の流体を上記出口流路へ吐出する上記吐出行程と、が含まれており、上記制御部は、上記補償流量を得るために、少なくとも1つの上記プランジャポンプのプランジャ速度を修正する。
【0042】
この態様において、上記制御部は、例えば、上記補償流量を、上記吐出行程中の上記プランジャポンプのプランジャ速さを増やすことで与える。
【0043】
本発明の実施形態の送液装置の送液制御方法において、例えば、上記補償流量計算ステップは、上記相関に基づいて上記補償流量を計算するステップであって、計算周期ごとに、上記予圧行程中の上記プランジャポンプ内の流体の単位時間あたりの圧力上昇を計算する圧力上昇計算ステップと、上記圧力上昇に比例した単位時間あたりの発熱量を計算する発熱量計算ステップと、前回の計算周期で計算した上昇温度から時間経過による冷却後の上昇温度を計算する冷却後温度計算ステップと、上記冷却後の上昇温度と上記発熱量から現在の上昇温度を計算する現在温度計算ステップと、上記現在の上昇温度と上記プランジャポンプ内の残容量から流体の熱膨張体積を計算する熱膨張体積計算ステップと、単位時間あたりの上記熱膨張体積の変化から上記補償流量を計算する補償流量計算ステップと、を含む。
【0044】
さらに、発熱量計算ステップは、例えば、単位時間あたりの上記圧力上昇と上記発熱量との比例係数を、流体の熱膨張率β、温度T、定圧比熱C
p、密度ρとしたとき、βT/C
pρとして上記発熱量を計算する。
【0045】
また、上記現在温度計算ステップは、例えば、上記吐出行程中の上記プランジャポンプ内の流体について、上記冷却後の上昇温度を上記現在の上昇温度とする。
【0046】
また、上記現在温度計算ステップは、例えば、上記吸引行程中は上記プランジャポンプ内の流体の発熱がないとして上記現在の上昇温度を計算する。
【0047】
また、上記補償流量計算ステップは、例えば、上記吐出行程中の上記プランジャポンプ内の流体の単位時間あたりの熱膨張体積の減少量を補償流量とする。
【0048】
また、上記圧力上昇計算ステップは、例えば、上記予圧行程中の上記プランジャポンプ内の流体の圧力を測定する圧力センサの出力から上記圧力上昇を計算する。
【0049】
また、上記圧力上昇計算ステップは、上記圧力上昇が、上記予圧行程中の上記プランジャポンプのプランジャ速度と上記吐出流路内の流体圧力の両方に比例するとして、計算から上記圧力上昇を求めるようにしてもよい。
【0050】
また、本発明の実施形態の送液装置の送液制御方法において、例えば、上記圧力上昇計算ステップは、上記予圧行程を行う上記プランジャポンプ内の流体温度を測定する温度計の出力を用い、上記測定された上昇温度に基づいて上記補償流量を計算するステップであって、計算周期ごとに、上記プランジャポンプ内の流体の上昇温度と残容量から流体の熱膨張体積を計算する熱膨張体積計算ステップと、単位時間あたりの上記熱膨張体積の変化から上記補償流量を計算する補償流量計算ステップと、を含むようにしてもよい。
【0051】
また、上記補償流量計算ステップは、例えば、上記吐出行程中の上記プランジャポンプ内の流体の単位時間あたりの熱膨張体積の減少量を補償流量とする。
【0052】
また、上記修正ステップは、例えば、上記補償流量を、上記吐出行程中の上記プランジャポンプのプランジャ速さを増やすことで与える。
【0053】
また、上記修正ステップは、上記補償流量を、上記吸引行程中の上記プランジャポンプのプランジャ速さを減らすことで与えるようにしてもよい。
【0054】
また、上記修正ステップは、上記補償流量を、上記吐出行程中の上記プランジャポンプのプランジャ速さを増やすと同時に上記吸引行程中の上記プランジャポンプのプランジャ速さを増やし、かつ、上記吐出行程中の上記プランジャポンプのプランジャ速さの増分の大きさを上記吸引行程中の上記プランジャポンプのプランジャ速さの増分の大きさよりも大きくすることで与えるようにしてもよい。
【0055】
図面を参照しながら本発明の一実施形態を説明する。
図1に、送液装置の一実施形態の模式的な構成図を示す。
図2に、送液装置の送液制御方法の一実施形態における補償流量の計算フローチャートを示す。
図3に、この実施形態における補償流量の計算過程を説明するためのグラフを示す。
【0056】
図1に示されるように、この実施形態の送液装置は、
図16に示された送液装置と比較して、ポンプ制御コントローラ220(制御部)が補償流量計算部221を備えている。この実施形態の送液装置のその他の構成は
図16に示された送液装置と同様である。
【0057】
補償流量計算部221は、設定流量に対して1次側プランジャ202及び2次側プランジャ212の動作周期に同期して時間変化する正の補償流量を計算する。この補償流量は、1次側サブユニット200の1次側ポンプヘッド201内の移動相(流体)が予圧行程において圧縮及び発熱したのちに吐出行程において冷却及び収縮することに起因する流量の欠損を補償する流量である。補償流量計算部221は、予圧行程中の1次側ポンプヘッド201内の移動相の単位時間あたりの圧力上昇が大きいほど補償流量を大きくする相関に基づいて補償流量を計算する。
【0058】
図1から
図3を参照して補償流量の計算過程を説明する。
補償流量計算部221は、1次側サブユニット200が予圧行程、吐出行程、吸引行程のうち、どの行程にあるかを判断する(ステップS1)。
【0059】
1次側サブユニット200の1次側プランジャ202が予圧行程に入ると、1次側ポンプヘッド201内の圧力が上昇する。補償流量計算部221は1次側圧力センサ208の出力から1次側ポンプヘッド201内の圧力を測定する(ステップS11)。
【0060】
補償流量計算部221によって、ある計算周期において、単位時間あたりの圧力上昇が計算される(ステップS12)。そして圧力上昇に比例した発熱量が求められる(ステップS13)。この比例係数(単位圧力上昇あたりの温度上昇量)は、移動相(流体)の熱膨張率β、温度T、定圧比熱C
p、密度ρとしたとき、βT/(C
pρ)であることが熱力学によって知られている。
【0061】
補償流量計算部221は、前回の計算周期で求めた上昇温度が冷却されることを計算する。まず、前回の計算周期で求めた上昇温度が読み込まれる(ステップS14)。次に、冷却後の上昇温度が計算される(ステップS15)。冷却の度合いは、移動相の冷却時定数(既知)と計算周期の時間幅から指数減衰計算によって求められる。また、時間経過による冷却の速度は移動相の物性値及び1次側ポンプヘッド201の内径寸法に依存する。例えば、冷却の速度は、1次側ポンプヘッド201の内径寸法が大きいときに遅くなる。また、冷却の速度は、1次側ポンプヘッド201内部の空間部分ごとに異なる値が割り当てられてもよい。また、冷却の速度は、1次側ポンプヘッド201内部の空間部分が壁面に近いほど速くされてもよい。
【0062】
次に、補償流量計算部221は、ステップS13で求めた発熱量をステップS15で求めた冷却後の上昇温度に加算する(ステップS16)。このようにして、補償流量計算部221は、1次側予圧行程中に、移動相の発熱と冷却の両方を計算することにより、1次側ポンプヘッド201内の移動相の現在の上昇温度を求める。
【0063】
なお、1次側ポンプヘッド201内の移動相の発熱の計算と冷却の計算の順序は問われない。例えば、発熱量が計算される前に冷却後の上昇温度が計算されてもよいし、発熱量と冷却後の上昇温度が並行して計算されてもよい。
【0064】
次に、補償流量計算部221は1次側ポンプヘッド201内の残容量を計算し(ステップS17)、移動相の熱膨張体積を計算する(ステップS18)。移動相の現在の上昇温度と、1次側ポンプヘッド201内の体積と、移動相の熱膨張率の積を計算することで、移動相の熱膨張量を求めることができる。
【0065】
補償流量計算部221は補償流量を計算する(ステップS19)。補償流量は、単位時間当たりの熱膨張体積の変化に基づいて得られる。
ステップS1に戻る。1次側サブユニット200が1次側予圧行程の期間中、ステップS11〜S19が繰り返される。
【0066】
1次側サブユニット200が吐出行程に入ると、1次側圧力の上昇が止まる。すなわち移動相の発熱はなくなり、冷却のみとなる。そして、1次側ポンプヘッド201内の移動相の熱膨張量は単調減少する。
【0067】
1次側サブユニット200が吐出行程にあるとき、補償流量計算部221は前回計算の上昇温度を読み込み(ステップS21)、指数減衰計算によって移動相の冷却後の上昇温度を計算する(ステップS22)。
【0068】
補償流量計算部221は、1次側ポンプヘッド201内の残容量を計算し(ステップS23)、移動相の熱膨張体積を計算する(ステップS24)。このとき、補償流量計算部221はステップS22で計算した冷却後の上昇温度を現在の上昇温度とする。
【0069】
補償流量計算部221は補償流量を計算する(ステップS25)。補償流量計算部221は、1次側ポンプヘッド201内の移動相の単位時間あたりの熱膨張体積の減少量を補償流量とする。補償流量は正の値である。
【0070】
ポンプ制御コントローラ220は、補償流量計算部221が計算した正の補償流量が得られるように1次側プランジャ202の速度もしくは2次側プランジャ212の速度又はそれらの両方を修正する(修正ステップ)。これにより、熱効果脈動が打ち消される。
【0071】
1次側サブユニット200が吸引行程に入ると、補償流量計算部221は1次側ポンプヘッド201内の移動相の上昇温度をゼロにリセットする(ステップS31)。
上記で説明した実施形態の各ステップは、各ステップを処理するためのプログラムが作製され、コンピュータを用いてそのプログラムが実行されることによって実現できる。
【0072】
図4は、
図1に示された送液装置の実施形態によって
図3の半分の流量で送液した場合の熱補償流量の計算過程を説明するためのグラフである。
【0073】
補償流量計算部221は、
図3の場合と同様に、1次側予圧行程中は1次側ポンプヘッド201内の移動相の発熱と冷却の両方を計算し、吐出中は冷却のみを計算する。1次側圧力の上昇の傾きは
図3の半分になるため、1次側予圧行程中の移動相の単位時間あたり発熱量も半分になる。そのため、
図3の場合よりも1次側移動相の到達温度が低く計算される。結果として補償流量も小さくなり、適切な補償流量が得られる。
【0074】
図5〜
図7は、計算された補償流量をプランジャ速度に適用する方法の一例を示す。
図5では、ポンプ制御コントローラ220は、1次側吐出行程において1次側速度(1次側プランジャ202の速さ)を増やすことで1次側サブユニット200の吐出量を増やして流量を補償する。
図6では、ポンプ制御コントローラ220は、2次側吸引行程において2次側速度(2次側プランジャ212の速さ)を減らすことで2次側サブユニット210の吸引量を減らして流量を補償する。
【0075】
図7では、ポンプ制御コントローラ220は、1次側吐出行程における1次側速度(1次側プランジャ202の速さ)を増やして1次側サブユニット200の吐出量を増やすと同時に、2次側吸引行程における2次側速度(2次側プランジャ212の速さ)を増やして2次側サブユニット210の吸引量を増やすが、1次側速度の増加幅を2次側速度の増加幅よりも増やすことで、所望の流量補償量を得る。つまり、1次側サブユニット200の吐出量の増分量を2次側サブユニット210の吸引量の増分量よりも多くする。
図7の方法は、1次側と2次側の速度比が固定されている駆動機構方式(1モータカム方式又は1モータボールねじ方式など)でも適用できる。
【0076】
また、上述のように引き渡し区間が設けられている場合、1次側サブユニット200の吐出行程の開始直後の時期と2次側サブユニット210の吐出行程の終了間際の時期が重なる。また、1次側サブユニット200の吐出行程の終了間際の時期と2次側サブユニット210の吐出行程の開始直後の時期が重なる。
【0077】
この場合、所望の流量補償量を得るために、1次側サブユニット200の吐出行程の開始直後の時期であって2次側サブユニット210の吐出行程の終了間際の時期でもある引き渡し区間において、例えば、
(A)1次側プランジャ202の速さ(1次側サブユニット200の吐出量)を増やす、
(B)2次側プランジャ212の速さ(2次側サブユニット210の吐出量)を増やす、
(C)1次側プランジャ202の速さを増やすと同時に2次側プランジャ212の速さを増やす、
のいずれかを選択できる。
【0078】
上記(C)の方法は、1次側プランジャ202と2次側プランジャ212の速度比が固定されている駆動機構方式でも実現できる。ただし、この場合、引き渡し区間はプランジャ速度が修正されない場合と比べて短くなる。
【0079】
図8に1モータカム方式の送液装置の一実施形態を示す。
図8において
図1と同じ機能を果たす部分には同じ符号が付されている。
【0080】
1次側サブユニット200aにおいて、1次側プランジャ202は1次側カム222の回転運動によって1次側クロスヘッド223とともに往復運動される。また、2次側サブユニット210aにおいて、2次側プランジャ212は2次側カム224の回転運動によって2次側クロスヘッド225とともに往復運動される。
【0081】
1次側カム222と2次側カム224は1本のシャフト226に取り付けられている。シャフト226はベルト227を介してモータ228によって回転される。モータ228の回転はポンプ制御コントローラ220によって制御される。
【0082】
図9は、
図1に示された送液装置の実施形態の効果を示すデータである。
図9において、横軸は時間を示す。縦軸は吐出流路における移動相の圧力と流量設定値を示す。
【0083】
図9上段のグラフは、熱補償流量を与えなかった場合の圧力波形である。周期的な圧力の落ち込みが観測されている。これが移動相の冷却にともなう熱効果脈動である。
【0084】
図9下段のグラフは、送液装置の一実施形態による補償流量を与えた場合の圧力波形である。予圧直後に正の補償流量が加算されている。これにより、上段のグラフで見られるような圧力の落ち込みが打ち消され、送液安定性が改善している。
【0085】
図10は、送液装置の他の実施形態の構成を示す。この実施形態はいわゆる並列型ポンプである。
ポンプは大きく分けて右側サブユニット300と左側サブユニット310から構成される。
【0086】
右側サブユニット300と左側サブユニット310は、
図1を参照して説明した1次側サブユニット200及び2次側サブユニット210と機械的にほぼ同等の構成に、右側出口チェック弁309又は左側出口チェック弁319がさらに設けられた構成を有している。
【0087】
すなわち、右側サブユニット300は、右側ポンプヘッド301、右側プランジャ302、右側シール部材303、右側直動機構304、右側モータ305、右側入口チェック弁306、右側出口チェック弁309から構成される。
【0088】
また、左側サブユニット310は、左側ポンプヘッド311、左側プランジャ312、左側シール部材313、左側直動機構314、左側モータ315、左側入口チェック弁316、左側出口チェック弁319から構成される。
【0089】
右側サブユニット300と左側サブユニット310は、吸引流路307と吐出流路317の間に並列に流体接続されている。右側入口チェック弁306と左側入口チェック弁316は吸引流路307に接続されている。右側出口チェック弁309と左側出口チェック弁319は吐出流路317に接続されている。吐出流路317に吐出流路圧力センサ318が設けられている。
【0090】
右側モータ305及び左側モータ315の動作はポンプ制御コントローラ320によって制御される。ポンプ制御コントローラ320には吐出流路圧力センサ318の出力が入力される。ポンプ制御コントローラ320は例えばパーソナルコンピュータ(PC)や専用のコンピュータによって実現される。ポンプ制御コントローラ320は補償流量計算部321を備えている。
【0091】
図11は、
図10の実施形態のポンプにおけるプランジャ速度及び補償流量を説明するためのグラフである。
【0092】
並列ポンプでは、右側サブユニット300と左側サブユニット310の両方で予圧が行われる。そのため、補償流量計算部321は、右側サブユニット300と左側サブユニット310のそれぞれについて移動相の発熱及び冷却を計算し、補償流量を求め、左右の補償流量を合計する。これにより、全体の補償流量が求められる。補償流量は、例えば、吐出行程中のサブユニットについてプランジャ速さを増やして吐出量を増やすことで与えられる。
【0093】
なお、補償流量計算部321は、予圧行程中の右側ポンプヘッド301内の移動相圧力を、右側プランジャ302の速度と吐出流路317内の移動相圧力の両方に比例するとして計算から求める。同様に、補償流量計算部321は、予圧行程中の左側ポンプヘッド311内の移動相圧力を、左側プランジャ312の速度と吐出流路317内の移動相圧力の両方に比例するとして計算から求める。
【0094】
図12は、
図10に示された送液装置の実施形態の効果を示すデータである。
図12において、横軸は時間を示す。縦軸は吐出流路における移動相の圧力と流量設定値を示す。上段のグラフは、熱補償流量を与えなかった場合の圧力波形である。下段のグラフは、他の実施形態による補償流量を与えた場合の圧力波形である。
【0095】
図9で送液装置の一実施形態である直列ポンプの場合において示したのと同様に、送液装置の他の実施形態である並列ポンプにおいても、熱効果脈動が打ち消され、送液安定性が改善していることが分かる。
【0096】
図10を参照して説明した並列型ポンプの実施形態において、右側ポンプヘッド301内の流体圧力を測定するための右側圧力センサと、左側ポンプヘッド311内の流体圧力を測定するための左側圧力センサが設けられているようにしてもよい。この場合、補償流量計算部321は、予圧行程中の右側ポンプヘッド301内の流体圧力又は左側ポンプヘッド311内の移動相圧力を、右側圧力センサの出力又は左側圧力センサの出力に基づいて求めることができる。
【0097】
また、この実施形態は右側サブユニット300と左側サブユニット310に個別のアクチュエータを備えた独立駆動方式であるが、並列型ポンプの実施形態は、右側プランジャと左側プランジャの速度比が固定されている駆動機構方式(1モータカム方式又は1モータボールねじ方式など)であってもよい。
【0098】
この場合、補償流量を得るために吐出行程中の一方のプランジャポンプのプランジャ速さが増やされて吐出量が増やされるのと同時に、吸引行程中の他方のプランジャポンプのプランジャ速さも増やされて吸引量が増やされる。これらのプランジャポンプは吸引流路と吐出流路の間に並列に流体接続されているので、吸引行程中の他方のプランジャポンプの吸引量が増やされても吐出流路内の移動相の圧力及び流量には影響が出ない。
【0099】
なお、吸引行程中にプランジャ速さが増やされて移動相の吸引量が増やされると、吸引行程の期間は、プランジャ速さが増やされない場合と比べてわずかに短くなる。それに合わせて予圧行程の期間もしくは吐出行程の期間又はそれらの両方の期間がわずかに短くされる。
【0100】
また、直列ダブルプランジャポンプで説明したのと同様に、並列ダブルプランジャポンプにおいて引き渡し区間が設けられている場合、右側サブユニット300の吐出行程の開始直後の時期と左側サブユニット310の吐出行程の終了間際の時期が重なる。また、右側サブユニット300の吐出行程の終了間際の時期と左側サブユニット310の吐出行程の開始直後の時期が重なる。
【0101】
この場合、所望の流量補償量を得るために、
(a)吐出行程の開始直後のサブユニットのプランジャ速さ(吐出量)を増やす、
(b)吐出行程の終了間際のサブユニットのプランジャ速さを増やす、
(c)吐出行程の開始直後のサブユニットのプランジャ速さを増やすと同時に吐出行程の終了間際のサブユニットのプランジャ速さを増やす、
のいずれかを選択できる。
【0102】
上記(c)の方法は、右側プランジャ302と左側プランジャ312の速度比が固定されている駆動機構方式でも適用できる。ただし、この場合、引き渡し区間はプランジャ速度が修正されない場合と比べて短くなる。
【0103】
また、
図10を参照して説明した並列型ポンプの実施形態は、並列に接続された右側サブユニット300と左側サブユニット310を備えているが、本発明の実施形態において並列接続されるサブユニットの数は2台に限定されない。本発明の送液装置の実施形態は、3台以上のサブユニット(プランジャポンプ)が並列に接続された構成であってもよい。
【0104】
次に
図13と
図14を参照してさらに他の実施形態について説明する。
図13は送液装置のさらに他の実施形態の構成を説明するための模式的な構成図である。
図14は送液装置の送液制御方法の他の実施形態を説明するための、補償流量の計算フローチャートである。
図13において
図1と同じ機能を果たす部分には同じ符号が付されている。
【0105】
図13に示されるように、この実施形態の送液装置は、
図1に示された送液装置と比較して、1次側サブユニット200の1次側ポンプヘッド201内の流体温度を測定するための温度計230をさらに備えている。温度計230は、例えば温度変化に対して追従性の良い細い熱電対をセンサとして備えている。また、ポンプ制御コントローラ220は補償流量計算部231を備えている。この実施形態の送液装置のその他の構成は
図1に示された送液装置と同様である。
【0106】
補償流量計算部231は、温度計230の出力を用いて、計算周期ごとに、1次側ポンプヘッド201の移動相の測定された上昇温度と、1次側ポンプヘッド201の残容量から流体の熱膨張体積を計算し、単位時間あたりの熱膨張体積の変化から補償流量を計算する。
【0107】
図13と
図14を参照して補償流量の計算過程を説明する。
補償流量計算部231は、1次側サブユニット200が予圧行程、吐出行程、吸引行程のうち、どの行程にあるかを判断する(ステップS41)。
【0108】
1次側サブユニット200が予圧行程中であるとき、補償流量計算部231は、ある計算周期において、1次側ポンプヘッド201内の残容量と移動相の上昇温度を計算する(ステップS51)。補償流量計算部231は、温度計230の出力を用いて移動相の上昇温度を計算する。移動相の上昇温度は、例えば吸引行程中の1次側ポンプヘッド201内の移動相の温度を基準として計算される。
【0109】
補償流量計算部231は、1次側ポンプヘッド201内の残容量と、移動相の上昇温度と、移動相の熱膨張率の積を計算し、移動相の熱膨張体積を求める(ステップS52)。
【0110】
補償流量計算部231は単位時間当たりの熱膨張体積の変化に基づいて補償流量を計算する(ステップS53)。
ステップS41に戻る。1次側サブユニット200が1次側予圧行程の期間中、ステップS51〜S53が繰り返される。
【0111】
1次側サブユニット200が吐出行程にあるとき、補償流量計算部231は、ステップS51と同様にして1次側ポンプヘッド201内の残容量と移動相の上昇温度を計算する(ステップS61)。1次側サブユニット200が吐出行程に入ると、上述のように、1次側圧力の上昇が止まり、移動相の発熱はなくなって冷却のみとなり、1次側ポンプヘッド201内の移動相の熱膨張量は単調減少する。
【0112】
補償流量計算部231は、ステップS52と同様にして移動相の熱膨張体積を計算する(ステップS62)。
補償流量計算部231は、ステップS53と同様にして補償流量を計算する(ステップS63)。ここでの補償流量は、1次側ポンプヘッド201内の移動相の単位時間あたりの熱膨張体積の減少量である。なお、補償流量は正の値である。
【0113】
ポンプ制御コントローラ220は、補償流量計算部231が計算した正の補償流量が得られるように1次側プランジャ202の速度もしくは2次側プランジャ212の速度又はそれらの両方を修正する(修正ステップ)。これにより、熱効果脈動が打ち消される。
【0114】
1次側サブユニット200が吸引行程にあるとき、補償流量計算部231は、温度計230の出力に基づいて1次側ポンプヘッド201内の移動相の上昇温度をゼロにリセットする(ステップS71)。このときの温度計230の出力がステップS51,61で移動相の上昇温度を計算するときの基準となる。
【0115】
なお、上記で説明した実施形態の各ステップは、各ステップを処理するためのプログラムが作製され、コンピュータを用いてそのプログラムが実行されることによって実現できる。
【0116】
図14を参照して説明した補償流量の計算過程は、
図2を参照して説明した計算過程と比較して、1次側ポンプヘッド201内の移動相の圧力上昇や、発熱量、冷却後の上昇温度、現在の上昇温度などの計算過程(ステップS11〜S16,S21〜S22)が不要になる。このように、1次側ポンプヘッド201内の移動相の温度を直接測定することにより、補償流量の計算過程が簡単になる。
【0117】
なお、予圧行程を行うプランジャポンプ内の流体温度を測定するための温度計を備え、補償流量計算部が温度計の出力を用いて補償流量を計算する構成は、並列ポンプ(例えば10に示された並列ダブルプランジャポンプ)に適用可能であることは言うまでもない。
【0118】
ところで、特許文献2には、熱効果脈動を補償する送液装置が開示されている。この送液装置は直列型ポンプ限定である。この送液装置は、システム圧力の時間発展を予測したうえで、熱効果脈動が起きるタイミング(1次側から2次側への充填行程)で定圧フィードバックを行う。定圧フィードバックによって2次側の速度が修正され、システム圧力が予測値に維持される。
しかし、高圧グラジエント系では、2台のポンプのどちらが熱効果脈動を発生させたかを判別することに困難が生じる。片方のポンプの脈動をもう一方のポンプが補償してしまうと、システム圧力は保たれるが、濃度比率の正確性は逆に悪化する。
【0119】
また、特許文献3には、断熱圧縮によって想定よりも予圧過剰となることを避けるため、予圧量を減らすことが記載されている。また、予圧後は温度が低下して流量が減少するが、これを打ち消すため、正の補償流量を加えることが記載されている。
しかし、予圧はあくまで断熱的であると想定されている。予圧時間が長い場合、断熱過程と等温過程の中間になるため補償量は小さくするべきだが、この特許文献3では考慮されていない。
【0120】
また、特許文献4には、特許文献2に記載の送液装置を改良した送液装置が記載されている。この送液装置は、1次側のみで圧力をフィードバックし、2次側は駆動パターンを変化させない点が特許文献2の送液装置とは異なる。
しかし、この送液装置は、上述のような高圧グラジエント系で発生する問題を有している。
【0121】
また、特許文献5,6には、予圧中にプランジャを止めることで、冷却による減圧を測定し、予圧後の補償流量を算出する方法が開示されている。また、別の方法としては、予圧中に(冷却による減圧を打ち消して)圧力が一定になるようにプランジャ位置をフィードバックし、予圧後にプランジャの運動を外挿することで流量を補償することが開示されている。
しかし、高流量(数mL/min)になると予圧時間が短くなり(100ミリ秒程度)、補償流量を算出するためのプランジャ動作の時間を確保することが難しくなるという問題がある。
【0122】
本発明の実施形態は、これらの不具合を生じることなく、移動相が予圧中に発熱する場合でも安定した流量が得られる。
例えば、本発明の実施形態は、定圧フィードバックではないので、高圧グラジエント系で片方のポンプの熱効果脈動をもう一方のポンプが補償してしまうことがない。
【0123】
また、本発明の実施形態は、予圧行程が遅い場合と速い場合で同じ移動相の物性値に基づいて補償流量を計算でき、個別に調整する必要がない。
また、本発明の実施形態は、予圧行程中に熱補償のための特殊なプランジャ駆動をする必要がない。
【0124】
また、本発明の実施形態は、移動相の発熱比例係数は一般的に公表されている物性値から計算ができるので汎用性がある。
また、本発明の実施形態は、ポンプヘッド内部の空間部分ごとに冷却を計算でき、より細かい補償が可能になる。
【0125】
また、本発明の実施形態は、補償流量を与えるためにプランジャ速度を変更するときに、片方のプランジャ速度を変更してもよいし、両方のプランジャ速度を変更してもよい。特に後者は、複数のプランジャを1つのモータで駆動する方式のポンプでも本発明の実施形態が利用可能であることを示す。
【0126】
以上、本発明の実施形態を説明したが、上記実施形態における構成、配置、数値等は一例であり、本発明はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0127】
本発明の実施形態の送液装置は、例えば、超高圧LC(UHPLC)用の送液ポンプや、化学プラントなどの液体送出用プランジャポンプなどに適用できる。